説明

活性剤を含む薄膜を備えた吸収性物品

本発明は、吸収性物品、例えば、おむつ、おむつパンツ、パンティーライナー、サニタリーナプキン、又は失禁用品であって、前記吸収性物品の少なくとも一部分が、官能基を有するポリマーの少なくとも1つの単分子層及び活性剤を含むフィルムを供えている吸収性物品に関し、特に前記フィルムが、少なくとも、第一の官能基を有する第一のポリマー及び第一の官能基と相互作用可能な第二の官能基を有する第二のポリマーのレイヤーバイレイヤー堆積によって得られる吸収性物品に関する。さらに、本発明は、少なくとも、第一の官能基を有する第一のポリマー及び第一の官能基と相互作用可能な第二の官能基を有する第二のポリマーのレイヤーバイレイヤー堆積によって得られるフィルムの、体液による前記フィルムの湿潤によって、前記フィルムに含有される活性剤を放出させるための使用に関する。好ましくは、前記第一の官能基を有する第一のポリマーはポリカチオン性ポリマーであり、前記第二の官能基を有する第二のポリマーはポリアニオン性ポリマーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その一部分に活性剤を含む吸収性物品、例えば、おむつ、おむつパンツ、パンティーライナー、サニタリーナプキン、又は失禁用品などに関する。本発明は、特に、相互作用する官能基を有する少なくとも2つのポリマーのレイヤーバイレイヤー堆積によって好適に得られるナノスケールのフィルムにより、活性剤の放出の調節が生じる吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
尿又は月経液などの体液を吸収及び保持する能力を超える機能を有する上述のタイプの吸収性物品を提供することは多くの場合において望ましい。これらの機能は、例えば、スキンケア効果あるいは不快な臭気の抑制又は予防を含む。
【0003】
現在において存在する、これらの追加の機能を示す吸収性物品は、おむつの一部分に緩く結合しているか又は典型的にローションタイプ(例えば、WO 96/16682)若しくはポリマータイプのマトリックスに埋め込まれている活性剤を含む。
【0004】
緩く結合している活性剤は、身体の動き又は尿の最初の噴出で容易に剥がれ落ちるか又は洗い落とされるという欠点に悩まされている。これは、活性剤がローションマトリックスに固定されている際にも生じる。一方、ポリマーシステムは、体液と接触して必要とされる際に特異的に活性剤を放出することが多くの場合において不可能である。さらに、比較的多量のポリマー及びローションが活性剤を埋め込むために必要とされる。ポリマー及びローションは、可撓性、柔軟性、吸収性、及び親水性などの内在する基材の特性に悪影響をも与え得る。
【0005】
さらに、自己集積ポリマーのナノスケールフィルムは各種の技術分野で既知であり、過去数年間に亘って非常に大きな興味がもたれている。これらのナノスケールフィルムは典型的には、互いに相互作用し得る官能基を有する2つのポリマーの単分子層の交互の堆積によって形成される。各堆積後の表面電荷の逆転に基づくカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーのレイヤーバイレイヤー堆積(LBL堆積と略称される)を使用して、これらの多数の研究が為されており、最も良好な試験されたシステムの1つは、ポリ(スチレンスルホネート)/(ポリアリルアミン塩酸)(PSS/PAH)である。
【0006】
US 2005/0069950 A1は、オリゴペプチドの適切な設計に基づく薄膜、コーティング、及びマイクロカプセルの微細加工法を開示している。薬剤送達がマイクロカプセルとの関連で議論されている。さらに、使い捨ておむつが、この文献によって意図されたペプチドについての多数の可能性がある用途の中の1つとして言及されている。生物医学的な用途がより詳細に記載されている。
【0007】
US 5,807,636、US 5,700,559、及びUS 5,837,377は、基材、前記基材上のイオン性ポリマー層、及び前記ポリマー層にイオン結合した不規則なポリ電解質コーティングを含む水性環境において使用するための親水性物品に関する。おむつ及び他のライナーが、この教示の多数の潜在的な用途の内の1つとして言及されている。
【0008】
WO 2005/058199は、医療用途、特に創傷被覆材のための静電気的に自己集合する抗菌コーティングに関する。
【0009】
WO 00/32702は、例えば、2つの相互作用するポリマー、好ましくは製紙において乾燥強度剤及び湿潤強度剤として典型的に使用されるアニオン性ポリ電解質及びカチオン性ポリ電解質のレイヤーバイレイヤー堆積によって製造される繊維、フィラー粒子、又は他の粒子を含有する紙又は不織製品を開示している。したがって、この文献は、紙製品の引張強度も評価している。
【0010】
WO 2005/032512は、粒子、並びにポリカルボン酸などの水素結合供与体ポリマーと、ポリエーテル、ポリケトン、ポリアルデヒド、ポリアクリルアミド、ポリアミン、ポリエステル、ポリホスファゼン、又はポリサッカリド、あるいはそれらのコポリマーなどの水素結合受容体ポリマーとの間の水素結合によって結合している第一の中性ポリマーフィルム及び第二の中性ポリマーフィルムを含む物品に関する。この物品の1つの実施態様としてのカプセルは、外部からの刺激に曝露されると、調節され良好に規定された様式でコア粒子を送達するために有用であると述べられている。この文献の言及している出願の範囲は、バイオテクノロジー、医薬、製薬、食品、農学、香料、パーソナルケア、及び化粧品である。
【0011】
US 2004/0137039 A1は、1つの実施態様において、フィルムに可逆的に結合する少なくとも1つの他のタイプの分子をシステムに導入することで過剰な正味電荷を低減することによって、薬剤、染料、又は他の分子などの低分子量ポリマーを過剰な正味電荷を有するLBLポリマーフィルムから放出する方法を提供している。第二の実施態様は、天然及び合成ポリペプチド、オリゴ及びポリヌクレオチド、又は他の多数の電荷を有する分子などのオリゴマー及びポリマー分子を、これらのオリゴマー及びポリマー分子並びに反対の電荷を有する第二のポリマーからなるLBLフィルムから、pH又はイオン強度における変化に応じて選択的且つ可逆的に放出する方法に関する。
【0012】
LBLフィルムからの染料の放出の調節は、"A. A. Antipov et al . , Sustained Release Properties of Polyelectrolyte Multilayer Capsules; J. Phys . Chem. B 2001, 105, 2281-2284"及び"M. Freemantle, Polyelectrolyte Multilayers; Science & Technology (2002), 44-48"に開示されている。
【0013】
US 2004/0047979 A1は、医療用具、好ましくは眼科用具、よりこの好ましくはコンタクトレンズの表面を修飾するための改善されたレイヤーバイレイヤーコーティング方法を開示している。ポリアニオン性ポリマー及びポリカチオン性ポリマーを、医療用具の親水性を増大することが言及されているレイヤーバイレイヤーコーティングに使用している。
【0014】
US 5,885,753は、互いに反応する第一の官能基及び第二の官能基を含有するブロックのために各々製造される基材上の2つ以上の自己集合単層から効果的に製造し得る自己集合多層を開示している。重合した単層又は多層の実施態様は、フォトリソグラフィーを含む各種の用途に使用し得る。
【0015】
WO 2004/07677 A2は、静電気的に自己集合するコーティングの連続的な製造方法に関する。その発明の背景では、その様な多層集合が、フルカラーフラットディスプレー、膜分離、防護コーティング、腐食防止コーティング、エレクトロクロミックコーティング、エレクトロルミネッセント素子、導電及び絶縁回路、光学デバイス及び非線形光学デバイス、ソーラーセル、高強度複合材料、並びに多元素化学センサーについての用途を見出している。この方法の好ましい実施態様によれば、ポリカチオン性ポリマー及び負に荷電した無機物質、例えば、プレートレットクレイ(platelet clay)の相が、約1nmの厚みを有する層に交互に配置される。
【0016】
US 6,428,811 B1は、電磁照射を吸収し、吸収したエネルギーを使用して化学物質の送達を開始させる熱感応性ポリマー粒子複合材料に関する。金属ナノシェルは、これらの複合材料における使用に適切なナノ粒子物質材料である。
【0017】
WO 00/63115は、多層カーボンナノチューブフィルムに関する。
【0018】
US 6,861,103 B2は、基材表面、好ましくはシリコンウエハー表面に有機薄膜を形成するための方法に関する。
【0019】
一方で、おむつにおける多層構造物に関する1つの文献が存在する。WO 2005/023536は、液体取り込み機能を有する少なくとも1つの第1のミクロ層フィルム領域、液体取り込み及び分配機能を有する少なくとも1つの第二のミクロ層フィルム領域、液体保持機能を有する少なくとも1つの第三のミクロ層フィルム領域、並びに液体障壁機能を有する少なくとも1つの第四のミクロ層領域を含む吸収性物品を開示している。これら第一、第二、第三、及び第四のミクロ層フィルム領域を共押出加工し、互いに集合させて、単一のミクロ層フィルムシステムを形成させる。しかしながら、これらの層は明らかに、nmの範囲を超える厚みを有し、自己集合しない。
【0020】
均質な(層ではない)マトリックスを使用する調節された放出システムも既知であり、医療の分野において頻繁に目にする。
【0021】
WO 97/04819は、このシステムの一例として、pHの変化に応じてポリマーマトリックスから放出される生物学的活性剤を含有するpH感応性ポリマーマトリックスを含む、細菌感染を抑制するための医療用具に関する。このマトリックスは均質であり、2つの相互作用するポリマーのレイヤーバイレイヤー堆積によって得られる物ではない。US 5,607,417は、WO 97/04819に開示されたものと同様のタイプの細菌感染を抑制するための医療用具を開示する。
【0022】
WO 2005/013906は、(a)最初のpHでは正に荷電しており、より高いpHで電気的に中性な形態にある生物適合性の親水性ポリマー;並びに(b)アルキレンオキシドポリマー又はコポリマーを含むpH反応性フィルムを開示する。前記フィルムは、全ての成分を溶解した後に溶媒蒸発フィルムキャスティングをすることによって得られる。前記フィルムは約3から6ミルの厚みを有し、避妊、ウイルス感染の治療及び/又は予防、膣感染の治療及び/又は予防、膣のかゆみの緩和、膣洗浄、並びに膣潤滑の促進に使用され得る。
【特許文献1】WO 96/16682
【特許文献2】US 2005/0069950 A1
【特許文献3】US 5,807,636
【特許文献4】US 5,700,559
【特許文献5】US 5,837,377
【特許文献6】WO 2005/058199
【特許文献7】WO 00/32702
【特許文献8】WO 2005/032512
【特許文献9】US 2004/0137039 A1
【特許文献10】US 2004/0047979 A1
【特許文献11】US 5,885,753
【特許文献12】WO 2004/07677 A2
【特許文献13】US 6,428,811 B1
【特許文献14】WO 00/63115
【特許文献15】US 6,861,103 B2
【特許文献16】WO 2005/023536
【特許文献17】WO 97/04819
【特許文献18】US 5,607,417
【特許文献19】WO 97/04819
