説明

活性炭を用いて炭化水素系燃料から有色体を除去する方法

活性炭を用いて炭化水素系燃料、特にガソリンから有色体を除去するプロセスが開示される。細孔構造内に燃料を脱色する量の重合リン酸又は還元された遷移金属を有する活性炭と燃料を接触させることにより、有色体は燃料から除去される。リン酸は、続く熱処理の前に非リン酸−活性炭(蒸気活性化石炭系など)に添加されてもよいし、あるいは存在する残留リン酸、たとえばリン酸−活性化木系炭素の利点を採用してもよい。同様に、不純物としてすでに存在していてもさらに銅などの遷移金属を塩形態として活性炭に添加してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素燃料の脱色及び浄化に有用なプロセスに関する。特に、本発明は、液体炭化水素燃料、特にガソリンから、インダン類、ナフタレン類、フェナントレン類、ピレン、アルキルベンゼン類及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも痕跡量の不純物又は他の有色体を除去するために活性炭を用いることに関する。活性炭は、石炭、石油又はリグノセルロース材料から誘導され得る。加えて、本発明は、燃料浄化に対する活性炭の使用を促進するために、活性炭を調製し処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭は、種々の源から有色体を除去するための浄化媒体として使用することが十分に確立されている吸着物質である。
米国特許US 4,695,386号明細書は、逐次酸性化(acidulation)、沈殿及び凝固の結果、パルプミルプロセス流からの流出物の濾液を得て、当該濾液を活性炭との接触による脱色用の一連のチャンバに通過させることを教示する。
【0003】
米国特許US 4,728,435号明細書は、顆粒状活性炭の固定床に溶液を通過させることによるグリオキサル水溶液の脱色を教示する。
米国特許US 4,746,368号明細書は、砂糖水から不純物を除去するために長い間使用されている方法が活性炭の粒子を用いることを教示する。砂糖水又はシロップは、カラムなどの容器内に維持されているこのような粒子の床を強制的に通過させられる。
【0004】
米国特許US 5,429,747号明細書は、化粧品製造プロセスからの廃水の脱色を教示する。高温で廃水に強塩基を添加して、脂肪質の物質を凝集させた後、無色の酸化剤を添加して部分酸化を生じさせる。得られる廃水を次いで粉末化活性炭で脱色する。
【0005】
燃料の脱色について2つの主たる技術的基盤がある。(1)炭素上に担持された金属触媒の存在下での水素処理、及び(2)吸着である。
(1)接触水素処理
米国特許US4,755,280号明細書は、鉄及び1以上のアルカリ又はアルカリ土類金属成分を含む水素処理触媒の存在下での水素処理により、多環芳香族及びヒドロ芳香族炭化水素を含む炭化水素流の色及び酸化安定性を改良する方法を開示する。
【0006】
米国特許US5,403,470号明細書は、穏やかな条件下での水素処理によるディーゼル燃料の脱色を開示する。供給原料は、最初に水素処理されて有機硫黄又は有機窒素に転化される。次いで、流出物は、もっと低温であるが最終的な燃料の色を明るくするに十分なより小さな下流の水素処理域を通過する。
【0007】
米国特許US5,449,452号明細書は、水素処理条件にて、炭素担体上にホウ素、VIII族の非貴金属及びVIB族の金属を含む硫化物触媒の床に仕込んだ供給物を通過させて接触させることによる、炭化水素の水素化脱芳香族プロセスを開示する。
【0008】
米国特許US5,435,907号明細書は、水素の存在下、299℃〜454℃(570〜850゜F)、4.1Mpa〜17.2MPa(600〜2500psi)、1000〜5000SCFB(液体供給物の1バレル当たりの標準立方フィート)の水素フローにて、活性炭担体上のVIII族及びVIB族金属の硫化物触媒の床に仕込んだ供給物を通過させて接触させることによる中間留分炭化水素の水素化脱芳香族プロセスを開示する。活性炭担体は、少なくとも約900m2/gのBET表面積、16〜50Åの平均細孔径及び0.4〜1.2cc/gの細孔総容積(窒素について)を有する。
