説明

流体微粒化ノズル、流体微粒化装置

【課題】気相側の圧力損失が小さく、かつ液相の流量範囲を大きくとれる流体微粒化ノズル及び該流体微粒化ノズルを用いた流体微粒化装置を提供する。
【解決手段】本発明の流体微粒化ノズルは、基端側から気体の供給を受け、先端側に気体を噴出する外筒3と、外筒3内に該外筒3と同軸方向でかつ外筒内壁と空間を介して配置されると共に内部が中空の内筒5と、該内筒5の内壁に液体を供給する液体供給管7とを備え、内筒5の基端側は外筒3の基端よりも下流側に配置され、内筒5の先端は外筒3の先端と同じ位置又は外筒3の先端よりも上流側に配置されており、液体供給管7は外筒3の側壁を貫通して内筒5の側壁に接続されてなり、液体供給管7によって供給された液体が外筒3及び内筒5に供給された気体によって微粒化されて該気体に混合されることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を微粒化する流体微粒化ノズル及び該流体微粒化ノズルを用いた流体微粒化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を微粒化する流体微粒化ノズルの例としては、特許文献1に記載されたプレフィルマー式エアブラスト微粒化ノズルがある。
特許文献1に記載されたプレフィルマー式エアブラスト微粒化ノズルは、「液体マニホールドを備えた円筒状の中心体の外側に複数の微粒化気流旋回羽根を周方向に配設した液体供給筒と、前記液体供給筒の外側に同軸に配設された1個以上の断面環状で内周面が液膜形成面を形成する筒状の液膜形成体で構成された液膜形成部と、前記液膜形成体の最外周に同軸に配設されたシュラウドとで構成され、前記液体マニホールドから延びる液体分配流路が前記微粒化気流旋回羽根の内部に配設され且つ前記微粒化気流旋回羽根の翼端において開口しており、前記液体マニホールドから前記液体分配流路に分流した液体が前記液体分配流路の開口から前記液膜形成体の液膜形成面上に流出して液膜を形成し、前記液膜が主として前記微粒化気流旋回羽根により旋回が与えられた気流の作用により微粒化されることから成る」ものである(特許文献1の請求項1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-106411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたプレフィルマー式エアブラスト微粒化ノズル(以下、単に「従来例」という)では、流路の中央に円筒状の中心体を配設し、該中心体の外側に複数の微粒化気流旋回羽根を周方向に配設している。そして、該微粒化気流旋回羽根により気流に旋回を与え、この旋回流れにより液膜形成体の液膜形成面上に形成された液膜を微粒化するというものである。
【0005】
従来例では、気体流路の中心に中心体を配設し、さらに流路に旋回羽根を設置していることから、中心体や旋回羽根の表面には、高速で流れる気体が接することになり、流れに対して抵抗となる、すなわち圧力損失(以下、圧損)が大きくなる。圧力損失の大きな微粒化ノズルを機能させるためには、ノズルに供給する気体の圧力を高圧にし、ノズル入口側と出口側の間の差圧を大きくする必要がある。気体の圧力を高圧にするためには、そのための昇圧装置(圧縮機)が必要であり、その所要動力も大きい。そのため、コスト、スペース、動力面の制約から、従来例の微粒化ノズルの適用が困難となる場合があった。
例えば、液化天然ガスを気化して都市ガスとして供給する際に液化石油ガスで増熱する増熱装置がある。この増熱装置として、液体状態の液化石油ガスを気化した液化天然ガスに供給する方式がよく用いられる。この場合、液体として供給する液化石油ガスをできるだけ細かく微粒化することが望まれるが、他方、微粒化に要する圧損が大きいと、増熱装置出口での圧力が低下してしまい、都市ガスとして送り出す圧力が不足して送ガスに支障を来たす恐れがある。
【0006】
また、従来例では、気体流路に配設した中心体内に液体流路を形成し、該流路から流路断面が小さい分岐流路を介して液膜形成体に液体を供給して液膜を形成する構造になっている。流路断面を小さくしているため、流路が異物によって閉塞する可能性がある。また、液膜を適正に形成可能な液体の流量範囲が狭い。つまり、液体の流量を多くしていくと液相側の圧損が非常に大きくなる。逆に液相流量が小さくなったときには液膜の形成が不十分となる。
