説明

活性剤が加入された静電的に荷電したフィルター媒体

【課題】顔面に密着しやすく、微生物・毒素が滅菌・不活性化できる顔面マスクを提供する。
【解決手段】顔面マスクは空気フィルター材料とその周囲で使用者の顔の輪郭に接触して覆うように順応した通気性能フィルタークロージャーからなる。フィルタークロージャーは静電特性を有する通気性物質とそこに組み込まれた活性剤から作られる。空気フィルター材料の周囲でバイパスした空気は、フィルタークロージャーを通過して濾過されて呼吸に適した空気として、マスク内に提供される。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
本出願は、それぞれ、2002年9月16日、2002年12月19日および2003年3月28日に出願された米国仮出願第60/411,006、60/434,526および60/458,800に対する優先権の利益を主張し、それぞれの内容は、その全体が本明細書に参照により含まれている。
【0002】
連邦の援助による研究開発に関する宣言
該当せず。
【0003】
コンパクトディスク上の配列の列挙、表またはコンピュータープログラムの表示の付録に対する参照
該当せず。
【0004】
発明の分野
本発明は、静電的に荷電したフィルター媒体に関し、より具体的には、活性剤が加入された静電的に荷電した媒体およびその製造方法に関する。
【0005】
発明の背景
先行技術のフィルター法には、例えば、機械的ろ過−フィルター媒体の孔より大きい粒子の物理的保持;静電的ろ過−粒子を殺傷/不活性化することなしにフィルター内の繊維に粒子を付着させること;および1999年11月9日に本発明者に発行された、「ヨウ素/樹脂消毒剤を用いた空気の消毒」という表題の米国特許第5,980,827号に教示されクレームされたろ過が含まれる。生成物が入り組んだ経路を有する媒体に含まれるとき、改善されたヨウ素化樹脂ろ過が、薄い媒体の中で起こることが測定されている。微生物/毒素を遠回りの経路を通過させることにより微生物/毒素は最終的に殺傷/不活性化される。遠回りの経路を提供するための1つの方法は、不織布媒体を用いることである。
【0006】
「3次元マトリックス構造における粒子の不動化のための方法」という表題の公開された米国特許出願第20010045398において、まず不織材料を製造した後、米国特許第5,639,452号(’452特許)において開示されているもののようなヨウ素化樹脂を、活性剤が樹脂(「トリオシン」樹脂)に進入するようにフィルターの細孔を開く高脈動真空ポンプによりアルコールまたは不完全溶媒を用いて加える。’452特許の内容は、本明細書に全体として参照により組み込まれる。
【0007】
米国特許第6,346,125号は、非静電的に荷電された不織材料に水性抗微生物剤を含ませることを教示する。具体的には、この’125特許は、非静電的に荷電された不織布に水性抗微生物剤を加入させるための特定の方法を記載する。しかしながら、静電特性がないと、微生物が汚染除去のために抗微生物剤と十分な接触時間を有するように不織布はより厚いものでなければならない。
【0008】
米国特許第5,952,092号は、化学的に活性の粒子を有する不織布を教示する。しかしながら、この特許は、本発明におけるような静電的基材を用いることを教示しない。
不織布エレクトレットおよびその製造方法は当該技術において公知である。例えば、米国特許第5,409,766号は、長時間にわたり、高温で高湿の条件で塵埃収集の可能なポリマー組成物で形成されたモノフィラメントで構成されたエレクトレット状態の不織布を記載する。この不織布を製造する方法、および不織布で作られたフィルター空気マスキング材料も開示されている。しかしながら、この先行技術の系は、抗微生物/抗毒素特性を提供しない。したがって、不織布の中にとらわれているけれども、微生物/毒素は、滅菌されていないし、不活性化されていない。一旦不織布の静電特性が消失するか材料が飽和するならば、微生物/毒素は、大気に放出され戻される。
【0009】
