説明

活性エネルギー線硬化組成物

【課題】本発明の目的は、硬化後の硬度が高く、硬化前は常温で非粘着性の成形可能な固体である活性エネルギー線硬化組成物を提供することにある。
【解決手段】
(A)環状構造を有し2個のイソシアネート基を分子内に持つ有機イソシアネートと、環状構造を有し2個の水酸基を分子内に持つポリオールと、1個の水酸基を分子内に持つ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られたウレタン(メタ)アクリレート、
(B)(メタ)アクリレート、および
(C)光重合開始剤
を含有することを特徴とする、活性エネルギー線硬化組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は活性エネルギー線照射によって硬化する活性エネルギー線硬化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化性または熱硬化性樹脂組成物を用いて表面または表層に微細な形状を賦形した成形物は、光学部品、光電子部品等として種々の光学機器、液晶表示機器、プロジェクション機器、光通信機器等の精密機器に使用されている。前記用途に用いる部品、部材の代表例としては、例えば、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、マイクロレンズ、プリズムシート、光反射シート、光拡散シート、ホログラム、回折格子、インモールド成形用転写フィルム、転写成形物、フォトレジスト等の加工成形物等が挙げられる。
【0003】
前記部品、部材の各分野においては、微細形状を賦形するための技術として、ナノインプリント法が広く適用されている。ナノインプリント法としては、光硬化性樹脂組成物を用いた光ナノインプリント法、熱硬化性樹脂組成物を用いた熱ナノインプリント法が用いられてきた。前記ナノインプリント法とは、転写すべきパターンが予め形成された型(モールド、テンプレート等)を、被転写基板上に塗布した光硬化性樹脂組成物または熱硬化性樹脂組成物からなるレジスト膜に押し付け、光照射または加熱によってレジスト膜を硬化させることでパターンを被転写基板に転写するものである。
【0004】
しかしながら、従来技術では、未硬化のレジスト膜は硬度、強度等の膜物性が不十分であったため、微小な形状の転写型の型押しにより破壊、形崩れ、剥離等が起こり、微細な形状の賦形は困難であった。
【0005】
そこで、この問題を解決するために、特定の光硬化型樹脂組成物の性質を利用した2段階硬化という手段が提案された(特許文献1)。しかしながら、この手段では硬化させるために2工程が必要であり、工業的には非常に不利であった。
【0006】
さらに、前記ナノインプリント技術に樹脂組成物を適用する場合、硬化前の樹脂組成物をシート状で提供することが好ましいが、従来技術では、硬化前の樹脂組成物は、液体もしくは粘着性の高い固体であり、巻き取り、巻き出し、積み重ねが困難であるという点から、上記問題を解決する改良された樹脂組成物の提供が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−286301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、硬化後の硬度が高く、硬化前は常温で非粘着性の成形可能な固体である活性エネルギー線硬化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記の課題を解決するために検討を重ねた結果、(A)(a)環状構造を有し2個のイソシアネート基を分子内に持つ有機イソシアネートと、(b)環状構造を有し2個の水酸基を分子内に持つポリオールと、(c)1個の水酸基を分子中に有する(メタ)アクリレートを反応させることにより得られたウレタン(メタ)アクリレートと、(B)(メタ)アクリレートと、(C)光重合開始剤を用いることにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0010】
本発明は以下の内容を含むものである。
[1]
(A)(a)環状構造を有し2個のイソシアネート基を分子内に持つ有機イソシアネートと、(b)環状構造を有し2個の水酸基を分子内に持つポリオールと、(c)1個の水酸基を分子内に持つ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られたウレタン(メタ)アクリレート、
(B)(メタ)アクリレート、および
(C)光重合開始剤
を含有することを特徴とする、活性エネルギー線硬化組成物。
[2]硬化前の該活性エネルギー線硬化組成物が、常温で非粘着性を示す固体であることを特徴とする、前記[1]に記載の活性エネルギー線硬化組成物。
[3]前記(A)に記載された環状構造を有し2個のイソシアネート基を分子内に持つ有機イソシアネートがイソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、およびm−キシリレンジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする、前記[1]または[2]に記載の活性エネルギー線硬化組成物。
