説明

流体圧シリンダの製造方法及び組立装置

【課題】少ない工数でタイロッドの引張軸力を均一にすることが可能な流体圧シリンダの製造方法及び組立装置を提供する。
【解決手段】ヘッドカバー3とロッドカバー4とをその間にシリンダチューブ2を挟んで互いに連結する複数のタイロッド7及びナット10とを備える流体圧シリンダ1の製造方法であって、複数のタイロッド7に渡って引張治具20を組み付ける加圧準備工程と、流体圧シリンダ1に加圧作動流体を供給してピストンロッド6をロッドカバー4から突出する方向に移動させることによって引張治具20を駆動して各タイロッド7を引っ張る加圧工程と、各ナット10をロッドカバー4に対する所定位置に配置するナット位置決め工程と、流体圧シリンダ1に供給される加圧作動流体圧を低下させる加圧解除工程とを行う構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動流体圧によって伸縮作動する流体圧シリンダの製造方法及び組立装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の流体圧シリンダとして、その内部に作動流体が供給される中空状のシリンダチューブと、このシリンダチューブの一端部を閉塞するヘッドカバーと、このシリンダチューブに内装されるピストンと、このシリンダチューブの他端部に装着され、ピストンに連結されたピストンロッドを変位自在に保持するロッドカバーと、ヘッドカバーとロッドカバーとをその間にシリンダチューブを挟んで互いに連結する複数のタイロッド及びナットとを備えるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この流体圧シリンダは、例えば、ヘッドカバーに設けられた一方のポートからシリンダチューブの内部に加圧作動流体を供給することにより、ピストンが軸方向に沿って変位する一方、ロッドカバーに設けられた他方のポートから加圧作動流体を供給することにより、ピストンが押圧されて反対方向に変位する。
【0004】
この流体圧シリンダの製造方法は、トルクレンチ等の工具を用いて各ナットの締め付けが行われる。各ナットを締め付ける作業時に、各ナットの締め付けトルクを管理することによって、各タイロッドの引張軸力を規定範囲に収めて均一にする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−43662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の流体圧シリンダの製造方法にあっては、各ナットの締め付けトルクを精度よく管理することが難しく、各タイロッドの引張軸力にバラツキが生じやすいという問題点があった。
【0007】
また、各ナットを締め付ける作業は、各ナットに締め付けトルクを順に少しずつかける必要があるため、作業工数が多いという問題点があった。
【0008】
また、トルクレンチ等の工具を用いてナットを締め付ける際に、ナットを締め付けるトルクに対する反力を得るために、タイロッドの中程に工具に係合する回り止め部を形成するものがある。この場合には、タイロッドに回り止め部を形成することによって、タイロッドの加工工数が増えて、製品のコストアップを招くという問題点があった。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、少ない工数でタイロッドの引張軸力を均一にすることが可能な流体圧シリンダの製造方法及び組立装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ピストン及びピストンロッドを収容するシリンダチューブと、このシリンダチューブの一端部に装着されるヘッドカバーと、シリンダチューブの他端部に装着されピストンロッドを摺動可能に突出させるロッドカバーと、ヘッドカバーとロッドカバーとをシリンダチューブを挟んで互いに連結する複数のタイロッドと、この各タイロッドに螺合してロッドカバーに着座するナットとを備える流体圧シリンダの製造方法であって、流体圧シリンダの仮組立を行う仮組立工程と、複数のタイロッドに渡って引張治具を組み付ける加圧準備工程と、流体圧シリンダに加圧作動流体を供給してピストンロッドをロッドカバーから突出する方向に移動させることによって引張治具を駆動して各タイロッドを引っ張る加圧工程と、各ナットをロッドカバーに対する所定位置に配置するナット位置決め工程と、流体圧シリンダに供給される加圧作動流体圧を低下させる加圧解除工程とを行うことを特徴とするものとした。
