説明

活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、およびその硬化物と透明成型品

【課題】活性エネルギー線照射により硬化させた際に、反りの発生が小さく高い透明性と優れた耐磨耗性を有する硬化物が得られる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物と、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させることによって得られる硬化物を提供する。
【解決手段】(A)二官能ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、(B)二重結合を含まない環状骨格を有する二官能(メタ)アクリレート、および(C)光重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性と耐摩耗性とが要求される用途に有用な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話のボタンやケースなどの用途に用いられる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、その特性として、硬化物が様々な意匠を明瞭に表現することの可能な高い透明性と、過酷な使用に耐えうる高い耐磨耗性を有することが求められる。
【0003】
これに対し、耐摩耗性に優れる硬化物を得るために、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として多官能あるいは剛直な感光性モノマーを用いることにより、その硬化物の硬度を高める工夫がなされている。
【0004】
しかしながら、このような活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物では、硬化物の反りの発生や脆くなるなどの他の問題を生じる。
【0005】
一方で、この硬化物の反りを抑制する組成物として、従来、(A)二官能ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、(B)イソボロニル(メタ)アクリレート、および(C)光重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、この特許文献では、透明性や耐摩耗性については言及していない。
【0007】
しかも、反りを改良した従来の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、特に硬化物の表面をフィルムで保護する用途では、硬化物に曇りが発生するといった新たな問題も生じる。
【特許文献1】特開2008−24803号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、活性エネルギー線照射により硬化させた際に、反りの発生が小さく優れた耐磨耗性と高い透明性を有する硬化物が得られる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物と、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させることによって得られる硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、上記目的実現のため鋭意研究した結果、反りの発生が小さく優れた耐磨耗性と高い透明性を有する硬化物が得られる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として、以下の内容を要旨とする発明に想到した。
【0010】
すなわち、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、(A)二官能ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、(B)二重結合を含まない環状骨格を有する二官能(メタ)アクリレート、および(C)光重合開始剤を含むことを特徴とする。
【0011】
また、発明者らは、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物の透明性は、一般には、硬化物そのものの着色に起因するものであるが、その硬化物を保護する目的で貼付される保護フィルムにも起因することを突き止め、硬化物そのものの透明性以外に、使用後の経時透明性の維持をも実現できる組成物について鋭意研究した。
【0012】
その結果、透明硬化物の曇りが、保護フィルム貼付面の形状が硬化物の表面に転写され、それによって光が乱反射するために発生することを突き止め、その手段として、硬化物の硬度を高めることが有効であることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、(A)二官能ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、(B)二重結合を含まない環状骨格を有する二官能(メタ)アクリレート、および(C)光重合開始剤を含む組成物であって、活性エネルギー線を照射することにより得られる硬化物のデュロメータ硬さDタイプが80以上であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の硬化物または透明成型品は、上述した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化して得られる。
【0015】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「デュロメータ硬さDタイプ」とは、JIS K7215に準拠して測定された値をいう。また、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタアクリレートを総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。ここで、アクリレートおよびメタアクリレートは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を活性エネルギー線照射により硬化させた際に、反りの発生が小さく優れた耐磨耗性と高い透明性を有する硬化物が得られる。
【0017】
しかも、本発明によれば、例えば、透明硬化物を保護する目的で保護フィルムが貼付された場合も、透明硬化物に曇りが発生することはなく、透明硬化物の経時透明性の維持をも実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を構成する各成分、同組成物を活性エネルギー線照射により硬化させて、硬化物からなる透明成型品を作る方法等について説明する。
【0019】
