説明

活性なβ−NGFを得るための方法

【課題】末梢知覚神経障害(例えば、糖尿病に関連したもの又はAIDS療法において起こりうる副作用としてのものが挙げられる。)や、中枢神経障害(例えば、アルツハイマー病が挙げられる。この場合においては、記憶の喪失は、コリン作動性ニューロンの損失の結果である。)の治療に用い得る。)の治療に用い得る薬剤を提供する。
【解決手段】活性成分として組換えプロNGFを含有する薬剤であって、該組換えプロNGFが、N末端に完全なプロ配列が連結したβ−NGFであり、かつ、N末端に完全なプロ配列を有する該プロNGFが、生物学的又は生理学的活性を有するものである薬剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性した不活性なプロNGFを再生しそしてプロ配列を切除することによる、β−NGFを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
神経成長因子(β−NGF)は、交感神経系ニューロン及び知覚神経系ニューロンの成長と生存に必要な栄養因子の一つである(Levi-Montalcini, R., Science 237 (1987) 1154; Thoenen, H., et al.,
Physiol. Rev. 60 (1980) 1284; Yankner, B. A., et al., Annu. Rev. Biochem. 51
(1982) 845)。更には、β−NGFは、中枢神経系のコリン作動性ニューロンの成長、分化及び活力を促進する(Hefti,
F. J., J. Neurobiol. 25 (1994) 1418)。組換えヒト神経成長因子についての可能性のある治療適用としては、末梢知覚神経障害、例えば、糖尿病に関連したもの又はAIDS療法において起こりうる副作用としてのものが挙げられる。組換えヒトβ−NGFについての他の適用としては、中枢神経障害、例えば、アルツハイマー病が挙げられる。この場合においては、記憶の喪失は、コリン作動性ニューロンの損失の結果である。
【0003】
ヒトβ−NGFは、241個のアミノ酸よりなるプレプロタンパク質として翻訳される。プレペプチド(18アミノ酸)が、小胞体(ER)中へのトランスロケーションに際して切除される一方、その結果生じたプロタンパク質は、その後N及びC末端においてプロセシングを受ける(プロ配列(103アミノ酸)及び末尾の2個のアミノ酸の除去)。従って、成熟ヒトNGFは、118個のアミノ酸を含む。それは、ネズミのβ−NGFと相同性を示し、該タンパク質と、僅か12個のアミノ酸置換によって異なっているに過ぎない。臨床試験の実施又は治療薬としての可能性のある用途研究のためには、β−NGFは、大量に入手できなければならない。この因子をより多量に与える天然の源の一つに、マウスの顎下腺がある。しかしながら、それらからの調製物は、種々の二量よりなる不均質な混合物であり、治療に用いるには適さない。更には、患者には該タンパク質のヒト型のものを投与するのが望ましい。しかしながら、ヒト組織においては、種々の神経栄養因子は、ごく僅かな濃度にしか存在しない。
【0004】
従って、β−NGFを治療剤として使用するためには、組換えの手段による該タンパク質の製造が唯一の可能性である。これは、2つの方法によって達成できよう。すなわち、細胞培養又は細菌の何れかにおける組換え体の発現である。真核細胞発現系は、タンパク質を非常に少ない量でしか提供しない傾向があり、そして比較的に高価である(Barnett, J., et al., J. Neurochem. 57 (1991) 1052; Schmelzer, C.
H., et al., J. Neurochem. 59 (1992) 1675; US 5,683,894)。
【0005】
対照的に、原核生物発現系は、所望のタンパク質を多量に提供する。しかしながら、真核生物発現系とは対照的に、細菌は、前駆体タンパク質を正しい仕方でプロセシングすることができない。多くの他の組換え哺乳類遺伝子の発現におけると同様に、細菌中における組換えβ−NGFの産生は、生物学的に不活性な翻訳産物をもたらし、それは次いで凝集体(いわゆる、封入体(IBs))の形で細胞内に蓄積する。
【0006】
そのような封入体から成熟β−NGFの再生を行うことは、しかしながら、タンパク質濃度が非常に低い(10μg/mL未満)場合にのみ、且つ、非常に低い収率(約10%まで)でのみ可能である。そのような方法は、例えば、EP-A 0 544 293、米国特許第5,606,031号、米国特許第5,235,043号並びに国際公開WO 97/47735に記載されている。NGF/BDNFファミリーの神経栄養因子のサルファイト分解(sulfitolysis)による再生は、国際公開WO 95/30686に記載されている。
【0007】
国際公開WO 97/47735には、タンパク質の脱変性のための改良方法が記載されている。この方法においては、チオール基を有する低分子量物質の存在下において、変性を起こす濃度の変性剤溶液中に不活性タンパク質が溶解される。その後、この溶解されたタンパク質は、この強度に変性性の溶液から、変性性でないか又は変性性の弱い別の溶液中に移され、そこにおいて、チオール成分によってジスルフィド結合が開き次いで生物学的活性を有するコンフォメーションをタンパク質がとる仕方で該タンパク質中にジスルフィド結合が新たに形成されて、該タンパク質は生物学的に活性なコンフォメーションをとる。このタイプの改良された方法を用いると、β−NGFの脱変性の達成しうる収率は約10%である。
