説明

流体センサ装置

本発明は流体管路(20)内に存在する流体(30)の誘電率を検出するための流体センサ装置(1;1′;1″;1;1′″)に関している。この装置はケーシング(5;5′;5″;5′″)と、第1及び第2のコンデンサプレート(8a,8b、8a′,8b′、8a″,8b″、8a′″,8b′″)を備え前記ケーシングの内部に設けられるプレートコンデンサ装置とを有している。前記ケーシングは、その表面に流体管路(20)取付け用の湾曲した取付け領域を有しており、前記第1及び第2のコンデンサプレートは、取付け領域の隣に配設されている。それにより取付け領域に取付けられる流体管路(20)内に存在する流体(30)が少なくとも部分的に前記第1及び第2のコンデンサプレートの間に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体管路内に存在する流体の誘電率を検出するための流体センサ装置に関している。
【背景技術】
【0002】
以下で説明する本発明の構成並びに本発明が解決しようとする課題に関しては、自動車への適用例に基づいて説明するが本発明自体は任意のあらゆる流体装置に適用可能なものであることを先に述べておく。
【0003】
一般に自動車において使用される流体をオンラインで監視する必要性は益々広がっている。特にエンジンオイルや油圧系オイルにおいてはこの種の監視は、オイル交換の最適化を可能にする。例えば自動車の燃料などの流体においてはこの監視はまず第一に、エンジン管理を最適化すべく(例えば良好な排ガス値や良好なエンジン出力のために)、燃料の組成ないし品質をできる限り正確に特定することに用いられる。
【0004】
オットエンジンに対する燃料ないし燃料添加物としてのエタノールないしメタノールはこれまではブラジルにおいて広く普及していた。しかしながらガソリン不足の逼迫や価格の上昇、石油輸出国で考えられる依存関係、工芸作物の利用の重要性、性能における利点などから特に米国にとっては鉱物油燃料とエタノールないしメタノールの混合使用が魅力的に映っている。燃料内のエタノール成分ないしメタノール成分は、エンジン制御装置において既存の信号(例えばラムダセンサ、空気質量流量計の信号)の評価を介して推定することが可能である(ソフトウエア手段)。特定の適用条件(例えば燃料タンク)のもとでは、そのようなソフトウエア手段だけでは所望の精度を達成できないこともあり得る。また今後の法規制や顧客要求に対して既存のソフトウエア手段が十分に対応できなくなることも考えられるし、既存のセンサ信号への要求がさらに先鋭化する可能性も考えられる。このようなこともシステムコストの著しい増加の要因となり得る。
【0005】
これまでの例えばDE4034471C1明細書またはUS4,915,084明細書から公知の流体センサは、流体の誘電率測定のために容量性の構造を有しているが、大量生産には向いていなかった。なぜならそれらは一方ではコストが過度に高く、他方では流体内に設置しなければならないからである。
【0006】
FR2800872A1明細書からも流体の誘電率を確定するためのセンサが公知である。この公知のセンサでは白金コンデンサ装置の金属電極が絶縁すべき流体管路の表面に設置され、相応の評価回路に接続されている。しかしながらこの種の解決手段も自動車分野への適用には不向きである。なぜならそれらの電極が保護されていないからである。
【0007】
発明の利点
従来技術の解決手段に対して請求項1に特定されている本発明による流体センサ装置は、構造が簡単な上に取付けも容易で、後付け装備についても何の問題も生じない。
【0008】
本発明による流体センサ装置のケーシングの内部では、流体管路に対する湾曲した取付け領域下方で2つのコンデンサプレートが少なくとも部分的に相対向して次のように取付けられる。すなわち取付けする流体管路内に存在する流体が少なくとも部分的に第1のコンデンサプレートと第2のコンデンサプレートの間に位置するように取付けられる。この有利にはプラスチック成形体として形成されているケーシングは、前記コンデンサプレートの安定した取付けと周辺環境からの攻撃的な影響から当該コンデンサプレートを保護する役割を果たす。このケーシングと流体管路の接続は、有利には流体管路をケーシングの凹部にクランプするか、ないしは流体管路をケーシングの引込み孔部に通すことで行われる。ケーシングの内部ではこの凹部ないし引込み孔部の湾曲領域に沿って前記コンデンサプレートが保持される。本発明による流体センサ装置は流体管路内の流体の通流を損なわせる作用は何も持っていない。
【0009】