【0011】
また、本発明は、上記の流体圧シリンダの組立装置であって、流体圧シリンダに加圧作動流体を供給してロッドカバーから突出する方向にピストンロッドを移動させることによって各タイロッドを引っ張る引張治具を備え、この引張治具は、ピストンロッドの推力が付与されるアームと、このアームを各タイロッドに連結する複数のコネクタとを備えることを特徴とするものとした。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によると、流体圧シリンダの推力によって各タイロッドが引張治具を介して引っ張られ、その状態で各ナットをロッドカバーまたはロッドカバーに着座させ、流体圧シリンダの伸長作動を停止させることによって、各タイロッドが収縮するのに伴って、各タイロッドに規定の引張軸力が生じる。
【0013】
これにより、従来のようにナットを締め付けるトルクを精密に管理する必要がなく、各タイロッドの引張軸力を規定範囲に収めて均一にすることが少ない工数で行え、生産性を高められる。
【0014】
また、本発明の組立装置は、流体圧シリンダの推力によって各タイロッドを引っ張るため、別の駆動装置を用いる必要がなく、流体圧シリンダの生産設備の簡素化、省力化がはかられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態を示す流体圧シリンダの平面図と側面図。
【図2】同じく流体圧シリンダ及び組立装置の平面図と側面図。
【図3】同じく流体圧シリンダ及び組立装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1の(a)は流体圧シリンダ1の平面図であり、(b)は同じく流体圧シリンダ1の側面図である。
【0018】
図1の(b)に示すように、流体圧シリンダ1は、円筒状に形成されるシリンダチューブ2と、シリンダチューブ2の内側に摺動可能に収容されるピストン5と、このピストン5に連結されるピストンロッド6と、シリンダチューブ2の一端部に装着されるヘッドカバー3と、シリンダチューブ2の他端部に装着されピストンロッド6を摺動可能に支持するロッドカバー4と、シリンダチューブ2を間にしてヘッドカバー3とロッドカバー4とを互いに連結する複数(4本)のタイロッド7及びナット10とを備える。
【0019】
シリンダチューブ2の内側はピストン5によってヘッド室8とロッド室9とに仕切られる。ヘッドカバー3にはヘッド室8に作動流体を給排するポート18が形成される。ロッドカバー4にはロッド室9に作動流体を給排するポート19が形成される。ポート18、19は、図示しない配管を介して流体圧源に連通される。
【0020】
流体圧シリンダ1は、ポート18からヘッド室8に加圧作動流体が供給されることによって伸長作動する一方、ポート19からロッド室9に加圧作動流体が供給されることによって収縮作動する。
【0021】
ヘッドカバー3には、シリンダチューブ2の一端部を嵌合させるインロー部13が形成される。ロッドカバー4には、シリンダチューブ2の他端部を嵌合させるインロー部14が形成される。
【0022】
図1の(a)に示すように、ロッドカバー4は、略正方形の外形を有し、その中央部にピストンロッド6を突出させ、ピストンロッド6の中心軸Oと交差するロッドカバー4の対角線C上に4本のタイロッド7の中心が配置される。
【0023】
なお、これに限らず、ロッドカバー4は、例えば円形等の他の外形を有する構成としてもよい。また、タイロッド7、ナット10の個数は、流体圧シリンダ1の仕様に応じて増減される。
