説明

活性エネルギー線硬化型組成物、活性エネルギー線硬化型インク組成物インク組成物及びインクジェット記録方法

【課題】活性エネルギー線の照射に対して高感度で硬化し、柔軟であり脆性に問題のない硬化物を形成しうる活性エネルギー線硬化型組成物、及び、高感度で硬化し、柔軟であり脆性に問題がなく、被記録媒体との密着性に優れた硬化物を形成でき、且つ吐出安定性に優れたインクジェット用インク組成物として好適なインク組成物の提供。該インク組成物を用いたインクジェット記録方法の提供。
【解決手段】活性エネルギー線の照射により酸を発生する化合物及びカチオン重合性モノマーを少なくとも含有してなり、前記カチオン重合性モノマーとして、分子内に、環内に少なくとも1つの酸素原子を有する1つのビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格(但し、酸素原子を含む3員環及び4員環は、該ビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格を構成する環構造には含まれない。)、及び2つ以上のオキシラン環を有する多官能オキシラン化合物を含有する活性エネルギー線硬化型組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型組成物、それを含む活性エネルギー線硬化型インク組成物インク組成物、及びインクジェット記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。電子写真方式は、感光体ドラム上に帯電及び露光により静電潜像を形成するプロセスを必要とし、システムが複雑となり、結果的に製造コストが高価になるなどの問題がある。また、熱転写方式は、装置は安価であるが、インクリボンを用いるため、ランニングコストが高く、かつ廃材が出るなどの問題がある。その一方、インクジェット方式は、安価な装置で、且つ、必要とされる画像部のみにインクを吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。さらに、インクジェット方式は、騒音が少なく、画像記録方式として優れている。
【0003】
プラスチックなどの非吸水性の被記録媒体への印字適性を有するインクジェットインクとして、紫外線(UV)照射により硬化するUVインクが知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。UVインクは、溶剤系インクに比べて有機溶剤を揮発させるための時間や設備が不要であるなどの利点がある。このようなUVインクを用いた場合の硬化には、モノマー成分のラジカル重合を利用した系が汎用されている。
【0004】
また、近年では、インクジェット用インク等に適用される紫外線硬化型組成物として、カチオン重合性化合物を用いたものが提案されているが、このようなカチオン重合系の硬化型組成物は、特に感度、硬化性が高く、また、低粘度な組成物として設計することも容易ではない。このことは、当該紫外線硬化型組成物を、インクジェット用インクに適用した際に要求される吐出安定性にも問題を来す。このような問題点を解決するべく、ビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格を有するカチオン重合性基を有するモノマーを含む紫外線硬化型硬化型組成物が提案されている(例えば、特許文献4、5、6参照)。しかしながら、これらのインクは、硬化感度と硬化膜特性が未だ十分なものとは言えず、インクジェットインクとして用いた際の吐出安定性の観点で特に改良の余地を残している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−183927号公報
【特許文献2】特開2003−246818号公報
【特許文献3】特開2003−292855号公報
【特許文献4】特開2001−220526号公報
【特許文献5】特開2005−41892号公報
【特許文献6】特開2007−137926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記の状況に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とするものである。
本発明の目的は、活性エネルギー線の照射に対して高感度で硬化し、柔軟であり脆性に問題のない硬化物を形成しうる活性エネルギー線硬化型組成物を提供することである。
また、本発明の目的は、活性エネルギー線の照射に対して高感度で硬化し、柔軟であり脆性に問題がなく、被記録媒体との密着性に優れた硬化物を形成でき、且つ吐出安定性に優れたインクジェット用インク組成物として好適に用いうる活性エネルギー線硬化型インク組成物を提供することである
更に、本発明の目的は、上記活性エネルギー線硬化型インク組成物を用いて、被記録媒体に画像を形成するインクジェット記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
<1> 活性エネルギー線の照射により酸を発生する化合物及びカチオン重合性モノマーを少なくとも含有してなり、前記カチオン重合性モノマーとして、分子内に、環内に少なくとも1つの酸素原子を有する1つのビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格(但し、酸素原子を含む3員環及び4員環は、該ビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格を構成する環構造には含まれない。)と、2つ以上のオキシラン環と、を有する多官能オキシラン化合物を含有する活性エネルギー線硬化型組成物。
【0008】
<2> 前記多官能オキシラン化合物が有する総てのオキシラン環が、前記ビシクロ環骨格又は前記トリシクロ環骨格と環を構成する一つの炭素−炭素結合を共有する<1>に記載の活性エネルギー線硬化硬化型組成物。
<3> 前記多官能オキシラン化合物が有するオキシラン環のうち、少なくとも1つのオキシラン環が、前記ビシクロ環骨格又は前記トリシクロ環骨格と環を構成する一つの炭素−炭素結合を共有しており、且つ、少なくとも1つのオキシラン環が、前記ビシクロ環骨格又は前記トリシクロ環骨格と単結合により連結しているか、或いは連結基により前記ビシクロ環骨格又は前記トリシクロ環骨格との間に1〜6個の原子を介在させた位置に存在している<1>に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
<4> 前記多官能オキシラン化合物が有する総てのオキシラン環が、前記ビシクロ環骨格又は前記トリシクロ環骨格と単結合により連結しているか、或いは連結基により前記ビシクロ環骨格又は前記トリシクロ環骨格との間に1〜6個の原子を介在させた位置に存在している<1>に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【0009】
<5> 前記ビシクロ環ま環骨格又は前記トリシクロ環骨格が、下記構造式(I)で表される部分構造を含む<1>〜<4>のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【0010】
【化1】