この種の流体センサ装置は例えばガソリン内のエタノール成分ないしメタノール成分を確定、ないしはディーゼル燃料内のバイオディーゼル成分の確定のための誘電率の測定を可能にする。有利には評価回路もケーシング内に収納され、この評価回路によってその集積された評価回路内で信号の評価と処理並びに必要に応じて温度測定や測定された流体の誘電率の温度補償も実施し得る。自動車分野へ適用するケースでは、市販のあらゆるタイプの自動車に簡単に後付け装備することが可能である。
【0010】
従属請求項に記載されている特徴部分は本発明の対象の有利な発展形態ないし改善形態を表している。
【0011】
本発明の有利な実施形態によれば、ケーシングの表面領域の取付け領域が当該ケーシングを貫通する引込み孔部内に存在する。流体管路がこの孔部に押し込まれることによって流体管路のさらなる付加的な固定を省くことができるようになる。
【0012】
さらに別の有利な実施形態によれば、ケーシングの表面領域の取付け領域がケーシング表面の凹部内にある。このケースでは有利にはこの凹部に対してクランプがケーシングにおいて流体管路が当該凹部とクランプの間でケーシングに取付けられるように固定される。このことは流体管路の取外しを強いることのない容易な後付けを可能にする。
【0013】
別の有利な実施形態によれば、第1及び第2のコンデンサプレートが平らに形成され、取付け領域の湾曲線に対する接線に沿って配設される。
【0014】
さらに別の有利な実施形態によれば、ケーシングが実質的に円筒状の構造を有し、引込み孔部が実質的に当該円筒部の軸線に並行して延在する。
【0015】
さらに別の実施形態によれば、ケーシングが実質的に半円筒状の構造を有し、この場合凹部が実質的に円筒部の軸線に並行して延在する。
【0016】
さらに別の有利な実施形態によれば、ケーシングが流体管路取付けのためのクランプ可能な半円筒状のシェルから形成されている。
【0017】
本発明の実施例は図面に示されており、以下の明細書で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1a】本発明による流体センサ装置の第1実施形態の概略的な縦断面図
【図1b】本発明による流体センサ装置の第1実施形態の概略的な横断面図
【図2】本発明による流体センサ装置の第2実施形態の概略的な横断面図
【図3】本発明による流体センサ装置の第3実施形態の概略的な横断面図
【図4】本発明による流体センサ装置の第4実施形態の概略的な横断面図
【0019】
実施例の説明
図1aには自動車の燃料管路が符号20で示されており、さらにその管路内を通流方向Fに向かって流れている燃料、例えばガソリン/エタノール混合燃料が符号30で示されている。
【0020】
本発明による流体センサ装置1の第1実施例は、ケーシング5の内部に設けられたプレート型コンデンサ装置を有しており、このコンデンサプレート装置は第1のコンデンサプレート8aと第2のコンデンサプレート8bを備えている。ケーシング5は円筒状の構造を備えた燃料用成形体であり、この円筒部の軸線に並行して延在している引込み孔部5aを有している。この引込み孔部5aを燃料管路はケーシング壁部と面一に当接するように通されている。2つの相対向しているコンデンサプレート8a,8bは、外部電圧の印加のもとで電界Eを形成し、この電界Eの中を燃料が通過する。例えば燃料30のエタノール成分は、燃料/エタノール混合燃料の誘電率を用いて(場合によっては温度も考慮して)確定することが可能である。この場合ガソリンの誘電率ε=2.0〜2.1であり、エタノールの誘電率ε=25.3である。信号の評価は同じ様にケーシング5内に収容されている評価回路40において実施される。この評価回路40はケーシング5の突起部55に包含されている。この突起部55の端部には電気的なプラグ装置45が差込み可能であり、このプラグ装置45が評価回路40の信号を信号線路50に供給する。
【0021】
図1bから明らかなように、第1及び第2のコンデンサプレート8a,8bは、湾曲に形成されており、さらにケーシングの壁部領域(流体管路に対する取付け領域)の湾曲ラインに沿って並行するように引込み孔部5a内に配設されている。
【0022】
それにより第1実施形態の流体センサ装置は非常にコンパクトに構成され、燃料30の通流を損なうことなく評価電子回路を外部からの不所望な影響から保護し、燃料管路20を通すことで簡単に取付けることが可能である。但しこれに対しては燃料管路を一旦取外す必要がある。
【0023】
図1a,bには示していないが、流体管路20に対する流体センサ装置1の不所望なずれ(滑り)を回避するために、当該流体センサ装置の両側で燃料管路20にストッパを設けることも可能である。いずれにせよ燃料管路20が軽い抵抗圧を伴って引込み孔部5aに挿入されている場合には、このような処置は通常は不要である。また僅かなずれを許容するようにしてもよい。なぜなら流体センサ装置の燃料管路上の位置は、燃料の誘電率を測定する上では重要ではないからである。
