流れ制御を有する点滴筒
流れ制御システムは、下方壁部区画、上方壁部区画、下方壁部区画と上方壁部区画との間に延在する折り畳み可能な壁部を有する点滴筒と、下方壁部区画に取り付けられた、下向きに依存する弁座と、点滴筒に配置され、上方壁部区画に取り付けられ、且つ弁座と係合可能な弁表面を有する弁部材とを含む。流体制御システムは、上方壁部区画および下方壁部区画に回転可能に係合された駆動体も含む。駆動体を第1方向に回転すると、点滴筒の折り畳み可能な壁部は、弁座が弁表面と密閉状態で係合する折り畳み状態と、弁座が弁表面から十分に離間して弁表面および弁座の間に流体流路が形成され点滴筒の開口部を通る流れが可能になる拡張状態との間で動く。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2009年11月25日に出願された米国特許出願第61/264,376号の利益を主張するものであり、米国特許出願第61/264,376号の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、全般的には、患者への流体セットを通って流れる流体流を調節するためのシステムに関し、さらに具体的には、潅流システム、輸血システム、および点滴システムにおいて供給される流体の流速の範囲にわたる正確な制御を達成するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
多くの、潅流システム、輸血システム、および点滴システム用の従来の流れ制御システムは、点滴筒から患者に通じるチューブに取り付けられたローラークランプの形の流れ調節器を用いて提供される。係るローラークランプは、患者への流れの速度を減速または加速するために、チューブの変形に依存して流体流路を変更する。時間の経過とともに、チューブに誘発された応力とクリープ効果は、徐々にチューブの弾力性および寸法を変化させ、医療提供者がローラークランプを用いて設定した流速を変化させる。
【0004】
応力およびクリープの効果は、非ポリ塩化ビニール(PVC)チューブが用いられた場合にとくに顕著であり、非ポリ塩化ビニールチューブとともに用いられた場合、ローラークランプはほとんど効果が無い場合がある。ポリ塩化ビニールチューブは、係る劣化に対して非ポリ塩化ビニールチューブよりも耐性を有し、ローラークランプとともにより良好な性能を発揮するが、それでも何らかの変化が存在する。したがって、潅流システム、輸液システム、および点滴システムのチューブを通過する流速の意図しない変化を許容しない流れ制御システムが好適であろう。
【0005】
ローラークランプを使用することの別の欠点は、新生児患者などのように、限られた患者に対して液体の流速を設定することが困難である点である。係る患者に対して、低い流速を正確に設定する能力はきわめて重要である。チューブクランプは、ローラーがわずかに動いただけでも、所望するより大きい変化が流速にもたらされるような設定には適さず、その結果、ローラーの複数のわずかな動きが係る流速を設定することになる。これにより、流速設定に要する時間が長くなってしまう。加えて、時間の経過とともにローラークランプに起因するクリープがわずかに生じただけでも、流速に変化が生じ、それにより所望の流速範囲から流速が逸脱してしまう。これにより、医療提供者は、頻繁にチェックを行い、必要な場合、流速を元の所望の流速に戻すことが必要となる。
【0006】
従来の流れ制御システムのさらなる欠点は、流れ制御システムに対して閉ループ流体制御を提供する可能性である。ローラークランプは医療提供者により操作されるよう構成されたものであり、したがって、監視された流れまたは患者の状態等の検知されたパラメータに応じてクランプを操作する場合がある自動システムに組み込むには問題がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの態様によれば、流れ制御システムは、下方壁部区画、上方壁部区画、および下方壁部区画と上方壁部区画との間に延在する折り畳み可能な壁部を有する点滴筒と、下方壁部区画に取り付けられた下向きに依存する弁座とを含み、点滴筒は、弁座と流体連通する下流側開口部を形成し、弁部材は点滴筒内に配置され、上方壁部区画に取り付けられ且つ弁座と係合可能な弁表面を有する。流体制御システムは、上方壁部区画および下方壁部区画に回転可能に係合された駆動体も含む。駆動体を第1方向に回転すると、点滴筒の折り畳み可能な壁部は、弁座が弁表面と密閉状態で係合する折り畳み状態と、弁座が弁表面から十分に離間して弁表面と弁座との間に流体流路が形成され、点滴筒の開口部を通しての流れが可能になる拡張状態との間で動く。
【0008】
本開示の別の態様によると、点滴筒を通る流体の流れを調節するための方法は、点滴筒の上方壁部区画および下方壁部区画と回転可能に係合する駆動体を点滴筒に対して回転させ、上方壁部区画と下方壁部区画との間に延在する折り畳み可能な壁部を移動させることを含む。折り畳み可能な壁部は、組み込まれた弁座が弁表面と密閉状態で係合する折り畳み状態と、弁座が弁表面から十分に離間して弁表面と弁座との間に流体流路が形成され、流体流路を通しての流れが可能になる拡張状態との間で動く。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】先行技術に係る点滴筒と点滴筒から出るチューブに取り付けられたローラークランプの形を取る流れ調節器との平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る流れ制御システムの平面図である。
【図3】図2に示す流れ制御システムの分解平面図である。
【図4】反時計方向(駆動体の下方から見上げる方向から見て)に駆動体を回転させることの結果により、点滴筒の弁座が、点滴筒内に固定された弁部材の略円筒形弁表面(この略円筒形の弁表面は、その相手側表面の1つの側面に沿って、角度を有する平面溝部を含んでもよい)から下方に引かれて離間し、それにより、弁部材の円錐形状弁茎を弁部材のフランジに取り付ける結合部の間の窓部を主に通る流体の流れが可能となり、弁部材の中空弁茎に沿って設けられた1つまたは複数の細長いスリットを通る円錐形状領域の内容物の流出が可能となる状態である、完全拡張状態に向かって動く、流れ制御システムの点滴筒の折りたたみ可能な壁部を示す、図2の線4−4に沿う断面斜視図である。
【図5】時計方向(駆動体の下方から見上げる方向から見て)に駆動体を回転させる結果により、点滴筒の折り畳み可能な壁部が完全折り畳み状態に動くことを示す、図2の線5−5に沿う図4と同様の断面斜視図である。
【図6】点滴筒に対する駆動体の回転の程度を特定するための特徴を含む、図2〜図5に示す実施形態の変形体の断面斜視図である。
【図7】本開示の流れ制御システムの第2の実施形態の分解平面図である。
【図8A】点滴筒の弁座が、点滴筒内に固定された弁部材の略円筒形弁表面(この略円筒形の弁表面は、その相手側表面の1つの側面に沿って、角度を有する平面溝部を含んでもよい)から下方に引かれて離間し、それにより、弁部材の円錐形状弁茎を弁部材のフランジへと取り付ける結合部の間の窓部を通る流体の流れが可能となり、弁部材の中空弁茎に沿って設けられた1つまたは複数の細長いスリットを通る円錐形状領域の内容物の流出が可能となる状態である拡張状態にある流れ制御システムの折りたたみ可能な壁部を示す、図7の流れ制御システムの断面斜視図である(なお、方向矢印は、点滴筒を通る流れが減少しやがて完全に停止する方向における駆動体の回転を示す)。
【図8B】収縮状態にある点滴筒の折りたたみ可能な壁部を示す、図8Aと同様の断面斜視図である。
【図9A】図8Bと同様の断面斜視図である(但し、方向矢印は、点滴筒を通過する流速が開始または増加する方向における駆動体の回転を示す)。
【図9B】図8Aと同様の断面斜視図である。
【図10】図9Aの線9に沿う、図7の流れ制御システムの折りたたみ可能な壁部の上方の位置における、駆動体の上方内ねじを螺刻された領域および点滴筒の相手側の外ねじを螺刻された領域の拡大断面図である。
【図11】図9Aの線11に沿う、図7の流れ制御システムの駆動体の下方内ねじを螺刻された領域および点滴筒の折り畳み可能な壁部の相手側の外ねじを螺刻された領域の拡大断面図である。
【図12】略円筒形弁表面の周縁外辺部周りのテーパーの形を取る溝部を含む、本開示の点滴筒に用いるための弁部材の略円筒形弁表面の正面図である。
【図12A】図12の線12A−12Aに沿う断面図である。
【図12B】図12の線12B−12Bに沿う断面図である。
【図13A】角度を有する平面溝部を略円筒形弁表面の相手側表面の1つの側面に沿って含む、図4、図7、図8A、図8B、図9A、および図9Bに示す弁部材等の、本開示の点滴筒に用いるための弁部材の略円筒形弁表面の正面図である。
【図13B】図13Aに示す弁部材の略円筒形弁表面の側面図である。
【図13C】図13Bの線13C−13Cに沿う断面図である。
【図13D】図13Bの線13D−13Dに沿う断面図である。
【図14A】放物形溝部を略円筒形弁表面の相手側表面の1つの側面に沿って含む、本開示の点滴筒に用いるための弁部材の略円筒形弁表面の正面図である。
【図14B】図14Aに示す弁部材の略円筒形弁表面の側面図である。
【図14C】図14Bの線14C−14Cに沿う断面図である。
【図14D】図14Bの線14D−14Dに沿う断面図である。
【図14E】図14Bの線14E−14Eに沿う断面図である。
【図15A】回転された弓形溝を略円筒形弁表面の1つの側面に沿って含む、本開示の点滴筒に用いるための弁部材の略円筒形弁表面の正面図である。
【図15B】図15Aに示す弁部材の略円筒形弁表面の側面図である。
【図15C】図15Bの線15C−15Cに沿う断面図である。
【図15D】図15Bの線15D−15Dに沿う断面図である。
【図16】縦座標に流速(単位:毎時ml)および横座標に駆動体の回転(単位:度)を示す、図12〜図12B(「設計1」)、図13A〜図13D(「設計2」)、図14A〜図14E(「設計3」)、および図15A〜図15D(「設計4」)の円錐形状針部に対して様々な略円筒形弁表面の溝部形状を用いる本開示の点滴筒の例示的な流速プロファイルを示す比較グラフである。
【図17】本開示の流れ制御システムを電子的に調節するためのシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
前置き
本開示の例示的な実施形態においては、弁部材の円錐形状の弁茎が下方を向く状態で円錐形状の弁部材がそこでしっかりと着座する、半径方向内側に向けられた環状棚部を有する点滴筒を備える流れ制御システムが提供される。点滴筒の内部は、点滴筒の下流側端部における軸方向に延在する開口部と、開口部と環状突起との間に延在する折り畳み可能な壁部とを有する、環状突起から下向きに依存する領域をさらに含む。下流領域は、点滴筒内において、弁部材の、略円筒形の弁表面などのような、弁表面に対して補完的な形状を有する弁座を形成する。本明細書で用いる場合、用語「略円筒形」は、完全な円筒形、すなわち弁部材を通過する水平面に対して垂直である円周側壁を有する円筒形だけでなく、1度などのような、射出成形金型空洞からの弁部材の抜き出しを容易にするために十分な角度にテーパーがつけられた、もしくは傾斜した円筒形のいずれかを意味するものとして当業者に理解されるであろう。以下でより詳細に説明されるように、テーパーがつけられた円錐形状は、点滴筒を通過する流速にわたってよりよい制御をもたらす、略円筒形弁表面に沿う溝部のいくつかの種類のうちの1つとして考えられてもよい。回転駆動体は、弁座を弁部材の略円筒形弁表面に対して軸方向に移動させるために、点滴筒に動作可能に係合するよう構成される。
【0011】
点滴筒の上流側端部は流体の流体の入口として働く。点滴筒の上流側端部は、突き刺して点滴筒を流体の可撓性容器等の流体源と流体連通させるためのスパイク(上流側端部に接着されていてもよい)を有して提供されてもよい。あるいは、点滴筒の上流側端部は、別個のスパイクを点滴筒の開口部に流体的に接続し、点滴筒の内部をスパイクおよびチューブの内部に流体連通させるチューブに対して、包囲され、且つ接合されてもよい。
【0012】
弁部材の円錐形状の弁茎は、点滴筒の半径方向内側に向けられた環状棚部上に配置されたフランジに取り付けられる。複数の開口部または窓部が、弁部材の円錐形状弁茎をフランジに接続するアームまたは結合部の間に提供される。円錐形状弁茎は、好適には円錐形状弁茎の壁部に沿って延在する細長いスリットの形を取る、少なくとも1つの開口部を含む。折り畳み可能な壁部が折り畳み状態にあるとき、弁座はスリットの下方端部の下方で弁部材の略円筒形弁表面と接触し、それにより、弁部材の円錐形状弁茎の外部と弁座との間の下流方向のあらゆる流体の流れは遮られる。折り畳み可能な壁部が拡張されるにつれて、弁座は弁部材の略円筒形弁表面から離れるよう軸方向にしだいに動かされ、それにより、弁表面および弁座の間の流体路が開放され、点滴筒の下流側端部における軸方向に延在する開口部へと流れる流体の速度が増加する。
【0013】
弁表面の係合表面において略円筒形弁表面の少なくとも1部分に溝部を提供することにより、本開示の点滴筒を通る流れを調節する能力が高められることが見出された。溝部は、略円筒形弁表面の1つの側面に沿う平面状切り欠き部の形を取ってもよい。代替的には、溝部は、略円筒形弁表面の1つの側面に沿う湾曲した、または放物形の切り欠き部の形を取り得る。さらに代替的には、溝部は、略円筒形弁表面の1つの側面に沿う回転された弓状溝の形を取ってもよい。なおさらに代替的には、溝部は、その略円筒形状が、弁座により略円錐形状が保持される弁表面に与えられるよう、略円筒形弁表面の周縁周りのテーパーの形を効果的に取ってもよい。略円筒形弁表面の溝部の形状および寸法を変更することにより、様々な流れパターンが達成されてもよい。低容量流体に対する高解像度の流れ制御は、新生児等の、厳格な流れ制御を課せられた患者に対して流体の少量投与を供給することに対して特に望ましい。
【0014】
弁部材上方の点滴筒の部分から発して、点滴筒の下流側端部における軸方向に延在する開口部へと至る主要流路は、弁部材の弁茎を点滴筒の環状突起に着座されたフランジへと接続する結合部の間に配置された窓部により提供される。弁部材の壁部に沿って延在する細長いスリットは、針部材の円錐形状領域の内容物の流出を容易にし、それにより、流体の浪費が防止される。
【0015】