[4]前記(A)に記載された環状構造を有し2個の水酸基を分子内に持つポリオールがスピログリコール、ビス−2−ヒドロキシエチルテレフタレート、および水素化ビスフェノールAからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化組成物。
[5]前記(A)に記載された1個の水酸基を分子内に持つ(メタ)アクリレートがトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、およびジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化組成物。
[6]前記(B)の(メタ)アクリレートが、多官能アクリルモノマーであることを特徴とする、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化組成物。
[7]前記(B)の(メタ)アクリレートが、3個以上の(メタ)アクリル基を有することを特徴とする、前記[6]に記載の活性エネルギー線硬化組成物。
[8]前記(B)の(メタ)アクリレートが、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、およびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする、前記[7]に記載の活性エネルギー線硬化組成物。
[9]硬化後の該活性エネルギー線硬化組成物のJIS K5600に基づいて測定される表面硬度が、鉛筆硬度でH以上であることを特徴とする、前記[1]〜[8]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化組成物。
[10]少なくとも前記[1]〜[9]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化組成物からなる活性エネルギー線硬化性シート、および該活性エネルギー線硬化組成物を少なくとも表面に有する活性エネルギー線硬化組成物の予備成形品。
[11]前記[1]〜[9]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化組成物、前記[10]に記載の活性エネルギー線硬化性シート、または前記[10]に記載の活性エネルギー線硬化組成物の予備成形品からナノインプリント法、インモールド成形法、または熱溶融によって成形硬化品を製造する方法。
[12]前記[1]〜[9]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化組成物、前記[10]に記載の活性エネルギー線硬化性シート、または前記[10]に記載の活性エネルギー線硬化組成物の予備成形品に活性エネルギー線を照射して得られる成形硬化品。
【発明の効果】
【0011】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物は、硬化後の硬度が高く、硬化前は常温で非粘着性の成形可能な固体である。常温で非粘着性の固体であるため、シート状に予備成形した際にシートと基材、およびシート同士の粘着がなく、巻き取り、巻き出し、積み重ねが容易であり、シート状での提供に好適である。また、硬化後は硬度が高く、耐酸性、耐アルカリ性、耐溶剤性、耐水性、耐熱性にも優れるため、成形硬化後のハードコートが不要である。さらに、本発明の活性エネルギー線硬化組成物は比較的低い温度で合成できるため、工業的に有利である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体的に説明する。本発明の活性エネルギー線硬化組成物は、(A)(a)環状構造を有し2個のイソシアネート基を分子内に持つ有機イソシアネートと、(b)環状構造を有し2個の水酸基を分子内に持つポリオールと、(c)1個の水酸基を分子内に持つ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られたウレタン(メタ)アクリレート、(B)(メタ)アクリレート、および(C)光重合開始剤を含有することを特徴とする。
【0013】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物は、活性エネルギー線を照射することで硬化する組成物であって、常温で非粘着性の成形可能な固体である。本発明において活性エネルギー線とは、化合物の化学結合に対してエネルギーを与え、その結合そのもの、もしくはその化合物の高次構造に対して変化を与えうるエネルギー線のことを広く意味する。例えば、赤外線、可視光線、紫外線、X線、放射性同位元素の崩壊によるガンマ線、あるいは、電子線、イオン線、中性原子線、他の素粒子線、例えば、陽子線、中性子線、陽電子線等が挙げられ、本発明においては紫外線が好ましく用いられる。該活性エネルギー線の発生方法、照射方法は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、公知の手段を用いてよい。また、本発明において常温とは5℃〜35℃程度の範囲を意味する。
【0014】
本発明に用いる、(A)(a)環状構造を有し2個のイソシアネート基を分子内に持つ有機イソシアネートと、(b)環状構造を有し2個の水酸基を分子内に持つポリオールと、(c)1個の水酸基を分子内に持つ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られたウレタン(メタ)アクリレート(以下、(A)成分ともいう。)について説明する。