【発明の概要】
【0008】
本発明の一目的は、単純であって且つ高収率で活性なNGFを与える、β−NGFの製造のための改良された方法を提供することである。
【0009】
この目的は、生物学的に活性なβ−NGFを製造するための、不活性型で存在し且つ非常に溶解性の低い、好ましくは原核細胞において組換えにより製造した後封入体の形で得られるものである、プロ型の再生による方法であって、該方法は、変性性濃度の変性剤溶液に溶解性の乏しい不活性型のプロNGFを溶解させ、プロNGFを、その中において溶解した変性プロNGFが天然のNGF中に存在するジスルフィド結合によって決定される生物学的に活性なコンフォメーションをとるものである変性性でないか又は変性性の弱い溶液中に、溶解性を維持したまま移し、その後、プロ配列を除去して、単離できる活性NGFを得ることを特徴とする方法を提供することによって解決された。
【0010】
驚くべきことに、不活性β−NGFの試験管内(in vitro)再生に際して、プロ配列が再生過程に対し必須且つ積極的効果を有すること、及び、本発明によれば、最も単純な仕方で再生を達成できそれにより、これ迄知られて居らずしかも可能とは思われなかった収率を、再生された活性β−NGFにつき達成できることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】組換えヒトプロNGFの発現のための、プロNGFプラスミド構築物pET11a-proNGFを示す。
【図2】それぞれ、誘導前及び後の、E. coli株BL21(DE3)pET11a-proNGF/pUBS520の粗抽出物の、並びに封入体調製物の、SDS PAGEゲル(15%)のクマジー染色を示す(Laemmli, UK, Nature 227(1970) 680に従ったSDS PAGE)。U:誘導前の粗抽出物、I:4時間の誘導後の粗抽出物、P:封入体ペレット、S:可溶性上清。
【図3】Fig.2a: 100mMトリス/塩酸、1M L−アルギニン、5mM GSH、1mMGSSG、5mM EDTA中での、10℃における組換えヒトプロNGFの折り畳みに対するpH値の効果を示す。タンパク質濃度は50μg/mL、折り畳み時間は3時間であった。2つの測定シリーズの平均値が示されている。
【図4】Fig.2b: 組換えヒトプロNGFの折り畳みに対する種々の濃度のL−アルギニンの効果を表す。再生はpH9.5において行われ、他の条件はpHを変化させたときに用いたのと同じであった。2つの測定シリーズの平均値が示されている。
【図5】Fig.2c: 組換えヒトプロNGFの折り畳みに対する種々の濃度のGSHの効果を示す。GSSGの濃度は1mM、L−アルギニンの濃度は1Mであった。他の再生パラメーターは、アルギニンにつき変化させたときに用いたのと同じであった。2つの測定シリーズの平均値が示されている。
【図6】Fig.2d: 組換えヒトプロNGFの折り畳みに対する種々の濃度のGSSGの効果を示す。GSHの濃度は5mMであった。他の折り畳みパラメーターは、GSHにつき変化させたときに用いたとの同じであった。2つの測定シリーズの平均値が示されている。
【図7】Fig.2e: 天然型組換えヒトプロNGFの収率に対する種々の量の塩酸グアニジニウム(GdmCl)の効果を示す。GSH及びGSSGの量は、それぞれ、5mM及び0.5mMであった。他の再生条件は、GSSGにつき変化させたときに用いたのと同じであった。2つの測定シリーズの平均値が示されている。
【図8】Fig. 2f: 組換えヒトプロNGFの折り畳みの収率に対する種々のタンパク質濃度の効果を示す。全てのサンプルにおいて、塩酸グアニジニウムの濃度は200mMであった。他の折り畳みパラメーターは何れも塩酸グアニジニウムにつき変化させたときに用いたのと同じであった。単一の測定シリーズのみが示されている。
【図9】Fig.3: Poros 20 HS(Perseptive Biosystems, カラム容積1.7mL)陽イオン交換クロマトグラフィーによる組換えヒトプロNGFの精製の溶出プロフィールを示す。
【図10】Fig.4: Poros 20 HSによる組換えヒトプロNGFの精製のSDS PAGEゲル(Nesterenko,M. V., et al., J. Biochem. Biophys. Methods 28 (1994) 239による、15%、銀染色)を示す(1:カラムに負荷された再生プロNGF、2:ボイド、3:画分4(66ないし69mL)、4:画分5(69ないし72mL)、5:画分6(72ないし75mL)、6:画分7(75ないし78mL)、7:画分8(78ないし81mL)、8:画分9(81ないし84mL)、9:画分10(84ないし87mL)。
【図11】Fig.5: 組換えヒトプロNGFのUVスペクトルを示す。
【図12】Fig.6: 組換えヒトプロNGFのIEX-HPLC溶出図を示す(カラム物質:Poros 20 HS、100mm×4.6mmカラム、PerseptiveBiosystems Company)。
