説明

活線振分方法

【課題】振り分ける電線部分間の作業空間幅を広くできる活線振分工法を提供する。
【解決手段】工具本体1と、工具本体1の他端側で伸縮作動する伸縮杆3と、工具本体1の一端側及び伸縮杆3の先端部に連結される一対のチャック4,4と、工具本体1の一端側に取り付けられるハンドル側電線保持具5Aと、伸縮杆3の先端側に取り付けられる伸縮杆側電線保持具5Bとからなる活線振分工具を使用し、架空電線8の所要部に両チャック4,4を固定し、ハンドル2で伸縮杆3を収縮作動させて両チャック4,4を対向方向に引張することにより両チャック4,4間の電線部分8aを撓ませた後、撓んだ電線部分8aの両端部側を、ハンドル側電線保持具5Aと伸縮杆側電線保持具5Bとにより保持固定し、両保持具5A,5B間の電線部分8aoを一方の保持具5Aに近い位置で切断し、他方の保持具5Bを工具本体1の下側に向けて電線8を振り分ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧配電線工事において、停電範囲の縮小を目的として架空電線の中間部に活線振分工具を取り付けて電線を振り分けする活線振分工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の活線振分工法として特許公報等の公知文献を具体的に挙げることはできないが、従来の活線振分工法に使用される活線振分工具を図4の(a) に示し、同図の(b) には活線振分工具の工具本体部分を示す。従来の活線振分工具は、円筒状の工具本体1と、この工具本体1の一端側においてハンドル2を操作して調整ボルト(図示せず)あるいは調整ネジ部(図示せず)を回すことによりその他端側で伸縮作動する伸縮杆3と、工具本体1の一端側及び伸縮杆3の先端部に夫々ロープRを介して連結される両側一対のチャック4,4と、工具本体1の両端側に取り付けられる電線保持具5,5とから構成される。
【0003】
電線保持具5は、図4の(b) に示すように、円筒状工具本体1の両端部に夫々回転可能に取り付けてある電線保持具固定リング6に取付台座7を介して固定リングと直交するように取り付けられたもので、先端側に開口する電線挿通溝Gに架空電線8を挿通させて、ネジ具Nで保持固定するようになっている。
【0004】
上記活線振分工具の使用による電線の振り分け方法について図5の(a) 〜(e) を参照しながら説明すると、先ず同図の(a) に示すように架空電線7の中間所要部に両チャック4,4を固定し、そしてハンドル2を揺動操作することにより伸縮杆3を収縮作動させて両チャック4,4を対向方向に引張することにより、両チャック4,4間の電線部分8aを撓ませて(b) に示すような状態とし、しかる後その撓んだ電線部分8aの2箇所を夫々工具本体1の上側に向けた電線保持具5,5により保持固定して(c) に示すような状態とし、この状態で両電線保持具5,5間の電線部分8aoを、(d) に示すようにその中間部で切断し、一方の電線保持具5を工具本体1の下側に向けることによって電線8を(e) に示すような状態に振り分ける。こうして振り分けた電線部分8ao1と8ao2との間の作業空間Sを利用して、電線皮剥ぎ、接続、絶縁処理等の作業を行なうようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような活線振分工法によると、図5の(e) に示すように振り分けられた電線部分8ao1,8ao2間の作業空間Sの幅が狭いために、作業者が誤って作業工具等を電線部分8ao1,8ao2に触れさせてしまうなどして、短絡事故が発生し、短絡アークにより作業者が被災するといった問題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑み、振り分けられる電線部分間の作業空間幅をできるだけ広くするようにした活線振分工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る本発明の活線振分工法は、円筒状の工具本体1と、工具本体1の一端側でハンドル2を操作することによりその他端側で伸縮作動する伸縮杆3と、工具本体1の一端側及び伸縮杆3の先端部に夫々連結される両側一対のチャック4,4と、工具本体1の一端側に取り付けられるハンドル側電線保持具5Aと、伸縮杆3の先端側に取り付けられる伸縮杆側電線保持具5Bとからなる活線振分工具を使用し、架空電線8の中間所要部に両チャック4,4を固定し、ハンドル2操作で伸縮杆3を収縮作動させて両チャック4,4を対向方向に引張することにより両チャック4,4間の電線部分8aを撓ませた後、その撓んだ電線部分8aの両端部側を、夫々工具本体1の上側に向けたハンドル側電線保持具5Aと伸縮杆側電線保持具5Bとにより保持固定し、両保持具5A,5B間の電線部分8aoを両保持具5A,5Bの何れか一方の保持具5Aに近い位置で切断し、他方の保持具5Bを工具本体1の下側に向けることにより電線8を振り分けるようにしたことを特徴とする。
【0008】