【0024】
図3の(a)は、流体圧シリンダ1及び後述する組立装置50の概略断面図である。これに示すように、タイロッド7は、ヘッドカバー3の穴26と、ロッドカバー4の穴27とを貫通し、その両端部に形成されるネジ部11、15に一対のナット10を螺合させる。各ナット10はヘッドカバー3とロッドカバー4に着座し、タイロッド7の引張軸力によってヘッドカバー3、シリンダチューブ2、ロッドカバー4が互いに押し付けられ、ヘッド室8、ロッド室9の密封状態が維持される。なお、各ナット10はワッシャ(座金)等を介してヘッドカバー3とロッドカバー4に着座させてもよい。
【0025】
また、図3の(b)は、他の実施形態としての流体圧シリンダ1の一部を示す概略断面図である。これに示すように、タイロッド7は、その一端に形成されるネジ部11をヘッドカバー3に形成されるネジ穴12に螺合して、ヘッドカバー3に締結される構成としてもよい。
【0026】
流体圧シリンダ1の組立時に、各ナット10の締め付けトルクを管理することによって、各タイロッド7の引張軸力を規定範囲に収めて均一にする必要がある。
【0027】
流体圧シリンダ1は、図2に示す組立装置50を用いて各タイロッド7に対する各ナット10の締め付けが行われる。図2の(a)は流体圧シリンダ1及びその組立装置50の概略平面図であり、(b)は同じく概略側面図である。
【0028】
図2、図3の(a)に示すように、組立装置50は流体圧シリンダ1に連結される引張治具20を備える。この引張治具20は、ピストンロッド6の推力が付与されるアーム30と、このアーム30を各タイロッド7に連結するコネクタ40とを備える。
【0029】
アーム30は、その中央部がピストンロッド6の先端部にブラケット21を介して連結され、その両端部が複数(2個)のコネクタ40を介して各タイロッド7に連結される。
【0030】
図3の(a)に示すように、ブラケット21は、ピストンロッド6の先端ネジ部16に螺合するネジ穴22と、ピストンロッド6と同軸上に設けられる球面座23とを有する。
【0031】
アーム30は、ブラケット21の球面座23に摺動可能に着座する球面受け座33を有し、ブラケット21を介してピストンロッド6の先端部に揺動可能に連結される。
【0032】
なお、これに限らず、ピストンロッド6がその先端部に球面座を有する場合には、ブラケット21を廃止して、アーム30を直接ピストンロッド6の球面座に着座させる。
【0033】
アーム30は、ピストンロッド6の中心軸Oについて対称的に形成され、中心軸Oから各コネクタ40の中心軸までの距離が等しくなっている。
【0034】
アーム30の両端部に各コネクタ40が揺動可能に連結される。コネクタ40は、アーム30に揺動可能に連結されるアイボルト41と、このアイボルト41とタイロッド7を締結する中継スリーブ45とを備える。
【0035】
アイボルト41の一端はピン48を介してアーム30に揺動可能に連結される。アイボルト41の他端にはネジ部42が形成される。
【0036】
中継スリーブ45は、アイボルト41のネジ部42とタイロッド7のネジ部15の両方に螺合する2つのネジ穴46、47を有する。タイロッド7のネジ部15は、ネジの切り方が通常の右ネジに形成される一方、アイボルト41のネジ部42は、左ネジ(逆ネジ)に形成される。これにより、中継スリーブ45の回転方向によって、中継スリーブ45に螺合するアイボルト41とタイロッド7の距離が増減するようになっている。
【0037】
以下、流体圧シリンダ1の製造方法を説明する。流体圧シリンダ1の組立は、以下の順で行われる。
【0038】
〔1〕.仮組立工程
流体圧シリンダ1を組立てた後に、各タイロッド7に螺合するナット10を規定値より小さいトルクで締め付ける仮組立が行われる。
【0039】
〔2〕.1回目の加圧準備工程
図3に示すように流体圧シリンダ1の2本のタイロッド7及びピストンロッド6に引張治具20を組み付ける。ロッドカバー4の対角線上に位置する2本のタイロッド7が引張治具20に連結される。換言すると、ピストンロッド6の中心軸Oについて対称的に配置される2本のタイロッド7どうしが同じ組として引張治具20に連結される。