【0009】
米国特許US5,472,595号明細書は、水素ガスの存在下、200〜450℃、200〜3000psigの圧力、0.1〜10LHSVの液体時間当たり空間速度及び200〜10,000SCFBの水素供給速度の水素処理条件にて、活性炭担体上に0.1〜15wt%のニッケル、1〜50wt%のタングステン及び0.01〜10wt%のリンを含む硫化物触媒の床に仕込んだ供給物を通過させて接触させることによる炭化水素の水素化脱芳香族プロセスを開示する。活性炭担体は、600〜2000m2/gの表面積、少なくとも0.3cc/gの窒素についての細孔容積及び12〜100Åの平均細孔径を有する。
【0010】
米国特許US5,462,651号明細書は、水素の存在下、水素処理条件にて、リン処理炭素上に担持されている金属硫化物触媒の床に仕込んだ炭化水素供給物を通過させて接触させることによる炭化水素オイルの水素化脱芳香族、水素化脱硫及び水素化脱窒を同時に行うことを開示する。金属硫化物触媒は、1以上のVIII族の非貴金属とタングステン及びモリブデンから選択された少なくとも1の金属とを含む。
【0011】
米国特許US5,676,822号明細書は、望ましくない芳香族成分、硫黄化合物及び窒素化合物を含有する炭化水素オイルの水素化脱芳香族プロセスを開示する。仕込まれた炭化水素供給物は、水素ガスの存在下、水素処理条件にて、活性炭上に担持された亜鉛で活性化された金属硫化物触媒の床に通過して接触する。
【0012】
硫化物触媒は、0.1〜15wt%の非貴金属VIII族金属の1種以上;及び1〜50wt%のタングステン及び/又は1〜20wt%のモリブデン又はクロム及び0.01〜10wt%の亜鉛を含む。活性炭担体は、600〜2000m2/gのB.E.T.表面積、少なくとも0.3cc/gの窒素に対する細孔容積及び12〜100Åの平均細孔径により特徴づけられる。
【0013】
米国特許US5,651,878号明細書は、(i)モリブデン又はタングステン、(ii)VIII族金属又は非貴金属及び(iii)クロムを担持する炭素担持触媒の存在下での水素処理によるナフサ又は中間留分炭化水素の水素化脱芳香族プロセスを開示する。炭素担体は、少なくとも800m2/gのB.E.T.表面積、少なくとも0.4cc/gの窒素に対する細孔総容積及び16〜50Åの窒素吸着による平均細孔径を有する。この炭素担体を前もって製作し、炭素担持触媒は元素の塩の水溶液を用いる慣用の含浸方法により調製される。
【0014】
米国特許US5,837,640号明細書は、VIII族及びVIB族金属を含む炭素担持触媒を用いるナフサ又は中間留分炭化水素の水素化脱芳香族を開示する。
(2)吸着
米国特許US3,920,540号明細書は、10℃〜149℃(50〜300゜F)で金属スチールウール担体上のアルミナに通過させることによる潤滑油などの石油オイルの脱色及び粘度指数増加プロセスを開示する。
【0015】
米国特許US5,207,894号明細書は、芳香族有色体を吸着するに十分な時間、炭化水素流を天然アタパルジャイトクレイと接触させることによる芳香族炭化水素流から芳香族有色体、特に酸素又は硫黄含有芳香族を除去するプロセスを開示する。このプロセスは、芳香族炭化水素流がモレキュラーシーブを用いて最初に乾燥される場合に、最も効果的である。
【0016】
特開平10−204,446号公報は、活性白土及び/又はシリカ−アルミナで処理することによるオイルの脱色を開示する。
米国特許出願公開2004/0,256,320号公報は、膜濾過を用いる有色体及び/又はアスファルテン性汚染物質を炭化水素混合物から分離するプロセスを開示する。膜は、(1)稠密膜からなる頂部薄層及び(2)多孔性膜からなる担体層を含む。頂部薄層は炭化水素混合物から有色体及び汚染物質を濾過し、多孔性担体膜は膜に機械的強度を与える。
【0017】