【0015】
本発明に用いる(a)環状構造を有し2個のイソシアネート基を分子内に持つ有機イソシアネート(以下、(a)成分ともいう。)としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフタレン1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4−ジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられ、特に、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネートが好ましく挙げられる。
【0016】
本発明に用いる(b)環状構造を有し2個の水酸基を分子内に持つポリオール(以下、(b)成分ともいう。)としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、例えば、1,4シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物、ビス−2−ヒドロキシエチルテレフタレート、環状構造を有するポリエステルジオール、環状構造を有するポリカーボネートジオール等、また、これらの構造を有する誘導体が挙げられ、特に、スピログリコール、ビス−2−ヒドロキシエチルテレフタレート、水素化ビスフェノールAが好ましく挙げられる。また、(b)成分としては、製造の簡便性および製品の物性等の点から、2個の水酸基を分子内に持つものが用いられる。
【0017】
前記(a)成分および(b)成分における環状構造の環としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、3〜7員環等が挙げられ、この環には、別の環が縮合されていてもよいし、置換基を有していてもよい。中でも5または6員環構造が好ましい。前記環には、酸素原子、窒素原子、イオウ原子を含んでいてもよく、置換基を有していてもよい芳香族基、または置換基を有していてもよい脂環基等が挙げられる。前記芳香環の具体例としては、ベンゼン環、フラン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、チオフェン環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環等が挙げられる。前記脂環式構造の具体例としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、ピロリジン環、ジオキソラン環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、ピラン環、ピペリジン環、ジオキサン環、モルホリン環、ピペラジン環、ノルボルネン環が挙げられる。前記環としては、ベンゼン環、シクロヘキサン環が好ましい。また、スピロ環も好ましく挙げられる。前記置換基としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、炭素数1〜10の直鎖または分岐アルキル基またはアルコキシ基等が挙げられる。具体的なアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基が挙げられ、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基が挙げられる。
【0018】
前記(b)成分の使用割合は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、(a)成分100重量部に対して、通常40〜300重量部程度であり、60〜200重量部程度が好ましい。
【0019】
本発明に用いる(c)1個の水酸基を分子内に持つ(メタ)アクリレート(以下、(c)成分ともいう。)としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられ、硬化後の硬度が高いものが好ましいという点から、硬化時の架橋密度が高いものとして、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。なお、硬化前の硬度が高いものが好ましい場合は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を併用することが好ましい。
【0020】
前記(c)成分の使用割合は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、(a)成分100重量部に対して、通常5〜300重量部程度であり、10〜200重量部程度が好ましい。
【0021】
前記(A)成分の好ましい数平均分子量は500〜10000であり、特に800〜3000であることが好ましい。(A)成分のウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量が500未満であると、本発明の活性エネルギー線硬化組成物を非粘着性の固体として得ることができず、逆に数平均分子量が10000を超えると、成形が困難になるため、好ましくない。
【0022】
