説明

流体収容容器、流体収容容器の再生方法、流体収容容器におけるシール方法

【課題】流体収容容器に流体を注入する際に使用した穴が信頼性の高いシール性を確保して簡単且つ容易にシールされた流体収容容器、使用済みの流体収容容器の再生方法、及び、流体収容容器におけるシール方法を提供する。
【解決手段】使用済みのインクカートリッジ11のインク注入孔21,22を被覆するカバーフィルム31に開けた穴61の封止部材として、所定の加熱温度で溶融する第1フィルム71と第1フィルム71の溶融温度では溶融することなく且つ第1フィルム71よりも耐熱性の強い第2フィルム72との積層フィルム70を用い、第1フィルム71が容器本体12側となるようにして容器本体12上に各孔21,22を被覆する態様で載置し、積層フィルム70を第2フィルム72側から加熱して第1フィルム71を溶融させ、第1フィルム71に溶着機能を発揮させることにより積層フィルム70でシールするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を収容した流体収容容器、使用済み流体収容容器を流体の再充填により再生する流体収容容器の再生方法、及び流体収容容器におけるシール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の流体収容容器として、例えば流体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンタ(以下、「プリンタ」という。)に着脱可能に装着されるインクカートリッジが知られている。このインクカートリッジは、略扁平箱状をなす容器本体を有しており、その容器本体内には、インク(流体)を収容可能なインク収容室が区画形成されている。また、容器本体の下面にはインク収容室にインクを初期充填するときに使用されるインク注入孔が開口形成されており、そのインク注入孔は容器本体の下面に貼着されたフィルムによりインクの漏出を抑制すべく被覆されている。
【0003】
こうしたインクカートリッジにあっては、プリンタに装着された後において、プリンタでの印刷等によってインクが消費されると、インク収容室内のインク残量が少なくなり、最後には使用済みのインクカートリッジとなって新しいインクカートリッジと交換されることになる。このような交換によりプリンタから取り外された使用済みのインクカートリッジについては、その容器本体も複数回の使用に応えることができるものであるため、近時においては、インクを再充填することにより再使用可能なインクカートリッジとして再生し、もって資源の有効利用、環境保全などに資することが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
この特許文献1に記載のインクカートリッジの再生方法では、使用済みのインクカートリッジを再生するにあたり、まず、容器本体の下面のインク注入孔を被覆シールしているフィルムを剥がした後、その時点で密封された状態にあるインク注入孔にドリルで真円状に穴(穿孔)を開けるようにしている。そして、その穴からインクを再充填した後、その穴にゴム栓をすると共に融着フィルムを載せ、そのフィルムを容器本体のインク注入孔周りの表面に熱融着することによりシールするようにしている。
【特許文献1】特許第3667749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の再生方法では、インクの再充填時にドリルで開けた穴をゴム栓で封止した上で、さらに融着フィルムを容器本体のインク注入孔周りの表面に熱融着するようにしている。そのため、この特許文献1の再生方法による場合は、インクの再充填後にゴム栓をする作業とフィルムを熱融着する作業とが必要になって作業性が煩雑になると共に、シールのための部材点数が増えてコスト高になるという問題がある。
【0006】
また、特許文献1の再生方法においては、融着フィルムとしてポリエステル接着テープの如き高温融着性のプラスチック接着テープが使用されている。ここで、ポリエステル系のフィルムは、熱融着機能には優れるものの、インクカートリッジにおいて封止フィルムとして汎用されるポリエチレンテレフタレート系フィルムに比べると耐熱性が弱いため、そのシールの信頼性が低いという問題がある。したがって、作業性の向上と部材点数及びコストの低減を目的として、上記のゴム栓を省略する構成とした場合、ポリエステル系のフィルムのみではシール性が良好でなくなり、インクの再充填時に開けた穴からインクが漏れてしまうおそれがあった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。その目的は、流体収容容器に流体を注入する際に使用した穴が信頼性の高いシール性を確保して簡単且つ容易にシールされた流体収容容器、使用済みの流体収容容器の再生方法、及び、流体収容容器におけるシール方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の流体収容容器におけるシール方法は、流体収容容器に形成された孔及び該孔を被覆するように前記流体収容容器に貼着された孔被覆フィルムに開けた穴のうち何れかを封止対象開口として、該封止対象開口を封止部材で封止するにあたり、前記封止部材として、所定の加熱温度で溶融する第1フィルムと該第1フィルムの溶融温度では溶融することなく且つ前記第1フィルムよりも耐熱性の強い第2フィルムとを含む複数のフィルムが積層され、それら各フィルムの積層方向の一方側では前記第1フィルムが最外層を構成すると共に他方側では前記第2フィルムが最外層を構成する重合フィルムを用い、該重合フィルムを前記第1フィルムが前記流体収容容器側となるようにして該流体収容容器上に前記封止対象開口を被覆する態様で載置した状態において、前記積層フィルムを前記第2フィルム側から加熱して前記第1フィルムを溶融させ、該第1フィルムに溶着機能を発揮させることにより前記積層フィルムで前記封止対象開口をシールするようにした。
【0009】
