説明

活性エネルギー線硬化型樹脂組成物

【課題】従来のウレタン(メタ)アクリレート組成物、金型からの離型性が悪く、割れや破損が頻発し、歩留まりが低下するという問題があった。また、金型から離型はするものの基材樹脂であるPETとの密着性が低下するという問題があった。硬化性が良好で、金型からの離型性に優れ、耐傷性、剛性、透明性およびPET密着性に優れた硬化物を与える活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供する。
【解決手段】分子内にフルオレン骨格を有する2官能メタ)アクリレート(A)、分子内に芳香環を含有する2官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)、芳香環含有単官能(メタ)アクリレート(C)、および金型離型性付与剤(D)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物;およびその硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、金型からの離型性に優れ、かつPETへの密着性に優れた硬化物を与える活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイに使用されるプリズムシートや、プロジェクションTVに使用されるフレネルレンズ、レンチキュラーレンズといった光学レンズは、熱可塑性樹脂の射出成形、あるいは熱プレス成形により製造されるのが一般的であった。これらの製造方法では、製造時の加熱および冷却に長時間を必要とするため生産性が低く、また、光学レンズの熱収縮により、微細構造の再現性が悪く、反るという問題点があった。これらの問題点を解決するため、金型内面に透明樹脂基材がセットされた型内に紫外線硬化型樹脂組成物を流し込み、紫外線を照射して硬化させる方法が実施されている。
近年、ディスプレイの高精彩化に伴い、光学レンズにも高精彩化が要求されてきており、そのため、プリズム頂角が60〜70°、ピッチが数10μmというような、先端部が鋭く精細なレンズを形成する必要がある。
しかしながら、該レンズは傷等により損傷し易いことから、その防止が検討されており、ビスフェノール骨格等の剛直な構造を導入する方法(例えば特許文献1参照)、フッ素化合物等の添加で表面に滑性を付与して傷付きにくくする方法(例えば特許文献2参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−240926号公報
【特許文献2】特開2005−272700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの方法では、金型からの離型性が悪く、割れや破損が頻発し、歩留まりが低下するという問題があった。また、金型から離型はするものの基材樹脂であるPETとの密着性が低下するという問題があった。
本発明の目的は、金型からの離型性とPET密着性という両立が困難な2つの性能を兼備した上で、硬化性、耐傷性、剛性、透明性の一般特性も満足する硬化物を与える活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、分子内にフルオレン骨格を有する2官能(メタ)アクリレート(A)、分子内に芳香環を含有する2官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)、芳香環含有単官能(メタ)アクリレート(C)、および金型離型性付与剤(D)を含有し、かつ該金型離型性付与剤(D)がリン酸エステル(D1)と3級アミン(D2)との混合物からなることを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物;およびその硬化物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、下記の効果を奏する。
(1)硬化性に優れ、得られる硬化物は金型からの離型性に優れる。
(2)該硬化物は、基材との密着性に優れ、耐擦傷性、および剛性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明を詳述する。
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、分子内にフルオレン骨格を有する2官能(メタ)アクリレート(A)、分子内に芳香環を含有する2官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)、芳香環含有単官能(メタ)アクリレート(C)、およびリン酸エステル(D1)と3級アミン(D2)との混合物からなる金型離型性付与剤(D)を必須成分とする。
【0008】
本発明における第1成分のフルオレン骨格含有2官能(メタ)アクリレート(A)は、分子内に、フルオレン骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2つ含有していれば、特にその化学構造は限定されない。
好ましい構造としては下記一般式(1)で表されるモノマーである。
【0009】
【化1】

【0010】
式中、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子またはCHである。好ましくはRとRが共に水素原子である。
また、RおよびRは、独立してO(CH、OCH(CH)CH、OCH(CHCH)CH、O(CHまたはO(CHで表される。特に好ましくは、RとRが共にO(CHである。
【0011】
本発明における(A)の含有量は、(A)、(B)および(C)の合計重量に基づいて、通常10〜60%、好ましくは15〜50%である。(A)の含有量が10%未満であると、屈折率が低くなってしまい、樹脂硬化物本来の性能を発揮することができない。また60%を超えると、樹脂自体非常に硬くなり、金型から離型した際割れが発生する可能性がある。
【0012】
本発明における第2成分の分子内に芳香環を含有する2官能のウレタン(メタ)アクリレート(B)は、分子内に1個以上の芳香環と2個の(メタ)アクリロイル基を含有するウレタン化合物であれば特に限定されないが、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(B’)と水酸基含有(メタ)アクリレート(c)とのウレタン化反応から形成される芳香環含有ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
