説明

流体噴射装置

【課題】デッドスペースを有効活用することで、小型化することが可能な流体噴射装置を提供する。
【解決手段】インクジェット式プリンタ11は、右側から左側に向かってカット用紙12を搬送する搬送ユニット13と、該搬送ユニット13によって搬送されるカット用紙12と対向するように配置されるとともに該カット用紙12に向けて各ノズル15からインクを噴射する記録ヘッドユニット14と、該記録ヘッドユニット14に当接する当接位置にある場合に各ノズル15を覆う複数のキャップを有する両キャップユニット33,34とを備える。また、左右方向において、搬送ユニット13の占有長さは、記録ヘッドユニット14の占有長さよりも長くなるように構成されている。さらに、両キャップユニット33,34は、左右方向において記録ヘッドユニット14を挟む両隣の位置である退避位置と当接位置との間でそれぞれ移動可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、インクジェット式プリンタなどの流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体噴射手段のノズルから流体を噴射する流体噴射装置の一種として、ラインヘッド方式のインクジェット式プリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)が知られている(例えば、特許文献1)。この特許文献1のプリンタでは、3つのローラに巻き掛けられた無端状の搬送ベルトによって搬送される画像形成媒体(記録媒体)に、画像記録機構(流体噴射手段)に形成された複数のノズルからインク(流体)を噴射して印刷を行うようになっている。
【0003】
こうしたプリンタでは、ノズル開口からノズル内のインクの水分が蒸発することにより該ノズル内のインクの粘度が上昇してノズルが目詰まりしやすくなっているため、定期的にノズル内のインクを強制的にキャップ内に排出するメンテナンス(クリーニング、フラッシング等)を行うことで、ノズルの目詰まりを解消するようにしている。加えて、プリンタの休止時には、ノズル開口を囲むようにキャップを画像記録機構に当接させることで、ノズル開口からのインクの水分蒸発を抑制するようにしている。
【特許文献1】特開2006−347664号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のプリンタでは、画像形成媒体の搬送方向において、搬送ベルトの占有長さよりも画像記録機構の占有長さの方が短くなっているため、搬送ベルトの上側の空間であって画像記録機構を挟んだ両側の空間がデッドスペースとなってしまう。
【0005】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、デッドスペースを有効活用することで、小型化することが可能な流体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の流体噴射装置は、上流側から下流側に向かって記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送される前記記録媒体と対向するように配置されるとともに、該記録媒体に向けてノズルから流体を噴射する流体噴射手段と、該流体噴射手段に当接する当接位置にある場合に前記ノズルを覆うキャップとを備え、前記搬送手段が前記記録媒体を搬送する方向において、前記搬送手段の占有長さが前記流体噴射手段の占有長さよりも長くなるように構成された流体噴射装置であって、前記キャップは、前記搬送手段が前記記録媒体を搬送する方向において前記流体噴射手段と隣り合う位置である退避位置と前記当接位置との間で移動可能に構成されている。
【0007】
この構成によれば、通常、搬送手段が記録媒体を搬送する方向において、搬送手段の占有長さが流体噴射手段の占有長さよりも長くなるように構成すると、搬送手段が記録媒体を搬送する方向における流体噴射手段を挟んだ両側の空間がデッドスペースとなってしまう。この点、本発明では、このデッドスペースをキャップの退避場所として有効活用することができるので、キャップの退避場所を別途確保する必要がなくなり、流体噴射装置の小型化が可能となる。
【0008】
本発明の流体噴射装置において、前記搬送手段は、前記記録媒体を搬送する搬送ベルトを備えている。
この構成によれば、搬送ベルトにより、記録媒体を円滑に搬送することが可能となる。
【0009】
