説明

流体噴射装置

【課題】ターゲットに対する記録品質を高めることができる流体噴射装置を提供する。
【解決手段】主走査方向に沿って延びる主ガイド軸7aと、主ガイド軸7aと平行して主走査方向に沿って延びる従ガイド軸7bと、主ガイド軸7aを嵌挿可能な貫通部34、及び従ガイド軸7bによって主ガイド軸7aの軸線を中心とする周方向に係止される凸部41aを有し、貫通部34の内面を主ガイド軸7aに摺動させると共に凸部41aを従ガイド軸7bに摺動させつつ主走査方向に移動するキャリッジ本体30と、キャリッジ本体30に搭載される記録ヘッドと、キャリッジ本体30に取り付けられるカバー部材44と、カバー部材44をキャリッジ本体30に対して凸部41aの近傍で固定する固定ねじ37,40,43とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式プリンター等の流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、流体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンターとして、主走査方向に往復移動可能なキャリッジに流体噴射ヘッドを搭載したプリンターが知られている。こうしたプリンターでは、キャリッジの移動タイミングに合わせて流体噴射ヘッドからターゲットに対してインク(流体)を噴射することにより、ターゲットに対して画像を形成するようになっている。
【0003】
ところで、一般に、キャリッジは、主走査方向に延びるガイド軸によって当該キャリッジにおける副走査方向の一端が片持ち状に支持されている。そのため、キャリッジは、当該キャリッジの自重によってガイド軸の軸線を中心とする周方向に回動することがあり得る。そこで、近年では、キャリッジがガイド軸の軸線を中心とする周方向に回動することを規制する機構を設けたプリンターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
すなわち、特許文献1に記載のプリンターは、主ガイド軸(ガイド軸)に平行するように従ガイド軸が設けられている。そして、キャリッジは、当該キャリッジにおける副走査方向の一方側の端面から突出した凸部が従ガイド軸に係止されることにより、主ガイド軸の軸線を中心とする周方向に回動することが規制されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−202509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のプリンターでは、キャリッジは、当該キャリッジの自重に従って従ガイド軸から応力が作用することにより変形することがあり得る。こうした場合、キャリッジに搭載された流体噴射ヘッドからターゲットに向けてのインクの飛翔方向が所望の方向からずれるため、ターゲットに形成される画像の品質を低下させる虞があった。
【0007】
そこで、キャリッジの剛性を補強するための補強材をキャリッジに設けることが要望されていた。しかしながら、キャリッジの内部には、流体噴射ヘッドに対してインクを供給するためのインク流路が張り巡らされるように形成されている。そのため、キャリッジを補強するための補強材の設置スペースをキャリッジの内部に確保することは困難となっていた。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ターゲットに対する記録品質の低下を抑制することができる流体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の流体噴射装置は、主走査方向に沿って延びる第1軸と、前記第1軸と平行して主走査方向に沿って延びる第2軸と、前記第1軸を嵌挿可能な嵌挿部、及び前記第2軸によって前記第1軸の軸線を中心とする周方向に係止される係止部を有し、前記嵌挿部の内面を前記第1軸に摺動させると共に前記係止部を前記第2軸に摺動させつつ主走査方向に移動するキャリッジ本体と、前記キャリッジ本体に搭載される流体噴射ヘッドと、前記キャリッジ本体に取り付けられるカバー部材と、該カバー部材を前記キャリッジ本体に対して前記係止部の近傍で固定する固定部材とを備えた。
【0010】
上記構成によれば、キャリッジ本体は、係止部の近傍の剛性がカバー部材によって補強されるため、第2軸からキャリッジ本体の係止部に対して力が作用した際のキャリッジ本体の変形量を低減できる。そのため、キャリッジ本体の変形に伴って流体噴射ヘッドによる流体の噴射方向が所望の方向からずれることが抑制されるため、ターゲットに対する記録品質の低下を抑制することができる。
【0011】
また、本発明の流体噴射装置において、前記固定部材は、前記係止部を主走査方向において挟んだ複数の位置に配置される。
上記構成によれば、キャリッジ本体は、係止部の近傍の剛性が主走査方向の両側からカバー部材によって補強される。そのため、キャリッジ本体の移動時に、キャリッジ本体の係止部に対して第2軸から主走査方向に摺動抵抗が作用した場合であっても、キャリッジ本体の変形量を低減することができる。
