説明

流体処理装置

【課題】簡単な構成で被処理流体に効果的に磁界が作用し、処理効果も高い流体処理装置を提供する。
【解決手段】中に流体を通す導管14と、導管14内に設けられ複数の永久磁石18を所定間隔で保持した磁石取付部材16を備える。導管14及び磁石取付部材16を一体的に保持して外部の配管に接続可能にした嵌合連結部材24を備える。磁石取付部材16は、導管14内に乱流を形成する乱流形成部である大径部22bを有する。導管14内で導管14の中心と磁石取付部材16の長手方向の軸心位置をずらして配置され、導管14内で流体に乱流を生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水道水等の流体の浄化、活性化を行う流体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水道水の磁気活性化装置として、住居や事業場などの域内の引込水道管の外周部に、永久磁石を配置した構造が種々提供されている。磁石を水道管に取り付ける場合、永久磁石が露出状態や、露出に近い状態で既存の供給導管に取り付けることは、永久磁石自体が破壊されやすく、歪み力を受けたり汚れるなど、耐久性や磁力の減衰につながるなどの問題があった。そこで、永久磁石を内蔵した半円状の一対の筐体を用いて、永久磁石の極性がN極、S極になるようにして、供給側の水道管を挟むようにした装置が提供されている。
【0003】
これらの供給導管の外周に永久磁石を装着した場合、何らかの外力や経年変化等により、磁石が外れたり向きが変わったりする恐れがあった。さらに、供給導管の外周に永久磁石を装着すると、供給導管の厚みや材質、磁石の取付位置又は方向により、導管内に効果的に磁界が形成されない場合や、供給導管内を通過する水道水等に効果的に磁界が作用しない場合もあった。
【0004】
そこで、永久磁石を保護する構造として、特許文献1に開示されているように、外周部に永久磁石を取り付けた供給導管に、大径の筒状ハウジングを被せて一体とし、このハウジングを装着した導管を、水道水等の供給導管の途中に取り付ける磁気流体活性化装置が提案されている。
【0005】
また、流体への磁界の作用を高めるために、特許文献2に開示されているように、処理する液体が通過する通過管と、該通過管の外側に設けられ磁場を付与する永久磁石を設け、通過管の内側には、該通過管の軸方向に回転軸線を有するスクリューを設け、通過管内の流体をスクリューでかき混ぜて、通過管の外側に設けられた永久磁石による処理を促進するようにした流体処理装置も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3106416号公報
【特許文献2】特開2005−66446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1,2に開示されているような、水道水の供給導管等の外側に永久磁石を取り付けて導管の周囲に磁界を形成し、導管内を流れる流体を処理する場合、導管の壁の厚さや装着装置の金具により、流体と磁石との間隔が比較的広くなり、磁力線が装着金具等に漏れて、流体に作用する磁界の強さが十分ではないという問題があった。
【0008】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みて成されたもので、簡単な構成で被処理流体に効果的に磁界が作用し、処理効果も高い流体処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、中に流体を通す導管と、この導管内に設けられ複数の永久磁石を前記流体の流れの方向に沿って所定間隔で保持した磁石取付部材と、前記導管及び磁石取付部材を一体的に保持して外部の配管に接続可能にした連結部材とを備え、前記磁石取付部材は、前記導管内で前記流体に螺旋状の流れやその他の乱流を生じさせるように配置されている流体処理装置である。前記磁石取付部材には、前記導管内に乱流を形成する乱流形成部が設けられている。
【0010】
前記磁石取付部材は、前記導管内で前記導管の中心と長手方向の軸心位置をずらして設けられているものである。さらに、前記磁石取付部材の両端部は大径部を有した閉塞部材を備え、前記磁石取付部材を前記導管に挿入した状態で、前記磁石取付部材と前記導管との間に円周方向に不均一な隙間が形成されている。前記磁石取付部材は、筒内に所定間隔で前記永久磁石が固定されたものである。
【0011】
前記磁石取付部材は、樹脂製の密閉された袋体であり、前記導管内に乱流を形成するための端部が一体に設けられているものでも良い。この端部は、所定角度捻られているものである。さらに、前記磁石取付部材自体が前記永久磁石毎に所定角度捻られているものでも良い。
【発明の効果】
【0012】