折り畳み可能な壁部は、点滴筒の外部に対して固定された上方端部を有する駆動体により、その折り畳み状態および拡張状態の間で作動される。なお、点滴筒の外部に対しての固定は、折り畳み可能な壁部の上方における点滴筒の部分に対して、回転可能であるが、軸方向に固定された方法で行われるものである。駆動体は、折り畳み可能な壁部の下方に配置された外ねじを螺刻された領域と係合し、点滴筒の弁座から半径方向外側に延在する内ねじを螺刻された壁部を含む。駆動体を第1方向に回転させることにより、円錐形状の流体制御針部材の略円筒形弁表面に対する軸方向の動きが折り畳み可能な壁部に加えられる。それにより、弁座は、弁部材の略円筒形弁表面から離れるよう引かれるとともに、弁部材と弁座との間の流体流が可能となり、または増加し、ひいては点滴筒の下流側端部における開口部を通る流体流が可能となる、または増加する。弁表面の相手側表面における溝部の形状および寸法に応じて、点滴筒の下方領域に下る流れは、弁部材の略円筒形弁表面から離れる方向に向かう弁座の軸方向移動の少なくとも初期部分の間は、溝部に制限される場合がある。駆動体を第2の逆の方向に回転させることにより、円錐形状の流れ制御針部材に対する折り畳み可能な壁部の軸方向の動きは逆転される。それにより、弁座は、弁部材の略円筒形弁表面に向かって上方に動かされ、弁部材と弁座との間の流体流を速度低下または停止させる。所望する場合、ネジの回転が、点滴筒からの流体流の速度を予測可能に制御することを達成するために、較正されてもよい。この較正は必ずしも線形であるとは限らない。なぜなら、溝部の位置(単数または複数)、形状、および寸法等の変数に応じて、弁部材の弁座および略円筒形弁表面の間の初期軸方向の動きに沿う流速の調節に関するより大きい解像度が存在する場合があるためである。
【0016】
第2の例示的な実施形態によれば、駆動体には、折り畳み可能な壁部の上方の位置における点滴筒の外ねじを螺刻された領域と係合する部分に沿う第1ピッチの上方の内ねじを螺刻された領域と、点滴筒の折り畳み可能な壁部の外ねじを螺刻された領域と係合する第2ピッチの下方の内ねじを螺刻された領域とが提供される。第1の実施形態の場合と同様に、好適には細長いスリットの形を取る開口部を有する円錐形状の流れ制御針部が、その円錐形状の領域に沿って提供される。この第2の実施形態に係る駆動体は、点滴筒に対して回転可能であるが、第1の実施形態とは異なり、駆動体の上方の内ねじを螺刻された領域が、折り畳み可能な壁部の上方の点滴筒の外ねじを螺刻された領域と係合するために、折り畳み可能な壁部の上方の点滴筒の部分に対して軸方向に偏位している。
【0017】
駆動体の上方の内ねじを螺刻された領域および折り畳み可能な壁部の上方の部分における相手側の点滴筒の外ねじを螺刻された領域の第1ピッチは、駆動体の下方の内ねじを螺刻された領域および点滴筒の折り畳み可能な壁部の外ねじを螺刻された領域の第2ピッチより小さい。このピッチの差異は、駆動体の回転時に、折り畳み可能な壁部の下方の点滴筒の領域と、折り畳み可能な壁部の上方の点滴筒の領域との間に、相対的な軸方向に動きを生じさせる。第1の実施形態におけるように、相対的軸方向の動きにおけるこの差異が存在するために、駆動体を第1方向に回転させることにより、円錐形状の流れ制御針部材の略円筒形弁表面に対する軸方向の動きが折り畳み可能な壁部に加えられる。それにより、弁座は、弁部材の略円筒形弁表面から離れるよう下方に引かれ、円錐形状の流れ制御針部の略円筒形弁表面と弁座との間の流体流が可能となり、または増加し、ひいては点滴筒の最下端部における開口部を通る流体流が可能となり、または増加する。駆動体を第2の逆の方向に回転させることにより、円錐形状の流れ制御針部材の略円筒形弁表面に対する折り畳み可能な壁部の軸方向の動きは逆転される。それにより、弁座は、弁部材の略円筒形弁表面の頂部に向かって上方に動かされ、弁部材と弁座との間の流体流を速度低下または停止する。
【0018】
実施形態
潅流、輸血、または点滴の用途に用いられる従来の流れ制御システム10が図1に示される。流れ制御システム10は、スパイクを有する流入口、すなわち上流側端部14および流出口、すなわち下流側端部16を有する点滴筒12と、点滴筒12の流出口16から延在する、一定の長さを有するチューブ18と、チューブ18の長さに沿って、点滴筒12の流出口16の下流に提供されるローラークランプ20と、を備える。ローラークランプ20は、挟んで絞ることによりチューブ18を変形させ、チューブ18を通る流体の流速を変化させるローラー22を含む。
【0019】
背景技術の部分で説明したように、係る装置の精密度は、医療提供者が経時的にシステムを集中的に監視することに直接的に依存している。さらに、時間の経過とともに、ローラー22は、応力およびクリープの効果を誘発する場合がある。その結果、チューブに疲労またはそうでなければ他の何らかの劣化が生じ、チューブ18を通る流速の制御におけるローラークランプ20の正確性および効率性が低下し、または、追加的な監視が必要となる。加えて、係る従来の流れ制御システムは、一般に、個々の患者の特定の必要性に応じた変化に対応することを許可しない。すなわち、同一のチューブおよびローラークランプのシステムは、広い治療範囲を有する療法を受ける成人に用いられ、または、狭い治療範囲内に保たれるべき療法を受ける幼児に用いられる場合がある。
【0020】
図2〜図5を参照すると、流れ制御システム30の第1の実施形態には、点滴筒32と、駆動体34と、弁部材36とが提供される。なお、この弁部材36は、点滴筒32内で点滴筒32の下方端部に向かって固定的に受容され、点滴筒32に対して動かない。点滴筒32は、ある程度の可撓性を許容するよう、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン)製であってもよい。一方、駆動体34および弁部材36は、より大きい程度の剛性を有するよう、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)製であってもよい。以下で詳説する理由により、特定の実施形態に係るシステム30は係る非PVC材料製である。なぜなら、システム30を、特定の実施形態にしたがって設定される完全非PVCを形成するために、押し嵌め、接着、または他の何らかの取付機構により、これも非PVC材料(例えば、EVA(エチレンビニルアセテート)またはポリウレタン)製のチューブに取り付けることが望まれる場合があるためである。システム30は、ガンマ線または電子線滅菌技術により消毒されてもよいが、エチレン・オキサイド(ETO)滅菌技術を用いて、(取り付けられてもよい関連セットの係る他の部分とともに)消毒されてもよい。
【0021】
図示しないが、点滴筒32の上方端部には、点滴バッグまたは他の流体源に穿孔し、流体を流体源から流れ制御システム30の点滴筒32へと導入するために、一体型スパイク(これもABS製であってもよい)が提供されてもよい。あるいは、点滴筒32の上方端部は、包囲されてもよいが、スパイクを有するチューブが接着または他の方法で接続されたポートまたは開口部が提供されてもよい。いずれの場合においても、点滴筒32は、従来から知られるように、通常、液滴形成器(例えば、キャップ内に配置された特定長さのチューブの形を取る)を上方端部において含み、この液滴形成器は、スパイクと流体連通し、点滴筒32内において液滴を形成する。
【0022】
例示のように、弁部材36は、少なくとも1つの開口部を有する円錐形状の弁茎38を備える。また図示のように、弁茎38は中空であり、少なくとも1つの開口部は、好適には、円錐形状の弁茎38の1つの側面に沿って延在する1つまたは複数のスリット40の形を取る。弁茎38の、流体を受容する内部46は、流体がスリット40を通過する段階区域を提供する。スリット40は、弁部材36の弁表面44の上方にある下方端部42において終端する。スリット40は、弁部材36内における望ましくない流体保持を避けるために、流体保持領域を弁部材36のスリット40の下方端部42の下方に制限してもよい。特定の形状が弁茎38に対して例示されているが、弁茎38は、代替的に中空ではなく中実であってもよく(中空形状は成形が容易である場合があるが)、図示のような円錐形状を有する必要が必ずしもないことが認識されるであろう。
【0023】
半径方向外側に突起するフランジまたはリング48が弁茎38の上方端部50において提供される。なお、このフランジまたはリング48は、点滴筒32において半径方向内側に突起する棚状部52により形成される上方表面上に着座する。弁茎38は、複数のアームまたは結合部により、フランジまたはリング48に接続されてもよい。この複数のアームまたは結合部により、窓部45がそれらの間に画成され、窓部45は主要流路を弁部材36の上方の点滴筒32の部分と弁部材36の下方の点滴筒32の部分との間に提供し、それにより、点滴筒32の使用準備を容易にする。特定の実施形態によれば、1つまたは別のスリット40および窓部45は省略されてもよいが、例示する実施形態などのように、スリット40および窓部45の両方が提供されてもよい。環状壁部54は、半径方向外向きに突起するフランジまたはリング48から上方に延在し、フィルタを受容することができるフィルタ受容エリア56を弁部材36内において画定してもよい(図示せず)。
【0024】
点滴筒32に対して動くことがないよう、弁部材36は、締まり嵌めまたは摩擦嵌めにより、点滴筒32内で固定されてもよい。代替的に、または追加的に、環状固定リブ58または半径方向内側に向けられた結節またはロックタブ(図示せず)が、半径方向外向きに突起するフランジ48および環状壁部54の組み合わされた高さよりもわずかに大きい、半径方向内側に突起する棚状部52の上方に、一定の距離だけ離間して、点滴筒32の内側壁部上に提供されてもよい。弁部材36が環状固定リブ58、結節、またはロックタブを過ぎて点滴筒32内に押し下げられると、たとえ締まり嵌めまたは摩擦嵌めが点滴筒32の内側壁と弁部材36の環状壁部54との間に存在しない場合でも、弁部材36は点滴筒32内の定位置に固定される。
【0025】
点滴筒32は、折り畳み可能な壁部60(例示的な実施形態においてはベローズ型の壁部であってもよい)を含み、この折り畳み可能な壁部60は、図示のように、点滴筒12の内側壁部の半径方向内向きに突起する棚状部から下向きに依存し、上部から底部へと半径方向内向きにテーパーをつけられてもよい。若干異なる言い方をすれば、折り畳み可能な壁部60は上方壁部区画と下方壁部区画との間に延在する。弁座62は、折り畳み可能な壁部60の底端部に取り付けられ(特定の実施形態によれば、一体的に取り付けられ(すなわち、一体型部品として形成され))て、折り畳み可能な壁部60の底端部から(例えば、下方壁部区画から)下向きに依存する。弁座62は、弁部材36の弁表面44に対して、または少なくともスリット40の下方端部42の下方の弁部材36の一部分に対して補完的である。弁座62は、点滴筒32の最下端の下流側端部66において、軸方向に延在する開口部64と流体連通し、開口部64において終端する。チューブ(図示せず)が、点滴筒32から患者へと流体を供給するために、軸方向に延在する開口部64の外側に取り付けられてもよい。
【0026】
折り畳み可能な壁部60は、図4に示す拡張状態と図5に示す折り畳み状態との間で作動可能である。折り畳み可能な壁部60が折り畳み状態にあるとき、弁座62(上述のように上方壁部区画に取り付けられる場合もある)は弁表面44と密閉的に係合し、点滴筒32から患者へのあらゆる流体の流れは止められる。折り畳み可能な壁部60をその拡張状態に向かって動かすと、弁座62は次第に弁表面44から離れるように軸方向下方へ移動する。このように弁座62が弁表面44から分離することにより、弁部材36(特に、弁表面44)と弁座62との間に流体路が開かれる。その結果、点滴筒32の軸方向に延在する開口部64を流体流が通ることが可能となる、またはその流体流の速度が増加する。弁座62と弁表面44との間に形成される分離または間隙の幅は、流路を形成する。この流路を変化させることが、点滴筒32を通る流体流の速度を動作的に制御を変化させる場合がある。
【0027】
この第1の実施形態によると、弁座62は、点滴筒32の下方端部周りに配置されたカラーまたはリングの形を取ってもよい駆動体34により作動されるが、すべての実施形態において駆動体が点滴筒32の下方端部を完全に包囲することは、要件ではない。駆動体34は、弓状壁部の形を取る複数のスナップ嵌め式突起68を含み、それぞれのスナップ嵌め式突起68は、その上に、半径方向内側に向けられたリブ70を有する。半径方向内側に向けられたリブ70は、駆動体34を点滴筒32、特に上方壁部区画に回転可能に係合するために、点滴筒32の外側壁部における凹陥部を有する環状リングまたは溝部72内へと配置される。溝部72は折り畳み可能な壁部60の上方に配置される。駆動体34は内ねじを螺刻された領域74をさらに含む。点滴筒32は、図示のように、折り畳み可能な壁部60の下方に配置され、且つ弁座62から半径方向外向きに延在する、外ねじを螺刻された下方壁部76を含む。螺刻された区画74および76は、駆動体34を点滴筒32の下方壁部区画に回転可能に係合する。スナップ嵌め式突起68のそれぞれは、駆動体34の内ねじを螺刻された領域74から上方に延在する。例示の実施形態において、駆動体34は、駆動体34を時計回りに回転させると流れが低下し最終的には停止するよう、反時計回りのねじを含む。
【0028】
駆動体34は点滴筒32に対して回転可能であるが、スナップ嵌め式突起68により、駆動体34と、折り畳み可能な壁部60の上方の点滴筒32の部分とは、相対的に一定の軸方向位置に保持される。駆動体34を第1方向(例えば、駆動体34の下方から見上げる方向から見て時計回り方向に、図5において湾曲した矢印で示すように)に回転することにより、外ねじを螺刻された下方壁部区画76が連通する折り畳み可能な壁部60は、その折り畳み状態に向かって強いて動かされる。その結果、弁座62と弁表面44との間の間隙は狭められ、最終的には点滴筒32を通る流れは閉塞される(図5の上向き矢印により示される)。駆動体34を第2方向(例えば、駆動体34の下方から見上げる方向から見て反時計回り方向、図4において湾曲した矢印で示す)に、第1方向とは逆に、回転することにより、折り畳み可能な壁部60は拡張状態に向かって強いて動かされる。その結果、弁座62と弁表面44との間の間隙または空間は広げられ、それにより、弁部材36と弁座62との間の流路が拡大され、点滴筒32の開口部を通る流れが許容される。
【0029】
駆動体34を所与の量だけ回転した時の弁座62の移動量は、駆動体34の内ねじを螺刻された領域74および点滴筒32の外ねじを螺刻された下方壁部区画76のねじピッチの関数であるだけでなく、ねじ方向(すなわち、反時計回り)の関数である。しかし、駆動体34が剛性を有するならば、駆動体34の所与の動きに対する弁座62の移動量は、点滴筒32の作動寿命にわたって比較的一定に保たれると考えられる。したがって、駆動体34の動きに応じた点滴筒32の動作は、上述のチューブ−ローラークランプシステムと比較すると、比較的安定し、且つ予想可能なものであるとさらに考えられる。一方、チューブ−ローラークランプシステムは、時間の経過とともに、安定性および予測性がともに低下し、精密な制御が望まれる場合は、解像度の程度が異なる場合があるため、より多くの時間を注ぎ込むことが必要となる。
【0030】
図6は、図2〜図5に示す実施形態の変形体を示す。この変形体によれば、駆動体34は内向きに半径方向に依存するフランジまたはリム80を含む。リム80は、点滴筒32上のねじ76と干渉することにより、軸方向下向きの方向における点滴筒32の動きを制限するように設計される。例えばねじ76がリム80と接触すると、ユーザには、点滴筒32が下流側方向における限界位置を達成したことを示す触覚的表示が提供される。ねじ76(または点滴筒32の他の部分)がリム80と当接することによっても、折り畳み可能な壁部60が過度に拡張すること(そうでないと、壁部60を損傷する場合がある)を防ぐ場合がある。加えて、変形体は、点滴筒32に対する駆動体34の動き(回転)の視覚表示を可能とするために点滴筒32の外側表面84に加えられた刻印または指標とともに用いられてもよい表示タブ82を含む。なお、この視覚表示は、ユーザがこのシステムを通る所望の流速をより迅速に達成することを可能にするものである。
