説明

流体ディスペンサヘッド

流体貯蔵器(1)と組み合わされる流体ディスペンサヘッドであって、前記貯蔵器に形成された、あるいは、当該貯蔵器に取り付けられる静止ベース部(2)と、ベース部(2)に回転可能な様態で取り付けられる回転アクチュエータ部材(3)であって、回転軸を中心に回転して両端の2つの接触位置の間を移動するように取り付けられた前記アクチュエータ部材(3)と、そして、前記部材をベース部上で回転させることによって選択的に閉じることが可能なディスペンサ開口部(30)と、を有する。特徴となるのは、両端の2つの停止位置がディスペンサ開口部の2つの開位置を規定し、これら開位置は、ディスペンサ開口部が閉じた状態となる、少なくとも1つの位置によって隔てられていること、そして、ディスペンサ開口部(30)が前記部材のベース部上での回転軸上に位置すること、である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体貯蔵器と組み合わせる流体ディスペンサヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスペンサヘッドは一般に、貯蔵器に形成された、あるいは、その上に取り付けられた静止ベース部を有する。加えて、ヘッドは回転アクチュエータ部材を有し、当該部材は、軸を中心に回転して両端の2つの接触位置の間を移動するように、ベース部の上で回転可能な形に取り付けられている。さらに、ヘッドは、アクチュエータ部材をベース部上で回転させることによって選択的に閉じることが可能なディスペンサ開口部を有する。こうしたディスペンサヘッドは、貯蔵器に格納された流体(液体、粒子または粉末の形を取るもの)を投与するための駆動可能閉鎖システムにおいて用いられることが多い。こうしたヘッドの効果的な用途は、食品業界、スキンケア、特に化粧品の分野にある。ただし、その他の分野が排除されるわけではない。
【0003】
一般に、このような、ベース部と回転アクチュエータ部材とを有するディスペンサヘッドは、アクチュエータ部材をベース部上で回転させることによって、開位置と閉位置との間を動かす形で駆動できる。また、回転部材をベース部上で回転させることで、閉位置では閉じている1つ以上のディスペンサ開口部の口を開いたり、これを開けたりできる、という形が知られている。また、断面積の異なる複数のディスペンサ開口部を備え、それによって、流体がディスペンサ開口部を通って流れる際の流速を変えることができる、というヘッドも知られている。しかし、本発明は、単一のディスペンサ開口部を有するディスペンサヘッドに関する(ただし、開口部それ自体が複数の穴を有している)。このように単一のディスペンサ開口部を有するディスペンサヘッドでは、アクチュエータ部材の回転によって可能なのは、両端の2つの接触位置の間で、単にディスペンサ開口部を開閉することだけである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、単一のディスペンサ開口部を有するディスペンサヘッドであって、ディスペンサ開口部のモジュール式(modular manner)での使用を可能にする、というヘッドを規定することである。また、本発明はさらに、段階的な様態でディスペンサ開口部を開けることを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの目的を達成するために、本発明が提案するのは、アクチュエータ部材のベース部上での回転において、両端の2つの接触位置がディスペンサ開口部の2つの開位置を規定し、それらが両者の間に少なくとも1つある閉位置(ディスペンサ開口部が閉じている位置)によって隔てられている、という構成である。
【発明の効果】
【0006】
こうした構成により、ベース部上でアクチュエータ部材を時計回り方向または反時計回り方向に回転させるだけで、2つの開位置が得られ、効果的な構成として、それら開位置は閉位置を挟んで対称的な形で配置されている。2つの開位置については、同一の流体流量特性をもたらすこととし、2つの位置は完全に対称的であり同等である、としてもよい。しかし、本発明では、流体がディスペンサ開口部を通って流れる際の流速を、一方の開位置から他方の開位置までで変化させることを可能にする流速変化手段を更に有する。その結果、所定の長さの時間において、一方の開位置では、もう一方の開位置よりも多くの流体を投与することが可能となる。こうして、流体はディスペンサ開口部を通ってモジュール式で投与される。
【0007】
