説明

流体の流れ計測装置

【課題】可燃性ガス、或いは誤作動を起こすような腐食性のガスが存在する領域においても被測定流体を安定して計測できるようにしたものである。
【解決手段】被測定流体が流れる計測流路1の上、下流側に配置した1対の超音波送受波器2,3と、前記超音波送受波器間の超音波伝播時間を測定する計時手段4と、前記超音波伝播時間に基づき被測定流体の流速および/または流量を演算する演算手段5とを具備し、前記超音波送受波器2,3の端子部6,7、計時手段4および演算手段5を密閉手段で密閉し大気と遮断したものである。密閉手段は、例えば、隔壁で区画された密閉空間11a,11bで構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流速および/または流量を超音波を用いて計測するようにした流体の流れ計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の超音波式の流体の流れ計測装置は、例えば、図9に示すように、計測流路101の上流側と下流側に一対の超音波送受波器102,103を配置するとともに、これら超音波送受波器102,103間の超音波伝搬時間を計測する計時手段104や、この計時手段104が計時した伝搬時間に基づき計測流体の流速を演算し、必要に応じてこれに計測流路101の断面積および係数を乗じて流量を演算する演算手段105は、計測流路101とは分離した構成を採っており、かつ、大気に暴露された状態となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−217002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、計測装置の設置環境において、爆発限界の範囲内にある可燃性ガス、或いは故障を誘発し得る腐食性の気体が存在する場合、計時手段、演算手段、超音波送受波器の端子部が暴露しているために、可燃性ガスと接触することで、爆発を起こすとか、腐食性ガスと接触することで腐食を生起して誤作動の要因となる課題を有していた。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、計測装置の設置環境が悪い場合でも、被測定流体の計測を安定的に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明の流体の流れ計測装置は、被測定流体が流れる計測流路の上下流側に配置した1対の超音波送受波器と、前記超音波送受波器間の超音波伝播時間を測定する計時手段と、前記超音波伝播時間に基づき被測定流体の流速および/または流量を演算する演算手段とを具備し、前記超音波送受波器の端子部、計時手段および演算手段を密閉手段で密閉し大気と遮断したものである。
【0007】
これによって、可燃性ガス、或いは誤作動を起こすような腐食性のガスが周囲に存在しても、超音波送受波器の端子部や計時手段および演算手段はこれらガス領域から遮断されるため、被測定流体を安定して計測することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の超音波流速流量計は、如何なる計測環境においても被測定流体を安定して計測することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における流体の流れ計測装置の断面図
【図2】同要部拡大断面図
【図3】同要部の他の例を示す拡大断面図
【図4】同要部のさらに他の例を示す拡大断面図
【図5】同超音波送受波器の製造工程フロー図
【図6】同流体の流れ計測装置の原理説明図
【図7】本発明の実施の形態2における流体の流れ計測装置の断面図
【図8】同実施の形態の他の例を示す要部拡大断面図
【図9】従来の流体の流れ計測装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、被測定流体が流れる計測流路の上下流側に配置した1対の超音波送受波器と、前記超音波送受波器間の超音波伝播時間を測定する計時手段と、前記超音波伝播時間に基づき被測定流体の流速および/または流量を演算する演算手段とを具備し、前記超音波送受波器の端子部、計時手段および演算手段を密閉手段で密閉し大気と遮断したものである。
【0011】
これによって、可燃性ガス、或いは誤作動を起こすような腐食性のガスが周囲に存在しても、超音波送受波器の端子部や計時手段および演算手段はこれらガス領域から遮断されるため、被測定流体を安定して計測することができる。