【0013】
そして、このイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(B’)は、ポリオール(a)とポリイソシアネート(b)を反応させることにより得られ、(a)と(b)の反応におけるOH/NCO当量比が、通常0.45〜0.90、好ましくは0.50〜0.85である。
【0014】
このウレタンプレポリマー(B’)の原料となるポリオール(a)には、芳香環を含有する多価ポリオール(a1)と芳香環を含有しない多価ポリオール(a2)、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
芳香環を含有する多価アルコール(a1)には下記の2価のポリオール(a11)と3価以上のポリオール(a12)が挙げられる。
【0015】
(a11)芳香環を有する2価アルコール(C8〜20またはそれ以上。なお、以下、炭素数をCと略称する。);芳香脂肪族2価アルコール[例えば、キシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等]、C6〜18の2価フェノール[単環2価フェノール(例えばハイドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ウルシオール等)、多環2価フェノール{例えばビスフェノール(ビスフェノールA、F、C、B、ADおよびS、ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン等)}、および縮合多環2価フェノール{ジヒドロキシナフタレン(例えば1,5−ジヒドロキシナフタレン)、ビナフトール等}]、ポリエーテルジオール[上記2価アルコールまたは上記2価フェノールのアルキレンオキシド(以下、AOと略称する。)付加物(数平均分子量(以下Mnと略称する)が150〜20,000)、ポリエステルジオール[(Mn200〜20,000)、例えば上記2価アルコールまたは上記ポリエーテルジオールとジカルボン酸{脂肪族ジカルボン酸(C4〜C30、例えばコハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸)、芳香(脂肪)族ジカルボン酸(C8〜30、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸無水物、キシリレンジカルボン酸)}からなる縮合物]、ポリカーボネート(Mn500〜10,000)、並びにポリエステルジオール、ポリカーボネートのAO1〜300モル付加物等が含まれる。
【0016】
芳香環を有する3価〜8価またはそれ以上の多価アルコール(a12)としては、3価〜8価またはそれ以上の多価フェノール、例えば単環多価フェノール(ピロガロール、フロログルシノール等)、および1価もしくは2価フェノール(フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール等)のアルデヒドもしくはケトン(ホルムアルデヒド、グルタールアルデヒド、グリオキザール、アセトン等)低縮合物(例えばフェノールもしくはクレゾールノボラック樹脂、レゾールの中間体、フェノールとグリオキザールもしくはグルタールアルデヒドの縮合反応によって得られるポリフェノール、およびレゾルシンとアセトンの縮合反応によって得られるポリフェノール)、ポリエーテルポリオール[上記3価〜8価またはそれ以上の多価フェノールのAO付加物(Mn200〜20,000)、等]、ポリエステルポリオール[(Mn370〜20,000)、例えば上記ポリエーテルポリオールとジカルボン酸{脂肪族ジカルボン酸(C4〜C30、例えばコハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸)、芳香(脂肪)族ジカルボン酸(C8〜30、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸無水物、キシリレンジカルボン酸)}からなる縮合物]、並びにこれらのポリエステルポリオールのAO1〜300モル付加物等が含まれる。
【0017】
芳香環を含有しない多価ポリオール(a2)には下記の芳香環を含有しない2価のポリオール(a21)と、芳香環を含有しない3価以上のポリオール(a22)が挙げられる。
【0018】
芳香環を含有しない2価アルコール(a21)(C2〜20またはそれ以上);C2〜12の脂肪族2価アルコール〔例えば、(ジ)アルキレングリコール[エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−、2,3−、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールおよび3−メチルペンタンジオール(以下それぞれEG、DEG、PG、DPG、BD、HD、NPGおよびMPDと略記)、ドデカンジオール等]等〕、C6〜10の脂環式骨格を有する2価アルコール[1,3−および1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等]、ポリエーテルジオール[上記2価アルコールのAO付加物(Mn150〜20,000)、ポリテトラメチレングリコール(以下、PTMGと略記)(Mn400〜10,000)等]、ポリエステルジオール{Mn200〜20,000、例えば上記2価アルコールまたは上記ポリエーテルジオールとジカルボン酸〔脂肪族ジカルボン酸[C4〜C30、例えばコハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸]等が含まれる。
【0019】