【0024】
図2には、本発明による流体センサ装置の第2実施例が概略的な断面図で示されている。
【0025】
第2実施例による流体センサ装置1′は、前述した第1実施例による流体センサ装置1と次の点でのみ異なっている。すなわちケーシング5′内で成形ないし挿入されている第1及び第2コンデンサプレート8a′,8b′の形態が異なっているのみである。これらのコンデンサプレート8a′,8b′は平らに形成され、実質的に引込み孔部5aの湾曲線に対する接線に沿って配設されている。
【0026】
前記第1実施例による流体センサ装置においても第2実施例による流体センサ装置においても流体30は燃料の形態で完全に第1及び第2コンデンサプレート8a,8bないし8a′,8b′の間に配置されている。
【0027】
図3には本発明による流体センサ装置の第3実施例が概略的な断面図で示されている。
【0028】
この第3実施形態による流体センサ装置1″は、前記第1実施形態及び第2実施形態による流体センサ装置に比べてケーシング5″の構造が異なっている。このケーシング5″もプラスチック成形体であるが、円筒状の形態ではなく、半円筒状のシェル形状の構造を有している。ここでは凹部59が設けられており、この凹部の中に燃料管路20が配置されている。燃料管路20の配設は金属性の押圧クリップ60を用いて行われる。この押圧クリップ60はプラスチック性のケーシング5″に固定されている。この固定クリップ60の第1の端部にはヒンジ64が設けられており、さらに第2の端部には解離可能な固定装置62が設けられている。この解離可能な固定装置62は、例えばネジであってもよいし、クランプであってもよい。押圧クリップ60が閉じられている状態では燃料管路20は凹部内に面一に位置する。燃料管路の取付けに際しては押圧クリップ60を開いた後で燃料管路20を載置し、再びこの押圧クリップ60を閉じることで行われる。つまりこの配置構成では燃料管路20を通すための取外しは不要である。
【0029】
コンデンサプレート8a″,8b″は前記第2実施例の形態のようにケーシング5″の内部に構成され、同じように前記凹部の湾曲線に対する接線に沿って配設されている。いずれにせよこの実施形態では、コンデンサプレート8a″,8b″の間に燃料30の横断面部分の全てが位置しているのではなく、横断面部分の約2/3の部分のみがコンデンサプレート8a″,8b″の間に位置しているだけである。このことは当該ケーシングの半円筒状のシェル形状の構造に起因しているが、しかしながらこのことは測定信号の品質に何等影響を与えるものではない。
【0030】
集積された評価回路40とそこに取付けられるプラグ装置45を伴った突起部55は、既に前述した前記実施形態の突起部に相応するものである。
【0031】
図4には本発明による流体センサ装置の第4実施例が概略的な断面図で示されている。
【0032】
この第4実施形態による流体センサ装置1′″も半円筒状のシェル形状のケーシングを有している。第3の実施形態との唯一の違いは、コンデンサプレート8a′″,8b′″が湾曲構造を有し、実質的に凹部59の湾曲線に対する接線に沿って配置されていることである。この第4の実施形態におけるコンデンサプレート8a′″,8b′″はそれらの端面側が相互に相対向するように構成されているのではなく、互いに僅かに曲げられて構成されている。それによりそれらはそれらの一方の側から他方の側へのプレート間隔が変化しているプレートコンデンサを形成する。しかしながらこの種のコンデンサプレート8a′″,8b′″の配置構成でも信号品質には何等影響はない。
【0033】
本発明は前述の有利な実施形態に基づいて説明したが、これは本願がそれらの実施形態に限定されることを意味するものではなく、それ以外の形態で実施されることも可能である。
【0034】
例えば、ケーシングを2つの半円筒状のシェル形状に形成することも可能である。この流体管路取付け用の2つのシェル形状部分はヒンジを介して開かれる。
【0035】
もちろんケーシングの半円筒状の構造の他にもケーシングの中空円筒状の構造ないしは流体管路のための湾曲した取付け領域を備えたその他のケーシングの構造も可能である。またケーシング内部において流体管路用取付け領域の横ないしは下方へのコンデンサプレートの配置構成も広範な限界内で変更することが可能である。さらに2つのコンデンサプレートについてもそれ以上の数を適用することが可能である。
【0036】