本発明に用いる(B)(メタ)アクリレートとしては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、ブトキシ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられ、硬化後の硬度が高くなることから、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリレートが好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが特に好ましい。なお、メチルメタクリレート、エチルエタクリレート等は、毒性、低沸点等の実用的観点から用いないことが好ましい。
【0023】
前記(B)(メタ)アクリレートの使用割合は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、(A)成分100重量部に対して、通常0〜100重量部程度であり、10〜50重量部程度が好ましい。
【0024】
本発明に用いる、(C)光重合開始剤としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパノン]、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィノキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ベンゾインアルキルエーテル、ベンゾイル安息香酸メチル、カンファーキノン、好ましくはオリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパノン]、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンである。
【0025】
前記(C)光重合開始剤の使用割合は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、(A)成分100重量部に対して、通常1〜10重量部程度であり、3〜7重量部程度が好ましい。
【0026】
前記(C)光重合開始剤には必要に応じて光増感剤を添加することもできる。光増感剤としては、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等が挙げられる。
【0027】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物を製造する方法は、通常以下の工程を含む。
(1)前記(a)成分、(b)成分および重合禁止剤を混合し、触媒の存在下に反応させ、次いで(c)成分を加えて反応させ、前記(A)成分溶液を得る工程、
(2)前記(1)工程で得た(A)成分溶液に前記(B)(メタ)アクリレート、(C)光重合開始剤を混合し、活性エネルギー線硬化組成物溶液を得る工程、および
(3)前記(2)工程で得た溶液を乾燥させる工程。
【0028】
前記(1)工程に用いる(a)成分、(b)成分、および(c)成分の使用割合は上記の通りである。
【0029】
前記(1)の工程には、通常、重合禁止剤を用いる。前記重合禁止剤としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、4−メトキシフェノール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等が挙げられる。これらの重合禁止剤は、単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。
【0030】
前記重合禁止剤の使用割合は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、(A)成分100重量部に対して、通常0.1〜1重量部程度であり、0.2〜0.5重量部程度が好ましい。
【0031】
前記(1)の工程は通常溶媒の存在下に行うことができる。前記(1)の工程で用いる溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒等が挙げられる。また、前記(c)成分を加える際に追加してもよい。
【0032】
前記(1)工程の反応に触媒としては、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ジブチルスズジラウレート(ジラウリル酸ジ−n−ブチル錫)、ジブチルスズジオクテート(オクチル酸第一錫)に代表される錫系触媒、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等のチタン系触媒、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム等のジルコニウム系触媒、トリエチルアミン、ジアミノビシクロオクテン等のアミン系触媒等のウレタン化触媒等が挙げられる。前記触媒は、反応原料の総量100重量部に対して0.01〜1重量部用いるのが好ましい。また、前記(c)成分を加える際に追加してもよく、その際の使用量も前記と同様である。
【0033】
前記(1)工程で、(a)成分、(b)成分および重合禁止剤を混合する順番は特に限定されるものではない。(a)成分と(b)成分を反応させる際の反応温度は通常30〜70℃、好ましくは45〜65℃である。また、(a)成分と(b)成分を反応させる際の反応時間は通常1〜5時間、好ましくは3〜5時間である。