【0040】
〔3〕.1回目の加圧工程
ヘッドカバー3のポート18に図示しない配管を接続し、流体圧源から導かれる加圧作動流体をポート18からヘッド室8に供給し、流体圧シリンダ1を伸長作動させる。これにより、引張治具20に連結された2本のタイロッド7が引っ張られ、このタイロッド7に螺合する各ナット10がロッドカバー4から離れる。
【0041】
〔4〕.1回目のナット位置決め工程
引張治具20に連結された各タイロッド7に螺合する各ナット10を回してロッドカバー4に着座させ、各ナット10がロッドカバー4に対する所定位置に配置される。このとき、各ナット10を微少なトルクで締め付けて、各ナット10とロッドカバー4の間に間隙が空かないようにする。
【0042】
なお、これに限らず、ナット位置決め工程において、各ナット10を所定の板厚を有するゲージを介してロッドカバー4に着座させて、各ナット10の位置決めが行われる構成としてもよい。この場合には、ナット位置決め工程にてゲージを抜き取ると、各ナット10とロッドカバー4の間に間隙が空くが、次の加圧解除工程にて各タイロッド7が収縮することにより、各ナット10がロッドカバー4に着座して、各タイロッド7に規定の引張軸力が生じる。
【0043】
〔5〕.1回目の加圧解除工程
ヘッド室8に導かれる作動流体圧を低下させ、流体圧シリンダ1の伸長作動を停止させる。これにより、引張治具20が連結された2本のタイロッド7の引っ張り力が解除され、各タイロッド7が収縮するのに伴って、各タイロッド7に規定の引張軸力が生じる。そして、2本のタイロッド7に連結された引張治具20を取り外す。
【0044】
〔6〕.2回目の加圧準備工程
流体圧シリンダ1の残る2本のタイロッド7に引張治具20の各コネクタ40を連結する。
【0045】
〔7〕.2回目の加圧工程
流体圧源から導かれる加圧作動流体を前記〔3〕.1回目の加圧工程と同じ圧力にてポート18からヘッド室8に供給し、流体圧シリンダ1を再び伸長作動させる。これにより、引張治具20に連結された2本のタイロッド7が引っ張られ、このタイロッド7に螺合する各ナット10がロッドカバー4から離れる。
【0046】
〔8〕.2回目のナット位置決め工程
引張治具20に連結された各タイロッド7に螺合する各ナット10をロッドカバー4に着座させる各ナット10の位置決めが行われる。
【0047】
〔9〕.2回目の加圧解除工程
ヘッド室8に導かれる作動流体圧を低下させて、流体圧シリンダ1の伸長作動を停止させる。これにより、引張治具20が連結された2本のタイロッド7の引っ張り力が解除され、各タイロッド7が収縮するのに伴って、各タイロッド7に規定値の引張軸力が生じる。そして、2本のタイロッド7及びピストンロッド6に連結された引張治具20を取り外す。
【0048】
こうして、組立が終了した流体圧シリンダ1は、4本のタイロッド7の引張軸力が規定範囲内に収められる。
【0049】
以下、本実施形態の要旨と作用、効果を説明する。
【0050】
本実施形態では、ピストン5及びピストンロッド6を収容するシリンダチューブ2と、このシリンダチューブ2の一端部に装着されるヘッドカバー3と、シリンダチューブ2の他端部に装着されピストンロッド6を摺動可能に突出させるロッドカバー4と、ヘッドカバー3とロッドカバー4とをシリンダチューブ2を挟んで互いに連結する複数のタイロッド7と、この各タイロッド7に螺合してロッドカバー4に着座するナット10とを備える流体圧シリンダ1の製造方法であって、流体圧シリンダ1の仮組立を行う仮組立工程と、複数のタイロッド7に渡って引張治具20を組み付ける加圧準備工程と、流体圧シリンダ1に加圧作動流体を供給してピストンロッド6をロッドカバー4から突出する方向に移動させることによって引張治具20を駆動して各タイロッド7を引っ張る加圧工程と、各ナット10をロッドカバー4に対する所定位置に配置するナット位置決め工程と、流体圧シリンダ1に供給される加圧作動流体圧を低下させる加圧解除工程とを行う構成とした。