最後に前述の実施形態は全て自動車分野において燃料管路内に存在する燃料の誘電率の測定に基づいて説明してきたが、本願発明はそのようなものに限定されるものではなく、任意の流体管路内の任意の流体に対して適用可能なものであることを述べておく。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管路(20)内に存在する流体(30)の誘電率を検出するための流体センサ装置(1;1′;1″;1;1′″)であって、
ケーシング(5;5′;5″;5′″)と、
第1及び第2のコンデンサプレート(8a,8b、8a′,8b′、8a″,8b″、8a′″,8b′″)を備え、前記ケーシング(5;5′;5″;5′″)の内部に設けられるプレートコンデンサ装置を有し、
前記ケーシング(5;5′;5″;5′″)は、その表面に流体管路(20)取付け用の湾曲した取付け領域を有しており、
前記第1及び第2のコンデンサプレート(8a,8b、8a′,8b′、8a″,8b″、8a′″,8b′″)は、取付け領域の隣に次のように配設されている、すなわち、取付け領域に取付けられる流体管路(20)内に存在する流体(30)が少なくとも部分的に前記第1及び第2のコンデンサプレート(8a,8b、8a′,8b′、8a″,8b″、8a′″,8b′″)の間に配置され、さらに、
ケーシング(5;5′;5″;5′″)の表面領域の取付け領域は、当該ケーシング(5;5′;5″;5′″)表面にある凹部(59)内にある形式の流体センサ装置において、
流体管路(20)が前記ケーシング(5;5′;5″;5′″)の凹部(59)とクリップ(60)の間に取付けられるように前記凹部(59)に対してクリップ(60)がケーシングに固定可能であることを特徴とする流体センサ装置。
【請求項2】
前記ケーシング(5;5′;5″;5′″)の表面領域の取付け領域は前記ケーシング(5;5′;5″;5′″)を通って延在する引込み孔部(5a)内に存在する、請求項1記載の流体センサ装置。
【請求項3】
前記クリップ(60)の第1の端部はヒンジ(64)を有しており、さらに第2の端部は解離可能な固定装置(62)を有している、請求項1記載の流体センサ装置。
【請求項4】
前記クリップ(60)は、金属性の押圧クリップである、請求項1から3いずれか1項記載の流体センサ装置。
【請求項5】
前記第1及び第2のコンデンサプレート(8a,8b、8a′,8b′、8a″,8b″、8a′″,8b′″)は平らに形成され、実質的に取付け領域の湾曲線に対する接線に沿って配設されている、請求項1から4いずれか1項記載の流体センサ装置。
【請求項6】
前記第1及び第2のコンデンサプレート(8a,8b、8a′,8b′、8a″,8b″、8a′″,8b′″)は湾曲に形成され、実質的に取付け領域の湾曲線に対して並行に配設されている、請求項1から4いずれか1項記載の流体センサ装置。
【請求項7】
前記ケーシング(5;5′;5″;5′″)は実質的に円筒状の構造を有し、引込み孔部(5a)が実質的に当該円筒部の軸線に並行に延在している、請求項2記載の流体センサ装置。
【請求項8】
前記ケーシング(5;5′;5″;5′″)は実質的に半円筒状の構造を有し、前記合凹部(59)は実質的に円筒部の軸線に並行に延在している、請求項1記載の流体センサ装置。
【請求項9】
前記ケーシング(5;5′;5″;5′″)は突起部(55)を有し、該突起部にはプレート状コンデンサ装置の一方に接続された評価回路(40)が少なくとも部分的に収容されている、請求項1から8いずれか1項記載の流体センサ装置。
【請求項10】
前記突起部(55)の端部には電気的なプラグ装置(45)が取付け可能である、請求項9記載の流体センサ装置。
【請求項11】
前記ケーシング(5;5′;5″;5′″)は、プラスチック成形体である、請求項1から10いずれか1項記載の流体センサ装置。
【請求項12】
前記ケーシング(5;5′;5″;5′″)は流体管路(20)の取付けのために開かれる2つの半円筒状のシェルから形成されている、請求項2記載の流体センサ装置。
【請求項13】
自動車の燃料管路(20)内に存在する燃料(30)の誘電率を検出するために請求項1から12いずれか1項記載の流体センサ装置を適用する方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−529441(P2010−529441A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510731(P2010−510731)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056392
【国際公開番号】WO2008/148653
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】