米国特許出願公開2004/0,129,608号公報(本願に援用する)は、脱色炭素を用いるガソリン燃料などの液体炭化水素燃料の脱色プロセスを開示する。このプロセスは、燃料をカーボンフィルター(おそらく多重炭素充填カラム)に通過させるか又は炭素粒子を液体燃料に導入し処理後に粒子を回収することにより液体燃料を活性炭と接触させることを含む。痕跡量の不純物は、インダン類、ナフタレン類、フェナントレン類、ピレン、アルキルベンゼン及びこれらの混合物を含む。公開された特許出願は、この発明で用いる脱色炭素を調製するために任意の炭素源を用いてもよいことをさらに教示する。木、ココヤシ又は石炭から誘導される炭素が好ましく教示される。炭素は、たとえば酸処理、アルカリ処理又は蒸気処理によって活性化され得る。適切な脱色炭素は、Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, 3rd Edition, VoI 4, p 562〜569に記載されている。
【0018】
米国特許出願公開2004/0,200,758号公報は、チオフェン及びチオフェン化合物を優先的に吸着する吸着剤と液体燃料を接触させることを含む液体燃料からチオフェン及びチオフェン化合物を除去する方法並びに芳香族化合物及び脂肪族化合物の混合物から芳香族化合物を選択的に除去することを含む別の方法を開示する。吸着剤は、ゼオライトX、ゼオライトY、ゼオライトLSX、MCM−41ゼオライト、シリコアルミノホスフェート及びこれらの混合物からなる群より選択されるイオン交換されたゼオライトを含有する。このゼオライトは、交換可能なカチオン性サイトを有し、少なくとも1のサイトは、存在する金属及び金属カチオンの少なくとも1種を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
先行技術の開示を勘案すれば、当業者は、脱色特性について知られている従来の活性炭がガソリンなどの炭化水素燃料の有色を減少させ得ることを予測できるかもしれない。従来技術に欠落しており示唆されていないことは、従来技術による教示及び示唆を超える炭化水素燃料を脱色可能な活性炭材料を用いて炭化水素系燃料から有色体を除去するプロセスである。したがって、本発明の目的は予測できないほど改良された炭化水素燃料脱色を提供する活性炭材料を用いて炭化水素系燃料から有色体を除去するプロセスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、本明細書に記載されている活性炭を用いて炭化水素系燃料から有色体を除去する改良されたプロセスを提供する。この活性炭を用いるプロセスは、このような燃料からの有色体の除去を驚異的に改良することができる。
【0021】
本発明は、炭化水素系燃料から有色体を除去するプロセスを提供する。本プロセスは、細孔構造内に燃料を脱色する量の重合リン酸塩を有する脱色炭素と炭化水素系燃料を接触させる工程;及び炭化水素系燃料内の有色体の少なくとも一部を脱色炭素に吸着させて、脱色された炭化水素系燃料を生成させる工程を含む。好ましくは、脱色された炭化水素系燃料は、脱色前の炭化水素系燃料と比較して少なくとも15のセーボルトゲイン(利得)を有する。より好ましくは、脱色前の炭化水素系燃料は−10以下のセーボルト値を有し、脱色された炭化水素系燃料は少なくとも12のセーボルト値を有する。
【0022】
いくつかの実施形態において、脱色炭素は、蒸気活性化、リン酸活性化又は塩化亜鉛活性化により製造された炭素を含有する。いくつかの実施形態において、燃料を脱色する量の重合リン酸塩は、約1%〜約10%の範囲にあり、好ましくは約2%〜約7.5%の範囲にある。
【0023】
活性炭は、蒸気活性化又はリン酸活性化により、リグノセルロース性物質又は石炭から誘導されてもよい。リグノセルロース性物質の例としては、木、ココヤシ、ナッツ殻及び果実種を挙げることができる。
【0024】
新たに活性炭を用いる炭化水素系燃料から有色体を除去するプロセスが開発されている。炭化水素系燃料はこのような活性炭と接触し、燃料内の有色体の少なくとも一部は活性炭に吸着される。
【0025】
活性炭は、ガソリン脱色及び浄化に特に効果的である。ガソリン有色体分子に対する吸着サイトとして機能する重合リン酸塩の量を効果的に増強させることを通じて、炭素ガソリン脱色能力を増加させるために、種々の技術的アプローチが開発されている。
【0026】
第一に、この新規な活性炭は、MeadWestvaco Corporationから市販されている慣用のリン酸−活性炭製品(WV−Bなど)を不活性又はCO2雰囲気中で約538℃〜約1093℃(約1000゜F〜約2000゜F)(好ましくは約649℃〜約982℃(約1200゜F〜約1800゜F))で熱処理することにより製造され得る。熱処理は、残留リン酸をガソリン有色体分子の吸着に効果的な重合形態に転化する。