【0012】
また、本発明の流体噴射装置において、前記固定部材は、前記係止部を主走査方向と交差する第1方向において挟んだ複数の位置に配置される。
上記構成によれば、キャリッジ本体は、係止部の近傍の剛性が主走査方向と交差する第1方向の両側からカバー部材によって補強される。そのため、キャリッジ本体が当該キャリッジ本体の自重に従って第1軸の軸線を中心とする周方向に回動することにより、第2軸からキャリッジ本体の係止部に対して第1軸の軸線と交差する方向に応力が作用した場合であっても、キャリッジ本体の変形量を低減することができる。
【0013】
また、本発明の流体噴射装置において、前記固定部材は、前記係止部を主走査方向と交差する方向であって且つ前記第1方向と交差する第2方向において挟んだ複数の位置に配置される。
【0014】
上記構成によれば、キャリッジ本体は、係止部の近傍の剛性が主走査方向と交差する第1方向の両側だけでなく、当該第1方向と交差する第2方向の両側からもカバー部材によって補強される。そのため、キャリッジ本体が当該キャリッジ本体の自重に従って第1軸の軸線を中心とする周方向に回動することにより、第2軸からキャリッジ本体の係止部に対して第1軸の軸線方向と交差する方向に応力が作用した場合であっても、キャリッジ本体の変形量を更に低減することができる。
【0015】
また、本発明の流体噴射装置において、前記固定部材は、前記主走査方向と交差する方向において前記係止部の近傍に位置する第1部位と、前記主走査方向と交差する方向において前記係止部に対して前記第1部位よりも離間した第2部位とで前記カバー部材を前記キャリッジ本体に固定する。
【0016】
上記構成によれば、キャリッジ本体は、係止部の近傍に位置する第1部位の剛性、及び係止部から離間した第2部位の剛性がカバー部材によって補強されるため、第2軸からキャリッジ本体の係止部に対して力が作用した際のキャリッジ本体の変形量を更に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態のインクジェット式プリンターの斜視図。
【図2】キャリッジ本体の斜視図。
【図3】カバー部材の斜視図。
【図4】キャリッジの左側面図。
【図5】キャリッジの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を、流体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンター(以下、「プリンター」という。)に具体化した一実施形態を図1〜図5に従って説明する。なお、以下における本明細書中の説明において、「上下方向」、「前後方向」、「左右方向」をいう場合は図に矢印で示す方向をそれぞれ示すものとする。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のプリンター1は、略直方形状のフレーム2を備えている。また、フレーム2の後面には給紙トレイ3が設けられると共に、フレーム2の前面には排紙トレイ4が設けられている。さらに、フレーム2の上面にはプリンタカバー5が設けられている。排紙トレイ4及びプリンタカバー5は、図示しないヒンジ構造によってフレーム2に対して折り畳み収容可能となっている。
【0020】
フレーム2内の略中央位置には、矩形板状のプラテン6が配設されている。そして、プラテン6上には、給紙トレイ3からフレーム2内に挿入されたターゲットとしての記録用紙(図示略)が紙送り機構(図示略)によって給送されるようになっている。また、プラテン6上に給送された記録用紙は、排紙トレイ4からフレーム2外へ排出されるようになっている。
【0021】
フレーム2内には、プラテン6の長手方向と平行となるように、第1軸としての主ガイド軸7a、及び第2軸としての従ガイド軸7bが架設されている。主ガイド軸7aは、キャリッジ8に対して左右方向に挿通している。一方、従ガイド軸7bには、キャリッジ8が前方に凭せ掛かるように当接している。そして、キャリッジ8は、従ガイド軸7bによって主ガイド軸7aの軸線を中心とする周方向に係止されている。また、フレーム2内にはキャリッジモーター(図示略)が取着されると共に、このキャリッジモーターには、一対のプーリ(図示略)に掛装されたタイミングベルト(図示略)を介してキャリッジ8が連結されている。そして、キャリッジ8は、キャリッジモーターの駆動によって、プラテン6の長手方向と平行(主走査方向)に往復移動する。
【0022】
また、キャリッジ8の下面(プラテン6と相対向する面)には、流体噴射ヘッドとしての記録ヘッド9が設けられている。記録ヘッド9は、プラテン6側に向かって流体としてのインクを噴射させるためのノズル(図示略)を有している。また、フレーム2内には、プラテン6よりも前方側(排紙トレイ4側)に、左右一対の流路形成部材10が配設されている。流路形成部材10は、取着部10aと、該取着部10aの上端部からフレーム2内の中央位置に向けて延出した延出部10bとを備えている。
【0023】