この発明によれば、封止対象開口を封止する場合において、積層フィルムの第1フィルムが加熱により溶融して溶着機能を発揮すると共に、積層フィルムの第2フィルムが耐熱性を有しているので、良好なシール性を確保することができる。
【0010】
また、本発明の流体収容容器におけるシール方法において、前記第1フィルムは、ポリオレフィン系のフィルム、エステル系のフィルム、又はイージーピール機能を持ったフィルムであり、前記第2フィルムは、ポリエチレンテレフタレート系のフィルムである。
【0011】
この発明によれば、第1フィルムにより良好な溶着機能が得られると共に、特に、第1フィルムがイージーピール機能を持ったフィルムで構成される場合には、シールした後において必要に応じて簡単に開封することもできる。
【0012】
また、本発明の流体収容容器におけるシール方法において、前記第1フィルムは、その厚みが20〜60μに設定されている。
この発明によれば、第1フィルムが加熱により溶融した場合において、その第1フィルムが厚さ方向で接合する相手側のフィルム(第2フィルム等)の接合面が微細な凹凸を有している場合にも、その凹凸に対応することができると共に、コスト高になることを抑制できる。
【0013】
また、本発明の流体収容容器におけるシール方法において、前記積層フィルムは、前記第2フィルム側から加熱される場合に、前記積層フィルムにおける前記封止対象開口の周縁に沿う環状領域が少なくとも加熱される。
【0014】
この発明によれば、積層フィルムの第1フィルムは、封止対象開口の周縁に沿う環状領域が加熱により確実に溶融して溶着するので、シール機能を良好に発揮することができる。
【0015】
また、本発明の流体収容容器におけるシール方法において、前記積層フィルムは、前記第2フィルム側から加熱される場合に、前記積層フィルムにおける前記封止対象開口の被覆領域及び該封止対象開口の周縁に沿う環状領域が少なくとも加熱される。
【0016】
この発明によれば、積層フィルムの第1フィルムは、封止対象開口の周縁に沿う環状領域とその内側となる封止対象開口の被覆領域の双方が同様に加熱されるので、その加熱による強度変化も同様にでき、各領域間での強度差の発生を抑制することにより、シール性を均一に発揮させることができる。
【0017】
次に、本発明の流体収容容器の再生方法は、使用済みの流体収容容器に形成された孔及び該孔を被覆するように前記流体収容容器に貼着された孔被覆フィルムに開けた穴のうち何れかにて構成される封止対象開口を介して前記流体収容容器内に流体を再充填した後、前記穴を封止部材により封止して流体収容容器を再生するにあたり、前記封止部材として、所定の加熱温度で溶融する第1フィルム及び該第1フィルの溶融温度では溶融することなく且つ前記第1フィルムよりも耐熱性の強い第2フィルムを含む複数のフィルムが積層され、それら各フィルムの積層方向の一方側では前記第1フィルムが最外層を構成すると共に他方側では前記第2フィルムが最外層を構成する積層フィルムを用い、該積層フィルムを前記第1フィルムが前記流体収容容器側となるようにして該流体収容容器上に前記封止対象開口を被覆する態様で載置した状態において、前記積層フィルムを前記第2フィルム側から加熱して前記第1フィルムを溶融させ、該第1フィルムに溶着機能を発揮させることにより前記積層フィルムで前記封止対象開口をシールするようにした。
【0018】
この発明によれば、良好なシール性を確保した流体収容容器を再生することができる。
また、本発明の流体収容容器の再生方法において、前記第1フィルムは、ポリオレフィン系のフィルム、エステル系のフィルム、又はイージーピール機能を持ったフィルムであり、前記第2フィルムは、ポリエチレンテレフタレート系のフィルムである。
【0019】
この発明によれば、良好なシール性を確保した流体収容容器を再生することができると共に、特に、第1フィルムがイージーピール機能を持ったフィルムで構成される場合には、その後において必要に応じて簡単に開封することもできる。
【0020】
また、本発明の流体収容容器の再生方法において、前記第1フィルムは、その厚みが20〜60μに設定されている。
この発明によれば、良好なシール性を確保した流体収容容器を低コストで再生することができる。
【0021】
また、本発明の流体収容容器の再生方法において、前記積層フィルムは、前記第2フィルム側から加熱される場合に、前記積層フィルムにおける前記封止対象開口の周縁に沿う環状領域が少なくとも加熱される。
【0022】
この発明によれば、封止対象開口の周縁に沿う領域が良好にシールされた流体収容容器を再生することができる。
また、本発明の流体収容容器の再生方法において、前記積層フィルムは、前記第2フィルム側から加熱される場合に、前記積層フィルムにおける前記封止対象開口の被覆領域及び該封止対象開口の周縁に沿う環状領域が少なくとも加熱される。
【0023】
この発明によれば、封止対象開口の周縁に沿う環状領域及びその内側となる封止対象開口の被覆領域の双方で積層フィルムの強度が均一化されることにより良好なシール機能を発揮する流体収容容器を再生することができる。
【0024】
次に、本発明の流体収容容器は、上記のように構成された流体収容容器の再生方法により再生される。
この発明によれば、良好なシール性を確保した流体収容容器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を流体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンタ(以下、「プリンタ」と略称する。)に着脱可能に装着されるインクカートリッジ及びその使用済みインクカートリッジの再生方法などに具体化した一実施形態について図1〜図7を参照しながら説明する。なお、本明細書中の以下の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は、図1〜図4において矢印で示す前後方向、左右方向、上下方向をそれぞれ示すものとする。
【0026】