【0007】
本発明はかかる従来例の有する課題を解決するためになされたものであり、気相側の圧力損失が小さく、かつ液相の流量範囲を大きくとれる流体微粒化ノズル及び該流体微粒化ノズルを用いた流体微粒化装置を提供することを目的としている。

【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の流体微粒化ノズルは、基端側から気体の供給を受け、先端側に気体を噴出する外筒と、該外筒内に該外筒と同軸方向でかつ外筒内壁と空間を介して配置されると共に内部が中空の内筒と、該内筒の内壁に液体を供給する液体供給管とを備え、前記内筒の基端側は前記外筒の基端よりも下流側に配置され、該内筒の先端は前記外筒の先端と同じ位置又は前記外筒の先端よりも上流側に配置されており、前記液体供給管は前記内筒の側壁に接続されてなり、前記液体供給管によって供給された液体が前記外筒及び前記内筒に供給された気体によって微粒化されて該気体に混合されることを特徴とするものである。
【0009】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記外筒内周面と前記内筒外周面で形成される流路の先端側が、流路中心側に向かっていることを特徴とするものである。
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記内筒の上流端がテーパ状の縮流形状となっていることを特徴とするものである。
(4)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、気体供給管が前記内筒の上流端に対向して同軸に配設され、その相対位置が可変になっていることを特徴とするものである。
【0010】
(5)本発明に係る流体微粒化装置は、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の流体微粒化ノズルを用いた流体微粒化装置であって、前記流体微粒化ノズルに供給される気体の流量を検出する流量検出装置と、該流量検出装置の検出値に基づいて前記流体微粒化ノズル内を流れる気体の流速を、気体が液体を巻き込んで環状噴霧流になるのに必要な流速になるように調整する流量調整弁とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の流体微粒化ノズルは、基端側から気体の供給を受け、先端側に気体を噴出する外筒と、該外筒内に該外筒と同軸方向でかつ外筒内壁と空間を介して配置されると共に内部が中空の内筒と、該内筒の内壁に液体を供給する液体供給管とを備え、前記内筒の基端側は前記外筒の基端よりも下流側に配置され、該内筒の先端は前記外筒の先端と同じ位置又は前記外筒の先端よりも上流側に配置されており、前記液体供給管は前記外筒の側壁を貫通して前記内筒の側壁に接続されてなり、前記液体供給管によって供給された液体が前記外筒及び前記内筒に供給された気体によって微粒化されて該気体に混合されるので、広い液相流量範囲において、低い気相圧力で、液相・気相両方の圧損の増大を抑制しつつ良好な微粒化・混合性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係る流体微粒化ノズルの説明図である。
【図2】管内を流れる液相及び気相の流速と流動様式との関係を説明する説明図である。
【図3】図1に示した流体微粒化ノズルにおけるノズル圧力損失と微粒化径の関係を説明するグラフである。
【図4】本発明の実施の形態2の説明図である。
【図5】図4の一部を拡大して示す拡大図である。
【図6】本発明の実施の形態3の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態1]
本実施の形態に係る流体微粒化ノズル1は、基端側から気体の供給を受け、先端側に気体を噴出する外筒3と、外筒3内に外筒3と同軸方向でかつ外筒3内壁と空間を介して配置されると共に内部が中空の内筒5と、内筒5の内壁に液体を供給する液体供給管7とを備えており、液体供給管7によって供給された液体が外筒3の基端側から供給された気体によって微粒化されて該気体に混合されることを特徴とするものである。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0014】
<外筒>