【0051】
上記構成に基づき、流体圧シリンダ1の推力によって各タイロッド7が引張治具20を介して引っ張られ、その状態で各ナット10をロッドカバー4に着座させた後、流体圧シリンダ1の伸長作動を停止させることによって、各タイロッド7が収縮するのに伴って、各タイロッド7に規定の引張軸力が生じる。
【0052】
これにより、従来のようにナット10を締め付けるトルクを精密に管理する必要がなく、各タイロッド7の引張軸力を規定範囲に収めて均一にすることが少ない工数で行え、生産性を高められる。
【0053】
従来の方法では、タイロッドが長い場合に、タイロッドに捻れが生じるという問題があったが、本発明の製造方法を用いることによって、タイロッド7に捻れが生じることを回避できる。
【0054】
また、本発明の製造方法を用いることによって、ナット10に工具を介して大きな締め付けトルクを付与する必要がないため、ナット10を締め付けるトルクに対する反力を得るために、タイロッド7の中程に工具に係合する回り止め部を形成する必要がなく、タイロッド7の形状を簡素化し、製品のコストダウンがはかれる。
【0055】
本実施形態では、流体圧シリンダ1に備えられるタイロッド7を複数の組に分けて加圧準備工程と、加圧工程と、位置決め工程と、加圧解除工程とをそれぞれ行う構成とした。
【0056】
加圧工程にて流体圧シリンダ1の駆動力が全部(4本)のタイロッド7のうち限られた本数(2本)のタイロッド7に加わるため、1本のタイロッド7に対して通常作動時に働く引っ張り力より大きい引張軸力を付与することが可能となる。
【0057】
なお、これに限らず、引張治具20が流体圧シリンダ1に備えられる全部(4本)のタイロッド7の全てに連結され、流体圧シリンダ1が4本のタイロッド7をいっぺんに駆動する構成としてもよい。しかし、この場合には、各タイロッド7に生じる引張軸力の最大値が小さくなる。
【0058】
本実施形態では、ピストンロッド6の中心軸Oについて対称的に配置されるタイロッド7どうしを同じ組にする構成とした。
【0059】
上記構成に基づき、流体圧シリンダ1を伸長作動させるのに伴って各タイロッド7が引張治具20を介して引っ張られる状態で、引張治具20に対する各タイロッド7の反力がピストンロッド6を介して釣り合い、流体圧シリンダ1を伸長作動させる圧力を解除した状態で、各タイロッド7に生じる引張軸力が等しいため、ピストンロッド6やシリンダチューブ2等の曲げが生じることを抑えられ、流体圧シリンダ1の作動不良を招くことを回避できる。
【0060】
本実施形態では、ピストン5及びピストンロッド6を収容するシリンダチューブ2と、このシリンダチューブ2の一端部に装着されるヘッドカバー3と、シリンダチューブ2の他端部に装着されピストンロッド6を摺動可能に突出させるロッドカバー4と、ヘッドカバー3とロッドカバー4とをシリンダチューブ2を挟んで互いに連結する複数のタイロッド7と、この各タイロッド7に螺合してヘッドカバー3とロッドカバー4に着座するナット10とを備える流体圧シリンダ1の組立装置50であって、流体圧シリンダ1に加圧作動流体を供給してロッドカバー4から突出する方向にピストンロッド6を移動させることによって各タイロッド7を引っ張る引張治具20を備え、この引張治具20は、ピストンロッド6の推力が付与されるアーム30と、このアーム30を各タイロッド7に連結する複数のコネクタ40とを備える構成とした。
【0061】
上記構成に基づき、加圧工程にて流体圧シリンダ1の推力によって引張治具20が各タイロッド7を引っ張るため、別の駆動装置を用いる必要がなく、流体圧シリンダ1の生産設備の簡素化、省力化がはかられる。
【0062】
本実施形態では、アーム30は、その中央部がピストンロッド6の先端部に揺動可能に支持され、その両端部に一対のコネクタ40がそれぞれ揺動可能に連結される構成とした。
【0063】