静電的に荷電したフィルターは、例えば、顔面マスクに用いられることが知られている。両方について、顔の密封の問題の1つは、周知であり、産業が対処することを試みてきた限界を表している。この問題は、ヒトまたは構造の1つの形態学的な物理的構造から次のものに対し、差異が、100%気密シールを作り出すことが困難であるような広範囲の幾何学的変動を発生させるという事実に存在する。顔面マスクについては、密封を作り出すことの困難は、顔面の大きさと形態の範囲のために皮膚とマスクとの間で起こる。例えば、接着剤シール、平坦で広いシール、および弾力性の材料のシールを用いることのような様々の異なる技術的手段が試行されてきた。産業界は、気密シールを作り出すことについてその精力を傾けてきたが、しかしながら、実際に発生する圧力差は空気をシールと皮膚の間の間隙に入れ、このようにして空気フィルター材料を迂回させる。本発明の静電フィルターは、圧力差を最小化させ、そうして空気を間隙を通して流入しないようにするようにスポンジ性または他の通気性不織材料で作られ得る。さらにそれは、使用者と顔面マスクとの間に閉鎖を生み出すために用いられるガスケットを静電フィルターのような低い圧力降下を有し、それに含まれている活性剤の利点の付加を有する薄いフィルターから効果的に作らせる。
【0010】
高圧力降下媒体の使用を教示する他の公知の先行技術には、HEPAフィルターの機械的ろ過が含まれる。しかしながら、本発明の圧力降下は、HEPAフィルターのみの場合よりほぼ50%から90%低い。フィルターはさらに、成長力のあるバクテリア、胞子、およびウイルスを通過の際に殺傷する材料を含む。それらは空気流からろ過され、殺傷される。加えて、本発明は、自己滅菌性であり、これは、通過した空気をろ過するのみならず、フィルター上に捕捉されたバクテリアを殺傷することを意味する。それゆえ、媒体は、使用者と外部の空気の両方を保護する。
【0011】
先行技術に欠点があれば、エレクトレットを有することは有益であり、このことは公知の解決法に対してより優れた特性を有する。本発明は、活性剤を有し、誘電体である基材を備える。
【0012】
本発明は、先行技術の前述の問題を克服する。具体的には、本発明の1側面によれば、活性剤が加入された静電的に荷電した不織媒体がここに提供される。この革新的な媒体は、先行技術の解決策より有効に微生物および/または毒素を根絶することが可能であり、また、自己滅菌し得る。
【0013】
加えて本発明は、活性剤が加入された静電的に荷電したフィルター媒体を作る方法も提供する。基材は様々な方法に従って製造され得る。活性剤は様々の方法に従って含まれ得る。静電的電荷は様々の方法に従って提供され得る。それらの全ては本明細書に記載されているかまたは当該技術において公知である。
【0014】
実質的により少ない活性剤がそれぞれのフィルターについて用いられるので、効果を維持しながらもコストは減少する。加えて、本発明の増強された静電フィルターは、活性剤と静電特性について付加的な性能を提供する。
【0015】
本発明の上記側面に加えて、付加的な側面、特徴および利点が添付の図面と合せて以下の記述により、より良く理解されるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本明細書で提示される教示による本発明の代表的な態様のいくつかの側面を描写する。
【図2】静電的に帯電した基材の代表的な態様を描写する。
【図3】静電的に帯電した基材の代表的な態様を描写する。
【図4】不織媒体に活性剤を加入させるための代表的な態様を描写する。
【図5】本発明のBG胞子に対するろ過膜についての1態様の実験データを例示する図表。
【図6】本発明のBG胞子に対するろ過膜についての1態様の実験データを例示する図表。
【図7】MS2ウイルスに対する異なるろ過膜の性能についての試験結果を示す図表。
【図8】MS2ウイルスに対する異なるろ過膜の性能についての試験結果を示す図表。
【図9】MS2ウイルスに対する異なるろ過膜の性能についての試験結果を示す図表。
【0017】
本発明の詳細な説明
以下の記載は、本発明の例示的な態様を記述する。ここで提供される本発明について記述された態様は、単に例示目的であり、限定をせず、単に例として提供されていることが当業者には明らかであろう。この記載において開示される全ての特徴は、別段の特別な言及がなければ、同一か同様の目的を与える別の特徴により置換され得る。それゆえ、改良についての多数の他の態様は、本明細書で規定される本発明の範囲およびその均等の範囲にあることが企図されている。
【0018】
本発明は、活性剤が加入された基材を包含する静電的に帯電したフィルター媒体を提供する。
【0019】
フィルター媒体