外筒3は基端側から気体の供給を受けて先端側で気体を噴出する。外筒3の先端側は外筒中心に向けて徐々に縮径しており、略円錐台のような形状になっている。
【0015】
<内筒>
内筒5は外筒3内に外筒3と同軸方向でかつ外筒3内壁と空間を介して配置されている。外筒3内壁と内筒5外壁との間に形成される空間は、リング状流路9を形成している。
また、内筒5の内部は中空になっており、中央流路11を形成している。中空流路には流路を遮るものは何らも配置されていない。
内筒5の基端側は、外周面側から内周面の下流側に向かって傾斜する傾斜面13が形成されており、これによって内筒5基端側の開口部の面積が内筒5内の中央流路断面積よりも広くなっている。内筒5基端側の開口部の面積とリング状流路断面積との比率によって、内筒5側へ導入される気体と外側流路へ導入される気体の流量が規定される。したがって、この比率を微粒化に適したものに予め設定しておくことが好ましい。
もっとも、外筒3の基端側から気体を供給する、外筒3と同軸に配設された気体供給管14の内筒5基端側に対する位置を可変として、気体供給管14と内筒5基端側の間の距離を調整することで、中央流路11とリング状流路9への気体の供給比率を設定するようにしてもよい。
【0016】
内筒5の先端側の外周面は外筒3の先端側内周面と同様に中心に向けて徐々に縮径しており、略円錐台のような形状になっている。このように、内筒5及び外筒3の先端側が略円錐台のような形状になることで、リング状流路断面が小さくなり、リング状流路9を通過する気体の流速が増すようになっており、これによって液体の微粒化をさらに促進している。
【0017】
内筒5は外筒3内に固定されているが、その固定方法は特に問わず、例えばステー(図示なし)によって固定するようにすればよい。
【0018】
<液体供給管>
液体供給管7は、内筒5の内壁に液体を供給する。液体供給管7は、図1に示されるように、先端が内筒5の壁部に挿入されている。そして、内筒5の壁部には液体供給管7と連通する液体流路15が内筒5の内周面に連通するように設けられている。
従来例では、液体流路15を気体流路の中心に配設した中心体の中に形成していたため、中心体が抵抗となり圧損を大きくしていたが、本実施の形態では液体供給管7を上記のように配置しているので、液体供給管7が中央流路11を遮ることがなく、液体供給管7による圧損が生ずることもない。
本実施の形態では、図1に示すように、液体供給管7を出口側に向けて傾斜させて配置しており、このようにすることで、液体供給管7から供給される液体が中央流路11を流れる気体の流れの方向に向って流速を増すことになり、液体流量が増大した場合にも安定した流動状態が得られやすくなる。
なお、液体流路15の先端開口部から中央流路11の下流側端部までの距離は、中央流路11の直径の5倍以上に設定するのが好ましい。このように設定することで、中央流路11内で環状噴霧流が確実に形成されて、微粒化が促進される。
【0019】
上記のように構成された本実施の形態に係る流体微粒化ノズル1の作用について説明する。
気体は流体微粒化ノズル1の基端側から供給され、液体が液体供給管7から供給される。
基端側から供給された気体は、内筒5と外筒3で形成される二重管構造の中央流路11とリング状流路9を所定の分配比率で流れる。この分配比率は、前述したように、内筒5の基端側の開口面積と、内筒5外周面と外筒3内周面との間の断面積の比率によって規定される。
【0020】
液体供給管7から供給された液体は、内筒5の内面において気体流れに接し、その気体流れの流速によって様々な流動形態をとる。内筒5の中央流路11を流れる混合流動状態が環状流もしくは環状噴霧流となっている状態が最も微粒化が良好、すなわち微粒液滴径が小さくなる。
ここで、内管12で発生する環状噴霧流について説明する。
【0021】
図2には、管内を流れる液相及び気送の流速と、流動様式との関係を示した線図(図2(a))と、該線図内に示された流動様式を模式的に示す図(図2(b))が示されている。ここに示された図は、書籍「気液二相流」(著者:植田辰洋、出版社:養賢堂)に記載のものである。
図2(a)に示されるように、管内を流れる液相及び気相はそれぞれの流速によってその流動様式が異なるが、気相の流速が20m/s以上になることで、液相が管壁を環状に流れる環状流となり、さらに、環状になった液相の環内の液を巻き込んで噴霧状になった気相が流れる環状噴霧流(図2(b)右下の図参照)となる。