【0011】
<6> 前記多官能オキシラン化合物と、ビニルエーテル化合物とを、前記カチオン重合性モノマーの全質量に対して各々10質量%以上含有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【0012】
<7> 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物を含む活性エネルギー線硬化型インク組成物。
<8> インクジェット記録用である前記<7>に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
<9> 被記録媒体上に、<8>に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物をインクジェット記録装置により吐出する工程、及び、吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、該インク組成物を硬化する工程、を含むインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、活性エネルギー線の照射に対して高感度で硬化し、柔軟であり脆性に問題のない硬化物を形成しうる活性エネルギー線硬化型組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、活性エネルギー線の照射に対して高感度で硬化し、柔軟であり脆性に問題がなく、被記録媒体との密着性に優れた硬化物を形成でき、且つ吐出安定性に優れたインクジェット用インク組成物として好適に用いうる活性エネルギー線硬化型インク組成物を提供することができる
更に、本発明によれば、上記活性エネルギー線硬化型インク組成物を用いて、被記録媒体に画像を形成するインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[活性エネルギー線硬化型組成物、活性エネルギー線硬化型インク組成物]
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、活性エネルギー線の照射により酸を発生する化合物及びカチオン重合性モノマーを少なくとも含有してなり、前記カチオン重合性モノマーとして、分子内に、環内に少なくとも1つの酸素原子を有する1つのビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格(但し、酸素原子を含む3員環及び4員環は、該ビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格を構成する環構造には含まれない。)と、2つ以上のオキシラン環と、を有する多官能オキシラン化合物(以下、適宜、「特定重合性化合物」と称する。)を含有する活性エネルギー線硬化型組成物である。本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、放射線の照射により酸を発生する化合物及びカチオン重合性モノマーの他、所望によりその他の任意成分を含有してもよい
【0015】
上記の構成を有する本発明の硬化型組成物は、活性エネルギー線の放射線により高感度で硬化し、高感度で硬化し、柔軟であり脆性に問題のない硬化物を形成することができる。
【0016】
ここで、本発明で言う「活性エネルギー線」とは、その照射により組成物中において開始種を発生させうるエネルギーを付与することができるものであれば、特に制限はなく、広くα線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含するものである。中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点からは、紫外線及び電子線が好ましく、特に、紫外線が好ましい。
【0017】
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を含むインク組成物であり、被記録媒体に該インク組成物を付与後、活性エネルギー線を照射することで、硬化したインク画像が形成される。本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、中でも、インクジェット記録用のインク組成物として好適に用いることができる。
【0018】
以下、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物の各構成要素について、その好適な応用態様である活性エネルギー線硬化型インク組成物とともに、詳細に説明する。なお、以下の説明においては、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物及び活性エネルギー線硬化型インク組成物を、適宜「硬化型組成物」及び「インク組成物」と称する。
【0019】
(カチオン重合性モノマー)
本発明の硬化型組成物及びインク組成物は、カチオン重合性モノマーを含有するもののであり、該カチオン重合性にモノマーとして特定重合性化合物を必須に含有する。以下、本発明におけるカチオン重合性モノマーについて説明する。
【0020】
<特定重合性化合物>
本発明の硬化型組成物及びインク組成物が、カチオン重合性モノマーとして必須に含有する特定重合性化合物は、その分子内に、環内に少なくとも1つの酸素原子を有する1つのビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格と、2つ以上のオキシラン環と、を有する多官能オキシラン化合物である。但し、酸素原子を含む3員環及び4員環は、該多官能オキシラン化合物におけるビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格を構成する環構造には含まれない。
【0021】
先ず、特定重合性化合物がその分子内に1つ有する、環内に少なくとも1つの酸素原子を有するビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格について説明する。
【0022】
本発明において、「ビシクロ環」及び「トリシクロ環」とは、脂肪族環状構造であり、該環状構造を鎖式構造まで開くのに必要な環状構造中の原子間結合の切断数が、3回である場合が「トリシクロ環」、2回である場合が「ビシクロ環」である。そのような環構造からなる分子骨格を、本発明においては「トリシクロ環骨格」及び「ビシクロ環骨格」と称する。
【0023】
但し、酸素原子を含む3員環及び4員環は、前記多官能オキシラン化合物におけるビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格を構成する環構造には含まれない。即ち、本発明におけるビシクロ環及びトリシクロ環を構成する環構造としては、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物が硬化した後においても硬化物中に残存する環構造のみが包含される。従って、酸素原子を含む3員環(オキシラン環)及び4員環(オキセタン環)のごとく、カチオン重合により開環し硬化物中に環構造が残らないものは、本発明におけるビシクロ環又はトリシクロ環を構成する環構造には包含されない。
【0024】
ビシクロ環又はトリシクロ環を形成する原子に関しては、少なくとも1つの酸素原子を有すること以外に特に制限はないが、酸素原子及び炭素原子のみからなる環であること好ましい。これらの環構造を形成する炭素原子及び酸素原子の総数は6〜15であることが好ましく、7〜10であることがより好ましい。
【0025】
ビシクロ環又はトリシクロ環は、任意の置換基を有してもよく、該置換基としては、例えば、アルキル基、アリル基、アリール基、水酸基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、及びハロゲン原子などが挙げられ、これらの中でも、アルキル基又はアルコキシ基が好ましい。
【0026】
また、ビシクロ環又はトリシクロ環が有する置換基同士が連結して、ビシクロ環又はトリシクロ環をその構造内に含む更なる縮合環構造を形成してもよい。そのような縮合環構造としては、例えばテトラシクロ環等が挙げられる。なお、ここで「テトラシクロ環骨格」とは、環状構造を鎖式構造まで開くのに必要な環状構造中の原子間結合の切断数が4回である場合を指す。但し、特定重合性化合物の分子量、及び硬化型組成物により形成された硬化物の脆性の点からは、縮合環構造を有さないビシクロ環及びトリシクロ環であることが好ましい。
【0027】
特定重合性化合物が有するビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格は、本発明の硬化型組成物により形成された硬化物の硬度を向上させる役割を担う。また、ビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格に含まれる酸素原子は、硬化型組成物を固体表面にて硬化させた際において、該固体表面と硬化物との密着性を向上させる効果を発揮する。さらには、ビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格に含まれる酸素原子は、硬化型組成物において揮発性を低減させる効果、及び放射線の照射により酸を発生する化合物などの他の成分の組成物中における溶解性を向上させる効果をも発揮する。このため、本発明の硬化型組成物の好適な態様であるインク組成物を、インクジェット用インク組成物として用いた場合には、吐出安定性の更なる良化効果が発揮される。
【0028】
特定重合性化合物が有するビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格としては、具体的には以下に示す部分構造が挙げられるが、これらに以下に限られうものではない。
【0029】
【化2】

【0030】
特定重合性化合物が有するビシクロ環骨格又はトリシクロ環としては、特に下記構造式(I)で表される部分構造を有することが好ましい。
【0031】
【化3】

【0032】
一般式(I)で表される部分構造は、特定重合性化合物が必須に含むオキシラン環と感を構成する炭素−炭素結合の1つ共有してもよいし、他に性能上の妨げにならない任意の置換基を有していてもよい。導入可能な任意の置換基の好ましい具体例としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基などが挙げられる。これらの任意の置換基は互いに結合してさらなる環構造を構成していてもよい。
【0033】
一般式(I)で表される部分構造は、例えばDiels−Alder反応などにより、安価な化合物から形成できるため、合成の簡便性やコスト面からも有利である。また、酸素原子が環外に張り出した構造であるため、硬化物と被記録媒体等との密着性の観点からも好ましい。
【0034】
次に、特定重合性化合物におけるビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格と、オキシラン環との相対位置関係について述べる。
【0035】
特定重合性化合物におけるビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格とオキシラン環との相対位置関係としては、i)オキシラン環が、ビシクロ環骨格又は前記トリシクロ環骨格と環を構成する一つの炭素−炭素結合を共有している形態、又は、ii)オキシラン環が、前記ビシクロ環骨格又は前記トリシクロ環骨格と単結合により連結しているか、或いは連結基により前記ビシクロ環骨格又は前記トリシクロ環骨格との間に1〜6個の原子を介在させた位置に存在している形態、であることが好ましい。
【0036】
オキシラン環とビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格との、特定重合性化合物中における位置が離れすぎていると、所望の硬化感度及び硬化物の硬度が得られ難い。
【0037】
特定重合性化合物が有する2以上のオキシラン環と、ビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格との相対位置の組み合わせ形態としては、以下に示す形態(A)〜形態(C)が挙げられる。
形態(A): 特定重合性化合物が有する総てのオキシラン環が、ビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格と環を構成する一つの炭素−炭素結合を共有する形態。
【0038】
形態(B): 特定重合性化合物が有するオキシラン環のうち、少なくとも1つのオキシラン環が、ビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格と環を構成する一つの炭素−炭素結合を共有しており、且つ、少なくとも1つのオキシラン環が、ビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格と単結合により連結しているか、或いは連結基によりビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格との間に1〜6個の原子を介在させた位置に存在している形態。
【0039】
形態(C): 特定重合性化合物が有する総てのオキシラン環が、ビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格と単結合により連結しているか、或いは連結基によりビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格との間に1〜6個の原子を介在させた位置に存在している形態。
【0040】
形態(A)〜形態(C)のそれぞれの具体例としては、下記構造式(A)〜(C)で表される形態が挙げられる。
【0041】
【化4】