【特許文献20】WO 2005/013906
【非特許文献1】A. A. Antipov et al . , Sustained Release Properties of Polyelectrolyte Multilayer Capsules; J. Phys . Chem. B 2001, 105, 2281-2284
【非特許文献2】M. Freemantle, Polyelectrolyte Multilayers; Science & Technology (2002), 44-48
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
上述の事項を考慮すると、本発明の1つの技術的な主題は、活性剤のための実用的な担体、特に担体が適用される基材の他の特性に最小の起こり得る影響を示す制御放出システムを有する吸収性物品を提供することである。
【0024】
さらに、活性剤のための担体、特に、柔軟性があり、且つ、基礎をなす基材の構造変化に適応する制御放出システムを有する吸収性物品を提供することは1つの技術的な主題である。
【0025】
本発明の1つの更なる技術的な主題は、活性剤のための担体、特に、一様でない表面、例えば、多数のおむつ製品において使用されるような繊維を処理するために適切な制御放出システムを有する吸収性物品を提供することである。
【0026】
本発明の1つの更なる技術的な主題は、活性剤のための担体、特に、(例えば、ディッピング、スプレー、プリント、及びコーティングなどによって)即時に適用でき、均質な制御放出システムを有する吸収性物品を提供することである。
【0027】
本発明の1つの更なる技術的な主題は、活性剤のための担体、特に、有機溶媒又は他の環境にとって望ましくない化学物質を使用せずに製造可能な制御放出システムを有する吸収性物品を提供する。
【0028】
本発明の1つの更なる技術的な主題は、活性剤のための担体、特に活性剤を局在させ且つ保護する制御放出システムを有する吸収性物品を提供することである。
【0029】
本発明の1つの実施態様によれば、1つの更なる技術的な主題は、pH、温度、又は塩濃度の変化などの適当な要因の影響下で活性剤を放出可能な制御放出システムを有する吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、おむつ、おむつパンツ、パンティーライナー、サニタリーナプキン、又は失禁用品などの吸収性物品であって、前記吸収性物品の少なくとも一部分が、官能基を有するポリマーの少なくとも1つの単分子層と活性剤とを含むフィルムを備えた吸収性物品に関するものであり、特に、前記フィルム(「LBLフィルム」)が、少なくとも、第一の官能基を有する第一のポリマーと、第一の官能基と相互作用可能な第二の官能基を有する第二のポリマーとのレイヤーバイレイヤー(LBL)堆積によって得られる吸収性物品に関する(以下においては、「LBLフィルム」は、他に示さない限り、1つの単分子層のみを有する「フィルム」に相当することを意図する)。
【0031】
本発明の1つの更なる態様によれば、少なくとも、第一の官能基を有する第一のポリマー、特にポリカチオン性ポリマーと、前記第一の官能基と相互作用可能な第二の官能基を有する第二のポリマー、特にポリアニオン性ポリマーとのレイヤーバイレイヤー(LBL)堆積によって得られるフィルムの、体液による前記フィルムの湿潤によって前記フィルムに含有された活性剤を放出させるための使用を提供する。
【0032】
本発明は、各種の利点を有しており、それらを以下にまとめる。
【0033】
本発明において使用するLBLフィルムは、フィルムに含まれる又は堆積する活性剤に結合することが可能であり、活性剤のための担体として働く。本発明の1つの実施態様によれば、LBLフィルムは、制御された様式で活性剤を放出する。「制御放出」は、活性剤が即時に放出されないが、次第に及び/又は好ましくは外部要因に応じて放出されることを意味する。LBLフィルム、具体的には反対の電荷のポリ電解質又は交互の水素供与体/受容体ポリマーに基づくLBLフィルムは、例えば、温度、pH、及び塩濃度(イオン強度)などの体液と関連する要因に優れた応答を示し得る。
【0034】
実用的な用途は、非常に少量のみがLBLフィルムの形成に必要とされるため、担体ポリマー及び活性剤からなる。同様に、LBLフィルムを備えた基材(例えば、おむつの一部分)のバルク特性は必要以上に変更されない。具体的には、柔軟性、可撓性、多孔性、又は吸収性などの重要な特性が、望ましくない程度に影響を受けない。好ましくは1μm未満の厚みによって、基礎をなす基材の動きに応じる必要な可撓性を有するLBLフィルムが与えられる。本発明で使用するLBL技術は、吸収性の製品に頻繁に存在する繊維表面などの一様でない表面を処理するために最も適切である。
【0035】
さらに、LBL技術は水系であり、潜在的に危険な有機溶媒を使用せずにコーティングフィルムを形成することができることが有利である。
【0036】
さらに、本発明で使用するLBLフィルムは、必要とする吸収性物品の一部分に活性剤を結合する。このフィルムは、体液の成分などの望ましくない影響に対する、あるいは、例えば保存期間において、ある活性剤の望ましくない移動傾向を促進する可能性がある長期間の空気への曝露又は高温に対する保護機能も奏する可能性がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
「吸収性物品」としては、尿、水様便、女性の分泌物、又は月経液などの体液を吸収可能な物品であると解する。これらの吸収性物品は、おむつ、おむつパンツ、パンティーライナー、サニタリーナプキン、又は失禁用品(例えば、大人用のもの)を含むが、それらに限らない。商品名「Freshness everyday」と関連する各種の商標で本出願人によって市販されている特定のパンティーライナーなどの、吸収層がない幾つかの吸収性物品では、トップシート及びバックシートの吸収能が、少量の女性の分泌物を吸収するには十分である。
【0038】
その様な吸収性物品は、好ましくは、使用時に着用者の身体に面する液体透過性のトップシートを有する。それらは液体不透過性のバックシート、例えばプラスチックフィルム、プラスチック被覆不織布、又は疎水性不織布、及び好ましくは液体透過性トップシートと液体非透過性バックシートとの間に吸収層(コア)をさらに含む。
【0039】
フィルム(好ましくはLBLフィルム)を備えた吸収性物品の一部分は、好ましくは、トップシート、バックシート、トップシートと吸収層との間に配置した層、例えば、捕捉/分配層、おむつ製造に使用するための繊維又は粒子、例えば、セルロースフラフパルプ及び/又は超吸収性粒子若しくは繊維、典型的には吸収層のための材料として使用されるもの、ウエストバンド、及びレッグカフから選択される。
【0040】
適切なトップシートは、織材料及び不織材料(例えば、繊維の不織布)、開口プラスチックフィルムなどのポリマー材料、例えば、開口形成熱可塑性フィルム及びハイドロフォーム熱可塑性フィルム;多孔質発泡体;網状発泡体;網状熱可塑性フィルム;並びに熱可塑性スクリムなどの広範な材料から製造されて良い。適切な織材料及び不織材料は、天然繊維(例えば、木又は綿繊維)、合成繊維(例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、又はポリエチレン繊維などのポリマー繊維)、あるいは天然繊維と合成繊維との組み合わせを含んで良い。トップシートが不織布を含む際は、不織布は各種の多数の既知技術によって製造されて良い。例えば、不織布は、スパンボンドウェブ(Spunbonded web)、カードウェブ(Carded web)、湿式−レイドウェブ(wet−laid web)、メルト−ブローンウェブ(melt−blown web)、ハイドロエンタングルドウェブ(hydroentangled web)、及び上述のものの組み合わせなどであって良い。本発明によれば、開口プラスチックフィルム(例えば、熱可塑性フィルム)又は合成繊維に基づく不織材料、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンのホモ又はコポリマーからなるもの及びそれらに基づくポリマー組成物を使用することが好ましい。
【0041】
存在する場合には、吸収層とトップシートとの間に存在する少なくとも1つの更なる層が、疎水性及び親水性の繊維又は発泡体材料からなって良い。「繊維材料」としては、織っているか又は織っていないタイプの、ペーパーティッシュ(paper tissue)の密着した平らな繊維に基づく構造であると解する。不織材料は、トップシートについて上述したものと同じ特徴を有して良い。
【0042】
具体的には、少なくとも1つの更なる層は、例えば少なくとも1つの捕捉/分配層の形態で、流体管理に寄与して良い。その様な構造は、例えば、US 5,558,655、EP 0 640 330 A1、EP 0 631 768 A1、又はWO 95/01147に教示されている。
【0043】
「発泡体材料」は当該技術分野において周知であり、例えば、本願と同じ名義のEP 0 878 481 A1又はEP 1 217 978 A1に開示されている。
【0044】
コアラップによって部分的又は全体的に覆われて良い吸収層は、一般的に圧縮性の、快適な、着用者の皮膚に対して非刺激性の、尿及び他の身体の浸出液などの液体を吸収及び保持することが可能な任意の吸収性材料を含んで良い。
【0045】
吸収層は、使い捨ておむつ及び他の吸収性物品において一般的に使用されている各種の液体吸収性材料、例えば、エアフェルト又はフラフと一般的に称される粉砕木材パルプを含んで良い。他の好適な吸収性材料の例としては、捲縮セルロース詰め物、コフォーム(co−form)を含むメルトブローポリマー、化学的に剛化、修飾、若しくは架橋されたセルロース繊維、ティッシュラップとティッシュラミネートとを含むティッシュ、吸収性発泡体、吸収性スポンジ、超吸収性ポリマー(例えば、超吸収性繊維)、吸収性ゲル材料、又は他のいかなる既知の吸収材料、あるいはこれらの材料の組み合わせなども挙げられる。適切な吸収性材料の幾つかの組み合わせの例は、フラフと共に、吸収性ゲル化材料及び/又は超吸収性ポリマー、並びに吸収性ゲル化材料及び超吸収性繊維などである。
【0046】
バックシートは、吸収層によって吸収されて物品に含有された浸出液が、吸収性物品に接触する可能性がある他の外部の物品、例えば、ベッドシーツ及び下着を汚すことを防ぐ。好ましい実施態様では、バックシートは、液体(例えば、尿)に対して実質的に非透過性であり、不織布又はプラスチック薄膜、例えば、約0.012mmから約0.051mmの厚みを有する熱可塑性フィルムを含む。適切なバックシートフィルムは、Terre Haute, Ind.のTredegar Industries Inc.社によって製造されているものであり、X15306、X10962、及びX10964という商標で市販されている。他の適切なバックシート材料は、吸収性材料から蒸気を逃がすことを可能にしながら、バックシートから浸出液が通過することを妨げる通気性材料を含んで良い。例示的な通気性材料は、織布、不織布、複合材料、例えば、フィルム被覆不織布、及び細孔性フィルムなどの材料を含んで良い。
【0047】
おむつ(おむつパンツを含む)は、本発明によれば、好ましくは、フィルム(好ましくはLBLフィルム)を有して良いレッグカフ、例えば、ガスケットカフ及び/又はバリアカフの形状における漏れ防止手段を備えている。
【0048】