取着部10a及び延出部10bにはそれぞれ3つの流路(図示しない)が形成されると共に、取着部10aの各流路と延出部10bの各流路とはそれぞれ連通している。また、各延出部10bの先端部には、インク供給チューブ11の基端部が接続されている。インク供給チューブ11には6つの流路(図示しない)が形成されると共に、その先端部がキャリッジ8に接続されている。そして、インク供給チューブ11の各流路は、各流路形成部材10の各流路に対してそれぞれ連通している。そのため、各流路形成部材10の各流路は、インク供給チューブ11の各流路を介して記録ヘッド9の各ノズルに対して接続されるようになっている。
【0024】
各流路形成部材10の取着部10aには、左右一対のインク供給部12がそれぞれ取着されている。インク供給部12は、フレーム2内に設けられた蛇腹ポンプ等の加圧ポンプPから供給される加圧空気に応じて、流路形成部材10及びインク供給チューブ11の各流路を介して、記録ヘッド9の各ノズルに対してインクを供給するようになっている。すなわち、本実施形態のプリンター1は、いわゆるオフキャリッジタイプであって、記録ヘッド9の各ノズルには、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタのインクがそれぞれ供給されるようになっている。そして、プリンター1は、キャリッジ8を主ガイド軸7a及び従ガイド軸7bに沿って移動させつつ、インク供給部12から供給されるインクを記録ヘッド9の各ノズルから吐出させることにより、記録用紙に対して記録を行うようになっている。
【0025】
次に、キャリッジ8の構成について詳述する。
図2に示すように、キャリッジ8は、有底略箱状をなすキャリッジ本体30を備えている。キャリッジ本体30における前方寄りの半分以上を占める前側部分31には、矩形状をなすヘッド取付部32が形成されている。そして、このヘッド取付部32に対して記録ヘッド9がノズル形成面(図示略)を下向きにして嵌着されている。なお、記録ヘッド9の内部には圧電素子(図示略)が設けられている。そして、記録ヘッド9は、この圧電素子の駆動によって、ノズルからプラテン6上に給送された記録用紙にインク滴を噴射して印刷を行うようになっている。
【0026】
また、キャリッジ本体30における後側下方に位置する隅部には、当該キャリッジ本体30を左右方向に貫通する嵌挿部としての貫通部34が形成されると共に、この貫通部34には主ガイド軸7aが嵌挿されるようになっている。また、キャリッジ本体30の前側部分31の上面31aにおける前端位置には、ねじ孔36が二箇所に形成されている。これらのねじ孔36は、固定部材としての固定ねじ37(図4及び図5参照)の雄ねじ部に螺合する雌ねじ部をそれぞれ有している。また、これらのねじ孔36は、キャリッジ本体30の左右方向の中心位置を基準として左右に対称な位置に配置されている。
【0027】
また、キャリッジ本体30における後方寄りの後側部分38には、当該後側部分38の上面38aにおける前側寄りの位置に、ねじ孔39が二箇所(図2では一箇所のみ図示)に形成されている。これらのねじ孔39は、固定部材としての固定ねじ40(図4及び図5参照)の雄ねじ部に螺合する雌ねじ部をそれぞれ有している。また、これらのねじ孔39は、キャリッジ本体30の左右方向の中心位置を基準として左右に対称な位置に配置されている。なお、キャリッジ本体30の後側部分38は、キャリッジ本体30の前側部分31よりも上方に張り出すように構成されている。そのため、キャリッジ本体30は、左右方向からの側面視で段差形状をなすように構成されている。そして、キャリッジ本体30は、後側部分38においてねじ孔39が形成された上面38aの方が、前側部分31においてねじ孔36が形成された上面31aよりも上方に位置している。
【0028】
また、キャリッジ本体30の後側部分38における後端位置には、立設部41が上方に向けて立設されている。そして、立設部41の前面における左右方向の略中央位置には、半円柱状をなす凸部41aが立設部41の前面から前方側に突出するように設けられている。また、立設部41において凸部41aを挟んで左右方向の両側となる位置には、一対の凹部41bが立設部41の上面から下方に陥入するように切り欠き形成されている。これら一対の凹部41bは、凸部41aを挟んでキャリッジ8の主走査方向となる左右方向(第1方向)の両側に対称な配置態様となるように位置している。そして、これら一対の凹部41bの底面には、ねじ孔42がそれぞれ形成されている。これらのねじ孔42は、固定部材としての固定ねじ43(図4及び図5参照)の雄ねじ部に螺合する雌ねじ部をそれぞれ有している。
【0029】
すなわち、キャリッジ本体30の後側部分38は、ねじ孔42が形成された凹部41bの底面の方が、ねじ孔36が形成された上面38aよりも上方に位置している。また、キャリッジ本体30には、立設部41に形成されたねじ孔42と、前側部分31の上面31aに形成されたねじ孔36及び後側部分38の上面38aに形成されたねじ孔39とが、凸部41aを挟んでキャリッジ8の主走査方向と直交する前後方向の両側に位置している。
【0030】