【図13】Fig.7: 組換えヒトプロNGFのRP-HPLC溶出図を示す(カラム物質:Poros 10 R1、100mm×4.6mmカラム、PerseptiveBiosystems Company)。
【図14】Fig.8: 組換えヒトプロNGFのトリプシンによる限定されたタンパク質分解のSDSゲル(15%クマジー染色)を示す(M:10kDaマーカー、1:組換えヒトプロNGF標準、2:組換えβ−NGF標準、トリプシン:組換えヒトプロNGF質量比約1:40、4:1:100、5:1:250、6:1:500、7:1:1000、8:1:2000、9:1:2500、10:トリプシン不含大豆トリプシンインヒビター含有対照)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
語「プロNGF」は、N末端にプロ配列の連結したβ−NGFを意味する。本発明によれば、該プロ配列として、プロ配列全体(米国特許第5,683,894号、; Ullrich, A., et al., Nature 303
(1983) 821; SWISS-PROT protein sequence database No. P01138)又はその部分, 好ましくは完全なドメインを用いることができる。Suter et al. (EMBO
J. 10, 2395 (1991))は、COS-7細胞培養系における正しい分泌に基づいて、ネズミのβ−NGFのプロペプチドの生体内(in vivo)での機能についての詳細な研究を行った。この目的のために、プロ配列が5つの領域に分割された。これらの配列1個又はより多くを欠如した変異体が作成された。アミノ酸−52ないし−26(「ドメインI」)並びに−6ないし−1(「ドメインII」)を含む配列領域が、生物学的に活性のβ−NGFの発現と分泌に必須であることが見出された。ドメインIが発現に必須である一方、ドメインIIは、正しいタンパク質分解プロセシングに必要である。驚くべきことに、プロNGFは生体内でβ−NGF同様に活性を有することが示された。従って、プロNGFもまた、治療に用い得る。
【0013】
溶解性の乏しい不活性なプロNGFは、原核生物の細胞質ゾルにおける該タンパク質の過剰発現に際して形成される。この場合、組換えによって製造されたプロNGFは、細胞質中に、不溶性且つ凝集した形で止まる。これらのタンパク質凝集体、それらの単離及びそれらの精製は、例えば、Marston, F. A., Biochem. J. 240 (1986)に記載されている。これらの不活性なタンパク質凝集体(封入体)を単離するためには、発酵の後、原核細胞が破壊される。
【0014】
細胞の破壊は、例えば、超音波処理、高圧分散、又はリゾチームによって、慣用の方法により行うことができる(Rudolph, R., et al. (1997); Folding proteins. In: Creighton, T. E.
(ed.): Protein Function: A Practical Approach. Oxford University Press, pp.
57-99)。それは、好ましくは、0.1 mol/L トリス/塩酸等のような、中性又は弱酸性のpHに調節するのに適した、懸濁媒質として働く緩衝液中において行われる。細胞の破壊の後、不溶性成分(封入体)が、適した任意の仕方で、好ましくは遠心又は濾過によって取り出され、次いで、封入体を無傷で残すがしかしそれ以外の細胞タンパク質を可能な限り溶解させるもの、例えば、所望によりBrij(登録商標)のような緩和な洗剤を添加した水又はリン酸緩衝液等、による1回又はより多くの洗浄ステップに付される。その後、不溶性の画分(ペレット)を、可溶化及び再生のための、本発明に従った方法に付す。
【0015】
変性剤として、封入体タンパク質の可溶化に通常用いられる変性剤がある。塩酸グアニジニウムその他のグアニジニウム塩、チオシアナート等、並びに尿素及びその誘導体が、好ましく用いられる。更には、これらの変性剤の混合物も使用できる。
【0016】
変性剤の濃度は、変性剤のタイプに依存し、当業者には容易に決定できる。変性剤の濃度(変性濃度)は、可溶性の乏しい変性タンパク質の完全な可溶化が達成できれば十分である。塩酸グアニジニウムについては、それらの濃度は、通常3ないし8 mol/L、好ましくは5ないし7 mol/Lの範囲である。尿素については、該濃度は通常6ないし10 mol/Lの範囲である。変性性の弱い溶液は、タンパク質中に正しいジスルフィド結合の形成を、そしてそれにより該タンパク質の天然の3次構造の形成を可能にする濃度に変性剤を含んだ溶液である。好ましくは、強い及び弱い変性性の溶液は、それらの濃度が係数100又はそれ以上異なる。
【0017】
更には、封入体タンパク質の完全なモノマー化のためには、可溶化に際してジチオスレイトール(DTT)、ジチオエリスリトール(DTE)又は2−メルカプトエタノール等のような還元剤を、10〜400mMの濃度、特に好ましくは20〜100mMの濃度に添加するのが有利である。
【0018】
可溶化に続いて、含まれている場合のある還元剤を除去するために、透析が、好ましくは変性剤を変性濃度に含有する溶液に対して、行われる。透析を行う相手となる溶液は、変性性溶液中に存在するのと同濃度に変性剤を含有するのが便利である。
【0019】