本発明のフィルター媒体は、(1)基材、(2)それに加入された活性剤および(3)静電的電荷を含む。
【0020】
基材
基材は、誘電特性を有するか、または誘電特性を有するようにさせられうるものであり、活性剤が含まれることが可能であるいずれかの材料を含む。
【0021】
具体的な態様において、基材は、繊維質マトリックス構造を有する繊維系材料であり得る。それは、連続気泡マトリックス構造を有するスポンジ状の材料であり得る。その材料は、可撓性でも非可撓性でもあり得る、等。
【0022】
上述のように、1つの態様において、基材は、不織布である。不織布は、紡糸され、布に織られているのではなく、互いに結合しているタイプの布帛である。それは、摩擦または接着により結合する方向性をもってかまたは無作為に配向した繊維の、工場生産されたシート、マット、ウエブまたはバットであり得る。それは、布帛のタイプの形態を取り得る。図1は、不織布の代表的な態様として提供される。
【0023】
別態様において、基材は、ポリマー繊維を含む異なる毛羽の不織布であり得る。例えば、ポリマーは、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどまたはフィルター基材にとって適切ないずれか他のポリマーであり得る。加えて、基材は、ポリマー繊維以外の材料でも作られ得る。
【0024】
不織材料は、高効率粒子空気フィルター(すなわち、HEPAフィルター)にとって適切なタイプのものであり得る。適切な不織材料は、テクノール・エックス・アン・プロバンス・セデックス03フランス(カナダ特許第1,243,801号を参照されたい)から入手し得る。別の適切な材料はまた、ミネソタ・マイニング&マニュファクチュアリング社(3M)からも入手し得る。不織材料は、所望の活性剤を捕捉する(すなわち物理的に)ことが可能なマトリックスを提供するような形態で形成されるように3次元構造を有する。例えば、不織材料が繊維に基づくものであるならば、不織材料を構成する繊維は、所望の活性剤を捕捉することが可能な繊維質マトリックス構造を提供するような形態で存在し、分布し得る。不織材料は、微小構造を有し得る。1つの具体的な態様において、活性剤は、所望の不織材料の3次元(例えば、ウエブ)マトリックス構造により捕捉されるのに適切なサイズを有する。
【0025】
別の基材は、最終的に紙系フィルター媒体に形成されるガラス繊維およびセルロースのような繊維をさらに含み得る。活性剤のための担体として機能し得、誘電特性を有するかまたは誘電特性を付与することができるいずれの基材も本発明にとって適切な基材である。ガラス繊維のような強力な誘電特性を有しない基材が用いられるときは、基材の誘電特性を向上させるための添加剤が提供され得る。本発明は不織材料に限定されない。他の適切な基材には、スポンジ状材料または発泡体が含まれ得る。
【0026】
活性剤
本発明の活性剤は、例えば、抗微生物剤、抗毒素などであり得る。抗微生物剤は、静菌剤および/または殺菌剤であり得る。静菌剤は、細菌胞子、ウイルス、真菌などの全部または一部の生長を阻害する(生物活性粒子を有する)物質であり、殺菌剤は、細菌胞子、ウイルス、真菌などの全部または一部を殺傷する物質である。好ましくは、殺菌剤は、上記のように、’452特許について上述されているもののようなヨウ素化樹脂粒子を含む。他の適切な活性剤には、銀、銅、抗微生物剤が付着したゼオライト、ハロゲン化樹脂、および例えば活性炭、他の金属および他の化学物質を含む当該技術において公知である微生物/毒素を減殺する/不活性化することが可能な薬剤が含まれる。例えば、適切な金属および/または化学物質の非限定的なリストは以下のとおりである。
【0027】
代表的な金属
アルミニウム
バリウム
ホウ素
カルシウム
クロム


マグネシウム
マンガン
モリブデン
ニッケル

カリウム
ケイ素
ナトリウム
ストロンチウム
亜鉛
代表的な化合物
N−メチルピペラジン
水酸化カリウム
塩化亜鉛
塩化カルシウム
炭酸ナトリウムと重炭酸ナトリウムの混合物
抗微生物剤に対する明細書中の参照は、読解の容易のために用いられ、限定を意味しない。
静電的電荷
活性剤が加入されたフィルター媒体は、また、静電的に荷電している。したがって、媒体の表面をよぎって電位が存在し、いくつかの例において荷電粒子の移動経路を変更するように、媒体に導入された荷電粒子を引き付け、および/またははじき得る電場を作り出している。