バリアレッグカフは、おむつの2つの縦側端の各々の近接に配置し、縦側端の近接に貼り付けた基部端と吸収材料の少なくとも一部分に固定されていない末端とを有する。弾性的な収縮性ガスケットカフは、吸収性物品の縦側端の各々の近接に配置し、前記ガスケットカフは、前記縦側端から外側に側面に沿って伸びる。バリアカフを越えて浸出液が流れたならば、漏れ防止が、着用者の脚及び腰の周囲に追加の液体非浸透バリアを形成するガスケットカフによって更に向上される。適切なガスケットレッグカフ及びバリアレッグカフの例が、US 4,695,278に開示されている。レッグカフは、トップシートについて上述したものと同一の材料から製造されて良い。好ましくは、合成繊維に基づく不織材料を使用する。
【0049】
LBLフィルムの疎水性のおむつ材料への固定の促進には、薄いプライマーを用いてそれらを処理し、及び/又はそれらを表面修飾工程に供することが好ましい。疎水性材料に良好な接着を示すと同時にLBL技術に利用可能な既知のプライマー材料を使用することが好ましい。このタイプの1つの好ましいプライマーは、ポリエチレンイミン(PEI)である。PEIコーティングは、正の表面電荷を生じさせる。さらに、活性剤、例えば、スキンケア活性剤を水性プライマー溶液に混合することが好ましい。
【0050】
好ましい表面修飾技術は、例えば、WO 99/001099に開示されたプラズマ又はコロナ処理を含む。双方の技術は、不織布又はフィルム表面の疎水性を増大させ、好ましくはWO 99/01099に記載のように0.19を越える酸素/炭素の分子比まで増大させる。液体透過性トップシートとして使用するために適切なプラズマ処理した材料は、US 4,743,494及びWO 94/28568、EP 0 483 858 A1、及びUS 4,351,784にも開示されている。コロナ及びプラズマ処理は表面に負電荷基を導入する傾向があるため、後続のLBL堆積における第一の層としてポリカチオン性ポリマーを使用することが好ましい。
【0051】
吸収性物品の任意の一部分が、本発明に係るナノスケールフィルムを備えて良い。処理しようとする部分は、当業者に適当に選択されて良く、主に、使用しようとする活性剤のタイプに依存する。活性剤の一例であるスキンケア剤は、好ましくは、着用者の皮膚に接触する吸収性物品の一部分に含まれる。おむつに関する限りにおいて、これらの接触領域は、例えば、ウエストバンド、トップシート、及びガスケットレッグカフ及び/又はフロントバリアレッグカフを含む。一般的には、スキンケア剤をレッグカフ、存在する場合には吸収性物品のトップシートに適用することが好ましい。臭気抑制剤を含むLBLフィルムが、吸収性物品の他の部分、例えば、トップシートの下又は捕捉/分配層、吸収層の上又は中、例えば、フラフパルプのコーティング又は超吸収性粒子として、あるいは着用者に面するバックシートの面上のバックシートコーティングに使用されても良い。
【0052】
LBLフィルムは、処理しようとする吸収性物品の一部分に連続又は不連続なコーティングとして存在して良い。「不連続」なコーティングは、ランダム化又はパターン化されたLBLフィルムの堆積を含む。特に、プリント技術がパターンの適用に適切である。
【0053】
「LBLフィルム」は、少なくとも1つの単分子層を含む。「単分子」は当該技術分野における当該用語の一般的な理解に従う意味を有し、特に、層の程度(厚み)はポリマー分子で処理した表面の単分子被覆に相当する。
【0054】
「LBLフィルム」は、好ましくは、1μm未満のナノスケールの厚みを有する。生体物質(細菌細胞又はその一部分、例えば、乳酸菌)の場合に可能性があるように、活性剤が大きな粒子として存在する場合には、より大きな厚みの値(例えば、5又は3μm)に至って良い。好ましくは、LBLフィルムは、100nm未満、より好ましくは50nm未満(例えば、20nm未満)の厚みを有して良い。50%の相対湿度及び20℃において、この条件下でフィルムの厚みが平衡に達するまで、新しく堆積させたフィルムを乾燥させた後に、測定を実施する。好ましくは、前記測定のために偏光解析法が使用される。
【0055】
本発明によれば、LBLフィルムは、官能基を有する1つのポリマーと活性剤とを含む単一の単分子層からなって良い。この実施態様は、低分子量有機活性剤のために興味深いものであり、1つの層が活性剤の必要な埋め込みを提供して良い。
【0056】
しかしながら、単一層フィルムは、均質なコーティングを提供し得ないものである場合があって良い。そのため、本発明の利点を完全に享受するためには、2つ以上の層、好ましくは2から100の層、特に3から50の層(例えば、4から20の層)からなるLBLフィルムを提供することが好ましい。
【0057】
これらの多層の実施態様は、少なくとも、第一の官能基を有する第一のポリマーと、前記第一の官能基と相互作用可能な第二の官能基を有する第二のポリマーとのレイヤーバイレイヤー堆積によって得られる。「第一」及び「第二」という表現は、これらのポリマーを適用する順序について制限するものと解されるべきではない。言うまでも無く、同様に、「第二」のポリマーの後に「第一」のポリマーの層の堆積を用いて開始しても良い。さらに、2を超える層を有するLBLフィルムが、1種以上の「第一」又は「第二」のポリマーの各々から形成されて良い。例えば、多層ポリ電解質フィルムは、各々の層において同じポリカチオン性ポリマー又はポリアニオン性ポリマーの使用を必要としない。かくして、2以上の異なるポリカチオン性ポリマー及び2以上のポリアニオン性ポリマーがフィルムの形成に使用されて良い。最後に、1つの層に同じ種類の2以上のポリマーの混合物を使用しても良い。
【0058】
このレイヤーバイレイヤー(LBL)堆積技術は、多層薄膜を製造する技術分野において周知である(例えば、参照によって取り込む"G. Decher and J. B. Schlenoff (ed) , Multilayer Thin Films, Sequential Assembly of Nanocomposite Materials, Wiley VCH 2003"参照)。LBL技術によれば、用語「層」は、二次元伸長のみを示す材料の区域及び近接する層に対する厳密な境界という厳密な意味で理解されるべきではない。測定によって、LBL堆積層が、例えば、平均の層の厚みの7倍(好ましくは4倍)までの一定の広がりを示す。換言すると、単一のポリマー層が近接の層に浸透して良い。
【0059】
それにもかかわらず、これらのナノスケールフィルムの層構造及びそれらの厚みが、UV/Vis分光分析、偏光解析法、X線回折、中性子反射率測定、in situ原子顕微鏡(AFM)、水晶発振子センサー(quartz crystal microbalance:QCM)、表面力測定、及び"G. Decher and J. B. Schlenoff, Multilayer Thin Films"に記載の他のものを含む各種の分析技術によって確認されて良い。フィルムの厚みの測定のための好ましい方法は偏光解析法である。
【0060】
本発明によれば、第一、第二、及び存在し得る更なるポリマーの官能基が極性基である事が好ましい。「官能基」は、炭素及び水素にのみ基づくものではない基であると解される。
【0061】
好ましい官能基は、少なくとも1つの酸素、窒素、硫黄、リン、ケイ素、又は金属原子を含む。
【0062】
第一の官能基と第二の官能基との間の相互作用は、好ましくは、静電気的引力、供与体/受容体相互作用、水素結合、又は特異的な認識、特に、化学的又は生物学的な特異的認識(例えば、ストレプトアビジン−アビジン)に基づく。
【0063】
LBL堆積に使用するポリマーは、好ましくは、少なくとも10,000、好ましくは少なくとも50,000、特に、少なくとも100,000(例えば、光散乱で測定する)の重量平均分子量を有する。一般的には、より大きい分子量は、LBL堆積に好ましいようである。完全に水系のコーティング技術の望ましい使用を考慮すると、ポリマーが水様性である事が好ましいが、分子量に関する特定の上限は存在しない。
【0064】
本発明の1つの実施態様によれば、第一のポリマーは、水素結合供与体を含む中性のポリマー(「水素結合供与体ポリマー」)である。水素結合供与体は、水素結合形成に参加し得る少なくとも1つの水素原子及び水素原子に結合したより電気陰性の原子を含有する部分である。これらの部分の例は、O−H、N−H、P−H、及びS−Hを含むが、それらに限らない。炭素原子が三重結合によって他の原子に結合している場合、炭素原子が二重結合によってOに結合している場合、又は炭素原子が、O、F、Cl、及びBrから選択される少なくとも2つの原子に結合している場合には、C−H部分が水素結合供与体であっても良い。この第一の中性のポリマーは、好ましくは、ポリカルボン酸、例えば、ポリアクリル酸(PAA)又はポリメタクリル酸、ポリヌクレオチド、ビニル核酸のポリマー、ポリアミノ酸、例えば、ポリグルタミン酸及びポリ(E−N−カルボベンゾキシ−L−リジン)、並びにポリアルコール、例えば、ポリ(ビニルアルコール)、並びにそれらのコポリマーから選択される。
【0065】
この実施態様では、第二のポリマーは、好ましくは、水素結合受容体を含む中性ポリマー(「水素結合受容体ポリマー」)である。水素結合受容体は、水素よりも電気陰性である原子を含有する部分であり、孤立電子対を含有しても良い。その様な原子の例は、N、O、F、Cl、Br、I、S、及びPを含むが、それらに限らない。この水素結合受容体の好ましい例は、ポリエーテル、ポリケトン、ポリアルデヒド、ポリアクリルアミド、他のポリアミド、ポリアミン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリホスファゼン、又はポリサッカリド、あるいはそれらのコポリマーを含む。具体的な例は、ポリエチレンオキシド、ポリ−1,2−ジメチオキシエチレン、ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリ(ビニルベンゾ−18−クラウン−6)、ポリビニルブチラール、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリアクリルアミド(PAAm)、ポリメタクリルアミド、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(4−アミン)スチレン、ポリ(シクロヘキセン−1,4−ジメチレンテレフタレート)、ポリヒドロキシメチルアクリレート、ポリ(ビス(メチルアミノ)ホスファゼン)、ポリ(ビス(メトキシエトキシエトキシ)ホスファゼン)、カルボキシメチルセルロース、又はそれらのコポリマーを含む。
【0066】
酸性官能基を備えた水素結合供与体ポリマー、例えば、PAAは、非イオン化形態で存在する酸性基が水素結合形成に利用可能である条件(典型的には酸性条件)で堆積させる必要がある。同様に、塩基性官能基を備えた水素受容体ポリマーは、水素受容体が非イオン化形態で存在するpH条件下で堆積させるべきである。水素結合供与体ポリマーと水素結合受容体ポリマーとの適切な組み合わせを選択する際に、この事も考慮すべきである。水素結合供与体ポリマーと受容体ポリマーとの1つの適切な組み合わせは、例えば、約3のpHにおいて水溶液から堆積させることが可能であるPAA/PAAmである。
【0067】
少なくとも1つの水素結合供与体ポリマーと少なくとも1つの水素結合受容体ポリマーとの少なくとも2つの交互の層に基づくLBLフィルムは、pH変化に特に感応性である。この特性は、制御放出の実施態様において利用されて良い。LBLフィルムが、例えば、通常の尿とは異なるpHで堆積される場合には、尿との接触が、含まれる活性剤(例えば、水素結合供与体部分と水素結合受容体部分とを含むもの)の放出を促進するであろう。少なくとも1つの水素結合供与体ポリマーと少なくとも1つの水素結合受容体ポリマーとの交互の少なくとも2つの層を堆積する際のpHと、通常の尿のpH範囲(5.8から7.4)のpHとの間のpHの差は、好ましくは少なくとも0.5pH単位(≦5.3又は≧7.9)、特に少なくとも1又は少なくとも2pH単位であって、大きいほうがより好ましい。
