説明

流体微粒化ノズル装置、流体微粒化装置

【課題】密閉された空間や狭い場所に設置する場合においても外部からの気体配管や液体配管を容易に行うことができる流体微粒化ノズル装置、該流体微粒化ノズル装置を用いた流体微粒化装置を得る。
【解決手段】本発明に係る流体微粒化ノズル装置1は、気体の供給を受ける気体ノズル部13と、液体の供給を受ける液体ノズル部19とを有し、液体を気体によって微粒化する流体微粒化ノズル装置であって、気体配管3が接続される気体供給管部5と液体配管7が接続される液体供給管部9とが一体化されてなる流体供給管部11を備え、流体供給管部11の先端に気体ノズル部13が着脱可能に取り付けられてなることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を微粒化する流体微粒化ノズル装置、この流体微粒化ノズル装置を用いた流体微粒化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を微粒化する流体微粒化ノズルの例としては、特許文献1に開示された二流体微粒化ノズルがある。
特許文献1に開示された二流体微粒化ノズルは、「液体供給器、液膜形成器、気体供給器、気流旋回器、外筒とからなり、前記液膜形成器は、基部から先端の第1の円形開口に延びる回転対称の内周壁面を有し、前記気流旋回器は半径流方式で、前記外筒は、その先端部壁に前記第1の円形開口と同心に第2の円形開口が開口し、気流の一部が気流旋回器を経て前記液膜形成器の内周壁面で囲まれた空間に旋回流となって流入して前記第1の円形開口から噴出する第1の流路と、気流の他の一部が、前記第2の円形開口の内周壁と前記第1の円形開口の外周壁との間の環状開口から噴出する第2の流路を備えるものとし、液体は前記液体供給器の内部に配設された液体溜まりに連通する液体噴出孔から噴出して前記液膜形成器の内周壁面上を流れ、前記第1の円形開口において円筒状液膜となって、内周を前記第1の流路の気流により、外周を前記第2の流路の気流により挟まれて流出して微粒化されるようにした。」というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-297589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された二流体微粒化ノズルのように、ノズル内に気体と液体を導入して液体を微粒化するものの場合、ノズル内に気体を導入するための気体導入路及び液体を導入するための液体導入路が設けられている。そして、気体導入路及び液体導入路に外部から気体及び液体を供給するための気体供給管や液体供給管を接続する。このため、気体供給管や液体供給管の先端部の位置を二流体微粒化ノズル側の気体導入路及び液体導入路の接続部に正確に合わせて配管しなければならない。
【0005】
しかしながら、一般に気体供給管や液体供給管は剛体であるため、二流体微粒化ノズル側の気体導入路及び液体導入路に正確に合わせるのは難しい。特に、二流体微粒化ノズルを密閉された空間や狭い場所に設置する場合にはなおさらである。例えばパイプライン中に二流体微粒化ノズルを設置する場合、気体供給管および液体供給管はパイプを貫通させる必要がある。この貫通部分は耐圧・気密性を持たせる必要があるため、例えばパイプ貫通面で溶接する。この溶接部から二流体微粒化ノズルまでの距離は通常短く、溶接部で拘束されている気体供給管および液体供給管の自由度はほとんど無いといってよい。このため、気体供給管および液体供給管の先端を二流体微粒化ノズル側の気体導入路及び液体導入路のそれぞれの接続部に合わせるのは非常に困難なものとなる。
そのため、液体配管又は気体配管のいずれか一方に自由度を持たせる、すなわちフレキシブルな構造にして配管することが行われる。しかし、フレキシブルな構造、例えば蛇腹のような構造にした場合には、圧力損失が大きくなるし、また振動しやすいために振動防止の対策を別途施す必要がある。
【0006】
本発明はかかる従来例の有する課題を解決するためになされたものであり、密閉された空間や狭い場所に設置する場合においても外部からの気体配管や液体配管の接続を容易に行うことができる流体微粒化ノズル装置、該流体微粒化ノズル装置を用いた流体微粒化装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る流体微粒化ノズル装置は、気体の供給を受ける気体ノズル部と、液体の供給を受ける液体ノズル部とを有し、前記液体を前記気体によって微粒化する流体微粒化ノズル装置であって、気体配管が接続される気体供給管部と液体配管が接続される液体供給管部とが一体化されてなる流体供給管部を備え、該流体供給管部の先端に前記気体ノズル部および/または前記液体ノズル部が着脱可能に取り付けられてなることを特徴とするものである。
【0008】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記気体ノズル部は、外筒と、該外筒内に該外筒と同軸方向でかつ外筒内壁と空間を介して配置される内筒とを備えてなり、
前記気体ノズル部を前記流体給管部に取り付けた状態で前記液体ノズル部が前記内筒の上流端側に配置されることを特徴とするものである。
【0009】
(3)また、上記(2)に記載のものにおいて、前記液体ノズル部の前記内筒の上流端に対する相対位置が可変になっていることを特徴とするものである。
【0010】