図1〜図4に示すように、本実施形態の流体収容容器としてのインクカートリッジ11は、例えばポリプロピレン(PP)等の合成樹脂からなる前面側が開口した扁平略矩形箱形状の容器本体12を有している。容器本体12の前面には、その開口部12a(図4参照)の略全面を覆うように熱溶着可能な材料からなるフィルム部材(図示略)が貼着されると共に、そのフィルム部材の外側(前面側)から開口部12aを隠蔽するように蓋体13が着脱可能に取着されている。また、容器本体12の後面には、その後面の略全体を覆うように熱溶着可能な材料からなるフィルム部材14が貼着されると共に、容器本体12の上面には、そのインクカートリッジ11内に収容された流体としてのインクの色の種類等を示す帯状の識別ラベル15が貼着されている。
【0027】
図2〜図4に示すように、容器本体12の左側面の下部には、このインクカートリッジ11がプリンタに設けられたカートリッジホルダ(図示略)に対して装着される場合に、カートリッジホルダ側に設けられたガイド凹条(図示略)内に挿入されて装着方向をガイドされるガイド凸条16が上下方向に沿って延びるように形成されている。
【0028】
また、図1〜図4に示すように、同じく容器本体12の左側面においてガイド凸条16よりも上方となる位置からは弾性変形可能に形成された係合レバー17が左斜め上方に向けて延設され、その係合レバー17の表面となる左側面の略中央部には係止爪17aが水平方向に沿うように突設されている。したがって、インクカートリッジ11は、プリンタのカートリッジホルダに装着された場合、係合レバー17が弾性変形すると共に、その係止爪17aがカートリッジホルダ側の一部に係止することにより、カートリッジホルダに対して位置決め状態で装着されるようになっている。
【0029】
一方、図1に示すように、容器本体12の右側面の下部には、基板ユニット18が取り付けられ、その基板ユニット18の表面側には半導体記憶素子を実装した回路基板19が設けられている。なお、回路基板19の半導体記憶素子にはインクカートリッジ11に関する各種情報(例えば、インク色情報、インク残量情報など)が記憶されている。そして、回路基板19は、インクカートリッジ11がプリンタのカートリッジホルダに装着された際に、回路基板19の表面に露出した端子19aがカートリッジホルダ側に設けられた接続端子と接触することにより、プリンタ側の制御装置(図示略)との間で各種情報を受け渡しするようになっている。
【0030】
また、図3及び図4に示すように、容器本体12の下面には、その右端側から左端側へ順に、矩形状をなす開口部20、円形状をなす第1インク注入孔21、同じく円形状をなす第2インク注入孔22、及び左右両側に略コ字状の一対のガイド壁23aを有してなる円形状のインク供給口23が形成されている。開口部20の内部は、大気連通路の一部を構成する大気連通室24となっており、この大気連通室24は図示しない大気開放口を介して容器本体12の外部(すなわち、大気)に連通している。そして、この大気連通室24内には、その内奥から順に、コイルばね25、弁体26及び弁支持部材27が収容されている。
【0031】
第1インク注入孔21は、容器本体12内にリブ28により区画形成された上部インク収容室29及び下部インク収容室30に細い流路21a及び狭い流入口21bを介して連通している。また、第2インク注入孔22は、そのまま下部インク収容室30に連通している。これらの両インク注入孔21,22は、各インク収容室29,30にインクを初期充填する際に使用されるものであり、その初期充填が終了した後は、図2〜図4に示すように、開口部20と共に孔被覆フィルムとしてのカバーフィルム31によりシールされている。因みに、このカバーフィルム31は、耐熱性に優れたポリエチレンテレフタレート(PET)系のフィルム又はナイロン(NY)系のフィルムにより構成されている。
【0032】
また、インク供給口23は、インクカートリッジ11がプリンタのカートリッジホルダに装着された際に、そのカートリッジホルダに設けられたインク供給針(図示略)が挿入されるものであり、図2及び図3に示すように、プリンタのカートリッジホルダへの装着前にはフィルム部材32により封止されている。そして、このフィルム部材32は、インクカートリッジ11がプリンタのカートリッジホルダに装着される前に剥がされるか、又はカートリッジホルダに装着されたときに、カートリッジホルダに設けられているインク供給針によって突き破られることになる。
【0033】
図3及び図4に示すように、インク供給口23内には、カートリッジホルダ側のインク供給針のインク供給口23内への挿入を許容するエラストマ等からなる環状のシール部材33と、このシール部材33に着座する供給弁34と、この供給弁34をシール部材33に向けて付勢するコイルばね35とが収容されている。すなわち、インク供給口23は、コイルばね35に付勢された供給弁34がシール部材33に圧接することにより、常には容器本体12外へのインクの流出が規制された閉塞状態となる。その一方、カートリッジホルダ側のインク供給針がインク供給口23内に挿入されたときには、そのインク供給針に押されて供給弁34がコイルばね35の付勢力に抗してインク供給口23の内奥へ移動し、シール部材33から離間することにより、インク供給口23は、容器本体12外へのインクの流出が許容された開放状態となる。
【0034】
上記のように構成されたインクカートリッジ11は、プリンタのカートリッジホルダに装着された状態でインクが消費され、そのインク残量がなくなると使用済みのインクカートリッジとなり、カートリッジホルダから取り外されて新しいインクカートリッジと着脱交換されることになる。こうして取り外された使用済みのインクカートリッジは、それを廃棄処分にすることなく、近時は、資源の有効利用及び環境保全の見地からインクを再充填することにより再使用可能なインクカートリッジとして再生するのが一般的である。
【0035】
そこで次に、こうした使用済みのインクカートリッジ11を再生する際にインク注入用のカバーフィルム31に穴を開けるための穴開け治具について、図5を参照しながら説明する。