【0028】
図2〜3は、静電的に荷電した媒体の代表的例を提供する。本発明の静電的に荷電したフィルター媒体は、例えば、単一層または多層であり得る。それぞれの層は、個別に荷電され得る。単層媒体は、一方の側で正の荷電を有し、他方の側で負の荷電を有し得る。多層媒体の1例は、2層媒体である。好ましくは、2層媒体が用いられ、その2層媒体は、2つの層を含み、それぞれが一方の側で正に荷電し、他方の側で負に荷電し、その2層が空気空間により分離され、その2層の一方の負の側が他層の正の側に最近接するようにその2層が配向されている。この2層態様において、空気空間は、静電的に荷電したフィルター媒体の正味の誘電率を増加させる。
【0029】
好ましくは、長時間電荷を維持するために、高い誘電率が提供される。例えば、上記の空気空間において用いられ得るように空気は良好な誘電率を提供する。したがって、本発明は、濡れているときまたは湿度の高い環境においてさえ有効であり得る。
【0030】
得られる媒体は、活性剤が付着しているか含浸しており、静電的電荷を有する絶縁性担体である。本発明による媒体は、異なる厚さ、密度および圧力降下をもって製造され得る。本明細書で記載される媒体は、例えば、衣服、外傷手当て材、空気フィルター、シェルター、ライナーおよび一般的にいずれかのフィルター材料に用いられ得る。
【0031】
製造方法
本発明は、さらに、活性剤が加入された静電的に荷電したフィルター媒体を製造する方法も提供する。基材それ自体は、溶融ブロー、紡糸ブロー、エアレイ、カーティングなどのような様々の既存の方法に従って製造され得る。
【0032】
活性剤を加入させる方法
ポリプロピレンを用いる先行技術の加入方法は、粒子が繊維に落下することを防ぐために長い時間固体粒子を保持するために繊維に粘着性を維持させるためにポリエチレンの使用を必要とする。本発明においては、’452特許に開示されるヨウ素化樹脂のような活性剤は、繊維中に物理的に捕捉され得る。したがって、活性剤は、媒体に加入されるために繊維に付着する必要はない。
【0033】
本発明において、活性剤は、様々の方法にしたがって基材に加入させることができる。例えば、混合および溶融プロセスのための高められた温度および高められた圧力での溶融における活性剤の液体乳化、または加工処理の間の不織布繊維の押し出し後の活性剤のスプレーによる加入である。
【0034】
図4に示される好ましい態様において、ポリプロピレン粒子のようなポリマー粒子が、押出し機を通して押し出しされる。押し出しされた繊維は、さまざまの厚さと長さのものである。繊維が押し出しされるとき、繊維は、収集ウエブに向けて落下する。所望の活性剤は、得られる繊維の押し出し点に近接した位置で雲(cloud)として提供される。その「雲」は、繊維がいまだ準液体準固体状態にある間に冷却中の繊維を包む。1態様において、活性剤粒子は、0.2ミクロンから0.5ミリメートルまでの範囲を取り得る。しかしながら、当業者は、より小さいかより大きい粒子サイズを有する活性剤を用い得る。活性剤粒子は、収集ウエブ上の繊維によりかみ合わせられ、捕捉されるように定着し、集まる。活性剤が加入された繊維が収集ウエブに落下した後、得られた媒体は、公知の方法によりメッシュに形成される。加えて、雲は、蒸気、微細な乾燥ダスト、霧化もしくはエアロゾル化粒子を含む様々の物理的状態で存在し得る。有利には、雲の加入は室温で起こり得るし、粒子の包含もまた室温で起こり得る。さらに、厚さ、長さ、および圧力は、得られる媒体の機械的特性を規定する。
【0035】
上記態様のための適切な溶融ブローシステムは、ニュージャージー州ヒルサイドのアキュレート・プロダクツ社により提供されるアキュウエブ(Accuweb)である。
【0036】
フィルター媒体に活性剤を加入させる様々の他の方法が本発明にとって適切である。第1に、例えば、公開された米国特許出願番号200010045398A1に開示される方法を用いる。第2に、活性剤の中に毛髪状押し出し繊維のベールを浸漬し(浸漬するためにアルコールを用い)、次いで、圧力と温度によりフェルトを作り出す。第3に、押出し機のホッパー内で混合される活性剤とともに製造される固体ポリマー顆粒を取り出し、混合物を作り、ついでこれを微細な毛髪状ベールに押し出す。次いで、フェルトを、温度と圧力をかけるプロセスを通して形成する。第4に、ポリマーのような基材を毛髪状物質に押出し、これに、押し出し後に、活性剤を固体でスプレーする。活性剤は、エアロゾルのように気化し得る。第5に、活性剤を、布帛が加圧されているときに不織布に注入またはスプレーすることができる。第6に、活性剤が加入されたシートを作るために、フィラメントのベールをカーティングし、得られる媒体を活性剤と混合する。第7に、活性剤を不織媒体上に堆積させ、その後、活性剤を媒体全体に含浸させるために媒体をニードルパンチする。他の方法を用いることもできる。