[活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を構成する各成分]
(A)成分:二官能ウレタン(メタ)アクリレート樹脂
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含まれる二官能ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、2個の(メタ)アクリレート基を有するウレタン樹脂である。この二官能ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、その重量平均分子量が、1500〜20000の範囲にあることが好ましい。二官能ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の重量平均分子量が1500未満であると、二官能ウレタン(メタ)アクリレート樹脂によってもたらされる架橋密度が高くなり、樹脂の硬化収縮が大きく、その結果、硬化成型物の反りも大きくなる。二官能ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の重量平均分子量が20000を超えると、粘度が高くなり、本発明の用途では適用できなくなり、好ましくない。
【0020】
本発明に係る二官能ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の例を挙げると、新中村化学工業製U−108A、U−200AX、UA−112P、UA−5201、U−340AX、UA−511、UA−512、UA−311、UA−412A、UA−4200、UA−4400、UA−340P、UA−2235PE、UA−160TM、UA−6100、U−108、UA−4000、UA−122P、UA−5201、UA−512、UA−W2、UA−7000、U−2PPA、UA−NDP;サートマー製CN962、CN963、CN964、CN965、CN980、CN981、CN982、CN983、CN996、CN9001、CN9002、CN9788、CN9893、CN978、CN9782、CN9783;東亞合成化学工業製M−1100、M−1200、M−1210、M−1310、M−1600;根上工業製UN−9000PEP、UN−9200A、UN−7600、UN−333、UN−1255、UN−6060PTM、UN−6060P、SH−500B;共栄社化学製AH−600、AT−600;ダイセル・サイテック製エベクリル280、エベクリル284、エベクリル402、エベクリル8402、エベクリル9270などがある。
【0021】
(B)成分:二重結合を含まない環状骨格を有する二官能(メタ)アクリレート
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含まれる二重結合を有さない環状骨格を有する二官能(メタ)アクリレートは、二重結合を有さないことにより、反りを防止し、環状骨格を有することにより耐磨耗性、硬さを強化することができる。その重量平均分子量は、150〜2000の範囲にあることが好ましい。二重結合を含まない環状骨格を有する二官能(メタ)アクリレートは、重量平均分子量が150未満であると、二官能(メタ)アクリレートによってもたらされる架橋密度が高くなり、樹脂の硬化収縮が大きく、その結果、硬化成型物の反りも大きくなる。一方、重量平均分子量が2000を超えると、粘度が高くなり、本発明の用途では適用できなくなるおそれがあり、好ましくない。
【0022】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含まれる二重結合を有さない環状骨格を有する二官能(メタ)アクリレートには、例えばシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデンカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、水素化ヘキサフルオロビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシ)ヘキサヒドロフタル酸などの脂環骨格を有する二官能(メタ)アクリレート。5−エチル−2−(2−ヒドロキシ−1,1ジメチルエチル)−5−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキサンジアクリレート、1,4−ジ(メタ)アクリロイルピペラジンなどの複素環骨格を有する二官能(メタ)アクリレート。さらにはこれら二官能(メタ)アクリレートのエチレンオキシド、プロピレンオキシド、カプロラクトンなどの変性物が挙げられる。
【0023】
このような二重結合を有さない環状骨格を有する二官能(メタ)アクリレートは、二官能ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは20〜300質量部、より好ましくは70〜200質量部の割合で含まれる。この二重結合を有さない環状骨格を有する二官能(メタ)アクリレートの配合量が20質量部未満であると耐磨耗性が不足し、一方300質量部を超えると硬化物が脆くなる傾向にあり、好ましくない。
【0024】
(C)成分:光重合開始剤
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれる光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテルなどのベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p−メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノンなどのアセトフェノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−アミノアントラキノンなどのアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p−ジメチル安息香酸エチルエステルなどの安息香酸エステル類;フェニルジスルフィド2−ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。
【0025】
これらの光重合開始材は、1種もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。この光重合開始剤は、二官能ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.3〜5質量部の割合で含まれる。
【0026】
(組成物に含まれる他の任意配合成分)