また、図3に示すように、キャリッジ8は、有底略箱体状をなすカバー部材44を備えている。カバー部材44は、平面視で略矩形状をなすと共に、当該平面視形状がキャリッジ本体30の平面視形状と略同一形状をなしている。また、カバー部材44には、当該カバー部材44の前面における下端位置から前方に延出する延出部45が、カバー部材44の左右方向の全域に亘って延びるように形成されている。そして、この延出部45には、キャリッジ本体30の前側部分31に形成されたねじ孔36と対応する位置に、固定ねじ37の雄ねじ部を挿通可能な挿通孔46(図4参照)が形成されている。
【0031】
また、カバー部材44の下面における後方寄りの部位には、キャリッジ本体30の後側部分38における同キャリッジ本体30の前側部分31に対する上方への突出量(段差量)に応じた切り欠きが形成されている。すなわち、カバー部材44の側面視形状は、キャリッジ本体30の側面視形状と対応した段差形状となっている。そして、カバー部材44がキャリッジ本体30の開口部を上方から被覆するように配置されると、カバー部材44の下面がキャリッジ本体30の前側部分31の上面31a及び後側部分38の上面38aに対して面接触するようになっている。
【0032】
また、カバー部材44には、キャリッジ本体30の後側部分38に形成されたねじ孔39と対応する位置に、当該カバー部材44の上面から下方に陥入した陥入部47がそれぞれ形成されている。そして、カバー部材44がキャリッジ本体30の開口部を上方から被覆するように配置されると、これらの陥入部47の底面がキャリッジ本体30の後側部分38の上面38aに対してそれぞれ接触するようになっている。また、これらの陥入部47の底面には、固定ねじ40の雄ねじ部を挿通可能な挿通孔48(図4参照)がそれぞれ形成されている。
【0033】
また、カバー部材44には、当該カバー部材44の後面における上端位置から後方に突出する凸部49が、キャリッジ本体30の立設部41に形成された一対の凹部41bと左右方向で対応する位置に形成されている。そして、これらの凸部49は、キャリッジ本体30の立設部41に形成された一対の凹部41bの左右方向の幅寸法に対して同方向に略同一の幅寸法を有している。また、これらの凸部49には、キャリッジ本体30の立設部41に形成されたねじ孔42と対応する位置に、固定ねじ43の雄ねじ部を挿通可能な挿通孔50がそれぞれ形成されている。
【0034】
また、カバー部材44には、当該カバー部材44の後面における左右方向の略中央位置から前方に陥入した凹部51が形成されている。そして、カバー部材44がキャリッジ本体30の開口部を上方から被覆するように配置されると、この凹部51内には、キャリッジ本体30の立設部41に設けられた凸部41aが挿入されるようになっている。
【0035】
次に、上記のように構成されたプリンター1の作用について、特にキャリッジ8が主走査方向に走査する際の作用に着目して以下説明する。
さて、図4及び図5に示すように、本実施形態のキャリッジ8は、主ガイド軸7aを挿通させるための貫通部34がキャリッジ本体30の後端部に形成されると共に、この主ガイド軸7aによってキャリッジ本体30の一端が片持ち状に支持されている。また、カバー部材44の上方には、キャリッジ8の主走査方向に横切るように従ガイド軸7bが配置されると共に、この従ガイド軸7bがキャリッジ本体30の立設部41に設けられた凸部41aに当接する。
【0036】
すなわち、キャリッジ本体30の凸部41aは、キャリッジ本体30が当該キャリッジ本体30の自重によって主ガイド軸7aの軸線を中心とする周方向に回動した場合に、従ガイド軸7bによってその周方向に係止される係止部として機能する。そして、キャリッジ本体30は、貫通部34の内面を主ガイド軸7aの外周面に摺動させると共に、凸部41aを従ガイド軸7bの外周面に摺動させることにより、これらのガイド軸7a,7bによってガイドされつつ当該ガイド軸7a,7bの軸線方向となる主走査方向に移動する。
【0037】
ここで、キャリッジ本体30において凸部41aの近傍となる部位(第1部位)は、該凸部41aを挟んだ前後方向の両側となる位置が固定ねじ40及び固定ねじ43によってカバー部材44に対して固定されている。そのため、キャリッジ本体30は、凸部41aの近傍の剛性が前後方向の両側からカバー部材44によって補強される。したがって、キャリッジ本体30が該キャリッジ本体30の自重に従って主ガイド軸7aの軸線を中心とする周方向に回動することにより、従ガイド軸7bからキャリッジ本体30の凸部41aに対して主ガイド軸7aの軸線と直交する前後方向に応力が作用した場合であっても、その応力によってキャリッジ本体30の凸部41aの近傍が前後方向に歪むように変形することが抑制される。
【0038】
また、キャリッジ本体30において凸部41aから前方に離間した部位(第2部位)は、固定ねじ37によってカバー部材44に対して固定されている。そのため、キャリッジ本体30は、凸部41aの近傍の部位の剛性だけでなく、凸部41aから離間した部位の剛性もカバー部材44によって補強される。したがって、従ガイド軸7bからキャリッジ本体30の凸部41aに対して主ガイド軸7aの軸線と直交する前後方向に応力が作用した場合であっても、その応力によってキャリッジ本体30の全体構造が前後方向に歪むように変形することが抑制される。