この発明の流体処理装置によれば、導管内に磁石取付部材が挿入され、導管内を流れる流体と磁石取付部材内の永久磁石との間隔が小さく、効果的に流体に磁界を作用させることができる。しかも、導管内を流れる流体の向きや流れの状態を強制的に変化させ乱流状態として、流れの中の流体分子が形成するクラスタを効果的に分解する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の第一実施形態の流体処理装置の磁石取付管を示す斜視図である。
【図2】この実施形態の流体処理装置の導管と磁石取付管を示す分解斜視図である。
【図3】この実施形態の流体処理装置の外観を示す斜視図である。
【図4】この発明の第二実施形態の流体処理装置の導管と袋体及び磁石取付板の透視斜視図である。
【図5】この発明の第二実施形態の流体処理装置の導管と磁石取付板を示す分解斜視図である。
【図6】この発明の第二実施形態の流体処理装置の変形例を示す透視斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の流体処理装置の一実施形態について、図1〜図3を基にして説明する。この実施形態の流体処理装置10は、水道水に磁界をかけて、水分子の集合体であるクラスタを分解し、水道水を活性化するもので、図3に示すように、水道の供給管12などの上流側の途中に挿入されて使用される。
【0015】
この流体処理装置10は、適宜な長さの直管状の塩化ビニル製の導管14に、金属製の磁石取付部材である磁石取付管16が挿入されている。磁石取付管16は、金属管の場合、低比透磁率で肉厚の薄いものが好ましく、例えばAl、Cuおよびこれらの合金の管、又は低比透磁率ステンレス鋼管などが適用できる。また、合成樹脂管の場合、PVC(ポリ塩化ビニル)管、PE管、PP(ポリプロピレン)管などで、肉厚の薄いものが好ましい。
【0016】
磁石取付管16内には、円板状の永久磁石18が一定間隔で挿入され、各永久磁石18間には、非磁性体のスペーサ20が配置されている。永久磁石18は、ネオジウム磁石、コバルト磁石、フェライト磁石などが利用可能であり、特にネオジウム磁石は、残留磁束密度が1T(テスラ;Wb(ウエーバ)/m)以上の高い磁束密度のものが好ましい。
【0017】
永久磁石18は、表裏で極性がN極、S極に形成されたものであり、永久磁石18の表裏の外側を囲むように磁力線が走り磁界が形成されている。従って、磁石取付管16には、全ての永久磁石18が同じ極性の向きで配置されている。磁力線は、永久磁石18の外周部から出て導管14内へ延びて磁石取付管16に入る磁力線が形成されている。この磁力線の形成は、永久磁石18の取付間隔により、個々の永久磁石18で閉じた磁力線になったり、磁石取付管16全体で一つの磁石のような磁力線の形になったりする。好ましくは、個々の永久磁石18が個々に磁界を形成するような配置が良い。
【0018】
閉塞部材22は、底部22aが閉じられて一体に形成され、開口端側には大径部22bが形成され、大径部22bに磁石取付管16が密に嵌合している。磁石取付管16と閉塞部材22との結合は、接着剤等により水密に行われる。
【0019】
磁石取付管16は、導管14内に挿入され、導管14の中心とは偏心させて固定される。固定は、導管14の端部に図示しない固定部材等を配置して位置決めし、接着剤等により固定される。これにより、磁石取付管16を導管14に挿入した状態で、磁石取付管16と導管14の内壁面との間に、導管14の円筒の円周方向に不均一な隙間が形成されている。導管14の端部には、連結部材である嵌合連結部材24の大径部24aが嵌合し、嵌合連結部材24の小径部24bには、水道の供給管12に連結するための連結部材であるコネクタ26が連結されている。導管14と嵌合連結部材24には、熱収縮製樹脂チューブにより、熱収縮させた保護被覆28が被せられ、保護被覆28の両端部は、締め付け部材30により水密状態になるように締め付け固定されている。
【0020】
コネクタ26は、嵌合連結部材24の小径部24bに、水密に固定された接続部26aが一体に接続されている。他方の供給管12に連結される接続部26bには、供給管12に嵌合して、図示しないOリング等を介して水密状態に締め付けることができる締め付け環部材32が設けられている。
【0021】
導管14内の水道水等の流体の流れは、偏心して配置された磁石取付管16により、流体の流れる空間に広狭ができ、閉塞部材22の大径部22bが導管14の内壁に接触し、一対の大径部22b間の磁石取付管16と導管14との間に相対的に狭い空間が形成され、流速に差異が生じて、導管16内で流体に螺旋状の流れ等が形成され乱流となる。この実施形態では、閉塞部材22の大径部22bが乱流形成部となる。これにより、永久磁石18による磁界の向きに対して、流体の流れが磁力線の向きと複雑に交差し、直交しやすく、効果的に磁界の作用を受けることができる。さらに、流れが乱流となることにより、水分子のクラスタが磁界の影響を受けて分解されやすくなり、処理効果か高くなる。
【0022】