芳香環を含有しない3価〜8価またはそれ以上の多価アルコール(a22)(C3〜20またはそれ以上)、例えば(シクロ)アルカンポリオールおよびそれらの分子内もしくは分子間脱水物[グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールおよびジペンタエリスリトール(以下それぞれGR、TMP、PE、SOおよびDPEと略記)、1,2,6−ヘキサントリオール、エリスリトール、シクロヘキサントリオール、マンニトール、キシリトール、ソルビタン、ジグリセリンその他のポリグリセリン等]、糖類およびその誘導体[ショ糖、グルコース、フラクトース、マンノース、ラクトース、グルコシド(メチルグルコシド等)等]、ポリエーテルポリオール[上記多価アルコールのAO付加物(Mn150〜20,000)、ポリテトラメチレングリコール(以下、PTMGと略記)(Mn400〜10,000)等]、ポリエステルポリオール[(Mn300〜20,000)、例えば上記多価アルコールまたは上記ポリエーテルポリオールと脂肪族ジカルボン酸(C4〜C30、例えばコハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸)の縮合物]、Mn200〜10,000のポリカプロラクトン、ポリイソプレンポリオールおよび水添ポリイソプレンポリオール、並びにこれらのポリエステルポリオール、ポリカプロラクトン、ポリイソプレンポリオールおよび水添ポリイソプレンポリオールのAO1〜300モル付加物等が含まれる。
【0020】
上記のウレタンプレポリマー(B’)の原料となるポリオール(a)のうち、後述する本発明の硬化物の高屈折率の観点から好ましいのは(a11)と(a12)である。
【0021】
本発明におけるウレタンプレポリマー(B’)でポリオール(a)と反応させる相手のポリイソシアネート(b)には、下記の(b1)〜(b5) 、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
【0022】
(b1):C6〜20(但しNCO基中の炭素原子の数を除く。以下同じ。)の芳香族ポリイソシアネートジイソシアネート(以下、ジイソシアネートをDIと略記する。)
1,3−および/または1,4−フェニレンDI、2,4−および/または2,6−トリレンDI(TDI)、4,4’−および/または2,4’−ジフェニルメタンDI(MDI)、m−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンDI、およびm−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート;および3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えば粗製TDI、粗製MDI(ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート)および4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート
【0023】
(b2):C2〜18の脂肪族ポリイソシアネート
DI、例えばエチレンDI、テトラメチレンDI、ヘキサメチレンDI(HDI)、ヘプタメチレンDI、オクタメチレンDI、ノナメチレンDI、デカメチレンDI、ドデカメチレンDI、2,2,4−および/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンDI、リジンDI、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、2,6−ジイソシアナトエチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネートおよびトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI);および3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えば1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネートおよびリジンエステルトリイソシアネート(リジンとアルカノールアミンの反応生成物のホスゲン化物、例えば2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート、2−および/または3−イソシアナトプロピル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート)
【0024】
(b3):C4〜45の脂環式ポリイソシアネート
DI、例えばイソホロンDI(IPDI)、2,4−および/または2,6−メチルシクロヘキサンDI(水添TDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−DI(水添MDI)、シクロヘキシレンDI、メチルシクロヘキシレンDI、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレートおよび2,5−および/または2,6−ノルボルナンDI、ダイマー酸DI(DDI);および3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えばビシクロヘプタントリイソシアネート
【0025】
(b4):C8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネート
m−および/またはp−キシリレンDI(XDI)、ジエチルベンゼンDIおよびα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンDI(TMXDI)
(b5):上記(b1)〜(b4)のヌレート化物
【0026】
これらのポリイソシアネート(b)のうち後述する本発明の硬化物の高屈折率の観点から好ましいのは(b1)、(b4)および(b5)である。
【0027】
ポリオール(a)とポリイソシアネート(b)の反応におけるOH/NCO当量比は0.45〜0.80、好ましくは0.50〜0.75、さらに好ましくは0.55〜0.70である。該当量比が0.45未満では硬化時の収縮率が大きくなり後述する基材との密着性が悪くなり、0.80を超えると高屈折率の硬化物が得られない。
【0028】
上記(a)と(b)の反応で得られたイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(B’)に、さらに水酸基含有(メタ)アクリレート(c)を反応させて、本発明の必須成分の芳香環を有する2官能のウレタン(メタ)アクリレート(B)を得ることができる。
【0029】
この水酸基含有(メタ)アクリレート(c)としては下記の(c1)〜(c6)、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