【0012】
密閉手段は隔壁で区画された密閉空間で構成することが考えられ、この場合、隔壁を計測流路と一体的に形成することが望ましい。
【0013】
また、超音波送受波器の端子密閉構成としては、同端子を絶縁体で被覆してもよく、この場合、超音波送受波器から導出された2本の端子線を絶縁体で同時に被覆するものとか、2本の端子線を絶縁体でそれぞれ個々に被覆するものが考えられよう。
【0014】
さらに、1対の超音波送受波器を計測流路の同一側に配置して一方の超音波送受波器から送信された超音波を一旦計測流路内面で反射させて他方の超音波送受波器で受信させる構成でもよく、具体的には、隔壁で区画された密閉空間に一対の超音波送受波器のそれぞれの端子部および計時手段、演算手段を配置する。
【0015】
或いは、隔壁を枠状として一面を開放し、この開放部を蓋板で閉じるようしてもよい。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1において、被計測流体が流れる計測流路1の上下流側に1対の超音波送受波器2,3を配備し、前記計測流路1を流れる被計測流体中を超音波が斜めに横切るようにしてある。
【0018】
超音波送受波器2,3間の超音波伝搬時間は計時手段4で計測され、それに基づき演算手段5が被計測流体の流速を演算し、必要に応じて計測流路1の断面積および係数を乗じて流量に換算するようにしている。
【0019】
そして、前記超音波送受波器2、3の端子部6,7、計時手段4、演算手段5、および計測流路1の出入部を除く部位は筐体8の内部に設置されて流れ計測装置9を構成している。
【0020】
ここで、計測流路1の路壁と一体に隔壁10a,10bが形成され、その内部に密閉空間11a,11bが設定されており、一方の密閉空間11aには先の超音波送受波器2の
端子部6、計時手段4、演算手段5、他方の密閉空間11bには超音波送受波器3の端子部7がそれぞれ隔離されている。
【0021】
図中の矢印は、被測流体の流れを示している。
【0022】
計測流路1および隔壁10a,10bは、例えばアルミ、銅などの電波遮蔽部材で形成するのが好ましい。具体的にいえば、アルミダイキャストADC12材を用いて鋳造によって製造する。
【0023】
超音波送受波器端子部の密閉構成に関し、以下、図2を用いて詳細に説明する。
【0024】
図2において、超音波送受波器3は、絶縁性弾性体12を介して計測流路1の開口部に挿入され、固定具13およびねじ14によって計測流路1の路壁固定されている。
【0025】
また、超音波送受波器3は、キャップ状の導電性ケース15の内頂面に圧電体16を、計測流路1に臨む外頂面に音響整合体17をそれぞれ接着するとともに、開放部を導電性の端子板18により閉塞した構成で、この端子板18を電気絶縁的に貫通する端子線7aの先端が圧電体16の一方の電極に接続されている。
【0026】
圧電体16の他方の電極は導電性ケース15と端子板18および同端子板18に取付けた端子線7bに電気的に接続されている。
【0027】
前記端子線7a,7bは各リード線19a,19bを介して一旦密閉空間11bの外に導き出され、その後、再度密閉空間11aに導入されて、その内部に配置した計時手段4に接続されている。勿論、前記導出、導入部はシール材20でシールされていることは今更言うまでもない。
【0028】
以上一方の超音波送受波器3について述べたが、他方の超音波送受波器2についても同様な構成を採用している。但し、その端子部6については計測流路1の路壁をシール材を介して直接的に貫通し、密閉空間11aに配置した計時手段4に接続されている。
【0029】
前記の構成において、計測流路1の路壁と一体に隔壁10a,10bが形成され、その内部密閉空間11aに超音波送受波器2の端子部6、計時手段4、演算手段5が、他方の密閉空間11bに超音波送受波器3の端子部7が隔離されているところから、流れ計測装置9が可燃性ガス、或いは腐食性のガス領域に設置されていても、爆発を起こしたり、腐食を生じることがなく、長期間にわたり安定した流れ計測が行えるものである。
【0030】
図3,4は下流側に位置する超音波送受波器3における端子部7の他の密閉手段を示すもので、すなわち、図3に示す構成は、端子線7a,7bおよびリード線19a,19bの接続部を共通の絶縁体20で被覆して密閉したものである。
【0031】