本実施の形態では、液体が液体供給管7によって内筒5の内壁に供給されると共に内筒5の中央流路11に高速の気体が流れることで、内筒5内の流動様式が環状噴霧流となり、液体が微粒化されて気体に効果的に混合される。なお、管状流の状態でも液体の微粒化効果は得られるが、管状噴霧流とすることでその効果をより高めることができる。
【0022】
液体供給管7から内筒5の内壁に供給された液体は、管状噴霧流となって内筒5の内壁面上に液膜を形成しながら流れる。内筒5の外周側にもリング状流路9が形成されており、このリング状流路9にも気体が流れている。内筒5の出口部分において、内筒5内壁面上に形成されている液膜は、内筒5の管軸方向に液膜状態を保ったまま噴出する。その液膜の内側には内筒5内を流れてきた気体流れが存在し、液膜の外側にはリング状流路9を流れてきた気体流れが存在する。すなわち、液膜は内外両面で気相と接し、液膜と気相の流速差に起因するせん断力によって液膜が引きちぎられ微粒化される。
このように二重管構造にしたことにより、上述したように、液膜状となった液体を気体の流れで挟み込むことによって液体の微粒化をより促進することができる。
内筒5内の気体流速が小さくなると、管状流や管状噴霧流状態を保てなくなり、波状流、スラグ流、気泡流などの流動状態に遷移する。その場合、内筒5内での微粒化特性が劣化するのみならず、内筒5出口で液膜を気体の流れで挟み込む状態が形成できないため、微粒化性能は急激に低下することになる。
【0023】
なお、環状流もしくは環状噴霧流となる範囲内であれば気相速度を小さくできる(気相側圧力が小さくてよい)。概略、気相見かけ流速が20m/s以上となるように維持すればよい。例えば、気相見かけ流速が30m/sの時の理論気相差圧は元圧の約0.5%であり、例えば元圧が大気圧(100kPa(abs))の空気の場合、ノズルにおける気相側の必要差圧は0.5kPaと非常に小さい値となる。
【0024】
液膜は気相流れで形成するので、従来例のように液膜形成のために液相流路の断面積を絞る必要がないため、液相の流路は単純かつ断面積も大きくでき、液相側の圧損を小さく保てる。
【0025】
気相側流路となる中央流路11は概直管状であり、なんらの障害物もないので圧損が小さい。
図3はこの点を従来例と比較して示したものであり、ノズル圧力損失と微粒化性能(微粒化径)の関係を示したものであり、横軸がノズル圧力損失、縦軸が微粒化径を示している。縦軸、横軸ともに無次元化している。
同じ径100の液滴を生成するのに、従来技術では圧力損失100超であるのに対して、本実施の形態のノズルでは、圧力損失10未満でよいことを示している。
このように圧損が極めて少ないことから、気相供給圧力が低いために従来の微粒化ノズルの適用が困難であるような場合でも、本ノズルでは適用が可能となる
例えば、気化した液化天然ガスに液化石油ガスを液体の状態で供給して増熱し、都市ガスとして送り出すシステムに適用した場合に、圧損を抑制しつつ微粒化を行うことができるため、送ガス圧力を損なうことなく確実な増熱効果を得ることが可能となる。
【0026】
また、液相流量が増加して中央流路11に占める液断面積が増大した場合でも、気相はリング状流路9へより多く流れるように自律的に分流し、圧力損失の過度の増大を防止できる。
【0027】
以上のように、本実施の形態によれば、広い液相流量範囲において、低い気相圧力で、液相・気相両方の圧損の増大を抑制しつつ良好な微粒化・混合性能を得ることができる。
【0028】
[実施の形態2]
本実施の形態は本発明の流体微粒化ノズルを用いた微粒化装置の例を示したものであり、LNGを気化した天然ガスにLPGを添加することにより増熱して都市ガスを製造する際に用いられるものである。また、本実施の形態2においては、天然ガスが流れる主流管にベンチュリ管を設置してベンチュリ型微粒化装置として構成したものである。
【0029】
本実施の形態に係るベンチュリ型微粒化装置21の基本構成は、図4に示すように、天然ガスが通流する主流管23に設けられたベンチュリ管25と、主流管23よりも出口流路断面が小径の分岐管27を主流管23から分岐して設け、分岐管27の出口側をベンチュリ管のど部29またはその上流側に接続し、該分岐管27の出口管(外筒に相当)内に該出口部を二重管構造にするように内管32(内筒に相当)を設置し、該内管32にLPGを供給するLPG供給管31(液体供給管に相当)の供給部31aを取り付けている。分岐管27の出口管、内管32、LPG供給管31が本発明の流体微粒化ノズルを構成している。