【0068】
本発明の1つの実施態様によれば、第一のポリマーはポリカチオン性ポリマーであり、第二のポリマーはポリアニオン性ポリマーである。弱又は強ポリ電解質がLBL堆積に使用されて良い。ポリスチレンスルホネートなどの強電解質では、イオン化が完了又は殆ど完了しており、pHが明確には変化しない。ポリアクリル酸などの弱電解質では、pHを変化させる事によって、電荷密度を調整し得る。LBL層の目的に依存して、弱ポリ電解質を使用することが好ましい可能性があり、これによってフィルム特性のより良好な同調が可能になる。特に制御放出システムでは、弱電解質を使用することが好ましい。好ましい弱電解質は、約2から約10のpKa値を有する(追加で5mmolのNaClを含有する1重量%のポリ電解質水溶液を用いて20℃で測定)。ちなみに、PAA及びPAHの文献値は、約5.0及び9.0の各々である;”Multilayer Thin Films”,page 134。これらのポリ電解質はホモポリマー又はコポリマーであって良く、全ポリマー形成単位の一定の割合(例えば、少なくとも50モル%又は50モル%未満)のみが、カチオン性基又はアニオン性基を有する(出発物質についての以下の記載において常に言及されるわけではないが、ポリアニオン性ポリマーのアニオン性基は、電荷の中性のために、同数の水素原子及び/又は金属原子及び/又はオニウム原子(例えば、アンモニウム)を有するであろう。さらに、塩基性基は、厳密に言うとプロトン酸の添加がカチオン電荷の発生に必要とされるが、カチオン性基として参照されるであろう。したがって、堆積は、アニオン電荷及びカチオン電荷が層間結合に利用可能であるpH条件下で進められる必要がある。)。ポリ電解質は、生物学的に活性なポリマー(DNA、RNA、タンパク質、オリゴ若しくはポリペプチド、及び酵素など)から選択されても良いが、生物学的に活性なポリマーの低い安定性、高いコスト、皮膚と接触した際に起こり得る副作用、及びこれらのポリマーの精製の困難性を考慮すると、これらを含まない制御放出フィルムが好ましい。
【0069】
好ましいポリカチオン性ポリマーは、好ましくは、プロトン化され得る窒素原子を含む官能基を含む少なくとも1つのモノマーのホモ若しくはコポリマーから選択される。それらは、直鎖又は分枝鎖の構造を有して良い。
【0070】
カチオン性ポリ電解質は、以下のものから選択される:
a)カチオン性又はカチオン変性ポリサッカリド、例えば、カチオン性デンプン誘導体、セルロース誘導体、ペクチン、ガラクトグルコマンナン、キチン、キトサン、又はアルギネート;
b)任意に変性単位(例えば、WO 00/31150から既知のポリアリルアミンの適切な変性単位)を含むポリアリルアミンホモ又はコポリマー、特に、ポリアリルアミン塩酸(PAH);
c)ポリエチレネミン(PEI);
d)任意に変性単位を含むポリビニルアミンホモ又はコポリマー;
e)ポリ(ビニルピリジン)又はポリ(ビニルピリジニウム塩)ホモ又はコポリマー、それらのN−アルキル誘導体を含む;
f)ポリビニルピロリドンホモ又はコポリマー、ポリジアリルジアルキル、例えば、US 2004/0047979 A1に示されているようなポリ(N,N−ジアリル−N,N−ジ−C−C−アルキル−アンモニウムハライド)、特に、ポリ(N,N−ジアリル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド)(PDDA);
g)四級化ジ−C−C−アルキル−アミノエチルアクリレート又はメタクリレートのホモ又はコポリマー、例えば、ポリ(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルプロピルトリメチルアンモニウムクロリド)などのポリ(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルプロピルトリ−C1−C2−アルキルアンモニウム塩)ホモポリマー、又は四級化ポリ(2−ジメチルアミノエチルメタクリレート)、又は四級化ポリ(ビニルピロリドン−コ−2−ジメチルアミノエチルメタクリレート);
h)ポリ(ビニルベンジル−トリ−C−C−アルキルアンモニウム塩)、例えば、ポリ(ビニルベンジル−トリ−メチルアンモニウムクロリド);
i)ジ四級アミン又は二級アミンとジハロアルカンとの間の反応によって形成されるポリマー、脂肪族又はアル脂肪族(araliphatic)ジハライド及び脂肪族N,N,N’,N’−テトラ−C−C−アルキル−アルキレンジアミンのポリマー、例えば、(a)プロピレン−1,3−ジクロリド又はジブロミド、あるいはp−キシレンジクロリド又はジブロミドと、(b)N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−テトラメチレンジアミンとのポリマー;
j)EP−A−456,467に開示されているPOLYQUAD(登録商標);
k)ポリアミノアミド(PAMAM)、例えば、直鎖PAMAM又はPAMAMデンドリマー、例えば、アミノ末端Starburst(商標)PAMAMデンドリマー(Aldrich);
l)カチオン性アクリルアミドホモ又はコポリマー、及びそれらの変性生成物、例えば、ポリ(アクリルアミド−コ−ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)又はグリオキサル−アクリルアミド樹脂;
m)N−(ジアルキルアミノアルキル)アクリルアミドモノマーの重合によって形成されるポリマー;
n)ジシアンジアミド、ホルムアルデヒド、及びアンモニウム塩の間の縮合生成物;
o)製紙業において使用される典型的な湿潤強度剤、例えば、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリビニルアミン、ポリウレイド−ホルムアルデヒド樹脂、グリオキサル−アクリルアミド樹脂、及びポリアルキレンポリアミンと、ポリサッカリド、例えば、デンプン及び各種の天然ゴムとの反応によって得られるカチオン性物質、並びに窒素含有化合物(例えば、アンモニア、一級及び二級アミン、又はN含有ポリマー)とエピクロロヒドリンとから得られる3−ヒドロキシアゼチジニウムイオン含有樹脂、例えば、ポリアミノアミドエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂、及び例えばUS 3,998,690において言及されているアミノポリマー−エピクロロヒドリン樹脂。
【0071】
好ましいポリカチオン性ポリマーは、カチオン性又はカチオン変性ポリサッカリド、例えば、デンプン又はセルロース誘導体、キチン、キトサン又はアルギネート、ポリアリルアミンホモ又はコポリマー、ポリビニルアミンホモ又はコポリマー、あるいはポリエチレネミンである。
【0072】
適切なポリアニオン性ポリマーの例は、例えば、合成ポリマー、バイオポリマー、又はカルボキシ、スルホ、スルファト、ホスホノ、若しくはホスフェート基を含む変性バイオポリマー、又はそれらの混合物、あるいはそれらの塩を含む。それらは、直鎖又は分枝鎖の構造を有して良い。
【0073】
合成ポリアニオン性ポリマーの例は、直鎖ポリアクリル酸(PAA)、分枝鎖ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸(PMA)、ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸コポリマー、直鎖又は分枝鎖のポリシアノアクリレート、マレイン酸又はフマル酸コポリマー、ポリアミド酸、ジアミンのカルボキシ末端ポリマー、及びジ又はポリカルボン酸(例えば、Aldrich社製のカルボキシ末端Starburst(登録商標)PAMAMデンドリマー)である。分枝鎖ポリアクリル酸の例は、Goodrich Corp.社製のCarbophil(登録商標)又はCarbopol(登録商標)タイプを含む。アクリル酸又はメタクリル酸のコポリマーの例は、例えば、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、又はN−ビニルピロリドンを含むビニルモノマーと、アクリル酸又はメタクリル酸との共重合生成物を含む。
【0074】
スルホ又はスルファト基を有するポリマーの例は、ポリ(アネトールスルホン酸)、ポリ(ビニルスルフェート)(PVS)、ポリ(ビニルスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)(ポリ−(AMPS))、又はポリ(スチレンスルホン酸)(例えば、ナトリウムポリ(スチレンスルホネート);PSS)であり、ホスフェート又はホスホネート基を有するポリマーの例は、アルキレンポリホスフェート、アルキレンポリホスホネート、炭化水素ポリホスフェート、又は炭化水素ポリホスホネート(例えば、タイコ酸)を含む。
【0075】
ポリアニオン性バイオポリマー又は変性バイオポリマーの例は、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカン、例えば、ヘパリン又はコンドロイチンスルフェート、フコイダン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデキストラン、アルギネート、ペクチン、ゲラン、カルボキシアルキルキチン、カルボキシメチルキトサン、硫酸ポリサッカリドである。
【0076】
ポリアニオン性ポリマーの1つの更なる種類は、上述のポリマーと部分的に重複する、製紙業において乾燥強度剤として多くの場合に使用されるものである。これらは、ポリカルボン酸及び無水物、例えば、アニオン性デンプン誘導体、(メタ)アクリル酸誘導ポリマー及びコポリマー、無水マレイン酸誘導コポリマー、カルボン酸のビニルコポリマー、及びアニオン性セルロース誘導体を含む。これらは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、無水マレイン酸−ビニルアセテートポリマー、ポリビニルメチルエーテル−マレイン無水物コポリマー、メタクリル酸−アクリルアミドコポリマー、イソプロペニルアセテート−無水マレイン酸コポリマー、イタコン酸−ビニルアセテートコポリマー、α−メチルスチレン−無水マレイン酸コポリマー、スチレン−無水マレイン酸コポリマー、メチルメタクリレート−無水マレイン酸コポリマー、アクリル酸−スチレンコポリマー、カルボキシメチルセルロース、セルロースのコハク酸半エステル、グラフトポリマー化したポリアクリレート−ポリサッカリドコポリマー、デンプンのコハク酸半エステル、及び上述のポリサッカリドの酸化生成物によって更に例示されて良い。カルボキシアルキル化ポリサッカリドは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルヒドロキシセルロース(CMHEC)、カルボキシメチルヒドロキシプロピルセルロース(CMHPC)、カルボキシメチルグァー(CMG)、カルボキシメチル化ローカストビーンガム、及びカルボキシメチルデンプンなど、並びにそれらのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩を含む。
【0077】
好ましくは、ポリアニオンポリマーは、アクリル酸のホモ及びコポリマー及びアニオン性デンプン又はCMCなどのセルロース誘導体から選択される。
【0078】
第一のポリマー及び第二のポリマー、例えば、ポリカチオン性ポリマー及びポリアニオン性ポリマーの適切な組み合わせ(及び濃度)を選択する際、双方のポリマーが同一の溶媒に可溶性である場合には、堆積を実施する前に、溶液中において潜在的な候補の相互作用を試験する。双方の溶液を混合して綿状沈殿が生じる際には、それが、多層を作り出すことが可能であるという良好な兆候である。化学反応のように、各層の正確な構造は、当業者に既知の調節パラメーター、例えば、濃度、pH、吸収時間、イオン強度、又は温度の設定に依存するが、一般的には加工ウィンドウはかなり広い。