【0042】
構造式(A)〜(C)中、A環は、酸素原子を含むビシクロ環骨格又はトシクロ環骨格を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表す。
【0043】
Lが2価の連結基を表す場合、Lに連結するオキシラン環は、LによりA環との間に1〜6個の原子を介在させた位置に存在する。ここで、A環とLに連結するオキシラン環との間に介在する原子数は、該オキシラン環とA環とを連結する経路が複数ある場合には、原子数が最も少ない経路を構成する原子数を言う。また、当該原子数には、A環及びオキシラン環を構成する原子は含まない。
【0044】
連結基Lの構造は特に限定されないが、好ましい具体例としては、例えば、アルキレン基(炭素鎖を構成する炭素原子の1以上が、エーテル結合、エステル結合などに置き換わったものも好ましい。)、エチレンオキシ基の繰り返し単位を含む基、アリーレン基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合などが挙げられる。また、連結基Lは、更に置換基を有していてもよく、該置換基が互いに連結して環を形成していてもよい。

【0045】
特定重合性化合物としては、形態(A)〜形態(C)の中でも、構造式(B)又は(C)で表される形態に代表される形態(B)又は形態(C)を有するものが特に好ましい。
【0046】
特定重合性化合物の分子量は、好ましくは100〜800、より好ましくは150〜650、特に好ましくは200〜500である。
【0047】
特定重合性化合物は、常温(25℃)で液体であることが好ましいが、他の重合性化合物に溶解して使用する形態もありうるため、固体であってもよい。
【0048】
以下に、特定重合性化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
【化5】

【0050】
特定重合性化合物の合成方法は化合物によって適宜選択され特にに限定されないが、例えば、ビシクロ環又はトリシクロ環部分をDiels−Alder反応により形成し、オキシラン環を酸化剤による二重結合の酸化あるいは水酸基とエピクロロヒドリンの反応により導入する手法が例として挙げられる。そのような手法を用いた合成スキームの一例として、具体例として前掲した例示化合物1−1の合成スキームを以下に示す。
【0051】
【化6】