【0027】
第二のアプローチは、約427℃〜約593℃(約800゜F〜1100゜F)の範囲から621℃〜871℃(1150゜F〜1600゜F)の範囲までリン酸活性化温度を上昇させることを必要とする。しかし、704℃(1300゜F)を超える活性化温度が好ましい。より高い活性化温度はリン酸の重合を促進し、よってリン酸−活性炭中の重合リン酸塩の量を増加させる。
【0028】
第三のアプローチにおいて、リン酸は、いくらかの残留リン酸をすでに含む活性炭(MeadWestvaco Corporationからの木系WV−B及びWV−A 1100など)又は実質量のリン酸を含まない活性炭(Calgon Corporationからの蒸気活性化石炭系CPG又はMeadWestvaco Corporationからの木系TAC−900など)に添加される。添加されたリン酸は、続いて第一のアプローチに記載したような熱処理により重合リン酸塩に転化される。
【0029】
最後に、1種以上の遷移金属をいくらかの残留遷移金属を既に含む活性炭(Calgon Corporationからの蒸気活性化石炭系CPG又はMeadWestvaco Corporationからの木系TAC−900など)又は実質量の遷移金属を含まない活性炭(MeadWestvaco Corporationからの木系WV−B及びWV−A 1100など)に添加してもよい。これら最後の2種のアプローチにおいて、リン酸を残留遷移金属が存在する活性炭に添加するか又は遷移金属(通常は塩形態)を残留リン酸含有活性炭に添加する場合に、改良された水素燃料浄化/脱色が相乗的に達成され得る。
【実施例】
【0030】
下記実施例は、本発明の実施形態、活性炭及びその調製方法をさらに説明する。これらの実施例において、所与のガソリンが定量投与の活性炭で処理された後、セーボルト値が増加するほどガソリン脱色能が高いといえる。セーボルト値は、−30(最も暗い)から+30(最も明るい)までのガソリン有色を測定する(ASTM D 156−00)。セーボルト値が高いほど液体中に有色が少ないことを反映する相対値である。ゆえに、脱色の効果は初期セーボルト値に対する相対値である(明らかに、初期セーボルト値により影響される)。特にことわらない限り、すべての等温テストは、重度の有色ガソリンについて、炭素投与量0.3wt%、周囲温度で行った。固体/液体接触時間は、撹拌しながら1時間であった。ガソリンのセーボルト値は、炭素粒子を濾去した後に測定した。
【0031】
[実施例1]
ガソリン脱色等温テスト結果の概要をTable Iに示す。等温テスト結果は、たとえば1550゜Fで15分間の不活性ガス熱処理に供する前後の慣用の木系リン酸−活性炭WV−B及びWV−A 1100(MeadWestvaco Corporation)のサンプル間の固体/液体接触により得られた。未処理WV−Bサンプル及びWV−A 1100サンプルは、かなりのガソリン有色部分を除去し、供給ガソリンについての−16未満のセーボルト値と比較してセーボルト値11〜12までガソリンを改良した。一方、新規な熱処理炭素製品は、炭素処理ガソリンで17から19程度まで高いセーボルト値を達成させた。これは、元になる炭素と比べてセーボルト値で5〜7ポイントの増加を示す。改良された脱色は、これらの活性炭に存在していた残留リン酸の熱処理の結果としての重合に関連する。
【0032】
【表1】

【0033】
[実施例2]
実施例1に記載したような不活性ガス熱処理は、石炭系及びココヤシ系蒸気−活性炭の脱色能をも改良した。Table IIに示すように、入手したままのCalgon CPG(蒸気−活性化石炭系)及びPica G270(蒸気−活性化ココヤシ系)活性炭は、それぞれ5及び2のセーボルト値までガソリンを処理した。しかし、不活性ガス熱処理は、石炭系CPGのガソリン脱色能力をセーボルト値5から13まで8ポイント改良し、ココヤシ系G270のガソリン脱色能力をセーボルト値2から4まで2ポイント改良した。熱処理の結果、改良された脱色は、これらの炭素中に不純物として存在していた銅及び鉄などの遷移金属の自動還元に起因する。