本発明の流体噴射装置において、前記搬送手段及び前記流体噴射手段のうち少なくとも一方は、他方に対して近接及び離間する方向に移動可能に構成されている。
この構成によれば、搬送手段と流体噴射手段とを離間させることで、搬送手段と流体噴射手段との間にキャップを配置するためのスペースが確保されるので、キャップを当接位置に確実に移動することが可能となる。
【0010】
本発明の流体噴射装置において、前記流体噴射手段は移動不能に構成されているとともに、前記搬送手段は前記流体噴射手段に対して近接及び離間する方向に移動可能に構成されている。
【0011】
この構成によれば、流体噴射手段を移動することなく搬送手段を流体噴射手段から離間するように移動することで、流体噴射手段を移動しなくても、搬送手段と流体噴射手段との間にキャップを配置するためのスペースを確保することができるので、流体噴射手段に接続される接続部材に対する負荷を低減できる。加えて、流体噴射手段は常に移動されないため、搬送手段によって搬送される記録媒体との距離の精度が確保され、記録媒体に対する流体噴射手段からの流体の噴射精度を維持することが可能となる。
【0012】
本発明の流体噴射装置において、前記搬送手段と対向するように配置された支持体を備え、前記支持体は、前記搬送手段が前記記録媒体を搬送する方向に沿って前記キャップを往復移動可能に支持しているとともに、前記搬送手段に対して近接及び離間する方向に移動可能に構成されている。
【0013】
この構成によれば、キャップを退避位置と当接位置との間で、円滑に移動させることが可能となる。
本発明の流体噴射装置において、前記キャップを複数備えた。
【0014】
この構成によれば、例えば、流体噴射手段が複数のノズルからなるノズル列を複数備える場合、各ノズル列を個別にキャップで覆うことが可能となる。
本発明の流体噴射装置において、前記各キャップは、前記流体噴射手段のノズルから前記流体が噴射される場合には、前記搬送手段が前記記録媒体を搬送する方向において前記流体噴射手段を挟んだ両側の前記退避位置にそれぞれ分かれて退避される。
【0015】
この構成によれば、各キャップを、流体噴射手段を挟んだ両側の退避位置へバランスよく退避させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の流体噴射装置をインクジェット式プリンタに具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は図1及び図2に矢印で示す前後方向、左右方向、上下方向をそれぞれ示すものとする。
【0017】
図1に示すように、流体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ11は、図示しない本体フレーム内に、記録媒体としてのカット用紙12を搬送するための搬送手段としての搬送ユニット13と、該搬送ユニット13の上方に該搬送ユニット13と対向するように配置された流体噴射手段としての記録ヘッドユニット14とを備えている。
【0018】
記録ヘッドユニット14は、本体フレーム(図示略)内に移動不能に固定されるとともに、前後方向における幅がカット用紙12の幅よりも長い直方体状をなす4つの記録ヘッド14a〜14dにより構成されている。各記録ヘッド14a〜14dは、左右方向に互いに平行となるように近接して並んでおり、右側から順に記録ヘッド14a、記録ヘッド14b、記録ヘッド14c、記録ヘッド14dとされている。記録ヘッド14a,14cの下面には前後方向に等間隔で並設された7つの単位記録ヘッド部が設けられ、記録ヘッド14b,14dの下面には前後方向に等間隔で並設された6つの単位記録ヘッド部が設けられている。
【0019】
そして、各記録ヘッド14a〜14dの各単位記録ヘッド部は、カット用紙12が搬送ユニット13によって搬送される方向である左右方向において隙間が形成されないように、全体として千鳥状に配列されている。また、各記録ヘッド14a〜14dの各単位記録ヘッド部には、搬送ユニット13によって搬送されるカット用紙12に流体としてのインクを噴射するための複数のノズル15がそれぞれ前後方向に列をなす(ノズル列を形成する)ようにそれぞれ設けられている。
【0020】