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中には、本発明の効果を損なわない限り、前記成分以外の他の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、シリコーン系、フッ素系の消泡剤、レベリング剤、公知慣用の熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、可塑剤、発泡剤、難燃剤、帯電防止剤、老化防止剤、抗菌・防黴剤等を配合することができる。
【0027】
(粘度調整)
粘度調整には、公知慣用の反応性希釈剤を用いることができる。特に分子中に1個のエチレン性不飽和基を有する化合物である単官能(メタ)アクリレート化合物が、希釈効果が高く好ましい。
【0028】
[デュロメータ硬さDタイプが80以上]
(A)二官能ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、(B)二重結合を含まない環状骨格を有する二官能(メタ)アクリレート、および(C)光重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物において、そのデュロメータ硬さDタイプを80以上とするには、下記に例示する幾つかの手法を適用することにより、達成可能である。
【0029】
(A)成分100重量部に対して、(B)成分の配合割合を好ましくは20〜300質量部、より好ましくは70〜200質量部とする。
【0030】
(A)成分や(B)成分として、その重量平均分子量をそれぞれ1500〜20000、および150〜2000とする。
【0031】
[組成物を硬化して成型品を作る方法]
本発明にかかる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、下記の塗工方法で基材などに塗工後、活性エネルギー線を照射し、硬化する。
【0032】
活性エネルギー線の照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ又はメタルハライドランプなどが適当である。その他、レーザー光線、電子線なども活性エネルギー線として利用できる。
【0033】
塗布方法は、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の任意の方法を適用することができる。
【0034】
ここでは、特開平11−156871号公報記載の方法を用いて凹部に本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を充填し、充填した樹脂組成物を活性エネルギー線により硬化させ、その硬化物を凹部から取り出すことにより成型品を得る方法について例示する。表面に複数の凹部が形成された円筒状またはロール状の版体を、その軸周りに回転させながら、この凹部に本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を充填する。充填された樹脂組成物を活性エネルギー線により硬化させ、硬化物をこの版体から取り出して成型物を得ることができる。この方法を、図1を参照しながら詳しく説明する。
【0035】
図1は成型装置を示し、この装置は、複数の凹部2が形成された円筒状またはロール状の版体1を備える。版体1は、所定速度でその軸回りに矢印の方向に回転するように設定されている。版体1の下部側方には、塗布ロール3が版体1の周面と接触して配置されている。塗布ロール3の下方には、本発明の樹脂組成物4を収容する樹脂槽5が設けられている。塗布ロール3は、そのほぼ下半分が樹脂組成物4に浸漬するように配置されている。塗布ロール3の上方には、塗布ロール3により凹部2内に導入された樹脂組成物4の余剰分を掻き取るドクターナイフ6が取り付けられている。
【0036】
版体1の回転方向においてドクターナイフ6の下流側には、フィルム引出装置21から引き出されたフィルム10(例えばPVC、PET等)を版体1の表面に押圧するための押圧ロール9が設けられている。また、版体1の回転方向において押圧ロール9の下流側には、押圧ロール9により版体1に押圧されたフィルム10が版体1の外周面と接した状態で進むように、フィルム10を版体1に押えつけるための押えロール11が設けられている。ドクターナイフ6により余剰分が除かれた凹部2内の樹脂組成物4には、引出装置21から引き出されるフィルム10が、押圧ロール9により押圧されることにより貼着される。このように、樹脂組成物4にフィルム10を貼着しながら、押圧ロール9と押えロール11との間に設置された光源7を用いて、例えばUV光をフィルム10側から樹脂組成物4に照射する。ここで、押圧ロール9と押えロール11は、照射される光により樹脂組成物4が十分に硬化することができる程度の間隔で配置される。光を照射することにより、樹脂組成物4はフィルム10が貼着した状態で硬化し、凹部2の内面形状に対応する形状の硬化樹脂成型体31が形成される。その後、凹部2内の成型体31は、押えロール11を経由してフィルム10を版体1の外周面から引き離すことにより、フィルム10に貼着した状態で凹部2から離型される。
【0037】
上記した方法に用いるために、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、1〜50dPa・sの粘度を有することが好ましい。この粘度は、上記した量的範囲内で上述の反応性希釈剤の量を調整することにより提供することができる。
【実施例】
【0038】
以下に実施例および比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。
【0039】
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の調製)
表1に示す成分を同表に示す組成で配合し、攪拌して溶解させ、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製した。
【0040】
こうして調製した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物について、硬化後の反り、耐摩耗性、透明性を以下の評価方法で評価した。その結果を表2に示す。
【0041】
[評価方法]
(硬化後の反り)
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を縦2cm、横2cm、深さ2mmのテフロン(登録商標)製型に注ぎ、その上をPETフィルムで覆い、UVコンベア炉(高圧水銀灯、80W、3灯)を用いて露光量1000mJ/cmで露光し、離型して硬化塗膜を得た。
【0042】
得られた硬化塗膜について、反りを生じた辺が上を向くように平らな台に置き、反りのある一辺を指で台に押さえつけて、反対側の浮き上がった辺の台からの高さを読み取り、反りの大きさとして評価した。
【0043】
(耐摩耗性)
上記反りの評価と同様にして作製した硬化塗膜を、NORMAN TOOL,INC.社製RCA磨耗試験機及びRCA磨耗試験機用専用磨耗紙を用い、175gの荷重で50回磨耗し、その後の硬化塗膜表面の磨耗度合いを光学顕微鏡で観察して評価した。その評価基準は以下のとおりである。