(c1):(メタ)アクリル酸のAO付加物〔Mn116〜5,000〕
(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、−2−ヒドロキシプロピル、−2−ヒドロキシブチルおよびこれらのAO付加物(Mn160〜5,000)等
【0030】
(c2):(a11)のε−カプロラクトン付加物(Mn230〜5,000)
(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル−ε−カプロラクトン2モル付加物等
(c3):ジオール(Mn300〜5,000)のモノ(メタ)アクリレート
ジオール[Mn300〜5,000で後述の(a16)を構成するポリオール以外のもの、例えばポリカーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール]のモノ(メタ)アクリレート
【0031】
(c4):エポキシドとヒドロキシ(メタ)アクリル酸の反応生成物
3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ビフェノキシ−2−ヒドロキシプロプル(メタ)アクリレート等
【0032】
(c5):(メタ)アクリル酸と3官能以上のポリオール(Mn92〜5,000)の反応生成物およびそのAO1〜100モル付加物
グリセリンモノ−およびジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ−およびジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ−、ジ−およびトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンモノ−、ジ−およびトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ−、ジ−、トリ−、テトラ−およびペンタ(メタ)アクリレートおよびそれらのAO付加物(付加モル数1〜100)等
【0033】
(c6):(メタ)アクリル酸とブタジエンポリオール、イソプレンポリオール、水添ブタジエンポリオールおよび水添イソプレンポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオール(Mn300〜5,000)との反応生成物
【0034】
これらの水酸基含有(メタ)アクリレート(c)のうち、前述のポリイソシアネート成分(b)との反応性の観点から好ましいのは(c2)および(c3)であり、さらに好ましいのは(a1)である。
【0035】
(B)中の芳香環の含量(重量%)は、硬化物の高屈折率化および耐光性の観点から通常35〜50%、好ましくは38〜45%である。
芳香環含量が35%未満では硬化物の屈折率を高めることが困難となり、50%を超えると硬化物の耐光性が悪くなる。
【0036】
ここにおいて、芳香環とはベンゼン環またはその縮合環(ナフタレン環、フェナントレン環等)を構成する炭素のみを意味するものとする。芳香環は、(a)に由来するものでも、また(b)に由来するものでもよい。芳香環含量は、Hおよび13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)またはIR(赤外線吸収スペクトル)分析により測定することができる。
例えば、H−NMRで、芳香環含量を求める場合には、内部標準物質を添加し、内部標準物質由来の1Hのピークの積分値と、(B)中のフェニル基由来の1Hのピーク(7ppm〜8ppm付近)の積分値の比率から(B)中のフェニル基のモル数が求められ、分子量を乗じるとフェニル基含量を求めることができる。
【0037】
本発明における(B)中のベンゼン環は、ポリオール(a)、ポリイソシアネート(b)または水酸基含有(メタ)アクリレート(c)のどの部分に入っていてもよい。
例えば、(a11)芳香環を有する2価アルコールや、(b1)C6〜20の芳香族ジイソシアネート等が好ましい。
【0038】
(B)の製造においては、ウレタン化触媒を用いてもよい。ウレタン化触媒には、金属化合物(有機ビスマス化合物、有機スズ化合物、有機チタン化合物等)および4級アンモニウム塩が含まれる。
【0039】
ウレタン化触媒の使用量は、(B)の重量に基づいて通常1%以下、反応性、透明性の観点から好ましくは0.001〜0.5%、さらに好ましくは、0.05〜0.2%である。
【0040】
(a)と(b)のウレタン化反応の条件は、特に限定されず、例えば、(a)と(b)を混合し、通常40〜100℃、反応性および該混合物の安定性の観点から好ましくは60〜95℃で、2〜20時間反応させて(B)を製造することができる。また、必要により溶剤(酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン等)で希釈して反応させてもよい。
【0041】
溶剤の使用量は、(a)と(b)の合計重量に基づいて通常5,000%以下、下限は混合物の取り扱い性の観点から、上限は反応速度の観点から、好ましくは10〜1,000%である。
【0042】
ウレタン化反応は、常圧、減圧または加圧のいずれでも行うことができる。ウレタン化反応の進行状況は、例えば反応系のNCO%および水酸基価を測定することにより判断することができる。
【0043】
本発明における(B)の含有量は、(A)、(B)および(C)の合計重量に基づいて、通常10〜50%、好ましくは15〜45%である。(B)の含有量が10%未満であると、樹脂自体非常にもろくなってしまい、強度が悪化することがある。また50%を超えると、基材との密着性が悪化し、簡単に剥がれてしまうことがある。
【0044】
本発明における第3の必須成分である芳香環を有する単官能(メタ)アクリレート(C)は、分子内に、芳香環を有していれば、特にその化学構造は限定されない。
好ましい構造としては下記一般式(2)で表されるモノマーである。
【0045】
【化2】

【0046】
式中、Rは水素原子またはCHで表され、好ましくは水素原子である。
Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、COOHまたはCOOCHCHOHで表され好ましくは水素原子である。
Yは芳香環で表される。
Zは炭素数1〜20のアルキレン基、ポリオキシアルキレン基[(CHCHO)(nは2〜20)、[CHCH(CH)O](nは2〜20)、[CHCH(OH)CH]]または[CHC(CHCHOCO]で表され、特に好ましくはCHCHOである。
【0047】
本発明における芳香環を有する単官能(メタ)アクリレート(C)について以下具体例を示す。下記化合物を単独で用いても、その混合物でもよい
【0048】
(C1):フェノール(C6〜30)のAO1〜30モル付加物の(メタ)アクリレート
例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノールのEO2モル付加物の(メタ)アクリレート、フェノールのPO3モル付加物の(メタ)アクリレート等。
【0049】
(C2):[アルキル(C1〜20)]フェノール(C6〜30)のAO1〜30モル付加物の(メタ)アクリレート
例えば、ノニルフェノールのEO1モル付加物の(メタ)アクリレート等。
【0050】
(C3):芳香族カルボン酸変性(メタ)アクリレート
例えば、フタル酸モノキドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピルフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステル等。
【0051】
(C4):芳香族エポキシアクリレート
例えば、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等。
【0052】
(C5):その他の芳香環含有単官能(メタ)アクリレート
例えば、ベンジル(メタ)アクリレート等。
【0053】
上記(C1)〜(C5)のうち、樹脂への密着性および硬化物の屈折率の観点から好ましいのは、ベンジル(メタ)アクリレート、さらに好ましいのはフェノキシエチル(メタ)アクリレートである。
(C1)〜(C5)のうち、活性水素原子を有するものはウレタン化反応終了後に加え、活性水素原子を有しないものはウレタン化反応時および/または反応終了後のいずれの段階で加えてもよい。
【0054】
本発明における(A)、(B)および(C)の合計重量に基づいて、芳香環含有単官能(メタ)アクリレート(C)の含有量は通常30%〜70%、好ましくは40%〜65%、より好ましくは50%〜60%である。
(C)の含有量が30%未満であると、基材との密着性が悪化し、簡単に剥がれてしまうことがある。また65%を超えると、樹脂自体非常にもろくなってしまい、強度が悪化することがある。
【0055】
本発明における第4の必須成分である金型離型性付与剤(D)は、通常、リン酸エステル(D1)と3級アミン(D2)からなる混合物である。
【0056】
この金型離型性付与剤(D)を構成するリン酸エステル(D1)としては、1級もしくは2級のアルキル(C1〜20またはそれ以上)のリン酸エステル、または1級もしくは2級のアルコール(C1〜20またはそれ以上)のAO1〜30モル付加物のリン酸エステルが挙げられる。
【0057】
この金型離型性付与剤(D)を構成する3級アミン(D2)としては、C4〜30の3級脂肪族アミン、1級もしくは2級の脂肪族(C4〜30)アミンのAO(C2〜4)1〜30モル付加物等が挙げられる。
脂肪族アミンとしては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ラウリルジメチルアミンおよびジメチルステアリルアミン等が挙げられる。
【0058】
脂肪族(C4〜30)アミンのAO(C2〜4)1〜30モル付加物としては、ブチルアミンのEO4モル付加物、ブチルアミンの10EOモル付加物、ラウリルアミンのEO10モル付加物、ステアリルアミンのEO10モル付加物、ステアリルアミンのEO15モル付加物、ジエチルアミンのEO4モル付加物、ジエチルアミンのEO10モル付加物、ジブチルアミンのEO4モル付加物、ジブチルアミンのEO10モル付加物、ラウリルメチルアミンのEO10モル付加物、メチルステアリルアミンのEO15モル付加物等が挙げられる。
【0059】
なお、従来から金型離型性付与剤としては、例えばパーフルオロアルキルEO1〜50モル付加物、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベタイン等のフッ素系界面活性剤、またポリエーテル変性シリコーンオイルおよび(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル等のシリコーン系界面活性剤が知られているが、これらを本発明の金型離型性付与剤(D)として適用すると、金型からの離型性には優れるものの、基材樹脂であるPETとの密着性を確保することができないという問題がある。
【0060】
本発明における(A)、(B)および(C)の合計重量に基づいて、金型離型性付与剤(D)の含有量は、通常300ppm〜2,000ppm、好ましくは500ppm〜1,500ppm、より好ましくは700ppm〜1,200ppmである。
(D)の含有量が300ppm未満であると、金型からの離型性が極めて悪化し、樹脂が金型から剥がれず張り付いてしまうことがある。また2,000ppmを超えるとブリードアウトしてきて、基材との密着性が悪化することがある。
【0061】
金型離型性付与剤(D)における(D1)/(D2)の重量比率は通常0.75〜1.75であり、好ましくは、0.85〜1.50であり、特に好ましくは1.00〜1.30である。
0.75未満であると、組成物の貯蔵安定性が悪くなる傾向があり、1.75を超えると、金型離型性が悪くなる傾向がある。
【0062】
本発明の組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により、光重合開始剤(E)を含有させることができる。光重合開始剤を加えたものは、電子線以外に熱および/または紫外線でも硬化させることができる。紫外線により硬化する場合の紫外線の照射量は、通常10〜10,000mJ/cm2である。
【0063】
光重合開始剤(E)としては、ヒドロキシベンゾイル化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート化合物(メチルベンゾイルホルメート等)、チオキサントン化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン(ベンゾフェノン等)、リン酸エステル化合物(1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等)、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。これらのうち硬化物の着色防止の観点から好ましいのは2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドである。
【0064】
(E)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、それぞれ通常20%以下、好ましくは0.1〜10%である。さらに好ましくは1〜5%である。
【0065】
本発明の組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要によりさらに塗料、インキに使用される種々の添加剤(F)を含有させてもよい。
(F)には、酸化防止剤(F1)および紫外線吸収剤(F2)が含まれる。
(F)の合計の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常60%以下、好ましくは0.005〜50%である。
【0066】
酸化防止剤(F1)としては、ヒンダードフェノール化合物〔トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル〕およびアミン化合物(n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミノメチルメタクリレート等)が挙げられる。
(F1)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常3%以下、好ましくは0.005〜2%である。
【0067】
紫外線吸収剤(F2)としては、ベンゾトリアゾール化合物[2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等]、トリアジン化合物〔2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール〕、ベンゾフェノン(2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン等)、シュウ酸アニリド化合物(2−エトキシ−2’−エチルオキサリック酸ビスアニリド等)が挙げられる。
(F2)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常3%以下、好ましくは0.005〜2%である。
【0068】
上記(F1)と(F2)の間で添加剤が同一で重複する場合は、それぞれの添加剤が該当する添加効果を奏する量を他の添加剤としての効果に関わりなく使用するのではなく、他の添加剤としての効果も同時に得られることをも考慮し、使用目的に応じて使用量を調整するものとする。
【0069】
本発明の組成物は、塗工の際に、塗工に適した粘度に調整するために、必要に応じて溶剤で希釈した塗料とすることができる。
溶剤の使用量は、該組成物の重量に基づいて通常2,000%以下、好ましくは10〜500%である。また、塗料の粘度は、使用時の温度(通常5〜60℃)で、通常5〜500,000mPa・s、安定塗工の観点から好ましくは50〜10,000mPa・sである。
【0070】
溶剤としては、本発明の組成物中の樹脂分を溶解するものであれば特に限定されない。具体的には、芳香族炭化水素(C7〜10、例えばトルエン、キシレンおよびエチルベンゼン)、エステルまたはエーテルエステル(C4〜10、例えば酢酸エチル、酢酸ブチルおよびメトキシブチルアセテート)、エーテル(C4〜10、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、EGのモノエチルエーテル、EGのモノブチルエーテル、PGのモノメチルエーテルおよびEEGのモノエチルエーテル)、ケトン(C3〜10、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトンおよびシクロヘキサノン)、アルコール(C1〜10、例えばメタノール、エタノール、n−およびi−プロパノール、n−、i−、sec−およびt−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコールおよびベンジルアルコール)、アミド(C3〜6、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、スルホキシド(C2〜4、例えばジメチルスルホキシド)、水、およびこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。
これらの溶剤のうち好ましいのは沸点が70〜100℃のエステル、ケトンおよびアルコール、さらに好ましいのは酢酸エチル、メチルエチルケトン、i−プロパノールおよびこれらの混合物である。
【0071】
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要により溶剤で希釈して、基材の少なくとも片面の少なくとも一部に塗布し、必要により乾燥させた後、後述する活性エネルギー線を照射して硬化させることにより、基材の表面および/または裏面の少なくとも一部に硬化物を有する被覆物を得ることができる。
塗工に際しては、通常用いられる装置、例えば塗工機[バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター(サイズプレスロールコーター、ゲートロールコーター等)、エアナイフコーター、スピンコーター、ブレードコーター等]が使用できる。塗工膜厚は、硬化乾燥後の膜厚として、通常0.5〜300μm、乾燥性、硬化性の観点から好ましい上限は250μm、耐擦傷性、耐溶剤性、耐汚染性の観点から好ましい下限は1μmである。
【0072】
本発明の組成物を溶剤で希釈して使用する場合は、塗工後に乾燥するのが好ましい。
乾燥方法としては、例えば熱風乾燥(ドライヤー等)が挙げられる。乾燥温度は、通常10〜200℃、塗膜の平滑性および外観の観点から好ましい上限は150℃、乾燥速度の観点から好ましい下限は30℃である。乾燥時間は通常10分以下、硬化膜の物性および生産性の観点から好ましくは1〜5分である。