また、各記録ヘッド14a〜14dの上方には該各記録ヘッド14a〜14dにそれぞれインクを供給するための4つのインクカートリッジ16a〜16dが配設されており、該各インクカートリッジ16a〜16dには互いに異なる種類(色)のインクが収容されている。そして、各記録ヘッド14a〜14dには各インクカートリッジ16a〜16dから延びるインク供給チューブ17がそれぞれ接続されており、各インクカートリッジ16a〜16dに収容されたインクはインク供給チューブ17を介して各記録ヘッド14a〜14dにそれぞれ供給されるようになっている。
【0021】
さらに、各記録ヘッド14a〜14dには、各ノズル15からインクを噴射するための圧電素子(図示略)が備えられており、該圧電素子(図示略)には制御部(図示略)から延びる信号線(図示略)が電気的に接続されている。そして、制御部(図示略)から信号線(図示略)を介して送られる電気信号に基づいて圧電素子(図示略)が振動することで、各記録ヘッド14a〜14dの各ノズル15から搬送ユニット13によって搬送されるカット用紙12に対してそれぞれインクが噴射されて印刷が行われるようになっている。
【0022】
図1及び図2に示すように、搬送ユニット13は、基台18と、該基台18上に支持された四角板状のプラテン19とを備えており、図示しない駆動源により記録ヘッドユニット14に対して近接及び離間する方向である上下方向に移動可能に構成されている。プラテン19の右側には前後方向に延びる駆動ローラ20が図示しない駆動源によって回転駆動可能に配置される一方、プラテン19の左側には前後方向に延びる従動ローラ21が回転可能に配置されている。さらに、プラテン19の下側には前後方向に延びるテンションローラ22が回転可能に配置されている。
【0023】
駆動ローラ20、従動ローラ21、及びテンションローラ22には、プラテン19を囲むように、1つの無端状の搬送ベルト23が巻き回されている。この場合、テンションローラ22は、図示しないばね部材によって下側に向かって付勢されており、搬送ベルト23にテンションを付与することで該搬送ベルト23の弛みを抑制するようになっている。また、搬送ベルト23には、千鳥状をなすように規則的に配列された多数の透孔23aが該搬送ベルト23のほぼ全体にわたって形成されている。
【0024】
そして、駆動ローラ20を前側から見て反時計方向に回転駆動することで、搬送ベルト23が駆動ローラ20、従動ローラ21、及びテンションローラ22の外側を前側から見て反時計方向に周回移動されるようになっている。この場合、搬送ベルト23上のカット用紙12は上流側である右側から下流側である左側に向かって搬送されるようになっている。
【0025】
プラテン19の上面には左右方向に長い複数の長溝24が前後方向及び左右方向に沿ってほぼ千鳥状に並設されている。プラテン19内の下端部には空気室25が形成されており、各長溝24の内底面における左右方向の中央部には空気室25と連通する吸引孔26がそれぞれ開口している。また、プラテン19の下面中央部には、空気室25と連通する連通孔27が形成されており、該連通孔27を覆うように誘引送風機28が取着されている。
【0026】
誘引送風機28はプロペラファン28aを有しており、該プロペラファン28aが回転することで、プラテン19の上面側の空気が各長溝24、各吸引孔26、空気室25、及び連通孔27を介して吸引されるようになっている。すなわち、誘引送風機28の駆動により、プラテン19の上面と対向する位置にあるカット用紙12が、多数の透孔23aを有する搬送ベルト23越しにプラテン19側に吸引されるようになっている。
【0027】
駆動ローラ20の右斜め上側には、積重された未印刷の複数のカット用紙12を1枚ずつ順次搬送ベルト23上に給紙するための上下一対の給紙ローラ29が設けられている。一方、従動ローラ21の左斜め上側には、印刷後のカット用紙12を1枚ずつ搬送ベルト23上から排紙して順次積重するための上下一対の排紙ローラ30が設けられている。
【0028】
また、左右方向において搬送ユニット13の占有長さは記録ヘッドユニット14の占有長さよりも長くなっており、記録ヘッドユニット14の近傍には該記録ヘッドユニット14のメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット31が該記録ヘッドユニット14を水平方向において囲むように配置されている。
【0029】
次に、メンテナンスユニット31の構成について詳述する。