【0034】
前記(1)工程で、(c)成分を加えて反応させる際の反応温度は通常10〜60℃、好ましくは40〜60℃である。また、(c)成分を加えて反応させる際の反応時間は通常1〜10時間、好ましくは3〜8時間である。
【0035】
前記(2)工程で混合される(B)(メタ)アクリレート、(C)光重合開始剤の使用割合は上記の通りである。混合攪拌の温度は、特に限定されず、通常10〜60℃、好ましくは30〜60℃である。混合攪拌の時間は、特に限定されず、通常1〜3時間、好ましくは1〜2時間である。
【0036】
また、前記(2)工程で混合される(B)(メタ)アクリレートは、前記(1)工程で(c)成分を加える際、同時に混合されてもよい。(B)(メタ)アクリレートを前記(1)工程で混合する場合、反応温度は通常10〜60℃、好ましくは40〜60℃である。反応時間は通常1〜10時間、好ましくは3〜8時間である。
【0037】
前記(3)の乾燥温度は、特に限定されないが、80〜150℃が好ましく、100〜120℃が特に好ましい。乾燥時間は、特に限定されないが、30〜120秒が好ましく、40〜60秒が特に好ましい。また、本発明の活性エネルギー線硬化組成物は、前記(3)工程の乾燥を行わず溶媒と共に提供されてもよい。
【0038】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物中に含まれる未反応のNCO基は、非粘着性、硬化後の硬度、貯蔵安定性、毒性等の点から、該活性エネルギー線硬化組成物100重量部に対して1重量部以下が好ましい。
【0039】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物は下記実施例1および2のように予めシート状に予備成形された状態で提供されてもよい。シート状に予備成形された本発明の活性エネルギー線硬化組成物の厚さは、通常2nm〜3mm、前記ナノインプリント法に適するという点から、好ましくは10nm〜250μm、より好ましくは50nm〜50μmである。
【0040】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物をシート状に予備成形する方法は、本発明の効果を妨げない限り限定されるものではないが、通常、溶媒中に溶解した該活性エネルギー線硬化組成物を基材に塗布して乾燥させる方法を用いる。また、基材を用いてシート状に予備成形した場合、該活性エネルギー線硬化組成物は、基材から剥離させず積層されたままの状態で基材と共に提供されてもよい。
【0041】
該基材としては、本発明の効果を妨げない限り限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタート、シクロオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ABS樹脂、ガラス等が用いられる。特に、前記ナノインプリント法に好適であるという点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、シクロオレフィンが好ましく用いられる。
【0042】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物は前記のように常温で非粘着性の成形可能な固体であるため、前記基材シートに積層された積層シート(以下、「積層シート」ともいう。)として提供される際、該積層シート同士の粘着がなく、巻き取り、巻き出し、積み重ね等、取り扱いが容易である。
【0043】
前記のように本発明の活性エネルギー線硬化組成物は、硬化前はシート状での提供に好適な、非粘着性の成形可能な固体であり、硬化後はハードコート層を必要としない高い硬度が得られるため、工業上有利であり、様々な成形品を製造するための材料として好ましく適用される。例えば、ナノインプリント法およびインモールド成形法等に好適であり、ナノインプリント法に用いられる光硬化性シート、およびインモールド成形法に用いられる転写フィルム等としても好ましく提供される。本発明の活性エネルギー線硬化組成物を用いて該ナノインプリント法で製造される製品としては、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、マイクロレンズ、プリズムシート、光反射シート、光拡散シート、ホログラム、回折格子等の加工成形物等が挙げられ、インモールド成形製品としては、転写成形物、加飾成形物、印刷成形物等が挙げられるが、これに限らず、フォトレジスト等、様々な基材へ表面加工を施すために、幅広く利用できる。
【0044】
本発明においてナノインプリント法とは、表面に微細な凹凸形状を有する鋳型を基板基材上の樹脂材料に押し付けること等によって、鋳型の凹凸形状をインプリント材料に転写させ、凹凸形状が転写されたインプリント材料を硬化させた後に鋳型を剥離させることによって、表面に凹凸形状を有する基板を得る方法をいう。本発明の活性エネルギー線硬化組成物をナノインプリント法に適用する場合、透明な鋳型、透明な基材等を用いる等して、前記硬化の手段として少なくとも活性エネルギー線照射の工程を有する。また、本発明の組成物は非粘着性の成形可能な固体であるため、前記ナノインプリント法において硬化前に鋳型を剥離させ、その後に活性エネルギー線を照射して硬化させてもよい。