【0039】
また、キャリッジ8が主走査方向に移動すると、キャリッジ本体30の凸部41aには、従ガイド軸7bの外周面から主走査方向に沿うように摺動抵抗が作用する。ここで、キャリッジ本体30における凸部41aの近傍は、該凸部41aを挟んだ主走査方向の両側となる位置が固定ねじ40及び固定ねじ43によってカバー部材44に対して固定されている。そのため、キャリッジ本体30は、凸部41aの近傍の剛性が主走査方向の両側からカバー部材44によって補強される。したがって、キャリッジ8の走査時に従ガイド軸7bから主走査方向に沿うようにキャリッジ本体30の凸部41aに対して応力が作用した場合であっても、その応力によってキャリッジ本体30の凸部41aの近傍が主走査方向に歪むように変形することが抑制される。
【0040】
本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)キャリッジ本体30は、凸部41aの近傍の剛性がカバー部材44によって補強されるため、従ガイド軸7bからキャリッジ本体30の凸部41aに対して力が作用した際のキャリッジ本体30の変形量を低減できる。そのため、キャリッジ本体30の変形に伴って記録ヘッド9によるインクの噴射方向が所望の方向からずれることが抑制されるため、記録用紙に対する記録品質の低下を抑制することができる。
【0041】
(2)キャリッジ本体30は、凸部41aの近傍の剛性が主走査方向の両側からカバー部材44によって補強される。そのため、キャリッジ8の走査時に、キャリッジ本体30の凸部41aに対して従ガイド軸7bから主走査方向に摺動抵抗が作用した場合であっても、キャリッジ本体30の変形量を低減することができる。
【0042】
(3)キャリッジ本体30は、凸部41aの近傍の剛性が主走査方向と交差する前後方向の両側からカバー部材44によって補強される。そのため、キャリッジ本体30が当該キャリッジ本体30の自重に従って主ガイド軸7aの軸線を中心とする周方向に回動することにより、従ガイド軸7bからキャリッジ本体30の凸部41aに対して主ガイド軸7aの軸線と交差する前後方向に応力が作用した場合であっても、キャリッジ本体30の変形量を低減することができる。
【0043】
(4)キャリッジ本体30は、凸部41aの近傍に位置する部位の剛性、及び凸部41aから離間した部位の剛性がカバー部材44によって補強されるため、従ガイド軸7bからキャリッジ本体30の凸部41aに対して力が作用した際のキャリッジ本体30の変形量を更に低減することができる。
【0044】
なお、上記実施形態は、以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記実施形態において、キャリッジ本体30における凸部41aの近傍となる部位が、該凸部41aを挟んでキャリッジ8の主走査方向と直交する上下方向(第2方向)の両側となる位置においてカバー部材44に対して固定されるようにしてもよい。
【0045】
この構成によれば、キャリッジ本体30は、凸部41aの近傍の剛性が主走査方向と直交する前後方向の両側だけでなく、当該前後方向と直交する上下方向の両側からもカバー部材44によって補強される。そのため、キャリッジ本体30が当該キャリッジ本体30の自重に従って主ガイド軸7aの軸線を中心とする周方向に回動することにより、従ガイド軸7bからキャリッジ本体30の凸部41aに対して主ガイド軸7aの軸線方向と交差する方向に応力が作用した場合であっても、キャリッジ本体30の変形量を更に低減することができる。
【0046】
・上記実施形態において、キャリッジ本体30において凸部41aから離間した部位をカバー部材44に対して固定する位置の高さの方が、キャリッジ本体30において凸部41aの近傍に位置する部位をカバー部材44に対して固定する位置の高さよりも高くなるようにしてもよいし、これらの位置を互いに同一の高さとなるようにしてもよい。
【0047】
・上記実施形態において、キャリッジ本体30において凸部41aから離間した部位を固定ねじ37によってカバー部材44に対して固定することなく、キャリッジ本体30において凸部41aの近傍に位置する部位のみを固定ねじ40及び固定ねじ43によってカバー部材44に対して固定するようにしてもよい。
【0048】
・上記実施形態において、キャリッジ本体30において凸部41aの近傍となる部位をカバー部材44に対して固定する各々の固定ねじ40,43は、互いに同一の高さとなる位置に配置してもよい。
【0049】
・上記実施形態において、キャリッジ本体30において凸部41aの近傍となる部位を、該凸部41aに対して前後方向の一方側となる位置のみにおいて、固定ねじによってカバー部材44に対して固定するようにしてもよい。
【0050】
・上記実施形態において、固定部材は固定ねじに限定されず、キャリッジ本体30をカバー部材44に対して相対移動不能に固定することができる構成であれば、任意の構成の固定部材を採用することができる。
【0051】
・上記実施形態において、キャリッジ本体30に対して左右方向に貫通する貫通部を二箇所に設け、これらの貫通部に対してガイド軸を個別に嵌挿させるようにしてもよい。この場合、これらのガイド軸のうち、一方のガイド軸は、当該ガイド軸の外周面が貫通部の内面に当接することにより、他方のガイド軸の軸線を中心とする周方向にキャリッジ本体30が回動することを係止する役割を果たす。
【0052】
・上記実施形態において、キャリッジ8は、記録ヘッド9のノズル形成面を下方向以外の方向、例えば左右方向や斜め下方向などに指向させるように配置してもよい。
・上記実施形態において、流体噴射装置として、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置を採用しても良い。微小量の流滴を吐出させる流体噴射ヘッド等を備える各種の流体消費装置に流用可能である。なお、流滴とは、上記流体噴射装置から吐出される流体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう流体とは、流体消費装置が噴射させることができるような材料であれ良い。例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、流体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインク等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種流体組成物を包含するものとする。流体消費装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する流体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる流体を噴射する流体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する流体噴射装置を採用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…流体噴射装置としてのインクジェット式プリンター、7a…第1軸としての主ガイド軸、7b…第2軸としての従ガイド軸、9…流体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、30…キャリッジ本体、34…嵌挿部としての貫通部、37…固定部材としての固定ねじ、40…固定部材としての固定ねじ、41a…係止部としての凸部、43…固定部材としての固定ねじ、44…カバー部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向に沿って延びる第1軸と、
前記第1軸と平行して主走査方向に沿って延びる第2軸と、
前記第1軸を嵌挿可能な嵌挿部、及び前記第2軸によって前記第1軸の軸線を中心とする周方向に係止される係止部を有し、前記嵌挿部の内面を前記第1軸に摺動させると共に前記係止部を前記第2軸に摺動させつつ主走査方向に移動するキャリッジ本体と、
前記キャリッジ本体に搭載される流体噴射ヘッドと、
前記キャリッジ本体に取り付けられるカバー部材と、
該カバー部材を前記キャリッジ本体に対して前記係止部の近傍で固定する固定部材と
を備えたことを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
前記固定部材は、前記係止部を主走査方向において挟んだ複数の位置に配置されることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の流体噴射装置において、
前記固定部材は、前記係止部を主走査方向と交差する第1方向において挟んだ複数の位置に配置されることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項4】
請求項3に記載の流体噴射装置において、
前記固定部材は、前記係止部を主走査方向と交差する方向であって且つ前記第1方向と交差する第2方向において挟んだ複数の位置に配置されることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の流体噴射装置において、
前記固定部材は、前記主走査方向と交差する方向において前記係止部の近傍に位置する第1部位と、前記主走査方向と交差する方向において前記係止部に対して前記第1部位よりも離間した第2部位とで前記カバー部材を前記キャリッジ本体に固定することを特徴とする流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−183747(P2011−183747A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53372(P2010−53372)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】