次いで、本発明の方法に従った再生が、中性ないしアルカリ性領域のpH、好ましくは7と10の間、特に好ましくは7.5と9.5の間のpHにおいて行われる。緩衝剤液には、如何なる慣用の緩衝剤を使用してもよい。好ましくは、トリス緩衝剤又はリン酸緩衝剤等のような当業者に知られている緩衝剤が、再生剤として用いられる。変性されたタンパク質を再生緩衝液へ移すためには、可溶化されたタンパク質は再生緩衝液に希釈されるか又は再生緩衝液に対して透析される。それによって、変性剤の濃度も希釈されて(変性性の弱い溶液)、タンパク質の更なる変性は起こらない。変性剤濃度が最初に低下する際に、既に再生過程は起こり得る。タンパク質を、変性性でないか変性性の弱い溶液へ移すための条件は、タンパク質が実質的に溶液の状態に維持されることを保証するよう、適切に選択される必要がある。これは、簡便には、ゆっくりした連続的又は段階的な希釈によって達成できる。タンパク質の再生が可能な限り完全であるような仕方で又は変性剤がほぼ完全に除去されるような仕方で、例えば透析により、変性剤が希釈されることが好ましい。
【0020】
好ましくは、再生は、再生の収率にプラスの効果を有する低分子量の補助剤の存在下に行われる。そのような補助剤は、例えば米国特許第5593865号に記載されている。再生に際して低分子量補助剤として特に好ましいのは、アルギニンであり、0.2ないし1.5Mの濃度とするのが便利である。
【0021】
本発明の方法によれば、再生は好ましくは、チオール成分を、その還元された及び酸化された形で添加することによって行われる。好ましいチオール成分としては、グルタチオンの還元型(GSH)及び酸化型(GSSG)、システアミン及びシスタミン、システイン及びシスチン、又は2−メルカプトエタノール及び2−ヒドロキシエチルジスルフィドが挙げられる。酸化型及び還元型のこれらチオール試薬の添加によって、折り畳まれたポリペプチド鎖内のジスルフィド結合の形成が、再生すなわち、折り畳まれたポリペプチド鎖内部の又は鎖間の誤ったジスルフィド結合の「再配置」に際して、達成できる(Rudolph et al., 1997, 上記引用個所)。
【0022】
簡便には、本発明の方法は、低温(好ましくは約10℃)での再生において行われる。本発明による方法の過程において、再生は0.5ないし5時間で、好ましくは1ないし2時間で達成される。
【0023】
空気中に存在する酸素による還元剤の酸化を防止するためにそして遊離のSH基を保護するために、EDTA等のような錯体形成剤を、好ましくは1〜20mM、特に好ましくは約10mMの濃度に添加するのが便利である。
【0024】
語「β−NGFの活性」は、β−NGFの生物学的活性を示す。生物学的に活性なβ−NGFは、二量体の形で存在する。活性は、DRGアッセイ(後根神経節アッセイ)により測定することができる、Levi-Montalcini, R., et al., Cancer Res. 14 (1954) 49, 及び Varon, S., et al., Meth. in Neurochemistry 3 (9172) 203。このアッセイにおいては、ヒヨコ胚の分離した後根神経節からの知覚神経系ニューロンの刺激及び生存が、神経突起形成によってモニターされる。
【0025】
プロ配列は、成熟タンパク質とは別のドメインである。これら2個のドメインの間に、露出したプロテアーゼ切断部位がある。これらの部位は、適当なプロテアーゼによって特異的に切断することができる。例えば、トリプシンは、リシン又はアルギニン等のような塩基性アミノ酸の次を切断する。もしもトリプシンに対するプロNGFの比率を適当に調節しておくと、正しく折り畳まれた、成熟タンパク質はこのプロテアーゼによっては切断されない。対照的に、変性タンパク質並びに折り畳み途中の中間体は、プロテアーゼによる攻撃に弱い配列を露出させている。トリプシン様基質特異性を有するプロテアーゼが、プロNGFのプロセシングにとって好ましい。これらのプロテアーゼは、該タンパク質分子の活性部位を消化することなしに該タンパク質を切断する。トリプシン様プロテアーゼとしては、数種のセリンプロテアーゼ(例えば、トリプシンそれ自体又はγ−NGF)が考えられる。トリプシンは、好ましく用いられる。限定されたタンパク質分解のためには、タンパク質は、1:40ないし1:2500(トリプシン:プロNGFの比)、好ましくは1:40ないし1:250という大きな質量比で用いられる。タンパク質分解は、1分ないし24時間、好ましくは1ないし60分というインキュベーション時間を用い、0℃ないし37℃、好ましくは0℃ないし20℃という温度にて行われる。緩衝剤としては、プロテアーゼの活性を阻害しない緩衝剤が使用される。10〜100mMの濃度範囲のリン酸及びトリス緩衝剤が好ましい。この限定されたタンパク質分解は、該プロテアーゼの最適のpH範囲にて行われ、pH7〜8の媒質が好ましい。インキュベーション時間の終了後、特異的阻害剤、好ましくは1ないし5mMのPMSF(フェニルメチルスルホニルフルオリド)、若しくは大豆トリプシンインヒビターの、好ましくは1.0ないし5mgトリプシン当たり1mgの添加によって、又は、酸、好ましくは塩酸の添加によりpHを2〜3に低下させることによって、タンパク質分解は停止される(Rudolph, R., et al. (1997); Folding proteins. In: Creighton, T. E.