【0037】
本発明の別態様において、ポリマー顆粒は、押し出しの前にダスト形態で活性剤とともに押出し機のホッパー内に配置される。このようにして、活性剤は、溶融前にホッパー内で混合される。2つの成分は、フェルトを作るために用いられる薄い「毛髪」状繊維を形成するために混合され、加熱され、ついで押し出しされる。活性剤が加入した上記態様で得られた毛髪状繊維は、ベール状のウールである。基材は、用いられるポリマーに応じて透明であり得るであろう。加えて、活性剤が加入した得られるポリマー繊維は、水で処理し、加圧し、次いで加熱してフェルトを形成することができる。他の態様において、活性剤が加入された得られるポリマー繊維は、エアレイ、真空レイ、ウォーターレイ等することができる。
【0038】
本明細書で具体的に記載されていないけれども、基材に活性剤を加入させる他の従来のまたは公知の方法は、本発明のために適切である。したがって、この時点では、基材には活性剤が加入されている。
【0039】
静電的に帯電させる方法
活性剤が加入された基材は、静電的な電荷を備えている。電荷は、コロナ、ニードルパンチ、化学処理、いずれか他の公知の電荷誘発系または方法、または前述のいずれかの組み合わせを用いることにより誘発され得る。ニードルパンチは強い摩擦を作り出し、そうして電荷を与える。
【0040】
具体的な態様において、静電的に荷電した不織布を作るために、フェルトのような形成された媒体は、完全に荷電するまで約25Kvスローパスのコロナ系に配置される。得られた材料は、約6ヶ月ないし2年間その電荷を保持する。
【0041】
静電フィルター媒体の操作
操作に際し、汚染された空気または流体流は、本発明の静電的に荷電したフィルター媒体を用いるフィルターに導入される。空気/流体流は、圧力勾配によりフィルター媒体を通して押出され得るか引き出され得る。流れは、フィルター要素により除去または処理されるべき様々のサイズの汚染粒子を含み得る。流れがフィルター媒体に近づくとき、汚染粒子はフィルター媒体との接触にもたらされ、流れから除去され、またはこの出願の別の部分で記載されている活性剤により処理されるようにフィルター媒体を通して方向付けられる。このことはフィルターの特性を通して達成され、フィルターは粒子をしてフィルター要素を通る入り組んだ経路を通過させ、このようにして、汚染物質が活性剤と接触する時間を増加させる。この長くなった接触時間は、流れの中の粒子の処理における活性剤の効果を高める。
【0042】
粒子が通過する入り組んだ経路は、フィルター要素の基材の付加された静電特性および不織特性の結果である。フィルター要素の静電的特性については、汚染物質粒子の入り組んだ経路は、粒子の極性的性質に起因し得る。極性分子は、中性的に荷電し、またサイズも大きい。大きなサイズのために、汚染物質は磁気モーメントを有し、それは、電界に供されるとき、汚染粒子をその経路から方向転換させる。
【0043】
加えて、汚染粒子の入り組んだ経路は、フィルター基材の不織布特性に起因する。不織基材は、流れのための直接的で連続的な経路を通過させないためにこのことが達成される。代わりに、不織特性のために、材料の単一の細孔が基材を通過する連続経路を形成しない基材が多孔質材料により作られる。それゆえ、流れと流れにより運ばれる粒子は、基材を通して連続的に方向転換させられる。したがって、フィルターを通る移動時間は長くなり、活性剤への暴露は高まる。
【0044】
付加的な用途
本発明は、現存する不織布と一致する方式でもまた用いられ得る。様々の製品における使用には、耐久性の製品と使い捨ての製品の両方が含まれる。例えば、不織布は、おむつ、生理用品、成人失禁用品、ワイプ、ベッドのライニング、自動車用品、マスク、空気ろ過材、水ろ過材、体液ろ過材、家事用品およびジオテキスタイルのような製品において用いられ得る。本明細書に記載される媒体は、例えば、衣服、外傷手当て材、空気フィルター、シェルター、およびライナーとしてもまた用いられ得る。付加的な用途には、静電フィルターおよび抗微生物または解毒フィルターのための当該技術において公知のものが含まれる。