効果的な実施の形態では、ディスペンサ開口部の位置は、ベース部上での前記部材の回転軸上となっている。従って、本発明のディスペンサヘッドが取り付けられるディスペンサや包装は、単一の軸中央ディスペンサ開口部を備えた、従来通りの塩入れや胡椒入れの形をしている。
本発明の、別の効果的な特性によれば、前記部材がベース部上で回転している間に、ベース部に対して前記部材を軸方向に移動させることができる軸方向移動手段を更に有する。
【0008】
また、効果的な構成として、軸方向移動手段は、低位部分で一体に接続された2つのセクションが見られるガイド経路を少なくとも1つ有し、2つのセクションの各々には端接触部が形作られ、当該接触部は各々が2つの開位置のいずれかに対応しており、前記低位部分は閉位置に対応している。また、好ましい構成として、ベース部には軸方向回転ガイドウィンドウが少なくとも1つ形成され、当該ウィンドウはベース部の周囲の一部にわたって延びており、前記ウィンドウはガイド経路を形作り、また、前記ウィンドウには2つの接合されたウィンドウセクションが形成されており、第1セクションは第1のスロープを形作り、第2のセクションは、第1のスロープとは異なる第2のスロープを形作り、各セクションには接触端部が形作られ、これら接触端部は軸方向に位置がずれており、アクチュエータ部材は、少なくとも1つの軸方向回転ガイドラグを有し、当該ラグは前記ウィンドウに嵌まり、それによって、アクチュエータ部材がベース部上で回転させられている間、前記少なくとも1つのラグは、それに対応するウィンドウの中で移動することで、アクチュエータ部材を軸方向に移動させ、それにより、ラグが第1セクションまたは第2セクションのいずれに対して接しているかに応じて、異なる高さに達する。そして、流量を変化させるために、前記複数のスロープは、傾斜および/または長さが異なっていること、としてもよい。また、実際的な実施の形態では、ベース部はリングを有し、当該リングの周囲には複数の軸方向回転ガイドウィンドウが分散配置された形で形成されており、カバーはリングを囲む形に延びたスカートを有し、当該スカートには、その内側に、複数の軸方向回転ガイドラグが形成されており、当該ラグはいずれかのウィンドウに嵌まる。
【0009】
また、本発明の別な側面では、部材にはディスペンサ開口部が、そして、ベース部には閉鎖ピンが形成されており、当該ピンは、閉位置ではディスペンサ開口部に嵌まっており、2つある開位置では、位置ごとに異なる量だけ開口部から外れ、それによって、開口部を通る流速を2つの開位置で変化させる。ピンをディスペンサ開口部からずらす際のずらし幅に大小の差をつけることで、一方の開位置における流量と他方の開位置における流量とを異なる値にすることができる。さらに厳密に言えば、こうしてずらし幅に大小の差をつけることによって、単一のディスペンサ開口部からすぐ下流での流体の流れ面積(flow section)を変化させることができる。また、効果的な構成として、アクチュエータ部材は軸方向ガイド手段を有し、当該手段は、ピンを囲む形で嵌められ、それによって、ピンは、前記軸方向ガイド手段の中でスライド移動できるように設置された形となり、前記ガイド手段はディスペンサ開口部の周囲から下方向に延び、また、前記ガイド手段は複数のスロットを形成し、当該スロットは、軸方向ガイド手段の中でのピンの位置に従ってサイズが変化すること、とする。また、実際的な実施の形態では、軸方向ガイド手段は、ディスペンサ開口部の外周部から下向きに延びた複数のタブを有し、前記タブは、スライド移動可能な形でピンを囲む状態で嵌められているスクレーパによって接合されていること、とする。また、ベース部は内部スリーブを有し、当該スリーブの内部にピンが延びており、アクチュエータ部材は、スリーブの上に配置されてディスペンサ開口部が形成されている、というカバーを有し、前記カバーは環状リップを有し、当該リップは、前記スリーブと、回転スライド運動型の耐漏洩接触の状態にある、としてもよい。また、本発明の別の特性によれば、アクチュエータ部材は、ベース部によってブロックされる分離可能安全タブを有し、それによって、閉位置では、アクチュエータ部材のベース部上での回転は防止される。
【0010】
したがって、アクチュエータ部材をベース部上で、中間の閉位置から一方の端、そして他方の端まで回転させることによって、それぞれにおけるアクチュエータ部材の軸方向の高さが異なる、という2つの開位置が得られる。こうした結果となるのは、両端の接触部のうち一方が、他方よりも軸方向に見て高い位置にある、という事実による。これは、ディスペンサ開口部におけるピンのずれ幅の大きさに直接的な影響を与えるので、流量を変化させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について、非限定的な例として本発明の実施の形態を示す添付図面を参照しながら、さらに詳細に説明する。
本発明のディスペンサヘッドが取り付けられる流体ディスペンサは、流体(例えば、塩、クリーム、またはシャンプー)を格納した貯蔵器1を有するものである。さらに一般的に言えば、流体としては、液体、粒子または粉末が考えられる。貯蔵器1には、その頂上側端部に、スナップ留めグルーブ11および肩12が形成されており、肩12は径方向内向きに延びて、その終端はネック13となっている。ネック13によって開口部が形作られており、これが、貯蔵器に格納された流体をそこから取り出すことを可能にする。貯蔵器は、本発明にとって重要な構成要素ではなく、形状やサイズはどんなものでもよい。スナップ留めグルーブ11ならびに肩12およびネック13についてすら、本発明の範囲から逸脱しない形で、異なる形状を示すものにすることができる。
【0012】
本実施の形態では、貯蔵器1は、2つの構成要素部材、すなわち、ベース部2と回転アクチュエータ部材3とを有したディスペンサヘッドに組み合わされている。本実施の形態では、ベース部2は貯蔵器1の上に設置されているが、ベース部2を貯蔵器1とを単一部分として一体的に製造することも考えられる。本実施の形態では、ディスペンサヘッドは2つの構成要素部材を有するが、本発明の範囲を越えない実施の形態として、ディスペンサヘッドがより多くの構成要素部材を有する場合もいくつかあるだろう。しかし、成形および組立の観点からは、2つの構成要素部材を有する実施の形態が効果的である。
【0013】
いずれの図を見ても分かるように、ベース部2は、下側末端部分211の形作られた内部スリーブ21を有し、当該部分211は、ネック13の内側と耐漏洩接触している。この耐漏洩接触は固定的な耐漏洩接触であるが、それは、ベース部2が貯蔵器1の上に固定的な様態で設置されるように設計されていることによる。スリーブ21には内部通路が形作られているが、これは、スリーブがネック13内部に配置されると、貯蔵器1の内部に直接つながる。外側頂上端部201の形作られたピン20が、スリーブ21の軸方向に見て内側に、中心にくる形で配置されている。保持用リブ202がスリーブ21の内壁をピン20に接続する。ピン20については、その頂上端部201から円筒形をした外壁を有するのが好ましい。スリーブ21は、その頂上端部においてリング22に接続しており、当該リングはスリーブ21を囲む形で、これと同軸に延びている。いくつかの図(特に図2)において見られるように、リング22は複数のウィンドウ221を備え、それらはリング22の壁に開口部を形成している。ウィンドウ221は、本実施の形態での数は3つであるが、各々がガイド経路を形成している。ウィンドウは、リング22の周囲に沿って、均一な角間隔で配置されている。各ウィンドウ221は、実質的にV字の形をしており、尖った部分が下を指している。そうして、各ウィンドウ221には、第1ウィンドウセクション2211と第2ウィンドウセクション2212とが規定されている。各々のセクションは、実質的にまっすぐなスロープまたはランプ(ramp)の形をしているが、水平方向または垂直方向に対して傾いている。つまり、各セクションには、所定の長さ、所定のプロフィール、そして所定の傾斜度を有したスロープ2215、2216が見られる。2つのスロープの傾斜度は同一とすることもできるが、本発明では、2つのスロープの傾斜度は異なるものとするのが好ましい。第1セクション2211に見られるスロープの有する傾斜度は、第2ウィンドウセクションのスロープの傾斜度よりも小さくなっている。さらに、ウィンドウセクション2211、2212は、低位部分2210で接続されて一体化している。その反対側の端部に、各ウィンドウセクションは接触端部2213、2214を有し、これがウィンドウセクションの両端の境界を規定している。本実施の形態では、接触端部2213、2214は低位部分2210から等しい距離にあり、それによって各ウィンドウセクションは同一の長さとなっている。ウィンドウセクションのスロープの傾斜度が異なり、しかも、それらの長さが同一であるため、接触端部2213、2214は共通の平面上には位置しないこととなり、それどころか、軸方向にずれた位置にある。また、第2セクションのスロープの傾斜度が第1セクション2211のスロープの傾斜度よりも大きいため、接触端部2214は、従って、接触端部2213より軸方向に高い位置にある。こうした、2つのウィンドウセクションの接触端部の間の軸方向の位置ずれは、2つのスロープが同一の傾斜度と異なる長さとを有する、という形にすることによっても得られる。また、ウィンドウセクション2212を、ウィンドウセクション2211より長いが傾斜度は同一である、形で設けることによっても、接触端部2214を接触端部2213に対して軸方向に見て上側にずれた位置に持ってくることができる。つまり、ウィンドウ221の接触端部の軸方向の位置ずれは、ウィンドウセクションのスロープの傾斜度、または、ウィンドウセクションのスロープの長さを変えることで実現される。さらに、異なる長さと異なる傾斜度との組合せを考えることも可能である。しかし、本発明でも、両ウィンドウの接触端部が同じ平面上に位置する形にすることは可能である。ただし、両端部の位置はずらすことが好ましい。
【0014】
ここで図2を参照する。スロープ2215、2216の各々にセットバック2217、2218が形成されており、これらセットバックがスロープの直線性を中断している点にも注意すべきである。セットバック、ノッチまたはステップは、低位部分2210と接触端部2213、2214との間の中間位置を規定する。
リング22を囲んで、ベース部2には、リングの周囲に沿って均一でない複雑な形状が形成されている。具体的には、ベース部には2つのフランジ24が形成されており、それらは、第1に低くなったインデント25によって、第2にシェルフ26によって分断されている。インデント25はフランジ24よりも下に位置する。そして、シェルフ26もフランジ24の下に位置するが、その高さはインデント25の高さよりもさらに低くなっている。また、インデント25の位置が棚26に対して、径方向に見てほぼ正反対側の位置にあることに注意すべきである。インデント25は、およそ10〜30度の範囲に存する角度にわたって延びており、一方、シェルフ26は、90度よりも大きい角度にわたって延びている。ベース部にはまた、その下側の外周部に留め具カラー23が形成されている。当該カラーは、スナップ留めによって留められるものであり、貯蔵器1に形成されたスナップ溝11と協働するためのものである。よって、ベース部2は、グルーブ11の位置で、貯蔵器1上に固定的な様態で取り付けられるが、スリーブ21の下側末端部分211が耐漏洩様態でネック13に嵌まることにより、この取り付けは耐漏洩様態となる。
【0015】
本実施の形態で、回転アクチュエータ部材3はカバーの形を取り、当該カバーは、ディスペンサ開口部30の形で中央に穴があけられた回転閉じプレート31を有する。図1、2、3においては、ピン20は、実質的な耐漏洩様態でディスペンサ開口部30に嵌まっている。ディスペンサ開口部30の下側の周囲には、プレート31に軸方向のガイドタワー36が形成されており、当該タワーは、ある程度の長さにわたって、ピン20を囲む形で延びている。本実施の形態で、タワー36はディスペンサ開口部30の周囲とスクレーパ362とを相互接続する複数のタブによって構成されている。これにより、タワーは、タブ361同士の間に複数の流れスロット363を形作る。これは図4から見て取れ、同図においては、ピン20の頂上端部201はプレート31に対して下方にずれた位置にあり、それによってスロット363が開かれている。貯蔵器に直接通じるスリーブ21によって形成された内部スペースとヘッド外部との間の連絡通路がスロット363によって作られている、ということは容易に理解されるであろう。こうした構成であるため、ピン20がヘッド内部に引き込まれると、貯蔵器1に格納された流体は、流れスロット363を通過する形で、ディスペンサ開口部30を通って流れることができる。ガイド・スクレーパタワー36によって、ピン20をヘッドの回転軸に保持することが可能となるだけでなく、アクチュエータ部材が回転させられるたびに、タワー内でのピンの移動によって得られる「擦り取り(scraping)効果」の力で、ピン20を清掃することも可能となる。スクレーパ362とタブ361とが、この「擦り取り」作用に関与する。
【0016】
その外周において、プレート31からは、下方向にスカート32が延びている。スカート32は、リング22を囲んで、これと中心が一致する状態で配置されている。本実施の形態では、スカート32にはラグ321が3つ形成されており、それらは各々、リング22に形成されたウィンドウ221のいずれかに嵌まる。これは、1つのラグに対して1つのウィンドウという形で、図3において見られる。ただし、スカート32がラグ321を3つ有し、それらが、スカート32の内壁の周囲に120度の間隔で均等に分散配置されている、という形も考えられる。ラグ321の各々がウィンドウ221のいずれかに嵌まること、そして、ウィンドウには、2つの同一または異なるスロープを有したプロフィールが見られることから、回転アクチュエータ部材3をベース部2上で回転させると、ラグは、スロープのプロフィールに従う形で、ウィンドウ内部で移動する。ラグ321がウィンドウ221の低位部分2210に位置している際、回転アクチュエータ部材3は、ベース部2との相対的な関係では、その最も低い位置にある。従って、ピン20の方は、ガイドおよびスクレーパ塔36の中で最も高い位置にある。これは、図1、2、3に示すような、ディスペンサヘッド閉位置に対応しており、この位置では、ピン20の頂上端部201はディスペンサ開口部30の中に位置しており、効果的な形として耐漏洩状態となっている。頂上端部201が実質的にプレート31と同じ平面に位置している、ということにも注意すべきである。回転アクチュエータ部材3をベース部2上で、時計回り方向または反時計回り方向で開店させることにより、ラグは各ウィンドウに形成された2つのウィンドウセクションの一方において移動する。そうして、ラグは、各ウィンドウセクションに形作られたガイド経路のスロープに従う。回転アクチュエータ部材3は、ラグが接触端部2213または接触端部2214に対して接触状態になるまで回転させることができるが、いずれの端部に接触するかは、要素3が時計回り方向、反時計回り方向のいずれに回転させられたかによる。いずれの場合も、ウィンドウ2211の形状が、尖った部分が下を向いたV字となっているために、ラグは軸方向上向きの移動を強いられる。このことの結果として、プレート31、そして、それに伴ってディスペンサ開口部30が上昇するが、その一方で、ピン20の位置は変わらない。見た目では、ピン20の方がタワー336の中へと移動し、それによってスロット363が開かれる。ラグが接触端部に対して接触状態となると、それでディスペンサヘッドは開位置のうちの1つに達したことになる。当然、ラグがウィンドウの有する他方の接触端部に対して接する状態になった時には、もう1つの開位置に達したことになる。つまり、両極端に2つの開位置があり、これらがタワー36内でのピン20の2つの押し込み(driven-in)位置に対応している。ディスペンサ開口部30からピン20を外すことについても言うことができる。接触端部2213、2214が共通の水平面に位置している、すなわち、これら接触端部の間に軸方向の位置ずれがない場合、ピンは、いずれの開位置においても、同じような形で同じ程度に、押し入れられるか外される。対照的に、本発明の好適な実施の形態の場合のように、接触端部2213、2214の位置に軸方向のずれがあれば、2つの開位置は、ディスペンサ開口部30に対するピン20の2つの異なる契合位置または押し込み位置に対応する形となる。このことは、ディスペンサヘッドを2つの異なる開位置でそれぞれ示している図4と図5とを比較すれば見てとれる。図4におけるスロット363が図5におけるスロットよりも小さいことは、容易に見てとれる。このことは、図5におけるピン20が、図4の状態よりも更に奥までタワー36内に押し込まれている、という事実によって説明される。その結果、同じディスペンサ開口部30を流れる流体でも、図5に対応する開位置での流速の方が、図4における開位置でのそれよりも速くなる。
【0017】
スロープ2215、2216に形成されたセットバック2217、2218は、効果的な構成として、安定した中間開位置を規定し、この開位置は固定された値の中間流速に対応している。したがって、単一のウィンドウでも、2つの両端開位置が複数の固定された中間開位置と少なくとも1つの固定された中間閉位置とによって隔てられている、という形にすることが可能である。ただし、複数の閉位置および3つ以上の中間開位置を設ける、または、別の形として、2つのスロープのうち1つに中間開位置を1つだけ設ける、という形も可能である。
【0018】
ピン20をタワー36の中で、大きくあるいはわずかに、ディスペンサ開口部30より内側に押し入れることで、流体の流量を変化させることができる。さらに、ウィンドウ内にラグをはめることで、軸方向移動手段が構成され、その一方で回転の際のガイダンスが保証される。
回転アクチュエータ部材3に、スリーブ21と耐漏洩様態の回転接触をする密閉リップ33が形成されていることにも注意すべきである。これにより、ディスペンサヘッドの完全な動的密閉が保証される。加えて、アクチュエータ部材3には、部材3を回転させる際に補助するアクチュエータボタン34も形成されている。アクチュエータボタン34は、2つのフランジ24の間にあるシェルフ26の上に位置している。図4に見られるように、ボタン34が後ろ側でフランジに対して接触状態にある場合、ディスペンサヘッドは流速が小さい方となる開位置ある。それに対して、アクチュエータボタン34が他方のフランジ24(図5においては、通常前面に位置する方)に対して接触状態にある場合、ディスペンサヘッドは流速が大きい方となる開位置にある。
【0019】
別の効果的な特性によると、回転アクチュエータ部材はさらに、タブ35の形を取る初回使用保証手段を有し、当該手段は、アクチュエータ部材3の他の部分と一体化した形で単一部品として作られていると共に、インデント25に配置されている。好ましい構成として、タブ35はインデント25の幅全体にわたって延びており、それによって、隣接する両方のフランジ24に接触した状態となる。これによって、回転アクチュエータ部材3の閉位置における回転は防止される。これは、図2および図3においてはっきりと見て取ることができる。ディスペンサヘッドを駆動するには、先ず、タブ35を取り外すことが必要となる。
【0020】
発明によって得られるディスペンサヘッドは、2つの開位置(同一、または、好ましくは異なるもの)を中間(さらに言えば中央)にある1つの閉位置の両側に位置する形で有する、というものである。ラグとV字形状ウィンドウとの協働という形を取る移動手段は、一種のネジ契合に例えられるものであり、V字形状のスレッドを有し、同一または異なる傾斜のスロープを備え、スロープ長が同一または異なる、というものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のディスペンサヘッドが装着された流体ディスペンサを示す部分切り欠き斜視図である。
【図2】図1のディスペンサヘッドの拡大図である。
【図3】図1、2のディスペンサヘッドを閉状態において、斜め方向から見た場合の縦断面図である。
【図4】図3と同様の図であり、開状態における図である。
【図5】図4と同様の図であり、別の開状態における図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体貯蔵器(1)と組み合わされる流体ディスペンサヘッドであって、
前記貯蔵器に形成された、あるいは、当該貯蔵器に取り付けられた静止ベース部(2)と、
ベース部(2)に回転可能な様態で取り付けられる回転アクチュエータ部材(3)であって、回転軸を中心に回転して両端の2つの接触位置の間を移動するように取り付けられた前記アクチュエータ部材(3)と、そして、
前記部材をベース部上で回転させることによって選択的に閉じることが可能なディスペンサ開口部(30)と、を有し、
特徴となるのは、
両端の2つの接触位置がディスペンサ開口部の2つの開位置を規定し、これら開位置は、ディスペンサ開口部が閉じた状態となる、少なくとも1つの位置によって隔てられていること、そして、ディスペンサ開口部(30)が前記部材のベース部上での回転軸上に位置すること、である
という前記ディスペンサヘッド。
【請求項2】
流体がディスペンサ開口部を通って流れる際の流速を、一方の開位置から他方の開位置までで変化させることを可能にする流速変化手段(20)を更に有すること、
を特徴とする請求項1に記載のディスペンサヘッド。
【請求項3】
前記部材(3)がベース部上で回転している間に、ベース部(2)に対して前記部材(3)を軸方向に移動させることができる軸方向移動手段(221,321)を更に有すること、
を特徴とする請求項1または2に記載のディスペンサヘッド。
【請求項4】
軸方向移動手段は、低位部分(2210)で一体に接続された2つのセクション(2211,2212)が見られるガイド経路(221)を少なくとも1つ有し、2つのセクションの各々には端接触部(2213,2214)が形作られ、当該接触部は各々が2つの開位置のいずれかに対応しており、前記低位部分は閉位置に対応していること、
を特徴とする請求項3に記載のディスペンサヘッド。
【請求項5】
ベース部には軸方向回転ガイドウィンドウ(221)が少なくとも1つ形成され、当該ウィンドウはベース部の周囲の一部にわたって延びており、前記ウィンドウはガイド経路を形作り、また、前記ウィンドウには2つの接合されたウィンドウセクション(2211,2212)が形成されており、第1セクションは第1のスロープを形作り、第2のセクション(2212)は、第1のスロープとは異なる第2のスロープを形作り、各セクションには接触端部(2213,2214)が形作られ、これら接触端部は軸方向に位置がずれており、
アクチュエータ部材は、少なくとも1つの軸方向回転ガイドラグ(321)を有し、当該ラグは前記ウィンドウに嵌まり、それによって、アクチュエータ部材がベース部上で回転させられている間、前記少なくとも1つのラグは、それに対応するウィンドウの中で移動することで、アクチュエータ部材(3)を軸方向に移動させ、それにより、ラグが第1セクションまたは第2セクションのいずれに対して接しているかに応じて、異なる高さに達すること、
を特徴とする請求項4に記載のディスペンサヘッド。
【請求項6】
前記複数のスロープは、傾斜および/または長さが異なっていること、
を特徴とする請求項4または5に記載のディスペンサヘッド。
【請求項7】
ベース部(2)はリング(22)を有し、当該リングの周囲には複数の軸方向回転ガイドウィンドウ(221)が分散配置された形で形成されており、部材(3)はリングを囲む形に延びたスカート(32)を有し、当該スカートには、その内側に、複数の軸方向回転ガイドラグ(321)が形成されており、当該ラグはいずれかのウィンドウに嵌まること、
を特徴とする請求項4乃至6に記載のディスペンサヘッド。
【請求項8】
部材(3)にはディスペンサ開口部(30)が、そして、ベース部(2)には閉鎖ピン(20)が形成されており、当該ピンは、閉位置ではディスペンサ開口部に嵌まっており、2つある開位置では、位置ごとに異なる量だけ開口部から外れ、それによって、開口部を通る流速を2つの開位置で変化させること、
を特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のディスペンサヘッド。
【請求項9】
アクチュエータ部材(3)は軸方向ガイド手段(36)を有し、当該手段(36)は、ピン(20)を囲む形で嵌められ、それによって、ピンは、前記軸方向ガイド手段の中でスライド移動できるように設置された形となり、
前記ガイド手段はディスペンサ開口部の周囲から下方向に延び、また、前記ガイド手段は複数のスロット(363)を形成し、当該スロットは、軸方向ガイド手段の中でのピンの位置に従ってサイズが変化すること、
を特徴とする請求項8に記載のディスペンサヘッド。
【請求項10】
軸方向ガイド手段は、ディスペンサ開口部の外周部から下向きに延びた複数のタブ(361)を有し、前記タブは、スライド移動可能な形でピンを囲む状態で嵌められているスクレーパ(362)によって接合されていること、
を特徴とする請求項9に記載のディスペンサヘッド。
【請求項11】
ベース部(2)は内部スリーブ(21)を有し、当該スリーブの内部にピン(20)が延びており、アクチュエータ部材は、スリーブの上に配置されてディスペンサ開口部(30)が形成されている、というカバー(31,32)を有し、前記カバーは環状リップ(33)を有し、当該リップは、前記スリーブ(21)と、回転スライド運動型の耐漏洩接触の状態にあること、
を特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載のディスペンサヘッド。
【請求項12】
アクチュエータ部材(3)は、ベース部(2)によってブロックされる分離可能安全タブ(35)を有し、それによって、閉位置では、アクチュエータ部材のベース部上での回転は防止されること、
を特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のディスペンサヘッド。
【請求項13】
両端の2つの開位置は、少なくとも1つの、中間にある固定された開位置によって隔てられていること、
を特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載のディスペンサヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−516135(P2007−516135A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519959(P2006−519959)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001845
【国際公開番号】WO2005/007534
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(505236517)
【Fターム(参考)】