【0045】
本発明においてインモールド成形法とは、射出成形法、射出吹込成形法、吹込成形法、真空成形法または圧空成形法等によって各種成形品を製造する際に、成形鋳型の内部に予めシート等を配置しておき、該シート等を成形品の壁面の一部に貼着する成形法をいう。本発明の活性エネルギー線硬化組成物は、該シート等としてインモールド成形法に適用できる。本発明の活性エネルギー線硬化組成物をインモールド成形法に適用する場合、該インモールド成形法は、前記貼着の後に該活性エネルギー線硬化組成物に活性エネルギー線を照射し硬化させ、成形硬化品とする工程を有する。
【0046】
また、本発明の活性エネルギー線硬化組成物をシート状に予備成形して提供する場合、傷がつくのを防ぐために、その片面または両面に保護フィルムを有していてもよい。該保護フィルムとしては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタート、シクロオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリアミド等が用いられ、離型性、製造コスト等の点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンが好ましく用いられる。
【0047】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物は、熱溶融により成形されてもよい。前記「熱溶融により成形」する方法としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、公知の手段を用いてよいが、少なくとも活性エネルギー線照射により硬化させる工程を有するものとする。例えば、本発明の活性エネルギー線硬化組成物を加熱することによって溶融し、型に流し込んだ後、冷却して該型から取り外して予備成形品とし、該予備成形品に活性エネルギー線を照射し硬化させる、といった方法が挙げられる。
【0048】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物の活性エネルギー線照射前の硬度は、JIS K5600に基づいて測定される鉛筆硬度で2B〜Hであり、好ましくはHB〜Fである。
【0049】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物は、前記のように活性エネルギー線を照射することによって硬化する。硬化後の表面硬度は、前記の鉛筆硬度でH〜8Hであり、好ましくは2H〜8Hである。
【0050】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物は、本発明の効果を妨げない限り、イソデシルアクリレート、n−ラウリルアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート等他のモノマーを含めてもよいが、非粘着性、硬化後の硬度等の点から含まない方が好ましい。
【0051】
また、本発明の活性エネルギー線硬化組成物には、本発明の効果が失われない範囲内で、各種の添加剤を加えることができる。添加配合する添加剤の例としては、例えば,無機微粒子等のフィラー、染料、蛍光増白剤、酸化防止剤、耐侯剤、帯電防止剤、重合禁止剤、離型剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤等が挙げられる。活性エネルギー線硬化組成物100重量部に対して、前記添加剤の合計は、好ましくは30重量部、より好ましくは20重量部、更に好ましくは10重量部以下の比率を占める。前記数値範囲の上限値を上回ると十分な物性が得られない。
【実施例】
【0052】
以下に実施例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
還流コンデンサー、温度計および攪拌翼を備えたフラスコにビス−2−ヒドロキシエチルテレフタレート34.53g、イソホロンジイソシアネート37.43g、酢酸エチル40g、ジブチルスズジラウレート0.02g、ハイドロキノン0.2gを仕込み、内温65℃で3時間反応させた後、内温55℃でジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの同量混合物(日本化薬社製)を78.04g、酢酸エチル60g、ジブチルスズジラウレート0.02gを追加仕込みし、5時間後にウレタンアクリレート溶液(I)を得た。該溶液を乾燥させて得た中間組成物(I)についてJIS K1603−1に基づきイソシアネート基含有率の測定を行ったところ、未反応のイソシアネート基は、中間組成物(I)100重量部に対して、1重量部以下であった。
ウレタンアクリレート溶液(I)10gに1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.25gを混合し、活性エネルギー線硬化組成物溶液(I)を得た。
厚さ125μmの片面処理PETフィルムにバーコーター#4で活性エネルギー線硬化組成物溶液(I)を塗布し、105℃の乾燥機で1分乾燥させ室温(25℃)に戻して、活性エネルギー線硬化組成物(I)を、前記PETフィルムとの積層シートとして得た。また、JIS K5600による不粘着乾燥性A法に基づいて粘着性評価を行ったところ、巻き取った際の該積層シート同士の粘着性はなかった。JIS K5600に基づいて測定した該積層シートの活性エネルギー線硬化組成物(I)表面における鉛筆硬度はFであった。
得られた活性エネルギー線硬化組成物(I)に紫外線照射装置(フュージョン社製F−450、Hバルブ120W/cm)にて、紫外線400mj/cm照射した。紫外線照射後、硬化物の表面の鉛筆硬度は2Hであった。
【0054】
(実施例2)
還流コンデンサー、温度計および攪拌翼を備えたフラスコにスピログリコール41.45g、トリレンジイソシアネート(2.4、2.6混合物)29.66g、酢酸エチル40g、ジブチルスズジラウレート0.02g、ハイドロキノン0.2gを仕込み、内温65℃で3時間反応させ、内温を55℃でジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの同量混合物(日本化薬社製)を78.89g、酢エチ60g、ジブチルスズジラウレート0.02gを追加仕込みし、5時間後にウレタンアクリレート溶液(II)を得た。該溶液を乾燥させて得た中間組成物(II)についてJIS K1603−1に基づきイソシアネート基含有率の測定を行ったところ、未反応のイソシアネート基は、中間組成物(II)100重量部に対して、1重量部以下であった。
ウレタンアクリレート溶液(II)10gに1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.25gを混合し、活性エネルギー線硬化組成物溶液(II)を得た。
厚さ125μmの片面処理PETフィルムにバーコーター#4で活性エネルギー線硬化組成物溶液(II)を塗布し、105℃の乾燥機で1分乾燥させ室温(25℃)に戻して、活性エネルギー線硬化組成物(II)を、前記PETフィルムとの積層シートとして得た。また、JIS K5600による不粘着乾燥性A法に基づいて粘着性評価を行ったところ、巻き取った際の該積層シート同士の粘着性はなかった。JIS K5600に基づいて測定した該積層シートの活性エネルギー線硬化組成物(II)表面における鉛筆硬度はFであった。
得られた活性エネルギー線硬化組成物(II)に紫外線照射装置(フュージョン社製F−450、Hバルブ120W/cm)にて、紫外線400mj/cm照射した。紫外線照射後、硬化物の表面の鉛筆硬度は2Hであった。
【0055】
(実施例3)
還流コンデンサー、温度計および攪拌翼を備えたフラスコにビス−2−ヒドロキシエチルテレフタレート50.49g、イソホロンジイソシアネート53.87g、酢酸エチル40g、ジブチルスズジラウレート0.02g、ハイドロキノン0.2gを仕込み、内温65℃で3時間反応させた後、内温55℃でペンタエリスリトールトリアクリレートを41.14g、酢酸エチル60g、ジブチルスズジラウレート0.02gを追加仕込みし、5時間後にウレタンアクリレート溶液(III)を得た。該溶液を乾燥させて得た中間組成物(III)についてJIS K1603−1に基づきイソシアネート基含有率の測定を行ったところ、未反応のイソシアネート基は、中間組成物(III)100重量部に対して、1重量部以下であった。
ウレタンアクリレート溶液(III)10gにトリメチロールプロパントリアクリレート2g、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.3g、酢酸エチル76gを混合し、活性エネルギー線硬化組成物溶液(III)を得た。
厚さ50μmの片面処理PETフィルムにバーコーター#4で活性エネルギー線硬化組成物溶液(III)を塗布し、105℃の乾燥機で1分乾燥させ室温(25℃)に戻して、活性エネルギー線硬化組成物(III)を、前記PETフィルムとの積層シートとして得た。また、JIS K5600による不粘着乾燥性A法に基づいて粘着性評価を行ったところ、巻き取った際の該積層シート同士の粘着性はなかった。JIS K5600に基づいて測定した該積層シートの活性エネルギー線硬化組成物(III)表面における鉛筆硬度はFであった。
前記積層シートの活性エネルギー線硬化組成物(III)面にモールド(線幅50nm金属製)を重ね120℃の熱プレスによって2Pa/cmの圧力で15秒間プレスして取り出し、直ちに該積層シートのPETフィルム面から紫外線600mj/cm照射し、冷却することなくモールドを取りはずしたところ、欠陥なくパターニングできていることを確認した。この表面の鉛筆硬度は2Hであった。
【0056】
(実施例4)
実施例2で得たウレタンアクリレート溶液(II)20gと、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパノン]0.6gを混合し、ロータリーエバポレーターにて酢酸エチルを除去し不揮発分99.8%の固形樹脂を得た。この樹脂を加熱溶融してシリコーン樹脂の型に流し込み、室温(25℃)まで冷却し、型より取り外したところ、粘着性のない円盤状の成形物が得られた。この成形物にナイフ彫刻を施すと容易に凹凸模様ができた。前記成形物に紫外線照射装置(フュージョン社製F−450、Hバルブ120W/cm)にて、紫外線1000mj/cm照射したところ、鉛筆硬度が2Hの傷の付きにくい成形硬化物が得られた。
【0057】
(実施例5)