【0045】
具体的な態様において、活性剤を有するか有さない本発明によるフィルター媒体は、クロージャーとして用いられ得るか、顔面マスクおよびHVACのような製品のためのエアフィルターのためのフィルタークロージャーを作るために用いることができる。本発明によれば、静電特性を有する基材および活性剤が加入された静電材料で作られたクロージャー材料が提供され、その場合材料は3次元構造の高ロフト(1態様においてほぼ1”の厚さ)通気性材料であり、いわゆる気密性接合を作らないようにマスクまたはエアフィルターの周りに配置され、しかし、代わりに、フィルター特性を有する透過性クロージャーを提供するために異なる幾何学的表面の全ての輪郭を実質的に被覆する通気性のクロージャーを作る。このアプローチは、フィルターにクロージャーを作り、それにより不完全なフィットにより引き起こされる間隙を通ってマスクを迂回する空気はなおクロージャーを通過し、ろ過される。加えて、「弾力性のある」クロージャーとは反対に、気密性のアプローチでは不利である圧力差は本発明者のアプローチでは有意義になる。というのは、最も抵抗の少ない経路を通過する空気は、代わりに、マスクのフィルター材料を通過するであろうからである。顔面マスクまたは他のタイプのフィルターを閉鎖するこの方法は、また、不織フィルター要素を同じ特性を有する通気性発泡体で置換しても達成され得る。したがって、先行技術の顔面マスクはクロージャーで空気流を遮断することを試みるけれども、本発明のマスクは、空気をそこに通過させるガスケットとして機能し、上述の’452特許で開示されるヨウ素化樹脂のような有効な活性剤により空気流中に存在する胞子、ウイルス、細菌、真菌その他を殺傷する。加えて、マスクを適所に保持するためのストラップの使用は、顔面のほとんど全体に適合するように本発明のガスケットを圧縮する。
【0046】
実験データ
本発明のフィルター媒体のある態様を現存する静電フィルターと比較する実験を行った。それぞれの試験は、空気を異なる汚染物質で処理するために同じ環境で実施した。提供される実験データをそれらの試験の間集めた。それぞれの試験において、汚染物質は、制御された量でチャンバに導入し、4つのラインに供給した。ラインの2つは、’452特許によるヨウ素化樹脂を加入した静電的に荷電したフィルターを含む本発明によるフィルターを含んでいた。第3のラインは、トランスウエブ(Transweb)として知られる静電的に荷電したフィルターを含んでいた。このフィルターは、抗微生物特性を有さないか、またはいずれか他のタイプの活性剤を含まない。そして、第4のラインは、フィルターを有さない対照として提供され、対照チャンバに入る汚染物質の量が対照チャンバを出て行く汚染物質の量と等しいことを確認するために用いられた。
【0047】
図5〜6は、本発明の代表的な態様のある種の特徴を例示する実験データを記載する。実験番号AF276は、30、60、120、180、240、300および360分間のろ過についてBG胞子に対する異なるろ過膜の性能を記述する。BG胞子は、平均的なヒトに疾病を引き起こすためには、約8,000から30,000胞子の量で存在しなければならない。30、60、120、180、240、300および360分間の試験について図5〜6において見られ得るように、本発明のフィルターは、空気流からのBG胞子の100%減少を達成した。
【0048】
図5〜6において見られるように、本発明の静電フィルターは、それらの試験でトランスウエブと本質的に同一または同様の正味の効果を達成する。しかしながら、提供される重要な利点は、本発明は、フィルターに胞子を単に保持させるのではなく、胞子を滅菌するということである。したがって、本発明とは違い、もしトランスウエブが使用者により取り扱われ、皮膚に接触するならば、汚染が起こるであろう。本発明は、フィルターが衛生的であることを維持する。
【0049】