請求項2は、請求項1に記載の活線振分工法において、伸縮杆側電線保持具5Bの取付けにあたり、伸縮杆3先端部の金属製端部リング9外周面に設けてある半径方向孔10にバネ11を介して抜止片12を挿入する一方、前記端部リング9に外嵌可能な保持具固定リング6Bの内周面には抜止片係合溝13を周設して、この抜止片係合溝13と前記端部リング9側の半径方向孔10とに亘って抜止片12が介在するように端部リング9に保持具固定リング6Bを外嵌し、この保持具固定リング6Bに伸縮杆側電線保持具5Bを取り付けるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明の活線振分工法によれば、一対の電線保持具5A,Bのうちの一方の電線保持具5Aを工具本体1の一端側、即ちハンドル2の設けられた端部側に取り付け、他方の電線保持具5Bを伸縮杆3の先端側に取り付け、しかも両保持具5A,5Bで保持した電線部分8aを何れか一方の保持具5Aに近い位置で切断するようにしたから、振り分けられた電線部分8ao1,8ao2間の作業空間Sの幅を、従来工法に比べてはるかに広くすることができ、従って作業者が誤って作業工具等を電線部分8ao1,8ao2に触れさせるような危険性が少なく、短絡事故の発生を極力無くすることができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、保持具固定リング6Bを端部リング9に容易に取り付けることができ、従って伸縮杆3の先端部に対する伸縮杆側電線保持具5Bの取付けが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の好適な一実施形態を図面に基づいて説明すると、図1の(a) は本発明に係る活線振分工法に使用される活線振分工具を示す概略正面図、(b)は同活線振分工具の工具本体部分を示す斜視図である。この活線振分工具は、図4の(a) ,(b) に示す従来工法に使用される活線振分工具と概ね同様で、両側一対の電線保持具5A,Bのうちの一方の電線保持具5Aは工具本体1の一端側、つまりハンドル2の設けられた端部側に取り付けられるが、他方の電線保持具5Bが伸縮杆3の先端側に取り付けられる、という点で図4に示す従来の活線振分工具と相違している。
【0012】
即ち、図1の(a) ,(b) に示す本発明に係る活線振分工具は、円筒状の工具本体1と、この工具本体1の一端側でハンドル2を操作することによってその他端側で伸縮作動する伸縮杆3と、工具本体1の一端側及び伸縮杆3の先端部に夫々ロープRを介して連結される両側一対のチャック4,4と、工具本体1の一端側に取り付けられるハンドル側電線保持具5Aと、伸縮杆3の先端側に取り付けられる伸縮杆側電線保持具5Bとからなる。
【0013】
ハンドル側電線保持具5Aは、図4 に示す従来の電線保持具5と同じ構成であって、円筒状工具本体1の一端部に回転可能に取り付けてある電線保持具固定リング6Aに取付台座7Aを介して固定リング6Aと直交するように取り付けられている。伸縮杆側電線保持具5Bは、伸縮杆3の先端部に固着されている金属製端部リング9に取り付けた電線保持具固定リング6Bに、取付台座7Bを介して取り付けられている。電線保持具固定リング6Aは、工具本体1の一端部に、回転可能ではあるが、軸方向には移動不能に取り付けられている。電線保持具固定リング6Bも、伸縮杆3の先端部に回転可能ではあるが、軸方向に移動不能に取り付けられる。
【0014】
伸縮杆側電線保持具5Bの取付けにあたっては、図2の(a) に示すように、伸縮杆3先端部の端部リング9の外周面に設けてある半径方向孔10にコイルバネ11を介して抜止片12を挿入すると共に、端部リング9に外嵌可能な保持具固定リング6Bの内周面には抜止片係合溝13を周方向に設けておいて、抜止片12をコイルバネ11の付勢力に抗して半径方向孔10内に押し込んだ状態で保持具固定リング6Bを伸縮杆3先端部の端部リング9に外嵌することにより、抜止片12が(b) に示すように保持具固定リング6B側の抜止片係合溝13と端部リング側の半径方向孔10とに亘って介在することになるから、保持具固定リング6Bを端部リング9に容易に取り付けることができる。尚、抜止片12は、端部リング9側の定位置で保持具固定リング6Bの抜止片係合溝13に摺動可能に係合されているから、保持具固定リング6Bは端部リング9に対し回動可能となる。
【0015】
しかして、伸縮杆側電線保持具5Bには取付台座7Bが取り付けてあるから、この取付台座7Bの取付ボルト14を保持具固定リング6Bのネジ孔15にねじ込むことにより、伸縮杆側電線保持具5Bを伸縮杆3の端部リング9に対し容易に取り付けることができることになる。
【0016】
端部リング9は、図4に示す従来の活線振分工具の伸縮杆3にも取り付けられているものであって、従来の活線振分工具を本発明工法に係る活線振分工具に転用しようとする場合は、この端部リング9に保持具固定リング6Bを上記の要領で取り付けることにより、伸縮杆側電線保持具5Bの取付けが容易となる。
【0017】
尚、ハンドル側電線保持具5Aを工具本体1の一端部に取り付けるには、電線保持具固定リング6Aを工具本体1に取り付けた後、このリング6Aに対しハンドル側電線保持具5Aを取付台座7Aを介して伸縮杆側電線保持具5B同じ様にして取り付ければよい。