【0036】
図5(a)〜(c)に示すように、本実施形態の穴開け治具40は、側面視略コ字状の基体部41と、この基体部41の表裏両側にボルト42によって各々接合固定される一対の接合板43とを備えている。基体部41は、その厚みL1(図5(c)参照)がインクカートリッジ11の厚みと略同一であり、その左右両端から各々下方に延びる一対の脚部44間の間隔L2(図5(b)参照)はインクカートリッジ11の左右方向長さと略同一となるように形成されている。
【0037】
そして、左右両脚部44の互いに対向する各内面45はインクカートリッジ11の左右各側面に摺接可能なガイド部として構成され、それら各内面45の下端部は、両脚部44の先端側ほど末広がりとなるテーパ面45aとされている。なお、図5(b)において左側の脚部44の内面45にはインクカートリッジ11の左側面に形成されているガイド凸条16を摺動ガイド可能な凹条45bが形成されている。
【0038】
図5(a)及び図5(c)に示すように、各接合板43は、その左右方向の長さが基体部41と略同一であり、その上下方向の長さが基体部41の脚部44をも含めた長さと略同一に形成された略矩形状の板材で構成されている。そして、両接合板43の互いに対向する各内面46はインクカートリッジ11の前面と後面に摺接可能なガイド部として構成され、それら各内面46の下端部は、両接合板43の先端側ほど末広がりとなるテーパ面46aとされている。
【0039】
図5(b)に示すように、基体部41における両脚部44間の下面で左右両端側となる各位置には側面視矩形状の切り欠き部47がそれぞれ形成されている。両切り欠き部47のうち図5(b)において左側の切り欠き部47は、その左右方向の内面幅がインクカートリッジ11におけるインク供給口23の左右両側に形成された両ガイド壁23aの間隔と略同一となるように形成されている。そして、各切り欠き部47内には直方体状をなす変位部材としてのブロック48が切り欠き部47内からの出没方向へのスライド移動自在に配設されている。
【0040】
また、図5(a)(b)に示すように、基体部41には、ボルト49が基体部41の上面側からその先端を切り欠き部47内まで貫通させるようにして回動自在に支持されている。また、同じく基体部41には、ボルト50が基体部41の左右両側面側からその先端を切り欠き部47内まで貫通させるようにして回動自在に支持されている。そして、ボルト49の先端部に形成された雄ねじ部51は対応するブロック48に形成された雌ねじ孔52に螺合されると共に、ボルト50の先端面は切り欠き部47内において対応するブロック48の側面に当接することによりブロック48の移動を規制している。
【0041】
したがって、ブロック48は、ボルト50がブロック48との当接を解消する方向へ螺退した状態でボルト49が回転した場合には、切り欠き部47内でスライド移動するようになっている。なお、ブロック48は、ボルト49が図5(a)における時計回り方向(正転方向)へ回転した場合には、切り欠き部47内へ没入する方向(図5(b)では上方)へスライド移動し、ボルト49が図5(a)における反時計回り方向(逆転方向)へ回転した場合には、切り欠き部47内から突出する方向(図5(b)では下方)へスライド移動する。
【0042】
図5(a)〜(c)に示すように、基体部41の下面で左右の両切り欠き部47の間となる位置には、インクカートリッジ11における第1インク注入孔21と第2インク注入孔22の配置間隔と対応した間隔をおいて左右一対の円形穴53が形成されている。各円形穴53内には、胴部が円形穴53の内径よりも僅かに小さな直径の円柱状をなすと共に先端部が側面視で錐状をなすように形成された刃体54が、その先端部を円形穴53から突出させるようにして回動可能に支持されている。
【0043】
この刃体54の先端部には、図5(d)に示すように、軸方向の先端側から見た場合に、その軸中心を通る一点から放射方向へ延びる4つの刃部55が等角度間隔(この場合は、90度間隔)おきとなるように形成されている。そして、これらの刃部55は、刃体54の軸中心を通る一点から放射方向へ離れるにつれて、各刃部55の交点となる一点を頂点にして刃体54の基端側へ延びるように形成されている。また、図5(a)(b)に示すように、基体部41には、ボルト56が基体部41の上面側からその先端を円形穴53内まで貫通させるようにして回動自在に支持されると共に、調節機構を構成する押圧ねじ57が基体部41の片側の接合板43の外側からその先端を基体部41の円形穴53内まで貫通させるようにして回動自在に支持されている。
【0044】
そして、ボルト56の先端部に形成された雄ねじ部58は対応する刃体54の基端部に形成された雌ねじ孔59に螺合されると共に、押圧ねじ57の先端面は円形穴53内において対応する刃体54の側面に圧接することにより刃体54の回動を規制している。したがって、刃体54は、押圧ねじ57が刃体54の側面との圧接を解消する方向へ螺退した状態において、ボルト56との螺着状態を維持したまま、そのボルト56と一体的に回転されることにより、各刃体54の軸心を中心とする回転方向における各刃部55の角度位置が変更調節可能になっている。
【0045】
なお、刃体54の側面に押圧ねじ57が圧接して刃体54の回動を規制した状態のままボルト56を螺退方向へ回転させた場合は、ボルト56だけが移動して、そのボルト56の頭部を基体部41から浮き上がらせる方向(図5(b)では上方向)へ変位する。そして、その状態から押圧ねじ57が緩められると、雄ねじ部58と雌ねじ孔59が螺合することで一体化されているボルト56と刃体54がボルト56の頭部の浮き上がっていた分だけ降下し、刃体54は基体部41の下面からの突出量が変更される。そして、その状態にて再び押圧ねじ57を締め付け方向に回転させて刃体54の側面に圧接させれば、刃体は、その回転及び上下方向(軸方向)の移動が規制された状態となる。
【0046】