この実施形態の流体処理装置10によれば、水道の供給管12に挿入接続して利用する場合、その下流側に供給される水道水は全て流水分子のクラスタが小さく分解されたものとなり、洗濯や食器洗いその他の洗浄において、洗浄力を著しく高めるものである。また、流体処理装置10により処理した水は、使用後の排水等において、下流側の種々の配管内でスケール(Ca、Mg、その他)の付着が極めて少なくなる。さらには、管内面のスケールを除去する効果もある。さらに、スケールの付着を防止するとともにスケール同士の結合を阻害し、結晶化を防ぐものである。そして、微生物の栄養源や繁殖地となるスケールの付着や結晶の大型化が難しいため、微生物の繁殖を抑えることになり、水質の悪化を抑えることが可能になる。
【0023】
次に、この発明の第二実施形態の流体処理装置について、図4、図5を基にして説明する。ここで、上記実施形態と同様の部材は、同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態の流体処理装置は、複数の永久磁石36を磁性体金属や非磁性体の磁石取付部材である取付板38に適宜の間隔で固定し、磁石取付部材である熱可塑性樹脂のチューブから成る袋体40内に取付板38を密閉し、導管14内に固定したものである。この状態で、上記実施形態と同様に保護被覆等を施し、図3に示すように形成される。
【0024】
この場合、熱可塑性樹脂チューブの袋体40の両方の端部40aを溶着して密閉し、端部40aを平らに形成する。これにより、導管14内に入る流体を端部40aで袋体40の両側へ案内し、導管14内での流れに乱流を形成する。この実施形態では、袋体40の端部40aが乱流形成部となる。
【0025】
さらに、端部40aを、図4、図5の2点鎖線で示すように、流れの方向に対して捻るように湾曲させた形状とすることにより、流体に螺旋状の流れを形成し、より効果的に流れを乱流にすることができる。これらにより、上記実施形態と同様の作用効果を奏し、処理する流体をより効果的に活性化することができる。
【0026】
また、図6に示すように、取付板38に対して永久磁石36を表裏に交互に取り付けても良い。さらに、取付板38を永久磁石38毎に90°捻って、永久磁石38の向きが90°ずつ変わるようにしても良い。この状態で、永久磁石36が取り付けられた取付板38を袋体40に収納し密閉して、導管14に挿入する。そして、上記実施形態と同様に保護被覆等を施し、図3に示すように形成される。この実施形態では、永久磁石36が収納された袋体40全体が乱流形成部となる。そして、これらの構成の場合も、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0027】
なお、この発明の流体処理装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、導管内に挿入される永久磁石は、適宜の種類を用いることができる。また、水道水の導管としては、鋼管、ステンレス鋼管、鉛管や、合成樹脂製のPVC樹脂管、PE樹脂管等を用いることができ、他の流体の導管として、鋼管、ステンレス鋼管、あるいはCu(銅)管、Al(アルミニウム)などの非鉄金属管など、適宜選択し得る。この流体処理装置の用途は、水道水の処理の他、鯉等の飼育、養殖用の水、工業用水等にも利用可能である。さらに、流体としては、水の他、ガソリンや軽油等の油類にも利用可能なものである。
【符号の説明】
【0028】
10 流体処理装置
12 供給管
14 導管
16 磁石取付管
18 永久磁石
20 スペーサ
22 閉塞部材
24 嵌合連結部材
26 コネクタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中に流体を通す導管と、この導管内に設けられ複数の永久磁石を前記流体の流れの方向に沿って所定間隔で保持した磁石取付部材と、前記導管及び磁石取付部材を一体的に保持して外部の配管に接続可能にした連結部材とを備え、前記磁石取付部材は、前記導管内で前記流体に乱流を生じさせるように配置されていることを特徴とする流体処理装置。
【請求項2】
前記磁石取付部材には、前記導管内に乱流を形成する乱流形成部が設けられている請求項1記載の流体処理装置。
【請求項3】
前記磁石取付部材は、前記導管内で前記導管の中心と長手方向の軸心位置をずらして設けられている請求項2記載の流体処理装置。
【請求項4】
前記磁石取付部材の両端部は大径部を有した閉塞部材を備え、前記磁石取付部材を前記導管に挿入した状態で、前記磁石取付部材と前記導管との間に円周方向に不均一な隙間が形成されている請求項3記載の流体処理装置。
【請求項5】
前記磁石取付部材は、筒内に所定間隔で前記永久磁石が固定されたものである請求項4記載の流体処理装置。
【請求項6】
前記磁石取付部材は、取付板と樹脂製の密閉された袋体であり、前記袋体に乱流形成部である端部が一体に設けられている請求項2記載の流体処理装置。
【請求項7】
前記磁石取付部材は、前記永久磁石毎に相対的に所定角度捻られているものである請求項6記載の流体処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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