(4)本発明の流体微粒化装置は、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の流体微粒化ノズル装置を用いた流体微粒化装置であって、前記流体微粒化ノズル装置に供給される気体の流量を検出する流量検出装置と、該流量検出装置の検出値に基づいて前記流体微粒化ノズル装置内を流れる気体の流速を調整する流量調整弁とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の流体微粒化ノズル装置は、気体配管が接続される気体供給管部と液体配管が接続される液体供給管部とが一体化されてなる流体供給管部を備え、該流体供給管部の先端に前記気体ノズル部および/または前記液体ノズル部が着脱可能に取り付けられてなるので、流体供給管部を例えば主流管に挿入してノズル先端部を取り付ければ、あとは主流管の外部にて気体供給管部への気体配管の接続や液体供給管部への液体配管の接続を行えばよく、流体微粒化ノズル装置が密閉された空間や狭い場所に設置されるような場合であっても配管作業をきわめて容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係る流体微粒化ノズル装置の説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る流体微粒化ノズル装置の説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る流体微粒化ノズル装置の気体ノズル部及び液体ノズル部の説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る流体微粒化ノズル装置の液体ノズル部の他の態様の説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る流体微粒化ノズル装置の液体ノズル部の他の態様の説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る流体微粒化ノズル装置の液体ノズル部の他の態様の説明図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る流体微粒化ノズル装置の液体ノズル部の他の態様の説明図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る流体微粒化ノズル装置の動作説明図である。
【図9】管内を流れる液相及び気相の流速と流動様式との関係を説明する説明図である。
【図10】図1に示した流体微粒化ノズルにおけるノズル圧力損失と微粒化径の関係を説明するグラフである。
【図11】本発明の他の実施の形態に係るベンチュリ型微粒化装置の説明図である。
【図12】本発明の他の実施の形態に係る流体微粒化装置の説明図である。
【図13】本発明を構成する気体ノズル部及び液体ノズル部の他の態様の説明図である。
【図14】本発明を構成する気体ノズル部及び液体ノズル部の他の態様の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態1]
本実施の形態に係る流体微粒化ノズル装置1は、気体配管3が接続される気体供給管部5と液体配管7が接続される液体供給管部9とが一体化されてなる流体供給管部11と、流体供給管部11の先端に着脱可能に取り付けられる気体ノズル部13と、気体ノズル部13に所定の位置関係で配置される液体ノズル部19を備えてなるものである。
以下詳細に説明する。
【0014】
<流体供給管部>
流体供給管部11は、気体配管3が接続される気体供給管部5と液体配管7が接続される液体供給管部9とが一体化されてなるものである。
一体化の態様としては、本実施の形態に示されるように、気体供給管部5の内部に同軸状に液体供給管部9が挿入されているものの他、液体供給管部9が気体供給管部5の内面もしくは外面に沿って設けられてなるものでもよい。この場合でも、例えば液体供給管部9の先端が気体供給管部5内に同軸状に開口されるようにすれば、気体供給管部5と液体供給管部9の先端は本実施の形態と同様の配置となる。
【0015】
〔気体供給管部〕
気体供給管部5は、主流管15に挿入可能な長さを有し、その先端は主流管15と同軸方向に開口している。またその開口部には図2に示すように雄ねじ17が形成されている。本実施の形態では直管状の主流管15の側壁面から挿入しているため、先端側がほぼ直角に屈曲している。なお、主流管15のエルボ(曲がり)部に直管状の気体供給管部5を挿入してもよい。
【0016】
〔液体供給管部〕
液体供給管部9は、気体供給管部5の内部に気体供給管部5との相対位置関係が予め決められて配置されている。液体供給管部9の先端は、図2に示されるように、気体供給管部5の先端に対して所定の位置関係になるように固定されており、その先端に液体ノズル部19が設けられている。
【0017】
<気体ノズル部>
気体ノズル部13は流体供給管部11の先端に着脱可能に取り付けられるものである。本実施の形態の気体ノズル部13は、外筒25と、外筒25内に設置された内筒27とを備えた二重管構造になっている。
【0018】
〔外筒〕
外筒25は基端側から気体の供給を受けて先端側で気体を噴出する。外筒25の先端側は外筒中心に向けて徐々に縮径しており、略円錐台のような形状になっている。