そこで次に、上記のように構成された穴開け治具40を使用して使用済みインクカートリッジ11における各インク注入孔21,22及び開口部20をシールしているカバーフィルム31にインク注入用の穴を開ける穴開け方法について図6(a)(b)を参照しながら説明する。
【0047】
さて、カバーフィルム31に穴開けをする場合には、図6(a)に示すように、使用済みのインクカートリッジ11が逆さまに配置される。なお、この場合、インク供給口23からは既にフィルム部材32は剥がされている。そして、穴開け治具40が、その下面をインクカートリッジ11の上向きとされた下面と対向するように、且つ一対の刃部55がカバーフィルム31における各インク注入孔21,22の被覆領域と上下方向で対応するように配置される。
【0048】
そして次には、押圧ねじ57を緩めて各刃体54の回転方向の角度位置が調節されると共に、各ボルト50を緩めて各ブロック48の切り欠き部47内での位置取りが調節される。すなわち、その配置状態から、穴開け治具40がインクカートリッジ11側に接近して各刃体54の刃部55がカバーフィルム31に突き入れられた場合に、刃体54の刃部55が所望する方向の切り込みをカバーフィルム31に入れられるように且つ必要以上に深くはインク注入孔21,22内へ進入しないように事前調節が行われる。なお、刃体54のインク注入孔21,22内への進入程度の調節は、前述したごとく、ボルト56と押圧ねじ57の回転操作を交互に行うことで基体部41の下面からの刃体54の突出量を変更することで対応することも可能である。
【0049】
そして、以上の事前調節作業が終わると、穴開け治具40がインクカートリッジ11側に接近させられる。すると、穴開け治具40は、両脚部44の各内面45がインクカートリッジ11の左右各側面に摺接すると共に、各接合板43の各内面46がインクカートリッジ11の前後各面に摺接し、さらには左側の切り欠き部47の内面がインクカートリッジ11のインク供給口23の各ガイド壁23aに摺接して、その移動方向をガイドされる。
【0050】
そして、各ブロック48がインクカートリッジ11における容器本体12の上向きとなった下面及びインク供給口23の先端に各々当接する直前に、各刃体54の刃部55がカバーフィルム31における各インク注入孔21,22の被覆領域に突き入れられる。すると、カバーフィルム31には、各刃体54の刃部55により各インク注入孔21,22の中心と対応する一点から放射方向へ延びる4つの切り込みが十字状に形成される。
【0051】
すると、この十字状の切り込み形成により互いに同一形状をなす4つの切片60が形成され、それら各切片60がインク注入孔21,22内へ放射方向に離間するように分散して垂れ下がることにより、カバーフィルム31における各孔21,22の被覆領域には、図6(b)に示すように、穴61が形成される。なお、このとき、穴開け治具40は、各ブロック48がインクカートリッジ11における容器本体12の上向きとなった下面及びインク供給口23の先端に各々当接することにより、各刃体54がそれ以上にインク注入孔21,22内へ進入することが抑制される。この点で、本実施形態では、変位部材としての各ブロック48が規制部として機能することになる。
【0052】
その後、図示しないインク注入用ノズルが各穴61を介して各インク注入孔21,22内に挿入され、各インク注入孔21,22が連通するインク収容室29,30内へインクが再充填される。そして、インクの再充填が終了すると、その再充填のために開けられた穴61が封止部材によりシールされて、再使用可能なインクカートリッジ11が再生される。
【0053】
そこで次に、カバーフィルム31に開けられた穴61を封止対象開口として封止部材により再びシールするシール方法について図7を参照しながら説明する。
さて、図7に示すように、カバーフィルム31の穴(封止対象開口)61をシールする際には、2層構造の積層フィルム(封止部材)70が、カバーフィルム31上に載置される。この積層フィルム70は、所定の加熱温度で溶融する第1フィルム71と、この第1フィルム71の溶融温度では溶融することなく且つ第1フィルム71よりも耐熱性の強い第2フィルム72とが積層された構成をしている。すなわち、積層フィルム70は、両フィルム71,72の積層方向の一方側では第1フィルム71が最外層を構成すると共に他方側では第2フィルム72が最外層を構成している。
【0054】
そして、積層フィルム70は、カバーフィルム31上に載置される場合、第1フィルム71が容器本体12側に位置してカバーフィルム31と接するようにして、容器本体12上に各インク注入孔21,22と各々対応する両穴61を被覆する態様で載置される。ここで、第1フィルム71を容器本体12側にしてカバーフィルム31に接触させるのは、シール時の加熱で第1フィルム71を溶融させて溶着機能を発揮させるためであり、第2フィルム72を外面側に位置させるのは耐熱性に優れた第2フィルム72でシール機能を維持させるためである。
【0055】
なお、第1フィルム71としては、所定の加熱温度で溶融して溶着機能を良好に発揮するポリオレフィン(PO)系のフィルム、エステル系のフィルム、又はイージーピールオープン(EPO)機能を持ったフィルムが採用可能である。また、EPO機能を持ったフィルムの場合は、その溶着機能により積層フィルム70をカバーフィルム31上に接着状態とした後において必要時にはカバーフィルム31上から容易に剥がして再び穴61を露出させる(イージーピールオープンさせる)ことができる。
【0056】
一方、第2フィルム72は、上記のポリオレフィン(PO)系のフィルム等が溶融する加熱温度では溶融することがなく、且つ、ポリオレフィン(PO)系のフィルム等よりは耐熱性に優れたポリエチレンテレフタレート(PET)系のフィルムで構成されている。また、この第2フィルム72と積層状態となる上記の第1フィルム71は、その厚さが、20〜60μの範囲内の40μに設定されている。第1フィルム71の厚さを20μ以上とするのは、第2フィルム72の第1フィルム71との接合面に凹凸があっても、その凹凸を溶融した場合に対処できるようにするためであり、その厚さを60μ以下とするのは不必要に厚くなるとコスト高になるばかりか加熱時の熱伝導も悪くなるからである。