【0030】
本実施の形態のベンチュリ型微粒化装置21においては、分岐管27に、分岐管27を流れる天然ガスの流量を検知する流量検出器33を設けると共に主流管23におけるベンチュリ管25と分岐管が分岐する分岐部の間に流量調整弁35を設け、流量検出器33の検知信号に基づいて流量調整弁35の開度を調整するようにしている。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0031】
<LPG供給管>
LPG供給管31はベンチュリ管25内にLPGを供給するためのものであり、LPG供給場所となる供給部31aは、図4及び図5に示すように、内管32の管壁に配置されている。供給部31aを内管32の管壁に配置することで、内管32内を流れる流速が増した天然ガスによって内管32に供給されたLPGが巻き込まれて環状噴霧流となってLPGの微粒化混合が効果的に行われる。
【0032】
<分岐管>
分岐管27は、主流管23におけるベンチュリ管25の上流側から分岐して、その出口側がベンチュリ管のど部29もしくはベンチュリ管のど部29よりも上流側に接続されている。
分岐管27の流路断面積は主流管23よりも小径となる部分を有しており、分岐管27の前記小径部分を流れる天然ガスの流速が主流管23を流れる天然ガスの流速よりも速くなるように設定されている。前記小径部分は分岐管27の出口に配設するのが一般的である。
分岐管27出口に配設された小径部における天然ガスの流速を高速にすることで、ここに配置された内管32内に供給されるLPGを巻き込んだ環状噴霧流が発生してLPGの微粒化が促進される。
【0033】
分岐管27の出口側の配置は任意でよい。一番望ましいのは図4に示すように、ベンチュリ管25と同軸方向に配置するものであるが、特に限定されるものではない。
【0034】
LPGの微粒化・混合性能に大きく影響するのは分岐管27における内管32が設けられた部位での流速である。天然ガスを主流管23よりも流路断面積が小さい分岐管27に流すことによって流速を増し、該流速を増した天然ガスによって環状噴霧流が発生してLPGの微粒化・混合が行われるからである。
分岐管27における内管32が設けられた部位の管径は、都市ガスの最低流量運転のときにも、内管32内を流れる天然ガスの流速が、環状噴霧流発生に必要な流速を保つことができるような径にしておく。
例えば、都市ガス流量の変動範囲が30万Nm3/h〜6千Nm3/hの場合を想定すると、都市ガス流量が最低流量である6千Nm3/hのときには、天然ガスを分岐管27から全量流し、このときの分岐管27における内管32が設けられた部位(分岐管27における小径部)の天然ガス流速が環状噴霧流発生に必要な流速を保つような管径とする。(このとき分岐管27を流れる天然ガス流量は、天然ガス流量として想定される最低流量となる。)
その上で、想定される最低流量分を常に分岐管27に流すようにすれば、制御が簡単で安定したLPGの微粒化・混合が実現できる。以下の説明において、分岐管におけるLPGの微粒化・混合に必要な流速を与える最小流量を所定値Aという場合がある。
【0035】
環状噴霧流発生に必要とされる流速は、実施ケースにより異なるが、図3(a)にも示されるように概ね20m/s以上である。したがって、想定される都市ガスの最低流量の場合に分岐管における内管32内で前記流速が確保でき、かつ圧損が高くなり過ぎないような管路となるように分岐管27を設定すればよい。
【0036】
例えば、分岐管27の管径は入り口側から出口側まで同じであってもよいが、内管32が設けられた部位の流路断面を主流管23の流路断面より小さい小径部として、その他の部位は小径部よりも管径を大きくしてもよい。小径部以外の管径をこれより大きくしておくことで、分岐管27における圧損が大きくなりすぎることを回避することができる。
なおベンチュリ管のど部29の径は、設計最大流量時の圧力損失が、その適用システムにとって過大とならないように設計しておく。
【0037】
<流量検知器>
流量検出器33は、分岐管27に設けられて分岐管27を流れる天然ガスの流量を検知するものである。
なお、流量検出器33に代えて差圧検知器を設け、分岐管27における圧力損失を検知することで、あらかじめ把握しておいた分岐管27における流量と圧力損失の関係から、分岐管27内を流れる天然ガスの流量を検知するようにしてもよい。
