説明

活性エネルギー線硬化性組成物

【課題】 耐擦り傷性と撥水撥油性に優れる硬化物層を形成しうる、あるいは、スリップ性に優れた硬化被膜を形成しうる活性エネルギー線硬化性組成物を提供する。
【解決手段】 成分A:コロイダルシリカ微粒子(a1)と有機シラン化合物の加水分解生成物(a2)を縮合反応して得られる有機被覆シリカ、成分B:エチレン性不飽和化合物及び成分C:パーフルオロアルキル基と(メタ)アクリレート基を有する共重合体からなる組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材表面の耐磨耗性を向上させるために有用な活性エネルギー線硬化性組成物に関し、より詳しくは活性エネルギー線の照射により、基材表面に優れた耐磨耗性を付与するとともに、撥水性や撥油性に優れた硬化被膜を形成しうる活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリスチレン樹脂(PS)、環状ポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、トリアセチルセルロース樹脂(TAC)などから製造された合成樹脂成型品は、軽量・透明性・易加工性等の利点を生かして、近年、CD、MO、DVD、ブルーレイディスク等の光ディスク、液晶、ELパネル等の表示窓や各種機能性フィルムなど、種々の分野で利用されている。しかし、その反面、これらの合成樹脂成型品は、表面の耐擦り傷性が不足しているので、活性エネルギー線硬化性組成物により、ハードコート処理が行われることが多い。特に、透明樹脂層表面の傷により、致命的な読み取りおよび/または書き込みエラーを引き起こす光ディスクの場合、レーザー光が通過する透明樹脂層表面に予め、ハードコートを施すことが多い。さらに、該光ディスクを、長期間クリーニングせずに使用する場合、指紋付着により、微量の水分や油分が薄膜状に吸着し、傷同様にエラーを引き起こす可能性があるため、撥水性と撥油性に対する要望も強い。さらに吸着した微量の水分や油分を容易にふき取ることができるよう、ハードコート処理面の良好なスリップ性に対する要望も強い。
【0003】
これらの要望に対し、耐擦り傷性を格段に向上させるためにシリカ微粒子を配合した組成物が開発されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
さらには、撥水性や撥油性を向上させるために、ハードコート上に特定の表面処理を施した組成物も知られている(例えば、特許文献3、4参照)。
【0005】
また、ハードコート表面にスリップ性を付与させるために、特定の構造を持つシリコーン系レベリング材が開発されている(例えば非特許文献1)。
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載の組成物は、表面硬度には優れるものの、撥水性や撥油性に劣るという欠点があった。
【0007】
また、特許文献3,4の組成物は、表面硬度と防汚性に優れるが、表面処理に時間がかかるという問題があり、非特許文献1で紹介されている化合物は、組成物中に単独で多量添加してもスリップ性の向上と耐擦り傷性の両立に劣るという問題があった。
【特許文献1】特開2002−234906号公報
【特許文献2】特開2002−230837号公報
【特許文献3】特開2002−190136号公報
【特許文献4】特開2002−367229号公報
【非特許文献1】ビックケミー・ジャパン(株)「ビックケミー塗料・インキ用添加剤」カタログ(第26版)(2004年9月)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、耐擦り傷性と撥水撥油性に優れる硬化物層を形成しうる、あるいは、スリップ性に優れた硬化被膜を形成しうる活性エネルギー線硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、少なくとも、成分A:コロイダルシリカ微粒子(a1)と有機シラン化合物の加水分解生成物(a2)を縮合反応して得られる有機被覆シリカ、成分B:シリコーン化合物を除くエチレン性不飽和化合物および成分C:パーフルオロアルキル基と(メタ)アクリレート基を有する共重合体からなる活性エネルギー線硬化性組成物である。
【0010】
なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を、「(メタ)アクリロイルオキシ基」とは「アクリロイルオキシ基および/またはメタアクリロイルオキシ基」をそれぞれ意味する。
【0011】
また、本発明は、成分A以外のポリエーテル変性シリコーン化合物であり、ラジカル重合可能な官能基を少なくとも一つ持つ化合物(d1)とラジカル重合可能な官能基を持たない化合物(d2)とをさらに含む上記の活性エネルギー線硬化性組成物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物(以下、適宜「本発明の組成物」と略記)は、耐擦り傷性に優れ、なおかつ、撥水撥油性に優れた硬化被膜を基材表面に形成するために好適であり、また、スリップ性に優れた硬化被膜を形成するためにも好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の組成物について、詳細に説明する。
【0014】
本発明の組成物は、特定の有機被覆シリカ(以下、「成分A」と略記)、シリコーン化合物を除くエチレン性不飽和化合物(以下、「成分B」と略記)およびパーフルオロアルキル基と(メタ)アクリレート基を有する共重合体(以下、「成分C」と略記)を少なくとも含有するものである。
【0015】
成分Aは、得られる硬化被膜の耐擦り傷性を付与する成分である。
【0016】
この成分Aの製法は特に限定されないが、好ましくは、コロイダルシリカ微粒子(a1)(以下、「成分a1」と略記)と有機シラン化合物の加水分解物(a2)(以下、「成分a2」と略記)の存在下で、コロイダルシリカ微粒子分散液中の分散媒を常圧または減圧下でトルエン等の溶媒とともに共沸留出させ、該分散媒を溶媒に置換した後、加熱下で縮合反応させる工程で行う。なお、成分a1の分散媒が既に溶媒となっている場合は、縮合反応で生成した水を、単に共沸により系外へ取り除くだけでよい。
【0017】
ここでいう「成分a1と成分a2の存在下」とは、成分a2が有機シラン化合物を加水分解して得たシラノール化合物である場合、下記2通りの方法により得られる状態を意味する。
【0018】
1)成分a1と有機シラン化合物を必要により水と共に混合した後、加水分解触媒を加え、常温または加熱下で攪拌する等の常法により成分a1および成分a2を共存させる。
【0019】
2)予め有機シラン化合物を加水分解して得た成分a2を成分a1と混合し、共存させる。
【0020】
次いで行われる縮合反応は、以下の如く行えばよい。
【0021】
具体的には、前記1)の方法では得られた成分a2の存在下、前記2)の方法では、成分a1と成分a2を混合し、まず、コロイダルシリカ微粒子分散液中の分散媒と縮合反応で生じる水を常圧または減圧下で60〜100℃、好ましくは70〜90℃の温度で共沸留出させ、固形分濃度を50〜90質量%とする。次に系内にトルエン等の溶媒を加え、この溶媒、水およびコロイダルシリカ微粒子分散液の分散媒をさらに共沸留出させながら、60〜150℃、好ましくは80〜130℃の温度で固形分濃度を30〜90質量%、好ましくは50〜80質量%に保持しながら、0.5〜10時間攪拌し、縮合反応を行う。この際、反応を促進させる目的で、水、酸、塩基、塩等の触媒を用いてもよい。このようにして、成分A(有機被覆シリカ)を得ることができる。
【0022】
ハードコート層形成用組成物は、このようにして得られた、親水性であるコロイダルシリカ微粒子表面をシリコーンで被覆して疎水化した成分A(有機被覆シリカ)を用いることにより、本発明の組成物に含まれる成分B(シリコーン化合物を除くエチレン性不飽和化合物)との分散均一性が向上し、透明性が良好な硬化被膜が得られる。
【0023】
以下、ハードコート層形成用組成物において、成分Aを製造するために用いる成分a1および成分a2について説明する。
【0024】
成分a1であるコロイダルシリカ微粒子は、BET法による一次粒子径が1〜200nmの範囲の無水ケイ酸超微粒子を水または有機溶媒に分散させた状態のものが好ましいが、分散媒は特に限定されない。
【0025】
この無水ケイ酸超微粒子の分散に使用する分散媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコール等の多価アルコール系溶剤;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等の多価アルコール誘導体;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン系溶剤;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等のモノマー類等が挙げられる。この中でも、炭素数3以下のアルコール系溶剤が、成分a2との反応工程上、特に好ましい。
【0026】
このような成分a1は、公知の方法で製造することもできるが、市販もされている。
【0027】
本発明において、成分a1の一次粒子径は、1〜200nmの範囲であることが好ましく、5〜80nmの範囲が特に好ましい。成分a1の一次粒子径が1nm以上であると成分a2との反応工程においてゲル化を起こしにくく、一次粒子径が200nm以下であると硬化皮膜の透明性が向上する。成分a1は、硬化被膜の耐擦り傷性を著しく改善でき、特に、ケイ砂等の微粒子に対する耐擦り傷性の改善効果が大きい。しかしながら、コロイダルシリカを単独で硬化被膜とした場合には、透明性が低下し、基材に対する密着性が劣る。
【0028】
成分a2を得るための有機シラン化合物としては、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。
【0029】
この具体例としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロアルキルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは、1種でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0030】
また、これらの化合物のエポキシ基やグリシジル基に(メタ)アクリル酸を付加したシラン化合物、アミノ基に(メタ)アクリロイルオキシ基を2個有する化合物をマイケル付加したシラン化合物、アミノ基やメルカプト基に(メタ)アクリロイルオキシ基およびイソシアネート基を有する化合物を付加したシラン化合物、イソシアネート基に(メタ)アクリロイルオキシ基および水酸基を有する化合物を付加したシラン化合物等も用いることができる。
【0031】
中でも、好ましい有機シラン化合物は、まず、加水分解によりシラノール化合物を形成し、次いで、成分a1と予め反応させることにより、成分Bとの分散均一性が向上し、かつ、成分Bとの化学結合形成が官能基を有し、成分Bと共に光硬化性である成分A(有機被覆シリカ)を製造することができ、本発明の組成物とした際に形成される硬化被膜を強靭にすることができるという理由から、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2−アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、2−メタクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、2−アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等である。これらは、1種でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0032】
これらの中でも、さらに3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランから選択されるシラン化合物は、成分Bとの反応性が優れる点で特に好ましい。
【0033】
本発明の組成物において、成分Aを得る際に用いる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン等の炭化水素類;トリクロルエチレン、テトラクロルエチレン等のハロゲン化炭化水素類;1,4−ジオキサン、ジブチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル等のエステル類;1−メトキシ−2―プロパノール、エチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコール誘導体等を挙げることができる。これらは、1種でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0034】
また、エチレン性不飽和化合物、例えば、1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体であって、その末端に水酸基を有さない単量体を溶媒として用いることもできる。
【0035】
これらの溶媒の中でも、炭化水素類、芳香族炭化水素類、ケトン類または多価アルコール誘導体は、成分a1と成分a2との反応の面から好ましく、特に好ましい溶媒として、トルエン、メチルエチルケトン、1−メトキシ−2−プロパノールを挙げることができる。
【0036】
成分Aの製造工程において、反応液中の固形分濃度は30〜90質量%の範囲が好ましい。この固形分濃度が30質量%以上、すなわち溶媒が70質量%以下の場合には、成分a1と成分a2の反応が十分となり、これを用いた本発明の組成物から得られる架橋硬化被膜は透明性が向上する。また、この固形分濃度が90質量%以下である場合、縮合反応が急激に起きることを防止でき、反応系がゲル状態とならず、本発明の組成物の塗工作業性や得られる硬化被膜の物性が良好となる。
【0037】
成分Aを製造するために行う縮合反応中の温度は、60〜150℃の範囲とすることが好ましい。これは、反応温度が60℃以上である場合には、反応が十分に進行し反応時間が短縮できる。また、反応温度が150℃以下である場合には、成分a1と成分a2との縮合反応以外の反応が起きたり、ゲルが生成したりする等の不都合を防止できる。
【0038】
この成分Aの製造において、反応工程での成分a1の固形分と成分a2の固形分の割合(成分a1/成分a2)は、質量比で40/60〜90/10(合計100)が好ましく、50/50〜80/20がより好ましい。成分a1/成分a2が90/10以下である場合、反応系が白濁したり、ゲルが生成したりする等の不都合を防止でき、また、これを用いた硬化被膜はクラックが発生し難くなる。また、成分a1/成分a2が40/60以上である場合、反応が十分となり、また、これを用いた硬化被膜の耐擦り傷性が向上する。
【0039】
このように、溶媒中で成分a1と成分a2とを反応させることにより、成分Bと相溶性が良好である成分Aを合成することができるが、本発明の組成物を硬化せしめて得た硬化被膜に耐水性、耐湿性、耐候性、耐熱性等の十分な耐久性を付与するためには、成分Aの酸価を十分低下させることが好ましい。無水ケイ酸から合成されたコロイダルシリカは、シリカ表面の酸性度が高く、該表面を有機シラン化合物で被覆することにより、酸性度を低下させることができる。前記合成方法により、得られる成分Aの酸価は50mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは30mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは20mgKOH/g以下である。該酸価が50mgKOH/g以下である場合には、得られる硬化被膜の耐久性が向上する。
【0040】
本発明の硬化性組成物の配合比率は特に限定されないが、成分Aの使用量は、固形分量で成分Aおよび成分Bの合計固形分100質量部中10〜90質量部が好ましく、20〜80質量部がより好ましく、25〜70質量部がさらに好ましい。成分Aの使用量が10質量部以上であると、硬度が十分となり、得られる硬化被膜に十分な耐擦り傷性や耐久性が発現する。また、90質量部以下である場合には、得られる硬化被膜にクラックが発生しにくくなる。
【0041】
本発明の組成物において、成分Bとして用いるシリコーン化合物を除くエチレン性不飽和化合物は、成分Aと効率よく反応し、ハードコート層の硬化性を向上させる成分であり、また、基材との密着性も付与する必須成分である。
【0042】
成分Bとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル、トリスエトキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリル酸エステル、エトキシレーテッドペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリル酸エステル、エトキシレーテッドペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリル酸エステル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステル等の多官能(メタ)アクリル酸エステル類;ビス(2−アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4−ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ノナンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリシクロデカンジメタノール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエトキシレーテッドビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロポキシレーテッドビスフェノールA等のジ(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、2−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチルビシクロヘプタン、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸テトラシクロドデカニル等の(メタ)アクリル酸エステル類;ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル類、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのγ−ブチロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ネオペンチルグリコールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ブチレングリコールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、シクロヘキサンジメタノールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ジシクロペンタンジオールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールFのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル等のカプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリル酸エステル類;酢酸ビニル、酪酸ビニル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アジピン酸ジビニル等のビニル化合物類;エチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ジアリルフタレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のアリル化合物類;アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチルアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド等のアクリルアミド類;フタル酸、アジピン酸等の多塩基酸、エチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコールおよび(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応で得られるポリエステルポリ(メタ)アクリレート類;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類とエピクロルヒドリンの縮合反応で得られるビスフェノール型エポキシ樹脂に、(メタ)アクリル酸またはその誘導体を反応させたエポキシ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。これらの化合物は、1種でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0043】
これらの中でも、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたウレタントリ(メタ)アクリレート、有機ジイソシアネートとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンヘキサ(メタ)アクリレート等が硬化性および得られる硬化被膜の耐擦り傷性に優れるため特に好ましい。
【0044】
本発明の組成物において、成分Bの使用量は、成分Aおよび成分Bの合計量100質量部中10〜90質量部が好ましく、20〜80質量部がより好ましく、30〜75質量部がさらに好ましい。成分Bの使用量が、10質量部以上である場合は、得られる硬化被膜の耐久性、および基材との密着性が向上する。また、90質量部以下である場合には、得られる硬化被膜の耐擦り傷性が向上する。
【0045】
本発明の組成物において使用する成分Cは、得られる硬化被膜に撥水撥油性を付与するための成分であり、パーフルオロアルキル基および(メタ)アクリレート基を有する共重合体である。
【0046】
その製法については、特に限定しないが、例えば、分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合およびフルオロアルキル(またはフルオロアルキレン)基を有する化合物(以下、「成分c1」と略記)と、(メタ)アクリル酸グリシジルエステルと、それ以外の少なくとも1種の分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物(c2)(以下、「成分c2」と略記)の共重合体に(メタ)アクリル酸を反応させて得ることができる。成分c1、(メタ)アクリル酸グリシジルエステルおよび成分c2の組成比は特に限定されない。また、(メタ)アクリル酸は、共重合体中の(メタ)アクリル酸グリシジルエステルのモル数を超えない範囲で適宜用いることができる。
【0047】
成分c1の具体例としては、CF3(CF23CH2OCOC(CH3)=CH2、CF3(CF25CH2OCOCH=CH2、(CF32CF(CF25(CH22OCOCH=CH2、CF3(CF27SO2N(C37)(CH22OCOCH=CH2、CF3(CF27SO2N(CH3)(CH22OCOC(CH3)=CH2、CF3(CF27SO2N(C25)(CH22OCOCH=CH2、CF3(CF27CONH(CH22OCOCH=CH2、(CF32CF(CF26(CH23OCOCH=CH2、(CF32CF(CF26CH2CH(OCOCH3)OCOC(CH3)=CH2、(CF32CF(CF26CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2、(CF2Cl)(CF3)CF(CF27CONHCOOCH=CH2、H(CF210CH2OCOCH=CH2
CF2Cl(CF210CH2OCOC(CH3)=CH2、CF3(CF27CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2、CF3(CF25CH2CH(OH)CH2OCOC(CH3)=CH2、CH2=CHCOOCH2CH2(CF215H、CH2=CHCOOCH2CH21531、CH2=CHCOOCH2CH2(CF214H、CH2=CHCOOCH2CH21429、CH2=CHCOOCH2CH2(CF213H、CH2=CHCOOCH2CH21327、CH2=CHCOOCH2CH2(CF212H、CH2=CHCOOCH2CH21225、CH2=CHCOOCH2CH2(CF211H、CH2=CHCOOCH2CH21123、CH2=CHCOOCH2CH2(CF210H、CH2=CHCOOCH2CH21021、CH2=CHCOOCH2CH2(CF29H、CH2=CHCOOCH2CH2919、CH2=CHCOOCH2CH2(CF28H、CH2=CHCOOCH2CH2817、CH2=CHCOOCH2CH2(CF27H、CH2=CHCOOCH2CH2715、CH2=CHCOOCH2CH2(CF26H、CH2=CHCOOCH2CH2613、CH2=CHCOOCH2CH2(CF25H、CH2=CHCOOCH2CH2511、CH2=CHCOOCH2CH2(CF24H、CH2=CHCOOCH2CH249、CH2=CHCOOCH2CH2(CF23H、CH2=CHCOOCH2CH237、CH2=CHCOOCH2CH2(CF22H、CH2=CHCOOCH2CH225、CH2=CHCOOCH2CH2CF2H、CH2=CHCOOCH2CH2CF3等の単官能フッ素系(メタ)アクリレートや、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,4−トリフルオロブタン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,6−へプタフルオロへキサン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,7,7,7−ノナフルオロヘプタン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ウンデカフルオロオクタン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9−トリデカフルオロノナン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ペンタデカフルオロデカン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11−へプタデカフルオロウンデカン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,12−ノナデカフルオロドデカン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,12−ヘプタデカフルオロドデカン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4−トリフルオロメチル−5,5,5−トリフルオロペンタン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−5−トリフルオロメチル−6,6,6−トリフルオロヘキサン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−3−メチル−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−3−メチル−4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロヘキサン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4−(パーフルオロシクロへキシル)ブタン、1,4−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3−テトラフルオロブタン、1,5−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2、3,3,4,4−ヘキサフルオロペンタン、1,6−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロへキサン、1,7−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロへプタン、1,8−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロオクタン、1,9−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−テトラデカフルオロノナン、1,10−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−へキサデカフルオロデカン、1,11−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−オクタデカフルオロウンデカン、1,12−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11−エイコサフルオロドデカン、1,8−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,7−ジヒドロキシ−4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、1,9−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,8−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6−ヘキサフルオロノナン、1,10−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,9−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,11−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,10−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−デカフルオロウンデカン、1,12−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,11−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ドデカフルオロドデカン、2,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシメチル}プロピオン酸−2−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11−へプタデカフルオロウンデシルエステルのような2官能フッ素系(メタ)アクリル酸エステル;3,3,4,4,5,5,6,6−オクタフルオロ−1,7−オクタジエン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−ドデカフルオロ−1,9−デカジエン、3,3,4,4,5,5,6,6、7,7,8,8,9,9,10,10−ヘキサデカフルオロ−1,11−ドデカジエンのようなジビニルモノマー;共栄社化学(株)製のART−1、ART−3、ART−6、ART−7、ART−10(いずれも商品名)等のパーフルオロポリエーテル系アクリレート類が使用可能である。これらの化合物は、1種でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0048】
また、成分c2の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの化合物は、1種でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0049】
成分Cの使用量は、成分Aおよび成分Bの合計100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましく、0.05〜3質量部がより好ましく、0.1〜2質量部がさらに好ましい。成分Cの使用量が0.01質量部以上である場合には、得られる塗膜の撥水撥油性が向上し、5質量部以下である場合には、耐擦り傷性が向上する。
【0050】
また、本発明の組成物には、塗膜のレベリング性を向上させるための、レベリング剤として、また、得られる硬化被膜の撥水撥油性をさらに向上させる目的でポリエーテル変成シリコーン(以下、「成分D」と略記)および/またはフッ素系界面活性剤(以下、「成分E」と略記)を含有させてもよい。
【0051】
さらに、成分Dとして、ラジカル重合可能な官能基を少なくとも一つ持つポリエーテル変性シリコーン化合物(以下、「成分d1」と略記)、ラジカル重合可能な官能基を持たないポリエーテル変性シリコーン化合物(以下、「成分d2」と略記)があり、これらのいずれか一方を、本発明の組成物に含有させると、その硬化物に良好なスリップ性を付与することができる。なお、一方を使用するときは成分d2を用いるのが好ましく、また、成分d1と成分d2を併用することがより好ましい。
【0052】
成分d1は、ラジカル重合可能な官能基を少なくとも一つ持つポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイドで変成されたシリコーンであれば、特に限定されるものではないが、例えばダイセルUCB(株)製のエベクリル350(商品名)、ビックケミー・ジャパン(株)製のBYK−UV3500(商品名)等が好ましいものとして挙げることができる。これらの化合物は1種でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0053】
成分d2は、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイドで変成されたシリコーンであれば、特に限定されるものではないが、例えば、東レ・ダウコーニング(株)製のL−77、L−720、L−722、L―7001、L−7002、L―7602、L−7604、L−7605、L―7607N、Y―7006、FZ―2104、FZ−2110、FZ―2161、FZ―2162、FZ―2163、FZ―2164、FZ―2165、FZ―2166およびFZ―2171、ペインタッド29、32、54、57、8142、8417、8388A、8353および8336、ビックケミー・ジャパン(株)製のBYK−302、306、307、320、325、330、331、333、337、344および377(いずれも商品名)等が好ましいものとして挙げることができる。これらの化合物は、1種でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0054】
成分Dとして、成分d1と成分d2を併用する場合、これら成分の割合(成分d1/成分d2)は、質量比で10/90〜90/10が好ましく、20/80〜80/20がより好ましく、30/70〜70/30(合計100)がさらに好ましい。成分d1/成分d2が90/10以下である場合、得られる被膜のレベリング性が向上し、成分d1/成分d2が10/90以上である場合、得られる硬化被膜の耐擦り傷性が向上する。
【0055】
成分Dの使用量は、成分Aおよび成分Bの合計100質量部に対して、7〜20質量部が好ましく、8〜18質量部がより好ましく、10〜15質量部がさらに好ましい。成分Dの使用量が成分Aと成分Bの合計100質量部に対して7質量部以上である場合には得られる硬化被膜のスリップ性が向上し、20質量以下である場合には耐擦り傷性が向上する。
【0056】
成分d2を単独で使用する場合は、成分Aおよび成分Bの合計100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましく、0.05〜15質量部がより好ましく、0.1〜10質量部がさらに好ましい。成分d2の使用量が0.01質量部以上である場合には、得られる塗膜のレベリング性と撥水撥油性が向上し、20質量部以下である場合には、耐擦り傷性が向上する。
【0057】
成分Eは、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルアミノスルホン酸塩、パーフルオロアルキル基・親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基・親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル燐酸エステルであれば、特に限定されるものではないが、例えば、大日本インキ(株)製のF−116、F−120、F−144D、F−150、F−160、F−171、F−172、F−178K、F−179、F−191、(株)ビックケミー・ジャパン製のBYK−340(何れも商品名)等が好ましいものとして挙げることができる。これらの化合物は、1種でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0058】
成分Eの使用量は、成分Aおよび成分Bの合計100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましく、0.05〜15質量部がより好ましく、0.1〜10質量部がさらに好ましい。成分Eの使用量が0.01質量部以上である場合には、得られる塗膜のレベリング性と撥水撥油性が向上し、20質量部以下である場合には、耐擦り傷性が向上する。
【0059】
本発明の組成物は、工業的に効率よく光硬化させるために、光重合開始剤(以下、「成分F」と略記)を含有することが好ましい。
【0060】
成分Fの具体例としては、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4−フェニルベンゾフェノン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルホリノプロパン−1−オン、メチルベンゾイルホルメート等が好ましい。
【0061】
さらに、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸アミル、4−ジメチルアミノアセトフェノン等の公知の光増感剤を添加してもよい。これらの化合物は、1種でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0062】
成分Fの使用量は、成分Aおよび成分Bの合計100質量部に対して、0.1〜15質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましく、1〜8質量部がさらに好ましい。成分Fの使用量が、0.1質量部以上である場合得られる塗膜の硬化性が向上し、15質量部以下である場合には硬化被膜に残る臭気が軽減される。
【0063】
以上が本発明の組成物を構成する成分であるが、さらに、必要に応じて、有機溶剤、酸化防止剤、黄変防止剤、ブルーイング剤、顔料、スリップ剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、帯電防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種の添加剤が含まれていてもよい。
【0064】
本発明の組成物を塗装するためには、粘度調整の他、分散安定性、さらには基材との密着性および硬化被膜の平滑性、均一性、硬化被膜の膜厚コントロール容易性などの観点から、有機溶剤を用いることが好ましい。
【0065】
この有機溶剤としては、特に限定されるものではなく、成分Aおよび成分Bの合計100質量部に対して、30〜2000質量部が好ましく、50〜1000質量部がより好ましく、少なくとも1種の有機溶剤を配合すればよい。
【0066】
使用可能な有機溶剤としては、アルコール系、炭化水素系、ケトン系、エーテル系、エステル系、多価アルコール誘導体、ハロゲン化炭化水素系等の有機溶剤から選ぶことができる。
【0067】
該有機溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶剤、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、高沸点芳香族溶剤(スワゾール1000(商品名)等)等の炭化水素系溶剤、MEK、MIBK、DIBK、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、エチルエーテル、THF等のエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸アミル、酢酸メトキシプロピル、酢酸エトキシエチル等のエステル系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メトキシプロパノール、メトキシプロピルアセテート、メトキシブタノール、エチルジグリコール等の多価アルコール誘導体溶剤が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0068】
これらのうち、本発明の組成物の均一溶解性、分散安定性、さらには基材との密着性および被膜の平滑性、均一性などの面から、メトキシプロパノールやメトキシプロピルアセテートが特に好ましい。溶剤を使用する場合、組成物の溶液を塗装した後、活性エネルギー線による硬化を行う前に溶剤を揮発させる必要がある。その手法としては特に限定されるものではないが、自然乾燥のほか、赤外線乾燥、熱風炉による乾燥等公知の手段を用いて、20〜120℃で1〜60分間の熱処理を行ってもよい。
【0069】
なお、塗装方法としては、バーコート塗装、スピンコート塗装、グラビア塗装、スプレー塗装、スクリーン印刷、カーテン塗装、ディップ塗装、ロール塗装等の方法が挙げられる。
【0070】
上記したようにして形成した本発明の組成物の乾燥被膜を活性エネルギー線で硬化する。ここで、活性エネルギー線とは、例えば電子線、紫外線、赤外線、可視光線等、公知の活性エネルギー線が挙げられる。それらの中でも、汎用性が高く、装置のコストや生産性に優れることから、紫外線を利用することが好ましい。その紫外線を発生させる光源としては、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、高周波誘導水銀ランプ等が適している。
【0071】
活性エネルギー線の照射による硬化時の雰囲気下は、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下であっても、空気雰囲気下であってもよい。それらの中でも、簡便で低コストであることから、空気雰囲気下であることが好ましい。
【0072】
なお、硬化の条件としては、上記活性エネルギー線が該乾燥被膜を均一に照射することが望ましく、照射量としては、活性エネルギー線の種類により異なるが、例えば、紫外線では100〜3000mJ/cm2であることが望ましい。
【0073】
本発明の組成物が適用可能な基材は特に限定されるわけではないが、従来から耐擦り傷性、帯電防止性および防汚性等の表面改質の要望のある各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の合成樹脂が挙げられるが、易接着処理を施した無機ガラスなどにも適用可能である。
【0074】
基材の具体例としては、例えば、ポリメチルメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリアリルジグリコールカーボネート樹脂等が挙げられる。特に、ポリメチルメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂は、透明性に優れ、かつ耐擦り傷性の改良要求も強いため、本発明の組成物の硬化被膜を形成する基材として用いると特に有効である。
【0075】
また、本発明の組成物の硬化被膜を形成するのに適した薄型物品としては、特に限定されないが、これらの基材からなる光ディスク成型品、シート状成形品、フィルム状成形品、レンズ状成型品、および各種形状のキャスト法、押し出し法、加圧成形法あるいは射出成形法により得られる物品に好適である。
【実施例】
【0076】
以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明する。なお、実施例および比較例における評価は次のような方法で行った。
【0077】
1.透明性
日立製作所(株)製分光光度計U−3400(商品名)を用いて、空気を対照として、波長400nmにおける光線透過率を測定し、80%以上を良好「○」、80%未満を不良「×」とした。
【0078】
2.耐擦り傷性
JIS K−7204に準拠し、摩耗輪CS−10F、荷重500g、回転数500サイクルの条件で耐擦り傷性テストを行った後、試料を中性洗剤で洗浄し、JIS K−7361に準拠するヘーズメータで曇価を測定した。なお、表中の評価結果は、テスト前に対するテスト後の曇価の増加値を示し、実用レベルである20未満の場合を良好「○」、実用に耐えられないレベルである20以上を不良「×」とした。
【0079】
3.密着性
硬化被膜にカミソリで縦、横それぞれ11本の1.5mm間隔でポリカーボネート基材に達する傷を入れて100個のます目をつくり、セロハンテープ(巾25mm、ニチバン(株)製)をます目に対して圧着させて上方に急激にはがし、基材に残存する、ます目数を数えた。なお、上記の残存する、ます目数は100個のものは密着性が良好「○」、0〜99個のものは密着性に問題有りとして不良「×」とした。
【0080】
4.撥水撥油性
・水の接触角
得られた硬化被膜付きフィルムの硬化被膜面に23℃、相対湿度50%の環境下において、純水0.4μlを1滴で滴下し、協和界面科学(株)製の接触角測定器を用いて水と硬化被膜面間の接触角を測定し、接触角が95°を超えるものを良好「○」、95°以下のものを撥水性に問題有りとして不良「×」とした。
・トリオレインの接触角
純水の代わりにトリオレインを使用する以外は、水の接触角と同様に、トリオレインと硬化被膜面間の接触角を測定し、接触角が55°を超えるものを良好「○」、55°以下のものを撥油性に問題有りとして不良「×」とした。
【0081】
5.スリップ性
角度を変えられる作業台を、水平な台の上に乗せ、作業台に硬化被膜付きフィルムを固定した。これに10gOIML型標準分銅(メトラートレド社製)を乗せ作業台の角度を変えた時、標準分銅が滑り出す角度(転落角)(単位:°)を測定した。転落角が10°以下のものをスリップ性があり良好「○」、10°を超えるものをスリップ性がなく不良「×」とした。
【0082】
6.耐久テスト
試料を、60℃/90%RHの環境下に240時間保持したのち、前記1〜5の評価を再度実施した(評点は同じ)。さらに、表面状態を光学顕微鏡(×400倍)にて観察し、異常が発生していないかどうかを調べた(光学顕微鏡観察)。耐久テストの前後で硬化被膜に変化がないものを良好、耐久テスト後に硬化被膜にクラックが入ったものを不良とした。
【0083】
合成例1[有機被覆シリカA−1(成分A)の製造]
攪拌機、温度計およびコンデンサーを備えた3リットルの4ツ口フラスコに、イソプロパノールシリカゾル(分散媒;イソプロパノール、SiO2濃度;30質量%、一次粒子径;10nm、商品名;OSCAL1432、触媒化成工業(株)製。以下、「OSCAL」と略記)2000g(SiO2分として600g)と3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(商品名;SZ6030、東レ・ダウコーニング(株)製。以下、「SZ6030」と略記)382gを入れ、攪拌しながら昇温し、揮発成分の還流が始まると同時に純水150gを徐々に滴下した。滴下終了後、還流下で2時間攪拌しながら加水分解を行った。
【0084】
加水分解終了後、常圧状態でアルコール、水等の揮発成分を留出させ、固形分濃度が60質量%になった時点でトルエン600gを加え、アルコール、水等をトルエンと一緒に共沸留出した。
【0085】
次に、トルエン1500gを追加し、完全に溶媒置換を行い、トルエン分散系とした。このときの固形分濃度は約40質量%であった。
【0086】
さらに、トルエンを留出させながら110℃で4時間反応を行ない、固形分濃度を約60質量%とした。この後、1−メトキシ−3−プロパノール(以下、「PGM」と略記)1000gを加え、トルエンを蒸発留出させ溶媒置換を行い、PGM分散系とした。得られた有機被覆シリカ分散体(以下、「A−1分散体」と略記)は、黄色状で透明な液体であり、固形分濃度は加熱残分で50質量%であった。なお、加熱残分は、(加熱後の重量(g)/加熱前重量(g))×100(質量%)で示し、加熱条件は105℃で3時間である。
【0087】
また、A−1分散体の酸価は7mgKOH/gであり、有機被覆シリカA−1単体の酸価に換算すると14mgKOH/gであった。
【0088】
合成例2[有機被覆シリカA−2(成分A)の製造]
攪拌機、温度計およびコンデンサーを備えた3リットルの4ツ口フラスコに、メタノールシリカゾル(分散媒;メタノール、SiO2濃度;30質量%、一次粒子径;12nm、商品名;MT−ST、日産化学工業(株)製。以下、「MT−ST」と略記)1200g(SiO2分として360g)と、SZ6030(商品名)230gを入れ、攪拌しながら昇温させ、揮発成分の還流が始まると同時に純水100gを徐々に滴下した。滴下終了後、還流下で2時間攪拌しながら加水分解を行った。
【0089】
加水分解終了後、常圧状態でアルコール、水等の揮発成分を留出させ、固形分濃度が60質量%の時点でトルエン720gを追加し、アルコール、水等をトルエンと一緒に共沸留出させた。
【0090】
次に、トルエン1000gを追加し、完全に溶媒置換を行い、トルエン分散系とした。このときの固形分濃度は約40質量%であった。
【0091】
さらに、トルエンを留出させながら110℃で4時間反応を行ない、固形分濃度を約60質量%とした。この後さらにPGM 1000gを追加し、トルエンを蒸発留出させ溶媒置換を行い、メトキシプロパノール分散系とした。得られた有機被覆シリカ分散体(以下、「A−2分散体」と略記)は、黄色状で透明な液体であり、固形分濃度は加熱残分で50質量%であった。また、A−2分散体の酸価は8mgKOH/gであり、有機被覆シリカA−2単体の酸価に換算すると16mgKOH/gであった。
【0092】
合成例3[パーフルオロアルキル基および(メタ)アクリレート基を有する共重合体C−1(成分C)の製造]
メタクリル酸メチル80g、メタクリル酸グリシジル688g、スチレン32g、メタクリル酸ヘプタデカフルオロデシル800g、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(商品名;パーヘキシルO、日本油脂(株)製)160gおよび酢酸n−ブチル480gの混合溶液を調製した。
【0093】
次に、攪拌機および冷却管付きの5リットル4つ口フラスコに、酢酸n−ブチル800gを仕込み、窒素置換しながら120℃に昇温した後、上記調製混合溶液を3時間かけて滴下し攪拌反応させた後、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート16gを酢酸n−ブチル160gに溶解させたものを0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、130℃で2時間加熱した。加熱終了後フラスコ内を空気で置換した後、90℃でテトラエチルホスフォニウムブロマイド32g、アクリル酸320gおよび酢酸n−ブチル160gの混合液を1時間かけて滴下し攪拌した後、90℃で8時間加熱攪拌した。酸価が5mgKOH/g以下になったことを確認して反応を終了した。
【0094】
得られた重合体溶液は、共重合体C−1を51質量%(不揮発分換算)で含んでおり、共重合体C−1の重量平均分子量は4300であった。
【0095】
実施例1
(1)活性エネルギー線硬化性組成物の調製
成分Aとして、A−1分散体(合成例1で製造)100質量部(A−1として50質量部、PGMとして50質量部)、成分Bとして、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名;カヤラッドDPHA、日本化薬(株)製。以下、「DPHA」と略記)50質量部、成分Cとして、共重合体C−1(合成例3で製造)溶液0.4質量部(C−1として0.2質量部、酢酸n−ブチルとして0.2質量部)、成分D(成分d2)として、ポリアルキレンオキシ変性シリコーン化合物(商品名:ペインタッド29、東レ・ダウコーニング(株)製。以下、「P29」と略記)5質量部、成分Fとして、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(以下、「HCPK」と略記)8質量部、希釈溶剤として、PGM 35質量部および重合禁止剤として、ハイドロキノンモノメチルエーテル(以下、「MEHQ」と略記)0.05質量部を混合攪拌し、淡黄色透明で、粘度(25℃、E型粘度計による)が25mPa・sである活性エネルギー線硬化性組成物を得た。
【0096】
(2)評価用硬化被膜の形成
上記で作成した硬化性組成物を、厚み97μmのポリカーボネートフィルム上に、バーコータを用いて硬化膜の厚みが3μmとなるように塗装し、80℃の熱風乾燥オーブン中で5分間かけて希釈溶剤を乾燥させた。その後、高圧水銀灯(出力160w/cm、ランプ高さ15cm)を用いて、塗装面に積算光量500mJ/cm2(オーク(株)製の積算光量計UV−351(商品名)にて測定)の紫外線を照射し、フィルム上に硬化被膜を形成した。
【0097】
(3)硬化被膜の評価
上記評価方法にて、上記(2)評価用硬化被膜の形成にて得られた硬化被膜を評価し、その結果を第1表に示した。
【0098】
実施例2〜7、比較例1〜4
第1表に記載の組成に変更する以外は実施例1と同様に硬化被膜を作成し、その評価を実施例1と同様に行なった。その結果を第1表に示した。
【0099】
実施例8
さらに、成分d1として、ラジカル重合可能な官能基を少なくとも一つ持つポリアルキレンオキサイド変成シリコーン「エベクリル350」(商品名、ダイセルUCB(株)製。以下、「EB350」と略記)5質量部を加えること以外は実施例1と同様にして、淡黄色透明で、粘度(25℃、E型粘度計による)22mPa・sの活性エネルギー線硬化性組成物を得、以下、実施例1と同様に硬化被膜を作成し評価した。結果を第2表に示した。
【0100】
実施例9〜23および比較例5〜9
第2表に記載の組成に変更すること以外は実施例8と同様に硬化被膜を作成し評価し、結果を第2表に示した。
【0101】
第1表、第2表中の組成物欄の略号は以下の化合物を示す。また、評価欄の( )内の数値は測定値を、「○」「×」等は上記評価の判定結果を示している。
A−1 :合成例1で作製した有機被覆シリカA−1(成分A)
A−2 :合成例2で作製した有機被覆シリカA−2(成分A)
DPHA :ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名;カヤラッドDPHA、日本化薬(株)製)(成分B)
UK6074 :紫外線硬化型アクリル系化合物「ダイヤビームUK−6074」(商品名、三菱レイヨン(株)製)(成分B)
PETA :ペンタエリストールテトラアクリレート(商品名:アロニックスM−306、東亞合成(株)製)(成分B)
HBPE4 :紫外線硬化型アクリル系化合物「ニューフロンティアGX−8345」(商品名、第一工業製薬(株)製)(成分B)
C−1 :合成例3で作製したパーフルオロアルキル基および(メタ)アクリレート基を有する共重合体C−1(成分C)
EB350 :ラジカル重合可能な官能基を有するポリアルキレンオキサイド変成シリコーン化合物「エベクリル350」(商品名、ダイセルUCB(株)製)(成分D中の成分d1)
BYK3500:ポリエーテル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン「BYK−UV3500」(商品名、ビックケミー・ジャパン(株)製)(成分D中の成分d1)
L7001 :ポリアルキレンオキサイド変成シリコーン化合物「L―7001」(商品名、東レ・ダウコーニング(株)製)(成分D中の成分d2)
P29 :ポリアルキレンオキサイド変性シリコーン化合物「ペインタッド29」(商品名、東レ・ダウコーニング(株)製)(成分D中の成分d2)
BKY306 :ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン「BYK−306」(商品名、ビックケミー・ジャパン(株)製)(成分D中の成分d2)
PFBSL :ペルフルオロブタンスルホン酸リチウム(成分E)
BYK340 :ポリマー型フッ素変性界面活性剤「BYK−340」(商品名(株)ビックケミー・ジャパン製)(成分E)
HCPK :1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(成分F)
PGM :1−メトキシ−2−プロパノール(溶媒)
MEHQ :ハイドロキノンモノメチルエーテル(重合禁止剤)
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
【表3】

【0105】
【表4】

【0106】
【表5】

【0107】
第1表に示した通り、本発明の実施例では、透明性、防汚性、ハードコート性に優れた硬化被膜を形成することができた。一方、本発明の範囲外である比較例1、2では、パーフルオロアルキル基および(メタ)アクリレート基を有する共重合体を組成物中に含んでいないために撥水撥油性に優れる硬化被膜を得ることができなかった。また、比較例3では、添加剤としてフッ素変性ポリマーであるBYK−340(商品名)を含んでいるため、硬化被膜について初期の撥水撥油性は良好であったが、耐久テスト後の撥水撥油性は不良であった。比較例4では、本発明で必須である成分Aを含まないために、耐擦り傷性に優れた硬化被膜を得ることができなかった。
【0108】
第2表に示した通り、本発明の実施例では、透明性、防汚性、ハードコート性に優れた硬化被膜や、さらにスリップ性にも優れた硬化被膜を形成することができた。一方、本発明の範囲外である比較例5では、パーフルオロアルキル基および(メタ)アクリレート基を有する共重合体を組成物中に含んでいないために撥水撥油性に優れる硬化被膜を得ることができなかった。また、比較例6では、添加剤としてフッ素変性ポリマー(BYK−340)を含んでいるため、硬化被膜について初期の撥水撥油性は良好であったが、耐久テスト後の撥水撥油性は不良であった。比較例7では、本発明で必須である成分Aを含まないために、耐擦り傷性に優れた硬化被膜を得ることができなかった。
【0109】
使用例1
ポリカーボネート樹脂「パンライトAD9000TG」(商品名、帝人化成(株)製)を射出成型して得た光ディスク形状を有する透明円盤状鏡面基板(直径12cm、板厚1.2mm、反り角0度)の片面に、実施例1で使用した硬化性組成物を、膜厚が2.5μmとなるようにスピンコートし、実施例1と同様の条件にて希釈溶剤乾燥および紫外線硬化を行い、硬化被膜を形成した透明光ディスクを得た。
【0110】
得られた透明光ディスクについて、光ディスク光学機械特性測定装置「DLD−3000」(商品名、ジャパンイーエム(株)製)を用いて、20℃、50%RH環境下にて、反り角を測定すると、0.1°であった。次いで、該光ディスクを80℃、85%RHの環境下に100時間放置し、更に、20℃、50%RHの環境下に100時間放置した後、再度、反り角を測定すると、0.15°であり、機械精度は良好であった。
【0111】
なお、反り角とは、光ディスク最外周が硬化被膜側に反った大きさを半径方向で測定したときの角度を意味し、本明細書では全外周を一巡りして計測した中で最大の値を反り角とした。
【0112】
使用例2
ポリカーボネート樹脂「パンライトAD9000TG」(商品名)を射出成型して得た光ディスク形状を有する透明円盤状鏡面基板(直径12cm、板厚1.1mm、反り角0°)の片面に、スパッタリング法により、銀合金を膜厚20nmとなるように設けた。
【0113】
その銀合金薄膜上に、下記の組成のカバー層形成用組成物をスピンコートした後、フュージョン社製無電極UV照射システム(Dバルブ)を用いて、塗装面に積算光量1000mJ/cm2(積算光量計UV−351にて測定)の紫外線を照射し、組成物を硬化させて、膜厚98μmの透明カバー層を形成した。
【0114】
カバー層形成用組成物:
ポリカプロラクトンジオール「プラクセル205」(商品名、ダイセル化学工業(株)製)1モル、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン2モルおよび2−ヒドロキシエチルアクリレート2.02モルの比率で合成したウレタンアクリレート70質量部、テトラヒドロフルフリルアクリレート30質量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン3質量部を混合溶解してカバー層形成用組成物とした。
【0115】
つぎに、前記カバー層上に使用例1と同様にして硬化被膜を形成し、合計100.5μmの透明カバー層を有する光ディスクを得た。
【0116】
得られた光ディスクについて、使用例1と同様に、20℃、50%RH環境下にて、反り角を測定すると、0.15°であった。次いで、該光ディスクを80℃、85%RHの環境下に100時間放置し、更に、20℃、50%RHの環境下に100時間放置した後、反り角を測定すると、0.20°であり、機械精度良好であった。また、微分干渉顕微鏡にて800倍の倍率での観察では銀合金薄膜には、ピンホール、白化等の腐食は発生していなかった。
【0117】
使用例3
実施例8で使用した硬化性組成物を用いること以外は使用例1と同様にして硬化被膜を形成した透明光ディスクを得た。得られた透明光ディスクについて、20℃、50%RH環境下にて、反り角を測定すると、0.1°であった。次いで、該光ディスクを80℃、85%RHの環境下に100時間放置し、更に、20℃、50%RHの環境下に100時間放置した後、再度、反り角を測定すると、0.15°であり、機械精度は良好であった。
【0118】
使用例4
実施例8で使用した硬化性組成物を用いること以外は使用例2と同様にして、合計100.5μmの透明カバー層を有する光ディスクを得た。
【0119】
得られた光ディスクについて、20℃、50%RH環境下にて、反り角を測定すると、0.15°であった。次いで、該光ディスクを80℃、85%RHの環境下に100時間放置し、更に、20℃、50%RHの環境下に100時間放置した後、反り角を測定すると、0.20°であり、機械精度良好であった。また、微分干渉顕微鏡にて800倍の倍率での観察では銀合金薄膜には、ピンホール、白化等の腐食は発生していなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、成分A:コロイダルシリカ微粒子(a1)と有機シラン化合物の加水分解生成物(a2)を縮合反応して得られる有機被覆シリカ、成分B:シリコーン化合物を除くエチレン性不飽和化合物および成分C:パーフルオロアルキル基と(メタ)アクリレート基を有する共重合体からなる活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項2】
成分A以外のポリエーテル変性シリコーン化合物であり、ラジカル重合可能な官能基を少なくとも一つ持つ化合物(d1)とラジカル重合可能な官能基を持たない化合物(d2)とをさらに含む請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。


【公開番号】特開2006−219657(P2006−219657A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249790(P2005−249790)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】