【0057】
そして、カバーフィルム31上に積層フィルム70が載置されると、次には図7に示すように、その積層フィルム70上から加熱手段となるヒータ73が積層フィルム70に向けて下降される。このヒータ73は、積層フィルム70の第1フィルム71は溶融するが第2フィルム72は溶融しない程度の所定温度に加熱されるものであり、その形状は積層フィルム70の表面(第2フィルム72の表面)に面接触可能な平面状の押圧面を有するブロック体で構成されている。
【0058】
そのため、図7に示すように、ヒータ73が積層フィルム70の表面に面接触して積層フィルム70を加熱した場合には、積層フィルム70におけるカバーフィルム31の穴61の周縁に沿う環状領域のみならず、その内側領域となる穴61の被覆領域の部分も加熱される。そのため、穴61の周縁に沿う環状領域が加熱により確実に溶融して溶着すると共に、その環状領域の内側となる穴61の被覆領域も同様に加熱されるので、積層フィルム70における特に第1フィルム71の加熱による強度変化も各領域間で同様にでき領域間での強度差の発生が抑制される。
【0059】
そして、ヒータ73の加熱により積層フィルム70は第1フィルム71が溶融することによりカバーフィルム31に対して強固に溶着し、そのフィルム31に開けられている穴61を被覆した状態となってシール機能を発揮するようになる。その後、ヒータ73が図7に実線で示す接触位置から二点鎖線で示す待機位置へと上昇すると、シール工程が終了して再使用可能に再生されたインクカートリッジ11が得られる。
【0060】
したがって、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)穴開け治具40によりカバーフィルム31に開けられる穴61は、そのフィルム31において十字状の切り込みにより形成された各切片60がインク注入孔21,22内へ垂れ下がることにより形成されるものであるため、カバーフィルム31から破材がでることもない。したがって、そのようにして形成された穴61を介して再充填のために注入されるインク中に破材が混入することはないので、再使用されるインクカートリッジ11内の流路(例えば、細い流路21a、狭い流入口21b)などに目詰まりが発生する虞を抑制することができ、インクカートリッジ11を好適に再生することができる。
【0061】
(2)穴開け治具40によりカバーフィルム31における各インク注入孔21,22の被覆領域内に、その中心が各インク注入孔21,22の中心に合致して偏りのない穴61を開けることができるので、その穴61を介したインクの再充填を容易に行うことができる。
【0062】
(3)穴開け治具40によりカバーフィルム31における各インク注入孔21,22の被覆領域内に放射方向に均等な大きさで各インク注入孔21,22内に垂れ下がる各切片60でもってきれいな穴61を開けることができるので、インク注入用のノズル等を簡単に穴61内へ差し込むことができ、インクの再充填作業を簡便に行うことができる。
【0063】
(4)穴開け治具40によりカバーフィルム31に切り込みを入れて穴61を開ける際には、容器本体12における各インク注入孔21,22の周縁を破損することがなく、この点でも目詰まりの誘因となる破材の発生を抑制できる。また、切り込み形成によりできる各切片60が各インク注入孔21,22内に長く垂れ下がることも抑制できるので、例えば第1インク注入孔21内の細い流路21aや狭い流入口21bが垂れ下がった切片60で塞がれることも抑制でき、良好にインクの再充填作業を行うことができる。
【0064】
(5)穴開け治具40は、刃体54の先端の各刃部55が刃体54の軸中心を通る一点から放射方向において前記一点から離れるにつれて、該一点を頂点とするように刃体54の基端側へ延びるように形成されており、各刃部55の交点が先鋭状となるため、穴開けの際に刃体54の先端をカバーフィルム31に対して鋭利に突き入れることができる。したがって、カバーフィルム31に対して破材を発生させることなく切り込みを入れてきれいな穴61を開けることができると共に、刃体54を回転駆動させる必要もないので簡単に穴開け作業を行うことができる。
【0065】
(6)穴開け治具40は、穴開け時において、刃体54の刃部55が必要以上に容器本体12のインク注入孔21,22内に進入することを規制部として機能するブロック48が容器本体12側と当接することで抑制できる。そのため、容器本体12を進入し過ぎた刃部55により破損することを抑制できると共に、穴開けの度毎に同じ大きさの穴61を開けることができる。
【0066】
(7)また、変位部材として機能する各ブロック48の切り欠き部47内での位置取りをボルト49,50を回動させて変更調節することにより、カバーフィルム31に対する刃体54の刃部55の突き入れ量を調整でき、形成される穴61の大きさを変更することができる。また、ボルト50を回動させないようにすれば、常に一定の大きさの穴61を開けることができる。
【0067】
(8)穴開け治具40は、調節機構としての押圧ねじ57を緩めて刃体54の回転方向の角度位置を調節することにより、各刃部55により形成される切り込みの延びる方向を変更でき、各切片60がインク注入孔21,22内に垂れ下がる位置を調節することも可能となる。すなわち、インク注入孔21,22内の流路21aやインク流入口21bの位置に応じて各切片60の垂れ下がり位置を調節することができる。
【0068】
(9)穴開け治具40は、両脚部44の各内面45及び両接合板43の各内面46が、刃体54が先端をカバーフィルム31に突き入れる場合に、その突き入れ方向をカバーフィルム31と直交する方向に沿ってガイドするガイド部として機能する。したがって、穴開け時において、刃体54の刃部55をカバーフィルム31におけるインク注入孔21,22の被覆領域内の同一位置へ常に突き入れることが可能となり、穴開けの度毎に同一位置に対して穴61を形成することができる。