【0038】
<流量調整弁>
流量調整弁35は、主流管23におけるベンチュリ管25と分岐管27の分岐部との間に設けられて、流量検出器33の検知信号に基づいて主流管23を流れる天然ガス流量を調整し、これによって分岐管27を流れる天然ガス流量が予め定めた所定流量になるようにする。
なお、図2(a)に示されるように、管状噴霧流とするための気相流速は液相流速の影響を受ける。このため、LPG供給管31を流れるLPG量を検知する第2の流量検知器を設け、供給LPG量も加味して分岐管27を流れる天然ガスの所定量を算出・設定することも可能である。ただし、第2の流量検知器を必要とし、制御も複雑となるため、実用上はLPG供給量によらず、一定の天然ガス流量(内管32内で例えば20m/sとなる流量)を所定量とすることが簡便である。
【0039】
<動作説明>
次に上記のように構成された本実施の形態に係るベンチュリ型流体微粒化装置21の動作を説明する。
上流側から供給される天然ガスは、分岐部を通過する際に分岐管27にも流れ、分岐管27の出口側において内管32内に供給されるLPGを巻き込んだ環状噴霧流を発生し、LPGの微粒化・混合が行われ、ベンチュリ管のど部29に流入する。他方、主流管23を流れる天然ガスもベンチュリ管のど部29に流入する。したがって、ベンチュリ管のど部29には、分岐管27を経由してLPGが添加された天然ガスと、主流管23からの天然ガスが流入し、ベンチュリ管のど部29を通過の際、さらにLPGの混合が促進される。
【0040】
都市ガスの流量はその需要量に応じて成り行きで増減する。例えば、都市ガス需要量が減少し、流路を流れる流体の流量が減少すると、分岐管27及び主流管23を流れるトータルの天然ガスの流量が減少する。分岐管27を流れる天然ガス流量が所定値Aよりも減少すると内管32内での流速が減少し、管状噴霧流が形成されなくなり、LPGの微粒化・混合が不十分になることが懸念される。
そこで、流量検出器33で検知される流量が所定値Aよりも減少したら、流量調整弁35の開度を小さくすることによって分岐管27を流れる天然ガス流量が所定値Aを維持するようにする。
分岐管27を流れる天然ガス流量を所定値A以上に維持することで、分岐管27における流速が維持されLPGの微粒化・混合効果を確保することができる。
【0041】
逆に、都市ガス需要量が増加し、流路を流れる流体の流量が増加すると、分岐管27及び主流管23を流れる天然ガスの流量が増加する。分岐管27を流れる天然ガス流量が所定量よりも増加すると圧力損失が大きくなる。
そこで、流量検出器33で検知される流量が所定値Bよりも増加したら、流量調整弁35の開度を大きくして主流管23を流れる量を増やし、分岐管27を流れる天然ガス流量が所定値Bになるようにする。ここで、所定値B≧所定値Aの関係にある。
分岐管27を流れる天然ガス流量を所定値A以上B以下にすることで、分岐管27における流速が所定の範囲に維持されLPGの微粒化・混合を十分にすることができると共に圧損の過大な増大を防止することができる。
【0042】
例えば、最も単純な制御方法としては、所定値A=所定値B=[都市ガス最低流量時の天然ガス流量(天然ガス最低流量)]とする場合である。
前述した例と同様、都市ガス流量の変動範囲が30万Nm3/h〜6千Nm3/hの場合を想定すると、都市ガス流量が最低流量である6千Nm3/hのときには、天然ガスを分岐管27から全量、すなわち所定値A(=所定値B)の流量を流す。
都市ガス流量が6千Nm3/hより大きくなった場合には、分岐管27に設置された流量検出器33で計測される流量が所定値Aを保つように流量調整弁35の開度を大きくしていき、天然ガス流量増加分を主流管23から流入させるようにする。すなわち、都市ガス流量が変動しても、分岐管27には常に所定値Aの天然ガス流量が流通するようにする。こうすることにより、分岐管27へは常に微粒化・混合に必要な流量が供給されるようになる。また主流管23からの速度成分は、ベンチュリ管のど部29における流速をさらに増大させる方向に寄与する。
なお上記において、所定値Aは[都市ガス最低流量時の天然ガス流量(天然ガス最低流量)]であるが、簡易的には[都市ガス最低流量]としてもよい。
【0043】
以上のように、本実施の形態によれば、流路を流れる流量が大きく変化してもLPGの供給部となる内管32が配設されている位置における分岐管27の天然ガス流速を所定の流速に維持することができ、LPGの微粒化・混合効果が得られると共に過度に圧力損失が大きくなりすぎないようにすることができる。