図1及び図3に示すように、メンテナンスユニット31は、搬送ユニット13と対向するように水平に配置された支持体としての四角枠状をなす枠体32と、該枠体32に左右方向に移動可能に支持された2つのキャップユニット33,34とを備えている。枠体32の左右方向の中央部における前後両側面には、上下方向に延びるねじ孔35aを有するブロック状のナット部材35がそれぞれ設けられており、両ナット部材35のねじ孔35aには本体フレーム(図示略)内に立設された2本のボールねじ36がそれぞれ螺入されている。
【0030】
両ボールねじ36は図示しない駆動源によって回転駆動されるようになっており、該両ボールねじ36を回転駆動することにより両ナット部材35を介して枠体32が上下方向に移動されるようになっている。すなわち、枠体32は、両ボールねじ36と両ナット部材35とのねじ対偶により上下方向に移動可能になっている。枠体32の左右方向の両端部における前後両側面には、上下方向に延びる挿通孔37aを有するブロック状のガイド部材37がそれぞれ設けられており、各ガイド部材37の挿通孔37aには本体フレーム(図示略)内に立設された4本のガイド棒38が挿入されている。
【0031】
各ガイド棒38の外周面は各ガイド部材37の挿通孔37aの内周面にそれぞれ摺接しており、各ガイド部材37は枠体32の上下方向の移動にともなって各ガイド棒38に沿って上下方向に摺動するようになっている。すなわち、各ガイド部材37が枠体32の上下方向の移動にともなって各ガイド棒38に沿ってそれぞれ上下方向に摺動することで、枠体32の移動時の水平状態が維持されるようになっている。
【0032】
図3及び図5に示すように、枠体32を構成する前後の両フレーム39は、左右方向に延びる帯状の上板部39aと、該上板部39aの下側に所定間隔を置いて上板部39aと対向するように配置されるとともに上板部39aと平行に延びる下板部39bとを備えている。両フレーム39の上板部39aの下面には、左右方向に延びるラック40が該両フレーム39の左右方向の幅全体にわたってそれぞれ延設されている。
【0033】
図3〜図5に示すように、キャップユニット34は、キャップユニット33の左側に配置されており、両フレーム39の下板部39b間を橋架するように配置された矩形状のキャッププレート41を備えている。すなわち、キャッププレート41の下面における前端部及び後端部は、両フレーム39の下板部39bの上面にそれぞれ摺接している。キャッププレート41の左端部における後寄りの位置には、一対の軸支持部材42が前後方向に所定間隔を置いて立設されている。軸支持部材42は、前後方向に延びる回転軸43を回転可能に支持している。
【0034】
回転軸43の前後両端にはピニオン44が該回転軸43と一体回転するようにそれぞれ設けられており、該両ピニオン44はそれぞれ両ラック40とそれぞれ噛合している。両軸支持部材42間における回転軸43にはウォームホイール45が該回転軸43と一体回転するように設けられている。キャッププレート41上におけるウォームホイール45の右側にはモータ46が立設されており、該モータ46の左面にはモータ46の出力軸47が左方向に向かって延設されている。出力軸47の先端部にはウォーム48が該出力軸47と一体回転するように設けられており、該ウォーム48はウォームホイール45と噛合している。
【0035】
また、図1及び図3に示すように、キャッププレート41上における前後方向の中央部から前端部にかけての位置には、記録ヘッド14cの7つの単位記録ヘッド部及び記録ヘッド14dの6つの単位記録ヘッド部と対応するように千鳥状に配列された13個の有底四角箱状をなすキャップ49が設けられている。各キャップ49には、排出チューブ(図示略)の一端側がそれぞれ接続され、該各排出チューブ(図示略)の他端側は合流されて吸引ポンプ(図示略)に接続されている。そして、吸引ポンプ(図示略)の駆動により、各キャップ49内が各排出チューブ(図示略)を介して吸引されるようになっている。
【0036】
また、キャップユニット33は、回転軸43がキャッププレート41上の右端部に沿って前後方向に延びていること以外は、上述したキャップユニット34と全く同一の構成になっている。この場合、キャップユニット33の13個のキャップ49は、記録ヘッド14aの7つの単位記録ヘッド部及び記録ヘッド14bの6つの単位記録ヘッド部と対応している。
【0037】
そして、両キャップユニット33,34は、モータ46の駆動により、その駆動力が出力軸47、ウォーム48、ウォームホイール45、回転軸43、両ピニオン44に伝達されて、該両ピニオン44がラック40と噛み合いながら回転することで、枠体32内を左右方向に摺動するようになっている。なお、図3においては、各記録ヘッド14a〜14dのメンテナンスを行うとき及びインクジェット式プリンタ11の不使用時の両キャップユニット33,34の位置を示しており、印刷時の両キャップユニット33,34の位置を2点鎖線で示している。