(ed.): Protein Function: A Practical Approach. Oxford University Press, pp.
57-99; 米国特許第5,683,894号)。
【0026】
以下の実施例、刊行物及び図面は、本発明を更に説明するものであり、本発明の範囲は請求の範囲から明らかである。記述されたプロセスは、例示でありことを意図したものであり、本発明の目的を記述している。
【0027】
実施例1
プロNGFをコードするcDNAの、E.
coli発現ベクターへのクローニング
プロNGF構築物のクローニングのために、NovagenのT7発現系を選択した(Studier, F. U., et al.,
J. Mol. Biol. 189 (1986) 113)。プロNGFをコードするDNA配列は、強いT7転写シグナルの制御下にある。宿主株として、E. coli BL21(DE3)を用いた。その染色体は、T7 RNAポリメラーゼの遺伝子を含む。このRNAポリメラーゼの発現は、従ってプロNGFの発現は、IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトシド)によって誘導される。
【0028】
ヒトプロNGFのcDNAは、Boehinger
MannheimのベクターpMGL-SIG-proNGF(PL
No. 1905)からのPCR増幅によって得られた。プロNGFをコードするそのDNA配列の5'末端にNdeI制限部位を及び3'末端にBamHI制限部位を、変異誘発プライマーを用いて導入した。PCR産物を、ベクターpET11a(Novagen)のマルチクローニング領域のNdeI/BamHI制限部位に挿入した(Fig.1)。
【0029】
次のプライマーをPCRに用いた。
フォワードプライマー「FwProNGF」:
【化1】

【0030】
リバースプライマー「RevNGF」:
【化2】

【0031】
ベクター中へのクローニングの後、ヌクレオチド配列をDNA配列決定により確認した。
【0032】
実施例2
a) E. coli中におけるヒトプロNGFの発現
組換え細菌株の培養のために、終夜培養を準備した。この目的のため、適当な液量のLB培地に100μg/mLのアンピシリン及び50μg/mLのカナマイシンを加えた。
【0033】
LB培地(1L): 10g トリプトン
10g 酵母エキス
5g 塩化ナトリウム
【0034】
培地に単一コロニーを接種して、37℃にて終夜震盪した。
【0035】
翌朝、100μg/mLのアンピシリン及び50μg/mLのカナマイシンを含有する所望液量の2×YT培地に、終夜培養物を1:100(v/v)の割合で接種した。培養物を37℃及び200〜250rmpにて、0.5〜0.8のOD600に達するまで震盪した。その後、3mMのIPTGによって同じ温度で4時間、プロNGFの発現を誘導した。その後、遠心して細胞を収穫し、直ちに破壊するか又は−70℃に冷凍保存した。
【0036】
2×YT培地(1L): 17g トリプトン
10g 酵母エキス
5g 塩化ナトリウム
【0037】
b) 封入体の単離
細菌細胞中では、組換えタンパク質は凝集体の形で存在する。これらの「封入体」の調製を、Rudolph, R., et al. (1987); Folding proteins. In: Creighton, T. E.
(ed.): Protein Function: A Practical Approach. Oxford University Press, pp.