【0052】
特定重合性化合物は、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
本発明の硬化型組成物における特定重合性化合物の含有量は、インク組成物に適用する場合も同様に、カチオン重合性モノマーの全質量に対し、10質量%以上50質量%以下であることが硬化性と柔軟性の両立の観点から好ましく、20%以上40質量%以下であることがより好ましい。
【0054】
<その他の重合性化合物>
本発明においては、特定重合性化合物に加え、他のカチオン重合性モノマーを併用することが好ましい。
【0055】
特定重合性化合物と併用しうる他のカチオン重合性モノマーとしては、後述する、活性エネルギーの照射により酸を発生する化合物から発生する酸により重合反応を開始し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、光カチオン重合性化合物として知られる各種公知のカチオン重合性の化合物を使用することができる。他のカチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、同2001−40068号、同2001−55507号、同2001−310938号、同2001−310937号、同2001−220526号などの各公報に記載されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、特定重合性化合物に含まれない他のオキセタン化合物などが挙げられ
【0056】
他のカチオン重合性モノマーとして好ましい化合物は、特定重合性化合物以外のオキシラン化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。
る。
【0057】
本発明の硬化型組成物及びインク組成物においては、特定重合性化合物とビニルエーテル化合物とを併用する態様が、ビニルエーテルはオキセタン化合物やオキシラン化合物に比べて組成物を低粘度にする傾向にあるため、感度や硬化性、インクジェット用に適用した際の吐出安定性の観点から好ましい。
【0058】
本発明の硬化型組成物におけるビニルエーテル化合物の含有量は、インク組成物に適用する場合も同様に、カチオン重合性モノマーの全質量に対し、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
【0059】
また、特定重合性化合物とビニルエーテル化合物との含有量は、カチオン重合性モノマーの全質量に対して各々10質量%以上であることが好ましい。
【0060】
さらに、本発明においては、オキセタン化合物も併用することが好ましく、その場合のオキセタン化合物の含有量は、カチオン重合性モノマーの全質量に対し、30質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
【0061】
(活性エネルギーの照射により酸を発生する化合物)
本発明の硬化型組成物及びインク組成物には、活性エネルギー線(放射線)の照射により酸を発生する化合物(以下、適宜、「重合開始剤」とも称する。)を含有する。
【0062】
重合開始剤としては、光カチオン重合開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている光(400〜200nmの紫外線、遠紫外線、特に好ましくは、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光)、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどの照射により酸を発生する化合物を適宜選択して使用することができる。
【0063】
本発明の硬化型組成物及びインク組成物においては、先に述べたように、紫外線照射が好適なことから、紫外線に感応性を有する重合開始剤を選択することが好ましい。
【0064】
このような光カチオン重合開始剤としては、放射線の照射により分解して酸を発生する、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩などのオニウム塩化合物、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネート等のスルホネート化合物などを挙げることができる。
【0065】
本発明に用いることのできる光カチオン重合開始剤の種類、具体的化合物、及び好ましい例としては、特開2008−13646号公報の段落番号〔0066〕〜〔0122〕に記載の化合物などを挙げることができる。
【0066】
重合開始剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
硬化型組成物中の重合開始剤の含有量は、インク組成物に適用する場合も含めて、固形分換算で、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
【0067】
(増感剤)
本発明の硬化型組成物及びこれを適用したインク組成物には、さらに、重合硬化を促進させる増感剤を添加してもよい。増感剤としては、アントラセン化合物を用いることが好ましい。該アントラセン化合物は置換基を有していてもよい。
【0068】
アントラセン化合物が置換基を有する場合、該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、などが挙げられ、中でも特に、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。また、アントラセンの置換基の個数は、1〜4個であることが好ましく、1〜2個であることがより好ましい。特に、1置換の場合の置換基の位置としては9位であることが好ましく、2置換の場合の置換基の位置としては9,10位であることが好ましい。増感剤としては、この中でも特に、2置換の場合の9,10位である、9,10−置換アントラセン化合物であることが好ましい。
【0069】
以上のアントラセン化合物の含有量は、重合開始剤の全質量に対して35〜100質量%であることが好ましく、40〜80質量%であることがより好ましく、44〜70質量%であることがさらに好ましい。また、既述の重合開始剤の好ましい含有量と、上記アントラセン化合物の好ましい含有量は同時にその範囲内とすることが好ましい。
【0070】
本発明おいては、アントラセン化合物以外の他の増感剤を添加してもよい。他の増感剤は、アントラセン化合物と併用することも単独で用いることも可能である。アントラセン化合物以外の増感剤としては、以下に列挙する化合物類に属しており、且つ350nm〜450nmの波長領域に吸収波長を有するものが挙げられる。
【0071】
他の増感剤としては、例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、等)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル、等)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン、等)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン、等)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー、等)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン、等)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン、等)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム、等)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、等)、等が挙げられる。
【0072】
本発明の硬化型組成物及びインク組成物における増感剤の含有量は、硬化型組成物の着色を抑制するの観点から、硬化型組成物の全質量に対し、0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましく、0.5〜10質量%が更に好ましい。
【0073】
硬化型組成物の着色は、これをインク組成物に用いた場合には、重要な問題となるために、この硬化型組成物をインク組成物に使用する場合も、増感剤は上記範囲とすることが好ましい。
【0074】
増感剤は、一種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、増感剤(c)と重合開始剤(a)との硬化型組成物における含有比(a/c)としては、重合開始剤の分解率向上と照射した光の透過性の観点から、質量比で、a/c=100〜0.5が好ましく、a/c=50〜1がより好ましく、a/c=10〜1.5が更に好ましい。
【0075】
本発明の硬化型組成物及びインク組成物には、更に、共増感剤として、感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を加えてもよい。
【0076】
共増感剤の例としては、アミン類、例えば、M.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0077】
共増感剤の別の例としては、チオール及びスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
【0078】
また、共増感剤の別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特願平6−191605号記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、硬化型組成物やインク組成物の総量(全質量)に対して、0.01〜10質量%程度である。
【0079】
(界面活性剤)
本発明の硬化型組成物及びインク組成物には、公知の界面活性剤を含有させることが好ましい。公知の界面活性剤としては、例えば、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。具体的には、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。
【0080】
なお、公知の界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
【0081】
(着色剤)
本発明の硬化型組成物には、目的に応じて着色剤を含有することができる。また、本発明のインク組成物においては、着色剤を添加することで、可視画像を形成しうるインク組成物とすることができる。以下、本発明の硬化型組成物の好適な応用態様であるインク組成物の場合を例に、着色剤について説明する。
【0082】
着色剤としては、特に制限はなく、用途に応じて公知の種々の色材、(顔料、染料)を適宜選択して用いることができる。例えば、インク組成物により耐候性に優れた画像を形成する場合には、顔料が好ましい。また、染料としては、水溶性染料及び油溶性染料のいずれも使用できるが、油溶性染料が好ましい。
【0083】
<1.顔料>
着色剤として好ましく使用される顔料について述べる。着色剤として顔料を用いた場合、インク組成物を使用して形成された着色画像は耐光性に優れたものとなる。
【0084】
顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料及び無機顔料、または顔料を、分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、或いは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等を用いることができる。また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。
【0085】
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
【0086】
本発明において使用できる有機顔料及び無機顔料の具体例としては、特開2008−13646号公報の段落番号〔0126〕〜〔0131〕に記載の化合物などを挙げることができ、これらを本発明にも適用することができる。
【0087】
顔料の分散には、例えばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル等の分散装置を用いることができる。
【0088】
顔料の分散を行う際には、分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリアクリレート、脂肪族多価カルボン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、顔料誘導体等を挙げることができる。また、ルーブリゾール社のSolsperseシリーズなどの市販の高分子分散剤を用いることも好ましい。
また、分散助剤としては、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。
これらの分散剤及び分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。
【0089】
インク組成物において、顔料などの諸成分の分散媒としては、溶剤を添加してもよく、また、無溶媒で、低分子量成分である前記重合性化合物を分散媒として用いてもよいが、本発明のインク組成物は、活性エネルギー線硬化型のインクであり、インクを被記録媒体上に適用後、硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク画像中に、溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じたりするためである。このような観点から、分散媒としては、重合性化合物を用い、中でも、最も粘度が低いカチオン重合性モノマーを選択することが分散適性やインク組成物のハンドリング性向上の観点から好ましい。
【0090】
顔料粒子の体積平均粒径は、0.02μm〜0.60μmであることが好ましく、より好ましくは0.02μm〜0.10μmである。また、最大粒径は3μm以下が好ましく、さらに好ましくは1μm以下であり、そのような範囲となるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性及び硬化感度を維持することができる。
【0091】
<2.染料>
次に、着色剤として好ましく使用される染料について述べる。
染料としては、従来公知の化合物(染料)から適宜選択して使用することができる。具体的には、特開2002−114930号公報の段落番号〔0023〕〜〔0089〕、特開2008−13646号公報の段落番号〔0136〕〜〔0140〕に記載の化合物などを挙げることができ、これらを本発明にも適用することができる。
【0092】
着色剤はインク組成物中、インク組成物の全質量に対して0.05〜20質量%添加されることが好ましく、0.2〜10質量%がより好ましい。着色剤として油溶性染料を用いた場合には、インク組成物の全質量(溶媒を含む)に対して、0.2〜6質量%が特に好ましい。
【0093】
(添加剤)
本発明の硬化型組成物及びインク組成物には、各必須成分に加え、目的に応じて種々の添加剤を任意成分として併用することができる。これらの任意成分について説明する。
【0094】
<紫外線吸収剤>
本発明の硬化型組成物及びインク組成物には、得られる硬化物、或いは、画像の耐候性向上、退色防止の観点から、紫外線吸収剤を添加することができる。
【0095】
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤などが挙げられる。
紫外線吸収剤の添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、硬化型組成物、インク組成物の総量(全質量)に対して、0.01〜10質量%程度である。
【0096】
<酸化防止剤>
本発明の硬化型組成物及びイインク組成物には、安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、欧州特許公開第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
酸化防止剤の添加量は、目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、硬化型組成物又はインク組成物の総量(全質量)に対して、0.01〜10質量%程度である。
【0097】
<褪色防止剤>
本発明の硬化型組成物をインク組成物に用いる場合には、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。前記有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類、などが挙げられる。前記金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体、などが挙げられ、具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのI〜J項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成物の総量(全質量)に対して、0.01〜10質量%程度である。
【0098】
<導電性塩類>
本発明の硬化型組成物をインク組成物に用いる場合、特に、インクジェット記録用インク組成物に用いる場合は、射出物性の制御を目的として、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類を添加することができる。
【0099】
<溶剤>
本発明の硬化型組成物及びインク組成物には、被記録媒体等の固体表面と、硬化物や形成された画像との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、耐溶剤性悪化が起こらない範囲での添加が有効であり、その量は硬化型組成物又はインク組成物の全体質量に対し0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%の範囲である。
【0100】
<高分子化合物>
本発明の硬化型組成物及びインク組成物には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、または「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0101】
この他にも、本発明の硬化型組成物及びインク組成物には、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
【0102】
前記タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香属アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などが挙げられる。
【0103】
(インク組成物に適用した際の好ましい物性)
本発明の硬化型組成物は、高感度で硬化し、硬化物の強度と柔軟性に優れることから、活性エネルギー線硬化型インク組成物に適用することが好ましいのは前述の通りであるが特に、インクジェット記録方法に適用するインクジェト用インク組成物に適用することが好ましい。
【0104】
本発明のインク組成物は、インクジェット記録に適用する場合、吐出性を考慮し、吐出時の温度におけるインク粘度が、5mPa・s〜30mPa・sであることが好ましく、7mPa・s〜20mPa・sが更に好ましい。このため、前記範囲になるように適宜組成比を調整し決定することが好ましい。
また、室温(25〜30℃)でのインク組成物の粘度は、7mPa・s〜120mPa・sが好ましく、10mPa・s〜80mPa・sが更に好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク浸透を防ぎ、未硬化モノマーの低減、臭気低減が可能となり、更にインク液滴着弾時のドット滲みを抑えることができ、その結果として画質を改善することができる。
【0105】
本発明のインク組成物の表面張力は、20mN/m〜40mN/mであることが好ましく、20mN/m〜30mN/mであることが更に好ましい。また、本発明のインク組成物を、ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、前記表面張力は20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点では30mN/m以下であることが好ましい。
【0106】
本発明のインク組成物を適用したインクジェット記録用に適用した場合、インクジェット記録方式には特に制限はなく、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出する電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出する音響型インクジェット方式、インクを加熱して気泡を形成し、発生した圧力を利用するサーマル型インクジェット方式、等のいずれであってもよい。なお、インクジェット記録方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
前記のうち、ピエゾ素子を用いたドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)のインクジェット記録用インクとして好適である。
【0107】
[インクジェット記録方法]
本発明のインク組成物は、(a)被記録媒体上に、該インク組成物をインクジェット記録装置により吐出する工程(画像記録工程)、及び(b)吐出されたインク組成物に活性エネルギー線を照射して、該インク組成物を硬化する工程(画像硬化工程)、を含むインクジェット記録方法に用いることができる。
即ち、本発明のインクジェット記録方法は、インクジェット記録によって画像を形成する画像記録工程と画像硬化工程とを含む方法である。
【0108】
本発明のインクジェット記録方法における画像硬化工程においては、画像硬化工程において活性エネルギー線を利用し、画像記録工程で被記録媒体に画像記録した後、記録された画像に活性エネルギー線を照射することによって、画像化に寄与する重合性化合物の重合硬化が進行し、良好に硬化され堅牢性の高い画像を形成することができる。
【0109】
画像硬化工程においては、インク組成物の有する感応波長に対応する波長領域の活性エネルギー線を発する光源を用いて重合硬化を促進する露光処理を行なうことができる。光源、露光時間及び光量は、本発明に係るカチオン重合性モノマーの重合硬化の程度に応じて適宜選択すればよい。
【0110】
画像硬化工程において硬化した画像の厚みは、2μm〜30μmであることが好ましい。ここで、「画像の厚み」とは、インク組成物により形成された画像を硬化した硬化物の厚みのことである。該画像の厚みが2μm〜30μmであることで、低濃度から高濃度の画像を表現することができる。
【0111】
画像硬化工程においては、インク組成物の有する感応波長に対応する波長領域の活性エネルギー線を発する光源を用いて重合硬化を促進する露光処理を行なうことができる。具体的には、250〜450nm、好ましくは365±20nmの波長領域に属する活性線を発する光源、例えば、LD、LED(発光ダイオード)、蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、キセノンランプ、ケミカルランプなどを用いて好適に行なうことができる。好ましい光源には、LED、高圧水銀灯、メタルハライドランプが挙げられ、なかでも本発明のカチオン重合性組成物の硬化においてはLEDを光源として用いることが好ましい。
【0112】
本発明のインク組成物のインクにより得られた記録物は、画像部が紫外線などの活性エネルギー線の照射により硬化しており、画像部の強度に優れるため、例えば、平版印刷版のインク受容層(画像部)としても用いることができる。
【0113】
画像記録工程においては、インクジェットプリンタを用いたインクジェット記録方法を適用するのが好ましい。具体的には、画像記録工程は、インク組成物を吐出するインクジェット記録によって画像を記録することが好ましい。
【0114】
次に、本発明のインクジェット記録方法の具体的な実施態様について、当該方法に好適に採用され得るインクジェット記録装置の詳細を含めて、以下に説明する。
【0115】
・システム
インクを吐出するインクジェット記録システムとしては、特開2002−11860号公報に示すような形態が一例として挙げられるが、これに限定されるものではなく、他の形態であってもよい。
【0116】
・インク保持手段
インクを保持する手段としては、公知のインクカートリッジに充填することが好ましく、特開平5−16377号公報に開示されるように変形可能な容器に収納し、タンクとなすことも可能である。また特開平5−16382に開示されるように、サブタンクを有するとインクをヘッドへの供給が更に安定する。また、特開平8−174860号公報に開示されるように、インク供給室の圧力が低下した場合に、弁の移動によりインクを供給する形態のカートリッジを用いることも可能である。これらのインク保持手段でヘッド内のメニスカスを適切にたもつための負圧付与方法としては、インク保持手段の高さすなわち水頭圧による方法、またインク流路中にもうけたフィルタの毛細管力による方法、また、ポンプ等により圧力を制御する方法、また、特開昭50−74341号公報に開示されるようにインクをインク吸収体に保持し、この毛細管力により負圧を付与する方法等が適切である。
【0117】
・インク供給路
インクをこれらインク保持手段からヘッドに供給する方法として、ヘッドユニットに直接保持手段を連結する方法でもよいし、チューブ等の流路により連結する方法でもよい。これらインク保持手段及び流路は、インクに対して良好な濡れ性を持つような素材であること、もしくは表面処理が施されていることが好ましい。
【0118】
・ヘッド
インクを打滴する方法としては、特開平5−104725号公報に開示されるように、連続的にインク滴を吐出させ、画像に応じて滴を偏向して被記録材に着弾させるか、させないかを選択制御する方法であってもよいし、所謂オンデマンド方式を呼ばれる、画像として必要な部分にのみインク滴を吐出させる方式であってもよい。オンデマンド方式は、特開平5−16349に開示されるように、圧電素子等を用いて構造体の変形によりインク圧を発生させ、吐出させる方式であってもよいし、特開平1−234255に開示されるように、熱エネルギーによる気化にともなう膨張により発生する圧力で吐出する方式であってもよい。また特開2001−277466号公報に開示されるように、電界により被記録材への吐出を制御する方式であってもよい。
【0119】
インクジェット記録方法においては、本発明のインク組成物を用いて被記録媒体に画像記録を行なう。その際に使用するインク吐出ノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。ノズルは、例えば特開平5−31908号公報に記載されるような形態が適用可能である。なお、このとき複数色のインクを吐出させるため、ノズルは特開2002−316420号公報に記載されるように、複数列に構成されることにより、高速にカラー画像を形成することが可能である。さらに複数のノズル列を有するヘッドユニットを複数配置することにより更に高速化が可能である。
【0120】
さらに、ノズルを特開昭63−160849号公報に記載されるように画像の幅と同等以上の幅分配置し、所謂ラインヘッドとなし、これらのノズルからの打滴と同時に被記録材を移動させることにより、高速に画像を形成することが可能となる。
また、ノズルの表面は、特開平5−116327号公報に開示されるような表面処理を施すことにより、ノズル表面へのインク滴の飛沫の付着、及びインク滴の付着を防ぐことが可能となる。
【0121】
このような処理を施しても、なお汚れが付着する場合があり、このため、特開平6−71904号公報に開示されるように、ブレードにより清掃を行うことが好ましい。
また、ノズルから各色のインクが均等に吐出されるとは限らず、インクが長時間吐出されない場合もありうる。このようなときに、メニスカスを安定に保つために、特開平11−157102号公報に開示されるように、画像領域外で適宜インクを吐出させ、ヘッドに新しいインクを補給することにより、インク物性を適性値に維持することが好ましい。
【0122】
また、このような処置を施してもなお気泡がヘッド内に侵入もしくはヘッド内で発生することがある。このような場合は、特開平11−334092号公報に記載されるように、ヘッド外より強制的にインクを吸引することにより、物性の変化したインクを廃棄するとともに、気泡もヘッド外に排出することができる。更に長時間打滴しない場合は特開平11−138830号公報に開示されるように、キャップでノズル表面を覆うことによりノズル表面を保護することができる。これらの措置を講じてもなお吐出しない場合がありうる。
【0123】
ノズルの一部が吐出しない状態で画像をプリントすると、画像にムラが発生する等の問題が発生する。このようなことを避けるため、特開平2000−343686号公報に開示されるように、吐出しないことを検出して処置をとることが有効である。
【0124】
ヘッドユニットを特開平6−115099号公報に記載されるように機械的に移動させ、これと同期させて被記録材を直交方向に間欠的に移動させることにより重畳打滴を行うと、被記録材の間欠的な移動の精度不良にともなうムラを見えにくくする効果があり、高画質を実現することが可能となる。このとき、ヘッドの移動速度、被記録材の移動量、ノズル数の関係を適宜設定することにより、画質と記録速度の関係を好ましい関係に設定することが可能となる。
【0125】
また、逆にヘッドを固定し、被記録材を機械的に所定方向に往復移動するとともに、それと直交方向に間欠移動させることにより、同様の効果を得ることが可能である。
【0126】
・温度制御
インクジェット記録装置には、インク組成物温度の安定化手段を備えることが好ましく、一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。
【0127】
インクジェット記録方法においては、上記インク組成物を40〜80℃に加熱して、インク組成物の粘度を30mPa・s以下、好ましくは20mPa・s以下に下げた後、射出することが好ましく、この方法を用いることにより高い射出安定性を実現することができる。一般に、放射線硬化型インク組成物では、概して水性インクより粘度が高いため、印字時の温度変動による粘度変動幅が大きい。このインク組成物の粘度変動は、そのまま液滴サイズ、液滴射出速度に対して大きな影響を与え、これにより画質劣化を引き起こすため、印字時のインク組成物温度はできるだけ一定に保つことが必要である。このためにはインク温度検出手段と、インク加熱手段、及び検出されたインク温度に応じて加熱を制御する制御手段を有することが好ましい。
【0128】
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク組成物流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断もしくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンタ立上げ時間を短縮するため、あるいは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
あるいは、インク温度に応じてインクを吐出させる手段への印加エネルギーを制御する手段を有することも好適である。
【0129】
インク組成物温度の制御幅は設定温度±5℃とすることが好ましく、より好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。
【0130】
・露光
光源としては、前記したように、一般的に用いられる水銀灯、メタルハライドランプ等を用いてもよいし、発光ダイオード、半導体レーザ、蛍光灯等を用いることができる。また熱陰極管、冷陰極管、電子線、X線等、インクの重合反応が進行する光源、電磁波等を用いることができる。
【0131】
メタルハライドランプを用いる場合、ランプは10W/cm〜1000W/cmのものを使用し、被記録媒体の表面で1mW/cm〜100W/cmの照度であることが好ましい。
【0132】
また、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等を用いた場合には、放電にともない、オゾンが発生するため、排気手段を有することが好ましい。排気手段は、インク吐出時に発生するインクミストの回収を兼ねるべく配置してあることが好適である。
【0133】
次に、活性エネルギー線の好ましい照射条件について述べる。基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間をおいて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。WO99/54415号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明においては、これらの照射方法を用いることが可能である。
【0134】
硬化させるための活性エネルギー線がインク吐出ノズルに照射されると、ノズル面表面に付着したインクミスト等が固化し、インク吐出の妨げとなる可能性があるため、ノズルへの照射を最小限にとどめるため、遮光等の措置を施すことが好ましい。具体的には、ノズルプレートへの照射を防止する隔壁を設ける、あるいは迷光を低減するべく被記録材への入射角を限定するための手段を設ける等が好適である。
【0135】
また、本発明では、着弾から照射までの時間を0.01秒〜0.5秒とすることが望ましく、好ましくは0.01秒〜0.3秒、更に好ましくは0.01秒〜0.15秒後に放射線を照射することにある。このように着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、着弾インクが硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができる為、未反応モノマーの残留を抑えられ、その結果として臭気を低減することができる。上記説明したインクジェット記録方法と本発明のインク組成物とを併せて用いることにより、大きな相乗効果をもたらすことになる。このような記録方法を取ることで、表面の濡れ性が異なる様々な被記録媒体に対しても、着弾したインクのドット径を一定に保つことができ、画質が向上する。
【0136】
・システムパラメータ
画像を形成するうえで、被記録材上でのインク着弾径は10〜500μmの間にあることが好適であり、このためには吐出時のインク滴の直径は5〜250μmであることが好ましく、このときのノズル径は15〜100μmであることが好ましい。
画像を形成するためには1インチあたりの画素数が50〜2400dpiであることが好ましく、そのためには、ヘッドのノズル密度は10〜2400dpiであることが好ましい。ここで、ヘッドのノズル密度は低くとも、被記録材の搬送方向に対して傾ける、あるいは複数のヘッドユニットを相対的にずらして配置することにより、ノズル間隔の大きいヘッドで高密度の着弾を実現することが可能である。また上記のようにヘッドもしくは被記録材の往復移動により、低ノズルピッチでヘッドが移動するごとに被記録材を所定量搬送させ、インク滴を異なる位置に着弾させることにより、高密度の画像記録を実現することができる。
【0137】
被記録媒体へのインク打滴量としては、良好な階調を表現するためには0.05g/m〜25g/mの間で任意量に制御できることが好適であり、これを実現するためにヘッドからの吐出インク滴の大きさ、及びまたは数量を制御することが好ましい。
【0138】
ヘッドと被記録材の間隔に関しては、広すぎるとヘッドもしくは被記録材の移動に伴う空気の流れでインク滴の飛翔が乱れ、着弾位置精度が低下する。逆に間隔が狭いと、被記録材の凹凸、搬送機構に起因する振動等によりヘッドと被記録材が接触する危険性があり、0.5mm〜2mm程度に維持されることが好ましい。
【0139】
・インクセット
インクは単色であってもよいし、シアン、マゼンタ、イエローのカラーであってもよいし、さらにブラックを加えた4色、あるいはさらに特色と呼ばれるこれら以外の特定色のインクを用いてもよい。色材は、染料であってもよいし、顔料であってもよい。これらのインクの打滴順は、明度の低い順に着弾するように打滴させてもよいし、明度の高い順に着弾させてもよいし、画像記録品質上好適な順に打滴させることが好ましい。
【0140】
明度の高い色から順に重ねていくと、下部のインクまで活性エネルギー線が到達しやすく、硬化感度の阻害、残留モノマーの増加及び臭気の発生、密着性の劣化が生じにくい。また、照射は、全色を射出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
記録するべき画像信号は、たとえば特開平6−210905号公報に記載されるように、良好な色再現を得るべく信号処理を施すことが好ましい。
【0141】
なお、本発明のインク組成物の使用態様は、上述したインクジェット記録方法に限定されず、例えば、画像記録工程においてインクジェット記録以外の方法で被記録媒体上にインク画像を形成し、これに活性エネルギー線を照射する画像硬化工程を組み合わせた場合、或いは、インクジェット記録装置により、被記録媒体上にインク組成物を吐出した後、加熱して画像を硬化させる場合などにも適用することが可能である。
【0142】
また、本発明のインク組成物は、インクジェット記録用途以外に、三次元造形用途、例えば、前述の平版印刷版の印刷インク受容部の形成用途などにも利用可能であり、缶印刷用途や食品用途にも利用できる。これらの用途については公知の方法を利用して画像形成することができ、例えば特許第2679586号公報などの記載を参照することができる。
【0143】
[被記録媒体]
本発明のインク組成物を用いて記録される被記録媒体としては、インク浸透性の被記録媒体、及び、インク非浸透性の被記録媒体をともに使用することができる。インク浸透性の被記録媒体は、普通紙、インクジェット専用紙、コート紙、電子写真共用紙、布、不織布、多孔質膜、高分子吸収体等が挙げられる。これらについては特開2001−1891549号公報などに「被記録材」として記載されている。
【0144】
インク非浸透性の被記録媒体としては、アート紙、合成樹脂、ゴム、樹脂コート紙、ガラス、金属、陶器、木材等が挙げられる。加えて各機能を付加する為に、これら材質を複数組み合わせ複合化した基材を使用することもできる。
【0145】
インク非浸透性の被記録媒として用いられる合成樹脂としては、いかなる合成樹脂も用いることができるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、及び、ポリブタジエンテレフタレート等のポリエステル;ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、及び、ポリプロピレン等のポリオレフィン;並びに、アクリル樹脂、ポリカーボネート、及び、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等や、ジアセテート、トリアセテート、ポリイミド、セロハン、及び、セルロイド等が挙げられる。
【0146】
合成樹脂を用いた被記録媒体の形状(厚み)は、フィルム状でもよいし、カード状またはブロック状でもよく、特に限定されることなく所望の目的に応じて適宜選定することができる。また、これら合成樹脂は透明であってもよいし、不透明であってもよい。
【0147】
合成樹脂を用いた被記録媒体の使用形態としては、いわゆる軟包装に用いられるフィルム状で用いることが好ましい態様の一つであり、各種非吸収性のプラスチック及びそのフィルムを用いることができる。各種プラスチック製のフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸ポリスチレン(OPS)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、二軸延伸ナイロン(ONy)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、及び、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムを挙げることができる。
【0148】
インク非浸透性の被記録媒体として用いられる樹脂コート紙としては、例えば、透明ポリエステルフィルム、不透明ポリエステルフィルム、不透明ポリオレフィン樹脂フィルム、及び、紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体が挙げられ、紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体が特に好ましい。
【0149】
以上のように、本発明のインク組成物を用いた画像記録によると、強度と柔軟性、さらには、被記録媒体との密着性に優れた画像を得ることができる。また、得られた記録物は、密着性に優れ、脆性に係る問題を生じることがない。
本発明の硬化型組成物は、インク組成物以外にも、コーティング、接着剤、光造形、半導体用フォトレジストなどの分野に適用することが可能である。
【実施例】
【0150】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本実施例ではインク組成物の一例としてインクジェット記録用のインクを作製した例を示す。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0151】
<合成例1>
特定重合性化合物(1−1)の合成
【化7】