【0018】
工具本体1の一端部及び伸縮杆3の先端部には夫々、ロープ通し孔16a,17a付きの突片16,17が設けてある。この突片16,17については、図4に示す従来の活線振分工具と同様である。
【0019】
上記のように構成される活線振分工具の使用による架空電線8の振り分け方法について図3の(a) 〜(e) を参照して説明すると、先ず(a) に示すように架空電線7の中間所要部に両側一対のチャック4,4を固定した後、ハンドル2を揺動操作することにより伸縮杆3を収縮作動させて両チャック4,4を対向方向に引張することにより、両チャック4,4間の電線部分8aを撓ませて、(b) に示すような状態とする。この後、撓んだ電線部分8aの両端部側を、(c) に示すように夫々工具本体1の上側に向けたハンドル側電線保持具5Aと伸縮杆側電線保持具5Bとにより保持固定し、しかして両保持具5A,5B間の電線部分8aoを、何れか一方、例えば(d) に示すようにハンドル側電線保持具5Aに近い位置で切断し、他方、すなわち伸縮杆側電線保持具5Bを工具本体1の下側に向けることによって電線8を(e) に示すように振り分ける。こうして振り分けられた電線部分8ao1 と8ao2との間の作業空間Sを利用して、電線皮剥ぎ、接続、絶縁処理等の作業を行なう。
【0020】
この場合、両側一対の電線保持具5A,Bのうちの一方の電線保持具5Aを工具本体1の一端側、つまりハンドル2の設けられた端部側に取り付け、他方の電線保持具5Bを伸縮杆3の先端側に取り付け、しかも両保持具5A,5Bで保持した電線部分8aを何れか一方の保持具、例えばハンドル側電線保持具5Aに近い位置で切断するようにしたから、図3の(e) から分かるように、振り分けられた電線部分8ao1,8ao2間の作業空間Sの幅が、従来工法を示す図5の(e) に比べてはるかに広くなり、従って作業者が誤って作業工具等を電線部分8ao1,8ao2に触れさせるような危険性が少なく、短絡事故の発生を極力無くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a) は本発明に係る活線振分工法に使用される活線振分工具を示す概略正面図、(b)は同活線振分工具の工具本体部分を示す斜視図である。
【図2】(a) は伸縮杆の先端の端部リングとこれに外嵌される電線保持具固定リングを示す説明図、(b) は伸縮杆先端の端部リングに電線保持具固定リングを外嵌し、このリングに取付台座を介して伸縮杆側電線保持具を取り付けた状態の説明図である。
【図3】(a) 〜(e) は本発明に係る活線振分工法を説明する説明図である。
【図4】従来の活線振分工法に使用される活線振分工具を示す概略正面図、(b)は同活線振分工具の工具本体部分を示す斜視図である。
【図5】(a) 〜(e) は従来の活線振分工法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 工具本体
2 ハンドル
3 伸縮杆
4 チャック
5A ハンドル側電線保持具
5B 伸縮杆側電線保持具
8 架空電線
8a 両チャック間の電線部分
8ao 両保持具間の電線部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の工具本体と、工具本体の一端側でハンドルを操作することによりその他端側で伸縮作動する伸縮杆と、工具本体の一端側及び伸縮杆の先端部に夫々連結される両側一対のチャックと、工具本体の一端側に取り付けられるハンドル側電線保持具と、伸縮杆の先端側に取り付けられる伸縮杆側電線保持具とからなる活線振分工具を使用し、架空電線の中間所要部に両チャックを固定し、ハンドル操作で伸縮杆を収縮作動させて両チャックを対向方向に引張することにより両チャック間の電線部分を撓ませた後、その撓んだ電線部分の両端部側を、夫々工具本体の上側に向けたハンドル側電線保持具と伸縮杆側電線保持具とにより保持固定し、両保持具間の電線部分を両保持具の何れか一方の保持具に近い位置で切断し、他方の保持具を工具本体の下側に向けることにより電線を振り分けるようにした活線振分工法。
【請求項2】
伸縮杆側電線保持具の取付けにあたり、伸縮杆先端部の金属製端部リング外周面に設けてある半径方向孔にバネを介して抜止片を挿入する一方、前記端部リングに外嵌可能な保持具固定リングの内周面には抜止片係合溝を周設して、この抜止片係合溝と前記端部リング側の半径方向孔とに亘って抜止片が介在するように端部リングに保持具固定リングを外嵌し、この保持具固定リングに伸縮杆側電線保持具を取り付けるようにした請求項1に記載の活線振分工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−206254(P2008−206254A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37743(P2007−37743)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(591083772)株式会社永木精機 (65)