【0031】
図2〜図5に示す駆動体34の実施形態は、開示された流れ制御システムに用いられる駆動体の単なる1例であることが理解されるであろう。なぜなら、その実施形態は、例えば、駆動体を点滴筒に取り付けることに関するものであるためである。図7〜図11を参照すると、本開示の流れ制御システム130の第2の実施形態がそこに示される。第1の実施形態と同様に、第2の実施形態に係る流れ制御システム130は、点滴筒132と、駆動体134と、弁部材136とを含む。なお、この弁部材136は、好適には、複数のアームまたは結合部により画定されるスリット140および窓部145の形を取る少なくとも1つの開口部を含む中空円錐形状弁茎138を有し、円錐形状弁茎138は、このアームまたは結合部により、環状リップまたはリング148に接続される。窓部145は、弁部材136の上方の点滴筒132の部分と、弁部材136の下方の点滴筒132の部分との間に、主要流路を提供する。駆動体134は、上方の内ねじを螺刻された領域178(第1ピッチを有してもよい)を、点滴筒132の折り畳み可能な壁部160の上方の位置において、点滴筒132の上方の外ねじを螺刻された領域180と係合する部分に沿って含む。駆動体134は、図示のように、折り畳み可能な壁部160から下向きに依存し、且つ点滴筒132の弁座162から半径方向外側に延在する、嵌合し合う外ねじを螺刻された下方壁部区画176と係合する下方の内ねじを螺刻された領域174をさらに含む。弁座162は、点滴筒132の最下方端部166における軸方向に延在する開口部164へと内向きにテーパーをつけられる。
【0032】
下方の内ねじを螺刻された領域174および外ねじを螺刻された下方壁部区画176は第2ピッチのねじ刻を有してもよい。なお、この第2ピッチは、上方の内ねじを螺刻された領域178および上方の外ねじを螺刻された領域180の第1ピッチよりも大きい。この第2の実施形態に係る駆動体134は点滴筒132に対して軸方向に動くが、第1ピッチと第2ピッチとの間の差異の結果として、駆動体134を回転させると、下方の内ねじを螺刻された領域174と外ねじを螺刻された下方壁部区画176との係合は、折り畳み可能な壁部160の、より大きい相対的な軸方向の動きが生じるであろう。それにより、弁座162は、駆動体134の回転方向に応じて、弁部材136の弁表面144に向かって近づくかまたは弁部材136の弁表面144から離れるように動かされる。したがって、点滴筒132からの流体の流速は、第1の実施形態の場合と同様に、点滴筒132に対して駆動体134を回転させることにより、制御可能である。駆動体134を所与の量だけ回転した時の弁座162の移動量は、駆動体134の下方の内ねじを螺刻された領域174および点滴筒132の外ねじを螺刻された下方壁部区画176の螺刻ピッチの関数であるが、また第1ピッチおよび第2ピッチの差異にも依存する。
【0033】
図9A、図9B、図10、および図11に示すように、第1ピッチおよび第2ピッチは、ピッチの大きさは異なるが、螺旋方向は同一である。ピッチの大きさが異なることに対して代替的に、または追加的に、第1ピッチおよび第2ピッチは、互いに対して螺旋方向が異なってもよい。
【0034】
連続的なねじの対が点滴筒32、132および駆動体34および134上に提供されるが、本開示のすべての実施形態においてこのことが成り立つとは限らないことも理解されるであろう。かわりに、不連続的な螺刻が、相手側のねじのうちの1つに用いられてもよく、または、タブもしくはシューが、点滴筒32および132と駆動体34および134とのうちの1つに提供される一方で、点滴筒32および132と駆動体34および134とのうちの他方は溝部または案内溝を有し、タブまたはシューがこの溝部または案内溝内に配置される。係る実施形態によれば、駆動体34および134の回転運動は、折り畳み可能な壁部および結合する弁座の軸方向の動きに変換されてもよい。駆動体34および134の軸方向運動を折り畳み可能な壁部および弁座の軸方向運動に変換する実施形態も本開示の範囲に含まれる一方で、回転運動(または回転運動と軸方向運動の混合運動)を折り畳み可能な壁部および弁座の軸方向運動に変換することに基づく例示的な実施形態は、大きい回転運動が比較的小さい軸方向運動に関連づけられることにより容易な使用を容易することができるという点で特定の利点を有する。
【0035】
点滴筒32および132の使用からいくつかの利点が得られるが、これらの利点の全部が全部の実施形態において存在しなくてもよいことを理解すべきである。例えば、本開示に示す流れ制御システムは、ローラークランプに依存してシステムを通る流れを制御するものではないため、チューブ材料に課せられる制限は、除去されないとしても、低減される。その結果、本開示に係る流れ制御システムは、PVCチューブに対するのと同様に、非PVCチューブチューブに対しても良好に機能する場合がある。さらに、応力およびクリープの効果が流れ制御システムの寿命において制限または排除されるため、従来のチューブおよびローラークランプに基づくシステムとの比較の上で見ると、本開示に係る流れ制御システムは、所望の流速を維持するために容易に使用される場合があり、従来のシステムよりも、より良好でより信頼性の高い解決を提供する場合がある。
【0036】
説明してきたいくつかの変形体は、これによれば、例えばチューブおよびローラークランプに基づくシステムにより提供されるものなどのような従来のシステムに対して存在する解像度および予測可能な形の流体制御よりも、より高い程度の解像度および予測可能な形の流体制御が提供される場合があることが理解されるであろう。しかしながら、弁表面に溝部を提供することにより、さらにより高い流れ制御が達成される場合があることも明らかになった。事実、溝部の幾何学的形状を変えることにより、駆動体34の所与の回転に対して、点滴筒32を通る流速の増加率を、制御された方法で変化させることが可能である場合がある。例えば、本開示によれば、小さい(または微小な)回転に対して流速の大きい(粗い)増分変化(すなわち、低解像度)を可能にする溝部を有する1つの弁表面を提供することが可能である場合がある一方で、別の表面は、駆動体34の比較的大きい(大規模な)回転に対して流速の非常に小さい(細かい)増分変化(すなわち、高程度の解像度)を提供する溝部を含む場合がある。低容量の流体上においてより厳しい許容誤差範囲を要求する患者、例えば新生児等、に薬剤または他の流体を供給するためには、流れ調節における高い程度の解像度が有益である場合がある。他の用途に対しては、低い程度の解像度が許容される場合がある。
【0037】
回転駆動体34および134を有する点滴筒32および132に関する本開示の態様が、溝付き表面に関する追加的改良を組み込まない弁部材および弁座と組み合わせて用いられてもよいことが理解されるであろう。同様に、溝付き表面について以下に説明する変化例を、上述した流体制御システムの任意の変形体に、または、これまでに例示または説明していない他のシステムに組み込むことが可能である場合がある。したがって、2つの態様は、本開示によれば、組み合わされてもよいが、組み合わされることが必要であるとは限らない。
【0038】
ここで図12〜図15を参照すると、本開示に係る点滴筒に配置された弁部材の略円筒形弁表面に与えられてもよい様々な幾何学的形状の溝部が示される。係る溝部は向上した流れ制御を提供する場合がある。なお、それぞれの溝部の幾何学的形状は異なる流路プロファイルをもたらし、開示される様々な溝部の幾何学的形状のプロファイルは、図16で図示的に比較される。図12〜図15に係る実施形態も、また、実質的に円筒形状である弁座と嵌合するよう構成されることに注意すべきである。したがって、弁部材および弁座が互いに対して相対的に動くのにつれて、弁部材および弁座の少なくとも一部は、密閉係合状態に保持される。その結果、弁部材および弁座の位置を越えた箇所の流体流れは、溝部および弁座の間に形成された通路を通ることとなる。本開示のすべての実施形態において弁座が略円筒形である必要はないが、事実上は、円錐形状の弁部材と嵌合するために、円錐形状となることも理解すべきである。
【0039】
第1溝部90aが図12、図12A、および図12Bに示され、この溝部の幾何学的形状を有する略円筒形弁表面44aは、図16のグラフにおいて「設計1」として示される。この実施形態において、略円筒形弁表面44aは、一定角度Θの、内向きのテーパーを有して提供される。1つの実施形態においては、角度Θは1度であるが、他の角度も可能であり、角度は弁表面44aの全域に沿って一定である必要はないことを理解すべきである。略円筒形弁表面44aの頂部において、略円筒形弁表面44aの嵌合表面の外径は、点滴筒(図12に図示せず)の弁座の内径に等しい。角度Θの内向きテーパーのために、略円筒形弁表面44aの底部における外径は、点滴筒の弁座の内径よりも小さい。したがって、図12Aおよび図12Bの断面図に示すように、弁座の内径と、略円筒形弁表面44aとの間の間隙は、略円筒形弁表面44aの頂部からの距離が増加するにしたがって大きくなる。
【0040】
別法による略円筒形弁表面44bにおける、角度を有する平面カット部の形を取る溝部90bが、図13A〜図13Dに示される。溝部90bは放物曲線の形を取る。この溝部の幾何学的形状を有する略円筒形弁表面44bは、図16のグラフにおいて「設計2」として示される図13Cおよび図13Dの断面図に示すように、溝部90bに沿う略円筒形弁表面44bの嵌合表面と、弁座との間の間隙は、略円筒形弁表面44bの頂部においては比較的小さいが、略円筒形弁表面44bの底部においては比較的大きい。
【0041】
二重の放物曲線の形を取る、より複雑な幾何学的形状を有する溝部90cが、図14A〜図14Eに示される。この二重放物曲線形状の溝部90cを有する略円筒形弁表面44cは、図16のグラフにおいて「設計3」として示される。略円筒形弁表面44cの頂部から下方の任意の距離xにおける、図14A〜図14Dの溝部90cの表面を弁座(図示せず)から分離する最大距離Dは、次の方程式により判定される場合がある。
【0042】
【数1】
【0043】
略円筒形弁表面44cの頂部において、Dはゼロである。略円筒形弁表面44cの底部において、D=Dmaxである。Hは略円筒形弁表面44cの全高である。図14C〜図14Eの断面図に示すように、距離Dは、略円筒形領域44cの頂部から下方への距離xが増加するにつれて、より大きくなる。
【0044】
さらに異なる幾何形状の溝部90dを有する略円筒形弁表面44dが、図15A〜図15Dにおいて示される。この形状の溝部90dを有する略円筒形弁表面44dは、図16のグラフにおいて「設計4」として示される。溝部90dは、3次元的弓形切り欠き部から形成される。なお、この3次元的弓形切り欠き部は、略円筒形弁表面44dの頂部における外辺部に沿った点を通る垂直軸と一致する曲率中心を有する。図15Cおよび図15Dの断面図に示すように、溝部90dの断面積は、略円筒形領域44dの頂部から下方の距離が増加するにつれて、より大きくなる。
【0045】
上述のように、図16においては、駆動体34および134の様々な回転角度の変化に対して、可能性のある流速が比較される。但し、縦座標に流速(単位:毎時ml)および横座標に回転角度(単位:度)が示される。上述のように、設計1は図12〜図12Bに示す溝部の幾何学的形状に対応し、設計2は図13A〜図13Dの幾何学的形状に対応し、設計3は図14A〜図14Eの幾何学的形状に対応し、設計4は図15A〜図15Dの幾何学的形状に対応する。設計1の操作が比較的浅い湾曲を提供することが理解されるであろう。すなわち、回転角度の大きい変化は、流速における小さい変化に対応し、200度の回転角度を越えると、所与の回転角度に対する流速の増加はより急勾配となる。対照的に、設計4は、回転の最初の200度にわたりより急激な増加を示すが、次いで、回転の約330度が到達されるまでは、ほぼ平坦なプロファイルに落ち着く。設計2および3は、角度の増分変化に対して、比較的一定した増加を示すが、一定関係の始まりは、設計3と比較すると設計2に対してはわずかに遅延するように示される。
【0046】
これらの特定の設計のそれぞれは、特定の療法に対して、他の設計よりもより適したものとなる場合がある。例えば、設計1は、幼児等の、広い範囲の特に低い流速が望まれが、狭い範囲の特に高い流速に対するオプションも望まれる用途に対してより適したものとなるかもしれない。設計3(または設計2)は、流速と回転角度との間に比較的一定した関係が望まれるが、角度のわずかな変化さえも流速における比較的顕著な変化を生じさせる用途によく適したものとなるかもしれない。設計4は、極度に低い流速と極度に高い流速との間の比較的広い範囲の変化に対してより良好なものである場合があり、実質的に、閉、部分的機能、および全開の三状態弁を提供する。
【0047】
駆動体34および134の回転が手動により、または機械により与えられてもよいことを理解すべきである。例えば、図17に示すように、キーパッド、および駆動体の位置を検出するマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラをともなって提供される、コントローラの形を取る電子流れ調節器200は、円形の歯が付いた歯車等の歯車部材204を駆動するモーター等の駆動部材202と通信してもよい。この駆動部材202は、自動的に(すなわち、駆動体34に対する直接的なユーザの入力なしに)駆動体34を点滴筒32に対して回転させる。マイクロプロセッサは、駆動部材202上に提供された軸の第1方向または第2方向における回転を制御するように、関連付けられた点滴筒32の弁座62による駆動体34の較正をともなって、マイクロプロセッサが、駆動体34を回転して、弁座62の位置を調節するように駆動部材202に信号を送り、それにより、弁部材36と弁座62との間の流体の流速が調節されるように、あらかじめプログラムされていてもよい。閉ループ調節を提供することが望まれるため、点滴筒32における液滴を計数するために従来から周知である点滴カウンタ206が電気流れ調節器200に接続され、点滴筒32と通信状態で配置されてもよい。したがって調節器200は、点滴筒32と通信状態にある点滴カウンタ206により計数された液滴に応じて、自動的に駆動体34を回転してもよい。他の実施形態においては、患者モニタまたは他の装置の出力が、閉ループ調節に対して入力を提供するために、利用されてもよい。
【0048】
弁部材36および136または弁座62および162のうちの少なくとも1つの形状は、供給される流体の粘度に応じて変更されてもよい。
【0049】
流れ制御システムの様々な実施形態を説明してきたが、依然として添付の請求項の範囲に含まれる様々な改良例がこれらの実施形態になされてもよいことが理解されるであろう。
【0050】
本発明の態様