57-99.に従って行った。
【0038】
細胞の破壊のために、各5gの細胞ペレットを、25mLの100mMトリス/塩酸 pH7.0;1mM
EDTAに再懸濁させた。その後、湿った細胞塊1gにつき1.5mgのリゾチームを添加し、4℃にて30分間インキュベートし、その後、Gaulin細胞破壊器を用いて細胞を破壊した。次いで、粗ホモジネートに3mMのMgCl並びに10μg/mLのDNaseを加え、25℃にて30分間インキュベートした。DNase消化の後、0.5体積の60mM EDTA、6%Triton
X-100、1.5M NaCl pH7.0を加えて不溶性細胞成分を可溶化し、次いで4℃にて30分間インキュベートした。13000rpmにて10分間の遠心により封入体を収集した。その後、それらを、各100mLの100mMトリス/塩酸、pH7.0;20mM
EDTAで4回洗浄し、−20℃で保存した。
【0039】
この仕方で、10LのE. coli培養物(約44gの細胞湿重量)から約4gの封入体ペレットを再現可能に得ることができた。調製物は常に、約90〜95%の組換えヒトプロNGFを含有していた(Fig.2)。
【0040】
実施例3
a) 封入体の可溶化
封入体ペレット400mgを、2mLの可溶化緩衝液(100mMトリス/塩酸、pH8.0;6mM 塩酸グアニジニウム;100mM DTT;10mM EDTA)に懸濁させ、25℃にて2時間インキュベートし、コールドルーム内で13,000rpmにて30分間遠心した。その後、上清を除去し1M塩酸でpH3〜4に調整した。可溶化された材料を、各300mLの6M 塩酸グアニジニウム、pH4.0、10mM EDTAに対して3回透析に付した。すなわち、25℃にて2時間づつ2回、そしてコールドルーム内で終夜(12℃、16〜18時間)である。次いで、Bradford (Bradford, M. M., Anal. Biochem. 72 (1976) 248)の方法を用いて、タンパク質濃度を測定した。組換えヒトプロNGFの濃度は、40〜50mg/mLであった。
【0041】
b) 組換えヒトプロNGFの再生の最適化
実施例3a)で調製した可溶化した材料から生物学的に活性な組換えヒトプロNGFを製造するために、それらを種々の再生緩衝液で希釈した。最適な折り畳み条件を決定するために、次のパラメーターを、掲げた順番に変化させた。
a) 温度及び時間
b) pH
c) アルギニン濃度
d) GSH/GSSG濃度
e) 塩酸グアニジニウム濃度
f) タンパク質濃度
【0042】
結果を表1及び2並びにFig.2a-fに示す。折り畳みサンプル中の再生されたプロNGFの量は、RP−HPLCにより定量した。この目的のために、各925μLの折り畳みサンプルを所定の時点で採取し、75μLの32%塩酸で処理して折り畳み反応を停止させた。RP-HPLC分析には、Poros 10 R1 HPLCカラム及びBeckman Gold HPLCシステムを、溶媒モジュール125NM、検出器168、オートサンプラー507、及び分析ソフトウェア"Gold V 8.10"と共に用いた。得られた溶出ピークは、"peakfit"プログラム バージョン2.01を用いて当てはめを行った。収率の定量的測定のためには、精製した天然型組換えヒトプロNGFを用いて標準グラフを作成した。組換えヒトプロNGF封入体は非常に純粋であったことから、定量分析のためには、再生サンプルにおいて用いたタンパク質の総量は組換えヒトプロNGFの量と等しいと見なした。示した測定結果は各2つの測定値の平均である。
【0043】
表1
組換えヒトプロNGFの折り畳みに際した最適な温度及び時間の決定。各再生サンプルのタンパク質濃度は50μg/mLであった。折り畳み緩衝液は、以下よりなるものであった。
100mM トリス/塩酸 pH9.5
1M L−アルギニン
5mM GSH
1mM GSSG
5mM EDTA
測定シリーズは数回実施され、指数関数を用いて当てはめを行った。2つの測定値の平均値が示されている
【0044】
【表1】

【0045】
表2
この表は、組換えヒトプロNGFの折り畳みに対する、種々の濃度のGSH/GSSG(GSH=還元型グルタチオン;GSSG=酸化型グルタチオン)の効果を示す。使用した再生緩衝液は以下よりなるものであった。
100 mMトリス/塩酸 pH9.5
1M L−アルギニン
5mM EDTA
折り畳み時間は、10℃にて3時間であった。表において、個々の折り畳みサンプルは、収率が低くなる順に提示されている。2つの測定シリーズの平均収率が示されている。
【0046】
【表2】

【0047】
c) 調製スケールでの組換えヒトプロNGFの再生
折り畳み緩衝液(100mM
トリス/塩酸 pH9.5;1M L−アルギニン;5mM GSH;0.5mM
GSSG;5mM EDTA)で希釈することにより、組換えヒトプロNGFを再生した。折り畳みは、タンパク質濃度50μg/mLで行われた。再生サンプルは、10℃にて3時間インキュベートした。
【0048】
d) イオン交換クロマトグラフィーによる精製
再生された材料を、10Lの50mMリン酸ナトリウム pH7.0;1mM EDTA(IEX緩衝液A)に対して透析し、そして20,000rpmで30分間遠心した。上清をPoros 20 HSカラムに載せ、塩勾配(IEX緩衝液B:50mMリン酸ナトリウムpH7.0、1M塩化ナトリウム、1mM EDTA)を用いて溶出させた。タンパク質は、980mM塩化ナトリウムで溶出された(Fig.3)。非天然型の組換えヒトプロNGFは、変性条件を用いることによってのみカラムから除去できた。
【0049】
実施例4
組換えヒトプロNGFの特徴付け
a) UV分光光度法による濃度及び分子量の測定
精製サンプル中の組換えヒトプロNGFの濃度を定量するために、50mMリン酸ナトリウムpH7.0、1mM EDTAに対して透析したサンプルについて、240から340nmのUVスペクトルをとった(Fig.5;スペクトルは、Beckman DU 640分光光度計を用いて得た)。サンプル中の組換えヒトプロNGF濃度は、280nmの吸収により測定した。評価は理論モル吸光係数25,680L/(mol×cm)(Gill, S. C., et al., Anal. Biochem.