前記絶縁体20としては、液状絶縁材を固化して形成するものが挙げられる。絶縁材としては、例えば、シリコンポッティング材料、或いは二液性エポキシ材料、光硬化性材料など、腐食性ガス、或いは可燃性ガスに含まれる腐臭剤に対し劣化しない材料であれば特に限定されるものではない。
【0032】
また、図4に示す構成は、端子線7a,7bおよびリード線19a,19bのそれぞれの接続部をチューブ状の絶縁体21a,21bで被覆して密閉したものである。
【0033】
この絶縁体21a,21bとしては、例えば、耐溶剤性を有するスミスチューブなどの
熱収縮チューブを用いることが考えられる。
【0034】
勿論、この例でも、絶縁体21a,21bの材料は腐食性ガス、或いは可燃性ガスに含まれる腐臭剤に対し劣化しない材料であれば特に限定されるものではない。
【0035】
なお、図3,4において図2と同作用を有する構成について同一符号を付し、具体的な説明は先の図2のものを援用する。
【0036】
図5は超音波送受波器2或いは3の製造工程フローを示している。
【0037】
(a)に示すものは、音響整合体17であって、例えば、球状のガラスバルーンを所定の容器内で加振充填し、その隙間にエポキシ樹脂を流し込んで固化、成型し、所定の状態に加工して形成して得たものである。
【0038】
(b)のように、導電性ケース15における頂壁の上面と圧電体16の上とに熱硬化性接着剤からなる接合剤22,23を塗布しておき、(c)のように、導電性ケース15の頂壁上、下面に音響整合体17、および圧電体16を接着固定する。
【0039】
これら接着固定は1〜10kg/cmの加圧条件で行うのが望ましい。
【0040】
また、導電性ケース15の下方開放部を端子板18で閉塞するとともに、それらのフランジ部位を溶接手段で接合する。この際、前記端子板18には端子線7a,7bが予め取付けられている。つまり、一方の端子線7aはガラスハーメチックなどからなる絶縁材24を介して電気的に絶縁状態で端子板18に取付けられ、他方の端子線7bは直接的に端子板18に固定されている。
【0041】
導電性ケース15の下方開放部に端子板18を取付けた状態で、先の端子線7aは接続子25を介して圧電体16の下方電極に接続されるものである。
【0042】
こうして導電性ケース15内が密閉されるが、好ましくは、この密閉空間に不活性ガスであるアルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガスなどを封入しておく。これは、圧電体16の上下電極の劣化、圧電体16と導電性ケース15との接合部分の劣化をなど軽減する役割を果たす。
【0043】
(d)が超音波送受波器2或いは3の完成した状態である。
【0044】
前記導電性ケース15は、鉄、真鍮、銅、アルミ、ステンレス、或いはこれらの合金、または、これらの金属の表面にめっきを施したものである。
【0045】
接合剤22,23は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂など熱硬化性樹脂であれば特に限定されない。場合によっては、熱可塑性樹脂であっても、ガラス点移転が高温使用温度である70℃以下であれば接着剤として使用できる。
【0046】
以上のように、本実施の形態の超音波送受波器2,3は、圧電体16が導電性ケース15内に配置されているため、汚染物質などに対し影響を受けず、特性の安定した性能を発揮させることができる。
【0047】
因みに、図1に示す流体の流れ測定装置の作用を図6を参照しつつ説明する。
【0048】
図6において、Lを超音波送受波器2,3間の超音波伝搬路、Vを計測流路1を流れる
流体の流速、Cを音速、θを流体の流れ方向に対する超音波伝搬路のなす角度とすると、上流側の超音波送受波器2から出た超音波パルスが下流側の超音波送受波器3に到達する伝搬時間t1は、
t1=L/(C+Vcosθ) (1)
となり、次に、下流側の超音波送受波器3から出た超音波パルスが上流側の超音波送受波器2に到達する伝搬時間t2は、
t2=L/(C−Vcosθ) (2)
となる。
【0049】
そして、(1)と(2)の式から流体の音速Cを消去すると、
V=L/2cosθ(1/t1−1/t2) (3)
の式が得られる。
【0050】
Lとθが既知なら、計時手段4でt1とt2を測定すれば、演算手段5で流速Vが演算できる。
【0051】
必要に応じて、この流速Vに計測流路1の断面積Sと補正係数Kを乗じれば、流量Qを求めることができる。
【0052】