【0034】
【表2】

【0035】
[実施例3]
実施例1及び2において、不活性ガス熱処理により、活性炭のガソリン脱色能力は実質的に改良されることが開示された。熱処理の結果として形成された重合リン酸塩及び還元銅は、ガソリン有色体分子の活性吸着サイトとして作用する。これらの知見に基づいて、改良されたガソリン脱色性能を有する新規炭素材料は、本明細書に開示されているように、重合リン酸塩又は還元銅を活性炭に組み込むことにより調製される。改良された炭素性能は、特に重度の有色ガソリンの浄化について、炭素吸着を接触水素処理技術に対するより有意性のある代替技術にすることができる。
【0036】
Table IIIは、入手したままではあまり機能しないが重合リン酸塩の組み込みにより非常に改良される4種の活性炭の概要を示す。2つのポイントに注意すべきである。第一に、続く高温窒素処理なしにリン酸を含浸させると、ガソリン脱色能力をあまり改良しない。例を挙げると、TAC−900(MeadWestvaco Corporationから入手)について、含浸処理前では−3セーボルトであり、含浸処理後で−2セーボルトであった。これは、非重合(通常は水溶性)リン酸のガソリン脱色に対する効果のなさは増加した炭素酸性度にかかわらないことを示す。第二に、高温窒素処理(たとえば843℃(1550゜F)で15分間)により、添加したリン酸を重合形態に転化することは、炭素性質にかかわらずガソリン脱色能力を大幅に改良する。ゲイン(利得)は、セーボルト値で9〜38ポイントの範囲にある。ゆえに、MeadWestvacoのAquaGuard炭素が、−15から23へのセーボルト値における38ポイントの増加と最も劇的なゲイン(利得)を示した。同じアプローチにより追加の重合リン酸塩をよく機能する本発明の炭素に添加すると、18から21へとセーボルト値をわずかに3ポイント改良しただけであった。
【0037】
【表3】

【0038】
Table IVは、酢酸銅含浸の影響について試験した活性炭の概要を示す。炭素に酢酸銅を含浸させ、15分間、843℃(1550゜F)での熱処理(銅をCu(II)からCu(I)又はCu(O)へと還元する)に供した後、ココヤシ炭素(セーボルト2から3への増加)及びTAC−900(セーボルト−3から0への増加)でガソリン脱色能力にわずかなゲイン(利得)が見られた。大きなゲイン(利得)は、本発明の炭素(セーボルト値18から23へと5ポイントの増加)で見られた。ガソリン中の異なる有色体分子の吸着に対して効果的な相乗作用は重合リン酸塩と還元銅との間に存在するといえる。Y−ゼオライトマトリックス中の還元されたCu(I)状態の銅は、輸送燃料の実質的な脱窒能を有すると米国特許出願公開2004/0200758において報告されている
【0039】
【表4】

【0040】
[実施例4]
Meadwestvaco WV−B炭素を窒素雰囲気中、3種の異なる温度621℃(1150゜F)、843℃(1550゜F)及び954℃(1750゜F)で15分間の熱処理に供した。Table Vに示すように、供給炭素は、0.9%の重合リン酸塩を含んでいて、セーボルト値11を得た。621℃(1150゜F)での熱処理後、重合リン酸塩含有率は0.9%から2.7%へ増加し、セーボルト値は11から15へと改良された。熱処理温度をさらに621℃(1150゜F)から954℃(1750゜F)まで上昇させると、重合リン酸塩の含有率は2.7%から4.8%へと増加し続け、セーボルト値は15から20へと改良され続けた。
【0041】
【表5】

【0042】
*実施例1〜4及びTable I〜Vの実験プロトコールは以下のとおりであった。
炭素熱処理は、外部から電気的に加熱した縦型石英管反応器内で行った。各実験において、正確に5g又は10gの乾燥炭素顆粒を完全流動炭素床で熱処理した。
【0043】
顆粒活性炭に10wt%H3PO4又は10%酢酸銅溶液を炭素:溶液の質量比3:10で含浸させた。過剰の液体を排出した後、湿潤炭素を105℃(221゜F)で一晩、空気炉中で乾燥させた。乾燥した炭素を次いで上述の流動床内で熱処理した。
【0044】