[付記項1]
流れ制御システムであって、
下方壁部区画、上方壁部区画、および前記下方壁部区画と前記上方壁部区画との間に延在する折り畳み可能な壁部を有する点滴筒と、
前記下方壁部区画に取り付けられた、下向きに依存する弁座であって、前記点滴筒は、弁座と流体連通する下流側開口部を形成する、弁座と、
前記点滴筒内に配置され、前記上方壁部区画に取り付けられ、且つ前記弁座と係合可能である弁表面を有する、弁部材と、
前記上方壁部区画および下方壁部区画に回転可能に係合される駆動体と、を備え、
前記駆動体を第1方向に回転すると、前記点滴筒の前記折り畳み可能な壁部は、前記弁座が前記弁表面と密閉的に係合する折り畳み状態と、前記弁座が前記弁表面から十分に離間され、通路が前記弁表面と前記弁座との間に形成され、前記点滴筒の前記開口部を通る流れを許容する拡張状態との間で動く、流れ制御システム。
【0051】
[付記項2]
前記駆動体の回転可能な係合は、前記上方壁部区画および下方壁部区画のうちの少なくとも1つに対する、螺合可能な係合を含む、付記項1に記載の流れ制御システム。
【0052】
[付記項3]
前記駆動体は、前記点滴筒の前記下方壁部区画上の外ねじを螺刻された領域と係合する内ねじを螺刻された領域を有する、付記項2に記載の流れ制御システム。
【0053】
[付記項4]
前記駆動体は、前記駆動体の前記内ねじを螺刻された領域から上方に延在する複数のスナップ嵌め式突起により、前記点滴筒上に回転可能に取り付けられ、前記スナップ嵌め式突起のそれぞれは前記点滴筒内の環状溝部内へと配置される、付記項3に記載の流れ制御システム。
【0054】
[付記項5]
前記駆動体の前記内ねじを螺刻された領域および前記外ねじを螺刻された下方壁部区画のねじは第1ピッチを有し、前記駆動体は、前記点滴筒の外ねじを螺刻された領域と嵌合する前記駆動体の上方の内ねじを螺刻された領域により、前記点滴筒上に回転可能に取り付けられ、前記上方の内ねじを螺刻された領域および前記外ねじを螺刻された領域は、前記第1ピッチに対して、大きさが異なる、または方向が異なる、のうちの少なくとも1つである、第2ピッチのねじを有する、付記項3に記載の流れ制御システム。
【0055】
[付記項6]
前記弁表面および前記弁座は略円筒形である、付記項1から付記項5のいずれかに記載の流れ制御システム。
【0056】
[付記項7]
前記弁表面に提供され、前記流体通路の少なくとも1部分を形成する溝部をさらに含む、付記項1〜付記項6のいずれかに記載の流れ制御システム。
【0057】
[付記項8]
前記弁表面は、前記弁表面の外辺部の周りに内向きのテーパーを有することにより、前記溝部を画定する、付記項7に記載の流れ制御システム。
【0058】
[付記項9]
前記溝部は、前記弁座と嵌合する前記弁表面の少なくとも1部分に沿う、角度を有する平面切り欠き部の形を取る、付記項7に記載の流れ制御システム。
【0059】
[付記項10]
前記溝部は二重の放物曲線形状を取り、前記弁表面の頂部から下方の任意の距離xにおける前記溝部の前記表面を前記弁座から分離する最大距離Dは、式
【0060】
【数2】
【0061】
により画定され、前記弁表面の頂部においては、D=0であり、前記弁表面の底部においては、D=Dmaxであり、Hは前記弁表面の全長である、付記項7に記載の流れ制御システム。
【0062】
[付記項11]
前記溝部は、前記弁表面の外辺部に沿う1つの点を通る垂直軸と一致する曲率中心を有する3次元的弓形切り欠き部の形を取る、付記項7に記載の流れ制御システム。
【0063】
[付記項12]
前記溝部の露出する表面に沿う前記弁表面と、前記弁座との間の最大距離は、前記弁表面の前記頂部からの距離が増加するとともにより大きくなる、付記項7に記載の流れ制御システム。
【0064】
[付記項13]
前記弁座および前記弁表面は、前記駆動体の回転により、相対的に軸方向に偏位し、前記溝部および前記弁座により形成される前記通路の寸法は、係る軸方向偏位により変更される、付記項7〜付記項12のいずれかに記載の流れ制御システム。
【0065】
[付記項14]
前記弁座および前記弁表面の少なくとも1部分は、流体が前記溝部および前記弁座の間に形成された前記通路を通って流れるとき、密閉係合に保たれる、付記項7〜付記項13のいずれかに記載の流れ制御システム。
【0066】
[付記項15]
前記弁部材は、取り付けリングに接続された弁茎を備え、前記弁部材は、前記弁茎の上方端部において前記弁茎を前記取り付けリングに接続する結合部により画定された複数の窓部を有し、前記取り付けリングは、前記点滴筒の、半径方向内側に突起する棚状部上に着座する、付記項1〜付記項14のいずれかに記載の流れ制御システム。
【0067】
[付記項16]
前記弁茎は、円錐形状且つ中空であり、その長さに沿って提供された細長いスリットを含み、前記スリットは、前記弁表面の上方に離間する下方端部において終端する、付記項15に記載の流れ制御システム。
【0068】
[付記項17]
前記駆動体は、駆動部材と通信するギア部材により作動され、前記駆動部材は電子流れ調節器により制御される、付記項1〜付記項16のいずれかに記載の流れ制御システム。
【0069】
[付記項18]
前記電子流れ調節器と通信する点滴カウンタをさらに備える、付記項17に記載の流れ制御システム。
【0070】
[付記項19]
前記弁部材は、前記点滴筒の内側壁部の半径方向内側に突起する棚状部上に着座する、半径方向外側に突起する環状リップを含む、付記項1〜付記項18のいずれかに記載の流れ制御システム。
【0071】
[付記項20]
前記点滴筒の前記内側壁部は、前記半径方向内側に突起する棚状部の上方に、前記半径方向外側に突起する環状リップ上に提供された環状壁部の高さよりも少なくともわずかにより大きく離間する、半径方向内側に向けられたリブを含む、付記項19に記載の流れ制御システム。
【0072】
[付記項21]
点滴筒を通る流体の流れを調節するための方法であって、
点滴筒の上方壁部区画および下方壁部区画と回転可能に係合する駆動体を、前記点滴筒に対して回転することにより、前記上方壁部区画および前記下方壁部区画の間で延長する折り畳み可能な壁部を、組み込まれた弁座が弁表面と密閉的に係合する折り畳み状態と、前記弁座が前記弁表面から十分に離間することにより、流路を前記弁表面と前記弁座との間に形成し、そこを通る流れを許容する拡張状態との間で動かすことを含む、方法。
【0073】
[付記項22]
前記駆動体は、その間の相対的軸方向運動を伴わずに、前記上方壁部区画に対して回転し、その間の相対的軸方向運動を伴って、前記下方壁部区画に対して回転する、付記項21に記載の方法。
【0074】
[付記項23]
前記駆動体は、その間の相対的軸方向運動を伴って、前記下方壁部区画に対して回転し、その間の相対的軸方向運動を伴って、前記下方壁部区画に対して回転する、付記項21に記載の方法。
【0075】
[付記項24]
前記弁表面は、前記弁表面に溝部を有し、前記拡張状態においては、前記弁座は前記弁表面から十分に離間して、前記溝部および前記弁座により画定される流体通路が形成され、前記溝部のみを通る流れが許容される、付記項21に記載の方法。
【0076】
[付記項25]
前記駆動体は、前記点滴筒に対して自動的に回転される、付記項21〜付記項24のいずれかに記載の方法。
【0077】
[付記項26]
前記点滴筒において液滴を計数し、計数された前記液滴に応じて自動的に前記駆動体を回転させることをさらに含む、付記項26に記載の方法。
【0078】
[付記項27]
流れ制御システムであって、
点滴筒と、
前記点滴筒内に配置され、円錐形状領域を含み、その中に少なくとも1つの開口部を有し、前記円錐形状領域は流体受容内部を画定する、円錐形状針部材と、
前記点滴筒に回転可能に取り付けられ、且つ前記点滴筒の、相手側の外ねじを螺刻された下方壁部区画と係合する内ねじを螺刻された領域を含むネジ部材であって、前記外ねじを螺刻された下方壁部区画は、前記点滴筒のベローズ型壁部から下方に、および前記点滴筒の弁座から半径方向外側に延在し、前記ネジ部材を第1方向に回転させると、前記点滴筒前記ベローズ型壁部は、前記弁座が前記少なくとも1つの開口部の下方の前記円錐形状針部材の部分と密閉的に係合する収縮状態から、前記弁座が前記円錐形状針部材の最下方端部から十分に離間することにより、前記流体受容内部からの流体が、前記円錐形状針部材と前記弁座との間の、前記円錐形状針部材における前記少なくとも1つの開口部を通って、且つ前記点滴筒の軸方向に延在する開口部を通って、流れることが許容される拡張状態へと動く、ネジ部材、とを備えるシステム。
【0079】
[付記項28]
流れ制御システムであって、
点滴筒であって、
半径方向内側に突起する棚状部と、
前記半径方向内側に突起する棚状部から下向きに依存するベローズ型壁部と、
前記ベローズ型壁部から下向きに依存する弁座と、
前記弁座から下向きに依存する軸方向に延在する開口部と、
前記ベローズ型壁部の下方に提供され、且つ前記弁座と駆動連通する、外ねじを螺刻された下方壁部区画と、を含む点滴筒と、
摩擦嵌めにより前記点滴筒内に固定された円錐形状針部材であって、円錐形状領域を含み、最下方端部の上方に離間する少なくとも1つの開口部をその中に有し、前記点滴筒の前記ベローズ型壁部が収縮状態にあるとき、前記少なくとも1つの開口部の下方の前記円錐形状針部材の部分は前記弁座により密閉的に係合される、円錐形状針部材と、
前記点滴筒の前記外ねじを螺刻された下方壁部区画と係合する内ねじを螺刻された領域を有し、前記半径方向内側に突起する棚状部の上方で前記点滴筒にも固定されるネジ部材と、を備え、
前記点滴筒の前記ベローズ型壁部は、前記ネジ部材を前記点滴筒に対して回転させることにより、前記収縮状態と拡張状態との間で作動可能であり、前記ベローズ型壁部が前記収縮状態から前記拡張状態へと動くと、前記弁座が、前記円錐形状針部材の最下方端部から離れるように、および前記少なくとも1つの開口部の下方の前記円錐形状針部材の前記部分との密閉的係合から脱するように動く、システム。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2009年11月25日に出願された米国特許出願第61/264,376号の利益を主張するものであり、米国特許出願第61/264,376号の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、全般的には、患者への流体セットを通って流れる流体流を調節するためのシステムに関し、さらに具体的には、潅流システム、輸血システム、および点滴システムにおいて供給される流体の流速の範囲にわたる正確な制御を達成するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
多くの、潅流システム、輸血システム、および点滴システム用の従来の流れ制御システムは、点滴筒から患者に通じるチューブに取り付けられたローラークランプの形の流れ調節器を用いて提供される。係るローラークランプは、患者への流れの速度を減速または加速するために、チューブの変形に依存して流体流路を変更する。時間の経過とともに、チューブに誘発された応力とクリープ効果は、徐々にチューブの弾力性および寸法を変化させ、医療提供者がローラークランプを用いて設定した流速を変化させる。
【0004】
応力およびクリープの効果は、非ポリ塩化ビニール(PVC)チューブが用いられた場合にとくに顕著であり、非ポリ塩化ビニールチューブとともに用いられた場合、ローラークランプはほとんど効果が無い場合がある。ポリ塩化ビニールチューブは、係る劣化に対して非ポリ塩化ビニールチューブよりも耐性を有し、ローラークランプとともにより良好な性能を発揮するが、それでも何らかの変化が存在する。したがって、潅流システム、輸液システム、および点滴システムのチューブを通過する流速の意図しない変化を許容しない流れ制御システムが好適であろう。
【0005】
ローラークランプを使用することの別の欠点は、新生児患者などのように、限られた患者に対して液体の流速を設定することが困難である点である。係る患者に対して、低い流速を正確に設定する能力はきわめて重要である。チューブクランプは、ローラーがわずかに動いただけでも、所望するより大きい変化が流速にもたらされるような設定には適さず、その結果、ローラーの複数のわずかな動きが係る流速を設定することになる。これにより、流速設定に要する時間が長くなってしまう。加えて、時間の経過とともにローラークランプに起因するクリープがわずかに生じただけでも、流速に変化が生じ、それにより所望の流速範囲から流速が逸脱してしまう。これにより、医療提供者は、頻繁にチェックを行い、必要な場合、流速を元の所望の流速に戻すことが必要となる。
【0006】
従来の流れ制御システムのさらなる欠点は、流れ制御システムに対して閉ループ流体制御を提供する可能性である。ローラークランプは医療提供者により操作されるよう構成されたものであり、したがって、監視された流れまたは患者の状態等の検知されたパラメータに応じてクランプを操作する場合がある自動システムに組み込むには問題がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの態様によれば、流れ制御システムは、下方壁部区画、上方壁部区画、および下方壁部区画と上方壁部区画との間に延在する折り畳み可能な壁部を有する点滴筒と、下方壁部区画に取り付けられた下向きに依存する弁座とを含み、点滴筒は、弁座と流体連通する下流側開口部を形成し、弁部材は点滴筒内に配置され、上方壁部区画に取り付けられ且つ弁座と係合可能な弁表面を有する。流体制御システムは、上方壁部区画および下方壁部区画に回転可能に係合された駆動体も含む。駆動体を第1方向に回転すると、点滴筒の折り畳み可能な壁部は、弁座が弁表面と密閉状態で係合する折り畳み状態と、弁座が弁表面から十分に離間して弁表面と弁座との間に流体流路が形成され、点滴筒の開口部を通しての流れが可能になる拡張状態との間で動く。
【0008】
本開示の別の態様によると、点滴筒を通る流体の流れを調節するための方法は、点滴筒の上方壁部区画および下方壁部区画と回転可能に係合する駆動体を点滴筒に対して回転させ、上方壁部区画と下方壁部区画との間に延在する折り畳み可能な壁部を移動させることを含む。折り畳み可能な壁部は、組み込まれた弁座が弁表面と密閉状態で係合する折り畳み状態と、弁座が弁表面から十分に離間して弁表面と弁座との間に流体流路が形成され、流体流路を通しての流れが可能になる拡張状態との間で動く。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】先行技術に係る点滴筒と点滴筒から出るチューブに取り付けられたローラークランプの形を取る流れ調節器との平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る流れ制御システムの平面図である。
【図3】図2に示す流れ制御システムの分解平面図である。
【図4】反時計方向(駆動体の下方から見上げる方向から見て)に駆動体を回転させることの結果により、点滴筒の弁座が、点滴筒内に固定された弁部材の略円筒形弁表面(この略円筒形の弁表面は、その相手側表面の1つの側面に沿って、角度を有する平面溝部を含んでもよい)から下方に引かれて離間し、それにより、弁部材の円錐形状弁茎を弁部材のフランジに取り付ける結合部の間の窓部を主に通る流体の流れが可能となり、弁部材の中空弁茎に沿って設けられた1つまたは複数の細長いスリットを通る円錐形状領域の内容物の流出が可能となる状態である、完全拡張状態に向かって動く、流れ制御システムの点滴筒の折りたたみ可能な壁部を示す、図2の線4−4に沿う断面斜視図である。
【図5】時計方向(駆動体の下方から見上げる方向から見て)に駆動体を回転させる結果により、点滴筒の折り畳み可能な壁部が完全折り畳み状態に動くことを示す、図2の線5−5に沿う図4と同様の断面斜視図である。
【図6】点滴筒に対する駆動体の回転の程度を特定するための特徴を含む、図2〜図5に示す実施形態の変形体の断面斜視図である。
【図7】本開示の流れ制御システムの第2の実施形態の分解平面図である。
【図8A】点滴筒の弁座が、点滴筒内に固定された弁部材の略円筒形弁表面(この略円筒形の弁表面は、その相手側表面の1つの側面に沿って、角度を有する平面溝部を含んでもよい)から下方に引かれて離間し、それにより、弁部材の円錐形状弁茎を弁部材のフランジへと取り付ける結合部の間の窓部を通る流体の流れが可能となり、弁部材の中空弁茎に沿って設けられた1つまたは複数の細長いスリットを通る円錐形状領域の内容物の流出が可能となる状態である拡張状態にある流れ制御システムの折りたたみ可能な壁部を示す、図7の流れ制御システムの断面斜視図である(なお、方向矢印は、点滴筒を通る流れが減少しやがて完全に停止する方向における駆動体の回転を示す)。
【図8B】収縮状態にある点滴筒の折りたたみ可能な壁部を示す、図8Aと同様の断面斜視図である。
【図9A】図8Bと同様の断面斜視図である(但し、方向矢印は、点滴筒を通過する流速が開始または増加する方向における駆動体の回転を示す)。
【図9B】図8Aと同様の断面斜視図である。
【図10】図9Aの線9に沿う、図7の流れ制御システムの折りたたみ可能な壁部の上方の位置における、駆動体の上方内ねじを螺刻された領域および点滴筒の相手側の外ねじを螺刻された領域の拡大断面図である。
【図11】図9Aの線11に沿う、図7の流れ制御システムの駆動体の下方内ねじを螺刻された領域および点滴筒の折り畳み可能な壁部の相手側の外ねじを螺刻された領域の拡大断面図である。
【図12】略円筒形弁表面の周縁外辺部周りのテーパーの形を取る溝部を含む、本開示の点滴筒に用いるための弁部材の略円筒形弁表面の正面図である。
【図12A】図12の線12A−12Aに沿う断面図である。
【図12B】図12の線12B−12Bに沿う断面図である。
【図13A】角度を有する平面溝部を略円筒形弁表面の相手側表面の1つの側面に沿って含む、図4、図7、図8A、図8B、図9A、および図9Bに示す弁部材等の、本開示の点滴筒に用いるための弁部材の略円筒形弁表面の正面図である。
【図13B】図13Aに示す弁部材の略円筒形弁表面の側面図である。
【図13C】図13Bの線13C−13Cに沿う断面図である。
【図13D】図13Bの線13D−13Dに沿う断面図である。
【図14A】放物形溝部を略円筒形弁表面の相手側表面の1つの側面に沿って含む、本開示の点滴筒に用いるための弁部材の略円筒形弁表面の正面図である。
【図14B】図14Aに示す弁部材の略円筒形弁表面の側面図である。
【図14C】図14Bの線14C−14Cに沿う断面図である。
【図14D】図14Bの線14D−14Dに沿う断面図である。
【図14E】図14Bの線14E−14Eに沿う断面図である。
【図15A】回転された弓形溝を略円筒形弁表面の1つの側面に沿って含む、本開示の点滴筒に用いるための弁部材の略円筒形弁表面の正面図である。
【図15B】図15Aに示す弁部材の略円筒形弁表面の側面図である。
【図15C】図15Bの線15C−15Cに沿う断面図である。
【図15D】図15Bの線15D−15Dに沿う断面図である。
【図16】縦座標に流速(単位:毎時ml)および横座標に駆動体の回転(単位:度)を示す、図12〜図12B(「設計1」)、図13A〜図13D(「設計2」)、図14A〜図14E(「設計3」)、および図15A〜図15D(「設計4」)の円錐形状針部に対して様々な略円筒形弁表面の溝部形状を用いる本開示の点滴筒の例示的な流速プロファイルを示す比較グラフである。
【図17】本開示の流れ制御システムを電子的に調節するためのシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
前置き
本開示の例示的な実施形態においては、弁部材の円錐形状の弁茎が下方を向く状態で円錐形状の弁部材がそこでしっかりと着座する、半径方向内側に向けられた環状棚部を有する点滴筒を備える流れ制御システムが提供される。点滴筒の内部は、点滴筒の下流側端部における軸方向に延在する開口部と、開口部と環状突起との間に延在する折り畳み可能な壁部とを有する、環状突起から下向きに依存する領域をさらに含む。下流領域は、点滴筒内において、弁部材の、略円筒形の弁表面などのような、弁表面に対して補完的な形状を有する弁座を形成する。本明細書で用いる場合、用語「略円筒形」は、完全な円筒形、すなわち弁部材を通過する水平面に対して垂直である円周側壁を有する円筒形だけでなく、1度などのような、射出成形金型空洞からの弁部材の抜き出しを容易にするために十分な角度にテーパーがつけられた、もしくは傾斜した円筒形のいずれかを意味するものとして当業者に理解されるであろう。以下でより詳細に説明されるように、テーパーがつけられた円錐形状は、点滴筒を通過する流速にわたってよりよい制御をもたらす、略円筒形弁表面に沿う溝部のいくつかの種類のうちの1つとして考えられてもよい。回転駆動体は、弁座を弁部材の略円筒形弁表面に対して軸方向に移動させるために、点滴筒に動作可能に係合するよう構成される。
【0011】
点滴筒の上流側端部は流体の流体の入口として働く。点滴筒の上流側端部は、突き刺して点滴筒を流体の可撓性容器等の流体源と流体連通させるためのスパイク(上流側端部に接着されていてもよい)を有して提供されてもよい。あるいは、点滴筒の上流側端部は、別個のスパイクを点滴筒の開口部に流体的に接続し、点滴筒の内部をスパイクおよびチューブの内部に流体連通させるチューブに対して、包囲され、且つ接合されてもよい。
【0012】
弁部材の円錐形状の弁茎は、点滴筒の半径方向内側に向けられた環状棚部上に配置されたフランジに取り付けられる。複数の開口部または窓部が、弁部材の円錐形状弁茎をフランジに接続するアームまたは結合部の間に提供される。円錐形状弁茎は、好適には円錐形状弁茎の壁部に沿って延在する細長いスリットの形を取る、少なくとも1つの開口部を含む。折り畳み可能な壁部が折り畳み状態にあるとき、弁座はスリットの下方端部の下方で弁部材の略円筒形弁表面と接触し、それにより、弁部材の円錐形状弁茎の外部と弁座との間の下流方向のあらゆる流体の流れは遮られる。折り畳み可能な壁部が拡張されるにつれて、弁座は弁部材の略円筒形弁表面から離れるよう軸方向にしだいに動かされ、それにより、弁表面および弁座の間の流体路が開放され、点滴筒の下流側端部における軸方向に延在する開口部へと流れる流体の速度が増加する。
【0013】
弁表面の係合表面において略円筒形弁表面の少なくとも1部分に溝部を提供することにより、本開示の点滴筒を通る流れを調節する能力が高められることが見出された。溝部は、略円筒形弁表面の1つの側面に沿う平面状切り欠き部の形を取ってもよい。代替的には、溝部は、略円筒形弁表面の1つの側面に沿う湾曲した、または放物形の切り欠き部の形を取り得る。さらに代替的には、溝部は、略円筒形弁表面の1つの側面に沿う回転された弓状溝の形を取ってもよい。なおさらに代替的には、溝部は、その略円筒形状が、弁座により略円錐形状が保持される弁表面に与えられるよう、略円筒形弁表面の周縁周りのテーパーの形を効果的に取ってもよい。略円筒形弁表面の溝部の形状および寸法を変更することにより、様々な流れパターンが達成されてもよい。低容量流体に対する高解像度の流れ制御は、新生児等の、厳格な流れ制御を課せられた患者に対して流体の少量投与を供給することに対して特に望ましい。
【0014】
弁部材上方の点滴筒の部分から発して、点滴筒の下流側端部における軸方向に延在する開口部へと至る主要流路は、弁部材の弁茎を点滴筒の環状突起に着座されたフランジへと接続する結合部の間に配置された窓部により提供される。弁部材の壁部に沿って延在する細長いスリットは、針部材の円錐形状領域の内容物の流出を容易にし、それにより、流体の浪費が防止される。
【0015】
折り畳み可能な壁部は、点滴筒の外部に対して固定された上方端部を有する駆動体により、その折り畳み状態および拡張状態の間で作動される。なお、点滴筒の外部に対しての固定は、折り畳み可能な壁部の上方における点滴筒の部分に対して、回転可能であるが、軸方向に固定された方法で行われるものである。駆動体は、折り畳み可能な壁部の下方に配置された外ねじを螺刻された領域と係合し、点滴筒の弁座から半径方向外側に延在する内ねじを螺刻された壁部を含む。駆動体を第1方向に回転させることにより、円錐形状の流体制御針部材の略円筒形弁表面に対する軸方向の動きが折り畳み可能な壁部に加えられる。それにより、弁座は、弁部材の略円筒形弁表面から離れるよう引かれるとともに、弁部材と弁座との間の流体流が可能となり、または増加し、ひいては点滴筒の下流側端部における開口部を通る流体流が可能となる、または増加する。弁表面の相手側表面における溝部の形状および寸法に応じて、点滴筒の下方領域に下る流れは、弁部材の略円筒形弁表面から離れる方向に向かう弁座の軸方向移動の少なくとも初期部分の間は、溝部に制限される場合がある。駆動体を第2の逆の方向に回転させることにより、円錐形状の流れ制御針部材に対する折り畳み可能な壁部の軸方向の動きは逆転される。それにより、弁座は、弁部材の略円筒形弁表面に向かって上方に動かされ、弁部材と弁座との間の流体流を速度低下または停止させる。所望する場合、ネジの回転が、点滴筒からの流体流の速度を予測可能に制御することを達成するために、較正されてもよい。この較正は必ずしも線形であるとは限らない。なぜなら、溝部の位置(単数または複数)、形状、および寸法等の変数に応じて、弁部材の弁座および略円筒形弁表面の間の初期軸方向の動きに沿う流速の調節に関するより大きい解像度が存在する場合があるためである。
【0016】
第2の例示的な実施形態によれば、駆動体には、折り畳み可能な壁部の上方の位置における点滴筒の外ねじを螺刻された領域と係合する部分に沿う第1ピッチの上方の内ねじを螺刻された領域と、点滴筒の折り畳み可能な壁部の外ねじを螺刻された領域と係合する第2ピッチの下方の内ねじを螺刻された領域とが提供される。第1の実施形態の場合と同様に、好適には細長いスリットの形を取る開口部を有する円錐形状の流れ制御針部が、その円錐形状の領域に沿って提供される。この第2の実施形態に係る駆動体は、点滴筒に対して回転可能であるが、第1の実施形態とは異なり、駆動体の上方の内ねじを螺刻された領域が、折り畳み可能な壁部の上方の点滴筒の外ねじを螺刻された領域と係合するために、折り畳み可能な壁部の上方の点滴筒の部分に対して軸方向に偏位している。
【0017】
駆動体の上方の内ねじを螺刻された領域および折り畳み可能な壁部の上方の部分における相手側の点滴筒の外ねじを螺刻された領域の第1ピッチは、駆動体の下方の内ねじを螺刻された領域および点滴筒の折り畳み可能な壁部の外ねじを螺刻された領域の第2ピッチより小さい。このピッチの差異は、駆動体の回転時に、折り畳み可能な壁部の下方の点滴筒の領域と、折り畳み可能な壁部の上方の点滴筒の領域との間に、相対的な軸方向に動きを生じさせる。第1の実施形態におけるように、相対的軸方向の動きにおけるこの差異が存在するために、駆動体を第1方向に回転させることにより、円錐形状の流れ制御針部材の略円筒形弁表面に対する軸方向の動きが折り畳み可能な壁部に加えられる。それにより、弁座は、弁部材の略円筒形弁表面から離れるよう下方に引かれ、円錐形状の流れ制御針部の略円筒形弁表面と弁座との間の流体流が可能となり、または増加し、ひいては点滴筒の最下端部における開口部を通る流体流が可能となり、または増加する。駆動体を第2の逆の方向に回転させることにより、円錐形状の流れ制御針部材の略円筒形弁表面に対する折り畳み可能な壁部の軸方向の動きは逆転される。それにより、弁座は、弁部材の略円筒形弁表面の頂部に向かって上方に動かされ、弁部材と弁座との間の流体流を速度低下または停止する。
【0018】
実施形態
潅流、輸血、または点滴の用途に用いられる従来の流れ制御システム10が図1に示される。流れ制御システム10は、スパイクを有する流入口、すなわち上流側端部14および流出口、すなわち下流側端部16を有する点滴筒12と、点滴筒12の流出口16から延在する、一定の長さを有するチューブ18と、チューブ18の長さに沿って、点滴筒12の流出口16の下流に提供されるローラークランプ20と、を備える。ローラークランプ20は、挟んで絞ることによりチューブ18を変形させ、チューブ18を通る流体の流速を変化させるローラー22を含む。
【0019】
背景技術の部分で説明したように、係る装置の精密度は、医療提供者が経時的にシステムを集中的に監視することに直接的に依存している。さらに、時間の経過とともに、ローラー22は、応力およびクリープの効果を誘発する場合がある。その結果、チューブに疲労またはそうでなければ他の何らかの劣化が生じ、チューブ18を通る流速の制御におけるローラークランプ20の正確性および効率性が低下し、または、追加的な監視が必要となる。加えて、係る従来の流れ制御システムは、一般に、個々の患者の特定の必要性に応じた変化に対応することを許可しない。すなわち、同一のチューブおよびローラークランプのシステムは、広い治療範囲を有する療法を受ける成人に用いられ、または、狭い治療範囲内に保たれるべき療法を受ける幼児に用いられる場合がある。
【0020】
図2〜図5を参照すると、流れ制御システム30の第1の実施形態には、点滴筒32と、駆動体34と、弁部材36とが提供される。なお、この弁部材36は、点滴筒32内で点滴筒32の下方端部に向かって固定的に受容され、点滴筒32に対して動かない。点滴筒32は、ある程度の可撓性を許容するよう、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン)製であってもよい。一方、駆動体34および弁部材36は、より大きい程度の剛性を有するよう、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)製であってもよい。以下で詳説する理由により、特定の実施形態に係るシステム30は係る非PVC材料製である。なぜなら、システム30を、特定の実施形態にしたがって設定される完全非PVCを形成するために、押し嵌め、接着、または他の何らかの取付機構により、これも非PVC材料(例えば、EVA(エチレンビニルアセテート)またはポリウレタン)製のチューブに取り付けることが望まれる場合があるためである。システム30は、ガンマ線または電子線滅菌技術により消毒されてもよいが、エチレン・オキサイド(ETO)滅菌技術を用いて、(取り付けられてもよい関連セットの係る他の部分とともに)消毒されてもよい。
【0021】
図示しないが、点滴筒32の上方端部には、点滴バッグまたは他の流体源に穿孔し、流体を流体源から流れ制御システム30の点滴筒32へと導入するために、一体型スパイク(これもABS製であってもよい)が提供されてもよい。あるいは、点滴筒32の上方端部は、包囲されてもよいが、スパイクを有するチューブが接着または他の方法で接続されたポートまたは開口部が提供されてもよい。いずれの場合においても、点滴筒32は、従来から知られるように、通常、液滴形成器(例えば、キャップ内に配置された特定長さのチューブの形を取る)を上方端部において含み、この液滴形成器は、スパイクと流体連通し、点滴筒32内において液滴を形成する。
【0022】
例示のように、弁部材36は、少なくとも1つの開口部を有する円錐形状の弁茎38を備える。また図示のように、弁茎38は中空であり、少なくとも1つの開口部は、好適には、円錐形状の弁茎38の1つの側面に沿って延在する1つまたは複数のスリット40の形を取る。弁茎38の、流体を受容する内部46は、流体がスリット40を通過する段階区域を提供する。スリット40は、弁部材36の弁表面44の上方にある下方端部42において終端する。スリット40は、弁部材36内における望ましくない流体保持を避けるために、流体保持領域を弁部材36のスリット40の下方端部42の下方に制限してもよい。特定の形状が弁茎38に対して例示されているが、弁茎38は、代替的に中空ではなく中実であってもよく(中空形状は成形が容易である場合があるが)、図示のような円錐形状を有する必要が必ずしもないことが認識されるであろう。
【0023】
半径方向外側に突起するフランジまたはリング48が弁茎38の上方端部50において提供される。なお、このフランジまたはリング48は、点滴筒32において半径方向内側に突起する棚状部52により形成される上方表面上に着座する。弁茎38は、複数のアームまたは結合部により、フランジまたはリング48に接続されてもよい。この複数のアームまたは結合部により、窓部45がそれらの間に画成され、窓部45は主要流路を弁部材36の上方の点滴筒32の部分と弁部材36の下方の点滴筒32の部分との間に提供し、それにより、点滴筒32の使用準備を容易にする。特定の実施形態によれば、1つまたは別のスリット40および窓部45は省略されてもよいが、例示する実施形態などのように、スリット40および窓部45の両方が提供されてもよい。環状壁部54は、半径方向外向きに突起するフランジまたはリング48から上方に延在し、フィルタを受容することができるフィルタ受容エリア56を弁部材36内において画定してもよい(図示せず)。
【0024】
点滴筒32に対して動くことがないよう、弁部材36は、締まり嵌めまたは摩擦嵌めにより、点滴筒32内で固定されてもよい。代替的に、または追加的に、環状固定リブ58または半径方向内側に向けられた結節またはロックタブ(図示せず)が、半径方向外向きに突起するフランジ48および環状壁部54の組み合わされた高さよりもわずかに大きい、半径方向内側に突起する棚状部52の上方に、一定の距離だけ離間して、点滴筒32の内側壁部上に提供されてもよい。弁部材36が環状固定リブ58、結節、またはロックタブを過ぎて点滴筒32内に押し下げられると、たとえ締まり嵌めまたは摩擦嵌めが点滴筒32の内側壁と弁部材36の環状壁部54との間に存在しない場合でも、弁部材36は点滴筒32内の定位置に固定される。
【0025】
点滴筒32は、折り畳み可能な壁部60(例示的な実施形態においてはベローズ型の壁部であってもよい)を含み、この折り畳み可能な壁部60は、図示のように、点滴筒12の内側壁部の半径方向内向きに突起する棚状部から下向きに依存し、上部から底部へと半径方向内向きにテーパーをつけられてもよい。若干異なる言い方をすれば、折り畳み可能な壁部60は上方壁部区画と下方壁部区画との間に延在する。弁座62は、折り畳み可能な壁部60の底端部に取り付けられ(特定の実施形態によれば、一体的に取り付けられ(すなわち、一体型部品として形成され))て、折り畳み可能な壁部60の底端部から(例えば、下方壁部区画から)下向きに依存する。弁座62は、弁部材36の弁表面44に対して、または少なくともスリット40の下方端部42の下方の弁部材36の一部分に対して補完的である。弁座62は、点滴筒32の最下端の下流側端部66において、軸方向に延在する開口部64と流体連通し、開口部64において終端する。チューブ(図示せず)が、点滴筒32から患者へと流体を供給するために、軸方向に延在する開口部64の外側に取り付けられてもよい。
【0026】
折り畳み可能な壁部60は、図4に示す拡張状態と図5に示す折り畳み状態との間で作動可能である。折り畳み可能な壁部60が折り畳み状態にあるとき、弁座62(上述のように上方壁部区画に取り付けられる場合もある)は弁表面44と密閉的に係合し、点滴筒32から患者へのあらゆる流体の流れは止められる。折り畳み可能な壁部60をその拡張状態に向かって動かすと、弁座62は次第に弁表面44から離れるように軸方向下方へ移動する。このように弁座62が弁表面44から分離することにより、弁部材36(特に、弁表面44)と弁座62との間に流体路が開かれる。その結果、点滴筒32の軸方向に延在する開口部64を流体流が通ることが可能となる、またはその流体流の速度が増加する。弁座62と弁表面44との間に形成される分離または間隙の幅は、流路を形成する。この流路を変化させることが、点滴筒32を通る流体流の速度を動作的に制御を変化させる場合がある。
【0027】
この第1の実施形態によると、弁座62は、点滴筒32の下方端部周りに配置されたカラーまたはリングの形を取ってもよい駆動体34により作動されるが、すべての実施形態において駆動体が点滴筒32の下方端部を完全に包囲することは、要件ではない。駆動体34は、弓状壁部の形を取る複数のスナップ嵌め式突起68を含み、それぞれのスナップ嵌め式突起68は、その上に、半径方向内側に向けられたリブ70を有する。半径方向内側に向けられたリブ70は、駆動体34を点滴筒32、特に上方壁部区画に回転可能に係合するために、点滴筒32の外側壁部における凹陥部を有する環状リングまたは溝部72内へと配置される。溝部72は折り畳み可能な壁部60の上方に配置される。駆動体34は内ねじを螺刻された領域74をさらに含む。点滴筒32は、図示のように、折り畳み可能な壁部60の下方に配置され、且つ弁座62から半径方向外向きに延在する、外ねじを螺刻された下方壁部76を含む。螺刻された区画74および76は、駆動体34を点滴筒32の下方壁部区画に回転可能に係合する。スナップ嵌め式突起68のそれぞれは、駆動体34の内ねじを螺刻された領域74から上方に延在する。例示の実施形態において、駆動体34は、駆動体34を時計回りに回転させると流れが低下し最終的には停止するよう、反時計回りのねじを含む。
【0028】
駆動体34は点滴筒32に対して回転可能であるが、スナップ嵌め式突起68により、駆動体34と、折り畳み可能な壁部60の上方の点滴筒32の部分とは、相対的に一定の軸方向位置に保持される。駆動体34を第1方向(例えば、駆動体34の下方から見上げる方向から見て時計回り方向に、図5において湾曲した矢印で示すように)に回転することにより、外ねじを螺刻された下方壁部区画76が連通する折り畳み可能な壁部60は、その折り畳み状態に向かって強いて動かされる。その結果、弁座62と弁表面44との間の間隙は狭められ、最終的には点滴筒32を通る流れは閉塞される(図5の上向き矢印により示される)。駆動体34を第2方向(例えば、駆動体34の下方から見上げる方向から見て反時計回り方向、図4において湾曲した矢印で示す)に、第1方向とは逆に、回転することにより、折り畳み可能な壁部60は拡張状態に向かって強いて動かされる。その結果、弁座62と弁表面44との間の間隙または空間は広げられ、それにより、弁部材36と弁座62との間の流路が拡大され、点滴筒32の開口部を通る流れが許容される。
【0029】
駆動体34を所与の量だけ回転した時の弁座62の移動量は、駆動体34の内ねじを螺刻された領域74および点滴筒32の外ねじを螺刻された下方壁部区画76のねじピッチの関数であるだけでなく、ねじ方向(すなわち、反時計回り)の関数である。しかし、駆動体34が剛性を有するならば、駆動体34の所与の動きに対する弁座62の移動量は、点滴筒32の作動寿命にわたって比較的一定に保たれると考えられる。したがって、駆動体34の動きに応じた点滴筒32の動作は、上述のチューブ−ローラークランプシステムと比較すると、比較的安定し、且つ予想可能なものであるとさらに考えられる。一方、チューブ−ローラークランプシステムは、時間の経過とともに、安定性および予測性がともに低下し、精密な制御が望まれる場合は、解像度の程度が異なる場合があるため、より多くの時間を注ぎ込むことが必要となる。
【0030】
図6は、図2〜図5に示す実施形態の変形体を示す。この変形体によれば、駆動体34は内向きに半径方向に依存するフランジまたはリム80を含む。リム80は、点滴筒32上のねじ76と干渉することにより、軸方向下向きの方向における点滴筒32の動きを制限するように設計される。例えばねじ76がリム80と接触すると、ユーザには、点滴筒32が下流側方向における限界位置を達成したことを示す触覚的表示が提供される。ねじ76(または点滴筒32の他の部分)がリム80と当接することによっても、折り畳み可能な壁部60が過度に拡張すること(そうでないと、壁部60を損傷する場合がある)を防ぐ場合がある。加えて、変形体は、点滴筒32に対する駆動体34の動き(回転)の視覚表示を可能とするために点滴筒32の外側表面84に加えられた刻印または指標とともに用いられてもよい表示タブ82を含む。なお、この視覚表示は、ユーザがこのシステムを通る所望の流速をより迅速に達成することを可能にするものである。
【0031】
図2〜図5に示す駆動体34の実施形態は、開示された流れ制御システムに用いられる駆動体の単なる1例であることが理解されるであろう。なぜなら、その実施形態は、例えば、駆動体を点滴筒に取り付けることに関するものであるためである。図7〜図11を参照すると、本開示の流れ制御システム130の第2の実施形態がそこに示される。第1の実施形態と同様に、第2の実施形態に係る流れ制御システム130は、点滴筒132と、駆動体134と、弁部材136とを含む。なお、この弁部材136は、好適には、複数のアームまたは結合部により画定されるスリット140および窓部145の形を取る少なくとも1つの開口部を含む中空円錐形状弁茎138を有し、円錐形状弁茎138は、このアームまたは結合部により、環状リップまたはリング148に接続される。窓部145は、弁部材136の上方の点滴筒132の部分と、弁部材136の下方の点滴筒132の部分との間に、主要流路を提供する。駆動体134は、上方の内ねじを螺刻された領域178(第1ピッチを有してもよい)を、点滴筒132の折り畳み可能な壁部160の上方の位置において、点滴筒132の上方の外ねじを螺刻された領域180と係合する部分に沿って含む。駆動体134は、図示のように、折り畳み可能な壁部160から下向きに依存し、且つ点滴筒132の弁座162から半径方向外側に延在する、嵌合し合う外ねじを螺刻された下方壁部区画176と係合する下方の内ねじを螺刻された領域174をさらに含む。弁座162は、点滴筒132の最下方端部166における軸方向に延在する開口部164へと内向きにテーパーをつけられる。
【0032】
下方の内ねじを螺刻された領域174および外ねじを螺刻された下方壁部区画176は第2ピッチのねじ刻を有してもよい。なお、この第2ピッチは、上方の内ねじを螺刻された領域178および上方の外ねじを螺刻された領域180の第1ピッチよりも大きい。この第2の実施形態に係る駆動体134は点滴筒132に対して軸方向に動くが、第1ピッチと第2ピッチとの間の差異の結果として、駆動体134を回転させると、下方の内ねじを螺刻された領域174と外ねじを螺刻された下方壁部区画176との係合は、折り畳み可能な壁部160の、より大きい相対的な軸方向の動きが生じるであろう。それにより、弁座162は、駆動体134の回転方向に応じて、弁部材136の弁表面144に向かって近づくかまたは弁部材136の弁表面144から離れるように動かされる。したがって、点滴筒132からの流体の流速は、第1の実施形態の場合と同様に、点滴筒132に対して駆動体134を回転させることにより、制御可能である。駆動体134を所与の量だけ回転した時の弁座162の移動量は、駆動体134の下方の内ねじを螺刻された領域174および点滴筒132の外ねじを螺刻された下方壁部区画176の螺刻ピッチの関数であるが、また第1ピッチおよび第2ピッチの差異にも依存する。
【0033】
図9A、図9B、図10、および図11に示すように、第1ピッチおよび第2ピッチは、ピッチの大きさは異なるが、螺旋方向は同一である。ピッチの大きさが異なることに対して代替的に、または追加的に、第1ピッチおよび第2ピッチは、互いに対して螺旋方向が異なってもよい。
【0034】
連続的なねじの対が点滴筒32、132および駆動体34および134上に提供されるが、本開示のすべての実施形態においてこのことが成り立つとは限らないことも理解されるであろう。かわりに、不連続的な螺刻が、相手側のねじのうちの1つに用いられてもよく、または、タブもしくはシューが、点滴筒32および132と駆動体34および134とのうちの1つに提供される一方で、点滴筒32および132と駆動体34および134とのうちの他方は溝部または案内溝を有し、タブまたはシューがこの溝部または案内溝内に配置される。係る実施形態によれば、駆動体34および134の回転運動は、折り畳み可能な壁部および結合する弁座の軸方向の動きに変換されてもよい。駆動体34および134の軸方向運動を折り畳み可能な壁部および弁座の軸方向運動に変換する実施形態も本開示の範囲に含まれる一方で、回転運動(または回転運動と軸方向運動の混合運動)を折り畳み可能な壁部および弁座の軸方向運動に変換することに基づく例示的な実施形態は、大きい回転運動が比較的小さい軸方向運動に関連づけられることにより容易な使用を容易することができるという点で特定の利点を有する。
【0035】
点滴筒32および132の使用からいくつかの利点が得られるが、これらの利点の全部が全部の実施形態において存在しなくてもよいことを理解すべきである。例えば、本開示に示す流れ制御システムは、ローラークランプに依存してシステムを通る流れを制御するものではないため、チューブ材料に課せられる制限は、除去されないとしても、低減される。その結果、本開示に係る流れ制御システムは、PVCチューブに対するのと同様に、非PVCチューブチューブに対しても良好に機能する場合がある。さらに、応力およびクリープの効果が流れ制御システムの寿命において制限または排除されるため、従来のチューブおよびローラークランプに基づくシステムとの比較の上で見ると、本開示に係る流れ制御システムは、所望の流速を維持するために容易に使用される場合があり、従来のシステムよりも、より良好でより信頼性の高い解決を提供する場合がある。
【0036】
説明してきたいくつかの変形体は、これによれば、例えばチューブおよびローラークランプに基づくシステムにより提供されるものなどのような従来のシステムに対して存在する解像度および予測可能な形の流体制御よりも、より高い程度の解像度および予測可能な形の流体制御が提供される場合があることが理解されるであろう。しかしながら、弁表面に溝部を提供することにより、さらにより高い流れ制御が達成される場合があることも明らかになった。事実、溝部の幾何学的形状を変えることにより、駆動体34の所与の回転に対して、点滴筒32を通る流速の増加率を、制御された方法で変化させることが可能である場合がある。例えば、本開示によれば、小さい(または微小な)回転に対して流速の大きい(粗い)増分変化(すなわち、低解像度)を可能にする溝部を有する1つの弁表面を提供することが可能である場合がある一方で、別の表面は、駆動体34の比較的大きい(大規模な)回転に対して流速の非常に小さい(細かい)増分変化(すなわち、高程度の解像度)を提供する溝部を含む場合がある。低容量の流体上においてより厳しい許容誤差範囲を要求する患者、例えば新生児等、に薬剤または他の流体を供給するためには、流れ調節における高い程度の解像度が有益である場合がある。他の用途に対しては、低い程度の解像度が許容される場合がある。
【0037】
回転駆動体34および134を有する点滴筒32および132に関する本開示の態様が、溝付き表面に関する追加的改良を組み込まない弁部材および弁座と組み合わせて用いられてもよいことが理解されるであろう。同様に、溝付き表面について以下に説明する変化例を、上述した流体制御システムの任意の変形体に、または、これまでに例示または説明していない他のシステムに組み込むことが可能である場合がある。したがって、2つの態様は、本開示によれば、組み合わされてもよいが、組み合わされることが必要であるとは限らない。
【0038】
ここで図12〜図15を参照すると、本開示に係る点滴筒に配置された弁部材の略円筒形弁表面に与えられてもよい様々な幾何学的形状の溝部が示される。係る溝部は向上した流れ制御を提供する場合がある。なお、それぞれの溝部の幾何学的形状は異なる流路プロファイルをもたらし、開示される様々な溝部の幾何学的形状のプロファイルは、図16で図示的に比較される。図12〜図15に係る実施形態も、また、実質的に円筒形状である弁座と嵌合するよう構成されることに注意すべきである。したがって、弁部材および弁座が互いに対して相対的に動くのにつれて、弁部材および弁座の少なくとも一部は、密閉係合状態に保持される。その結果、弁部材および弁座の位置を越えた箇所の流体流れは、溝部および弁座の間に形成された通路を通ることとなる。本開示のすべての実施形態において弁座が略円筒形である必要はないが、事実上は、円錐形状の弁部材と嵌合するために、円錐形状となることも理解すべきである。
【0039】
第1溝部90aが図12、図12A、および図12Bに示され、この溝部の幾何学的形状を有する略円筒形弁表面44aは、図16のグラフにおいて「設計1」として示される。この実施形態において、略円筒形弁表面44aは、一定角度Θの、内向きのテーパーを有して提供される。1つの実施形態においては、角度Θは1度であるが、他の角度も可能であり、角度は弁表面44aの全域に沿って一定である必要はないことを理解すべきである。略円筒形弁表面44aの頂部において、略円筒形弁表面44aの嵌合表面の外径は、点滴筒(図12に図示せず)の弁座の内径に等しい。角度Θの内向きテーパーのために、略円筒形弁表面44aの底部における外径は、点滴筒の弁座の内径よりも小さい。したがって、図12Aおよび図12Bの断面図に示すように、弁座の内径と、略円筒形弁表面44aとの間の間隙は、略円筒形弁表面44aの頂部からの距離が増加するにしたがって大きくなる。
【0040】
別法による略円筒形弁表面44bにおける、角度を有する平面カット部の形を取る溝部90bが、図13A〜図13Dに示される。溝部90bは放物曲線の形を取る。この溝部の幾何学的形状を有する略円筒形弁表面44bは、図16のグラフにおいて「設計2」として示される図13Cおよび図13Dの断面図に示すように、溝部90bに沿う略円筒形弁表面44bの嵌合表面と、弁座との間の間隙は、略円筒形弁表面44bの頂部においては比較的小さいが、略円筒形弁表面44bの底部においては比較的大きい。
【0041】
二重の放物曲線の形を取る、より複雑な幾何学的形状を有する溝部90cが、図14A〜図14Eに示される。この二重放物曲線形状の溝部90cを有する略円筒形弁表面44cは、図16のグラフにおいて「設計3」として示される。略円筒形弁表面44cの頂部から下方の任意の距離xにおける、図14A〜図14Dの溝部90cの表面を弁座(図示せず)から分離する最大距離Dは、次の方程式により判定される場合がある。
【0042】
【数1】
【0043】
略円筒形弁表面44cの頂部において、Dはゼロである。略円筒形弁表面44cの底部において、D=Dmaxである。Hは略円筒形弁表面44cの全高である。図14C〜図14Eの断面図に示すように、距離Dは、略円筒形領域44cの頂部から下方への距離xが増加するにつれて、より大きくなる。
【0044】
さらに異なる幾何形状の溝部90dを有する略円筒形弁表面44dが、図15A〜図15Dにおいて示される。この形状の溝部90dを有する略円筒形弁表面44dは、図16のグラフにおいて「設計4」として示される。溝部90dは、3次元的弓形切り欠き部から形成される。なお、この3次元的弓形切り欠き部は、略円筒形弁表面44dの頂部における外辺部に沿った点を通る垂直軸と一致する曲率中心を有する。図15Cおよび図15Dの断面図に示すように、溝部90dの断面積は、略円筒形領域44dの頂部から下方の距離が増加するにつれて、より大きくなる。
【0045】
上述のように、図16においては、駆動体34および134の様々な回転角度の変化に対して、可能性のある流速が比較される。但し、縦座標に流速(単位:毎時ml)および横座標に回転角度(単位:度)が示される。上述のように、設計1は図12〜図12Bに示す溝部の幾何学的形状に対応し、設計2は図13A〜図13Dの幾何学的形状に対応し、設計3は図14A〜図14Eの幾何学的形状に対応し、設計4は図15A〜図15Dの幾何学的形状に対応する。設計1の操作が比較的浅い湾曲を提供することが理解されるであろう。すなわち、回転角度の大きい変化は、流速における小さい変化に対応し、200度の回転角度を越えると、所与の回転角度に対する流速の増加はより急勾配となる。対照的に、設計4は、回転の最初の200度にわたりより急激な増加を示すが、次いで、回転の約330度が到達されるまでは、ほぼ平坦なプロファイルに落ち着く。設計2および3は、角度の増分変化に対して、比較的一定した増加を示すが、一定関係の始まりは、設計3と比較すると設計2に対してはわずかに遅延するように示される。
【0046】
これらの特定の設計のそれぞれは、特定の療法に対して、他の設計よりもより適したものとなる場合がある。例えば、設計1は、幼児等の、広い範囲の特に低い流速が望まれが、狭い範囲の特に高い流速に対するオプションも望まれる用途に対してより適したものとなるかもしれない。設計3(または設計2)は、流速と回転角度との間に比較的一定した関係が望まれるが、角度のわずかな変化さえも流速における比較的顕著な変化を生じさせる用途によく適したものとなるかもしれない。設計4は、極度に低い流速と極度に高い流速との間の比較的広い範囲の変化に対してより良好なものである場合があり、実質的に、閉、部分的機能、および全開の三状態弁を提供する。
【0047】
駆動体34および134の回転が手動により、または機械により与えられてもよいことを理解すべきである。例えば、図17に示すように、キーパッド、および駆動体の位置を検出するマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラをともなって提供される、コントローラの形を取る電子流れ調節器200は、円形の歯が付いた歯車等の歯車部材204を駆動するモーター等の駆動部材202と通信してもよい。この駆動部材202は、自動的に(すなわち、駆動体34に対する直接的なユーザの入力なしに)駆動体34を点滴筒32に対して回転させる。マイクロプロセッサは、駆動部材202上に提供された軸の第1方向または第2方向における回転を制御するように、関連付けられた点滴筒32の弁座62による駆動体34の較正をともなって、マイクロプロセッサが、駆動体34を回転して、弁座62の位置を調節するように駆動部材202に信号を送り、それにより、弁部材36と弁座62との間の流体の流速が調節されるように、あらかじめプログラムされていてもよい。閉ループ調節を提供することが望まれるため、点滴筒32における液滴を計数するために従来から周知である点滴カウンタ206が電気流れ調節器200に接続され、点滴筒32と通信状態で配置されてもよい。したがって調節器200は、点滴筒32と通信状態にある点滴カウンタ206により計数された液滴に応じて、自動的に駆動体34を回転してもよい。他の実施形態においては、患者モニタまたは他の装置の出力が、閉ループ調節に対して入力を提供するために、利用されてもよい。
【0048】
弁部材36および136または弁座62および162のうちの少なくとも1つの形状は、供給される流体の粘度に応じて変更されてもよい。
【0049】
流れ制御システムの様々な実施形態を説明してきたが、依然として添付の請求項の範囲に含まれる様々な改良例がこれらの実施形態になされてもよいことが理解されるであろう。
【0050】
本発明の態様
[付記項1]
流れ制御システムであって、
下方壁部区画、上方壁部区画、および前記下方壁部区画と前記上方壁部区画との間に延在する折り畳み可能な壁部を有する点滴筒と、
前記下方壁部区画に取り付けられた、下向きに依存する弁座であって、前記点滴筒は、弁座と流体連通する下流側開口部を形成する、弁座と、
前記点滴筒内に配置され、前記上方壁部区画に取り付けられ、且つ前記弁座と係合可能である弁表面を有する、弁部材と、
前記上方壁部区画および下方壁部区画に回転可能に係合される駆動体と、を備え、
前記駆動体を第1方向に回転すると、前記点滴筒の前記折り畳み可能な壁部は、前記弁座が前記弁表面と密閉的に係合する折り畳み状態と、前記弁座が前記弁表面から十分に離間され、通路が前記弁表面と前記弁座との間に形成され、前記点滴筒の前記開口部を通る流れを許容する拡張状態との間で動く、流れ制御システム。
【0051】
[付記項2]
前記駆動体の回転可能な係合は、前記上方壁部区画および下方壁部区画のうちの少なくとも1つに対する、螺合可能な係合を含む、付記項1に記載の流れ制御システム。
【0052】
[付記項3]
前記駆動体は、前記点滴筒の前記下方壁部区画上の外ねじを螺刻された領域と係合する内ねじを螺刻された領域を有する、付記項2に記載の流れ制御システム。
【0053】
[付記項4]
前記駆動体は、前記駆動体の前記内ねじを螺刻された領域から上方に延在する複数のスナップ嵌め式突起により、前記点滴筒上に回転可能に取り付けられ、前記スナップ嵌め式突起のそれぞれは前記点滴筒内の環状溝部内へと配置される、付記項3に記載の流れ制御システム。
【0054】
[付記項5]
前記駆動体の前記内ねじを螺刻された領域および前記外ねじを螺刻された下方壁部区画のねじは第1ピッチを有し、前記駆動体は、前記点滴筒の外ねじを螺刻された領域と嵌合する前記駆動体の上方の内ねじを螺刻された領域により、前記点滴筒上に回転可能に取り付けられ、前記上方の内ねじを螺刻された領域および前記外ねじを螺刻された領域は、前記第1ピッチに対して、大きさが異なる、または方向が異なる、のうちの少なくとも1つである、第2ピッチのねじを有する、付記項3に記載の流れ制御システム。
【0055】
[付記項6]
前記弁表面および前記弁座は略円筒形である、付記項1から付記項5のいずれかに記載の流れ制御システム。
【0056】
[付記項7]
前記弁表面に提供され、前記流体通路の少なくとも1部分を形成する溝部をさらに含む、付記項1〜付記項6のいずれかに記載の流れ制御システム。
【0057】
[付記項8]
前記弁表面は、前記弁表面の外辺部の周りに内向きのテーパーを有することにより、前記溝部を画定する、付記項7に記載の流れ制御システム。
【0058】
[付記項9]
前記溝部は、前記弁座と嵌合する前記弁表面の少なくとも1部分に沿う、角度を有する平面切り欠き部の形を取る、付記項7に記載の流れ制御システム。
【0059】
[付記項10]
前記溝部は二重の放物曲線形状を取り、前記弁表面の頂部から下方の任意の距離xにおける前記溝部の前記表面を前記弁座から分離する最大距離Dは、式
【0060】
【数2】
【0061】
により画定され、前記弁表面の頂部においては、D=0であり、前記弁表面の底部においては、D=Dmaxであり、Hは前記弁表面の全長である、付記項7に記載の流れ制御システム。
【0062】
[付記項11]
前記溝部は、前記弁表面の外辺部に沿う1つの点を通る垂直軸と一致する曲率中心を有する3次元的弓形切り欠き部の形を取る、付記項7に記載の流れ制御システム。
【0063】
[付記項12]
前記溝部の露出する表面に沿う前記弁表面と、前記弁座との間の最大距離は、前記弁表面の前記頂部からの距離が増加するとともにより大きくなる、付記項7に記載の流れ制御システム。
【0064】
[付記項13]
前記弁座および前記弁表面は、前記駆動体の回転により、相対的に軸方向に偏位し、前記溝部および前記弁座により形成される前記通路の寸法は、係る軸方向偏位により変更される、付記項7〜付記項12のいずれかに記載の流れ制御システム。
【0065】
[付記項14]
前記弁座および前記弁表面の少なくとも1部分は、流体が前記溝部および前記弁座の間に形成された前記通路を通って流れるとき、密閉係合に保たれる、付記項7〜付記項13のいずれかに記載の流れ制御システム。
【0066】
[付記項15]
前記弁部材は、取り付けリングに接続された弁茎を備え、前記弁部材は、前記弁茎の上方端部において前記弁茎を前記取り付けリングに接続する結合部により画定された複数の窓部を有し、前記取り付けリングは、前記点滴筒の、半径方向内側に突起する棚状部上に着座する、付記項1〜付記項14のいずれかに記載の流れ制御システム。
【0067】
[付記項16]
前記弁茎は、円錐形状且つ中空であり、その長さに沿って提供された細長いスリットを含み、前記スリットは、前記弁表面の上方に離間する下方端部において終端する、付記項15に記載の流れ制御システム。
【0068】
[付記項17]
前記駆動体は、駆動部材と通信するギア部材により作動され、前記駆動部材は電子流れ調節器により制御される、付記項1〜付記項16のいずれかに記載の流れ制御システム。
【0069】
[付記項18]
前記電子流れ調節器と通信する点滴カウンタをさらに備える、付記項17に記載の流れ制御システム。
【0070】
[付記項19]
前記弁部材は、前記点滴筒の内側壁部の半径方向内側に突起する棚状部上に着座する、半径方向外側に突起する環状リップを含む、付記項1〜付記項18のいずれかに記載の流れ制御システム。
【0071】
[付記項20]
前記点滴筒の前記内側壁部は、前記半径方向内側に突起する棚状部の上方に、前記半径方向外側に突起する環状リップ上に提供された環状壁部の高さよりも少なくともわずかにより大きく離間する、半径方向内側に向けられたリブを含む、付記項19に記載の流れ制御システム。
【0072】
[付記項21]
点滴筒を通る流体の流れを調節するための方法であって、
点滴筒の上方壁部区画および下方壁部区画と回転可能に係合する駆動体を、前記点滴筒に対して回転することにより、前記上方壁部区画および前記下方壁部区画の間で延長する折り畳み可能な壁部を、組み込まれた弁座が弁表面と密閉的に係合する折り畳み状態と、前記弁座が前記弁表面から十分に離間することにより、流路を前記弁表面と前記弁座との間に形成し、そこを通る流れを許容する拡張状態との間で動かすことを含む、方法。
【0073】
[付記項22]
前記駆動体は、その間の相対的軸方向運動を伴わずに、前記上方壁部区画に対して回転し、その間の相対的軸方向運動を伴って、前記下方壁部区画に対して回転する、付記項21に記載の方法。
【0074】
[付記項23]
前記駆動体は、その間の相対的軸方向運動を伴って、前記下方壁部区画に対して回転し、その間の相対的軸方向運動を伴って、前記下方壁部区画に対して回転する、付記項21に記載の方法。
【0075】
[付記項24]
前記弁表面は、前記弁表面に溝部を有し、前記拡張状態においては、前記弁座は前記弁表面から十分に離間して、前記溝部および前記弁座により画定される流体通路が形成され、前記溝部のみを通る流れが許容される、付記項21に記載の方法。
【0076】
[付記項25]
前記駆動体は、前記点滴筒に対して自動的に回転される、付記項21〜付記項24のいずれかに記載の方法。
【0077】
[付記項26]
前記点滴筒において液滴を計数し、計数された前記液滴に応じて自動的に前記駆動体を回転させることをさらに含む、付記項26に記載の方法。
【0078】
[付記項27]
流れ制御システムであって、
点滴筒と、
前記点滴筒内に配置され、円錐形状領域を含み、その中に少なくとも1つの開口部を有し、前記円錐形状領域は流体受容内部を画定する、円錐形状針部材と、
前記点滴筒に回転可能に取り付けられ、且つ前記点滴筒の、相手側の外ねじを螺刻された下方壁部区画と係合する内ねじを螺刻された領域を含むネジ部材であって、前記外ねじを螺刻された下方壁部区画は、前記点滴筒のベローズ型壁部から下方に、および前記点滴筒の弁座から半径方向外側に延在し、前記ネジ部材を第1方向に回転させると、前記点滴筒前記ベローズ型壁部は、前記弁座が前記少なくとも1つの開口部の下方の前記円錐形状針部材の部分と密閉的に係合する収縮状態から、前記弁座が前記円錐形状針部材の最下方端部から十分に離間することにより、前記流体受容内部からの流体が、前記円錐形状針部材と前記弁座との間の、前記円錐形状針部材における前記少なくとも1つの開口部を通って、且つ前記点滴筒の軸方向に延在する開口部を通って、流れることが許容される拡張状態へと動く、ネジ部材、とを備えるシステム。
【0079】
[付記項28]
流れ制御システムであって、
点滴筒であって、
半径方向内側に突起する棚状部と、
前記半径方向内側に突起する棚状部から下向きに依存するベローズ型壁部と、
前記ベローズ型壁部から下向きに依存する弁座と、
前記弁座から下向きに依存する軸方向に延在する開口部と、
前記ベローズ型壁部の下方に提供され、且つ前記弁座と駆動連通する、外ねじを螺刻された下方壁部区画と、を含む点滴筒と、
摩擦嵌めにより前記点滴筒内に固定された円錐形状針部材であって、円錐形状領域を含み、最下方端部の上方に離間する少なくとも1つの開口部をその中に有し、前記点滴筒の前記ベローズ型壁部が収縮状態にあるとき、前記少なくとも1つの開口部の下方の前記円錐形状針部材の部分は前記弁座により密閉的に係合される、円錐形状針部材と、
前記点滴筒の前記外ねじを螺刻された下方壁部区画と係合する内ねじを螺刻された領域を有し、前記半径方向内側に突起する棚状部の上方で前記点滴筒にも固定されるネジ部材と、を備え、
前記点滴筒の前記ベローズ型壁部は、前記ネジ部材を前記点滴筒に対して回転させることにより、前記収縮状態と拡張状態との間で作動可能であり、前記ベローズ型壁部が前記収縮状態から前記拡張状態へと動くと、前記弁座が、前記円錐形状針部材の最下方端部から離れるように、および前記少なくとも1つの開口部の下方の前記円錐形状針部材の前記部分との密閉的係合から脱するように動く、システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方壁部区画、上方壁部区画、および前記下方壁部区画と前記上方壁部区画との間に延在する折り畳み可能な壁部を有する点滴筒と、
前記下方壁部区画に取り付けられた、下向きに依存する弁座であって、前記点滴筒は、前記弁座と流体連通する下流側開口部を形成する、弁座と、
前記点滴筒内に配置され、前記上方壁部区画に取り付けられ、且つ前記弁座と係合可能である弁表面を有する、弁部材と、
前記上方壁部区画および下方壁部区画に回転可能に係合する駆動体と、を備え、
前記駆動体を第1方向に回転させると、前記点滴筒の前記折り畳み可能な壁部は、前記弁座が前記弁表面と密閉的に係合する折り畳み状態と、前記弁座が前記弁表面から十分に離間することにより、流体通路が前記弁表面および前記弁座の間に形成され、前記点滴筒の前記開口部を通る流れが可能となる拡張状態との間で動く、流れ制御システム。
【請求項2】
前記駆動体の前記回転可能な係合は、前記上方壁部区画および前記下方壁部区画のうちの少なくとも1つに対する、螺合可能な係合を含む、請求項1に記載の流れ制御システム。
【請求項3】
前記弁表面および前記弁座は略円筒形である、請求項1または請求項2に記載の流れ制御システム。
【請求項4】
前記弁表面に提供され、前記流体通路の少なくとも1部分を形成する溝部をさらに含む、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の流れ制御システム。
【請求項5】
前記溝部は、(a)前記弁表面の外周部周りの内向きのテーパー、(b)前記弁座と嵌合する前記弁表面の少なくとも一部に沿った、角度を有する平面切り欠き部、(c)二重の放物曲線形状であって、前記弁表面の頂部から下方の任意の距離xにおける前記溝部の前記表面を前記弁座から分離する最大距離Dは、式
【数1】
により画定され、前記弁表面の頂部においては、D=0であり、前記弁表面の底部においては、D=Dmaxであり、Hは前記弁表面の全長である、二重の放物曲線形状、および(d)前記弁表面の外周部に沿う1つの点を通る垂直軸と一致する曲率中心を有する、3次元的弓形切り欠き部、の形のうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の流れ制御システム。
【請求項6】
前記弁座および前記弁表面は、前記駆動体の回転により、相対的に軸方向に偏位し、前記溝部および前記弁座により形成される前記通路の寸法は、係る軸方向偏位により変更される、請求項4または請求項5に記載の流れ制御システム。
【請求項7】
前記弁座および前記弁表面の少なくとも1部分は、流体が前記溝部と前記弁座との間に形成された前記流体通路を通って流れるとき、密閉係合に保たれる、請求項4〜請求項6のいずれかに記載の流れ制御システム。
【請求項8】
前記弁座および前記溝部以外の前記弁表面は、流体が前記溝部と前記弁座との間に形成された前記流体通路を通してのみ流れることが可能となるよう、密閉係合に保たれる、請求項4〜請求項7のいずれかに記載の流れ制御システム。
【請求項9】
前記弁座は、前記下方壁部区画に対して一体的に取り付けられる、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の流れ制御システム。
【請求項10】
点滴筒を通る流体の流れを調節するための方法であって、
点滴筒の上方壁部区画および下方壁部区画と回転可能に係合する駆動体を、前記点滴筒に対して回転することにより、前記上方壁部区画と前記下方壁部区画との間に延在する折り畳み可能な壁部を、組み込まれた弁座が弁表面と密閉的に係合する折り畳み状態と、前記弁座が前記弁表面から十分に離間することにより、流体流路が前記弁表面と前記弁座との間に形成され、そこを通る流れが可能となる拡張状態との間で動かすことを含む、方法。
【請求項11】
前記駆動体は、その間の相対的軸方向運動を伴わずに、前記上方壁部区画に対して回転し、その間の相対的軸方向運動を伴って、前記下方壁部区画に対して回転する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記駆動体は、その間の相対的軸方向運動を伴って、前記下方壁部区画に対して回転し、その間の相対的軸方向運動を伴って、前記下方壁部区画に対して回転する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記弁表面は、前記弁表面に溝部を有し、前記拡張状態においては、前記弁座は前記弁表面から十分に離間して、前記溝部および前記弁座により画成される流体通路が形成され、流れが前記溝部のみを通ることが可能となる、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記駆動体は、前記点滴筒に対して自動的に回転される、請求項10〜請求項13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記点滴筒において液滴を計数し、計数された前記液滴に応じて自動的に前記駆動体を回転させることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項1】
下方壁部区画、上方壁部区画、および前記下方壁部区画と前記上方壁部区画との間に延在する折り畳み可能な壁部を有する点滴筒と、
前記下方壁部区画に取り付けられた、下向きに依存する弁座であって、前記点滴筒は、前記弁座と流体連通する下流側開口部を形成する、弁座と、
前記点滴筒内に配置され、前記上方壁部区画に取り付けられ、且つ前記弁座と係合可能である弁表面を有する、弁部材と、
前記上方壁部区画および下方壁部区画に回転可能に係合する駆動体と、を備え、
前記駆動体を第1方向に回転させると、前記点滴筒の前記折り畳み可能な壁部は、前記弁座が前記弁表面と密閉的に係合する折り畳み状態と、前記弁座が前記弁表面から十分に離間することにより、流体通路が前記弁表面および前記弁座の間に形成され、前記点滴筒の前記開口部を通る流れが可能となる拡張状態との間で動く、流れ制御システム。
【請求項2】
前記駆動体の前記回転可能な係合は、前記上方壁部区画および前記下方壁部区画のうちの少なくとも1つに対する、螺合可能な係合を含む、請求項1に記載の流れ制御システム。
【請求項3】
前記弁表面および前記弁座は略円筒形である、請求項1または請求項2に記載の流れ制御システム。
【請求項4】
前記弁表面に提供され、前記流体通路の少なくとも1部分を形成する溝部をさらに含む、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の流れ制御システム。
【請求項5】
前記溝部は、(a)前記弁表面の外周部周りの内向きのテーパー、(b)前記弁座と嵌合する前記弁表面の少なくとも一部に沿った、角度を有する平面切り欠き部、(c)二重の放物曲線形状であって、前記弁表面の頂部から下方の任意の距離xにおける前記溝部の前記表面を前記弁座から分離する最大距離Dは、式
【数1】
により画定され、前記弁表面の頂部においては、D=0であり、前記弁表面の底部においては、D=Dmaxであり、Hは前記弁表面の全長である、二重の放物曲線形状、および(d)前記弁表面の外周部に沿う1つの点を通る垂直軸と一致する曲率中心を有する、3次元的弓形切り欠き部、の形のうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の流れ制御システム。
【請求項6】
前記弁座および前記弁表面は、前記駆動体の回転により、相対的に軸方向に偏位し、前記溝部および前記弁座により形成される前記通路の寸法は、係る軸方向偏位により変更される、請求項4または請求項5に記載の流れ制御システム。
【請求項7】
前記弁座および前記弁表面の少なくとも1部分は、流体が前記溝部と前記弁座との間に形成された前記流体通路を通って流れるとき、密閉係合に保たれる、請求項4〜請求項6のいずれかに記載の流れ制御システム。
【請求項8】
前記弁座および前記溝部以外の前記弁表面は、流体が前記溝部と前記弁座との間に形成された前記流体通路を通してのみ流れることが可能となるよう、密閉係合に保たれる、請求項4〜請求項7のいずれかに記載の流れ制御システム。
【請求項9】
前記弁座は、前記下方壁部区画に対して一体的に取り付けられる、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の流れ制御システム。
【請求項10】
点滴筒を通る流体の流れを調節するための方法であって、
点滴筒の上方壁部区画および下方壁部区画と回転可能に係合する駆動体を、前記点滴筒に対して回転することにより、前記上方壁部区画と前記下方壁部区画との間に延在する折り畳み可能な壁部を、組み込まれた弁座が弁表面と密閉的に係合する折り畳み状態と、前記弁座が前記弁表面から十分に離間することにより、流体流路が前記弁表面と前記弁座との間に形成され、そこを通る流れが可能となる拡張状態との間で動かすことを含む、方法。
【請求項11】
前記駆動体は、その間の相対的軸方向運動を伴わずに、前記上方壁部区画に対して回転し、その間の相対的軸方向運動を伴って、前記下方壁部区画に対して回転する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記駆動体は、その間の相対的軸方向運動を伴って、前記下方壁部区画に対して回転し、その間の相対的軸方向運動を伴って、前記下方壁部区画に対して回転する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記弁表面は、前記弁表面に溝部を有し、前記拡張状態においては、前記弁座は前記弁表面から十分に離間して、前記溝部および前記弁座により画成される流体通路が形成され、流れが前記溝部のみを通ることが可能となる、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記駆動体は、前記点滴筒に対して自動的に回転される、請求項10〜請求項13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記点滴筒において液滴を計数し、計数された前記液滴に応じて自動的に前記駆動体を回転させることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2013−512044(P2013−512044A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541204(P2012−541204)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/058080
【国際公開番号】WO2011/066443
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/058080
【国際公開番号】WO2011/066443
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】
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