説明

流体供給装置およびそれを用いた流体噴射装置

【課題】ユーザーーが無理やりカートリッジカバーをあけることを防止した流体供給装置を提供する。
【解決手段】インクカートリッジ16が装着されるカートリッジホルダ15と、上記カートリッジホルダ15に対してインクカートリッジ16を出し入れするための挿入口をカバーするカートリッジカバー30と、上記カートリッジカバー30が開かないようにロックするロック機構40と、上記インクカートリッジ16の交換指令を受け付けたときに上記ロック機構40をロック解除するよう制御する制御手段とを備え、上記カートリッジカバー30はヒンジ構造部42による回動で開け閉め可能となっているとともに、上記カートリッジカバー30周辺のカートリッジカバー30以外の静止部材49とカートリッジカバー30との隙間29が、上記カートリッジカバー30の回動動作を妨げない範囲で可及的に狭くなるよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を供給するための流体供給装置およびそれを用いた流体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、外部記録装置を着脱可能に装着することができるプリンタ等に適用することができ、記憶媒体が備えられた流体収容カートリッジを装着することができる流体供給装置および流体噴射装置に関する。
【0003】
記録媒体を備えたインクカートリッジを備えることができるプリンタが既に知られている(例えば特許文献1)。この種のプリンタは、例えばプリンタの電源がオン状態から強制的にオフ状態にされたときに、所定のデータ(例えばインク残量)を、インクカートリッジの記録媒体に書き込むようにする。
【0004】
また、インクカートリッジの記録媒体とプリンタとの通信は、インクカートリッジの記録媒体(以下、「カートリッジ記憶媒体」と言う)とプリンタに備えられる接続端子とが接触した状態(つまり接触式)で行なうこともできるし、それらが接触していない状態(つまり非接触式)で行うこともできる。
【0005】
所定のデータをカートリッジ記憶媒体に書き込むカートリッジ書き込み処理、又は所定のデータをカートリッジ記録媒体から読み込むカートリッジ読み取り処理は、瞬時に行なえず一定の時間がかかる場合がある。その場合、その処理の最中に、カートリッジ記憶媒体とプリンタとが通信不能な状態になってしまうと、そのデータが破損し得る等の問題が生じる。
【0006】
また、カートリッジ書き込み処理やカートリッジ読み取り処理を行うためには、所定の電力が要る。プリンタの電源がターンオフする場合にもその処理を行うためには、例えば、プリンタの電源がオン状態の間に、その所定の電力を電解コンデンサに充電し、電源がターンオフする間際に、その電解コンデンサの充電力を用いて、カートリッジ書き込み処理又はカートリッジ読み込み処理を行うようにするという方法が考えられる。
【0007】
しかし、この方法の場合、その処理が完了する前にターンオフしてしまうことがないように、電解コンデンサの蓄電可能な電力量を、カートリッジ書き込み処理やカートリッジ読み取り処理に要する電力量よりも多めにする必要がある。そのため、コスト高になってしまいやすい。これは、特に、カートリッジ記憶媒体とプリンタとの通信が非接触式で行なわれる場合に可能性が高い。なぜなら、非接触式の場合には、例えば、インクカートリッジと、記録ヘッドを主走査方向に往復走行させるキャリッジとの双方に備えられる各通信アンテナの通信可能領域の関係上、カートリッジ書き込み処理やカートリッジ読み取り処理を行うためには、キャリッジを所定の位置(例えばホームポジション)まで走行させる必要があり、それによる一層の電力消費が行なわれてしまうからである。
【0008】
以上の問題点は、インクカートリッジに備えられる記憶媒体に対するデータの読み出し又は書き込みに限らず、プリンタに着脱可能に装着することができる他種の外部記憶装置についても存在し得る。また、上述した問題点は、インクジェットプリンタやレーザープリンタ等のプリンタに限らず、データの読み出し又は書き込みが可能な様々なアクセス装置についても存在し得る。
【0009】
そこで、データの読み出し又は書き込みに一定の時間がかかる場合であっても確実にその処理を遂行することができるようにした記録装置として、下記の特許文献1に示すものが提案されている。
【0010】
この特許文献1の装置は、カートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジが有するカートリッジメモリのカートリッジアンテナと、それと通信するためのプリンタアンテナとの間の相対的な位置が所定の範囲内にあるときに、それらを介して、カートリッジメモリに対しデータの読み出し又は書き込みを行う最中は、カートリッジアンテナと、それと非接触式で通信するためのプリンタアンテナとの間の相対的な位置がユーザーに変更させることを防止するために、カートリッジ装着部のカートリッジカバーが開かないようロックし、カートリッジを取り外せないようにしている。
【特許文献1】特開2004−358718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1は、カートリッジカバーのカバー爪の部分がカートリッジ装着部から突出した構造となっており、カートリッジカバーをロックした状態でもカートリッジカバーに手指を掛けて強制的に開けようとする力を加えることができる。このため、気の早いユーザーーがロックが掛かった状態のカートリッジカバーを強制的に開けようとしてしまうリスクを有しており、そのような使い方をされてしまった場合にロック機構を破損してしまうおそれがあった。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ユーザーーが無理やりカートリッジカバーをあけることを防止した流体供給装置およびそれを用いた流体噴射装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の流体供給装置は、加圧気体の加圧力に基づいて収容流体を送出するように構成された流体収容体が装着される装着部と、上記装着部に対して流体収容体を出し入れするための挿入口をカバーするカバー部材と、上記カバー部材が開かないようにロックするロック機構と、上記流体収容体の交換指令を受け付けたときに上記ロック機構をロック解除するよう制御する制御手段とを備え、
上記カバー部材はヒンジ構造による回動で開け閉め可能となっているとともに、上記カバー部材周辺のカバー部材以外の部材とカバー部材との隙間が、上記カバー部材の回動動作を妨げない範囲で可及的に狭くなるよう構成されていることを要旨とする。
【0014】
また、本発明の流体噴射装置は、流体を噴射する噴射ヘッドと、加圧気体の加圧力に基づいて収容流体を上記噴射ヘッドに向かって送出するように構成された流体収容体が装着される装着部と、上記装着部に対して流体収容体を出し入れするための挿入口をカバーするカバー部材と、上記カバー部材が開かないようにロックするロック機構と、上記流体収容体の交換指令を受け付けたときに上記ロック機構をロック解除するよう制御する制御手段とを備え、