ここで図7〜9の実験AF270の結果に目を転じると、30、60、120、180、240、300および360分間のろ過についてのMS2ウイルスに対する異なるろ過膜の性能についての試験結果が示される。1から1000ウイルスの範囲のウイルス量は、平均的なヒトに疾病を引き起こすであろう。したがって、1つのウイルスの存在でさえ、ヒトに疾病を引き起こし得る。30、60、120、180、240、300および360分間の試験のそれぞれについて図7〜9において見られ得るように、本発明のフィルターは、空気流からのMS2ウイルスの100%減少を達成した。しかしながら、トランスウエブは、MS2ウイルスについて100%減少を達成しないし、流出空気流中で1000ないし10000のウイルスユニットが見出され得る。MS2ウイルスにより汚染された空気に対するトランスウエブの使用は、所望の結果を達成しないであろう。したがって、図5〜6について上述された滅菌特性の利益に加えて、図7〜9において見られ得るように、本発明は、長時間MS2のようなウイルスに対してより有効に防御する。本発明とは違って、ほんの少量のウイルス(1から1000)がヒトを汚染するので、トランスウエブは、それらのウイルスから使用者を有効に防御しない。
むすび
ここで、本発明の1以上の代表的態様を記載してきたけれども、前述の事項は、単に例示であり、限定はせず、単に例として提示されてきたことが当業者には明らかであろう。この明細書(特許請求の範囲、要約、および図面を含む)において開示される全ての特徴は、別段の特別の言及がない限り、同じ目的、等価または同様の目的を果たす別の特徴により置換され得る。それゆえ、その追加および修正の多数の他の態様は、特許請求の範囲およびその均等により規定される本発明の範囲に当てはまると思料される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質誘電担体、
前記多孔質誘電担体中に加入された活性剤、および
前記多孔質誘電担体の少なくとも一部に存在する静電荷
を含む保護媒体。
【請求項2】
前記多孔質誘電担体が不織材料である請求項1記載の保護媒体。
【請求項3】
前記多孔質誘電担体が繊維質マトリックス構造を有する繊維質材料である請求項1記載の保護媒体。
【請求項4】
前記多孔質誘電担体が連続気泡マトリックス構造を有するスポンジ状材料である請求項1記載の保護媒体。
【請求項5】
前記不織材料が前記活性剤を物理的に捕捉することが可能なマトリックスを提供するように形成された3次元構造である請求項2記載の保護媒体。
【請求項6】
前記活性剤が前記マトリックスによる捕捉のために適切なサイズの粒子からなる請求項5記載の保護媒体。
【請求項7】
前記活性剤が抗微生物剤および抗毒素からなる群より選択される請求項1記載の保護媒体。
【請求項8】
前記多孔質誘電担体が不織材料である請求項7記載の保護媒体。
【請求項9】
前記多孔質誘電担体が繊維質マトリックス構造を有する繊維質材料である請求項7記載の保護媒体。
【請求項10】
前記多孔質誘電担体が連続気泡マトリックス構造を有するスポンジ状材料である請求項7記載の保護媒体。
【請求項11】
前記不織材料が前記活性剤を物理的に捕捉することが可能なマトリックスを提供するように形成された3次元構造である請求項8記載の保護媒体。
【請求項12】
前記活性剤が前記マトリックスによる捕捉に適切なサイズの粒子からなる請求項11記載の保護媒体。
【請求項13】
前記活性剤が金属および化合物からなる群より選択される請求項1記載の保護媒体。
【請求項14】
前記多孔質誘電担体が不織材料である請求項13記載の保護媒体。
【請求項15】
前記多孔質誘電担体が繊維質マトリックス構造を有する繊維質材料である請求項13記載の保護媒体。
【請求項16】
前記多孔質誘電担体が連続気泡マトリックス構造を有するスポンジ状材料である請求項13記載の保護媒体。
【請求項17】
前記不織材料が前記活性剤を物理的に捕捉することが可能なマトリックスを提供するように形成される3次元構造である請求項14記載の保護媒体。
【請求項18】
前記活性剤が前記マトリックスによる捕捉にとって適切なサイズの粒子からなる請求項17記載の保護媒体。
【請求項19】
前記活性剤がヨウ素化樹脂である請求項1記載の保護媒体。
【請求項20】
前記多孔質誘電担体が不織材料である請求項19記載の保護媒体。
【請求項21】
前記多孔質誘電担体が繊維質マトリックス構造を有する繊維質材料である請求項19記載の保護媒体。
【請求項22】
前記多孔質誘電担体が連続気泡マトリックス構造を有するスポンジ状材料である請求項19記載の保護媒体。
【請求項23】
前記不織材料が前記活性剤を物理的に捕捉することが可能なマトリックスを提供するように形成された3次元構造である請求項20記載の保護媒体。