【0079】
LBLフィルム、具体的には非架橋ポリ電解質からなるLBLフィルムは、pH及び塩濃度の変化などの外部刺激に反応することが知られている。温度の僅かな変化に加えて、これらはまさに、尿又は月経液などの体液が放出された際に生じる状態である。尿の段階的な分解により、尿のpHが、弱アルカリ性の状態まで穏やかに増大する。さらに、尿の塩濃度(約7g/lのNaCl+他の塩)は相対的に高い。
【0080】
例えば、少なくとも1つのポリカチオン性ポリマー及び少なくとも1つのポリアニオン性ポリマーのレイヤーバイレイヤー(LBL)堆積により得られ、活性剤を含有するフィルムが体液により湿潤した場合に、対応するポリアニオン鎖及びポリカチオン鎖上に位置する正に荷電したイオンと負に荷電したイオンとの間の塩橋が開いて、ナノ細孔を形成し、前記活性剤の放出を促進する。LBLフィルムの膨張がこのプロセスに伴う。LBLフィルムの制御放出能を促進するために、「無又は低塩」条件及び/又は尿とは異なるpH条件下で堆積することが好ましい。「無又は低塩」条件は、LBLフィルムが、NaClなどの他の塩を含有しないか又は尿の塩濃度未満の濃度で塩が存在する、第一及び第二のポリマー並びに任意に活性剤(塩のタイプの活性剤であって良い)の水溶液から堆積される。好ましい低塩条件は、5g/l未満、より好ましくは3g/l、特に1g/lの他の塩である。通常の尿のpH範囲(5.8から7.4)に対するpHの違いは、好ましくは少なくとも1pH単位(≦4.8又は≧8.4)、特に少なくとも2、3、又は4pH単位であって、大きいほうが好ましい。
【0081】
尿及び月経液などの体液が必要な濃度の塩を提供して、フィルムに浸透する。高い塩濃度であっても完全に多層内のポリアニオンを完全には分離しないことも認められた。したがって、本発明に従って製造したLBLフィルムは、基礎となるおむつの部分に対して必要な接着及び粘着を依然として示し、完全に洗い流されることを防ぐ。
【0082】
1つの実施態様によれば、制御放出特性を有するLBLフィルムは、少なくとも1つのポリカチオン性ポリマー及びポリアニオン性ポリマーの交互の層並びに(負又は正に)荷電した活性剤を含む。荷電した活性剤は、以下の例から選択されて良い。LBLフィルムに活性剤を含ませるために、ポリカチオン性ポリマーの水溶液及び/又はポリアニオン性ポリマーの水溶液に前記活性剤を添加して良い。次いで、活性剤に結合する個々のポリマー層の形成を促進する条件下において堆積を実施する。代替的には、LBLフィルムをまず堆積させ、続いて活性剤をLBLフィルムに取り込ませる。後者の技術は、"A.J. Chung and M. F. Rubner, Methods of Loading and releasing low molecular weight cationic molecules in weak polyelectrolyte mulitlayer films Langmuir 2002, 18, 1176−1183"にポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(アリルアミン塩酸)(PAH)多層フィルム及びメチレンブルー染料をモデルシステムとして開示されている。この文献及びそこに参照されている文献は、LBLフィルムに活性剤をどの様に取り込むかを開示しており、それらの制御放出を促進することが可能であることを開示している。これらの原理は本発明にも適用可能である。したがって、弱ポリ電解質を使用することが好ましい。さらに、これらの弱ポリ電解質は、好ましくは、ポリカチオン性ポリマー及び/又はポリアニオン性ポリマーが部分的にイオン化されて後の取り込み工程のための結合部位を提供する条件下で堆積される。それとは対象的に、完全にイオン化したポリ電解質は、多くの場合に、荷電した活性剤のための結合部位を僅か又は全く有さず、且つ、取り込み工程においてあまり浸透しない、高度にイオン化して「架橋した」多層を形成する。弱ポリ電解質(例えば、pH2.5におけるPAA)は、部分的にのみイオン化し、これが反復単位の不定比対を生じさせ、膨潤しやすい比較的厚くループの多い層を作製する。取り込み工程の間には、好ましくは堆積よりも高いpHで、残存するプロトン化アニオン性基(PAAの場合はCOOH)が、荷電した活性剤のための結合部位として働くことができる。同様に、反対の条件が、塩基性結合部位を提供するLBLフィルムに負に荷電した活性剤を取り込ませるために使用されて良い。荷電した活性剤の緩衝溶液は、一般的に、急速により均一な取り込みを可能にする。Chung及びRubunerの文献は、さらに、高イオン強度溶液との接触が、使用するポリカチオン性ポリマー及びポリアニオン性ポリマーのタイプに関係なく制御放出の優れた誘導因子であることを開示している。
【0083】
1つの更なる実施態様によれば、制御放出特性を有するLBLフィルムは、少なくとも1つの水素結合供与体ポリマー及び少なくとも1つの水素結合受容体ポリマーの交互の層、並びに上述の少なくとも1つの水素結合供与体部分及び/又は少なくとも1つの水素結合受容体部分を有する活性剤を含む。適切な活性剤は、以下に記載する例から選択されて良い。活性剤をLBLフィルムに取り込ませるために、前記活性剤を水素結合供与体ポリマーの水溶液及び/又は水素結合受容体ポリマーの水溶液に添加して良い。次いで、活性剤に結合する個々のポリマー層の形成を促進する条件下において、堆積を実施する。代替的には、LBLフィルムをまず堆積させ、続いて活性剤をLBLフィルムに取り込ませる。
【0084】
「活性剤」として、生物学的、製薬学的、及び/又は化粧品としての活性を示す薬剤、並びに(例えば、細菌又はpH調節による)臭気抑制、スキンケア、柔軟性、及び吸収性などの吸収性物品又はその一部分の特定の機能を満たす又は寄与する薬剤であると解する。好ましくは、活性剤は、臭気抑制剤及びスキンケア剤から選択される。前記活性剤は有機(例えば、単分子、有機分子、又は生物学的システム)又は無機(例えば、単分子又は粒子)であって良い。活性剤は電荷(カチオン性又はアニオン性)を有して良く、上述の水素結合供与体部分又は水素結合受容体部分を含んでも良い。その様な活性剤は、以下の種類及び個々の例から選択されて良い。
【0085】
活性剤は、さらに、本発明の意味において活性(例えば、臭気抑制又はスキンケア)を示すという限りにおいて上述の第一(例えば、ポリカチオン性)のポリマー及び/又は第二(例えば、ポリアニオン性)のポリマーに相当して良い。
【0086】
臭気抑制剤は、好ましくは以下:
(a)静菌剤又は殺菌剤、
(b)pH調節剤
(c)臭気吸収剤又は吸収性粒子、
(d)臭気分解触媒、及び
(e)臭気マスキング剤
から選択される。
堆積に使用するポリマーに依存して、当業者は、(a)から(e)の適切な薬剤を適切に選択するであろう。これらは、堆積条件下において特に電荷(カチオン性又はアニオン性)を有し、水素結合供与体部分又は水素結合受容体部分を含む。
【0087】
吸収性物品において悪臭を克服するための1つの技術は、(a)臭気を発するバクテリアの数を低減する有機静菌剤又は殺菌剤(以下、「抗菌剤」と称する)の使用に基づく。しかしながら、本発明においては、臭気抑制抗菌剤を使用し得るのみならず、意図する臭気抑制とは関係なく抗菌活性を示すものを使用し得ることを強調する。
【0088】
抗菌剤の非制限的な例は、トリクロサン、キトサン、四級アンモニウム化合物、ビグアニド、過酸化物、抗菌ペプチド又はタンパク質、ヨウ素又はヨードフォア、他のハロゲン化化合物、特に、臭素化化合物を含む。四級アンモニウム化合物は、具体的には、長鎖(例えば、C8からC24)有機基又はベンジル、例えばベンザルコニウム、から選択される1つ又は2つの置換基を有するものによって例示される。
【0089】
本発明の1つの実施態様によれば、ポリマー抗菌剤を使用する。この実施態様では、ポリマーは好ましくは、キトサン又は上に例示したタイプ(例えば、ビグアニド、四級アンモニウム化合物)のカチオン性抗菌基を有するポリマーなどの抗菌性ポリカチオン性ポリマーである。その様な抗菌ポリマーは、WO 98/18330及びWO 01/17357に開示されている。この抗菌ポリマーは、好ましくは、基礎をなすポリアニオン性ポリマーを終端層とするLBLフィルム上の最上層として与えられる。それによって、抗菌ポリマーの効率的な結合を達成する。
【0090】
抗菌剤は、金属、それらの酸化物、塩、錯体、合金、及びこれらの混合物の抗菌ナノ粒子も含む。その様な金属の例は、銀、亜鉛、金、アルミニウム、銅、白金、及びパラジウムを含み、銀が好ましい。本願では、用語「ナノ粒子」は、1μm未満、好ましくは100nm未満、より好ましくは20nm未満、さらに好ましくは10nm未満、例えば、1から5nm未満のナノメートルの範囲の平均径(直径又は非球状粒子の場合には最長軸)を有する粒子を意図する。
【0091】
本発明の1つの実施態様によれば、抗菌金属ナノ粒子は、アニオン性基、好ましくはアクリル酸ホモ又はコポリマー(例えば、PAA)におけるカルボキシル基を有する「第二のポリマー」を含む交互のポリ電解質層に基づくLBLフィルムを提供することによって、LBLフィルムに取り込まれて良い。このLBLフィルムを、次いで、各々の金属の水溶性塩、例えば酢酸銀の水溶液で処理し、続いて処理したLBLフィルムを溶液から取り出し、任意に水ですすぐ。この様式で、金属イオン、例えば、銀イオンがアニオン性基に結合するであろう。使用する金属に依存して、この金属処理LBLフィルムが抗菌特性を示して良い。結合した銀イオンは、好ましくは、水素流において銀イオンを還元することによって金属銀ナノ粒子に変換する。最上の金属含有層では、望ましい場合には、更なる層が、好ましくは再びLBL堆積によって、保護コーティングとして適用されて良い。
【0092】
LBLフィルムへの金属イオンの取り込み及び任意に後に続く水素を用いる還元の適切な条件は、例えば、"P. C. Wang, M. F. Rubner and R. E. Cohen, Polyelectrolyte multilayer nanoreactors for preparing silver nanoparticle composites: Controlled metal concentration and nanoparticle size, Langmuir 2002, 18, 3370−3375"及び"S. JoIy, R. Kane, L. R. Radzilowski, T. Wang, A. Wu, R. E. Cohen, E. L. Thomas, M. F. Rubner, Langmuir 2000, 16, 1354−1359"並びにそれらに引用されている文献に開示されている。好ましくは、弱ポリアニオンポリマーが、前記ポリアニオンポリマーの部分的なイオン化を生じさせる条件下において、弱又は強ポリカチオンポリマーと共に交互の層に堆積される。アニオン性基(例えば、PAAではカルボキシル基)の一部分は未だにプロトン化されている。酸のプロトンは、続いて金属カチオンと交換されて良い。抗菌効果を生じるAg+などの大半のシステムには必要とされないが、還元して0価の金属ナノ粒子が形成されて良い。この技術は、金属イオン又は粒子(例えば、Ag粒子)の均一及びランダムなLBLフィルム全体に亘る分布を可能にする。反復する交換及び還元サイクルが、LBLフィルム中の非常に高い金属含有量を達成するために使用されて良い。他方、使用する金属に依存して、非常に少量(例えば、上述のように乾燥されたフィルムに基づいて少なくとも10−7重量%、少なくとも10−6重量%、少なくとも10−5重量%、少なくとも10−4重量%)で強力な抗菌活性の達成には十分であって良い。非常に高い金属含有量(例えば、75重量%未満)であっても、LBL層は問題となり得るナノ粒子の凝集を抑制し得る。吸収性物品において意図される使用の観点に基づく特定の利点は、ポリマー(LBL)層中の金属イオン又は金属ナノ粒子の強固な結合である。したがって、ナノ粒子の吸入又は皮膚へのナノ粒子の浸透と関連する危険性及び問題は最小限にされている。代替的に、Agイオンなどの金属イオンが、ポリ電解質ポリマー、好ましくはWO 2005/058199に開示されているようなPEIなどのポリカチオン性ポリマーを含む水溶液から直接堆積される。それによって、ポリカチオン性ポリマー−金属イオン/ポリアニオン性ポリマー、例えばPEI−Ag+/PAAの交互の層が形成される。
【0093】
1つの更なる実施態様によれば、LBLフィルムは、外層を形成するポリ電解質ポリマーが金属ナノ粒子、例えば銀粒子に直接結合することが可能な官能基(硫黄、リン、又は窒素、例えば、SHを含むルイス塩基)を有する交互のポリ電解質に基づいて提供される。望ましい場合には、更なる層の保護コーティングが、好ましくは再びLBL堆積することによって、この金属ナノ粒子層の上に被覆されて良い。
【0094】
1つの更なる実施態様によれば、交互の層のLBL堆積の前に抗菌金属ナノ粒子を基材に堆積し、ナノ粒子を固定化する。
【0095】
臭気は、酸性、塩基性、又は中性に分類されて良い。
【0096】
酸性及び塩基性の臭気は、好ましくはpH調節剤(b)によって好適に克服される。しかしながら、臭気抑制を奏することが無いpH調節剤を使用することも意図する。pH調節剤は、例えば、吸収性物品中及び/又は上のヒトの皮膚に許容されるpHの値(3から7)を維持するために含まれて良い。かくして、適切なpH調節剤は、尿のpHを僅かに低下させるものであり、生理学的に許容されるもの、好ましくは緩衝化合物から選択されて良い。そのため、臭気抑制と関連して以下に記載するものと同一の化合物が使用されて良い。
【0097】
酸性臭気の調節剤は、7より大きいpHを有し、典型的には、無機カーボネート、ビカーボネート、ホスフェート、及びスルフェートを含む。塩基性臭気の抑制剤は、7未満のpHを有する。好ましくは、それらは、1つ、2つ、又は3つのカルボン酸基、任意に少なくとも1つのヒドロキシ又はオキソ基、及び好ましくは2から10(例えば、3から6)の炭素原子を有する酸から選択される。塩基性臭気の抑制剤は、クエン酸、乳酸、酒石酸、グルコン酸、レブリン酸、グリコール酸、スクシン酸、リンゴ酸、フマル酸、酸リン酸塩、並びにホウ酸及びマレイン酸などの化合物を含む。それらは、US3,704,034に記載のような、好ましくはpHの値を4.5から6.0に調節する適当な量の塩基(例えば、NaOH又はNaCO)を添加することによって緩衝溶液として提供されて良い。それらの臭気抑制効果は、少なくとも部分的にはそれらの抗菌及び酵素阻害機能にも基づく。例えば、ウリアーゼインヒビターは、適切なpH調節剤の一種を表わす。
【0098】
pH調節剤をLBLフィルムに含ませるために、LBLフィルムを構成するポリマーは、溶解された形態のpH調節剤を既に含有する少なくとも1つの水溶液から堆積されて良い。代替的には、フィルム形成後に、適切な条件下でpH調節剤を含有する水溶液を接触させることによって、LBLフィルムにpH調節剤を含ませる。
【0099】
塩基性臭気のためのpH調節は、酸性ポリマーを含むLBLフィルムの形成によって促進されても良い。好ましくは、酸性ポリマーは、部分的に中和された弱ポリアニオン性ポリマーを表わし、上に例示したポリマーの種類から選択されて良い。これらの部分的に中和されたポリアニオン性ポリマーの例は、部分的に中和されたポリアクリル酸又はポリカチオン酸である。対応するLBLフィルム自体が、任意の他の活性剤の不在下であってもpH調節をすることができる。
【0100】
一般的に、酸性pH調節剤が、吸収性物品中の望ましくない微生物(細菌)に対する増殖阻害効果を有して良いことも注意すべきである。例えば、これは本願と同じ出願人のWO 00/35502の参照でき、特に乳酸生産菌の存在下において、湿潤後に3.5から5.5のpH値であることが、望ましくない微生物及びそれから生じる望ましくない臭気の調節に最も有効であることを開示している。
【0101】
最も一般的に利用されている臭気抑制剤は、臭気吸収剤又は吸収性粒子(c)であり、中性臭気の抑制に主に使用されており、好ましくは約7のpHを有する。それらは負又は正の表面電荷を有して良い。これらの既知のタイプの化合物の例は、活性炭、粘度、ゼオライト、シリカ、デンプン、及びそれらの所定の組み合わせを含む。その様な薬剤の例は、EP 0 348 979 A1、EP 0 510 619、WO 91/12029、WO 91/11977、WO 91/12030、WO 97/46188、WO 97/46190、WO 97/46192、WO 97/46193、WO 97/46195、及びWO 97/46196に開示されている。
【0102】
臭気分解触媒の例は、金属又は金属酸化物ナノ粒子、例えば、酸化鉄、二酸化チタン、金、及び白金ナノ粒子、並びに酵素、例えば、ヒドロラーゼ、オキシダーゼ、レダクターゼ、カタラーゼ、プロテアーゼ、及びリパーゼを含む。当該技術分野で知られているように、サイズの低減と共に、(特に活性を有する)角及び縁が激しく増大する。そのため、対応するバルク材が不活性である各種のナノ粒子材料について、触媒活性が既に観察されている。
【0103】
臭気マスキング化合物(e)は、典型的には香水のタイプであり、マスクする臭気に依存して当業者に適当に選択されて良い。臭気マスキング化合物は、例えば、WO 02/056841の22頁に開示されている物を含む。
【0104】
スキンケア剤は、使用者の皮膚に対する美容上の利益、治療上の利益、及び/又は保護するという利益を与えることが可能である。それらは、皮膚炎の予防、緩和、又は治癒に使用することができ、スキンスムージング、消炎(皮膚炎の低減)、抗微生物、抗菌、抗ウイルス、収斂、創傷治癒、細胞再生、抗炎症、及び/又はかゆみ止め効果を有しても良い。多数のスキンケア剤が、これらの効果の幾つかを同時に示し、作用の一態様に明確に割り当てることは多くの場合に不可能である。
【0105】
好ましいスキンケア剤は、天然の活性剤(多くの場合に野菜を起源とする)又は植物抽出物中に存在するそれらの混合物に基づく。「天然の活性剤」という用語は、それらの合成アナログも含む。
【0106】
スキンケア剤は、尿又は糞便中の刺激性成分を吸収する物質、例えば、粘土鉱物(ベントナイト、カオリン、及びモンモリロナイトなど)、酸化ケイ素化合物(水晶、ゼオライト、水ガラスなど)、又は活性炭を含んで良い。前記物質は、例えば四級アンモニウム化合物を使用する各種の処理を用いて、有利には活性化され、より吸収性になる。
【0107】
スキンケア剤は、酵素インヒビター、例えば、鉄又は亜鉛の金属塩、微量の重金属イオン、例えば、銅又は銀、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ダイズトリプシンインヒビター、ライマメプロテアーゼインヒビター、トウモロコシプロテアーゼインヒビター、ステアリルグリチルレチネート、グリセロールトリアセテート、ベタイン化合物、スルホベタイン化合物、コレスチラミン、p−グアニジノベンゾエートを含んで良い。
【0108】
スキンケア剤は、臭気抑制剤、例えば、アジピン酸、アスコルビン酸、安息香酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、リン酸、又は塩酸などの有機又は無機酸、あるいは例えば前記酸と対応する塩からなる緩衝剤と組み合わせて、上述のタイプのpH調節剤を含んで良い。それらは、ポリマーの酸、例えば、ポリリン酸又はポリアクリル酸を含んで良い。
【0109】
スキンケア剤は、望ましくない微生物、例えば、尿管病原菌又は皮膚感染菌に対して拮抗するプロバイオティクス微生物の添加を含んでも良い。使用して良いプロバイオティクス微生物の例は、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus curvatus、Lactobacillus plantarum、又はLactococis lactisから選ばれるような乳酸生産菌の個々の株又は複数の株の混合物である。多数の乳酸生産菌、例えば、Lactobacillus族のものは、外側の細胞壁に負電荷を有し、かくしてポリカチオン性ポリマー及びポリアニオン性ポリマーとの堆積に適している。
【0110】
スキンケア剤は、以下の物質を含んでも良い:
・抗炎症剤及び/又は創傷治癒保護剤、例えば、アセチルサリチル酸、アラントイン、アズレン、α−ビサボロール、フラボノイド、グリシルリジン酸、及びそれらの塩(例えば、カリウム塩、アンモニウム塩、又は亜鉛塩)、イクタモール(Inotyol(登録商標))、タンニン、パントテン酸及びその塩、例えば、カルシウムパントテネート、及びCM−β−グルカンを含むβ−グルカン、
・収斂剤(血管収縮剤)、例えば、TiO、ZnO(及び他の亜鉛化合物)、酢酸アルミニウム溶液、酒石酸アルニウム溶液(及び他のアルミニウム化合物)、
・静菌剤又は殺菌剤、特に、「悪臭」を発生する細菌に対して有効性を示すもの、例えば、ファルネソール、
・抗菌剤、例えば、アモロルフィン、抗生物質、バシトラシン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、セトリミド、フシジン酸、ゲンチアナバイオレット(塩化メチルロサニリン)、ヘキサクロロフェン、ヘキシルレゾルシノール、イミダゾール誘導体(例えば、ビフォナゾール、エコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、ミコナゾール)、クロレキシジン、ナイスタチン、ポビドン−ヨード、テルビナフィン、トリクロサン、過酸化水素、又は酸化亜鉛、
・抗ウイルス剤、例えば、アシクロビル、イミクモド、ポドフィロトキシン、ポドフィロックス、シドフォビル、ペンシクロビル、ビダラビン、イドクスリジン、トリフルリジン、トロマンタジン、ラミブジン、
・抗刺激物質、例えば、PEG−sojaステロール又はPEGフィトステロール、例えば、PEG5、10、15、20、25、30、又は40のタイプのもの、
・天然脂肪酸、特に必須及び/又はポリ不飽和脂肪酸、例えば、リノール酸又はリノレン酸、あるいはそれらを含有する油、例えば、月見草油、コケモモ種子油、クロスグリ種子油、
・(プロ)ビタミン又は(プロ)ビタミン誘導体、例えば、アスコルビン酸(ビタミンC)、ビタミンA化合物(例えば、レチノール、レチニルアセテート、レチニルパルミテート、レチナール、トレチノイン、及びイソトレチノイン)、パンテノール(プロビタミンB5)、トコフェロール(ビタミンE)、例えば、トコフェロールアセテート又はトコフェロールバーム、
・天然植物抽出物又はその成分、例えば、アロエベラ、アロエバーバデンシス、又はアロエカペンシス抽出物、藻抽出物、アボカドステロール、ブドウ種子抽出物、アヴィーナサティヴァ(oat)抽出物、キンセンカ、例えば、calendula officinalis、マンサク、例えば、hamamelis virginiana(witch hazel)、salvia officinalis(セージ)、camelia sinensis、カモミール、例えば、chamomile recutina、echnicacea purpures,melissa officinalis、mentha piperita、オリーブ、例えば、oleo europeae、ローズマリー抽出物ウ、18−グリシレチン酸を含む甘草抽出物、ケルセチン及び/又はグリコ−ルチンを含有するシナノキ抽出物、マリーゴールド抽出物(キンセンカ油)、ケルセチン及びルチンを含有するイチョウの葉の抽出物、ケルセチン及びカンフェロールを含有するトチノキ、アボカド油、カバノキ抽出物、アルニカ、Sharonのバラ抽出物又はSt.John’s 麦芽汁、ティーツリー油、きゅうり、ホップ、あるいはマンサク抽出物、
・酵母抽出物、
・スキンケア剤、例えば、α−ヒドロキシ酸(クエン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸など)、ベタイン(トリメチルグリシン)、セラミド、フラボノイド、フォトスフィンゴシン、フォトステロール、任意にエトキシル化しているもの(「Generol」という商標でHenkelから市販されている)、ヒアルロン酸、キトサン(アセチル化キチン)、乳タンパク質(Lactis proteinum)、ポリサッカリド、ユビキノン(コエンザイムQ10)、尿素、スクアラン又はスクアレン、ドラゴサンタノール(dragosantanol)、パンテノール、アントシアニジン、好ましくは天然のもの、並びにエトキシル化四級アミン。
【0111】
スキンケア剤は、グルココルチコイド、好ましくは効果の弱いグルココルチコイド、例えば、ヒドロコルチゾンを含んでも良く、又はかゆみ止め、例えば、抗ヒスタミン又は局所的な麻酔剤(例えば、リドケイン)を含んでも良い。堆積に使用しようとするポリマーのタイプに依存して、適切なスキンケア剤が、上述の種類のもの、例えば、堆積条件下で電荷(カチオン性又はアニオン性)を有し、及び/又は水素結合供与体部分若しくは水素結合受容体部分を含むものから当業者によって選択されて良い。
【0112】
幾つかの異なるスキンケア剤及び/又は本発明で使用して良い物質の他の例は、とりわけ以下の文献:WO 96/16682 "Diaper having a lotioned topsheet" (Roe et al . ) , WO 96/16681 "Diaper having a lotioned topsheet containing a polysiloxane emmollient" (Roe, Mackey) , WO 97/05909 "Diaper having a lotioned topsheet comprising a liquid polyester emollient and an immobilizing agent" (Roe) , WO 99/45973 "Disposable absorbent article having a skin care composition containing an enzyme inhibitor" (Roe et al . ) , WO 99/45974 "Protease inhibitors in absorbent products" (Rourke et al . ) ,' WO 99/45976 "Proton donating actives in absorbent articles" (McOsker et al . ) , DE 33 09: 530 Cl "Hygienische Absorptionsvorlage" (Leitner et al . ) , DE 41 36 540 Al "Einwegwindeln" (Grunecker et al . ) , US 3489148 "Topsheet for disposable diapers" (Duncan et al . ) , WO 00/64502 "Absorbent article having a lotionized bodyside liner" (Krzysik et al . ) , WO 00/64501 "Skin−friendly absorbent articles and compositions"(Krzysik et al . ) , WO 00/64500 "Absorbent article having a hydrophilic lotionized bodyside liner" (Krzysik et al . ) , WO 00/64503 "SkiN−friendly absorbent articles and compositions"(Krzysik et al . ) , WO 99/22684 "Web materials with two or more skin care compositions disposed thereon and articles made therefrom" (Roe et al . )に開示されている。
【0113】
本発明の吸収性物品は、当該物品の一部分にLBLフィルムを提供することによって製造する。この部分は、好ましくは、トップシート、バックシート、吸収性物品の製造に使用する繊維又は粒子、ウエストバンド、ガスケットカフ、及び/又はフロントバリアカフから選択される。スキンケア剤又はpH調節剤の場合のように活性剤が使用者の皮膚に有益な効果を奏する場合には、着用者の皮膚と接触し得る部分、例えば、トップシート又はレッグカフにフィルムを適用して良い。他の活性剤は、吸収性物品の他の部分に同様に配置して良い。吸収性物品の各々の部分(例えば、おむつの部分)は、次いで、吸収性物品の残部の要素を既知の様式で取り付ける。代替的には、吸収性物品又はその所定の部分がLBLフィルムの適用の前に完成されている。
【0114】
本発明の吸収性材料の製造のための1つの方法は、以下:
(a)第一の官能基を含む第一のポリマーの第一の水溶液と吸収性物品の一部分とを接触させて、第一のポリマーの層を形成し、続いて、前記第一の水溶液を除去する工程、
(b)吸収性物品の前記部分を任意に水ですすぐ工程、
(c)第二の官能基を含む第二のポリマーの第二の水溶液と吸収性物品の前記部分を接触させて、第二のポリマーの層を形成し、続いて前記第二の水溶液を除去する工程、
(d)吸収性物品の前記部分を任意に水ですすぐ工程、
(e)同様に少なくとも1つの更なる交互の層を任意に形成する工程
を当該順序で含み、少なくとも1つの工程において、前記第一又は第二の水溶液は、溶解又は分散された形態で活性剤も含有する。
【0115】
「接触」という用語は、全ての既知のコーティング技術を対象とする。これらは、スプレー、プリント、及びローラーコーティング、好ましくは基材を水溶液に浸すことによる水溶液の適用を含む。
【0116】
「水溶液」は、容量において水を主要な溶媒として、好ましくは少なくとも80質量%、特に少なくとも90容量%の量で含有する溶液であると解する。水溶液は、水混和性アルコール(例えば、メタノール又はエタノール)、エーテル(例えば、THF)、又はケトン(例えば、アセトン)などの水混和性有機溶媒も含有して良い。有機溶媒を含めて、第一及び/又は第二のポリマーの堆積、それによって層の厚みを調節して良い。所定の条件下では、50容量%以下の水と少なくとも1つの水混和性溶媒との混合物も有用であって良い。
【0117】
上記の方法に代えて、活性剤は、第一の層の堆積の前又はLBLフィルムの1つ、複数、若しくは全ての層の堆積後、すなわち、工程(a)から(d)のいずれかの間、反復サイクル(e)の一部分として、又は工程(e)の終わりに基材と接触させる別の水溶液から堆積させる。
【0118】
LBLフィルムに活性剤を含ませるための1つの更なる技術によれば、LBLフィルムに移動するために適切な条件下で、活性剤の水分散物又は好ましくは水溶液を接触させる前に、上記の工程(a)から(e)に従ってLBLフィルムを形成する。一般的には、LBLフィルムの環境におけるpH又はイオン強度の変化を、小分子の透過性を増大させるために使用する。この技術は、”A.J.Chung et al.,Langmuir,18,1176(2002)”及びポリ(メタクリル酸)/ポリエチレンオキシドLBLフィルムに関するUS 2004/0137039の実施例1に開示されており、荷電した活性剤を有する交互のポリカチオン性ポリマー及びポリアニオン性ポリマーに基づくLBLフィルムの堆積に適切である。
【0119】
基材に近接する層を「第二のポリマー」から形成しようとする場合には、工程(a)及び(c)を対応させて交換する必要がある。
【0120】
さらに、各種のタイプの「第一のポリマー」を工程(a)及び反復工程(e)で使用して良く、各種のタイプの「第二のポリマー」を工程(c)及び反復工程(e)で使用して良い。
【0121】
さらに、1つの荷電したポリマーの少なくとも1つの堆積工程(例えば、(a)又は(c)、あるいは反復工程(e)による堆積工程の1つ)を完全に削除して、同じ電荷を有する粒子、生体分子(例えば、タンパク質)、又はシステム(細胞又は細胞断片)などの活性剤の堆積に置き換えることが可能である。これは、約10nm未満の厚みを有する負に荷電した無機物質について、WO 2004/071677に開示されている。有用な無機物質は、水性溶媒環境において容易に広げられるプレートレットクレイを含む。前記クレイは、天然又は合成のものであって良い。プレートレット状のアルミノシリケートを、上層又は中間層として悪臭を吸収するために使用しても良い。同様に、正に荷電した無機粒子を、ポリカチオン性ポリマーの少なくとも1つの層を置換するために使用して良いであろう。
【0122】
1つの層の置換物として1つの好ましい生体分子は、細菌細胞、例えば、乳酸生産菌(例えば、乳酸菌及びWO 00/35502に開示されている他のファミリー)、それらの断片、細菌胞子(特にバシラス種)、並びにタンパク質、酵素、又は抗体である。
【0123】
第一の水溶液中の第一のポリマー及び第二の水溶液中の第二のポリマーの濃度に関して特に制限は存在しない。好ましくは、前記濃度は、0.001から5g/l、特に0.01から0.5g/lの範囲である。活性剤は同様の濃度で存在して良い。
【0124】
層の堆積は、比較的広範な温度範囲で実施して良いが、簡便には、フィルム形成は典型的に室温で生じる。
【0125】
どの様な特徴(材料、条件、及び用途など)が好ましいものとして参照されても、本願の開示は、それによって矛盾が生じない限り、少なくとも2つのこの様な特徴の組み合わせまで拡張されることが理解されるべきである。
【実施例】
【0126】
より好ましい実施態様
より好ましい実施態様によって本発明を説明する。これらの実施態様は、本発明を実施するために有利に使用される特徴の組み合わせを反映する。
【0127】
実施態様1
ポリエチレン系不織布、好ましくはトップシート製品のために使用されるタイプのものを任意にコロナ放電に供して、前記不織布の表面に負電荷を生じさせる。(任意にコロナ処理した)不織布を、活性成分の水溶液、又は活性成分とプライマーポリマーとの混合物を含む水溶液に浸けた。活性剤の非制限的な例は、アラントインなどのスキンケア剤である。ポリエチレンイミン(PEI)をプライマーポリマーとして使用して良い。活性剤とプライマーポリマーは基材上に第一の層を形成する。
【0128】
結果として得られた不織布を、次いで、ポリアクリル酸(PAA)及びポリ(アリルアミン塩酸)(PAH)の水溶液に交互に浸けて、少なくとも2つのコーティング層を堆積させる。各々の浸す工程の後に、任意に不織布を水ですすぐ。最終的な堆積工程の後に、不織布を再び任意に水ですすぎ、次いで乾燥させる。
【0129】
実施態様2