上記カバー部材はヒンジ構造による回動で開け閉め可能となっているとともに、上記カバー部材周辺のカバー部材以外の部材とカバー部材との隙間が、上記カバー部材の回動動作を妨げない範囲で可及的に狭くなるよう構成されていることを要旨とする。
【0015】
本発明によれば、上記カバー部材周辺のカバー部材以外の部材とカバー部材との隙間が、上記カバー部材の回動動作を妨げない範囲で可及的に狭くなるよう構成されていることから、カバー部材の表面は触れても側面は隙間が小さいため、カバー部材をロックした状態でカバー部材を無理やり開けてしまうような事故が確実に防止され、ロック機構の破損を未然に防ぐことができる。
【0016】
本発明において、上記隙間は、カバー部材の前面以外の側面に手指が掛からない程度に設定されている場合には、
カバー部材の側面に手指が掛からないため、カバー部材をロックした状態でカバー部材を無理やり開けてしまうような事故が確実に防止され、ロック機構の破損を未然に防ぐことができる。
【0017】
本発明において、上記ロック機構のロック解除は、電磁力によって動作するアクチュエータによって行われる場合には、
アクチュエータに対して電気信号を送ることによりロック解除できるため制御が行いやすく、制御系統の簡素化が図れる。
【0018】
本発明において、上記アクチュエータは、通電することによってロック解除するよう動作するものである場合には、
通電によってロック解除できるため、制御が行いやすく制御系統の簡素化が図れる。
【0019】
本発明において、上記ロック機構は、カバー部材に形成されたロックピンと、上記ロックピンに係合するロックレバーとを備えて構成され、上記アクチュエータは、ロックピンに係合したロックレバーを回動させることによりロックレバーとロックピンとの係合を解除してロック解除するようになっている場合には、
ロックレバーを回動動作させることでロック解除できるため、アクチュエータとして例えば、プランジャ等の直動動作を行うものを適用することができ、設備を簡素化して不要なコストアップを避けることができる。
【0020】
本発明において、上記ロックレバーは、閉扉状態で係合解除方向にレバー付勢部材で付勢されるとともに、上記アクチュエータは電磁力によって上記付勢力に抗して係合状態を維持するようになっている場合には、
アクチュエータの電磁力を解除することにより、レバー付勢部材の付勢力で自動的にロックレバーの係合が解除することから、ロック解除の機構が簡素化するうえ、制御も行いやすく制御系統の簡素化が図れる。
【0021】
本発明において、上記ロックピンとロックレバーは、カバー部材を閉扉方向に回動させることにより、ロックレバーに形成されたスライド面にロックピンが当接してスライドし、ロックレバーが回動して係合するようになっている場合には、
カバー部材を手指で押して回動させて閉扉することにより自動的にロックされるため、極めて操作が簡単で使い勝手がよい。また、構造もシンプルであり、ロック機構が簡素化するうえ、制御も行いやすい。
【0022】
本発明において、上記カバー部材を閉扉状態で開扉方向に向かって付勢するカバー付勢部材と、上記カバー付勢部材による付勢力が弱まるまでカバー部材が回動したところでカバー部材の回動を一時的に停止して保持する保持部材とをさらに備えている場合には、
ロック機構のロック解除を行ったときにカバー付勢部材の付勢力で自動的にカバー部材が開扉するので使い勝手がよい。しかも、カバー部材は少し開扉したところで一旦停止するので、カバー部材が一気に全開して音をたてたり周囲のものを傷つけたりする心配がなく、極めて使い勝手がよくなる。
【0023】
本発明において、上記流体収容体に対してポンプ部から排出された加圧気体を導くための加圧気体供給路と、上記加圧気体供給路に連通するよう設けられて開弁状態となったときに加圧気体供給路内の加圧力を開放する開放弁とをさらに備え、
上記制御手段は、上記流体収容体の交換指令を受け付けることにより開放弁を開弁状態にするよう制御するとともに、上記開放弁が開弁状態となって加圧気体供給路内の加圧力が低下したことを検知したときに上記ロック機構をロック解除するよう制御する場合には、
カバー部材の開放から開放弁を開放するまでにタイムラグがあったり、実際に開放弁を開弁してから流体収容体内の加圧空気が抜けきって加圧力がゼロになるまでの間にタイムラグ(加圧空気が抜けきるのに要する時間)があったりしても、加圧気体供給路内の加圧力が低下したことを検知したときに上記ロック機構をロック解除するため、流体収容体に加圧力が残存している間は流体収容体が取出されない。このため、流体収容体内に加圧力が残っている間に流体収容体が無理に引き抜かれ、加圧力が残存した流体収容体から流体が漏れ出て周囲を汚染したり、流体収容体や装着部が接続される流体補給接続栓等にダメージを与えたりする等の問題が発生しない。また、流体垂れの量を減少できるので、装着部に設ける流体吸収材を小さくできる。
【0024】
本発明において、上記流体収容体が装着部に装着された状態で、流体収容体に設けられた外部記憶装置と通信可能な通信手段と、上記通信手段を介して上記外部記憶装置に対してデータの読出し又は書き込みを行なうデータ読み書き手段とをさらに備え、
上記制御手段は、上記流体収容体の交換指令を受け付けてからデータ読み書き手段がデータの読出し又は書き込みを終了するまで上記ロック機構のロック解除を保留するよう制御する場合には、
データ読み書き手段がデータの読出し又は書き込みを行っている間は、ロック機構がロック解除しないため、流体収容体と装着部との相対的な位置すなわち例えばアンテナの相対位置がユーザーによって変更されることが防止され、外部記憶装置との間の通信が不能にされることが防止される。そのため、外部記憶装置に対するデータの読み出し又は書き込みに一定の時間がかかる場合であっても、その時間中は、ユーザーによって強制的に通信不能にされることが防止されるので、確実にそのデータの読み出し又は書き込み処理を遂行し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
【0026】
図1は、本発明の流体供給装置を適用した流体噴射装置の一実施形態としてのインクジェット式プリンタ(以下、「プリンタ」という。)10である。このプリンタ10は、平面視矩形状をなす本体ケース11を備えている。本体ケース11内には棒状のガイド軸12が本体ケース11の長手方向となる左右方向に沿って架設され、ガイド軸12には流体としての液体を噴射する噴射ヘッドとしての記録ヘッド13を搭載したキャリッジ14がガイド軸12の長手方向に沿って移動可能に挿通支持されている。
【0027】
また、本体ケース11内においてキャリッジ14の移動範囲から外れた位置(図1における右端側位置)には、流体収容体の装着部としてのカートリッジホルダ15が固設されている。そして、そのカートリッジホルダ15上には複数(本実施形態では4つ)の流体収容体としてのインクカートリッジ16が着脱自在に装着されている。この点で、本実施形態のプリンタ10は、インクカートリッジ16がキャリッジ14と共に移動する所謂オンキャリッジタイプのプリンタではなく、インクカートリッジ16がプリンタ10上において移動しない所謂オフキャリッジタイプのプリンタとして構成されている。