実施例1で得た活性エネルギー線硬化組成物溶液(I)を厚さ125μmの片面処理PETフィルムにバーコーター#16で塗布した後、105℃の乾燥機で1分乾燥させ室温(25℃)に戻して、活性エネルギー線硬化組成物(I)を、前記PETフィルムとの積層シートとして得た。該積層シートの活性エネルギー線硬化組成物(I)面に、表面に凹凸模様を有する厚さ1mmの金属板の凹凸面を接して、120℃の熱プレスによって2Pa/cmの圧力で30秒間プレスしたところ、該活性エネルギー線硬化組成物(I)面には凹凸模様が正確に刻印されていた。得られた該積層シートのPETフィルム面から紫外線600mj/cm照射した後、表面の鉛筆硬度は2Hであった。
【0058】
上記実施例1〜4で使用した試薬等は全て公知の手段により得られるものであり、市販のものを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物は、非粘着性の成形可能な固体として得られるため、特にシート状での提供に好適であり、様々な成形品を工業的に有利な条件で製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a)環状構造を有し2個のイソシアネート基を分子内に持つ有機イソシアネートと、(b)環状構造を有し2個の水酸基を分子内に持つポリオールと、(c)1個の水酸基を分子内に持つ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られたウレタン(メタ)アクリレート、
(B)(メタ)アクリレート、および
(C)光重合開始剤
を含有することを特徴とする、活性エネルギー線硬化組成物。
【請求項2】
硬化前の該活性エネルギー線硬化組成物が、常温で非粘着性を示す固体であることを特徴とする、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化組成物。
【請求項3】
前記(A)に記載された環状構造を有し2個のイソシアネート基を分子内に持つ有機イソシアネートがイソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、およびm−キシリレンジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化組成物。
【請求項4】
前記(A)に記載された環状構造を有し2個の水酸基を分子内に持つポリオールがスピログリコール、ビス−2−ヒドロキシエチルテレフタレート、および水素化ビスフェノールAからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化組成物。
【請求項5】
前記(A)に記載された1個の水酸基を分子内に持つ(メタ)アクリレートがトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、およびジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化組成物。
【請求項6】
前記(B)の(メタ)アクリレートが、多官能アクリルモノマーであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化組成物。
【請求項7】
前記(B)の(メタ)アクリレートが、3個以上の(メタ)アクリル基を有することを特徴とする、請求項6に記載の活性エネルギー線硬化組成物。
【請求項8】
前記(B)の(メタ)アクリレートが、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、およびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする、請求項7に記載の活性エネルギー線硬化組成物。
【請求項9】
硬化後の該活性エネルギー線硬化組成物のJIS K5600に基づいて測定される表面硬度が、鉛筆硬度でH以上であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化組成物からなる活性エネルギー線硬化性シート、および該活性エネルギー線硬化組成物を少なくとも表面に有する活性エネルギー線硬化組成物の予備成形品。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化組成物、請求項10に記載の活性エネルギー線硬化性シート、または請求項10に記載の活性エネルギー線硬化組成物の予備成形品からナノインプリント法、インモールド成形法、または熱溶融によって成形硬化品を製造する方法。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化組成物、請求項10に記載の活性エネルギー線硬化性シート、または請求項10に記載の活性エネルギー線硬化組成物の予備成形品に活性エネルギー線を照射して得られる成形硬化品。

【公開番号】特開2012−1629(P2012−1629A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137607(P2010−137607)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(591195592)大同化成工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】