上記構成に基づき、流体圧シリンダ1を伸長作動させるのに伴って各タイロッド7が引張治具20を介して引っ張られる状態で、引張治具20に対する各タイロッド7の反力がピストンロッド6を介して釣り合い、流体圧シリンダ1を伸長作動させる圧力を解除した状態で、各タイロッド7に生じる引張軸力が等しいため、ピストンロッド6やシリンダチューブ2等の曲げが生じることを抑えられ、流体圧シリンダ1の作動不良を招くことを回避できる。
【0064】
なお、本発明は、前記実施形態のようにピストンを備える片ロッド型の流体圧シリンダに限らず、ピストンを備えないラム型の流体圧シリンダや、ピストンロッドがヘッドカバーとロッドカバーの両方を貫通して突出する両ロッド型の流体圧シリンダに適用してもよい。
【0065】
本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【符号の説明】
【0066】
1 流体圧シリンダ
2 シリンダチューブ
3 ヘッドカバー
4 ロッドカバー
5 ピストン
6 ピストンロッド
7 タイロッド
10 ナット
20 引張治具
21 ブラケット
30 アーム
40 コネクタ
50 組立装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストン及びピストンロッドを収容するシリンダチューブと、
前記シリンダチューブの一端部に装着されるヘッドカバーと、
前記シリンダチューブの他端部に装着され前記ピストンロッドを摺動可能に突出させるロッドカバーと、
前記ヘッドカバーと前記ロッドカバーとを前記シリンダチューブを挟んで互いに連結する複数のタイロッドと、
前記各タイロッドに螺合して前記ロッドカバーに着座するナットと、を備える流体圧シリンダの製造方法であって、
前記流体圧シリンダの仮組立を行う仮組立工程と、
複数の前記タイロッドに渡って引張治具を組み付ける加圧準備工程と、
前記流体圧シリンダに加圧作動流体を供給して前記ピストンロッド前記ロッドカバーから突出する方向にを移動させることによって前記引張治具を駆動して前記各タイロッドを引っ張る加圧工程と、
前記各ナットを前記ロッドカバーに対する所定位置に配置するナット位置決め工程と、
前記流体圧シリンダに供給される加圧作動流体圧を低下させる加圧解除工程と、を行うことを特徴とする流体圧シリンダの製造方法。
【請求項2】
前記流体圧シリンダに備えられる前記タイロッドを複数の組に分けて前記加圧準備工程と、前記加圧工程と、前記位置決め工程と、前記加圧解除工程とをそれぞれ行うことを特徴とする請求項1に記載の流体圧シリンダの製造方法。
【請求項3】
前記ピストンロッドの中心軸について対称的に配置される前記タイロッドどうしを同じ組にすることを特徴とする請求項1または2に記載の流体圧シリンダの製造方法。
【請求項4】
ピストン及びピストンロッドを収容するシリンダチューブと、
前記シリンダチューブの一端部に装着されるヘッドカバーと、
前記シリンダチューブの他端部に装着され前記ピストンロッドを摺動可能に突出させるロッドカバーと、
前記ヘッドカバーと前記ロッドカバーとを前記シリンダチューブを挟んで互いに連結する複数のタイロッドと、
前記各タイロッドに螺合して前記ヘッドカバーと前記ロッドカバーに着座するナットと、を備える流体圧シリンダの組立装置であって、
前記流体圧シリンダに加圧作動流体を供給して前記ピストンロッドを前記ロッドカバーから突出する方向に移動させることによって各タイロッドを引っ張る引張治具を備え、
前記引張治具は、
前記ピストンロッドの推力が付与されるアームと、
前記アームを前記各タイロッドに連結する複数のコネクタと、を備えることを特徴とする流体圧シリンダの組立装置。
【請求項5】
前記アームは、
その中央部が前記ピストンロッドの先端部に揺動可能に支持され、
その両端部に一対の前記コネクタがそれぞれ揺動可能に連結されることを特徴とする請求項4に記載の流体圧シリンダの組立装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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