【0038】
次に、インクジェット式プリンタ11の作用について説明する。
図1に示すように、印刷中においては、キャップユニット33は枠体32の右端部に位置しているととともに、キャップユニット34は枠体32の左端部に位置している。すなわち、キャップユニット33は記録ヘッドユニット14の右隣りの位置である退避位置に退避されており、キャップユニット34は記録ヘッドユニット14の左隣りの位置である退避位置に退避されている。さらに言い換えれば、両キャップユニット33,34は、記録ヘッドユニット14の左右両隣の退避位置にそれぞれ分かれて退避された状態になっている。
【0039】
この状態から、記録ヘッドユニット14のクリーニング(メンテナンス)を行う場合には、図6に示すように、まず、搬送ユニット13及びメンテナンスユニット31を下降させて、メンテナンスユニット31を記録ヘッドユニット14よりも低い位置に移動させるとともに、搬送ユニット13をメンテナンスユニット31よりも低い位置に移動させる。
【0040】
引き続き、図7に示すように、両キャップユニット33,34を枠体32の左右方向における中央部にそれぞれ移動させて、キャップユニット33の各キャップ49が両記録ヘッド14a,14bの各単位記録ヘッド部と対向するとともに、キャップユニット34の各キャップ49が両記録ヘッド14c,14dの各単位記録ヘッド部と対向するように調整する。
【0041】
引き続き、図8に示すように、メンテナンスユニット31を上昇させて、キャップユニット33の各キャップ49を両記録ヘッド14a,14bの各単位記録ヘッド部に当接させるとともに、キャップユニット34の各キャップ49を両記録ヘッド14c,14dの各単位記録ヘッド部に当接させる。すると、キャップユニット33の各キャップ49が両記録ヘッド14a,14bの各単位記録ヘッド部の各ノズル15を覆うとともに、キャップユニット34の各キャップ49が両記録ヘッド14c,14dの各単位記録ヘッド部の各ノズル15を覆った状態となり、このときの両キャップユニット33,34の位置は当接位置とされている。
【0042】
この状態で、吸引ポンプ(図示略)を駆動させると、各ノズル15から増粘したインクが気泡とともに吸引されて各キャップ49内に排出され、記録ヘッドユニット14のクリーニングが完了する。再び、印刷を行う場合には、上述の操作を逆に行って、両キャップユニット33,34を記録ヘッドユニット14の左右両隣の退避位置にそれぞれ分かれて退避させればよい。なお、インクジェット式プリンタ11の不使用時には、両キャップユニット33,34は当接位置に移動される。
【0043】
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)カット用紙12が搬送される方向である左右方向において、搬送ユニット13の占有長さが記録ヘッドユニット14の占有長さよりも長くなるように構成すると、搬送ユニット13の上方における記録ヘッドユニット14を挟んだ左右両側の空間がデッドスペースとなってしまう。この点、本実施形態では、このデッドスペースを両キャップユニット33,34の退避場所として有効活用されている。このため、両キャップユニット33,34の退避場所を別途確保する必要がなくなるので、インクジェット式プリンタ11の小型化が実現できる。
【0044】
(2)搬送ユニット13は、カット用紙12を搬送するための搬送ベルト23を備えているため、カット用紙12を上流側から下流側に向かって円滑に搬送することができる。
(3)記録ヘッドユニット14のクリーニング時などには、記録ヘッドユニット14を移動することなく搬送ユニット13が下降されるため、記録ヘッドユニット14を移動しなくても、搬送ユニット13と記録ヘッドユニット14との間に両キャップユニット33,34を配置するためのスペースを確保することができる。このため、記録ヘッドユニット14に接続されるインク供給チューブ17や信号線(図示略)などの接続部材に対する負荷を低減できる。加えて、記録ヘッドユニット14は常に移動されないため、搬送ユニット13によって搬送されるカット用紙12との距離(またはプラテンギャップ)の精度を確保することができる。このため、カット用紙12に対する記録ヘッドユニット14からのインクの噴射精度を維持することができ、カット用紙12の印刷品質を維持できる。