以上のように、本実施の形態1においては、被測定流体が流れる計測流路1の上下流側に配置した1対の超音波送受波器2,3と、前記超音波送受波器間2,3の超音波伝播時間を測定する計時手段4と、前記超音波伝播時間に基づき被測定流体の流速および/または流量を演算する演算手段5とを具備し、前記超音波送受波器2,3の端子部6,7、計時手段4および演算手段5を密閉し大気と遮断したことにより、可燃性ガスあるいは誤作動を起こすような腐食性のガスが周囲に存在しても、超音波送受波器2,3の端子部6,7、計時手段4、流量演算手段5に暴露されることがないため、被測定流体を安定して計測することができるものである。
【0053】
(実施の形態2)
図7は実施の形態2を示すもので、図1と同作用を行う部分には便宜上同一符号を付し、具体的な説明は実施の形態1のものを援用する。
【0054】
すなわち、実施の形態と異なるところは、1対の超音波送受波器2,3を計測流路1の同一側に並べて配置し、超音波送受波器2,3のいずれか一方より送信された超音波を一旦計測流路1の内壁面で反射させて超音波送受波器2,3のいずれか他で受信させるようにしたものである。
【0055】
この構成によれば、計測流路1の路壁と一体に隔壁10cを形成し、その内部の密閉空間11cに両方の超音波送受波器2,3の端子部6,7、および計時手段4、演算手段5が配置でき、流れ計測装置9の設置領域から隔離できることとなる。
【0056】
密閉空間11cの構成としては、図8のように、隔壁10cを枠状として一面を開放させ、この開放部を別部材の蓋板26で閉じることも考えられる。
【0057】
前記実施の形態2によれば、超音波送受波器2,3の端子部6,7と計時手段4とを結ぶリード線などを短くでき、しかも前記密閉構成としても確実なものが得られるものである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明にかかる流体の流れ計測装置によれば、安定した計測が可能とな
るり、家庭用流量計、産業用流量計のみならず、空気中に超音波を発生して距離を計測する自動車のバックソナーなどの用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0059】
1 計測流路
2,3 超音波送受波器
4 計時手段
5 演算手段
6,7 端子部
10a,10b,10c 隔壁
11a,11b,11c 密閉空間
20,21a,21b 絶縁体
26 蓋板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定流体が流れる計測流路の上下流側に配置した1対の超音波送受波器と、前記超音波送受波器間の超音波伝播時間を測定する計時手段と、前記超音波伝播時間に基づき被測定流体の流速および/または流量を演算する演算手段とを具備し、前記超音波送受波器の端子部、計時手段および演算手段を密閉手段で密閉し大気と遮断した流体の流れ計測装置。
【請求項2】
密閉手段は隔壁で区画された密閉空間で構成した請求項1記載の流体の流れ計測装置。
【請求項3】
隔壁を計測流路と一体的に形成した請求項2記載の流体の流れ計測装置。
【請求項4】
超音波送受波器から導出された端子を絶縁体で被覆して密閉した請求項1記載の流体の流れ計測装置。
【請求項5】
超音波送受波器から導出された2本の端子線を絶縁体で同時に被覆して密閉した請求項4記載の流体の流れ計測装置。
【請求項6】
超音波送受波器から導出された2本の端子線を絶縁体でそれぞれ個々に被覆して密閉した請求項4記載の流体の流れ計測装置。
【請求項7】
1対の超音波送受波器を計測流路の同一側に配置して一方の超音波送受波器から送信された超音波を一旦計測流路内面で反射させて他方の超音波送受波器で受信させるようにした請求項1記載の流体の流れ計測装置。
【請求項8】
隔壁で区画された密閉空間に一対の超音波送受波器のそれぞれの端子部および計時手段、演算手段を配置した請求項7記載の流体の流れ計測装置。
【請求項9】
隔壁を枠状として一面を開放し、この開放部を蓋板で閉じるようにした請求項8記載の流体の流れ計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−2269(P2011−2269A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143857(P2009−143857)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】