【請求項24】
前記活性剤が前記マトリックスによる捕捉にとって適切なサイズの粒子からなる請求項23記載の保護媒体。
【請求項25】
第1の多孔質誘電担体、
前記第1の多孔質誘電担体中に加入された第1の活性剤、
前記第1の多孔質誘電担体の少なくとも一部に存在する静電荷、
第2の多孔質誘電担体、
前記第2の多孔質誘電担体中に加入された第2の活性剤;および
前記第2の多孔質誘電担体の少なくとも一部に存在する静電荷
を含む保護媒体。
【請求項26】
前記第1の活性剤および前記第2の活性剤が同一の材料である請求項25記載の保護媒体。
【請求項27】
空気間隙が前記第1と前記第2の多孔質誘電担体とを隔てる請求項25記載の保護媒体。
【請求項28】
前記多孔質誘電担体が不織材料である請求項27記載の保護媒体。
【請求項29】
前記多孔質誘電担体が繊維質マトリックス構造を有する繊維質材料である請求項27記載の保護媒体。
【請求項30】
前記多孔質誘電担体が連続気泡マトリックス構造を有するスポンジ状材料である請求項27記載の保護媒体。
【請求項31】
前記不織材料が前記活性剤を物理的に捕捉することが可能なマトリックスを提供するように形成される3次元構造である請求項29記載の保護媒体。
【請求項32】
前記活性剤が前記マトリックスによる捕捉にとって適切なサイズの粒子からなる請求項31記載の保護媒体。
【請求項33】
不織材料を作る方法であって、
出口を有する押出し機を提供すること、
前記押出し機の出口の下に収集ウエブを提供すること、
押し出し可能な材料のホットメルトを提供すること、
前記収集ウエブに向かって落下するように押し出しされて冷却する繊維の流れを提供するために前記押出し機により前記押し出し可能な材料を押し出しすること、
前記押出し機の前記出口に隣接する位置で活性剤の雲を提供することであって、前記活性剤が定着し、集まり、媒体を形成する収集ウエブ上で前記繊維と噛みあい、捕捉されるように前記繊維が準液体準固体状態で存在する間に前記雲が冷却中の繊維を包むようにすること
を含む方法。
【請求項34】
前記媒体をメッシュに形成することをも含む請求項33記載の不織材料を作る方法。
【請求項35】
前記の雲が、蒸気、微細な乾燥ダスト、霧化粒子、およびエアロゾル化粒子からなる群より選択された物理的状態で存在する請求項33記載の不織材料を作る方法。
【請求項36】
前記メッシュ全体に電荷を適用する工程をも含む請求項34記載の不織材料を作る方法。
【請求項37】
不織材料を作る方法であって、
出口を有する押出し機を提供すること、
前記押出し機の出口の下に収集ウエブを提供すること、
押し出し可能な材料の容器を提供すること、
前記収集ウエブに向かって落ちる押し出しされた繊維の流れを提供するために前記押出し機により前記押し出し可能な材料を押出しすること、
押し出しされた繊維の前記流れに隣接する位置で活性剤の雲を提供することであって、前記活性剤が定着し、集まり、媒体を形成する収集ウエブ上に前記繊維と噛みあい、または前記繊維により捕捉されるように前記繊維が落下する間に前記の雲が繊維を包むようにする
ことを含む不織材料を作る方法。
【請求項38】
前記媒体をメッシュに形成することをも含む請求項37記載の不織材料を作る方法。
【請求項39】
前記雲が、蒸気、微細な乾燥ダスト、霧化粒子、およびエアロゾル化粒子からなる群より選択された物理的状態にある請求項37記載の不織材料を作る方法。
【請求項40】
前記メッシュ全体に電荷を適用する工程を含む請求項38記載の不織材料を作る方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−177518(P2011−177518A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−49127(P2011−49127)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【分割の表示】特願2004−571929(P2004−571929)の分割
【原出願日】平成15年9月8日(2003.9.8)
【出願人】(505097778)トリオシン・ホールディング・インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】