セルロース繊維、例えば、ティッシュ層の製造に使用するセルロース繊維又は吸収体コアの製造に使用するセルロースフラフパルプを、カチオン性ポリマー、例えば上述の湿潤強度剤の水溶液に浸す。脱水工程及び任意のすすぎ工程の後に、処理したセルロース繊維をアニオンポリマー、例えば、上述の乾燥強度剤の水溶液に浸け、二重処理した繊維を脱水し、任意にすすぐ工程を続いて実施する。このスキームを繰り返して、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの少なくとも1つの更なる層を堆積させて良い。カチオン性の層の堆積後に、ミクロ又はナノ小孔ゼオライトの層を水分散物から繊維表面に堆積させる。結果として得られたゼオライト層は、カチオン性ポリマー及び任意に少なくとも1つのアニオン性ポリマーの少なくとも1つの更なる層を堆積させることによって、周囲の水及び空気中の湿気から保護されて良い。負の表面電荷により、ゼオライト層はアニオン性ポリマーの1つの層に完全に置き換えることが可能である。ゼオライト粒子の代わりに、負の表面電荷を有する任意の他の粒子のタイプが使用されて良い。
【0130】
実施態様3
ポリカチオン性ポリマーとポリアニオン性ポリマーとの交互の層を、上述の実施態様1及び2と同様に基材となる物質に適用する。基材となる物質は、例えば、トップシート(例えば、任意にコロナ処理された不織布又は有孔プラスチックフィルム)であるか、又は吸収層(任意に超吸収性物質を伴う)又は捕捉/分配層において使用されるセルロース材料、例えば、セルロースフラフパルプである。最終的なカチオン性の層として、キトサン又は変性キトサンを水溶液から堆積させて、抗菌フィルムを形成する。
【0131】
実施態様4
基材、好ましくは吸収性物品の吸収層(例えば、セルロースフラフパルプ及び/又は超吸収性物質を含むもの)又は近接する層(例えば、ティッシュラップ又は捕捉/分配層)を、ポリアニオンポリマー(例えば、PAA)及びポリカチオン性ポリマー(例えば、PAH)水溶液から任意の順序において、これらのポリマーの少なくとも2つの交互の層で被覆する。好ましくは、ポリアニオン性ポリマーを遊離の酸基を保持するpH条件下で堆積する。任意に、すすぐ工程を各堆積の後に実施する。結果として得られた被覆された基材を、次いで、銀の塩(例えば、アセテート)の水溶液に浸けて、銀イオンをLBLフィルムに取り込ませ、酸基に結合させる。この工程は抗菌活性に必要とされないが、イオンである銀原子が、水素流中で、ポリマーコーティングにおいて結合される金属銀ナノ粒子に還元されて良い。1つ又は複数のポリマー層が、所望の場合に保護コーティングとして適用されて良い。最終的な層がポリアニオン性タイプ(PAA)であった場合には、保護コーティングはポリカチオン性の層(PAH層)で開始し、任意に交互のPAA/PAH構造の原則を満たす少なくとも1つの更なる層を用いる。適切な加工条件のより詳細な説明は、Rubner(Langmuir 2000 and 2002)による上述の参考文献において認められる。
【0132】
この実施態様は、他の金属イオン又は金属又は金属酸化物ナノ粒子を含めることに転用して良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
おむつ、おむつパンツ、パンティーライナー、サニタリーナプキン、又は失禁用品などの吸収性物品であって、前記吸収性物品の少なくとも一部分が、官能基を有するポリマーの少なくとも1つの単分子層と活性剤とを含むフィルムを含む、吸収性物品。
【請求項2】
前記フィルムが、少なくとも、第一の官能基を有する第一のポリマーと、前記第一の官能基と相互作用可能な第二の官能基を有する第二のポリマーとのレイヤーバイレイヤー堆積によって得られる、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記フィルムが2以上の層からなる、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記フィルムが1μm未満の厚みを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記官能基が、極性基、特にアニオン性基及びカチオン性基から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記第一の官能基と第二の官能基との間の相互作用が、静電気的引力、供与体/受容体相互作用、水素結合、又は特異的認識から選択される、請求項2から5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記活性剤が臭気抑制剤及び/又はスキンケア剤から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記スキンケア剤が天然の活性剤又はそれらの混合物から選択される、請求項7に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記臭気制御剤が、静菌剤又は殺菌剤、pH調節剤、臭気吸収粒子、臭気分解触媒、及び臭気マスキング化合物から選択される、請求項7に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記第一のポリマーがポリカチオン性ポリマーであり、前記第二のポリマーがポリアニオン性ポリマーである、請求項2から4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記ポリカチオン性ポリマーが、カチオン性又はカチオン変性ポリサッカリド、ポリアリルアミンホモ若しくはコポリマー、ポリビニルアミンホモ若しくはコポリマー、又はポリエチレネミンから選択される、請求項10に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記ポリアニオン性ポリマーが、(メタ)アクリル酸ホモ若しくはコポリマー、アニオン性デンプン誘導体、及びアニオン性セルロース誘導体から選択される、請求項10に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記フィルムが、少なくとも1つのポリカチオン性ポリマー、少なくとも1つのポリアニオン性ポリマー、及び荷電した活性剤を含む、請求項10から12のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記荷電した活性剤が、請求項7から9のいずれか一項に規定の活性剤から選択される、請求項13に記載の吸収性物品。
【請求項15】
前記第一のポリマーが水素結合供与体ポリマーであり、前記第二のポリマーが水素結合受容体ポリマーである、請求項2から4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項16】
前記水素結合供与体ポリマーが、ポリカルボン酸、ポリヌクレオチド、ビニル核酸のポリマー、ポリアミノ酸、ポリアルコール、及びそれらのコポリマーから選択される、請求項15に記載の吸収性物品。
【請求項17】
前記水素結合受容体ポリマーが、ポリエーテル、ポリケトン、ポリアルデヒド、ポリアクリルアミド、他のポリアミド、ポリアミン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリホスファゼン、ポリサッカリド、又はそれらのコポリマーから選択される、請求項15に記載の吸収性物品。
【請求項18】
前記フィルムが、少なくとも1つの水素結合供与体ポリマー、少なくとも1つの水素結合受容体ポリマー、並びに少なくとも1つの水素結合供与体及び/又は受容体部分を含む活性剤を含む、請求項15から17のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項19】
前記少なくとも1つの水素結合供与体及び/又は受容体部分を含む活性剤が、請求項7から9のいずれか一項に規定の活性剤から選択される、請求項18に記載の吸収性物品。
【請求項20】
交互のカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの少なくとも1つの層が、無機粒子又は他の荷電した活性剤の層によって置換されている、請求項10から12のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項21】
前記粒子が、静菌性又は殺菌性金属粒子、臭気分解金属粒子、及び臭気吸収粒子から選択される、請求項20に記載の吸収性物品。
【請求項22】
前記レイヤーバイレイヤー堆積によって得られるフィルムが、少なくとも1つの静菌性又は殺菌性ポリカチオン性ポリマーを前記フィルムの上層に存在する活性剤として含む、請求項2から4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項23】
前記静菌性又は殺菌性ポリカチオン性ポリマーがキトサンである、請求項16に記載の吸収性物品。
【請求項24】
前記活性剤が、静菌性若しくは殺菌性金属イオン、例えば、銀イオンであるか、又は静菌性若しくは殺菌性金属粒子、例えば、銀粒子であり、前記フィルムの少なくとも一部分に分散されている、請求項10から12のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項25】
前記フィルムを含む一部分が、トップシート、バックシート、トップシートと吸収層、繊維、若しくは粒子との間に配置された層、ウエストバンド、及びレッグカフから選択される、請求項1から24のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項26】
前記吸収性物品がおむつ又は失禁用品であり、フィルムを有するその一部分が、トップシート、ガスケットカフ、及び/又はフロントバリアカフから選択され、前記フィルムが請求項14、19、21、22、23、及び24のいずれか一項に規定されているものである、請求項25に記載の吸収性物品。
【請求項27】
前記トップシート、ガスケットカフ、及び/又はフロントバリアカフから選択されるおむつの一部分が疎水性物質からなり、フィルムの堆積の前にコロナ処理又はプラズマ処理に供される、請求項1、25、又は26に記載の吸収性物品。
【請求項28】
第一の官能基を有する少なくとも1つの第一のポリマーと、前記第一の官能基と相互作用可能な第二の官能基を有する第二のポリマーとのレイヤーバイレイヤー堆積によって得られるフィルムの使用であって、体液による前記フィルムの湿潤によって、前記フィルムに含有されている活性剤を放出させるための使用。
【請求項29】
前記第一の官能基を有する第一のポリマーがポリカチオン性ポリマーであり、前記第二の官能基を有する第二のポリマーがポリアニオン性ポリマーである、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記フィルムが、おむつ、おむつパンツ、パンティーライナー、サニタリーナプキン、又は失禁用品などの吸収性物品の少なくとも一部部分に含まれる、請求項28又は29に記載の使用。
【請求項31】
前記フィルムが、請求項3、4、6から21、及び24のいずれか一項に規定のものである、請求項28に記載の使用。
【請求項32】
前記体液が、尿、水様便、月経液、及び女性の分泌物から選択される、請求項28から31のいずれか一項に記載の使用。

【公表番号】特表2009−509702(P2009−509702A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533875(P2008−533875)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010737
【国際公開番号】WO2007/038966
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(506215320)エスセーアー・ハイジーン・プロダクツ・アーベー (157)
【Fターム(参考)】