【0044】
ここで、所定値Aの天然ガス流量を分岐管側に流通させるためには、ノズルを含めた分岐管側の圧損と同等以上の圧損となるように、流量調節弁35を絞り込む必要がある。そのため、分岐管先端に配設された微粒化ノズルの圧損が大きいと、微粒化装置全体としての圧損が大きくなり、都市ガスとして送り出すためのガス圧力を維持できなくなる。
本発明の微粒化装置は、本発明の流体微粒化ノズルを用いることにより圧損を抑制しつつ微粒化を行うことができるため、送ガス圧力を損なうことなく確実な増熱効果を得ることが可能となる。
【0045】
[実施の形態3]
実施の形態2においては、本発明の流体微粒化ノズルを用いた流体微粒化装置の例として、主流管にベンチュリ管を設置して、そのベンチュリ管内に流体微粒化ノズルを配置した例を示した。
しかし、本発明の流体微粒化装置は、ベンチュリ管内に流体微粒化ノズルを配置するものに限られず、気体供給管に直接流体微粒化ノズルを設置して構成してもよい。
【0046】
図6は本実施の形態の流体微粒化装置41の説明図であり、図1と同一部分には同一の符号を付してある。本実施の形態の流体微粒化装置41は、気体供給管14の端部に設置した流体微粒化ノズル1と、流体微粒化ノズル1に供給される気体の流量を検出する流量検出装置43と、流量検出装置43の検出値に基づいて流体微粒化ノズル内を流れる気体の流速を、気体が液体を巻き込んで環状噴霧流になるのに必要な流速になるように調整する流量調整弁45とを備えてなるものである。
【符号の説明】
【0047】
1 流体微粒化ノズル
3 外筒
5 内筒
7 液体供給管
9 リング状流路
11 中央流路
13 傾斜面
14 気体供給管
15 液体流路
21 ベンチュリ型微粒化装置
23 主流管
25 ベンチュリ管
27 分岐管
29 ベンチュリ管のど部
31 LPG供給管
31a 供給部
32 内管
33 流量検出器
35 流量調整弁
41 流体微粒化装置
43 流量検出装置
45 流量調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側から気体の供給を受け、先端側に気体を噴出する外筒と、該外筒内に該外筒と同軸方向でかつ外筒内壁と空間を介して配置されると共に内部が中空の内筒と、該内筒の内壁に液体を供給する液体供給管とを備え、前記内筒の基端側は前記外筒の基端よりも下流側に配置され、該内筒の先端は前記外筒の先端と同じ位置又は前記外筒の先端よりも上流側に配置されており前記液体供給管は前記内筒の側壁に接続されてなり、前記液体供給管によって供給された液体が前記外筒及び前記内筒に供給された気体によって微粒化されて該気体に混合されることを特徴とする流体微粒化ノズル。
【請求項2】
前記外筒内周面と前記内筒外周面で形成される流路の先端側が、流路中心側に向かっていることを特徴とする請求項1記載の流体微粒化ノズル。
【請求項3】
前記内筒の上流端がテーパ状の縮流形状となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の流体微粒化ノズル。
【請求項4】
前記気体供給管が前記内筒の上流端に対向して同軸に配設され、その相対位置が可変になっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の流体微粒化ノズル。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の流体微粒化ノズルを用いた流体微粒化装置であって、前記流体微粒化ノズルに供給される気体の流量を検出する流量検出装置と、該流量検出装置の検出値に基づいて前記流体微粒化ノズル内を流れる気体の流速を、気体が液体を巻き込んで環状噴霧流になるのに必要な流速になるように調整する流量調整弁とを備えたことを特徴とする流体微粒化装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−30200(P2012−30200A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174134(P2010−174134)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】