182 (1989) 319に従って計算した)及び単量体当たり24,869Daの分子量(ExPASy プログラム "pI/Mw"により計算し、3個のジスルフィド結合に関して修正した)に基づいて行った。スペクトルを用いて得た値は、Bradford法により決定された濃度に密接に相関した。分子量決定は、電子スプレー・マススペクトル法により行った。組換えプロNGFの理論質量は24,869Daである。実験により得られた値は24,871Daであった。
【0050】
b) SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いた純度分析及び分子量測定
15%ポリアクリルアミドゲルを使用した。各サンプルは、1%(v/v)の2−メルカプトエタノールを含有した。SDSゲル中において、組換えヒトプロNGFは、予測したよりも僅かに高い見かけの分子量を示した。すなわち約30kDa(24.8kDaでなく)(Fig.2)。
【0051】
c) IEX−HPLCによる純度分析
24μg(0.48mg/mLの組換えヒトプロNGFを含有するサンプル50μL)のタンパク質を、50mMリン酸ナトリウムpH7.0;1mM EDTAで平衡化したPoros 20 HSカラム(125×4mm)に載せ、5mL/分の流速で、10分間かけた0から100%B(B=50mMリン酸ナトリウムpH7.0;2M塩化ナトリウム;1mM EDTA)の直線的グラジエントにより溶出した(Fig.6)。280nmの吸光度を検出に用いた(分析ソフトウェアChromeleonバージョン3.14を用いたGyncotek HPLCシステム)。
【0052】
d) RP C4 HPLCを用いた純度分析
3.1μgの組換えヒトプロNGF(0.21mg/mLの組換えヒトプロNGF15μL)を、0.13%TFAで平衡化したPoros 10 R1カラム(100mm×4mm;Perseptive Biosystems)に載せた。タンパク質を、0.8mL/分の流速で、33分間かけた非直線的グラジエント(0〜4分:6%B;4〜9分:6〜30%B;9〜24分:30〜69%B;24〜25分:69〜100%B;25〜30分:100%B)により溶出させた。溶離液Bとして、80%アセトニトリル中の0.1%(v/v)TFAを用いた。220nmにおける吸光度を検出に用いた(分析ソフトウェア"Gold V
8.10"を用いたBeckman "Gold" HPLC システム)。天然型の組換えヒトプロNGFは、保持時間14.28分の位置に、単一ピークとして溶出された(Fig.7)。
【0053】
e) N末端配列の分析
N末端配列分析には、RP HPLCによってほぼ精製された、可溶化した封入体を用いた。N末端配列を、Applied Biosystems 476A タンパク質配列決定装置を用いて決定した。次のアミノ酸配列が得られた。
H2N-Met-Glu-Pro-His-Ser-Glu-Ser-Asn-Val
【0054】
f) 組換えヒトプロNGFの生物学的活性
組換えヒトプロNGFの生理学的活性を、DRGアッセイ(後根神経節アッセイ)を用いて定量した(Levi-Montalcini, R., et al., Cancer Res. 14 (1954) 49; Varon, S., et
al., Meth. in Neurochemistry 3 (9172) 203)。このアッセイにおいては、7〜8日齢のヒヨコ胚の後根神経節から分離した知覚ニューロンの刺激及び生存が、神経突起形成によって測定される。組換えヒトプロNGFサンプルは、培地を用いて0.019ないし20.00ng/mLに調整した。試験サンプル当たり、15,000個のニューロンを用いた。37℃にて48時間のインキュベーションの後、生存細胞の数を測定した。既知濃度の組換えヒトβ−NGFの溶液を、参照サンプルとして用いた。定量的評価は、いわゆるEC50値に基づいて行った。すなわち、ニューロンの半数の生存を促進するNGFの濃度である。組換えヒトプロNGFについては、0.369ng/mLというEC50値が得られた。比較として、組換えヒトβ−NGFについて得られたEC50値は、0.106ng/mLであった。組換えヒトβ−NGFと組換えヒトプロNGFとの分子量の相違を考慮すると、成熟組換えヒトβ−NGFは、生物学的活性の高さが組換えヒトプロNGFの2倍である。
【0055】
実施例5
a) 組換えヒトプロNGFの限定的タンパク質分解による生物学的に活性な成熟組換えヒトβ−NGFの製造
ヒトプロNGFは、そのプロ配列の最後のアミノ酸としてアルギニン残基を含んでいる。従って、この前駆体から、トリプシンのような、適した基質特異性のプロテアーゼを用いた限定的タンパク質分解によって、試験管内(in vitro)で成熟組換えヒトβ−NGFを得ることができる。
【0056】
500μLの精製組換えヒトプロNGFを、50mMトリス/塩酸pH8.0に対して透析した。透析後、UVスペクトルによりタンパク質濃度は0.49mg/mLと測定された。各消化サンプルに、20μgのプロNGFを用いた。タンパク質分解の後、このサンプル3μg(6μLに対応)をSDS
PAGEにより分析した。トリプシン原液として、0.1μg/mL又は0.01μg/mLを、それぞれ用いた。大豆トリプシンインヒビター(STI)の濃度は1mg/mLとした。両タンパク質は、凍結乾燥粉末として提供され(メーカー:それぞれ、Boehringer Mannheim及びSigma)、上記緩衝液に溶解された。
【0057】
トリプシン/組換えヒトプロNGF(rh proNGF)の種々の質量比を、限定的タンパク質分解において用いた(表3を参照)。氷上30分間のインキュベーションの後、各反応を5μgのSTIによって停止させた。対照目的で、プロテアーゼ無添加の組換えヒトプロNGFも氷上でインキュベートし、次いでSTIを加えた。
【0058】
【表3】

【0059】
g) N末端配列決定による切除産物分析
トリプシン:組換えヒトプロNGFの質量比 a)1:40;b)1:100、及びc)1:250の消化サンプルを、N末端配列決定による更に詳細な分析に付した。13kDaのバンドが、数個の種を含んでいた(Fig.8):
N末端1:Met-104・・・・;
N末端2:Val-35・・・・;
N末端3:Ser1・・・・;(成熟組換えヒトβ−NGF)
N末端4:Gly10・・・・;
【0060】
これらのペプチドは、種々のサンプルに種々の量で存在していた。
サンプルa):N末端2:N末端3:N末端4=4:5:2
サンプルb):N末端2:N末端3=1:1; N末端4は痕跡量。
サンプルc)は、RP C3 HPLCによって更に分析された(カラム:Nucleosil 500-5 C3-RPN; 125mm×4mm)。2つのピークが得られた:ピーク1(12.32分):N末端1;ピーク2(14.88分):N末端2及びN末端3の比率2:3。
【0061】
調製スケールで成熟組換えヒトβ−NGFを組換えヒトプロNGFから得るために、1.3mgの組換えヒトプロNGF(50mMトリス/塩酸pH8.0中、濃度0.46mg/mL)に、質量比1:250(トリプシン:組換えヒトプロNGF)のトリプシンを加えた。サンプルを氷上30分間インキュベートした。その後、質量ベースで大豆トリプシンインヒビターの40倍過剰量により、プロテアーゼを不活性化した。切除サンプルを、50mMリン酸ナトリウムpH7.0;1mM EDTAに対して透析し、次いで陽イオン交換カラムにかけた(1.7mL Poros 20 HS; Perseptive Biosystems)。0ないし2M塩化ナトリウムの直線的塩グラジエントで、切除産物が単一ピークとして溶出された。約840mM塩化ナトリウムの塩濃度での溶出物が、対照実験における成熟組換えヒトβ−NGFに対応した。精製された切除産物の収率は17%であった
【0062】
精製された切除産物の生物学的活性を、DRGアッセイにより試験した。それは、成熟組換えヒトβ−NGFの活性に対応していた(表4)。
【0063】
【表4】

【0064】
参考文献
Barnett,
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M. M., Anal. Biochem. 72 (1976) 248
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米国特許第5,235,043号
米国特許第5,593,856号
米国特許第5,606,031号
米国特許第5,683,894号
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国際公開WO 97/47735
Yankner,
B. A. et al., Annu. Rev. Biochem. 51 (1982) 845
【0065】
配列番号1及び2は、pET11a-proNGFの構築のためのオリゴヌクレオチドを示す。
配列番号3は、ヒトプロNGFのcDNAのヌクレオチド配列並びにその翻訳産物のアミノ酸配列を示す。
配列番号4は、翻訳産物のアミノ酸配列を示す。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のプロNGFは、生体内で、β−NGF同様に活性を有する。従って、当該プロNGFは、末梢知覚神経障害(例えば、糖尿病に関連したもの又はAIDS療法において起こりうる副作用としてのものが挙げられる。)や、中枢神経障害(例えば、アルツハイマー病が挙げられる。この場合においては、記憶の喪失は、コリン作動性ニューロンの損失の結果である。)の治療に用い得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分として組換えプロNGFを含有する薬剤であって、該プロNGFが、N末端に完全なプロ配列が連結したβ−NGFであり、かつ、N末端に完全なプロ配列を有する該プロNGFが、生物学的又は生理学的活性を有するものである薬剤。
【請求項2】
生物学的又は生理学的活性が、後根神経節アッセイで測定されるものである、請求項1の薬剤。
【請求項3】
神経障害治療剤である、請求項2の薬剤。
【請求項4】
請求項1の薬剤の製造のための組換えプロNGFの使用。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−280717(P2010−280717A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199387(P2010−199387)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【分割の表示】特願2000−576009(P2000−576009)の分割
【原出願日】平成11年10月11日(1999.10.11)
【出願人】(501139870)シル プロテインズ ゲーエムベーハー (7)
【氏名又は名称原語表記】Scil Proteins GmbH
【住所又は居所原語表記】Heinrich−Damerow−Str. 01, D−06120, Halle, Germany
【Fターム(参考)】