【0044】
○:磨耗していない
△:若干の磨耗あり
×:明らかな磨耗あり
(透明性)
硬化後の膜厚が約300μmとなるように活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をPETフィルム上にバーコーターで塗布し、さらに上からPETフィルムで覆い、UVコンベア炉(高圧水銀灯、80W、3灯)を用いて露光量1000mJ/cmで露光し、PETフィルムより剥がして硬化塗膜を得た。
【0045】
得られた硬化塗膜の裏表両面にヒタレックスGP−7(登録商標、日立化成工業株式会社製粘着フィルム)を貼付し、50℃で1時間加熱した後の硬化塗膜表面における曇りの有無を目視にて観察することにより、透明性を評価した。
【0046】
なお、表2に示すそれぞれの活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化後のデュロメータ硬さDタイプは以下の方法で測定した。
【0047】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を直径2.5cm、深さ3mmのステンレス製型に注ぎ、その上をガラス板で覆い、UVコンベア炉(高圧水銀灯、80W、3灯)を用いて露光量1000mJ/cmで露光し、離型して硬化塗膜を得た。
【0048】
得られた硬化塗膜を、JIS K7215に従って測定した。なお、硬度値の読み取りは、荷重面が密着してから30秒後に行った。
【表1】

【0049】
なお、参考例1,2は、(B)成分に代えて三官能以上の多官能ウレタン(メタ)アクリレート及び/又は多官能(メタ)アクリレート、あるいはベンゼン環など剛直な骨格を有する単官能及び/又は多官能(メタ)アクリレートなどを配合した例で、KAYARAD TMPTAやKAYARAD DPHAがこれに該当する。
【0050】
また、表1中、
EBECRYL 8402は、ダイセル・サイテック株式会社製 二官能ウレタンアクリレート
KAYARAD R-604は、日本化薬株式会社製 5−エチル−2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキサンジアクリレート
NKエステルA-DCPは、新中村化学工業株式会社製 トリシクロデカンジメタノールジアクリレート
CD406は、サートマー株式会社製 シクロヘキサンジメタノールジアクリレート
KAYARAD TMPTAは、日本化薬株式会社社製 トリメチロールプロパントリアクリレート
KAYARAD DPHAは、日本化薬株式会社製 ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
ライトアクリレートIB-XAは、共栄社化学株式会社製 イソボロニルアクリレート
アロニックス M-5700は、東亜合成株式会社社製 2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート
KAYARAD RM-1001は、日本化薬株式会社製 N−アクリロイルモルホリン
アクリル酸シクロヘキシルは、東京化成工業株式会社製
アロニックス M-240は、東亜合成株式会社製 テトラエチレングリコールジアクリレート
ネオマ- BA-641は、三洋化成工業株式会社製 エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート
イルガキュア184は、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製 1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
【表2】

【0051】
表2に示す結果から明らかなように、実施例1−3に係る本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物によれば、反りの発生が小さく優れた耐磨耗性を有する硬化物が得られることがわかる。しかも、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物によれば、デュロメータ硬さDタイプが80以上であるので曇りの発生がなく、経時透明性にも優れることがわかる。
【0052】
なお、参考例1,2は、本発明の(B)成分を用いることなく、デュロメータ硬さDタイプを80以上としたものである。これらの参考例は、耐摩耗性、経時透明性にすぐれているものの、三官能以上の(メタ)アクリレートを使用しているので本発明の実施例に比べて反りが大きい。また、本発明の(B)成分を用いておらず、また、デュロメータ硬さDタイプが80未満である比較例1,2は、単官能の(メタ)アクリレートを使用しているので反りが少ないものの、耐摩耗性が十分ではなく、経時透明性において本発明の実施例に劣る。本発明の(B)成分を用いておらず、また、デュロメータ硬さDタイプが80未満である比較例3,4,5は、耐摩耗性、経時透明性、反りのいずれの点においても本発明の実施例に劣る。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る透明成型品を製造するための成型装置の一例。
【符号の説明】
【0054】
1…版体
2…凹部
3…塗布ロール
4…樹脂組成物
5…樹脂槽
6…ドクターナイフ
7…光源
9…押圧ロール
10…フィルム
11…押えロール
21…引出装置
31…硬化樹脂成型体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)二官能ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、(B)二重結合を含まない環状骨格を有する二官能(メタ)アクリレート、および(C)光重合開始剤を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
活性エネルギー線を照射することにより得られる硬化物のデュロメータ硬さDタイプが80以上であることを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させることにより得られる硬化物。
【請求項4】
請求項3に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる透明成型品。

【図1】
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【公開番号】特開2009−242681(P2009−242681A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92938(P2008−92938)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】