【0069】
(10)カバーフィルム31に開けられた封止対象開口としての穴61を封止する場合には、積層フィルム70の第1フィルム71が加熱により溶融して溶着機能を発揮すると共に第2フィルム72が耐熱性を発揮して良好なシール性を確保することができる。したがって、良好なシール性を確保したインクカートリッジ11を得ることができる。
【0070】
(11)第1フィルム71をイージーピール機能を持ったフィルムで構成した場合には、積層フィルム70をシールした後において必要に応じて簡単に開封することもできる。
(12)第1フィルム71は、その厚みが20〜60μに設定されているため、ヒータ73の加熱により第1フィルム71が溶融した場合には、その第1フィルム71が厚さ方向で接合する第2フィルム72の接合面が微細な凹凸を有している場合にも、その凹凸に対応することができると共に、積層フィルム70がコスト高になることを抑制できる。
【0071】
(13)積層フィルム70の第1フィルム71は、インク注入孔21,22の周縁に沿う環状領域が加熱により確実に溶融して溶着するので、シール機能を良好に発揮することができる。
【0072】
(14)また、積層フィルム70の第1フィルム71は、インク注入孔21,22の周縁に沿う環状領域とその内側となるインク注入孔21,22の被覆領域の双方が同様に加熱されるので、その加熱による強度変化も同様にでき、各領域間での強度差の発生を抑制することにより、シール性を均一に発揮させることができる。
【0073】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・ 穴開け治具40における刃体54は、図5(e)に示すように、3つの刃部55が刃体54の軸中心となる一点から放射方向へ延びるものであってもよく、又は、図5(f)に示すように、8つの刃部55が刃体54の軸中心となる一点から放射方向へ延びるものであってもよい。要するに、少なくとも3つの刃部55が刃体54の先端の一点から放射方向へ延びるように形成されたものであればよい。
【0074】
・ また、穴開け治具40は、刃体54の各刃部55が等角度間隔でなく、不等な角度間隔で放射方向へそれぞれ延びる構成であってもよい。
・ また、穴開け治具40は、刃体54の各刃部55が刃体54の先端において軸線と直交する平面内で放射方向に延びるように形成されたものであってもよい。
【0075】
・ また、穴開け治具40は、脚部44の内面45や接合板43の内面46が穴開け時においてインクカートリッジ11の各々対応する側面(面)に摺接しない構成、すなわちガイド機能を有しないものであってもよい。
【0076】
・ また、穴開け治具40は、刃体54が基体部41に対して回転方向の角度位置を変更調節できないように固定支持された構成であってもよい。
・ また、穴開け治具40は、切り欠き部47及びブロック48を有することなく、穴開け時には基体部41の下面が直接インクカートリッジ11の容器本体12の一部に当接する構成、又は、当接しない構成であってもよい。
【0077】
・ また、穴開け治具40は、刃体54を先端が錐状をなす刃体にて構成し、その刃体を先端からカバーフィルム31に突き入れることにより穴61を形成するものであってもよい。すなわち、円錐状、角錐状などの所謂ポンチ形状をした刃体を備えた穴開け治具でもよい。この場合でも、カバーフィルム31に破材を発生させることなく穴61を形成できる。
【0078】
・ また、穴開け治具40は、刃体の先端をカバーフィルム31に突き入れた場合に、片持ち状の切片を切り込み形成可能な刃部が先端に形成された刃体を備えたものであってもよい。例えば、切り込み形状が、コ字状、C字状、H字状などになる刃部を先端に有する刃体で切片を切り込み形成し、その切片に対応した形状・大きさの穴を開けるものであってもよい。この場合でも、カバーフィルム31に破材を発生させることなく穴61を形成できる。
【0079】
・ また、カバーフィルム31に切片60を切り込み形成して穴61を開ける場合は、例えばカッターナイフなどの刃体によってカバーフィルム31に切片形状をなぞるように切り込みを入れて穴を形成するようにしてもよい。
【0080】
・ 積層フィルム70をカバーフィルム31側に押圧して加熱するヒータ73の形状は積層フィルム70を加熱して第1フィルム71を溶融させることができるものであれば、任意の形状であってもよい。
【0081】
・ また、そのヒータ73は、積層フィルム70におけるインク注入孔21,22の周縁に沿う環状領域のみを加熱して、その環状領域と対応する部分だけ第1フィルム71についても加熱により溶融させるものであってもよい。
【0082】
・ 積層フィルム70の第1フィルム71は、その厚さが20〜60μの範囲内ならば、40μ以外の厚さであってもよい。
・ 積層フィルム70の第1フィルム71はウレタン系のフィルムであってもよい。
【0083】
・ 積層フィルム70は、第1フィルム71と第2フィルム72との間に他のフィルムが挟まれた3層以上の構成であってもよい。要するに、カバーフィルム31に接触する側の最外層が第1フィルム71であると共にその反対側の最外層が第2フィルム72であればよい。
【0084】
・ 上記実施形態では、インクを再充填される使用済みインクカートリッジ11におけるカバーフィルム31に開けられた穴61を封止対象開口としたが、インクを初期充填した直後の新規なインクカートリッジのインク注入孔等の開口部分を封止対象開口として、その開口を封止するために積層フィルム70を用いてもよい。
【0085】
・ 上記実施形態では、流体収容容器をインクカートリッジに具体化したが、インク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体、流体として流して噴射できる固体を含む)を内部に収容する流体収容容器に具体化することもできる。なお、本明細書において「流体」とは、気体のみからなる流体を含まない概念であり、流体には、例えば液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、液状体、流状体、粉粒体などが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】実施形態のインクカートリッジの前面側斜視図。