ガソリン脱色等温テストのために、顆粒炭素3gをSpexミル内で60秒間、粉砕した。0.3wt%の一定炭素投与量を重度の有色ガソリン(1369−R−04)に用いた。接触時間は、周囲温度で60分間と一定に維持した。ガソリンから炭素粒子を濾去した後、ガソリンのセーボルト値を測定した。セーボルト値は−32(最も暗い色)から32(最も薄い色)の範囲であると、ガソリンをはじめとする石油製品の有色を測定するためのASTM D−156/1500に特定されている。セーボルト値が高くなるほど、ガソリンの色は薄くなる。供給ガソリンは、セーボルト値<−16(ほとんどは約−24)を有していた。
【0045】
[実施例5]
ある範囲の残留リン酸含有率を有する木系リン酸−活性炭を15分間、窒素雰囲気中、843℃(1550゜F)での熱処理に供した。熱処理後、炭素サンプルは、実施例1に記載したN2−加熱WV−Bについての3.1%と比較して、重合リン酸塩を3.7%〜11.8%の範囲で含んでいた。重合リン酸塩含有率が3.1%から10%以下まで増加し、炭素−処理ガソリンのセーボルト値が最初に15から17へと改良され、次に一定に維持されていることがTable VIからわかる。しかし、重合リン酸塩含有率が10%を超えてさらに増加すると、炭素−処理ガソリンのセーボルト値は減少し始めた。
【0046】
【表6】

【0047】
**重合リン酸塩の含有率(%PP)は、総リン酸塩と水溶性リン酸塩との間の差により決定した。総リン酸塩分析として、正確に0.50gのSpex−ミルで粉砕した乾燥粉末を硫酸及び硝酸でマイクロ波消化した。水溶性リン酸塩分析として、正確に0.50gの同じSpexミルで粉砕した乾燥粉末をナノ純水(nanopure water)中で15分間沸騰させた。固体を濾去した後、濾液のアリコートについてICPによりリン酸濃度を測定した。活性炭におけるリン酸塩含有率は%H3PO4として表される。この方法により測定された重合リン酸塩は、水溶性リン酸塩又は固定リン酸塩と呼ばれることもある。
***より重度の有色ガソリン(1550−R−04)について、より高い炭素投与量0.5wt%を用いた。供給ガソリン1550−R−04は、セーボルト値−24.8を有していた。
【0048】
上述の記載は本発明の実施形態に関し、本発明の範囲を逸脱しない限り変更及び変形がなされてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)炭化水素系燃料を、細孔構造内に燃料を脱色する量の重合リン酸塩を有する脱色炭素と接触させる工程;及び
(b)当該炭化水素系燃料中の有色体の少なくとも一部を脱色炭素に吸着させて、脱色された炭化水素系燃料を製造する工程
を含む、炭化水素系燃料から有色体を除去する方法。
【請求項2】
工程(b)の脱色された炭化水素系燃料は、工程(a)の炭化水素系燃料と比較して少なくとも15のセーボルトゲインを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)の炭化水素系燃料は−10以下のセーボルト値を有し、工程(b)の脱色された炭化水素系燃料は少なくとも12のセーボルト値を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記脱色炭素は、蒸気活性化、リン酸活性化又は塩化亜鉛活性化により製造された炭素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
燃料を脱色する量の重合リン酸塩は、約1%〜約10%の範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
燃料を脱色する量の重合リン酸塩は、約2%〜約7.5%の範囲にある、請求項5に記載の方法。

【公表番号】特表2008−537758(P2008−537758A)
【公表日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504376(P2008−504376)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/011685
【国際公開番号】WO2006/105318
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】