【0073】
本発明における活性エネルギー線には、紫外線、電子線、X線、赤外線および可視光線が含まれる。これらの活性エネルギー線のうち硬化性と樹脂劣化の観点から好ましいのは紫外線と電子線である。
【0074】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を紫外線照射で硬化させる場合は、種々の紫外線照射装置〔例えば型番「VPS/I600」、フュージョンUVシステムズ(株)製〕、光源としてはキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等を使用することができる。紫外線の照射量は、通常10〜10,000mJ/cm2、組成物の硬化性および硬化物(硬化膜)の可撓性の観点から好ましくは100〜5,000mJ/cm2である。
【0075】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を電子線照射で硬化させるに際しては、種々の電子線照射装置[例えばエレクトロンビーム、岩崎電気(株)製]を使用することができる。電子線の照射量は、通常0.5〜20Mrad、組成物の硬化性の観点から好ましい下限は1Mrad、硬化物の可撓性、並びに硬化物(コーティング膜)または基材の損傷を避けるとの観点から、好ましい上限は15Mradである。
【0076】
本発明の組成物は、通常、活性エネルギー線(紫外線、電子線、X線等)により硬化させるが、必要により熱硬化触媒を含有させた場合は熱で硬化させることができる。
【0077】
本発明の硬化物の屈折率は、光学部材への適用および硬化時の収縮の観点から通常、1.570〜1.585、好ましくは1.580〜1.585である。
屈折率は、組成物中の(A)の割合を高くするか、硬化物中の芳香族環の含量を増すことにより高めることができる。
【0078】
本発明の組成物は、基材のコーティング剤、接着剤、シーリング材などとして使用することができる。適用される基材としては、特に限定はされないが、例えば紙、プラスチック、ガラスおよび金属が挙げられる。具体的には、紙(例えば薄葉紙、紙間強化紙、チタン紙、ラテックス含浸紙および石膏ボード用原紙)、プラスチック[プラスチックフィルム(塩化ビニル、ポリエステル、ポリプロピレンおよびポリメチルメタクリレート等のフィルム)、プラスチック板(ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネートおよびメチルメタクリレート/スチレン共重合物等の板)等]、ガラス板、銅板、鉄板等が挙げられる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。以下において、特に指定しない限り「部」は「重量部」、「%」は重量「重量%」を示す。
製造例
撹拌機、冷却管および温度計を備えた反応容器に、ビスフェノールAのPO2モル付加物[商品名:ニューポールBP−2P、三洋化成工業(株)製、以下同じ]288.4部、キシリレンジイソシアネート[商品名:タケネート500、(株)製、以下同じ]181部およびウレタン化触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)(2−エチルヘキサン酸50%溶液)(以下同じ)0.2部仕込み、80℃で6時間反応させ、その後2−ヒドロキシエチルアクリレート[商品名:ライトエステルHOA、共栄社化学(株)製、以下同じ]部を加え、80℃で3時間反応させてウレタンアクリレート(B−1)を得た。(NCO含量:0.1%)
【0080】
実施例1〜3、比較例1〜3
表1の配合組成にしたがってディスパーザーで混合撹拌し、実施例1〜3、比較例1〜3の樹脂組成物を得た。実施例、比較例ではいずれも成分を一括配合し、均一混合して組成物を作成した。
なお、表中の配合成分は下記の通りである。
【0081】
【表1】

【0082】
(A−1):9,9’−ビス(4−ヒドロキシエチル)フルオレンEO変性ジアクリレート
(C−1):フェノキシエチルアクリレート
(D−1):トリデカノールのリン酸エステル[モノエステル:ジエステル=1:1(モル比)]
(D−2):ジメチルアルキル(C14〜C18)アミン(商品名:ファーミンDM8680 花王(株)製)
(D’−1):ジメチルシリコーン
(E−1):1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[「イルガキュア184」、
チバスペシャリティケミカルズ(株)製]
(F−1):2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール
【0083】
上記の樹脂組成物について、屈折率、金型離型性、樹脂密着性、および湿熱処理後の樹脂密着性について評価した。結果を表1に示す。
【0084】
(1)屈折率
樹脂組成物を、PETフィルム[商品名:ルミラーS、東レ(株)製]2枚で該組成物が約5μmになるように挟み、紫外線照射装置[商品名:VPS/I600、フュージョンUVシステムズ(株)製、以下同じ]を用いて1000mJ/cmの紫外線を照射して硬化させて被覆物を得た。
この被覆物からPETフィルムを除き、得られた硬化膜の屈折率を25℃の環境下で屈折率計[商品名:アッベ屈折率計4T、(株)アタゴ製]を用いて測定した。
【0085】
(2)金型離型性および樹脂密着性の評価法
樹脂組成物を35℃に温度調整し、予めクロムメッキを表面に施した金型(タテ50cm、ヨコ50cm、金型温度35℃)にディスペンサーを用いて厚さ50〜150μmとなるよう塗工した。次にPETフィルム[商品名:コスモシャインA4300、東洋紡(株)製、厚さ100μm]を、上記金型に塗工した樹脂の上から空気が入らないように加圧積層した。
さらに基材樹脂の上から紫外線照射装置を用いて1000mJ/cmの紫外線を照射して該組成物を硬化させて被覆物を得た。
【0086】
金型からの被覆樹脂の離型性、および硬化被覆樹脂と基材樹脂との密着性を次の方法で評価した。
(2−1)金型離型性(金型からの離型の難易度)
被覆物を、金型からゆっくり引き剥がした際の離型性を下記の観点で評価した。
<もう少し、客観的な判定基準に書き直して下さい。吉田君がやれば○と判定するが、慣れない井上君がやると×と判定するかもしれない。わかりにくければ相談に乗ります。>