【図2】同インクカートリッジの後面側斜視図。
【図3】同インクカートリッジの前面側一部分解斜視図。
【図4】同インクカートリッジの一部破断正面(前面)図。
【図5】(a)は穴開け治具の平面図、(b)は図5(a)におけるA−A線矢視断面図、(c)は図5(a)におけるB−B線矢視断面図、(d)は刃体の先端側からの平面図、(e)は別例1の先端側からの平面図、(f)は別例2の刃体の先端側からの平面図。
【図6】(a)は穴開け工程の穴開け治具の配置状態を示す説明図、(b)は穴開け時の状態を示す部分断面図。
【図7】シール工程の加熱シール時を示す説明図。
【符号の説明】
【0087】
11…インクカートリッジ(流体収容容器)、12…容器本体、21,22…封止対象開口及び孔としてのインク注入孔、31…孔被覆フィルムとしてのカバーフィルム、40…穴開け治具、45,46…ガイド部として機能する内面、48…規制部を構成する変位部材としてのブロック、54…刃体、55…刃部、57…調節機構を構成する押圧ねじ、60…切片、61…穴、70…封止部材としての積層フィルム、71…第1フィルム、72…第2フィルム、73…加熱手段としてのヒータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体収容容器に形成された孔及び該孔を被覆するように前記流体収容容器に貼着された孔被覆フィルムに開けた穴のうち何れかを封止対象開口として、該封止対象開口を封止部材で封止するにあたり、
前記封止部材として、所定の加熱温度で溶融する第1フィルムと該第1フィルムの溶融温度では溶融することなく且つ前記第1フィルムよりも耐熱性の強い第2フィルムとを含む複数のフィルムが積層され、それら各フィルムの積層方向の一方側では前記第1フィルムが最外層を構成すると共に他方側では前記第2フィルムが最外層を構成する積層フィルムを用い、
該積層フィルムを前記第1フィルムが前記流体収容容器側となるようにして該流体収容容器上に前記封止対象開口を被覆する態様で載置した状態において、前記積層フィルムを前記第2フィルム側から加熱して前記第1フィルムを溶融させ、該第1フィルムに溶着機能を発揮させることにより前記積層フィルムで前記封止対象開口をシールするようにした流体収容容器におけるシール方法。
【請求項2】
前記第1フィルムは、ポリオレフィン系のフィルム、エステル系のフィルム、又はイージーピール機能を持ったフィルムであり、前記第2フィルムは、ポリエチレンテレフタレート系のフィルムである請求項1に記載の流体収容容器におけるシール方法。
【請求項3】
前記第1フィルムは、その厚みが20〜60μに設定されている請求項1又は請求項2に記載の流体収容容器におけるシール方法。
【請求項4】
前記積層フィルムは、前記第2フィルム側から加熱される場合に、前記積層フィルムにおける前記封止対象開口の周縁に沿う環状領域が少なくとも加熱される請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の流体収容容器におけるシール方法。
【請求項5】
前記積層フィルムは、前記第2フィルム側から加熱される場合に、前記積層フィルムにおける前記封止対象開口の被覆領域及び該封止対象開口の周縁に沿う環状領域が少なくとも加熱される請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の流体収容容器におけるシール方法。
【請求項6】
使用済みの流体収容容器に形成された孔及び該孔を被覆するように前記流体収容容器に貼着された孔被覆フィルムに開けた穴のうち何れかにて構成される封止対象開口を介して前記流体収容容器内に流体を再充填した後、前記穴を封止部材により封止して流体収容容器を再生するにあたり、
前記封止部材として、所定の加熱温度で溶融する第1フィルムと該第1フィルムの溶融温度では溶融することなく且つ前記第1フィルムよりも耐熱性の強い第2フィルムとを含む複数のフィルムが積層され、それら各フィルムの積層方向の一方側では前記第1フィルムが最外層を構成すると共に他方側では前記第2フィルムが最外層を構成する積層フィルムを用い、
該積層フィルムを前記第1フィルムが前記流体収容容器側となるようにして該流体収容容器上に前記封止対象開口を被覆する態様で載置した状態において、前記積層フィルムを前記第2フィルム側から加熱して前記第1フィルムを溶融させ、該第1フィルムに溶着機能を発揮させることにより前記積層フィルムで前記封止対象開口をシールするようにした流体収容容器の再生方法。
【請求項7】
前記第1フィルムは、ポリオレフィン系のフィルム、エステル系のフィルム、又はイージーピール機能を持ったフィルムであり、前記第2フィルムは、ポリエチレンテレフタレート系のフィルムである請求項6に記載の流体収容容器の再生方法。
【請求項8】
前記第1フィルムは、その厚みが20〜60μに設定されている請求項6又は請求項7に記載の流体収容容器の再生方法。
【請求項9】
前記積層フィルムは、前記第2フィルム側から加熱される場合に、前記積層フィルムにおける前記封止対象開口の周縁に沿う環状領域が少なくとも加熱される請求項6〜請求項8のうち何れか一項に記載の流体収容容器の再生方法。
【請求項10】
前記積層フィルムは、前記第2フィルム側から加熱される場合に、前記積層フィルムにおける前記封止対象開口の被覆領域及び該封止対象開口の周縁に沿う環状領域が少なくとも加熱される請求項6〜請求項8のうち何れか一項に記載の流体収容容器の再生方法。
【請求項11】
請求項6〜請求項10のうち何れか一項に記載の流体収容容器の再生方法により再生された流体収容容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate