流体噴射装置
【課題】メンテナンス時にノズル形成面が加圧されてしまうことをより確実に防ぐことができる流体噴射装置を提供すること。
【解決手段】枠体22と、一対のローラー22,23に無端ベルト状に巻かれた可撓性および弾性を有するフィルム25と、枠体22の開口部47を流体噴射ヘッド3のノズル形成面6に対して対向させる状態で、枠体22の一方の側をノズル形成面6に密着させる枠体密着機構26と、枠体22の他方の側にフィルム25を密着させた状態で、フィルム25の開口部47よりも内側に位置する部分をノズル形成面6の側に向けて押圧する押圧体27を有する押圧機構28とを有し、押圧機構28がフィルム25に対して押圧を行っている状態で、枠体密着機構26は枠体22をノズル形成面6に対して密着を行い、密着が行われている状態で、押圧機構28による押圧を解除することとする。
【解決手段】枠体22と、一対のローラー22,23に無端ベルト状に巻かれた可撓性および弾性を有するフィルム25と、枠体22の開口部47を流体噴射ヘッド3のノズル形成面6に対して対向させる状態で、枠体22の一方の側をノズル形成面6に密着させる枠体密着機構26と、枠体22の他方の側にフィルム25を密着させた状態で、フィルム25の開口部47よりも内側に位置する部分をノズル形成面6の側に向けて押圧する押圧体27を有する押圧機構28とを有し、押圧機構28がフィルム25に対して押圧を行っている状態で、枠体密着機構26は枠体22をノズル形成面6に対して密着を行い、密着が行われている状態で、押圧機構28による押圧を解除することとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体噴射装置は、流体を噴射する流体噴射ヘッドを備え、この流体噴射ヘッドから被記録媒体等に流体を噴射する。かかる流体噴射装置は、流体噴射ヘッドに設けられるノズルから流体を噴射する構成となっているが、ノズルから流体が噴射されない状態が続くと、ノズル内に残留している流体が増粘することがある。ノズル内に増粘した流体があると、流体の適正な噴射を行えなくなる虞がある。そのため、流体噴射装置には、特許文献1に開示されるように、ノズル内に溜まった増粘インクの排出を行うためのメンテナンス機構が備えられている。特許文献1に開示されるメンテナンス機構は、蛇腹構造のキャップをノズル形成面に押しつけることで蛇腹を縮め、この縮められた蛇腹を伸ばすことで、キャップ内を負圧にして、この負圧によりノズル内に溜まった増粘インクの排出を行う構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−88945号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されるメンテナンス機構による場合は、蛇腹が縮む際にキャップ内が加圧されノズル内のインクがノズルの奥側に押し込まれてしまう虞がある。この点に関し、特許文献1に開示されるメンテナンス機構は、キャップ内が加圧されると開放する空気弁を備え、空気弁が開放されることで、キャップ内の圧力が解放される構造となっている。しかしながら、空気弁が開放するまでにはタイムラグがあり、キャップ内が加圧されることを十分に防ぐことができないという問題がある。そこで、本発明は、メンテナンス時にノズル形成面が加圧されてしまうことをより確実に防ぐことができる流体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、流体噴射装置は、流体を噴射する流体噴射ヘッドと、枠体と、一対のローラーに無端ベルト状に巻かれた可撓性および弾性を有するフィルムと、枠体の開口部を流体噴射ヘッドのノズル形成面に対して対向させた状態で、枠体の一方の側の縁部をノズル形成面に密着させる枠体密着機構と、枠体の他方の側の縁部にフィルムを密着させた状態で、フィルムの開口部よりも内側に位置する部分をノズル形成面の側に押圧する押圧体を有する押圧機構とを有し、押圧機構がフィルムに対して押圧を行い、枠体内の容積を、押圧が行われる前に比べて減少させた所定容積とした状態で、枠体密着機構が枠体をノズル形成面に対して密着を行い、密着が行われている状態で、押圧機構による前記押圧を解除することとする。
【0006】
流体噴射装置をこのように構成することで、押圧機構がフィルムに対して押圧を行い、枠体内の容積を所定容積に減少させた状態で、枠体密着機構が枠体をノズル形成面に対して密着させることができる。そのため、ノズル形成面に加圧が発生しないように、ノズル形成面を密閉することができる。
【0007】
上記発明に加えて、フィルムをノズル形成面から離間する方向に付勢する付勢手段を備えることとする。
【0008】
流体噴射装置をこのように構成することで、ノズル形成面に形成された密閉空間の容積を確実に増加させることができ、ノズル内のインクをより排出させ易くすることができる。
【0009】
上記発明に加えて、フィルムをローラーにより回送する際に、フィルムに接触し、フィルムに付着したインクを除去するインク除去手段を備えることとする。
【0010】
流体噴射装置をこのように構成することで、ローラーを回転することで、フィルムに付着した廃インクの払拭を行うことができる。
【0011】
上記発明に加えて、枠体密着機構は、枠体側に設けられる第1のカムフォロアと、この第1のカムフォロアに作用する第1のカム部と、第1のカム部と枠体とを相対的に異なる方向に移動させる第1の移動手段とを有し、押圧機構は、押圧体側に設けられる第2のカムフォロアと、この第2のカムフォロアに作用する第2のカム部と、第2のカム部と押圧体とを相対的に異なる方向に移動させる第2の移動手段とを有することとする。
【0012】
流体噴射装置をこのように構成することで、枠体と押圧体の移動の制御を確実にかつ簡単な構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンターの外観を示す斜視図である。
【図2】インクジェットプリンターの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】インク排出機構の構成を示す斜視図である。
【図4】カム溝形成板の構成を示す図である。
【図5】連結杆の構成を示す図である。
【図6】インク排出動作を示すフローチャートである。
【図7】ヘッドと、カム溝に沿って移動される枠体および押圧体との位置関係を示す図である。
【図8】待機位置におけるヘッド〜押圧体の位置関係を示す図である。
【図9】待機位置におけるヘッド〜押圧体の位置関係を示す図である。
【図10】押圧実行位置におけるヘッド〜押圧体の位置関係を示す図である。
【図11】密着実行位置におけるヘッド〜押圧体の位置関係を示す図である。
【図12】吸引実行位置におけるヘッド〜押圧体の位置関係を示す図である。
【図13】インク排出機構の変形例1の構成を示す図である。
【図14】インク排出機構の変形例1の構成を示す図である。
【図15】インク排出機構の変形例2の構成を示す図である。
【図16】インク排出機構の変形例2における動作を示す図である。
【図17】インク排出機構の変形例3の構成と動作を示す図である。
【図18】インク排出機構の変形例3の構成と動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係る流体噴射装置としてのインクジェットプリンター(以下、単に、プリンターと記載する。)1について説明をする。図1は、プリンター1の全体的な概略の構成を示す斜視図である。図2は、図1に示すプリンター1の概略の構成を示すブロック図である。以下の説明において、図1に図中矢印Xで示す方向を、記録用紙Pの搬送方向(副走査方向)である前方(前側)とし、また、図1中矢印Yで示す方向をプリンター1の設置面の方向である下方(下側)として説明を行う。そして、前方から後方を見たときの左手側を左方(左側)とし、右手側を右方(右側)として説明を行う。
【0015】
(プリンター1の全体構成)
図1に示すように、プリンター1は、外装筐体2を有し、この外装筐体2の内部に、流体噴射ヘッドとしてのインク噴射ヘッド(以下、単に、ヘッドと記載する。)3と、このヘッド3が搭載されるキャリッジ4と、キャリッジ4を左右に移動させるキャリッジ移動機構5と、ヘッド3のノズル形成面6の拭き取り等を行うメンテナンス機構7等を備える。
【0016】
ヘッド3は、図示を省略するインクタンクから流体としてのインクの供給を得て、ノズル開口(図示省略)からインク滴を噴射することができるように構成されている。ヘッド3としては、たとえば、ヘッド3内に設けられるインク室に充填されたインクを、ピエゾ素子の振動によりノズル(図示省略)を介してノズル開口から噴射させることができる、いわゆるピエゾ型のヘッドを用いることができる。
【0017】
キャリッジ移動機構5は、ガイド部材8と、アイドルプーリー9と、駆動プーリー10と、タイミングベルト11と、キャリッジモーター12等を有している。ガイド部材8は、外装筐体2の内部に、ガイド方向を主走査方向(本実施の形態においては図1の左右方向)に向けて配置されている。キャリッジ4は、ガイド部材8のガイドを受けて左右方向に移動することができるように、ガイド部材8に取り付けられている。アイドルプーリー9と駆動プーリー10とは、ガイド部材8のガイド方向と平行な方向に配置されている。
【0018】
タイミングベルト11は、アイドルプーリー9と駆動プーリー10とに掛け渡されている。駆動プーリー10は、キャリッジモーター12により左右に往復回転させられる。したがって、タイミングベルト11は、駆動プーリー10の回転に従って左右方向に往復回転させられる。キャリッジ4は、タイミングベルト11の一部に結合されている。したがって、タイミングベルト11が左右方向に往復回転すると、キャリッジ4もタイミングベルト11と共に左右方向(主走査方向)に往復移動する。
【0019】
タイミングベルト11の下方には、記録用紙Pを後方から前方に向かって(副走査方向に)搬送するための搬送ローラー13が配設されている。搬送ローラー13は、搬送モーター14により回転させられる。また、搬送ローラー13の前方には、搬送ローラー13の回転によって搬送される記録用紙Pの下側を支持するプラテン15が配設されている。
【0020】
ヘッド3は、ノズル形成面6を記録用紙Pに対向させる姿勢で配置されている。そして、ヘッド3は、キャリッジ4と共に左右方向(主走査方向)に往復移動しながら、後方から前方に向かって(副走査方向に)搬送される記録用紙Pに対してインク滴を噴射する。インク滴の噴射は、パーソナルコンピューター(パソコン)PC(図2参照)等から送られる画像データ等に基づいて行われ、記録用紙Pには、画像データ等に基づく所望の画像が記録される。なお、ヘッド3が記録用紙Pに記録を行う際におけるヘッド3の左右方向への往復移動は、記録用紙Pの左右幅に対応した幅を有する記録領域Aで行われる。
【0021】
一方、記録を行っている間にノズル形成面6がインクや紙粉等で汚れたり、ノズル内のインクが増粘したとき、あるいは一定量の記録を行った後等の所定のタイミングで、ヘッド3は、記録領域Aの左側に設定されている非記録領域Bに移動させられる。非記録領域Bには、メンテナンス機構7が配置されている。プリンター1は、非記録領域Bに移動されたヘッド3のノズル形成面6に対して、メンテナンス機構7により、メンテナンスを行うメンテナンス動作を行うことができるように構成されている。メンテナンス動作においては、ノズル形成面6の拭き取りを行うノズル形成面払拭動作およびノズル内のインクを吸引し排出させるインク排出動作を実行することができる。
【0022】
(メンテナンス機構7の構成)
メンテナンス機構7は、ノズル形成面6の拭き取りを行うワイピング機構16と、ノズル内のインクを排出するインク排出機構17とを備えている。メンテナンス機構7は、ヘッド3が非記録領域Bに移動したときに、ヘッド3の下方となる位置に配置されている。
【0023】
ワイピング機構16は、ワイパー18と、ワイパー18が取り付けられる支持台19と、支持台19を上下に昇降させる昇降機構20等を備えている。昇降機構20は、たとえば、上下方向に軸方向が配置される図示を省略するリードスクリューと、このリードスクリューにねじ結合されると共に支持台19に連結される図示を省略するナットと、リードスクリューを回転させる図示を省略する支持台昇降モーター21(図2参照)等から構成することができる。支持台昇降モーター21によりリードスクリューを回転させると、ナットがリードスクリューにガイドされ、リードスクリューの回転方向に応じて上下に移動する。つまり、ナットに連結される支持台19が上下に移動する。支持台19が上下に移動することで、ワイパー18は上方位置と下方位置とに昇降することができる。
【0024】
昇降機構20によって支持台19が昇降することで、ワイパー18は、ワイパー18の上端部18Aがノズル形成面6に当接する上方位置と、上端部18Aがノズル形成面6から離間する下方位置とに移動することができる。そして、ワイパー18が上方位置に配置されている状態で、キャリッジ移動機構5を駆動し、ヘッド3を左(右)から右(左)に移動させることで、ノズル形成面6の払拭が行われる。
【0025】
インク排出機構17は、後述するように(図3等参照)、枠体22と、一対のローラー23,24と、ローラー23,24に無端ベルト状に巻かれた可撓性および弾性を有するフィルム25と、枠体密着機構26と、押圧体27を有する押圧機構28等とを有する。インク排出機構17は、枠体22とフィルム25とによりノズル形成面6を密閉状態に封止し、封止を行っている状態で、封止されている空間の容積を増大させ、空間内を負圧とすることによって、ノズル内に溜まっているインクをノズル外に排出させることができるように構成されている。
【0026】
(電気的構成)
次に、図2を参照しながら図1に示すプリンター1の電気的な構成の概略を説明する。
【0027】
図2において、プリンター1は、パソコンPCから入力された画像データ等を受け取るインターフェイス29と、制御部30と、ヘッド3と、ヘッド3を駆動するためのヘッドドライバー31と、キャリッジモーター12と、搬送モーター14と、支持台昇降モーター21と、その他のモーターを駆動するためのモータードライバー32等を備える。
【0028】
制御部30は、記録開始信号、インク排出動作開始信号あるいは画像データー等に基づいて、ヘッド3、搬送モーター14、キャリッジモーター12、支持台昇降モーター21等の駆動の他、プリンター1の様々な動作制御を司る機能を有し、CPU(Central Processing Unit)33あるいはマイクロコンピューター等により構成される。また、制御部30には、プリンター1の各種動作に係る処理プログラム等が記憶されているPROM(Programmable Read−Only Memory)34と、パソコンPCからインターフェイス29を介して入力される画像データ等を格納・記憶したり、作業用のメモリとして機能するRAM(Random Access Memory)35と、プリンター1に関する諸情報を記憶するEEPROM(Electrically Erasable Read−Only Memory)36等を備える。
【0029】
(インク排出機構17)
次に、図3および図4を参照しながら本発明の第1の実施の形態に係るプリンター1に備えられるインク排出機構17の構成について説明する。
【0030】
図3に示すように、インク排出機構17は、枠体22と、一対のローラー23,24と、このローラー23,24に無端ベルト状に巻かれたフィルム25と、ローラー駆動機構37と、押圧体27と、フィルム25に当接することができるインク除去手段としてのインク吸収材38とを有する。図3は、枠体22、ローラー23,24、フィルム25、押圧体27およびインク吸収材38の構成とその配置を示す斜視図である。図3に示すように、枠体22は、ヘッド3よりも下側に配置されている。また、フィルム25は、枠体22よりも下方に配置されている。そして、押圧体27は、フィルム25よりも下方に配置されている。
【0031】
また、インク排出機構17は、図1,4に示すように、カム溝39,40が形成されるカム溝形成板41を有する。カム溝39は、枠体22をノズル形成面6に対して接離させる方向(本実施の形態のプリンター1では上下方向)に移動制御するためのカム溝である。カム溝40は、押圧体27をフィルム25に対して接離する方向(本実施の形態のプリンター1では上下方向)に移動制御するためのカム溝である。
【0032】
カム溝39には、傾斜部39Aが形成されている。傾斜部39Aは、ノズル形成面6から離間している枠体22を上昇させ、ノズル形成面6に当接させるための部分である。カム溝40には、傾斜部40A,40Bが形成されている。傾斜部40Aは、フィルム25から離間している押圧体27を、フィルム25に向けて上昇させるための部分である。傾斜部40Bは、枠体22の傾斜部39Aによる上昇に併せて押圧体27を上昇させるための部分である。カム溝39は、枠体密着機構26の一部を構成するものであり、また、カム溝40は、押圧機構28の一部を構成するものである。カム溝形成板41は、図1に示すように、プリンター1の外装筐体2の内側の底面に立設され、枠体22および押圧体27を挟んで前後に配置されている。
【0033】
(枠体22)
枠体22の一方の側である上側の上縁部22Aの外周の大きさは、ノズル形成面6の外周よりも小さく、かつ、上縁部22Aの内法の周囲の大きさは、ノズル形成面6のノズル開口が形成されている領域よりも大きく設定されている。したがって、枠体22の上縁部22Aをノズル形成面6に当接させたとき、上縁部22Aの全周を、ノズル形成面6の外周の内側に配置することができると共に、枠体22の内側に全ノズル開口を配置することができる。
【0034】
枠体22には、ローラー駆動機構37が取り付けられている。ローラー駆動機構37は、ローラー23,24を上下に移動させることができるローラー昇降機構42を有する。ローラー昇降機構42は、ローラー昇降モーター43(図2参照)等により構成される。ローラー昇降機構42は、ローラー23,24を、ローラー23,24の上面部が枠体22の他方の側である下縁部22Bよりも下側となる下方位置L1(図8(B)参照)と、上面部が下縁部22Bよりも上側の位置となる上方位置H1(図9(B)参照)とに移動することができる。
【0035】
(ローラー23,24、フィルム25)
ローラー23とローラー24とは、枠体22の左右方向の幅よりも広い間隔で、枠体22の左右に配置されている。ローラー23,24には、フィルム25が無端ベルト状に巻回されている。ローラー23を支持するローラー駆動機構37には、ローラー23を回転させるローラー回転機構45が備えられている。ローラー回転機構45は、ローラー回転モーター46(図2参照)等により構成される。ローラー24は、従動ローラーとして回転可能である。したがって、ローラー23,24にフィルム25が周回されている状態で、ローラー回転機構45を駆動しローラー23を回転することで、フィルム25をローラー23,24の周りに回送させることができる。
【0036】
(フィルム25)
フィルム25は、ゴムシート材等の可撓性および弾性を有する材質で形成されている。ゴムシート材の他に、シリコーンゴム、CR(クロロプレン)ゴム、EPDM(エチレンプロピレン)ゴム等のゴム材、あるいはエラストマ材にて形成することができる。また、PE(ポリエチレン)フィルム、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の追従性のあるフィルムにより形成することもできる。フィルム25の回送方向に直交する方向(プリンター1においては前後方向)の幅は、枠体22の幅よりも広く形成されている。また、ローラー23とローラー24とは、枠体22のローラー23とローラー24とが配置される方向(プリンター1においては左右方向)の幅よりも広い間隔で配置されている。したがって、フィルム25を枠体22の下縁部22Bに当接させたときに、フィルム25により枠体22の下側の開口部47を全面に亘って封止することができる。
【0037】
(枠体密着機構26)
枠体密着機構26は、カム溝形成板41に形成される第1のカム部としてのカム溝39と、このカム溝39に係合しカム溝39の作用を受ける第1のカムフォロアとしてのカムフォロア48(図3参照)と、第1の移動手段としての移動機構49とを有する。移動機構49は、キャリッジ移動機構5等により構成され、枠体22をカム溝39に沿って移動することができる。枠体密着機構26は、枠体22をノズル形成面6から離間させた下方位置L2(図8(B)参照)と、上縁部22Aをノズル形成面6に密着させる上方位置H2(図11(B))とに移動することができる。カムフォロア48は、枠体22に取り付けられるローラー駆動機構37を覆う筐体50の側面に取り付けられている。枠体22は、移動機構49によりカム溝39に沿って移動させられることでカム溝39とカムフォロア48との作用により、ノズル形成面6に対して接離する方向について移動が制御される。
【0038】
移動機構49は、枠体22に設けられる連結杆51と、キャリッジ4に設けられる連結杆52(図5,8等参照)と、キャリッジ移動機構5を有する。連結杆51は、図5の上段(A)に示すように、間隙部53を挟んで主走査方向に配置される当接片51Aと当接片51Bとを有している。そして、連結杆51と連結杆52は、連結杆51の間隙部53に連結杆52が嵌合されることで連結が行われる。連結杆51は、押圧体27に取り付けられる連結杆昇降モーター54(図2参照)により、昇降可能に構成されている。連結杆51が上昇させられると、間隙部53に連結杆52が嵌合し、連結杆51と連結杆52との連結が行われる。連結杆51が下降させられると間隙部53が連結杆52から外れ、連結杆51と連結杆52との連結が解かれる。連結杆51と連結杆52とが連結されている状態でキャリッジ4が主走査方向に移動すると、枠体22もキャリッジ4と一体的に主走査方向に移動する。なお、間隙部53の上下方向の長さは、枠体22の上下方向の移動量よりも長く設定されている。したがって、枠体22がノズル形成面6に接離する方向に移動する際に、連結杆51が、連結杆52に対して干渉してしまうことはない。
【0039】
(押圧機構28)
押圧機構28は、カム溝形成板41に形成される第2のカム部としてのカム溝40と、このカム溝40に係合し、カム溝40の作用を受ける第2のカムフォロアとしてのカムフォロア55(図3参照)と、第2の移動手段としての移動機構56とを有する。移動機構56は、キャリッジ移動機構5等により構成され、押圧体27をカム溝40に沿って移動することができる。押圧機構28は、押圧体27をフィルム25から離間させた下方位置L3(図8(B)参照)と、押圧体27をフィルム25に押圧させ、フィルム25を上方に押し曲げる上方位置H3(図10(B))とに移動することができる。カムフォロア55は、押圧体27の前後の側面に取り付けられている。押圧体27は、移動機構56によりカム溝40に沿って移動させられることで、フィルム25に対して接離する方向の移動が制御される。
【0040】
移動機構56は、枠体22に設けられる連結杆57(図5,9参照)と、押圧体27に設けられる連結杆58と、キャリッジ移動機構5を有する。連結杆57は、図5の下段(B)に示すように、間隙部59を挟んで主走査方向に配置される当接片57Aと当接片57Bとを有している。連結杆57と連結杆58は、連結杆57の間隙部59に連結杆58が嵌合されることで連結が行われている。連結杆57と連結杆58とは常時連結されている。
【0041】
連結杆57と連結杆58とにより枠体22に連結されている押圧体27は、枠体22が主走査方向に移動すると、枠体22と一体的に移動する。つまり、連結杆51と連結杆52とが連結され、また、連結杆57と連結杆58とが連結されている状態で、キャリッジ4を移動すると、枠体22および押圧体27は、キャリッジ4と一体的に移動する。そして、枠体22および押圧体27がキャリッジ4と共に主走査方向に移動すると、枠体22および押圧体27は、それぞれカム溝39,40によって上下方向に移動する。なお、間隙部59の上下方向の長さは、押圧体27の上下方向の移動量よりも長く設定されている。したがって、押圧体27がフィルム25に接離する方向に移動する際に、連結杆58が、連結杆57に対して干渉してしまうことはない。
【0042】
(インク排出動作)
インク排出動作について図6から図12を参照しながら説明する。図6は、インク排出動作の流れを示すフローチャートである。図7は、ガイド部材8に沿って移動するヘッド3(キャリッジ4)と、カム溝39,40に沿って移動される枠体22および押圧体27との位置関係を示す図である。インク排出機構17は、図7に示すように、枠体22および押圧体27を、カム溝39,40に沿って待機位置S1から反転位置S2の間を1往復させることで、1回のインク排出動作を行うことができるように構成されている。図7の上段(A)は、枠体22および押圧体27が往路(待機位置S1から反転位置S2に向かう方向)を移動する際における、ヘッド3と枠体22と押圧体27との位置関係を示す図である。図7の下段(B)は、枠体22および押圧体27が復路(反転位置S2から待機位置S1に向かう方向)を移動する際における、ヘッド3と枠体22と押圧体27との位置関係を示す図である。
【0043】
図8,9は、図7における待機位置S1におけるヘッド3、枠体22、ローラー23,24、フィルム25および押圧体27(ヘッド3〜押圧体27)の位置関係を示す図である。図10は、図7における押圧実行位置S3におけるヘッド3〜押圧体27の位置関係を示す図である。図11は、図7における密着実行位置S4におけるヘッド3〜押圧体27の位置関係を示す図である。図12は、図7における吸引実行位置S5におけるヘッド3〜押圧体27の位置関係を示す図である。
【0044】
インク排出動作は、図6に示すように、初期位置設定動作(S10)と、連結動作(S20)と、ローラー上方移動動作(S30)と、押圧動作(S40)と、密着動作(S50)と、吸引動作(S60)と、枠体離間動作(S70)と、連結解除動作(S80)と、ローラー下方移動動作(S90)と、フィルムクリーニング動作(S100)を有する。
【0045】
初期位置設定動作(S10)は、待機位置に配置されている枠体22および押圧体27の上方にヘッド3を配置し、ヘッド3、枠体22および押圧体27を上下に一列に配置させる動作である。連結動作(S20)は、連結杆51と連結杆52との連結を行う動作である。ローラー上方移動動作(S30)は、ローラー23,24を下方位置L1から上方位置H1に移動させる動作である。押圧動作(S40)は、押圧体27によりフィルム25を上方に押圧する動作である。密着動作(S50)は、枠体22をノズル形成面6に密着させる動作である。吸引動作(S60)は、ノズル形成面6に負圧を発生させノズル内のインクを排出させる動作である。枠体離間動作(S70)は、密着動作(S50)にてノズル形成面6に密着された枠体22をノズル形成面6から離間させる動作である。連結解除動作(S80)は、連結杆51と連結杆52との連結を解除する動作である。ローラー下方移動動作(S90)は、ローラー上方移動動作(S30)にて上方位置H1に移動されたローラー23,24を下方位置L1に移動させる動作である。フィルムクリーニング動作(S100)は、ローラー23,24を回転し、フィルム25を回送させて、フィルム25に付着したインクをインク吸収材38により払拭させる動作である。
【0046】
(初期位置設定動作S10)
枠体22と押圧体27は、インク排出動作が実行される前においては、図7(A)に示す待機位置S1に配置されている。枠体22と押圧体27とは、互いに上下の関係に配置され、連結杆57と連結杆58とが連結されている。また、インク排出動作が実行される前においては、図8に示すように、ローラー23,24は下方位置L1に配置されている。初期位置設定動作(S10)では、たとえば、記録領域Aに配置されているヘッド3を、待機位置S1に配置されている枠体22および押圧体27の上方に配置されるように、制御部30がキャリッジ移動機構5を駆動する。
【0047】
図8は、初期位置設定動作が完了したときの、ヘッド3〜押圧体27の位置関係を示す図である。図8の上段(A)は、ヘッド3〜押圧体27の配置を示す斜視図である。図8の下段(B)は、ヘッド3〜押圧体27の各部材の上下方向における配置関係を模式的に示す図である。待機位置S1において、枠体22は、図8(A)(B)に示すように、上縁部22Aがヘッド3から離間している下方位置L2に配置されている。また、ローラー23,24は、フィルム25を枠体22から離間させる下方位置L1に配置されている。そして、押圧体27は、フィルム25から離間している下方位置L3に配置されている。
【0048】
図8に示すヘッド3〜押圧体27の位置関係は、ローラー昇降機構42と図7(A)に示すカム溝39,40とにより実現される。すなわち、待機位置S1において、ローラー昇降機構42は、ローラー23,24を下方位置L1に配置している。下方位置L1に配置されているローラー23,24の上面部は、枠体22の下縁部22Bよりも下方に配置されている。そのため、フィルム25は、枠体22の下縁部22Bから離間する位置に配置されている。また、カム溝39は、待機位置S1に配置されている枠体22の上縁部22Aがヘッド3のノズル形成面6から離間する下方位置L2に枠体22を配置するように形成されている。カム溝40は、待機位置S1に配置されている押圧体27が、フィルム25から離間する下方位置L3に配置されるように形成されている。
【0049】
(連結動作S20)
待機位置S1に配置される枠体22の上方にヘッド3が配置される初期位置設定動作に続いて、制御部30は、連結杆51を上昇させるように連結杆昇降モーター54を駆動し、間隙部53に連結杆52を嵌合させる連結動作(S20)を実行する。これにより、連結杆51と連結杆52とが連結される。連結杆57と連結杆58とは常時連結されている。したがって、連結杆51と連結杆52とが連結されることで、キャリッジ4と枠体22と押圧体27とが連結され、キャリッジ4が主走査方向に移動すると、枠体22と押圧体27とキャリッジ4と共に移動する。
【0050】
(ローラー上方移動動作S30)
続いて、制御部30は、ローラー昇降機構42を駆動し、ローラー23,24を図8に示す下方位置L1から、図9に示す上方位置H1に移動させるローラー上方移動動作(S30)を実行する。図9の上段(A)は、ローラー上方移動動作が実行されたときの、ヘッド3〜押圧体27の配置を示す斜視図である。図9の下段(B)は、ヘッド3〜押圧体27の各部材の上下方向における配置関係を模式的に示す図である。ローラー23,24を上方位置H1に移動することで、ローラー23,24の上面部が枠体22の下縁部22Bよりも上方に位置し、フィルム25が枠体22の下縁部22Bに密着させられ、枠体22に平らに張られた状態となる。フィルム25の前後方向の幅は、枠体22の前後方向の幅よりも広く、ローラー23とローラー24とは、枠体22の左右方向の幅よりも広い間隔で配置されている。したがって、枠体22の下側の開口部47は、フィルム25により全面に亘って封止される。
【0051】
(押圧動作S40)
次に、制御部30は、ヘッド3〜押圧体27が図7(A)に示す押圧実行位置S3に移動するように、キャリッジ移動機構5を駆動する。図10の上段(A)は、押圧動作が実行されたときの、ヘッド3〜押圧体27の配置を示す斜視図である。図10の下段(B)は、ヘッド3〜押圧体27の各部材の上下方向における配置関係を模式的に示す図である。ヘッド3〜押圧体27が待機位置S1から押圧実行位置S3に移動されることで、傾斜部40Aにより押圧体27が、図8,10に示す下方位置L3から図10に示す上方位置H3に移動され、押圧動作(S40)が実行される。
【0052】
押圧体27の先端部27Aは、枠体22の開口部47の内側に入り込むことができる大きさに形成されている。そして、押圧機構28は、押圧体27が上方位置H3に移動させられたときに押圧体27の先端部27Aが、枠体22の内側に入り込む位置、すなわち枠体22の下縁部22Bよりも上方に配置されるように構成されている。したがって、上方位置H3に移動させられた押圧体27の先端部27Aは、枠体22の内側に入り込んだ位置、すなわち枠体22の下縁部22Bよりも上方に配置される。先端部27Aが枠体22の内側に入り込むように押圧体27が移動されることで、可撓性を有するフィルム25は上方に押し曲げられ、枠体22の下側から枠体22の内側に競り出る。つまり、フィルム25が枠体22の内側に競り出た分、枠体22の内側の容積は減少することになる。フィルム25は弾性を有している。そのため、押圧体27は、フィルム25の弾性に抗して、フィルム25をノズル形成面6に向けて変形させている。
【0053】
ところで、カム溝40の待機位置S1と押圧実行位置S3との間には、後述するカム溝40Cが接続される分岐部40Dが設けられている。そして、分岐部40Dには、フラップ60が設けられている。フラップ60は、押圧体27の待機位置S1側から押圧実行位置S3側(傾斜部40A側)への移動を許容すると共に、カムフォロア55のカム溝40Cへの侵入を禁止することができる。また、フラップ60は、押圧体27のカム溝40C側からカム溝40側へ移動を許容することができる。
【0054】
フラップ60は、軸部61を中心に、カム溝40Cを閉鎖している位置と、カム溝40Cからカム溝40へのカムフォロア55の移動を許容する位置とに回動できるように、カム溝形成板41に取り付けられている。フラップ60は、カム溝40Cを閉鎖している状態でカム溝40C側(図4,7において反時計回り)への回転が阻止されると共に、カム溝40C側に図示を省略するバネ等により付勢されている。したがって、フラップ60は、常時、カム溝40Cを閉鎖している状態に配置されている。そのため、押圧体27が、待機位置S1側から押圧実行位置S3側へ移動する際に、カムフォロア55は、フラップ60によりカム溝40Cの侵入が阻止され、傾斜部40Aに沿って移動する。
【0055】
(密着動作S50)
次いで、制御部30は、ヘッド3〜押圧体27が図7(A)に示す密着実行位置S4に移動するように、キャリッジ移動機構5を駆動する。図11の上段(A)は、密着動作が実行されたときの、ヘッド3〜押圧体27の配置を示す斜視図である。図11の下段(B)は、ヘッド3〜押圧体27の各部材の上下方向における配置関係を模式的に示す図である。ヘッド3〜押圧体27が押圧実行位置S3から密着実行位置S4に移動されることで、傾斜部39Aにより枠体22が、図10,11に示す下方位置L2から図11に示す上方位置H2に移動され、密着動作(S50)が実行される。上方位置H2に移動させられた枠体22は、図11に示すように、枠体22の上縁部22Aがノズル形成面6に当接し密着する。
【0056】
押圧体27は、傾斜部40Bにより、枠体22と一緒に上方に移動される。つまり、押圧体27は、枠体22との上下方向の位置関係を保持しつつ、枠体22と一緒に上方に移動される。したがって、枠体22の上縁部22Aがノズル形成面6に密着させられると、ノズル形成面6は、枠体22とフィルム25とにより密閉された状態となる。
【0057】
そして、制御部30は、図7(A)に示すように、ヘッド3〜押圧体27が、カム溝40の分岐部40Eを通過して分岐部40Eの右方に位置する反転位置S2に移動するように、キャリッジ移動機構5を駆動する。密着実行位置S4から反転位置S2までの間のカム溝39は、ガイド部材8と平行に形成され、また、カム溝39とカム溝40とについても互いに平行に形成されている。そのため、ノズル形成面6の枠体22およびフィルム25による密閉状態は保たれ、また、フィルム25の枠体22内への競り出し量も一定に保たれている。すなわち、ノズル形成面6が枠体22およびフィルム25により密閉されている間、枠体22の内側の容積は一定に保たれている。このため、たとえば、ノズル形成面が加圧されて、ノズル内のインクがノズルの奥側に押し込まれてしまうことがない。つまり、カム溝39,40は、ノズル形成面6が枠体22およびフィルム25により密閉されている間、枠体22の内側の容積を一定に保つための容積変動防止手段として構成されている。
【0058】
また、ヘッド3〜押圧体27の往路における進行方向に向かって、押圧体27に押圧動作を行わせる傾斜部40Aと枠体22に密着動作を行わせる傾斜部39Aとが順に配置されている。したがって、押圧動作S40が実行された後、密着動作S50が実行される。密着動作S50が行われる前に押圧動作S40を行い、枠体22の内側の容積を所定容積に減少させておくことで、枠体22の内側の容積を減少させることに伴うノズル形成面6への加圧を防止することができる。つまり、カム溝39,40は、密着動作S50の実行に先駆けて押圧動作S40を実行するためのタイミング形成手段として構成されている。
【0059】
ところで、分岐部40Eには、押圧体27が反転位置S2から待機位置S1側に移動したときに、押圧体27を下方に移動させるカム溝40Cが形成されている。そして、分岐部40Eには、フラップ62が設けられている。フラップ62は、押圧体27の密着実行位置S4側から反転位置S2側への移動を許容すると共に、カムフォロア55のカム溝40Cへの侵入を禁止することができる。また、フラップ62は、押圧体27の反転位置S2側から密着実行位置S4側への移動を禁止すると共に、カムフォロア55のカム溝40Cへの侵入を許容する。
【0060】
フラップ62は、軸部63を中心に、カム溝40の下縁から上方に立ち上った状態と、カム溝40Cを閉鎖している状態とに回動可能にカム溝形成板41に取り付けられている。フラップ62は、立ち上った状態で密着実行位置S4側(図4,7において反時計周り)への回転が阻止されると共に、密着実行位置S4側に図示を省略するバネ等により付勢されている。したがって、フラップ62は、常時、密着実行位置S4側への回転が阻止された状態でカム溝40の下縁から上方に立ち上がった状態となっている。そのため、押圧体27が、密着実行位置S4側から反転位置S2側へ移動する際に、カムフォロア55が付勢力に抗してフラップ62を反転位置S2側に回転させることで、押圧体27の密着実行位置S4から反転位置S2への移動が許容される共に、カム溝40Cがフラップ62により塞がれるため、カムフォロア55のカム溝40Cへの侵入が禁止される。
【0061】
(吸引動作S60)
次に、制御部30は、ヘッド3〜押圧体27が反転位置S2から図7(B)に示す吸引実行位置S5に移動するように、キャリッジ移動機構5を駆動する。図12の上段(A)は、吸引動作が実行されたときの、ヘッド3〜押圧体27の配置を示す斜視図である。図12の下段(B)は、ヘッド3〜押圧体27の各部材の上下方向における配置関係を模式的に示す図である。分岐部40Eにおいて、カムフォロア55は、フラップ62により、傾斜部40Fを有するカム溝40Cに侵入させられる。傾斜部40Fは、フィルム25を押圧している押圧体27を下降させるためのカム溝である。したがって、ヘッド3〜押圧体27が反転位置S2から吸引実行位置S5に移動されることで、傾斜部40Fにより押圧体27が、図10,12に示す上方位置H3から下方位置L3に移動させられ、フィルム25から離間する吸引動作(S60)が実行される。
【0062】
フィルム25の弾性に抗してフィルム25をノズル形成面6に向けて変形させていた押圧体27がフィルム25から離間しフィルム25に対する押圧を解除すると、フィルム25は、自己の復元力により枠体22の下縁部22Bに平に張られた状態に戻ろうとする。つまり、枠体22とフィルム25とにより密閉されてる空間の容積が所定容積に減少させられていた状態から増大させられる。枠体22とフィルム25とにより密閉されてる空間の容積が増大することで、ノズル形成面6の周囲が負圧となる。ノズル形成面6の周囲が負圧となることで、ノズル内のインクがフィルム25側に排出させられる。なお、フィルム25の有する弾性は、押圧体による押圧によって撓み変形された状態から、押圧を解除した後、変形する前の形状に復元できる程度の弾性を有していれば足りる。なお、枠体22とフィルム25とにより密閉されてる空間の容積が減少されたときの所定容積とは、フィルム25が復元することで枠体22内の容積が増大する際に、ノズル内のインクを吸引することができる容積変化をもたらすことができる容積である。
【0063】
(枠体離間動作S70)
そして、制御部30は、ヘッド3〜押圧体27が吸引実行位置S5から図7(B)に示す枠体離間実行位置S6に移動するように、キャリッジ移動機構5を駆動する。枠体離間実行位置S6では、枠体22が傾斜部39Aを、密着動作時とは逆の方向に移動する。したがって、枠体22はノズル形成面6から離間する方向に移動させられる。
【0064】
(連結解除動作S80)
そうして、制御部30は、ヘッド3〜押圧体27を枠体離間実行位置S6から図7(B)に示す待機位置S1に移動するように、キャリッジ移動機構5を駆動する。なお、分岐部40Dにおいて、フラップ60は、押圧体27のカム溝40C側からカム溝40側への移動を許容している。制御部30は、ヘッド3〜押圧体27を待機位置S1に移動させた後、連結杆51を下降させるように連結杆昇降モーター54を駆動する。連結杆51が下降することで、連結杆51と連結杆52の連結が解除される。
【0065】
(ローラー下方移動動作S90)
続いて、制御部30は、ローラー昇降機構42を駆動し、ローラー23,24を、図8に示す下方位置L1に移動させるローラー下方移動動作(S90)を実行する。ローラー23,24が下方位置L1に移動されると、フィルム25は枠体22の下縁部22Bから離間する。
【0066】
(フィルムクリーニング動作S100)
ローラー下方移動動作(S90)によりフィルム25が枠体22の下縁部22Bから離間させられた状態で、制御部30は、ローラー回転モーター46を駆動し、ローラー23,24を回転させ、フィルム25を回送させる。インク吸収材38は、ローラー23,24が下方位置L1に配置されているときに、フィルム25に当接するように配置されている。したがって、フィルム25が回送されることで、ノズルから排出されフィルム25に付着した廃インクをインク吸収材38により払拭することができる。
【0067】
ところで、上述した密閉動作(S50)が実行される際、フィルム25は枠体22の内側に競り出され、枠体22の内側の容積が所定容積に減少させられている。そして、枠体22は、枠体22の内側の容積が所定容積に減少させられている状態で、ノズル形成面6に密着させられる。これに対し、たとえば、枠体22をノズル形成面6に密着した後、枠体22の内側の容積を減少させた場合には、容積の減少に伴い、枠体22内が加圧され、ノズル内のインクをノズルの奥方向に加圧してしまうため、インクの吐出不良を招く虞がある。しかしながら、インク排出機構17においては、上述したように、枠体22の内側の容積を所定容積に減少させた状態で枠体22をノズル形成面6に密着させている。そのため、枠体22をノズル形成面6に密着させる際に、枠体22の内側が加圧されることがない。つまり、ノズル内のインクがノズルの奥方向に加圧されてしまうことがない。
【0068】
なお、枠体22の上縁部22Aおよび下縁部22Bについては、ゴム体やエラストマー等の弾性を有する部材で構成することで、ノズル形成面6と上縁部22Aとの密着性およびフィルム25と下縁部22Bとの密着性を高いものとすることができる。
【0069】
上縁部22Aを弾性を有する部材で構成した場合には、上縁部22Aがノズル形成面6に当接する際に、上縁部22Aの全周が同時にノズル形成面6に当接しない構成とすることが好ましい。ノズル形成面6に上縁部22Aが密着する際には、上縁部22Aを構成する弾性部材が圧縮変形する。そのため、上縁部22Aの全周が同時にノズル形成面6に当接する構成とした場合には、上縁部22Aの圧縮変形により、枠体22内が加圧されてしまうことがある。したがって、これを防止するため、たとえば、左右のカムフォロア48を、左右で僅かに上下にずれた位置に配置することで、カム溝39に支持される枠体22の上縁部22Aをノズル形成面6に対して僅かに傾斜させることが好ましい。
【0070】
枠体22の上縁部22Aがノズル形成面6に斜めに配置されることで、上縁部22Aは、ノズル形成面6との距離が近い側から順にノズル形成面6に当接し、徐々に当接する面積が増えていく。そのため、上縁部22Aを構成する弾性部材の圧縮変形による枠内の加圧を逃がしながら枠体22をノズル形成面6に密着させることができ、枠体22内が加圧されてしまうことを防止できる。なお、上縁部22Aを左右方向について上下に僅かに傾斜させることで、枠体22の上縁部22Aを、ノズル形成面6に対して斜めに配置させる構成としてもよい。
【0071】
プリンター1においては、キャリッジ4と枠体22とを連結杆51,52により連結し、また、枠体22と押圧体27とを連結杆57,58により連結することで、キャリッジ4の移動により、枠体22および押圧体27をカム溝形成板41に対して移動させる構成となっている。かかる構成に対し、少なくともキャリッジ4と枠体22とについては連結しない構成とし、キャリッジ移動機構5とは異なる移動機構を設け、この移動機構により枠体22と押圧体27とを移動させる構成としてもよい。しかしながら、キャリッジ4と枠体22と押圧体27とを連結することで、1つの駆動機構により、ヘッド3、枠体22および押圧体27の移動を制御することができる。また、枠体22および押圧体27を移動させる代わりに、カム溝形成板41の側を移動させることで、枠体22および押圧体27をカム溝39,40に沿って移動させる構成としてもよい。
【0072】
カム溝39,40は、一枚のカム溝形成板41に形成する代わりに、別々のカム溝形成板に形成する構成としてもよい。また、第1のカム手段は、カム溝39のようにカム溝とする換わりに、カム面にて構成してもよい。第2のカム手段についても、カム溝40に換えてカム面にて構成してもよい。
【0073】
また、押圧体27に、ワイピング機構16を用いてもよい。この場合には、フィルム25の押圧は、ワイパー18により行うことになる。また、ワイピング時には、ワイピング機構16の上方から退避する構成とすることで、ワイパー18によりノズル形成面6を払拭することが可能となる。フィルム25の押圧を、ワイパー18により行う構成とした場合には、フィルムクリーニング動作S100の実行時に、ワイパー18をフィルムに当接させた状態でフィルムを回送し、フィルムに付着した廃インクをワイパー18により払拭する構成としてもよい。
【0074】
(本実施の形態の主な効果)
プリンター1は、上述のように、インクを噴射する流体噴射ヘッドとしてのヘッド3と、枠体22と、一対のローラー23,24に無端ベルト状に巻かれた弾性を有するフィルム25と、枠体22の開口部47をヘッド3のノズル形成面6に対して対向させた状態で枠体22の一方の側の縁部である上縁部22Aをノズル形成面6に密着させる枠体密着機構26と、枠体22の他方の側の縁部にフィルム25を密着させた状態でフィルム25の開口部47よりも内側に位置する部分をノズル形成面6の側に押圧する押圧体27を有する押圧機構28とを有している。そして、押圧機構28がフィルム25を押圧し、枠体22内の容積を所定容積に減少させる。そして、枠体22内の容積を所定容積に保っている状態で、枠体密着機構26が枠体22をノズル形成面6に対して密着させる。この密着が行われている状態で、押圧機構28による押圧が解除される。
【0075】
密着実行位置S4から反転位置S2までの間のカム溝39は、ガイド部材8と平行に形成され、また、カム溝39とカム溝40とについても互いに平行に形成されている。つまり、カム溝39,40は、ノズル形成面6が枠体22およびフィルム25により密閉されている間、枠体22の内側の容積を所定容積に保つことができるように容積変動防止手段として構成されている。また、ヘッド3〜押圧体27の往路における進行方向に向かって、押圧体27に押圧動作を行わせる傾斜部40Aと枠体22に密着動作を行わせる傾斜部39Aとが順に配置されている。つまり、カム溝39,40は、密着動作S50の実行に先駆けて押圧動作S40を実行するためのタイミング形成手段として構成されている。
【0076】
プリンター1は上述の構成により、押圧機構28がフィルム25に対して押圧を行い、枠体22内の容積を所定容積に減少させ一定に保っている状態で、枠体密着機構26が枠体22をノズル形成面6に対して密着させることができる。そのため、ノズル形成面6に加圧が発生しないように、ノズル形成面6を密閉することができる。
【0077】
(変形例1)
インク排出機構17は、図13に示すように、枠体22内に、付勢手段としてのバネ体64を備える構成としてもよい。バネ体64は、コイルスプリング、板バネ等により構成することができる。バネ体64は、枠体22の内側に支持されるバネ受け板65の下面に取り付けられている。枠体22をこのように構成した場合には、図14に示すように、押圧体27は、バネ体64の付勢力に抗してフィルム25を枠体22内に競り出させることになる。そして、押圧体27がフィルム25から離間される吸引動作時に、フィルム25は、バネ体64の付勢力により下方に向けて変形し、枠体22とフィルム25とにより密閉されてる空間(密閉空間)の容積が増加する。バネ体の付勢力によりフィルム25を変形させるため、フィルム25の弾性力を超えてフィルム25を変形させることが可能となり、上記密閉空間の容積を確実に増加させることができる。バネ体64の付勢力を強くすることで、上記密閉空間の容積変化の速さを速くすることができ、ノズルを吸引する力を大きくすることができる。なお、バネ受け板65には、複数の孔部65Aが形成されている。孔部65Aを形成することで、ノズルから排出された廃インクは枠体22内に溜まることなく、フィルム25側に排出される。
【0078】
(変形例2)
インク排出機構17は、図15に示すインク排出機構17Aのように構成してもよい。図15に示すインク排出機構17Aにおいて、インク排出機構17と同様の部材については、同一の符号を付しその説明を省略または簡略化する。図15の上段(A)は、ヘッド3〜押圧体27の配置を示す斜視図である。図15の下段(B)は、ヘッド3〜押圧体27の各部材の上下方向における配置関係を模式的に示す図である。
【0079】
インク排出機構17Aは、ローラー23,24を支持柱66により押圧体27側に取り付けた構成となっている。ローラー23を支持する支持柱66には、ローラー23を回転させるローラー回転機構67が設けられている。
【0080】
このように構成されるインク排出機構17Aのインク排出動作を図16を参照して説明する。
【0081】
図16の第1段目(A)〜第5段目(E)は、図7に示すインク排出動作におけるヘッド3〜押圧体27の配置の変化を模式的に示すものである。図16(A)は、図7における待機位置S1におけるヘッド3〜押圧体27の位置関係を示す図である。図16(B)は、図7における押圧実行位置S3におけるヘッド3〜押圧体27の位置関係を示す図である。図16(C)は、図7における密着実行位置S4におけるヘッド3〜押圧体27の位置関係を示す図である。図16(D)は、図7における吸引実行位置S5におけるヘッド3〜押圧体27の位置関係を示す図である。図16(E)は、吸引実行位置S5から待機位置S1に戻ったときのヘッド3〜押圧体27の位置関係を示す図である。
【0082】
先ず、キャリッジ移動機構5を駆動して、ヘッド3を、待機位置S1に配置されている枠体22および押圧体27の上方に配置させる。そして、連結杆51と連結杆52とを連結させる。次に、ヘッド3〜押圧体27を、待機位置S1から押圧実行位置S3に移動させる。ヘッド3〜押圧体27が、待機位置S1から押圧実行位置S3に移動させられることで、傾斜部40Aにより押圧体27が枠体22の側に移動すると共に、ローラー23,24も枠体22の側に移動する。そして、図16(B)に示すように、フィルム25が枠体22の下縁部22Bに密着すると共に、押圧体27の先端部27Aが枠体22の内側に入り込む。つまり、フィルム25が枠体22の下縁部22Bに密着された状態で、枠体22の下側から枠体22の内側に競り出され、フィルム25が枠体22の内側に競り出た分、枠体22の内側の容積は減少する。
【0083】
上述のインク排出機構17は、待機位置S1において、ローラー昇降機構42によりローラー23,24を下方位置L1から上方位置H1に移動させることでフィルム25を枠体22の下縁部22Bに密着させる構成とされている。これに対し、インク排出機構17Aは、ローラー23,24を押圧体27と一緒に昇降する構成とし、押圧体27が枠体22の側に移動することで、フィルム25を枠体22の下縁部22Bに密着させる。したがって、インク排出機構17Aにおいては、ローラー昇降機構42を備える必要がない。
【0084】
ヘッド3〜押圧体27が、押圧実行位置S3から密着実行位置S4に移動させられることで、傾斜部39Aにより枠体22がノズル形成面6の側に移動する。そして、図16(C)に示されるように、枠体22の上縁部22Aがノズル形成面6に当接し密着する。また、押圧体27およびローラー23,24は、傾斜部40Bにより、枠体22と一緒に上方に移動させられる。つまり、押圧体27およびローラー23,24は、枠体22との上下方向の位置関係を保持しつつ、枠体22と一緒に上方に移動する。したがって、枠体22の上縁部22Aがノズル形成面6に密着させられると、ノズル形成面6は、枠体22とフィルム25とにより密閉された状態となる。
【0085】
そして、ヘッド3〜押圧体27は反転位置S2まで移動された後、移動方向が反転され、吸引実行位置S5に移動させられる。押圧体27およびローラー23,24は、吸引実行位置S5において、傾斜部40Fにより、枠体22から離間する方向に移動させられる。押圧体27およびローラー23,24が枠体22から離間し、フィルム25に対する押圧が解除されるに従って、フィルム25は、自己の復元力により、図16(D)に示すように、枠体22に平らに張られた状態に近づいていく。つまり、図16(C)に示すように、フィルム25が枠体22の下側から枠体22の内側に競り出され、枠体22の内側の容積が減少させられた状態から、図16(D)に示すように、フィルム25が枠体22に平らに張られた状態に復元していくことで、枠体22とフィルム25とにより密閉されてる空間の容積が増加し、ノズル形成面6の周囲が負圧となる。ノズル形成面6の周囲が負圧となることで、ノズル内のインクが排出される。
【0086】
ヘッド3〜押圧体27が、引き続き左方に移動させられることで、傾斜部40Fにより、押圧体27とローラー23,24はさらに下降を続け、図16(E)に示すように、フィルム25が枠体22の下縁部22Bから完全に離間する。
【0087】
そして、枠体離間実行位置S6では、枠体22が、傾斜部39Aを、密着動作時とは逆の方向に移動する。したがって、枠体22はノズル形成面6から離間する方向に移動される。そして、ヘッド3〜押圧体27が、待機位置S1に戻ると、連結杆51と連結杆52の連結が解除される。また、ローラー回転モーター46を駆動し、ローラー23,24を回転させてフィルム25を回送させることで、フィルム25に付着したインクをインク吸収材38により払拭する。
【0088】
(変形例3)
インク排出機構17は、図17,18に示すインク排出機構17Bのように構成してもよい。前述のインク排出機構17は、キャリッジ4の移動により、押圧体27および枠体22を主走査方向に移動させ、カム溝39,40とカムフォロア48,55の作用により押圧体27および枠体22を上下方向に移動させることで、インク排出動作を実現している。これに対し、インク排出機構17Bは、押圧体27を図示を省略する昇降機構により上下方向に移動させることで、インク排出動作を実現している。図17,18は、インク排出機構17Bのインク排出動作におけるヘッド3〜押圧体27の配置の変化を模式的に示すものである。インク排出機構17と同様部材については、同一の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0089】
インク排出機構17Bにおいて、押圧体27は、図示を省略するガイド部材により上下方向に移動可能にガイドされている。押圧体27は、前記昇降機構(図示省略)と共に押圧機構として構成され、昇降機構の駆動により、上下に移動することができる。枠体22は、図示を省略するガイド部材により、上下方向に移動可能にガイドされている。また、枠体22には、リンク68が取り付けられている。リンク68は、枠体22の左右および前後の4箇所に配置されている。枠体22とリンク68とは固定されている。押圧体27にはリンク68のガイド孔69に嵌合するピン70が設けれている。押圧体27はピン70をガイド孔69に嵌合させた状態で、ガイド孔69の長手方向に沿って移動することができる。
【0090】
このように構成されるインク排出機構17Bのインク排出動作を図17,18を参照して説明する。枠体22と押圧体27は、インク排出動作が実行される前においては、それぞれ図17(A)に示す待機位置T1,T2に配置されている。インク排出動作の実行時には、先ず、キャリッジ移動機構5を駆動して、ヘッド3を、待機位置T1,T2に配置されている枠体22および押圧体27の上方に配置する。そして、ローラー昇降機構42を駆動し、図17(B)に示すように、ローラー23,24を上方に移動させ、フィルム25を枠体22の下縁部22Bに密着させ、枠体22の下側の開口を、フィルム25により全面に亘って封止する。
【0091】
続いて、図示外の昇降機構を駆動して、図17(C)に示すよう、押圧体27を押圧実行位置T3に移動する。押圧体27が押圧実行位置T3に移動されると、押圧体27の先端部27Aが枠体22の内側に入り込む。つまり、フィルム25が枠体22の下縁部22Bに密着された状態で、枠体22の下側から枠体22の内側に競り出され、フィルム25が枠体22の内側に競り出た分、枠体22の内側の容積は減少する。なお、押圧体27の先端部27Aが枠体22の内側に所定量入り込んだ状態で、押圧体27と枠体22とが干渉し、押圧体27が枠体22に対して位置決めされる構成となっている。したがって、押圧体27が枠体22に対して位置決めされた後は、押圧体27を上方に移動させても、枠体22の内側の容積は変化することなく一定に保たれる。つまり、枠体22と押圧体27とにより容積変動防止手段が構成されている。
【0092】
そして、押圧体27をさらに上昇させ、図18(A)に示すように、枠体22の上縁部22Aがノズル形成面6に当接させられる密着実行位置T4に移動させる。枠体22の上縁部22Aがノズル形成面6に密着させられると、ノズル形成面6は、枠体22とフィルム25とにより密閉された状態となる。押圧体27と押圧体27を昇降させる昇降機構とにより、枠体22をノズル形成面6に密着させる枠体密着機構が構成される。
【0093】
上述のように押圧体27が枠体22に位置決めされ、枠体22の内側の容積が一定に保たれた状態とされた後、枠体22がノズル形成面6に当接させられる。すなわち、押圧動作S40が実行された後、密着動作S50が行われる。密着動作S50が行われる前に押圧動作S40を行い、枠体22の内側の容積を所定容積に減少させておくことで、枠体22の内側の容積を減少させることに伴うノズル形成面6への加圧を防止することができる。つまり、枠体22の下方に押圧体27を所定距離離間させて配置し、押圧体27を上昇させたときに、押圧体27が枠体22に位置決めされた状態で、枠体22がノズル形成面6に当接させられる構成とすることで、密着動作S50の実行に先駆けて押圧動作S40を実行するためのタイミング形成手段が実現されている。
【0094】
ノズル形成面6を枠体22とフィルム25とにより密閉した状態で、図18(B)に示すように、押圧体27を、フィルム25から離間した吸引実行位置T5に移動させる。押圧体27がフィルム25から離間しフィルム25に対する押圧が解除されると、フィルム25は、自己の復元力により枠体22の下縁部22Bに平らに張られた状態に戻ろうとし、枠体22とフィルム25とにより密閉されてる空間の容積が増加する。該空間の容積が増加することで、ノズル形成面6の周囲は負圧となる。ノズル形成面6の周囲が負圧となることで、ノズル内のインクが排出される。
【0095】
そしてさらに、押圧体27を下方に移動させ、図18(C)に示すように、ピン70がリンク68のガイド孔69の端部69Aに係合する枠体離間実行位置T6に移動させる。ピン70がリンク68の端部69Aに係合した状態で押圧体27が下方に移動すると、リンク68を介して枠体22も押圧体27と共に下方に移動し、枠体22はノズル形成面6から離間する。
【0096】
そして、押圧体27が図18(D)に示す待機位置T2に戻った後、ローラー23,24を下方位置L1に移動させる。続いて、ローラー回転モーター46を駆動し、ローラー23,24を回転させてフィルム25を回送させることで、フィルム25に付着したインクをインク吸収材38により払拭し、一連のインク排出動作が完了する。上述のインク排出機構17Bによれば、押圧体27、ローラー23,24および枠体22は、上下方向に移動させられる。そのため、インク排出機構17,17Aのように主走査方向に移動させられる場合に比べて、インク排出機構17Bの設置スペースを小さくすることができる。
【0097】
なお、上述の各実施の形態およびその変形例におけるプリンターの概念には、インク以外の他の液体(液体そのものや、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流動性を有する材質を含む)を噴射したりする流体噴射装置を含むようにすることもできる。そのようなものとしては、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する流体噴射装置等がある。
【0098】
さらに、本発明の流体噴射装置の概念に含まれるものとしては、プリンターの他、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する流体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置等がある。
【符号の説明】
【0099】
1 … プリンター(流体噴射装置) 3 … ヘッド(流体噴射ヘッド) 6 … ノズル形成面 22 … 枠体 23,24 … ローラー 25 … フィルム
26 … 枠体密着機構 27 … 押圧体 28 … 押圧機構 38 インク吸収材(インク除去手段) 39 … カム溝(第1のカム部) 40 … カム溝(第2のカム部) 47 … 開口部 48 … カムフォロア(第1のカムフォロア) 49 … 移動機構(第1の移動手段) 55 … カムフォロア(第2のカムフォロア) 56 … 移動機構(第2の移動手段) 64 … バネ体(付勢手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体噴射装置は、流体を噴射する流体噴射ヘッドを備え、この流体噴射ヘッドから被記録媒体等に流体を噴射する。かかる流体噴射装置は、流体噴射ヘッドに設けられるノズルから流体を噴射する構成となっているが、ノズルから流体が噴射されない状態が続くと、ノズル内に残留している流体が増粘することがある。ノズル内に増粘した流体があると、流体の適正な噴射を行えなくなる虞がある。そのため、流体噴射装置には、特許文献1に開示されるように、ノズル内に溜まった増粘インクの排出を行うためのメンテナンス機構が備えられている。特許文献1に開示されるメンテナンス機構は、蛇腹構造のキャップをノズル形成面に押しつけることで蛇腹を縮め、この縮められた蛇腹を伸ばすことで、キャップ内を負圧にして、この負圧によりノズル内に溜まった増粘インクの排出を行う構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−88945号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されるメンテナンス機構による場合は、蛇腹が縮む際にキャップ内が加圧されノズル内のインクがノズルの奥側に押し込まれてしまう虞がある。この点に関し、特許文献1に開示されるメンテナンス機構は、キャップ内が加圧されると開放する空気弁を備え、空気弁が開放されることで、キャップ内の圧力が解放される構造となっている。しかしながら、空気弁が開放するまでにはタイムラグがあり、キャップ内が加圧されることを十分に防ぐことができないという問題がある。そこで、本発明は、メンテナンス時にノズル形成面が加圧されてしまうことをより確実に防ぐことができる流体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、流体噴射装置は、流体を噴射する流体噴射ヘッドと、枠体と、一対のローラーに無端ベルト状に巻かれた可撓性および弾性を有するフィルムと、枠体の開口部を流体噴射ヘッドのノズル形成面に対して対向させた状態で、枠体の一方の側の縁部をノズル形成面に密着させる枠体密着機構と、枠体の他方の側の縁部にフィルムを密着させた状態で、フィルムの開口部よりも内側に位置する部分をノズル形成面の側に押圧する押圧体を有する押圧機構とを有し、押圧機構がフィルムに対して押圧を行い、枠体内の容積を、押圧が行われる前に比べて減少させた所定容積とした状態で、枠体密着機構が枠体をノズル形成面に対して密着を行い、密着が行われている状態で、押圧機構による前記押圧を解除することとする。
【0006】
流体噴射装置をこのように構成することで、押圧機構がフィルムに対して押圧を行い、枠体内の容積を所定容積に減少させた状態で、枠体密着機構が枠体をノズル形成面に対して密着させることができる。そのため、ノズル形成面に加圧が発生しないように、ノズル形成面を密閉することができる。
【0007】
上記発明に加えて、フィルムをノズル形成面から離間する方向に付勢する付勢手段を備えることとする。
【0008】
流体噴射装置をこのように構成することで、ノズル形成面に形成された密閉空間の容積を確実に増加させることができ、ノズル内のインクをより排出させ易くすることができる。
【0009】
上記発明に加えて、フィルムをローラーにより回送する際に、フィルムに接触し、フィルムに付着したインクを除去するインク除去手段を備えることとする。
【0010】
流体噴射装置をこのように構成することで、ローラーを回転することで、フィルムに付着した廃インクの払拭を行うことができる。
【0011】
上記発明に加えて、枠体密着機構は、枠体側に設けられる第1のカムフォロアと、この第1のカムフォロアに作用する第1のカム部と、第1のカム部と枠体とを相対的に異なる方向に移動させる第1の移動手段とを有し、押圧機構は、押圧体側に設けられる第2のカムフォロアと、この第2のカムフォロアに作用する第2のカム部と、第2のカム部と押圧体とを相対的に異なる方向に移動させる第2の移動手段とを有することとする。
【0012】
流体噴射装置をこのように構成することで、枠体と押圧体の移動の制御を確実にかつ簡単な構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンターの外観を示す斜視図である。
【図2】インクジェットプリンターの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】インク排出機構の構成を示す斜視図である。
【図4】カム溝形成板の構成を示す図である。
【図5】連結杆の構成を示す図である。
【図6】インク排出動作を示すフローチャートである。
【図7】ヘッドと、カム溝に沿って移動される枠体および押圧体との位置関係を示す図である。
【図8】待機位置におけるヘッド〜押圧体の位置関係を示す図である。
【図9】待機位置におけるヘッド〜押圧体の位置関係を示す図である。
【図10】押圧実行位置におけるヘッド〜押圧体の位置関係を示す図である。
【図11】密着実行位置におけるヘッド〜押圧体の位置関係を示す図である。
【図12】吸引実行位置におけるヘッド〜押圧体の位置関係を示す図である。
【図13】インク排出機構の変形例1の構成を示す図である。
【図14】インク排出機構の変形例1の構成を示す図である。
【図15】インク排出機構の変形例2の構成を示す図である。
【図16】インク排出機構の変形例2における動作を示す図である。
【図17】インク排出機構の変形例3の構成と動作を示す図である。
【図18】インク排出機構の変形例3の構成と動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係る流体噴射装置としてのインクジェットプリンター(以下、単に、プリンターと記載する。)1について説明をする。図1は、プリンター1の全体的な概略の構成を示す斜視図である。図2は、図1に示すプリンター1の概略の構成を示すブロック図である。以下の説明において、図1に図中矢印Xで示す方向を、記録用紙Pの搬送方向(副走査方向)である前方(前側)とし、また、図1中矢印Yで示す方向をプリンター1の設置面の方向である下方(下側)として説明を行う。そして、前方から後方を見たときの左手側を左方(左側)とし、右手側を右方(右側)として説明を行う。
【0015】
(プリンター1の全体構成)
図1に示すように、プリンター1は、外装筐体2を有し、この外装筐体2の内部に、流体噴射ヘッドとしてのインク噴射ヘッド(以下、単に、ヘッドと記載する。)3と、このヘッド3が搭載されるキャリッジ4と、キャリッジ4を左右に移動させるキャリッジ移動機構5と、ヘッド3のノズル形成面6の拭き取り等を行うメンテナンス機構7等を備える。
【0016】
ヘッド3は、図示を省略するインクタンクから流体としてのインクの供給を得て、ノズル開口(図示省略)からインク滴を噴射することができるように構成されている。ヘッド3としては、たとえば、ヘッド3内に設けられるインク室に充填されたインクを、ピエゾ素子の振動によりノズル(図示省略)を介してノズル開口から噴射させることができる、いわゆるピエゾ型のヘッドを用いることができる。
【0017】
キャリッジ移動機構5は、ガイド部材8と、アイドルプーリー9と、駆動プーリー10と、タイミングベルト11と、キャリッジモーター12等を有している。ガイド部材8は、外装筐体2の内部に、ガイド方向を主走査方向(本実施の形態においては図1の左右方向)に向けて配置されている。キャリッジ4は、ガイド部材8のガイドを受けて左右方向に移動することができるように、ガイド部材8に取り付けられている。アイドルプーリー9と駆動プーリー10とは、ガイド部材8のガイド方向と平行な方向に配置されている。
【0018】
タイミングベルト11は、アイドルプーリー9と駆動プーリー10とに掛け渡されている。駆動プーリー10は、キャリッジモーター12により左右に往復回転させられる。したがって、タイミングベルト11は、駆動プーリー10の回転に従って左右方向に往復回転させられる。キャリッジ4は、タイミングベルト11の一部に結合されている。したがって、タイミングベルト11が左右方向に往復回転すると、キャリッジ4もタイミングベルト11と共に左右方向(主走査方向)に往復移動する。
【0019】
タイミングベルト11の下方には、記録用紙Pを後方から前方に向かって(副走査方向に)搬送するための搬送ローラー13が配設されている。搬送ローラー13は、搬送モーター14により回転させられる。また、搬送ローラー13の前方には、搬送ローラー13の回転によって搬送される記録用紙Pの下側を支持するプラテン15が配設されている。
【0020】
ヘッド3は、ノズル形成面6を記録用紙Pに対向させる姿勢で配置されている。そして、ヘッド3は、キャリッジ4と共に左右方向(主走査方向)に往復移動しながら、後方から前方に向かって(副走査方向に)搬送される記録用紙Pに対してインク滴を噴射する。インク滴の噴射は、パーソナルコンピューター(パソコン)PC(図2参照)等から送られる画像データ等に基づいて行われ、記録用紙Pには、画像データ等に基づく所望の画像が記録される。なお、ヘッド3が記録用紙Pに記録を行う際におけるヘッド3の左右方向への往復移動は、記録用紙Pの左右幅に対応した幅を有する記録領域Aで行われる。
【0021】
一方、記録を行っている間にノズル形成面6がインクや紙粉等で汚れたり、ノズル内のインクが増粘したとき、あるいは一定量の記録を行った後等の所定のタイミングで、ヘッド3は、記録領域Aの左側に設定されている非記録領域Bに移動させられる。非記録領域Bには、メンテナンス機構7が配置されている。プリンター1は、非記録領域Bに移動されたヘッド3のノズル形成面6に対して、メンテナンス機構7により、メンテナンスを行うメンテナンス動作を行うことができるように構成されている。メンテナンス動作においては、ノズル形成面6の拭き取りを行うノズル形成面払拭動作およびノズル内のインクを吸引し排出させるインク排出動作を実行することができる。
【0022】
(メンテナンス機構7の構成)
メンテナンス機構7は、ノズル形成面6の拭き取りを行うワイピング機構16と、ノズル内のインクを排出するインク排出機構17とを備えている。メンテナンス機構7は、ヘッド3が非記録領域Bに移動したときに、ヘッド3の下方となる位置に配置されている。
【0023】
ワイピング機構16は、ワイパー18と、ワイパー18が取り付けられる支持台19と、支持台19を上下に昇降させる昇降機構20等を備えている。昇降機構20は、たとえば、上下方向に軸方向が配置される図示を省略するリードスクリューと、このリードスクリューにねじ結合されると共に支持台19に連結される図示を省略するナットと、リードスクリューを回転させる図示を省略する支持台昇降モーター21(図2参照)等から構成することができる。支持台昇降モーター21によりリードスクリューを回転させると、ナットがリードスクリューにガイドされ、リードスクリューの回転方向に応じて上下に移動する。つまり、ナットに連結される支持台19が上下に移動する。支持台19が上下に移動することで、ワイパー18は上方位置と下方位置とに昇降することができる。
【0024】
昇降機構20によって支持台19が昇降することで、ワイパー18は、ワイパー18の上端部18Aがノズル形成面6に当接する上方位置と、上端部18Aがノズル形成面6から離間する下方位置とに移動することができる。そして、ワイパー18が上方位置に配置されている状態で、キャリッジ移動機構5を駆動し、ヘッド3を左(右)から右(左)に移動させることで、ノズル形成面6の払拭が行われる。
【0025】
インク排出機構17は、後述するように(図3等参照)、枠体22と、一対のローラー23,24と、ローラー23,24に無端ベルト状に巻かれた可撓性および弾性を有するフィルム25と、枠体密着機構26と、押圧体27を有する押圧機構28等とを有する。インク排出機構17は、枠体22とフィルム25とによりノズル形成面6を密閉状態に封止し、封止を行っている状態で、封止されている空間の容積を増大させ、空間内を負圧とすることによって、ノズル内に溜まっているインクをノズル外に排出させることができるように構成されている。
【0026】
(電気的構成)
次に、図2を参照しながら図1に示すプリンター1の電気的な構成の概略を説明する。
【0027】
図2において、プリンター1は、パソコンPCから入力された画像データ等を受け取るインターフェイス29と、制御部30と、ヘッド3と、ヘッド3を駆動するためのヘッドドライバー31と、キャリッジモーター12と、搬送モーター14と、支持台昇降モーター21と、その他のモーターを駆動するためのモータードライバー32等を備える。
【0028】
制御部30は、記録開始信号、インク排出動作開始信号あるいは画像データー等に基づいて、ヘッド3、搬送モーター14、キャリッジモーター12、支持台昇降モーター21等の駆動の他、プリンター1の様々な動作制御を司る機能を有し、CPU(Central Processing Unit)33あるいはマイクロコンピューター等により構成される。また、制御部30には、プリンター1の各種動作に係る処理プログラム等が記憶されているPROM(Programmable Read−Only Memory)34と、パソコンPCからインターフェイス29を介して入力される画像データ等を格納・記憶したり、作業用のメモリとして機能するRAM(Random Access Memory)35と、プリンター1に関する諸情報を記憶するEEPROM(Electrically Erasable Read−Only Memory)36等を備える。
【0029】
(インク排出機構17)
次に、図3および図4を参照しながら本発明の第1の実施の形態に係るプリンター1に備えられるインク排出機構17の構成について説明する。
【0030】
図3に示すように、インク排出機構17は、枠体22と、一対のローラー23,24と、このローラー23,24に無端ベルト状に巻かれたフィルム25と、ローラー駆動機構37と、押圧体27と、フィルム25に当接することができるインク除去手段としてのインク吸収材38とを有する。図3は、枠体22、ローラー23,24、フィルム25、押圧体27およびインク吸収材38の構成とその配置を示す斜視図である。図3に示すように、枠体22は、ヘッド3よりも下側に配置されている。また、フィルム25は、枠体22よりも下方に配置されている。そして、押圧体27は、フィルム25よりも下方に配置されている。
【0031】
また、インク排出機構17は、図1,4に示すように、カム溝39,40が形成されるカム溝形成板41を有する。カム溝39は、枠体22をノズル形成面6に対して接離させる方向(本実施の形態のプリンター1では上下方向)に移動制御するためのカム溝である。カム溝40は、押圧体27をフィルム25に対して接離する方向(本実施の形態のプリンター1では上下方向)に移動制御するためのカム溝である。
【0032】
カム溝39には、傾斜部39Aが形成されている。傾斜部39Aは、ノズル形成面6から離間している枠体22を上昇させ、ノズル形成面6に当接させるための部分である。カム溝40には、傾斜部40A,40Bが形成されている。傾斜部40Aは、フィルム25から離間している押圧体27を、フィルム25に向けて上昇させるための部分である。傾斜部40Bは、枠体22の傾斜部39Aによる上昇に併せて押圧体27を上昇させるための部分である。カム溝39は、枠体密着機構26の一部を構成するものであり、また、カム溝40は、押圧機構28の一部を構成するものである。カム溝形成板41は、図1に示すように、プリンター1の外装筐体2の内側の底面に立設され、枠体22および押圧体27を挟んで前後に配置されている。
【0033】
(枠体22)
枠体22の一方の側である上側の上縁部22Aの外周の大きさは、ノズル形成面6の外周よりも小さく、かつ、上縁部22Aの内法の周囲の大きさは、ノズル形成面6のノズル開口が形成されている領域よりも大きく設定されている。したがって、枠体22の上縁部22Aをノズル形成面6に当接させたとき、上縁部22Aの全周を、ノズル形成面6の外周の内側に配置することができると共に、枠体22の内側に全ノズル開口を配置することができる。
【0034】
枠体22には、ローラー駆動機構37が取り付けられている。ローラー駆動機構37は、ローラー23,24を上下に移動させることができるローラー昇降機構42を有する。ローラー昇降機構42は、ローラー昇降モーター43(図2参照)等により構成される。ローラー昇降機構42は、ローラー23,24を、ローラー23,24の上面部が枠体22の他方の側である下縁部22Bよりも下側となる下方位置L1(図8(B)参照)と、上面部が下縁部22Bよりも上側の位置となる上方位置H1(図9(B)参照)とに移動することができる。
【0035】
(ローラー23,24、フィルム25)
ローラー23とローラー24とは、枠体22の左右方向の幅よりも広い間隔で、枠体22の左右に配置されている。ローラー23,24には、フィルム25が無端ベルト状に巻回されている。ローラー23を支持するローラー駆動機構37には、ローラー23を回転させるローラー回転機構45が備えられている。ローラー回転機構45は、ローラー回転モーター46(図2参照)等により構成される。ローラー24は、従動ローラーとして回転可能である。したがって、ローラー23,24にフィルム25が周回されている状態で、ローラー回転機構45を駆動しローラー23を回転することで、フィルム25をローラー23,24の周りに回送させることができる。
【0036】
(フィルム25)
フィルム25は、ゴムシート材等の可撓性および弾性を有する材質で形成されている。ゴムシート材の他に、シリコーンゴム、CR(クロロプレン)ゴム、EPDM(エチレンプロピレン)ゴム等のゴム材、あるいはエラストマ材にて形成することができる。また、PE(ポリエチレン)フィルム、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の追従性のあるフィルムにより形成することもできる。フィルム25の回送方向に直交する方向(プリンター1においては前後方向)の幅は、枠体22の幅よりも広く形成されている。また、ローラー23とローラー24とは、枠体22のローラー23とローラー24とが配置される方向(プリンター1においては左右方向)の幅よりも広い間隔で配置されている。したがって、フィルム25を枠体22の下縁部22Bに当接させたときに、フィルム25により枠体22の下側の開口部47を全面に亘って封止することができる。
【0037】
(枠体密着機構26)
枠体密着機構26は、カム溝形成板41に形成される第1のカム部としてのカム溝39と、このカム溝39に係合しカム溝39の作用を受ける第1のカムフォロアとしてのカムフォロア48(図3参照)と、第1の移動手段としての移動機構49とを有する。移動機構49は、キャリッジ移動機構5等により構成され、枠体22をカム溝39に沿って移動することができる。枠体密着機構26は、枠体22をノズル形成面6から離間させた下方位置L2(図8(B)参照)と、上縁部22Aをノズル形成面6に密着させる上方位置H2(図11(B))とに移動することができる。カムフォロア48は、枠体22に取り付けられるローラー駆動機構37を覆う筐体50の側面に取り付けられている。枠体22は、移動機構49によりカム溝39に沿って移動させられることでカム溝39とカムフォロア48との作用により、ノズル形成面6に対して接離する方向について移動が制御される。
【0038】
移動機構49は、枠体22に設けられる連結杆51と、キャリッジ4に設けられる連結杆52(図5,8等参照)と、キャリッジ移動機構5を有する。連結杆51は、図5の上段(A)に示すように、間隙部53を挟んで主走査方向に配置される当接片51Aと当接片51Bとを有している。そして、連結杆51と連結杆52は、連結杆51の間隙部53に連結杆52が嵌合されることで連結が行われる。連結杆51は、押圧体27に取り付けられる連結杆昇降モーター54(図2参照)により、昇降可能に構成されている。連結杆51が上昇させられると、間隙部53に連結杆52が嵌合し、連結杆51と連結杆52との連結が行われる。連結杆51が下降させられると間隙部53が連結杆52から外れ、連結杆51と連結杆52との連結が解かれる。連結杆51と連結杆52とが連結されている状態でキャリッジ4が主走査方向に移動すると、枠体22もキャリッジ4と一体的に主走査方向に移動する。なお、間隙部53の上下方向の長さは、枠体22の上下方向の移動量よりも長く設定されている。したがって、枠体22がノズル形成面6に接離する方向に移動する際に、連結杆51が、連結杆52に対して干渉してしまうことはない。
【0039】
(押圧機構28)
押圧機構28は、カム溝形成板41に形成される第2のカム部としてのカム溝40と、このカム溝40に係合し、カム溝40の作用を受ける第2のカムフォロアとしてのカムフォロア55(図3参照)と、第2の移動手段としての移動機構56とを有する。移動機構56は、キャリッジ移動機構5等により構成され、押圧体27をカム溝40に沿って移動することができる。押圧機構28は、押圧体27をフィルム25から離間させた下方位置L3(図8(B)参照)と、押圧体27をフィルム25に押圧させ、フィルム25を上方に押し曲げる上方位置H3(図10(B))とに移動することができる。カムフォロア55は、押圧体27の前後の側面に取り付けられている。押圧体27は、移動機構56によりカム溝40に沿って移動させられることで、フィルム25に対して接離する方向の移動が制御される。
【0040】
移動機構56は、枠体22に設けられる連結杆57(図5,9参照)と、押圧体27に設けられる連結杆58と、キャリッジ移動機構5を有する。連結杆57は、図5の下段(B)に示すように、間隙部59を挟んで主走査方向に配置される当接片57Aと当接片57Bとを有している。連結杆57と連結杆58は、連結杆57の間隙部59に連結杆58が嵌合されることで連結が行われている。連結杆57と連結杆58とは常時連結されている。
【0041】
連結杆57と連結杆58とにより枠体22に連結されている押圧体27は、枠体22が主走査方向に移動すると、枠体22と一体的に移動する。つまり、連結杆51と連結杆52とが連結され、また、連結杆57と連結杆58とが連結されている状態で、キャリッジ4を移動すると、枠体22および押圧体27は、キャリッジ4と一体的に移動する。そして、枠体22および押圧体27がキャリッジ4と共に主走査方向に移動すると、枠体22および押圧体27は、それぞれカム溝39,40によって上下方向に移動する。なお、間隙部59の上下方向の長さは、押圧体27の上下方向の移動量よりも長く設定されている。したがって、押圧体27がフィルム25に接離する方向に移動する際に、連結杆58が、連結杆57に対して干渉してしまうことはない。
【0042】
(インク排出動作)
インク排出動作について図6から図12を参照しながら説明する。図6は、インク排出動作の流れを示すフローチャートである。図7は、ガイド部材8に沿って移動するヘッド3(キャリッジ4)と、カム溝39,40に沿って移動される枠体22および押圧体27との位置関係を示す図である。インク排出機構17は、図7に示すように、枠体22および押圧体27を、カム溝39,40に沿って待機位置S1から反転位置S2の間を1往復させることで、1回のインク排出動作を行うことができるように構成されている。図7の上段(A)は、枠体22および押圧体27が往路(待機位置S1から反転位置S2に向かう方向)を移動する際における、ヘッド3と枠体22と押圧体27との位置関係を示す図である。図7の下段(B)は、枠体22および押圧体27が復路(反転位置S2から待機位置S1に向かう方向)を移動する際における、ヘッド3と枠体22と押圧体27との位置関係を示す図である。
【0043】
図8,9は、図7における待機位置S1におけるヘッド3、枠体22、ローラー23,24、フィルム25および押圧体27(ヘッド3〜押圧体27)の位置関係を示す図である。図10は、図7における押圧実行位置S3におけるヘッド3〜押圧体27の位置関係を示す図である。図11は、図7における密着実行位置S4におけるヘッド3〜押圧体27の位置関係を示す図である。図12は、図7における吸引実行位置S5におけるヘッド3〜押圧体27の位置関係を示す図である。
【0044】
インク排出動作は、図6に示すように、初期位置設定動作(S10)と、連結動作(S20)と、ローラー上方移動動作(S30)と、押圧動作(S40)と、密着動作(S50)と、吸引動作(S60)と、枠体離間動作(S70)と、連結解除動作(S80)と、ローラー下方移動動作(S90)と、フィルムクリーニング動作(S100)を有する。
【0045】
初期位置設定動作(S10)は、待機位置に配置されている枠体22および押圧体27の上方にヘッド3を配置し、ヘッド3、枠体22および押圧体27を上下に一列に配置させる動作である。連結動作(S20)は、連結杆51と連結杆52との連結を行う動作である。ローラー上方移動動作(S30)は、ローラー23,24を下方位置L1から上方位置H1に移動させる動作である。押圧動作(S40)は、押圧体27によりフィルム25を上方に押圧する動作である。密着動作(S50)は、枠体22をノズル形成面6に密着させる動作である。吸引動作(S60)は、ノズル形成面6に負圧を発生させノズル内のインクを排出させる動作である。枠体離間動作(S70)は、密着動作(S50)にてノズル形成面6に密着された枠体22をノズル形成面6から離間させる動作である。連結解除動作(S80)は、連結杆51と連結杆52との連結を解除する動作である。ローラー下方移動動作(S90)は、ローラー上方移動動作(S30)にて上方位置H1に移動されたローラー23,24を下方位置L1に移動させる動作である。フィルムクリーニング動作(S100)は、ローラー23,24を回転し、フィルム25を回送させて、フィルム25に付着したインクをインク吸収材38により払拭させる動作である。
【0046】
(初期位置設定動作S10)
枠体22と押圧体27は、インク排出動作が実行される前においては、図7(A)に示す待機位置S1に配置されている。枠体22と押圧体27とは、互いに上下の関係に配置され、連結杆57と連結杆58とが連結されている。また、インク排出動作が実行される前においては、図8に示すように、ローラー23,24は下方位置L1に配置されている。初期位置設定動作(S10)では、たとえば、記録領域Aに配置されているヘッド3を、待機位置S1に配置されている枠体22および押圧体27の上方に配置されるように、制御部30がキャリッジ移動機構5を駆動する。
【0047】
図8は、初期位置設定動作が完了したときの、ヘッド3〜押圧体27の位置関係を示す図である。図8の上段(A)は、ヘッド3〜押圧体27の配置を示す斜視図である。図8の下段(B)は、ヘッド3〜押圧体27の各部材の上下方向における配置関係を模式的に示す図である。待機位置S1において、枠体22は、図8(A)(B)に示すように、上縁部22Aがヘッド3から離間している下方位置L2に配置されている。また、ローラー23,24は、フィルム25を枠体22から離間させる下方位置L1に配置されている。そして、押圧体27は、フィルム25から離間している下方位置L3に配置されている。
【0048】
図8に示すヘッド3〜押圧体27の位置関係は、ローラー昇降機構42と図7(A)に示すカム溝39,40とにより実現される。すなわち、待機位置S1において、ローラー昇降機構42は、ローラー23,24を下方位置L1に配置している。下方位置L1に配置されているローラー23,24の上面部は、枠体22の下縁部22Bよりも下方に配置されている。そのため、フィルム25は、枠体22の下縁部22Bから離間する位置に配置されている。また、カム溝39は、待機位置S1に配置されている枠体22の上縁部22Aがヘッド3のノズル形成面6から離間する下方位置L2に枠体22を配置するように形成されている。カム溝40は、待機位置S1に配置されている押圧体27が、フィルム25から離間する下方位置L3に配置されるように形成されている。
【0049】
(連結動作S20)
待機位置S1に配置される枠体22の上方にヘッド3が配置される初期位置設定動作に続いて、制御部30は、連結杆51を上昇させるように連結杆昇降モーター54を駆動し、間隙部53に連結杆52を嵌合させる連結動作(S20)を実行する。これにより、連結杆51と連結杆52とが連結される。連結杆57と連結杆58とは常時連結されている。したがって、連結杆51と連結杆52とが連結されることで、キャリッジ4と枠体22と押圧体27とが連結され、キャリッジ4が主走査方向に移動すると、枠体22と押圧体27とキャリッジ4と共に移動する。
【0050】
(ローラー上方移動動作S30)
続いて、制御部30は、ローラー昇降機構42を駆動し、ローラー23,24を図8に示す下方位置L1から、図9に示す上方位置H1に移動させるローラー上方移動動作(S30)を実行する。図9の上段(A)は、ローラー上方移動動作が実行されたときの、ヘッド3〜押圧体27の配置を示す斜視図である。図9の下段(B)は、ヘッド3〜押圧体27の各部材の上下方向における配置関係を模式的に示す図である。ローラー23,24を上方位置H1に移動することで、ローラー23,24の上面部が枠体22の下縁部22Bよりも上方に位置し、フィルム25が枠体22の下縁部22Bに密着させられ、枠体22に平らに張られた状態となる。フィルム25の前後方向の幅は、枠体22の前後方向の幅よりも広く、ローラー23とローラー24とは、枠体22の左右方向の幅よりも広い間隔で配置されている。したがって、枠体22の下側の開口部47は、フィルム25により全面に亘って封止される。
【0051】
(押圧動作S40)
次に、制御部30は、ヘッド3〜押圧体27が図7(A)に示す押圧実行位置S3に移動するように、キャリッジ移動機構5を駆動する。図10の上段(A)は、押圧動作が実行されたときの、ヘッド3〜押圧体27の配置を示す斜視図である。図10の下段(B)は、ヘッド3〜押圧体27の各部材の上下方向における配置関係を模式的に示す図である。ヘッド3〜押圧体27が待機位置S1から押圧実行位置S3に移動されることで、傾斜部40Aにより押圧体27が、図8,10に示す下方位置L3から図10に示す上方位置H3に移動され、押圧動作(S40)が実行される。
【0052】
押圧体27の先端部27Aは、枠体22の開口部47の内側に入り込むことができる大きさに形成されている。そして、押圧機構28は、押圧体27が上方位置H3に移動させられたときに押圧体27の先端部27Aが、枠体22の内側に入り込む位置、すなわち枠体22の下縁部22Bよりも上方に配置されるように構成されている。したがって、上方位置H3に移動させられた押圧体27の先端部27Aは、枠体22の内側に入り込んだ位置、すなわち枠体22の下縁部22Bよりも上方に配置される。先端部27Aが枠体22の内側に入り込むように押圧体27が移動されることで、可撓性を有するフィルム25は上方に押し曲げられ、枠体22の下側から枠体22の内側に競り出る。つまり、フィルム25が枠体22の内側に競り出た分、枠体22の内側の容積は減少することになる。フィルム25は弾性を有している。そのため、押圧体27は、フィルム25の弾性に抗して、フィルム25をノズル形成面6に向けて変形させている。
【0053】
ところで、カム溝40の待機位置S1と押圧実行位置S3との間には、後述するカム溝40Cが接続される分岐部40Dが設けられている。そして、分岐部40Dには、フラップ60が設けられている。フラップ60は、押圧体27の待機位置S1側から押圧実行位置S3側(傾斜部40A側)への移動を許容すると共に、カムフォロア55のカム溝40Cへの侵入を禁止することができる。また、フラップ60は、押圧体27のカム溝40C側からカム溝40側へ移動を許容することができる。
【0054】
フラップ60は、軸部61を中心に、カム溝40Cを閉鎖している位置と、カム溝40Cからカム溝40へのカムフォロア55の移動を許容する位置とに回動できるように、カム溝形成板41に取り付けられている。フラップ60は、カム溝40Cを閉鎖している状態でカム溝40C側(図4,7において反時計回り)への回転が阻止されると共に、カム溝40C側に図示を省略するバネ等により付勢されている。したがって、フラップ60は、常時、カム溝40Cを閉鎖している状態に配置されている。そのため、押圧体27が、待機位置S1側から押圧実行位置S3側へ移動する際に、カムフォロア55は、フラップ60によりカム溝40Cの侵入が阻止され、傾斜部40Aに沿って移動する。
【0055】
(密着動作S50)
次いで、制御部30は、ヘッド3〜押圧体27が図7(A)に示す密着実行位置S4に移動するように、キャリッジ移動機構5を駆動する。図11の上段(A)は、密着動作が実行されたときの、ヘッド3〜押圧体27の配置を示す斜視図である。図11の下段(B)は、ヘッド3〜押圧体27の各部材の上下方向における配置関係を模式的に示す図である。ヘッド3〜押圧体27が押圧実行位置S3から密着実行位置S4に移動されることで、傾斜部39Aにより枠体22が、図10,11に示す下方位置L2から図11に示す上方位置H2に移動され、密着動作(S50)が実行される。上方位置H2に移動させられた枠体22は、図11に示すように、枠体22の上縁部22Aがノズル形成面6に当接し密着する。
【0056】
押圧体27は、傾斜部40Bにより、枠体22と一緒に上方に移動される。つまり、押圧体27は、枠体22との上下方向の位置関係を保持しつつ、枠体22と一緒に上方に移動される。したがって、枠体22の上縁部22Aがノズル形成面6に密着させられると、ノズル形成面6は、枠体22とフィルム25とにより密閉された状態となる。
【0057】
そして、制御部30は、図7(A)に示すように、ヘッド3〜押圧体27が、カム溝40の分岐部40Eを通過して分岐部40Eの右方に位置する反転位置S2に移動するように、キャリッジ移動機構5を駆動する。密着実行位置S4から反転位置S2までの間のカム溝39は、ガイド部材8と平行に形成され、また、カム溝39とカム溝40とについても互いに平行に形成されている。そのため、ノズル形成面6の枠体22およびフィルム25による密閉状態は保たれ、また、フィルム25の枠体22内への競り出し量も一定に保たれている。すなわち、ノズル形成面6が枠体22およびフィルム25により密閉されている間、枠体22の内側の容積は一定に保たれている。このため、たとえば、ノズル形成面が加圧されて、ノズル内のインクがノズルの奥側に押し込まれてしまうことがない。つまり、カム溝39,40は、ノズル形成面6が枠体22およびフィルム25により密閉されている間、枠体22の内側の容積を一定に保つための容積変動防止手段として構成されている。
【0058】
また、ヘッド3〜押圧体27の往路における進行方向に向かって、押圧体27に押圧動作を行わせる傾斜部40Aと枠体22に密着動作を行わせる傾斜部39Aとが順に配置されている。したがって、押圧動作S40が実行された後、密着動作S50が実行される。密着動作S50が行われる前に押圧動作S40を行い、枠体22の内側の容積を所定容積に減少させておくことで、枠体22の内側の容積を減少させることに伴うノズル形成面6への加圧を防止することができる。つまり、カム溝39,40は、密着動作S50の実行に先駆けて押圧動作S40を実行するためのタイミング形成手段として構成されている。
【0059】
ところで、分岐部40Eには、押圧体27が反転位置S2から待機位置S1側に移動したときに、押圧体27を下方に移動させるカム溝40Cが形成されている。そして、分岐部40Eには、フラップ62が設けられている。フラップ62は、押圧体27の密着実行位置S4側から反転位置S2側への移動を許容すると共に、カムフォロア55のカム溝40Cへの侵入を禁止することができる。また、フラップ62は、押圧体27の反転位置S2側から密着実行位置S4側への移動を禁止すると共に、カムフォロア55のカム溝40Cへの侵入を許容する。
【0060】
フラップ62は、軸部63を中心に、カム溝40の下縁から上方に立ち上った状態と、カム溝40Cを閉鎖している状態とに回動可能にカム溝形成板41に取り付けられている。フラップ62は、立ち上った状態で密着実行位置S4側(図4,7において反時計周り)への回転が阻止されると共に、密着実行位置S4側に図示を省略するバネ等により付勢されている。したがって、フラップ62は、常時、密着実行位置S4側への回転が阻止された状態でカム溝40の下縁から上方に立ち上がった状態となっている。そのため、押圧体27が、密着実行位置S4側から反転位置S2側へ移動する際に、カムフォロア55が付勢力に抗してフラップ62を反転位置S2側に回転させることで、押圧体27の密着実行位置S4から反転位置S2への移動が許容される共に、カム溝40Cがフラップ62により塞がれるため、カムフォロア55のカム溝40Cへの侵入が禁止される。
【0061】
(吸引動作S60)
次に、制御部30は、ヘッド3〜押圧体27が反転位置S2から図7(B)に示す吸引実行位置S5に移動するように、キャリッジ移動機構5を駆動する。図12の上段(A)は、吸引動作が実行されたときの、ヘッド3〜押圧体27の配置を示す斜視図である。図12の下段(B)は、ヘッド3〜押圧体27の各部材の上下方向における配置関係を模式的に示す図である。分岐部40Eにおいて、カムフォロア55は、フラップ62により、傾斜部40Fを有するカム溝40Cに侵入させられる。傾斜部40Fは、フィルム25を押圧している押圧体27を下降させるためのカム溝である。したがって、ヘッド3〜押圧体27が反転位置S2から吸引実行位置S5に移動されることで、傾斜部40Fにより押圧体27が、図10,12に示す上方位置H3から下方位置L3に移動させられ、フィルム25から離間する吸引動作(S60)が実行される。
【0062】
フィルム25の弾性に抗してフィルム25をノズル形成面6に向けて変形させていた押圧体27がフィルム25から離間しフィルム25に対する押圧を解除すると、フィルム25は、自己の復元力により枠体22の下縁部22Bに平に張られた状態に戻ろうとする。つまり、枠体22とフィルム25とにより密閉されてる空間の容積が所定容積に減少させられていた状態から増大させられる。枠体22とフィルム25とにより密閉されてる空間の容積が増大することで、ノズル形成面6の周囲が負圧となる。ノズル形成面6の周囲が負圧となることで、ノズル内のインクがフィルム25側に排出させられる。なお、フィルム25の有する弾性は、押圧体による押圧によって撓み変形された状態から、押圧を解除した後、変形する前の形状に復元できる程度の弾性を有していれば足りる。なお、枠体22とフィルム25とにより密閉されてる空間の容積が減少されたときの所定容積とは、フィルム25が復元することで枠体22内の容積が増大する際に、ノズル内のインクを吸引することができる容積変化をもたらすことができる容積である。
【0063】
(枠体離間動作S70)
そして、制御部30は、ヘッド3〜押圧体27が吸引実行位置S5から図7(B)に示す枠体離間実行位置S6に移動するように、キャリッジ移動機構5を駆動する。枠体離間実行位置S6では、枠体22が傾斜部39Aを、密着動作時とは逆の方向に移動する。したがって、枠体22はノズル形成面6から離間する方向に移動させられる。
【0064】
(連結解除動作S80)
そうして、制御部30は、ヘッド3〜押圧体27を枠体離間実行位置S6から図7(B)に示す待機位置S1に移動するように、キャリッジ移動機構5を駆動する。なお、分岐部40Dにおいて、フラップ60は、押圧体27のカム溝40C側からカム溝40側への移動を許容している。制御部30は、ヘッド3〜押圧体27を待機位置S1に移動させた後、連結杆51を下降させるように連結杆昇降モーター54を駆動する。連結杆51が下降することで、連結杆51と連結杆52の連結が解除される。
【0065】
(ローラー下方移動動作S90)
続いて、制御部30は、ローラー昇降機構42を駆動し、ローラー23,24を、図8に示す下方位置L1に移動させるローラー下方移動動作(S90)を実行する。ローラー23,24が下方位置L1に移動されると、フィルム25は枠体22の下縁部22Bから離間する。
【0066】
(フィルムクリーニング動作S100)
ローラー下方移動動作(S90)によりフィルム25が枠体22の下縁部22Bから離間させられた状態で、制御部30は、ローラー回転モーター46を駆動し、ローラー23,24を回転させ、フィルム25を回送させる。インク吸収材38は、ローラー23,24が下方位置L1に配置されているときに、フィルム25に当接するように配置されている。したがって、フィルム25が回送されることで、ノズルから排出されフィルム25に付着した廃インクをインク吸収材38により払拭することができる。
【0067】
ところで、上述した密閉動作(S50)が実行される際、フィルム25は枠体22の内側に競り出され、枠体22の内側の容積が所定容積に減少させられている。そして、枠体22は、枠体22の内側の容積が所定容積に減少させられている状態で、ノズル形成面6に密着させられる。これに対し、たとえば、枠体22をノズル形成面6に密着した後、枠体22の内側の容積を減少させた場合には、容積の減少に伴い、枠体22内が加圧され、ノズル内のインクをノズルの奥方向に加圧してしまうため、インクの吐出不良を招く虞がある。しかしながら、インク排出機構17においては、上述したように、枠体22の内側の容積を所定容積に減少させた状態で枠体22をノズル形成面6に密着させている。そのため、枠体22をノズル形成面6に密着させる際に、枠体22の内側が加圧されることがない。つまり、ノズル内のインクがノズルの奥方向に加圧されてしまうことがない。
【0068】
なお、枠体22の上縁部22Aおよび下縁部22Bについては、ゴム体やエラストマー等の弾性を有する部材で構成することで、ノズル形成面6と上縁部22Aとの密着性およびフィルム25と下縁部22Bとの密着性を高いものとすることができる。
【0069】
上縁部22Aを弾性を有する部材で構成した場合には、上縁部22Aがノズル形成面6に当接する際に、上縁部22Aの全周が同時にノズル形成面6に当接しない構成とすることが好ましい。ノズル形成面6に上縁部22Aが密着する際には、上縁部22Aを構成する弾性部材が圧縮変形する。そのため、上縁部22Aの全周が同時にノズル形成面6に当接する構成とした場合には、上縁部22Aの圧縮変形により、枠体22内が加圧されてしまうことがある。したがって、これを防止するため、たとえば、左右のカムフォロア48を、左右で僅かに上下にずれた位置に配置することで、カム溝39に支持される枠体22の上縁部22Aをノズル形成面6に対して僅かに傾斜させることが好ましい。
【0070】
枠体22の上縁部22Aがノズル形成面6に斜めに配置されることで、上縁部22Aは、ノズル形成面6との距離が近い側から順にノズル形成面6に当接し、徐々に当接する面積が増えていく。そのため、上縁部22Aを構成する弾性部材の圧縮変形による枠内の加圧を逃がしながら枠体22をノズル形成面6に密着させることができ、枠体22内が加圧されてしまうことを防止できる。なお、上縁部22Aを左右方向について上下に僅かに傾斜させることで、枠体22の上縁部22Aを、ノズル形成面6に対して斜めに配置させる構成としてもよい。
【0071】
プリンター1においては、キャリッジ4と枠体22とを連結杆51,52により連結し、また、枠体22と押圧体27とを連結杆57,58により連結することで、キャリッジ4の移動により、枠体22および押圧体27をカム溝形成板41に対して移動させる構成となっている。かかる構成に対し、少なくともキャリッジ4と枠体22とについては連結しない構成とし、キャリッジ移動機構5とは異なる移動機構を設け、この移動機構により枠体22と押圧体27とを移動させる構成としてもよい。しかしながら、キャリッジ4と枠体22と押圧体27とを連結することで、1つの駆動機構により、ヘッド3、枠体22および押圧体27の移動を制御することができる。また、枠体22および押圧体27を移動させる代わりに、カム溝形成板41の側を移動させることで、枠体22および押圧体27をカム溝39,40に沿って移動させる構成としてもよい。
【0072】
カム溝39,40は、一枚のカム溝形成板41に形成する代わりに、別々のカム溝形成板に形成する構成としてもよい。また、第1のカム手段は、カム溝39のようにカム溝とする換わりに、カム面にて構成してもよい。第2のカム手段についても、カム溝40に換えてカム面にて構成してもよい。
【0073】
また、押圧体27に、ワイピング機構16を用いてもよい。この場合には、フィルム25の押圧は、ワイパー18により行うことになる。また、ワイピング時には、ワイピング機構16の上方から退避する構成とすることで、ワイパー18によりノズル形成面6を払拭することが可能となる。フィルム25の押圧を、ワイパー18により行う構成とした場合には、フィルムクリーニング動作S100の実行時に、ワイパー18をフィルムに当接させた状態でフィルムを回送し、フィルムに付着した廃インクをワイパー18により払拭する構成としてもよい。
【0074】
(本実施の形態の主な効果)
プリンター1は、上述のように、インクを噴射する流体噴射ヘッドとしてのヘッド3と、枠体22と、一対のローラー23,24に無端ベルト状に巻かれた弾性を有するフィルム25と、枠体22の開口部47をヘッド3のノズル形成面6に対して対向させた状態で枠体22の一方の側の縁部である上縁部22Aをノズル形成面6に密着させる枠体密着機構26と、枠体22の他方の側の縁部にフィルム25を密着させた状態でフィルム25の開口部47よりも内側に位置する部分をノズル形成面6の側に押圧する押圧体27を有する押圧機構28とを有している。そして、押圧機構28がフィルム25を押圧し、枠体22内の容積を所定容積に減少させる。そして、枠体22内の容積を所定容積に保っている状態で、枠体密着機構26が枠体22をノズル形成面6に対して密着させる。この密着が行われている状態で、押圧機構28による押圧が解除される。
【0075】
密着実行位置S4から反転位置S2までの間のカム溝39は、ガイド部材8と平行に形成され、また、カム溝39とカム溝40とについても互いに平行に形成されている。つまり、カム溝39,40は、ノズル形成面6が枠体22およびフィルム25により密閉されている間、枠体22の内側の容積を所定容積に保つことができるように容積変動防止手段として構成されている。また、ヘッド3〜押圧体27の往路における進行方向に向かって、押圧体27に押圧動作を行わせる傾斜部40Aと枠体22に密着動作を行わせる傾斜部39Aとが順に配置されている。つまり、カム溝39,40は、密着動作S50の実行に先駆けて押圧動作S40を実行するためのタイミング形成手段として構成されている。
【0076】
プリンター1は上述の構成により、押圧機構28がフィルム25に対して押圧を行い、枠体22内の容積を所定容積に減少させ一定に保っている状態で、枠体密着機構26が枠体22をノズル形成面6に対して密着させることができる。そのため、ノズル形成面6に加圧が発生しないように、ノズル形成面6を密閉することができる。
【0077】
(変形例1)
インク排出機構17は、図13に示すように、枠体22内に、付勢手段としてのバネ体64を備える構成としてもよい。バネ体64は、コイルスプリング、板バネ等により構成することができる。バネ体64は、枠体22の内側に支持されるバネ受け板65の下面に取り付けられている。枠体22をこのように構成した場合には、図14に示すように、押圧体27は、バネ体64の付勢力に抗してフィルム25を枠体22内に競り出させることになる。そして、押圧体27がフィルム25から離間される吸引動作時に、フィルム25は、バネ体64の付勢力により下方に向けて変形し、枠体22とフィルム25とにより密閉されてる空間(密閉空間)の容積が増加する。バネ体の付勢力によりフィルム25を変形させるため、フィルム25の弾性力を超えてフィルム25を変形させることが可能となり、上記密閉空間の容積を確実に増加させることができる。バネ体64の付勢力を強くすることで、上記密閉空間の容積変化の速さを速くすることができ、ノズルを吸引する力を大きくすることができる。なお、バネ受け板65には、複数の孔部65Aが形成されている。孔部65Aを形成することで、ノズルから排出された廃インクは枠体22内に溜まることなく、フィルム25側に排出される。
【0078】
(変形例2)
インク排出機構17は、図15に示すインク排出機構17Aのように構成してもよい。図15に示すインク排出機構17Aにおいて、インク排出機構17と同様の部材については、同一の符号を付しその説明を省略または簡略化する。図15の上段(A)は、ヘッド3〜押圧体27の配置を示す斜視図である。図15の下段(B)は、ヘッド3〜押圧体27の各部材の上下方向における配置関係を模式的に示す図である。
【0079】
インク排出機構17Aは、ローラー23,24を支持柱66により押圧体27側に取り付けた構成となっている。ローラー23を支持する支持柱66には、ローラー23を回転させるローラー回転機構67が設けられている。
【0080】
このように構成されるインク排出機構17Aのインク排出動作を図16を参照して説明する。
【0081】
図16の第1段目(A)〜第5段目(E)は、図7に示すインク排出動作におけるヘッド3〜押圧体27の配置の変化を模式的に示すものである。図16(A)は、図7における待機位置S1におけるヘッド3〜押圧体27の位置関係を示す図である。図16(B)は、図7における押圧実行位置S3におけるヘッド3〜押圧体27の位置関係を示す図である。図16(C)は、図7における密着実行位置S4におけるヘッド3〜押圧体27の位置関係を示す図である。図16(D)は、図7における吸引実行位置S5におけるヘッド3〜押圧体27の位置関係を示す図である。図16(E)は、吸引実行位置S5から待機位置S1に戻ったときのヘッド3〜押圧体27の位置関係を示す図である。
【0082】
先ず、キャリッジ移動機構5を駆動して、ヘッド3を、待機位置S1に配置されている枠体22および押圧体27の上方に配置させる。そして、連結杆51と連結杆52とを連結させる。次に、ヘッド3〜押圧体27を、待機位置S1から押圧実行位置S3に移動させる。ヘッド3〜押圧体27が、待機位置S1から押圧実行位置S3に移動させられることで、傾斜部40Aにより押圧体27が枠体22の側に移動すると共に、ローラー23,24も枠体22の側に移動する。そして、図16(B)に示すように、フィルム25が枠体22の下縁部22Bに密着すると共に、押圧体27の先端部27Aが枠体22の内側に入り込む。つまり、フィルム25が枠体22の下縁部22Bに密着された状態で、枠体22の下側から枠体22の内側に競り出され、フィルム25が枠体22の内側に競り出た分、枠体22の内側の容積は減少する。
【0083】
上述のインク排出機構17は、待機位置S1において、ローラー昇降機構42によりローラー23,24を下方位置L1から上方位置H1に移動させることでフィルム25を枠体22の下縁部22Bに密着させる構成とされている。これに対し、インク排出機構17Aは、ローラー23,24を押圧体27と一緒に昇降する構成とし、押圧体27が枠体22の側に移動することで、フィルム25を枠体22の下縁部22Bに密着させる。したがって、インク排出機構17Aにおいては、ローラー昇降機構42を備える必要がない。
【0084】
ヘッド3〜押圧体27が、押圧実行位置S3から密着実行位置S4に移動させられることで、傾斜部39Aにより枠体22がノズル形成面6の側に移動する。そして、図16(C)に示されるように、枠体22の上縁部22Aがノズル形成面6に当接し密着する。また、押圧体27およびローラー23,24は、傾斜部40Bにより、枠体22と一緒に上方に移動させられる。つまり、押圧体27およびローラー23,24は、枠体22との上下方向の位置関係を保持しつつ、枠体22と一緒に上方に移動する。したがって、枠体22の上縁部22Aがノズル形成面6に密着させられると、ノズル形成面6は、枠体22とフィルム25とにより密閉された状態となる。
【0085】
そして、ヘッド3〜押圧体27は反転位置S2まで移動された後、移動方向が反転され、吸引実行位置S5に移動させられる。押圧体27およびローラー23,24は、吸引実行位置S5において、傾斜部40Fにより、枠体22から離間する方向に移動させられる。押圧体27およびローラー23,24が枠体22から離間し、フィルム25に対する押圧が解除されるに従って、フィルム25は、自己の復元力により、図16(D)に示すように、枠体22に平らに張られた状態に近づいていく。つまり、図16(C)に示すように、フィルム25が枠体22の下側から枠体22の内側に競り出され、枠体22の内側の容積が減少させられた状態から、図16(D)に示すように、フィルム25が枠体22に平らに張られた状態に復元していくことで、枠体22とフィルム25とにより密閉されてる空間の容積が増加し、ノズル形成面6の周囲が負圧となる。ノズル形成面6の周囲が負圧となることで、ノズル内のインクが排出される。
【0086】
ヘッド3〜押圧体27が、引き続き左方に移動させられることで、傾斜部40Fにより、押圧体27とローラー23,24はさらに下降を続け、図16(E)に示すように、フィルム25が枠体22の下縁部22Bから完全に離間する。
【0087】
そして、枠体離間実行位置S6では、枠体22が、傾斜部39Aを、密着動作時とは逆の方向に移動する。したがって、枠体22はノズル形成面6から離間する方向に移動される。そして、ヘッド3〜押圧体27が、待機位置S1に戻ると、連結杆51と連結杆52の連結が解除される。また、ローラー回転モーター46を駆動し、ローラー23,24を回転させてフィルム25を回送させることで、フィルム25に付着したインクをインク吸収材38により払拭する。
【0088】
(変形例3)
インク排出機構17は、図17,18に示すインク排出機構17Bのように構成してもよい。前述のインク排出機構17は、キャリッジ4の移動により、押圧体27および枠体22を主走査方向に移動させ、カム溝39,40とカムフォロア48,55の作用により押圧体27および枠体22を上下方向に移動させることで、インク排出動作を実現している。これに対し、インク排出機構17Bは、押圧体27を図示を省略する昇降機構により上下方向に移動させることで、インク排出動作を実現している。図17,18は、インク排出機構17Bのインク排出動作におけるヘッド3〜押圧体27の配置の変化を模式的に示すものである。インク排出機構17と同様部材については、同一の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0089】
インク排出機構17Bにおいて、押圧体27は、図示を省略するガイド部材により上下方向に移動可能にガイドされている。押圧体27は、前記昇降機構(図示省略)と共に押圧機構として構成され、昇降機構の駆動により、上下に移動することができる。枠体22は、図示を省略するガイド部材により、上下方向に移動可能にガイドされている。また、枠体22には、リンク68が取り付けられている。リンク68は、枠体22の左右および前後の4箇所に配置されている。枠体22とリンク68とは固定されている。押圧体27にはリンク68のガイド孔69に嵌合するピン70が設けれている。押圧体27はピン70をガイド孔69に嵌合させた状態で、ガイド孔69の長手方向に沿って移動することができる。
【0090】
このように構成されるインク排出機構17Bのインク排出動作を図17,18を参照して説明する。枠体22と押圧体27は、インク排出動作が実行される前においては、それぞれ図17(A)に示す待機位置T1,T2に配置されている。インク排出動作の実行時には、先ず、キャリッジ移動機構5を駆動して、ヘッド3を、待機位置T1,T2に配置されている枠体22および押圧体27の上方に配置する。そして、ローラー昇降機構42を駆動し、図17(B)に示すように、ローラー23,24を上方に移動させ、フィルム25を枠体22の下縁部22Bに密着させ、枠体22の下側の開口を、フィルム25により全面に亘って封止する。
【0091】
続いて、図示外の昇降機構を駆動して、図17(C)に示すよう、押圧体27を押圧実行位置T3に移動する。押圧体27が押圧実行位置T3に移動されると、押圧体27の先端部27Aが枠体22の内側に入り込む。つまり、フィルム25が枠体22の下縁部22Bに密着された状態で、枠体22の下側から枠体22の内側に競り出され、フィルム25が枠体22の内側に競り出た分、枠体22の内側の容積は減少する。なお、押圧体27の先端部27Aが枠体22の内側に所定量入り込んだ状態で、押圧体27と枠体22とが干渉し、押圧体27が枠体22に対して位置決めされる構成となっている。したがって、押圧体27が枠体22に対して位置決めされた後は、押圧体27を上方に移動させても、枠体22の内側の容積は変化することなく一定に保たれる。つまり、枠体22と押圧体27とにより容積変動防止手段が構成されている。
【0092】
そして、押圧体27をさらに上昇させ、図18(A)に示すように、枠体22の上縁部22Aがノズル形成面6に当接させられる密着実行位置T4に移動させる。枠体22の上縁部22Aがノズル形成面6に密着させられると、ノズル形成面6は、枠体22とフィルム25とにより密閉された状態となる。押圧体27と押圧体27を昇降させる昇降機構とにより、枠体22をノズル形成面6に密着させる枠体密着機構が構成される。
【0093】
上述のように押圧体27が枠体22に位置決めされ、枠体22の内側の容積が一定に保たれた状態とされた後、枠体22がノズル形成面6に当接させられる。すなわち、押圧動作S40が実行された後、密着動作S50が行われる。密着動作S50が行われる前に押圧動作S40を行い、枠体22の内側の容積を所定容積に減少させておくことで、枠体22の内側の容積を減少させることに伴うノズル形成面6への加圧を防止することができる。つまり、枠体22の下方に押圧体27を所定距離離間させて配置し、押圧体27を上昇させたときに、押圧体27が枠体22に位置決めされた状態で、枠体22がノズル形成面6に当接させられる構成とすることで、密着動作S50の実行に先駆けて押圧動作S40を実行するためのタイミング形成手段が実現されている。
【0094】
ノズル形成面6を枠体22とフィルム25とにより密閉した状態で、図18(B)に示すように、押圧体27を、フィルム25から離間した吸引実行位置T5に移動させる。押圧体27がフィルム25から離間しフィルム25に対する押圧が解除されると、フィルム25は、自己の復元力により枠体22の下縁部22Bに平らに張られた状態に戻ろうとし、枠体22とフィルム25とにより密閉されてる空間の容積が増加する。該空間の容積が増加することで、ノズル形成面6の周囲は負圧となる。ノズル形成面6の周囲が負圧となることで、ノズル内のインクが排出される。
【0095】
そしてさらに、押圧体27を下方に移動させ、図18(C)に示すように、ピン70がリンク68のガイド孔69の端部69Aに係合する枠体離間実行位置T6に移動させる。ピン70がリンク68の端部69Aに係合した状態で押圧体27が下方に移動すると、リンク68を介して枠体22も押圧体27と共に下方に移動し、枠体22はノズル形成面6から離間する。
【0096】
そして、押圧体27が図18(D)に示す待機位置T2に戻った後、ローラー23,24を下方位置L1に移動させる。続いて、ローラー回転モーター46を駆動し、ローラー23,24を回転させてフィルム25を回送させることで、フィルム25に付着したインクをインク吸収材38により払拭し、一連のインク排出動作が完了する。上述のインク排出機構17Bによれば、押圧体27、ローラー23,24および枠体22は、上下方向に移動させられる。そのため、インク排出機構17,17Aのように主走査方向に移動させられる場合に比べて、インク排出機構17Bの設置スペースを小さくすることができる。
【0097】
なお、上述の各実施の形態およびその変形例におけるプリンターの概念には、インク以外の他の液体(液体そのものや、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流動性を有する材質を含む)を噴射したりする流体噴射装置を含むようにすることもできる。そのようなものとしては、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する流体噴射装置等がある。
【0098】
さらに、本発明の流体噴射装置の概念に含まれるものとしては、プリンターの他、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する流体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置等がある。
【符号の説明】
【0099】
1 … プリンター(流体噴射装置) 3 … ヘッド(流体噴射ヘッド) 6 … ノズル形成面 22 … 枠体 23,24 … ローラー 25 … フィルム
26 … 枠体密着機構 27 … 押圧体 28 … 押圧機構 38 インク吸収材(インク除去手段) 39 … カム溝(第1のカム部) 40 … カム溝(第2のカム部) 47 … 開口部 48 … カムフォロア(第1のカムフォロア) 49 … 移動機構(第1の移動手段) 55 … カムフォロア(第2のカムフォロア) 56 … 移動機構(第2の移動手段) 64 … バネ体(付勢手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を噴射する流体噴射ヘッドと、
枠体と、
一対のローラーに無端ベルト状に巻かれた可撓性および弾性を有するフィルムと、
前記枠体の開口部を前記流体噴射ヘッドのノズル形成面に対して対向させた状態で、前記枠体の一方の側の縁部を前記ノズル形成面に密着させる枠体密着機構と、
前記枠体の他方の側の縁部に前記フィルムを密着させた状態で、前記フィルムの前記開口部よりも内側に位置する部分を前記ノズル形成面の側に押圧する押圧体を有する押圧機構と、
を有し、
前記押圧機構が前記フィルムに対して前記押圧を行い、前記枠体内の容積を、前記押圧が行われる前に比べて減少させた所定容積とした状態で、前記枠体密着機構が前記枠体を前記ノズル形成面に対して前記密着を行い、
前記密着が行われている状態で、前記押圧機構による前記押圧を解除する、
ことを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
前記フィルムを前記ノズル形成面から離間する方向に付勢する付勢手段を備えることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流体噴射装置において、
前記フィルムを前記ローラーにより回送する際に、前記フィルムに接触し、前記フィルムに付着したインクを除去するインク除去手段を備えることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の流体噴射装置において、
前記枠体密着機構は、前記枠体側に設けられる第1のカムフォロアと、この第1のカムフォロアに作用する第1のカム部と、前記第1のカム部と前記枠体とを相対的に異なる方向に移動させる第1の移動手段とを有し、
前記押圧機構は、前記押圧体側に設けられる第2のカムフォロアと、この第2のカムフォロアに作用する第2のカム部と、前記第2のカム部と前記押圧体とを相対的に異なる方向に移動させる第2の移動手段とを有する、
ことを特徴とする流体噴射装置。
【請求項1】
流体を噴射する流体噴射ヘッドと、
枠体と、
一対のローラーに無端ベルト状に巻かれた可撓性および弾性を有するフィルムと、
前記枠体の開口部を前記流体噴射ヘッドのノズル形成面に対して対向させた状態で、前記枠体の一方の側の縁部を前記ノズル形成面に密着させる枠体密着機構と、
前記枠体の他方の側の縁部に前記フィルムを密着させた状態で、前記フィルムの前記開口部よりも内側に位置する部分を前記ノズル形成面の側に押圧する押圧体を有する押圧機構と、
を有し、
前記押圧機構が前記フィルムに対して前記押圧を行い、前記枠体内の容積を、前記押圧が行われる前に比べて減少させた所定容積とした状態で、前記枠体密着機構が前記枠体を前記ノズル形成面に対して前記密着を行い、
前記密着が行われている状態で、前記押圧機構による前記押圧を解除する、
ことを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
前記フィルムを前記ノズル形成面から離間する方向に付勢する付勢手段を備えることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流体噴射装置において、
前記フィルムを前記ローラーにより回送する際に、前記フィルムに接触し、前記フィルムに付着したインクを除去するインク除去手段を備えることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の流体噴射装置において、
前記枠体密着機構は、前記枠体側に設けられる第1のカムフォロアと、この第1のカムフォロアに作用する第1のカム部と、前記第1のカム部と前記枠体とを相対的に異なる方向に移動させる第1の移動手段とを有し、
前記押圧機構は、前記押圧体側に設けられる第2のカムフォロアと、この第2のカムフォロアに作用する第2のカム部と、前記第2のカム部と前記押圧体とを相対的に異なる方向に移動させる第2の移動手段とを有する、
ことを特徴とする流体噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−196896(P2012−196896A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62568(P2011−62568)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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