○:金型への引っ掛かりが全くなく、硬化物(膜)に割れが発生しない
×:金型に対して1箇所以上の引っ掛かりが発生するか、または硬化物(膜)に割れが発生する
【0087】
(2−2)樹脂密着性(硬化物と基材樹脂との密着性)
23℃、50%RHの環境下で24時間静置した後、被覆物の硬化物(膜)側の面にナイフで1mm幅に切り目を入れて碁盤目(10×10個)を作成し、該碁盤目上にセロハン粘着テープを貼り付け90度剥離を行い、基材からの硬化物(膜)の剥離状態を目視で観察し、評価した。
○:硬化物の面積90%以上が基材に残っている
△:硬化物の面積10〜90%基材に残っている
×:基材に残っている硬化物の面積が10%以下
【0088】
(3)湿熱処理後の樹脂密着性(湿熱処理後の硬化物と基材樹脂との密着性)
恒温恒湿機を用いて60℃、90%RHの条件で被覆物を72時間静置した。その後、23℃、50%RHの環境下で24時間静置した。
上記の(2−2)と同様の操作と判定基準で評価した。
【0089】
表1の結果から、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させてなる硬化物(膜)は金型からの離型性を保持しながら、屈折率が高く、基材樹脂との密着性に優れ、湿熱処理後における基材樹脂との密着性低下が極めて少ないことがわかる。
一方、比較例1では、基材樹脂に対するアンカー効果の強い必須成分の(C)を欠いているため、樹脂密着性が悪化する。比較例2では、金型離型性に必須成分である(D)を欠いているため、金型からの離型性が悪化する。比較例3では、離型剤として本発明の離型剤(D)ではなく樹脂との相溶性の低いシリコーン系の離型剤を用いているため、金型からの離型性には優れるものの、基材樹脂との界面にブリードアウトしやすく、密着性は悪化することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の組成物を硬化させてなる硬化物は、屈折率が高く、樹脂密着性に優れることから、光学部材(プラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー等)、電気・電子部材(フレキシブルプリント配線板用ソルダーレジスト、メッキレジスト 、多層プリント配線板用層間絶縁膜、感光性光導波路等)、紙やプラスチック等のコーティング剤として幅広く用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内にフルオレン骨格を有する2官能(メタ)アクリレート(A)、分子内に芳香環を含有する2官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)、芳香環含有単官能(メタ)アクリレート(C)、および金型離型性付与剤(D)を必須成分として含有し、かつ該金型離型性付与剤(D)がリン酸エステル(D1)と3級アミン(D2)との混合物からなることを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
(A)、(B)および(C)の合計重量に基づいて、該金型離型性付与剤(D)を300ppm〜2000ppm含有する請求項1記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
(A)、(B)および(C)の合計重量に基づいて、該芳香環含有単官能(メタ)アクリレート(C)を30〜70%含有する請求項1または2いずれか記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
該フルオレン骨格含有(メタ)アクリレート(A)が下記式(1)で表されるモノマーである請求項1〜3いずれか記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【化1】

[式中、RおよびRはそれぞれ独立してHまたはCH;RおよびRはそれぞれ独立してO(CH、OCH(CH)CH、OCH(CHCH)CH、O(CHまたはO(CHの2価の基を表す。]
【請求項5】
該ウレタン(メタ)アクリレート(B)が、ポリオール(a)とポリイソシアネート(b)を反応させて得られるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(B’)と、水酸基含有(メタ)アクリレート(c)とのウレタン化反応から形成される芳香環含有ウレタン(メタ)アクリレートである請求項1〜4いずれか記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
該芳香環含有単官能(メタ)アクリレート(C)が、下記式(2)で表される請求項1〜5いずれか記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【化2】

[式中、Rは水素原子またはCHを表す。Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、COOHまたはCOOCHCHOHを表す。Yは芳香環を表す。Zは炭素数1〜20のアルキル基、ポリオキシアルキル基[(CHCHO)(nは2〜20)、[CHCH(CH)O](nは2〜20)、[CHCH(OH)CH]]または[CHC(CHCHOCO]を表す。]
【請求項7】
該金型離型付与剤(D)におけるリン酸エステル(D1)と3級アミン(D2)の重量比率(D1)/(D2)が0.75〜1.75である請求項1〜6いずれか記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、光重合開始剤を含有させてなる請求項1〜7いずれか記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を基材の少なくとも片面の少なくとも一部に塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化させてなり、その屈折率が1.570〜1.585である樹脂硬化物。

【公開番号】特開2010−31240(P2010−31240A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127503(P2009−127503)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】