【0152】
i)化合物(1−1b)の合成
文献「Tetrahedron Letters 23, 5299 (1982)」に記載の方法によって得た化合物(1−1a)20g(0.13mol)を、ジクロロメタン250mLに溶解し、水冷下で攪拌しながらm−クロロ過安息香酸(MCPBA,>77%,アルドリッチ社製)50g(0.22mol)を、内温を15℃〜30℃に保ちながら粉体で5回に分割して添加し、25℃にて2時間攪拌した。反応液を氷冷し、10%チオ硫酸ナトリウム 130mLを添加し、引き続き10%炭酸水素ナトリウム水溶液 150mLを添加し、室温で30分攪拌した。水層を除去した後、有機層を飽和食塩水 200mLで洗浄し、有機層をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(1−1b)を15.5g(収率63%)得た。
【0153】
ii)特定重合性化合物(1−1)の合成
得られた化合物(1−1b)15.5g(0.091mol)を、脱水テトラヒドロフラン(和光純薬社製)45mLに溶解し、脱水テトラヒドロフラン 21mLに懸濁した水素化リチウムアルミニウム6.2g(0.16mol)中に窒素雰囲気下、内温を0℃〜8℃に保ちながらゆっくり滴下した。滴下終了後、室温で90分攪拌した後、再び氷冷しメタノール120mLを添加し、引き続き(+)−酒石酸ナトリウムカリウム4水和物(和光純薬社製)38gを固体のまま添加した。固体をろ取で取り除き、得られたろ液を減圧にて溶媒を留去し化合物(1−1c)の粗製物を得た。
次に、得られた化合物(1−1c)の粗製物全量に、エピクロロヒドリン(和光純薬社製)20mL(0.26mol)、硫酸水素テトラブチルアンモニウム(和光純薬社製)1.53g、50%水酸化ナトリウム水溶液60mLを加えて40℃で3時間攪拌した。反応液を氷水に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。溶媒を減圧留去して得られた粗製物をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、特定重合性化合物(1−1)の8.0gを無色透明液体として得た(化合物1−1bからの収率48%)。
【0154】
特定重合性化合物(1−1)(立体異性体混合物):H‐NMR(CDCl3、300MHz)δ:1.2−−2.1(m,3H),2.6−2.9(m,2H),3.1−3.8(m,7H),4.4−4.5(m,2H)
【0155】
[実施例1]
【0156】
<顔料分散物の調製>
クロモフタールジェット マゼンタ DMQ(PR−122)20質量%、アロンオキセタン〔ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル〕OXT−221(東亞合成社製)72質量%、SOLSPERSE32000(ルーブリゾール社製)8質量%をボールミルに入れて、直径0.6mmのジルコンビーズを使用して、16時間分散して顔料分散物を得た。
【0157】
<UVインクジェット用マゼンタインク組成物の調製>
以下に示す組成1となるように、上記により作製した顔料分散物と、カチオン重合性モノマー(特定重合性化合物及び他のカチオン重合性モノマー)、光カチオン重合開始剤、増感剤、及び分散剤を混合し、高速水冷式撹拌機により撹拌し、UVインクジェット用マゼンタインク組成物を得た。
【0158】
〔組成1〕
・クロモフタールジェット マゼンタ DMQ(PR−122)
(チバスペシャリティーケミカルズ社製) 5.0部
・Solsperse32000(ルーブリゾール社製の分散剤) 2.0部
・2官能オキセタン化合物(OXT−221、東亞合成(株)製) 25.0部
・2官能ビニルエーテル化合物(DVE−3、ISP Europe社製) 25.0部
・特定重合性化合物(1−1) 25.0部
・単官能重合性化合物(3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、商品名:OXT−211、東亞合成(株)製) 25.0部
・光カチオン重合開始剤(トリス(4−クロロフェニル)スルホニウム ヘキサフルオロホスフェイト(下記B−1で示す構造)) 5.0部
【化8】

・増感剤: 9,10−ブトキシアントラセン(川崎化成工業(株)製) 3.0部
【0159】
[実施例2〜9、比較例1〜3]
表1に記載の組成に変更した以外は、実施例1において調製したインク組成物と同様にして、実施例2〜9、比較例1〜3のインク組成物を調製した。但し、実施例7に関しては、顔料分散物の調製に用いたオキセタン化合物として、OXT−221 72質量%のうち12質量%を、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(OXT−211、東亞合成(株)製)に変更した。
【0160】
なお、表1に示す比較化合物(A−1)及び(A−2)の構造を以下に示す。
【化9】

【0161】
【表1】

【0162】
<印字、露光>
上記で得られた実施例及び比較例各インク組成物を、ピエゾ方式のインクジェットヘッドを用いて打滴を行った。ヘッドは25.4mmあたり150のノズル密度で、318ノズルを有しており、これを2個ノズル列方向にノズル間隔の1/2ずらして固定することにより、メディア上にはノズル配列方向に25.4mmあたり300滴打滴される。
【0163】
ヘッド及びインクは、ヘッド内に温水を循環させることにより吐出部分近辺が50±0.5℃となるように制御されている。ヘッドからのインク吐出は、ヘッドに付与されるピエゾ駆動信号により制御され、1滴あたり6〜42plの吐出が可能であって、本実施例及び比較例では、ヘッドの下1mmの位置でメディアが搬送されながらヘッドより打滴される。搬送速度は50〜200mm/sの範囲で設定可能である。またピエゾ駆動周波数は最大4.6kHzまでが可能であって、これらの設定により打滴量を制御することができる。
本実施例及び比較例では、搬送速度90mm/s、駆動周波数1.9kHzとすることにより、24plにインク吐出量を制御し、10g/mの打滴を行い、ベタ印字画像を得た。
【0164】
メディアは打滴された後、露光部に搬送され紫外発光ダイオード(UV−LED)により露光される。本実施例及び比較例では、UV−LEDは日亜化学工業(株)製の「NCCU033(商品名)」を用いた。このUV−LEDは、1チップから波長365nmの紫外光を出力するものであって、約500mAの電流を通電することにより、チップから約100mWの光が発光される。これを7mm間隔に複数個配列し、メディア表面で0.3W/cmのパワーが得られる。打滴後露光されるまでの時間、及び露光時間は、メディアの搬送速度及びヘッドとLEDの搬送方向の距離により変更可能である。本実施例及び比較例では、着弾後、約0.5秒後に露光される。メディアとの距離及び搬送速度の設定に応じて、メディア上の露光エネルギーを0.01〜15J/cmの間で調整することができる。本実施例では搬送速度により露光エネルギーを調整した。これら露光パワー、露光エネルギーの測定にはウシオ電機製スペクトロラディオメータURS−40D(商品名)を用い、波長220〜400nmの間を積分した値を用いた。本実施例及び比較例では、メディアとして厚みPETフィルムまたはポリ塩化ビニル製のシートを使用し、印字及び露光テストは23℃、R.H.60%の環境で実施した。硬化した画像の厚みは19μmであった。
【0165】
<評価>
各インク組成物の硬化感度、得られた硬化物の脆性、被記録媒体との密着性、吐出安定性に関して、以下の手法で評価し、結果を表2に記載した。
【0166】
1.硬化感度
各インク組成物を、上記装置を用いてポリ塩化ビニル製のシート上に印刷し、搬送速度を変えることにより積算露光量を調整し、インクを硬化させてなる印刷物(硬化物)を得た。硬化における露光エネルギーは、光量積算計(EIT社製UV PowerMAP)により測定した。硬化性を印刷物の表面べとつきの有無で判断し、べとつきがなくなる最小の積算露光量を下記基準により評価した。
A:100mJ/cm未満
B:100mJ/cm以上 300mJ/cm未満
C:300mJ/cm以上 500mJ/cm未満
D:500mJ/cm以上 700mJ/cm未満
E:700mJ/cm以上
実用的には、感度の評価がB以上であることが必要であり、Aであることが特に好ましい。
【0167】
2.脆性
各インク組成物を、175μmPETに印刷したサンプルを2穴パンチ(MAX社製TypeC、商品名)で打ち抜き、打ち抜かれた円状表面の状態を観察し、以下の基準により評価した。
ランク5:全く剥がれが認められない。
ランク4:一部、周囲が欠ける。
ランク3:周囲が一部剥がれる。
ランク2:周囲が剥がれる。
ランク1:表面がぼろぼろに剥がれる。
実用的には、脆性の評価が3以上であることが必要であり、4以上であることが好ましく、5であることがより好ましい。
【0168】
3.被記録媒体との密着性
下記のように、上記装置を用いてポリスチレン基板を被記録媒体として印字し、得られた硬化物のポリスチレン基板に対する密着性を評価した。
評価は、硬化物2cm×1cm角の範囲にセロテープ(登録商標)を貼りつけて強く圧着し、硬化物面と垂直に素早く剥離して、その後の硬化物の状態を目視観察することにより行った。
この密着性試験は、硬化物がポリスチレン基板から全く剥がれない状態を5点とした5段階評価で行った。実用上は3点以上であることが必要であり、4点以上であることが好ましい。
【0169】
4.吐出安定性
各インク組成物を室温で4週間保存後、ピエゾ型インクジェットノズルを有するインクジェット記録装置を用いて、被記録媒体への記録を行い、常温で48時間連続印字したときの、ドット抜け及びインクの飛び散りの有無を目視にて観察し、下記基準により評価した。
○:ドット抜け又はインクの飛び散りが発生しないか、発生が2回以下。
△:ドット抜け又はインクの飛び散りが3〜10回発生。
×:ドット抜け又はインクの飛び散りが11回以上発生。
【0170】
【表2】

【0171】
表2に記載の結果より、特定重合性化合物を含有する実施例1〜実施例9のインク組成物は、酸素原子を有さないトリシクロ環骨格を有する化合物を用いた場合(比較例1)、オキシラン環を有するビシクロ環骨格を2個有する化合物を用いた場合(比較例2)、ビシクロ環骨格及びトリシクロ環骨格のいずれも有さない化合物を用いた場合(比較例3)に比べて、硬化感度、脆性、密着性、及び吐出安定性が、バランスよく良好であることがわかる。また、実施例1と5の対比からは、特定重合性化合物とビニルエーテル化合物とを併用する際に、特に好ましい効果が得られることがわかる。また、実施例1と実施例6及び実施例7との対比からは、インク組成物における特定重合性化合物の含有量が好適な範囲内であるときに、特に好ましい効果が得られることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線の照射により酸を発生する化合物及びカチオン重合性モノマーを少なくとも含有してなり、前記カチオン重合性モノマーとして、分子内に、環内に少なくとも1つの酸素原子を有する1つのビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格(但し、酸素原子を含む3員環及び4員環は、該ビシクロ環骨格又はトリシクロ環骨格を構成する環構造には含まれない。)と、2つ以上のオキシラン環と、を有する多官能オキシラン化合物を含有する活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項2】
前記多官能オキシラン化合物が有する総てのオキシラン環が、前記ビシクロ環骨格又は前記トリシクロ環骨格と環を構成する一つの炭素−炭素結合を共有する請求項1に記載の活性エネルギー線硬化硬化型組成物。
【請求項3】
前記多官能オキシラン化合物が有するオキシラン環のうち、少なくとも1つのオキシラン環が、前記ビシクロ環骨格又は前記トリシクロ環骨格と環を構成する一つの炭素−炭素結合を共有しており、且つ、少なくとも1つのオキシラン環が、前記ビシクロ環骨格又は前記トリシクロ環骨格と単結合により連結しているか、或いは連結基により前記ビシクロ環骨格又は前記トリシクロ環骨格との間に1〜6個の原子を介在させた位置に存在している請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項4】
前記多官能オキシラン化合物が有する総てのオキシラン環が、前記ビシクロ環骨格又は前記トリシクロ環骨格と単結合により連結しているか、或いは連結基により前記ビシクロ環骨格又は前記トリシクロ環骨格との間に1〜6個の原子を介在させた位置に存在している請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項5】
前記ビシクロ環ま環骨格又は前記トリシクロ環骨格が、下記構造式(I)で表される部分構造を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【化1】

【請求項6】
前記多官能オキシラン化合物と、ビニルエーテル化合物とを、前記カチオン重合性モノマーの全質量に対して各々10質量%以上含有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物を含む活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【請求項8】
インクジェット記録用である請求項7に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【請求項9】
被記録媒体上に、請求項8に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物をインクジェット記録装置により吐出する工程、及び、吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、該インク組成物を硬化する工程、を含むインクジェット記録方法。

【公開番号】特開2010−229349(P2010−229349A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80112(P2009−80112)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】