【0045】
(4)両キャップユニット33,34は、上下方向に移動可能な枠体32よって左右方向に往復移動可能に支持されているため、該両キャップユニット33,34を退避位置と当接位置との間で円滑に移動させることができる。
【0046】
(5)印刷時に、両キャップユニット33,34は、記録ヘッドユニット14を挟んだ左右両側の退避位置にそれぞれ分かれて退避されるため、両キャップユニット33,34を、記録ヘッドユニット14を挟んだ左右両側の退避位置へバランスよく退避させることができる。
【0047】
(6)カット用紙12が1つの搬送ベルト23によって搬送されるので、並設された複数の搬送ベルトによってカット用紙12を搬送する従来に比べて、カット用紙12を正確に搬送することができる。また、両キャップユニット33,34は、搬送ベルト23よりも上方の領域において、退避位置と当接位置との間で移動可能に構成されているため、両キャップユニット33,34が移動する際に搬送ベルト23が障害とならない。したがって、カット用紙12を正確に搬送するとともに、各ノズル15を覆うように記録ヘッドユニット14に対して確実に両キャップユニット33,34を当接させることができる。
(変更例)
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0048】
・図9に示すように、4本のワイヤ50が巻回された左右一対の巻き取り軸51から繰り出された各ワイヤ50の先端(下端)を枠体32の上面の四隅に接続して該枠体32を各ワイヤ50によって吊り下げ、両巻き取り軸51によって各ワイヤ50を繰り出したり巻き取ったりすることで、枠体32を上下に移動させるように構成してもよい。すなわち、両巻き取り軸51は、枠体32の上方において枠体32の左右のフレーム52に沿って前後方向に延びており、本体フレーム(図示略)内に回転可能に支持されている。両巻き取り軸51には該両巻き取り軸51を回転駆動するための駆動モータ(図示略)が連結されており、該駆動モータ(図示略)の駆動により両巻き取り軸51が正逆両方向に回転駆動されるようになっている。両巻き取り軸51における枠体32の四隅と対向する位置には、他の部位よりも径が大きい拡径部51aがそれぞれ設けられており、該各拡径部51aに各ワイヤ50がそれぞれ巻回されている。なお、駆動モータ(図示略)による両巻き取り軸51の回転駆動は同期して行われ、枠体32が上下に移動される際における該枠体32の水平状態は維持されるようになっている。
【0049】
・上記図9の場合において、両巻き取り軸51は、枠体32の上方において枠体32の前後のフレーム39に沿って左右方向に延びるように配設してもよい。
・両キャップユニット33,34は、記録ヘッドユニット14を挟んだ左右両側の退避位置のうちいずれか一方に、両方とも退避させるようにしてもよい。
【0050】
・両キャップユニット33,34のうちいずれか一方を省略してもよい。この場合、両キャップユニット33,34のうち残った一方を、全ての記録ヘッド14a〜14dの各単位記録ヘッド部の各ノズル15を覆うことが可能に構成する必要がある。
【0051】
・各記録ヘッド14a〜14dに対してキャップユニットを1つずつ個別に設けてもよい。
・記録ヘッドユニット14を上下方向に移動可能(昇降可能)に構成してもよい。この場合、搬送ユニット13は、上下方向に移動可能に構成してもよいし、移動不能に構成してもよい。
【0052】
・搬送ベルト23を省略してもよい。この場合、記録媒体にはカット用紙12ではなく長尺のロール紙が用いられる。そして、このロール紙は、搬送ユニット13の右側から繰り出され、プラテン19上で印刷された後、搬送ユニット13の左側で巻き取られる。
【0053】
・両キャップユニット33,34を左右方向に往復移動可能に支持可能であれば、枠体32の代わりに、L字状のフレームや左右方向に延びる前後一対のフレームを支持体として用いてもよい。
【0054】
・搬送ユニット13とメンテナンスユニット31とが1つの駆動源によって一緒に上下に移動されるように構成してもよい。
・両キャップユニット33,34は、当接位置と退避位置との間で回動可能に構成してもよい。
【0055】
・誘引送風機28を省略し、プラテン19の上面と対向する位置にあるカット用紙12が、搬送ベルト23越しにプラテン19側に静電力によって吸引されるようにプラテン19を構成してもよい。
【0056】
・上記実施形態では、流体噴射装置をインクジェット式プリンタ11に具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体を含む)を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体噴射装置に本発明を適用することができる。なお、本明細書において「流体」とは、気体のみからなる流体を含まない概念であり、流体には、例えば液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、液状体、流状体などが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施形態のインクジェット式プリンタの正面図。
【図2】同プリンタの搬送ユニットの平面図。
【図3】同プリンタのメンテナンスユニットの平面図。
【図4】図3の4−4線矢視断面図。
【図5】図3の5−5線矢視断面図。
【図6】搬送ユニット及びメンテナンスユニットを下降させたときの同プリンタの状態を示す正面図。
【図7】メンテナンスユニットの両キャップユニットを記録ヘッドユニットの真下に移動させたときの同プリンタの状態を示す正面図。
【図8】メンテナンスユニットの両キャップユニットを記録ヘッドユニットに当接させたときの同プリンタの状態を示す正面図。
【図9】変更例のメンテナンスユニットの斜視図。
【符号の説明】
【0058】
11…流体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ、12…記録媒体としてのカット用紙、13…搬送手段としての搬送ユニット、14…流体噴射手段としての記録ヘッドユニット、15…ノズル、23…搬送ベルト、32…支持体としての枠体、49…キャップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側から下流側に向かって記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送される前記記録媒体と対向するように配置されるとともに、該記録媒体に向けてノズルから流体を噴射する流体噴射手段と、
該流体噴射手段に当接する当接位置にある場合に前記ノズルを覆うキャップと
を備え、
前記搬送手段が前記記録媒体を搬送する方向において、前記搬送手段の占有長さが前記流体噴射手段の占有長さよりも長くなるように構成された流体噴射装置であって、
前記キャップは、前記搬送手段が前記記録媒体を搬送する方向において前記流体噴射手段と隣り合う位置である退避位置と前記当接位置との間で移動可能に構成されていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
前記搬送手段は、前記記録媒体を搬送する搬送ベルトを備えていることを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記搬送手段及び前記流体噴射手段のうち少なくとも一方は、他方に対して近接及び離間する方向に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記流体噴射手段は移動不能に構成されているとともに、前記搬送手段は前記流体噴射手段に対して近接及び離間する方向に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記搬送手段と対向するように配置された支持体を備え、
前記支持体は、前記搬送手段が前記記録媒体を搬送する方向に沿って前記キャップを往復移動可能に支持しているとともに、前記搬送手段に対して近接及び離間する方向に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記キャップを複数備えたことを特徴とする請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項7】
前記各キャップは、前記流体噴射手段のノズルから前記流体が噴射される場合には、前記搬送手段が前記記録媒体を搬送する方向において前記流体噴射手段を挟んだ両側の前記退避位置にそれぞれ分かれて退避されることを特徴とする請求項6に記載の流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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