【0028】
キャリッジ14は駆動プーリ17と従動プーリ18との間に張設された無端状のタイミングベルト19を介してキャリッジモータ20に連結されている。そして、キャリッジ14はタイミングベルト19がキャリッジモータ20により回転駆動されることで、ガイド軸12に沿う主走査方向(図1の左右方向)に往復移動するようになっている。
【0029】
また、図3に示すように、プリンタ10内には、印刷用紙を紙送りするときの駆動源となる紙送りモータ21が搭載されている。紙送りモータ21の出力軸にはギヤが固定され、このギヤがギヤ列を介して紙送りローラ22及び排紙ローラ23に連結されている。そして、紙送りモータ21が回転すると、紙送りローラ22及び排紙ローラ23が回転して、用紙24が図1に示す紙送り部材(プラテン)25に沿って副走査方向(図1の上下方向)に紙送りされる。
【0030】
キャリッジ14には、記録ヘッド13にインク(収容流体すなわち収容液体)を供給するサブタンク(バルブユニットとも言う)26が搭載されている。インクカートリッジ16及びサブタンク26はインク色(例えばブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)の数(本実施形態では4つ)だけ配設され、サブタンク26は各色毎に流体供給路としてのインク供給チューブ27を介して各色のインクカートリッジ16に接続されている。各サブタンク26はインクカートリッジ16から取り込んだインクを一時貯留し、その貯留インクを所定圧に圧力調整して記録ヘッド13に供給する。
【0031】
本体ケース11の端部(図1における右端部)においてカートリッジホルダ15の近傍には、加圧ユニット31が搭載されている。加圧ユニット31は空気供給チューブ32を介して加圧空気(加圧気体)をインクカートリッジ16に送り出す装置であり、加圧ポンプ33、圧力センサ34及び大気開放弁35を備えている。空気供給チューブ32は大気開放弁35の下流側の分配器36によって複数(本例は4本)に分岐し、分岐した各チューブがインクカートリッジ16の各色に接続されている。
【0032】
各インクカートリッジ16は、カートリッジホルダ15にそれぞれ着脱可能に収容される。なお、カートリッジホルダ15は、カートリッジホルダ15に対してインクカートリッジ16を出し入れするための挿入口をカバーするカバー部材としてのカートリッジカバー30(図3参照)にて覆われている。このカートリッジカバー30はカバー開閉検出器57(図3参照)でカートリッジカバー30が開閉されたか否かを検出できるようになっている。このカバー開閉検出器57は、例えば、リミットスイッチや光センサ等で構成することができる。
【0033】
各インクカートリッジ16は、図2に示すように流体として液体のインクが封入されたインクパック37と、インクパック37を収納するインクケース38とからなる。インクパック37はインク排出口37aを有し、このインク排出口37aにインク供給チューブ27が接続される。インクパック37はインク排出口37aのみが外部に露出し、それ以外の部分が気密状態でインクケース38に収納され、これによりインクケース38の内部には気密状態の空間(すなわち、インクケース38の内部に形成されたインクパック収容室の内面とインクパック37の外面との間の空間)39が形成される。
【0034】
また、インクケース38には外部から内部の空間39に連通する連通孔41が形成され、この連通孔41に空気供給チューブ32が接続されている。そして、加圧ポンプ33が作動して加圧空気が排出されると、その加圧空気が空気供給チューブ32を伝ってインクカートリッジ16内の空間39に導入され、加圧空気の空気圧(加圧力)によってインクパック37が押し潰される。これにより、インクパック37内のインクがインク供給チューブ27を介してサブタンク26に供給されるようになっている。このように、上記空気供給チューブ32は、上記インクカートリッジ16に対して加圧ポンプ33から排出された加圧気体を導くための加圧気体供給路として機能する。
【0035】
そして、加圧ポンプ33の駆動に伴い加圧空気の圧力が上昇し、インクパック37が押し潰されることでインクがサブタンク26に供給される。そのインクはサブタンク26で一時貯留され、圧力調整された状態で記録ヘッド13へと供給される。このように、インクカートリッジ16に対して加圧ポンプ33から排出された加圧気体が空気供給チューブ32によって導かれ、上記インクカートリッジ16は加圧気体の加圧力に基づいて収容流体であるインクを記録ヘッド13に向かって送出するように構成されている。
【0036】
プリンタ10は、ホストコンピュータ82(図3参照)やメモリーカードから取り込んだ印刷データに基づきキャリッジモータ20及び紙送りモータ21を駆動し、記録ヘッド13からインクを吐出して印刷処理を実行する。
【0037】
図3は、上記プリンタ10の電気構成を示すブロック図である。
【0038】
このプリンタ10はCPU75、ROM76、RAM77、I/F78及びASIC79を備え、これらデバイスはバス81を通じて電気接続されている。
【0039】
CPU75はプリンタ10のメイン制御を司り、ROM76に記憶された制御プログラムに基づきRAM77を作業領域として動作する。また、プリンタ10はI/F78を介してホストコンピュータ82に接続され、ホストコンピュータ82から送信された印刷データに基づき印刷処理を行う。なお、本実施形態では、CPU75及びASIC79が、本実施形態における制御手段を構成し、RAM77が記憶手段を構成している。
【0040】
ASIC79はCPU75からの指令に基づき動作し、第1モータ駆動回路83を介してキャリッジモータ20を、第2モータ駆動回路84を介して紙送りモータ21を、ヘッド駆動回路85を介して記録ヘッド13を駆動制御する。ASIC79は圧力センサ34に電気接続され、圧力センサ34からの検出値に基づき加圧空気の圧力値Pを算出する。そして、ASIC79は算出した圧力値Pに基づき、第3モータ駆動回路86を介してポンプモータ45を駆動制御する。
【0041】
ここで、プリンタ10が印刷を開始すると、インクカートリッジ16内のインクをサブタンク26に送り出すために加圧ポンプ33による加圧動作が開始される。ASIC79は圧力センサ34の検出値に基づき加圧空気の圧力値Pを逐次算出しており、ポンプ駆動を開始してから圧力値Pが所定の設定圧Pa以上となるとポンプモータ45を停止し、圧力値Pが設定圧Paを下回ると再びポンプモータ45を回転させる。ASIC79は、加圧ポンプ33の駆動或いは停止を繰り返し行い、加圧空気を所定範囲内の圧力に維持する。
【0042】
大気開放弁35は、上記空気供給チューブ32に連通するよう設けられて開弁状態となったときに空気供給チューブ32内の加圧力を開放する開放弁として機能する。上記大気開放弁35は、この例では、ポンプモータ45の回転運動を弁開閉機構部48によって大気開放弁の弁操作に変換することにより開弁状態すなわち大気開放状態と閉弁状態すなわち加圧状態とを切り換えるようになっている。上記弁開閉機構部48としては、例えば歯車機構と摩擦クラッチを組み合わせ、図示しない弁開閉レバーを操作するようにしたもの等をあげることができる。
【0043】
一方、上記インクカートリッジ16には、直方体状になっており、所定の面に(例えば副走査方向を向いた面に)、記憶ユニットを有している。上記記憶ユニットには、カートリッジアンテナ46及び外部記憶装置としての記憶素子47が含まれて構成される。記憶素子47は、例えばEEPROM等の不揮発性メモリであり、カートリッジアンテナ46に接続されている。記憶素子47には、所定のデータ、例えば、インクの残量又は使用量、その記憶素子47に固有の識別コード(例えばシリアル番号)、又は、その記憶素子47が搭載されているインクカートリッジ16に固有の識別コード(例えばシリアル番号)等を書き込むことができる。
【0044】
また、カートリッジホルダ15には、インクカートリッジ16がカートリッジホルダ15に装着された状態で、インクカートリッジ16に設けられた記憶素子47と通信可能な通信手段としてのホルダアンテナ44と、上記ホルダアンテナ44を介して上記記憶素子47に対してデータの読出し又は書き込みを行なうデータ読み書き手段としての送受信回路43を備えている。
【0045】
また、上記カートリッジカバー30が開かないようにロックするロック機構40を備えている。そして、上記ASIC79、CPU75、ROM76、RAM77は、本発明の制御手段として機能するものであり、カートリッジ交換スイッチを兼ねたカバーオープンスイッチ68を押すことによって入力されるインクカートリッジ16の交換指令を受け付けたときに上記ロック機構40をロック解除するよう制御する。
【0046】
図4は、上記カートリッジホルダ15の外観を示す斜視図、図5は正面図である。
【0047】
上記カートリッジホルダ15は、正面に正面視で略長方形を呈するカートリッジカバー30が取り付けられ、正面に形成されたインクカートリッジを出し入れする挿入口(図では隠れて見えない)を覆うようになっている。上記カートリッジカバー30の上部右端には、カバーオープンスイッチ68が設けられている。
【0048】
上記カートリッジカバー30は、下端縁部にヒンジ構造部42が形成され、ヒンジ構造部42の図示しないヒンジ軸42a(図6参照)を軸とした回動動作により開け閉めが可能となっている。すなわち、前方への回動で開扉し(図4の矢印A)、反対に後方への回動で閉扉する(図4の矢印B)。
【0049】
そして、本実施形態では、上記カートリッジカバー30周辺のカートリッジカバー30以外の静止部材49とカートリッジカバー30の側面との間の隙間29が、上記カートリッジカバー30の回動動作を妨げない範囲で可及的に狭くなるよう構成されている。この例では、上記静止部材49は、カートリッジカバー30の上辺と左右辺の3つの側面に沿って設けられ、カートリッジカバー30の上記3つの側面と各静止部材49との隙間29は、カートリッジカバー30の前面以外の3つの側面に手指が掛からない程度に設定されている。具体的には上記各隙間29は2mm程度に設定されている。
【0050】
そして、カートリッジカバー30の回動動作を妨げない範囲とは、所定の厚みがあるカートリッジカバー30が、下端前面側に設けられたヒンジ構造部42を軸にして開扉方向に回動したときに、カートリッジカバー30の左右側面および上面が静止部材49と干渉せずにスムーズに回動運動をする範囲である。
【0051】
なお、ヒンジ構造部42が設けられたカートリッジカバー30の下側の側面側には静止部材49が設けられていない。カートリッジカバー30の下側はヒンジ構造部42によりカートリッジホルダ15の本体にヒンジ連結されていて、回動の軸にはなるけれども本体からは離れないため、静止部材49によって手指が掛からないようにしなくてもここに手を掛けて無理にカートリッジカバー30を開けることにはならないからである。
【0052】
そして、この実施形態では、図12および図14に示すように、カートリッジホルダ15の開口部の前面は、上部に行くほど前側にせり出すような傾斜面となっており、カートリッジカバー30は、閉扉状態で上記傾斜面に沿うように配置されている。
【0053】
つぎに、上記カートリッジカバー30をロックするためのロック機構40について詳しく説明する。
【0054】
図6は、上記カートリッジカバー30とロック機構40の分解斜視図、図7〜10はロック機構40の分解斜視図、図11は閉扉状態におけるカートリッジカバー30の正面図、図12(A)は閉扉状態におけるカートリッジカバー30の側面図、図12(B)は閉扉状態におけるカートリッジカバー30のA−A断面図である。図13は開扉状態におけるカートリッジカバー30の正面図、図14(A)は開扉状態におけるカートリッジカバー30の側面図、図14(B)は開扉状態におけるカートリッジカバー30のB−B断面図である。
【0055】
上記ロック機構40は、カートリッジカバー30に設けられたロックピン50、係止部51、カートリッジホルダ15側に設けられたロックレバー52、アクチュエータ53、ねじりコイルばね56、カバー開閉検出器57、板ばね54、保持部55等により構成されている。
【0056】
上記ロックレバー52、アクチュエータ53、ねじりコイルばね56、カバー開閉検出器57は、ロックケース58に取り付けられ、蓋体59が取り付けられて、カートリッジホルダ15の正面視で左端の上部に形成された収容部60に収容され、カートリッジホルダ15の上面に形成されたねじ穴15aに取付ねじ58aで固定される。
【0057】
一方、カートリッジカバー30のカートリッジホルダ15側には、ロックアーム64が突出するよう形成されている。このロックアーム64の先端部側面に円柱状のロックピン50が突出形成されている。上記ロックアーム64は、カートリッジホルダ15の前面に形成された切欠部65に先端部分が挿通されるようになっている。そして、カートリッジカバー30の閉扉が維持された状態では、ロックアーム64が切欠部65を挿通し、カートリッジホルダ15に収容されたロックケース58に取り付けられたロックレバー52と係合してロック状態を維持するようになっている。
【0058】
図15は、上記ロックレバー52およびその周辺を詳しく示す図である。
【0059】
上記ロックレバー52は、回動軸52aを軸心に回動しうるようにロックケース58に取り付けられている。上記ロックレバー52は、回動軸52aよりも後方に突出した作動部52cと、回動軸52aよりも前方すなわちカートリッジカバー30側に延びたロック部52dとを備えて構成されている。そして、上記ロックレバー52の作動部52cをアクチュエータ53により上下させ、ロック部52dを上下回動させることでロックおよびロック解除を行いうるようになっている。
【0060】
上記ロック部52dは、その上面に、側面視で大略裏向きJ字状を呈する切欠部が形成されており、この切欠部により、先端側上部にカートリッジカバー30のロックピン50と係合してロック状態とする係合爪52eが形成され、上記係合爪52eと対面する後方の部分に閉扉時にロックピン50が当接してスライドするスライド面52fが形成されている。
【0061】
そして、上記ロックレバー52の回動軸52aには、ねじりコイルばね56が挿通されている。このねじりコイルばね56はレバー付勢部材として機能するものであり、上記ロックレバー52は、閉扉状態においてねじりコイルばね56により係合解除方向すなわちロック解除方向(図示の矢印C方向)に付勢されるようになっている。
【0062】
図16は、上記ロックレバー52のロック状態の維持とロック解除を行うアクチュエータ53を詳しく示す図である。
【0063】
上記アクチュエータ53は、磁性材で形成されて上下スライド可能な可動片53aと、上記可動片53aを磁力で吸引するヨーク53bと、上記ヨーク53bを磁化するマグネット53dと、上記可動片53aとヨーク53bの吸着面付近に配置されたコイル53cとを備えている。そして、コイル53cに通電をしない状態では、図16(A)に示すように、可動片53aがヨーク53bに吸着されて下側に移動した状態を維持する。これにより、作動部52cに突設された作動ピン52bが可動片53aで下向き移動した状態を保つ。
【0064】
この状態で、ロック部52dは、ねじりコイルばね56の付勢力に抗して係合方向すなわちロック方向(図示の矢印D方向)に回動し、ロックピン50に対して係合爪52eが係合した状態で位置を維持し、ロック状態を維持する。このように、上記ロック機構40のロック解除は、電磁力によって動作するアクチュエータ53によって行われ、上記アクチュエータ53は電磁力によって上記ねじりコイルばね56の付勢力に抗して係合状態を維持するようになっている。
【0065】
そして、上記アクチュエータ53のコイル53cに対してマグネット53dの磁力を打ち消す方向の電流を流すよう通電をすることにより、マグネット53dの磁力が消失するか弱まって、ねじりコイルばね56の付勢力がロックレバー52に働く。これにより、図16(B)に示すように、作動ピン52bで可動片53aが引き上げられるとともに、ロック部52dが係合解除方向すなわちロック解除方向(図示の矢印C方向)に回動し、ロックピン50と係合爪52eとの係合が解除されてロック解除される。このように、上記アクチュエータ53は、通電することによってロック解除するよう動作する。
【0066】
このように、上記ロック機構40は、カートリッジカバー30に形成されたロックピン50と、上記ロックピン50に係合するロックレバー52とを備えて構成され、上記アクチュエータ53は、ロックピン50に係合したロックレバー52を回動させることによりロックレバー52とロックピン50との係合を解除してロック解除するようになっている。
【0067】
ロック機構40がロック解除されると、板ばね54と保持部55の作用によりカートリッジカバー30が開扉方向に少し回動して一旦回動を停止して保持される。
【0068】
図17は、板ばね54と保持部55の詳細を説明する図である。
【0069】
上記板ばね54と保持部55は、1枚の金属薄板をプレス成形したのち屈曲形成した屈曲ばね部材61に形成されている。上記屈曲ばね部材61は、カートリッジホルダ15にねじ止めされるベース部61aから柱片61bが上方に立ち上がり、この柱片61bの上端近傍に、前方すなわちカートリッジカバー30に向かって突出するよう保持部55と対向片55aとが形成されている。
【0070】
上記対向片55aは柱片61bから真っ直ぐ前に延びているのに対し、保持部55は対向片55aに近づくように内向きに屈曲されるとともに、先端近傍に内向きに山型に屈曲された係止突部55bが形成されている。そして、閉扉状態すなわちロック状態で、保持部55と対向片55aの間に、カートリッジカバー30から突出するよう設けられた係止アーム62の先端部を挟持するようになっている。
【0071】
また、上記柱片61bの下端部近傍から連結片61cが前方に向かって延びており、連結片61cの先端部が屈曲された部分から板ばね54が上方に向かって延びている。上記板ばね54は、上記カートリッジカバー30を閉扉状態で開扉方向に向かって付勢するカバー付勢部材として機能し、上記保持部55は、上記板ばね54による付勢力が弱まるまでカートリッジカバー30が回動したところでカートリッジカバー30の回動を一時的に停止して保持する保持部材として機能する。
【0072】
すなわち、図12および図14に示すように、上記屈曲ばね部材61は、カートリッジホルダ15の正面視で左端部において、カートリッジカバー30の左端片部分と対面する位置に取り付けられる。このとき、保持部55および対向片55aの開口側および板ばね54を前面側にして前端近傍に配置される。
【0073】
一方、上述したように、カートリッジカバー30のカートリッジホルダ15側には、係止アーム62が突出するよう形成されている。係止アーム62には、先端近傍の側面に円柱状の係止部51が突設されている。この係止アーム62は、カートリッジホルダ15の前面に形成された挿通窓63に先端部分が挿通されるようになっている。そして、カートリッジカバー30の閉扉が維持された状態すなわちロック状態では、図12に示すように、係止アーム62の先端近傍に形成された段部が板ばね54の上端部近傍を後方すなわち閉扉方向に向かって押して弾性変形させる。
【0074】
したがって、このロック状態すなわち閉扉状態では、弾性変形した板ばね54が係止アーム62を開扉方向に向かって付勢することにより、上記カートリッジカバー30を開扉方向に向かって付勢する。このとき、ロックピン50とロックレバー52の係合爪52eが係合しているため、板ばね54の付勢力がカートリッジカバー30に加わっていたとしても閉扉状態は維持される。
【0075】
そして、閉扉状態すなわちロック状態から上述したようにロック解除されると、ロックピン50と係合爪52eの係合が解除され、板ばね54の付勢力によってカートリッジカバー30が下部のヒンジ構造部42を軸にして開扉方向すなわち前方に回動を開始する。その後、上記板ばね54による付勢力が弱まるまでカートリッジカバー30が回動したところで、保持部55が係止部51を保持することにより、カートリッジカバー30の回動が一時的に停止して保持される。
【0076】
すなわち、ロック状態すなわち閉扉状態において、係止アーム62の先端は保持部55と対向片55aの間に挟持されている。そして、閉扉状態すなわちロック状態からロック解除されると、板ばね54の付勢力によってカートリッジカバー30が開扉方向に回動を開始する。図14に示すように、上記板ばね54の弾性変形が略回復して付勢力が弱まるまでカートリッジカバー30が回動したところで、保持部55の係止突部55bと係止部51が係合し、カートリッジカバー30の回動が停止して回動位置を維持するようになっている。
【0077】
この状態では、カートリッジカバー30がカートリッジカバー30周辺のカートリッジカバー30以外の静止部材49よりも前方に飛び出すので、カートリッジカバー30の左右側面と上面に手指を掛けることができるようになる。そして、カートリッジカバー30の左右側面や上面に手指を掛けて先方に引っ張り出してカートリッジカバー30を開扉方向に回動させることにより、カートリッジカバー30を完全に開くことができる。このとき、係止部51は保持部55を外側に弾性変形させ、保持部55の係止突部55bが係止部51を乗り越える。その後はカートリッジカバー30が自由に回動するようになるので、カートリッジカバー30を手動でオープンする。
【0078】
このとき、図12および図14に示すように、カートリッジホルダ15の開口部の前面は、上部に行くほど前側にせり出すような傾斜面となっており、カートリッジカバー30は、閉扉状態で上記傾斜面に沿うように配置され、カートリッジカバー30の下端部にヒンジ構造部42があることから、ロック機構40をロック解除すると、板ばね54の付勢力にカートリッジカバー30の重みが加わって、よりスムーズにカートリッジカバー30が開扉方向へ回動する。
【0079】
ここで、上記カートリッジカバー30が閉扉状態(ロック状態)にあるか開扉状態(ロック解除状態)にあるかは、カバー開閉検出器57により検出する。
【0080】
すなわち、カバー開閉検出器57には、上斜め後方に向かって延びる検知レバー57aが設けられている。この検知レバー57aは根元部に設けられた軸を中心として回動可能となっており、弱いバネ(不図示)により、常に上向き付勢されている。そして、上記検知レバー57aは、ロックレバー52に設けられたレバー作動ピン52gにより回動動作するようになっている。すなわち、ロックレバー52が上方に回動してロック状態となると、レバー作動ピン52gによる規制が解除され検知レバー57aが上方に回動し、ロックレバー52が下方に回動してロック解除状態となると、レバー作動ピン52gが検知レバー57aを押し下げて下方に回動する。そして、カバー開閉検出器57は、この検知レバー57aの回動位置を検知することにより、ロック状態すなわち閉扉状態か、ロック解除状態すなわち開扉状態かを検知する。
【0081】
カートリッジカバー30が開いた状態から閉じた状態にする場合には、カートリッジカバー30を手動で閉扉方向に回動させることにより行われる。このとき、まず、係止アーム62の先端が保持部55と対向片55aの間に差し込まれ、ついでロックピン50がロックレバー52のスライド面52fに当接する。このとき、開扉状態においてロックレバー52のスライド面52fは、下に向かうほど奥にいくよう前傾している。このため、ロックピン50がスライド面52fに当接してからさらにカートリッジカバー30を押し込むことにより、スライド面52fがロックピン50に対して上方向にスライドする。このスライドによりロックレバー52のロック部dが上方に回動し、ロックピン50と係合爪52eとが係合する。
【0082】
このように、上記ロックピン50とロックレバー52は、カートリッジカバー30を閉扉方向に回動させることにより、ロックレバー52に形成されたスライド面52fにロックピン50が当接してスライドし、ロックレバー52が回動して係合するようになっている。
【0083】
そして、このロックレバー52がロック位置に回動するとマグネット53dにより磁化されたヨーク53bに可動片53aが吸着し、ロック状態が維持される。
【0084】
一方、カートリッジカバー30を開けるときには、カートリッジホルダ15前面に設けられたカートリッジ交換スイッチを兼ねたカバーオープンスイッチ68を押すことにより、インクカートリッジ16の交換指令が入力される。制御手段は、上記交換指令を受け付けたときにロック機構40に制御信号を送り、アクチュエータ53のコイル53cに通電を行うよう制御する。これにより、マグネット53dの磁力を消失させるか弱めてヨーク53bに対する可動片53aの吸着が解除され、ロック解除が行われる。
【0085】
また、カバーオープンスイッチ68を押すことにより、インクカートリッジ16の交換指令が入力されたときに、制御手段は、大気開放弁35を開弁状態にするよう制御するとともに、上記大気開放弁35が開弁状態となって空気供給チューブ32内の加圧力が低下したことを圧力センサ34で検知したときに、上記ロック機構40に制御信号を送ってロック解除するよう制御するようにしてもよい。
【0086】
また、カバーオープンスイッチ68を押すことにより、インクカートリッジ16の交換指令が入力されたときに、上記制御手段は、上記インクカートリッジ16の交換指令を受け付けてからデータ読み書き手段としての送受信回路43が、インクカートリッジ16の記憶素子47へのデータの読出し又は書き込みを終了するまで上記ロック機構40のロック解除を保留し、データの読出し又は書き込みを終了してから上記ロック機構40に制御信号を送ってロック解除するよう制御するようにしてもよい。
【0087】
また、カートリッジカバー30を強制的に開ける場合には、カートリッジカバー30の前面の左端近傍に設けられた小穴67にピンを挿通させることにより行われる。すなわち、上記ロックレバー52のロック部52dの先端部には、前下がりに傾斜する傾斜面52hが形成されている。一方、カートリッジカバー30には、上記ロックレバー52がロック状態の回動位置にあるときに上記傾斜面52hと対面する箇所に小穴67が穿設されている。そして、上記小穴67に細長いピンを挿通させ、ピンの先端を傾斜面52hに押し当ててさらにピンを押し込み、ロックレバー52をアクチュエータ53の磁力を上回る力で強制的に下方に回動させることによりロック解除することができる。
【0088】
強制的にロック解除したときのカートリッジカバー30を再び閉めるときには、カートリッジカバー30を手動で後方に回動させて押し込むことにより、ロックピン50が上記傾斜面52h上をスライドすることによりロックレバー52が一時的に強制的に回動した後に再び上述したように係合爪52eとロックピン50の係合が行われる。
【0089】
以上に説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0090】
すなわち、上記カートリッジカバー30周辺のカートリッジカバー30以外の部材とカートリッジカバー30との隙間29が、上記カートリッジカバー30の回動動作を妨げない範囲で可及的に狭くなるよう構成されていることから、カートリッジカバー30の表面は触れても側面は隙間29が小さいため、カートリッジカバー30をロックした状態でカートリッジカバー30を無理やり開けてしまうような事故が確実に防止され、ロック機構40の破損を未然に防ぐことができる。
【0091】
また、上記隙間29は、カートリッジカバー30の前面以外の側面に手指が掛からない程度に設定されているため、
カートリッジカバー30の側面に手指が掛からないため、カートリッジカバー30をロックした状態でカートリッジカバー30を無理やり開けてしまうような事故が確実に防止され、ロック機構40の破損を未然に防ぐことができる。
【0092】
また、上記ロック機構40のロック解除は、電磁力によって動作するアクチュエータ53によって行われるため、
アクチュエータ53に対して電気信号を送ることによりロック解除できるため制御が行いやすく、制御系統の簡素化が図れる。
【0093】
また、上記アクチュエータ53は、通電することによってロック解除するよう動作するものであるため、
通電によってロック解除できるため、制御が行いやすく制御系統の簡素化が図れる。
【0094】
また、上記ロック機構40は、カートリッジカバー30に形成されたロックピン50と、上記ロックピン50に係合するロックレバー52とを備えて構成され、上記アクチュエータ53は、ロックピン50に係合したロックレバー52を回動させることによりロックレバー52とロックピン50との係合を解除してロック解除するようになっているため、
ロックレバー52を回動動作させることでロック解除できるため、アクチュエータ53として例えば、プランジャ等の直動動作を行うものを適用することができ、設備を簡素化して不要なコストアップを避けることができる。
【0095】
また、上記ロックレバー52は、閉扉状態で係合解除方向にねじりコイルばね56で付勢されるとともに、上記アクチュエータ53は電磁力によって上記付勢力に抗して係合状態を維持するようになっているため、
アクチュエータ53の電磁力を解除することにより、ねじりコイルばね56の付勢力で自動的にロックレバー52の係合が解除することから、ロック解除の機構が簡素化するうえ、制御も行いやすく制御系統の簡素化が図れる。
【0096】
また、上記ロックピン50とロックレバー52は、カートリッジカバー30を閉扉方向に回動させることにより、ロックレバー52に形成されたスライド面にロックピン50が当接してスライドし、ロックレバー52が回動して係合するようになっているため、
カートリッジカバー30を手指で押して回動させて閉扉することにより自動的にロックされるため、極めて操作が簡単で使い勝手がよい。また、構造もシンプルであり、ロック機構40が簡素化するうえ、制御も行いやすい。
【0097】
また、上記カートリッジカバー30を閉扉状態で開扉方向に向かって付勢する板ばね54と、上記板ばね54による付勢力が弱まるまでカートリッジカバー30が回動したところでカートリッジカバー30の回動を一時的に停止して保持する保持部材とをさらに備えているため、
ロック機構40のロック解除を行ったときに板ばね54の付勢力で自動的にカートリッジカバー30が開扉するので使い勝手がよい。しかも、カートリッジカバー30は少し開扉したところで一旦停止するので、カートリッジカバー30が一気に全開して音をたてたり周囲のものを傷つけたりする心配がなく、極めて使い勝手がよくなる。
【0098】
また、上記インクカートリッジ16に対して加圧ポンプ33から排出された加圧気体を導くための空気供給チューブ32と、上記空気供給チューブ32に連通するよう設けられて開弁状態となったときに空気供給チューブ32内の加圧力を開放する大気開放弁35とをさらに備え、
上記制御手段は、上記インクカートリッジ16の交換指令を受け付けることにより大気開放弁35を開弁状態にするよう制御するとともに、上記大気開放弁35が開弁状態となって空気供給チューブ32内の加圧力が低下したことを検知したときに上記ロック機構40をロック解除するよう制御する場合には、
カートリッジカバー30の開放から大気開放弁35を開放するまでにタイムラグがあったり、実際に大気開放弁35を開弁してから流体収容対内の加圧空気が抜けきって加圧力がゼロになるまでの間にタイムラグ(加圧空気が抜けきるのに要する時間)があったりしても、空気供給チューブ32内の加圧力が低下したことを検知したときに上記ロック機構40をロック解除するため、インクカートリッジ16に加圧力が残存している間はインクカートリッジ16が取出されない。このため、インクカートリッジ16内に加圧力が残っている間にインクカートリッジ16が無理に引き抜かれ、加圧力が残存したインクカートリッジ16からインクが漏れ出て周囲を汚染したり、インクカートリッジ16やカートリッジホルダ15が接続されるインク補給接続栓等にダメージを与えたりする等の問題が発生しない。また、インク垂れの量を減少できるので、カートリッジホルダ15に設けるインク吸収材を小さくできる。
【0099】
また、上記インクカートリッジ16がカートリッジホルダ15に装着された状態で、インクカートリッジ16に設けられた記憶素子47と通信可能なホルダアンテナ44と、上記ホルダアンテナ44を介して上記記憶素子47に対してデータの読出し又は書き込みを行なう送受信回路43とをさらに備え、
上記制御手段は、上記インクカートリッジ16の交換指令を受け付けてから送受信回路43がデータの読出し又は書き込みを終了するまで上記ロック機構40のロック解除を保留するよう制御する場合には、
送受信回路43がデータの読出し又は書き込みを行っている間は、ロック機構40がロック解除しないため、インクカートリッジ16とカートリッジホルダ15との相対的な位置すなわち例えばホルダアンテナ44とカートリッジアンテナ46との相対位置がユーザーによって変更されることが防止され、記憶素子47との間の通信が不能にされることが防止される。そのため、記憶素子47に対するデータの読み出し又は書き込みに一定の時間がかかる場合であっても、その時間中は、ユーザーによって強制的に通信不能にされることが防止されるので、確実にそのデータの読み出し又は書き込み処理を遂行し得る。
【0100】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、下記の各種の変形例を包含する趣旨である。
【0101】
上記実施形態では、カバー付勢部材として板ばね54を適用した例を示したが、コイルばねを用いても良く、各種の付勢部材を適用することができる。また、上記実施形態では、ねじりコイルばね56とアクチュエータ53によりロックレバー52を回動させてロック解除を行うようにしたが、これに限定するものではなく、ロックレバー52を回動させうる機構であれば他の機構を採用することもできる。
【0102】
上記実施形態において、ポンプモータ45はDCモータやACモータ等、各種のモータを適用することができる。また、上記加圧ポンプ33は、ダイヤフラムポンプその他各種の形式の加圧ポンプを採用することができる。
【0103】
上記実施形態において、大気開放弁35を開弁制御する際の駆動源となる駆動手段として、ポンプモータ45とは別の弁駆動専用のモータを設け、このモータを正転・逆転させる制御構成としてもよい。
【0104】
上記実施形態においては、流体噴射装置として、インクを吐出しするプリンタ10について説明したが、その他の流体噴射装置であってもよい。例えば、ファックス、コピア等を含む印刷装置や、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの流体を噴射する流体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置であってもよい。また、流体もインクに限られず、他の流体に応用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本実施形態のインクジェット式プリンタの要部平面図。
【図2】インクカートリッジの構成を示す断面図。
【図3】プリンタの電気構成を示すブロック図。
【図4】カートリッジホルダを示す正面図。
【図5】カートリッジホルダを示す斜視図。
【図6】ロック機構を示す分解斜視図。
【図7】ロック機構を示す分解斜視図。
【図8】ロック機構を示す分解斜視図。
【図9】ロック機構を示す分解斜視図。
【図10】ロック機構を示す分解斜視図。
【図11】閉じた状態のカートリッジカバーを示す正面図。
【図12】閉じた状態のカートリッジカバーを示す側面図と断面図。
【図13】開いた状態のカートリッジカバーを示す正面図。
【図14】開いた状態のカートリッジカバーを示す側面図と断面図。
【図15】ロックレバーの詳細を示す拡大図。
【図16】アクチュエータの詳細を示す拡大図。
【図17】屈曲ばね部材の詳細を示す斜視図。
【符号の説明】
【0106】
10 プリンタ,11 本体ケース,12 ガイド軸,13 記録ヘッド,14 キャリッジ,15 カートリッジホルダ,15a ねじ穴,16 インクカートリッジ,17 駆動プーリ,18 従動プーリ,19 タイミングベルト,20 キャリッジモータ,21 紙送りモータ,22 紙送りローラ,23 排紙ローラ,24 用紙,25 プラテン,26 サブタンク,27 インク供給チューブ,29 隙間,30 カートリッジカバー,31 加圧ユニット,32 空気供給チューブ,33 加圧ポンプ,34 圧力センサ,35 大気開放弁,36 分配器,37 インクパック,37a インク排出口,38 インクケース,39 空間,40 ロック機構,41 連通孔,42 ヒンジ構造部,42a ヒンジ軸,43 送受信回路,44 ホルダアンテナ,45 ポンプモータ,46 カートリッジアンテナ,47 記憶素子,48 弁開閉機構部,49 静止部材,50 ロックピン,51 係止部,52 ロックレバー,52a 回動軸,52b 作動ピン,52c 作動部,52d ロック部,52e 係合爪,52f スライド面,52g レバー作動ピン,52h 傾斜面,53 アクチュエータ,53a 可動片,53b ヨーク,53c コイル,53d マグネット,54 板ばね,55 保持部,55a 対向片,55b 係止突部,56 ねじりコイルばね,57 カバー開閉検出器,57a 検知レバー,58 ロックケース,58a 取付ねじ,59 蓋体,60 収容部,61 屈曲ばね部材,61a ベース部,61b 柱片,61c 連結片,62 係止アーム,63 挿通窓,64 ロックアーム,65 切欠部,66 検出器駆動ピン,67 小穴,68 カバーオープンスイッチ,75 CPU,76 ROM,77 RAM,78 I/F,79 ASIC,81 バス,82 ホストコンピュータ,83 第1モータ駆動回路,84 第2モータ駆動回路,85 ヘッド駆動回路,86 第3モータ駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧気体の加圧力に基づいて収容流体を送出するように構成された流体収容体が装着される装着部と、上記装着部に対して流体収容体を出し入れするための挿入口をカバーするカバー部材と、上記カバー部材が開かないようにロックするロック機構と、上記流体収容体の交換指令を受け付けたときに上記ロック機構をロック解除するよう制御する制御手段とを備え、
上記カバー部材はヒンジ構造による回動で開け閉め可能となっているとともに、上記カバー部材周辺のカバー部材以外の部材とカバー部材との隙間が、上記カバー部材の回動動作を妨げない範囲で可及的に狭くなるよう構成されていることを特徴とする流体供給装置。
【請求項2】
上記隙間は、カバー部材の前面以外の側面に手指が掛からない程度に設定されている請求項1記載の流体供給装置。
【請求項3】
上記ロック機構のロック解除は、電磁力によって動作するアクチュエータによって行われる請求項1または2記載の流体供給装置。
【請求項4】
上記アクチュエータは、通電することによってロック解除するよう動作するものである請求項3記載の流体供給装置。
【請求項5】
上記ロック機構は、カバー部材に形成されたロックピンと、上記ロックピンに係合するロックレバーとを備えて構成され、上記アクチュエータは、ロックピンに係合したロックレバーを回動させることによりロックレバーとロックピンとの係合を解除してロック解除するようになっている請求項3または4記載の流体供給装置。
【請求項6】
上記ロックレバーは、閉扉状態で係合解除方向にレバー付勢部材で付勢されるとともに、上記アクチュエータは電磁力によって上記付勢力に抗して係合状態を維持するようになっている請求項3〜5のいずれか一項に記載の流体供給装置。
【請求項7】
上記ロックピンとロックレバーは、カバー部材を閉扉方向に回動させることにより、ロックレバーに形成されたスライド面にロックピンが当接してスライドし、ロックレバーが回動して係合するようになっている請求項5または6記載の流体供給装置。
【請求項8】
上記カバー部材を閉扉状態で開扉方向に向かって付勢するカバー付勢部材と、上記カバー付勢部材による付勢力が弱まるまでカバー部材が回動したところでカバー部材の回動を一時的に停止して保持する保持部材とをさらに備えている請求項1〜7のいずれか一項に記載の流体供給装置。
【請求項9】
上記流体収容体に対してポンプ部から排出された加圧気体を導くための加圧気体供給路と、上記加圧気体供給路に連通するよう設けられて開弁状態となったときに加圧気体供給路内の加圧力を開放する開放弁とをさらに備え、
上記制御手段は、上記流体収容体の交換指令を受け付けることにより開放弁を開弁状態にするよう制御するとともに、上記開放弁が開弁状態となって加圧気体供給路内の加圧力が低下したことを検知したときに上記ロック機構をロック解除するよう制御する請求項1〜8のいずれか一項に記載の流体供給装置。
【請求項10】
上記流体収容体が装着部に装着された状態で、流体収容体に設けられた外部記憶装置と通信可能な通信手段と、上記通信手段を介して上記外部記憶装置に対してデータの読出し又は書き込みを行なうデータ読み書き手段とをさらに備え、
上記制御手段は、上記流体収容体の交換指令を受け付けてからデータ読み書き手段がデータの読出し又は書き込みを終了するまで上記ロック機構のロック解除を保留するよう制御する請求項1〜9のいずれか一項に記載の流体供給装置。
【請求項11】
流体を噴射する噴射ヘッドと、加圧気体の加圧力に基づいて収容流体を上記噴射ヘッドに向かって送出するように構成された流体収容体が装着される装着部と、上記装着部に対して流体収容体を出し入れするための挿入口をカバーするカバー部材と、上記カバー部材が開かないようにロックするロック機構と、上記流体収容体の交換指令を受け付けたときに上記ロック機構をロック解除するよう制御する制御手段とを備え、
上記カバー部材はヒンジ構造による回動で開け閉め可能となっているとともに、上記カバー部材周辺のカバー部材以外の部材とカバー部材との隙間が、上記カバー部材の回動動作を妨げない範囲で可及的に狭くなるよう構成されていることを特徴とする流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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