外筒25の基端側の内面には雌ねじ29が形成されており、気体供給管部5の先端にねじ込んで取り付けられるようになっている。
なお、外筒25の気体供給管部5先端への接続方法はネジに限定するものではなく、フランジやクランプカップリングなどでも構わない。
【0019】
〔内筒〕
内筒27は外筒25内に外筒25と同軸方向でかつ外筒25の内壁と空間を介して配置されている。外筒25内壁と内筒27の外壁との間に形成される空間は、リング状流路31を形成している。
前述したように、外筒25の先端側は外筒中心に向けて徐々に縮径して略円錐台のような形状になっており、このためリング状流路31の断面積が下流側に向かって徐々に小さくなっている。このような形状にすることで、リング状流路31を通過する気体の流速が増すようになっており、これによって液体の微粒化をさらに促進している。
また、内筒27の内部は中空になっており、中央流路33を形成している。中央流路33には流路を遮るものは何らも配置されていない。
内筒27の内面基端側は、下流側に向かって縮径するように傾斜するテーパ部35となっている。内筒27の内面は上流部がテーパ部35になっているが、その下流側は平行部37になっている。
内筒27の外面形状は、図1乃至図7に平行部と縮径テーパ部で構成されるものが示されているが、特にこれに限定されるものではない。
【0020】
内筒27は外筒25内に固定されているが、その固定方法は特に問わず、例えばステー(図示なし)によって固定するようにすればよい。
【0021】
<液体ノズル部>
液体ノズル部19は、図4に示すように、液体供給管部9の先端を開口しただけのものでもよいし、あるいは図5に示すように、液体供給管部9の先端に多孔質体21を設置したものでもよいし、またあるいは図6に示すように、液体供給管部9の先端にメッシュリング23を設置したようなものでもよいし、またあるいは図7に示すように、液体供給管部9の先端部の内部に旋回を与える構造、例えば旋回羽根24を有するものでもよい。
なお、液体供給管部9の先端に多孔質体21、メッシュリング23、旋回羽24を設置する場合には、これらを着脱可能にしてもよい。
【0022】
上記のように構成された本実施の形態の流体微粒化ノズル装置1においては、流体供給管部11を主流管15内に挿入して固定し、外筒25を気体供給管部5の先端に取り付ける。液体ノズル部19が着脱可能な構造の場合には、外筒25を気体供給管部5に取り付ける前に液体ノズル部19を取り付けておく。外筒25を気体供給管部5の先端に取り付けることによって、液体供給管部9に設置された液体ノズル部19が内筒27におけるテーパ部35内の所定の位置に配置される。
そして、主流管15の外部において、気体供給管部5に外部からの気体配管3を接続し、また液体供給管部9にも外部からの液体配管7を接続する。
【0023】
以上のように、本実施の形態の流体微粒化ノズル装置1においては、先端に液体ノズル部19を有する液体供給管部9を気体供給管部5の内部に有する流体供給管部11を備え、気体供給管部5の先端に外筒25を連結することによって流体微粒化ノズル装置1が構成されるようにしたので、流体供給管部11を主流管15に挿入して外筒25を取り付ければ、ノズルの構成機器の位置関係が決定され、あとは主流管15の外部にて気体供給管部5への気体配管3の接続や液体供給管部9への液体配管7の接続を行えばよく、取り付けがきわめて容易になるという効果が得られる。
また、気体ノズル部13や液体ノズル部19を着脱可能とすることにより、閉塞時の交換やメンテナンスが容易になるという効果が得られる。
【0024】
なお、上記の説明では、流体供給管部11に気体ノズル部13を取り付ける態様として、気体供給管部5の先端に外筒25を固定する例を示したが、液体供給管部9に気体ノズル部13側を固定するような態様であってもよい。
【0025】
本実施の形態に係る流体微粒化ノズル装置1は、気体ノズル部13を流体供給管部11の先端に取り付けることによって、液体供給管部9に設置された液体ノズル部19と気体ノズル部13の内筒27との相対位置が決定さるようになっている。
そこで、以下においては、気体ノズル部13を流体供給管部11に設置した状態における液体ノズル部19と内筒27と相対位置関係について説明する。
【0026】
液体ノズル部19の先端の内筒27に対する位置関係は、液体ノズル部19が内筒27におけるテーパ部35内に内筒27と同軸上に配置されるという関係にあればよい。
液体ノズル部19を内筒27と同軸に配置することにより内筒27の中央流路内の流動状態が軸対称となり、均一な微粒化を行う上で望ましい。
また、図8に示すように、液体ノズル部19の外周と内筒27のテーパ部35とで挟まれた流路断面積(リング状の斜線部)が、内筒27における平行部37の流路断面積(楕円状の斜線部)と同程度になるように設定するのが望ましい。このように設定することで、液体ノズル部19から供給された液体と接する気体の流速が平行部11内流速と同程度に保たれ、気体による液体の同伴が確実になるからである。
なお、液体ノズル部19のテーパ部35に対する相対位置を可変にすることで位置決めを容易にすることができる。可変にする方法としては、例えば液体ノズル部19が取り付けられる液体供給管部9の先端部を例えばテレスコピック構造にして軸方向に可変になるようにして所定位置で固定できるようにしてもよいし、あるいは液体ノズル部19を液体供給管部9に挿入する形式にして、その挿入長さによって可変になるようにしてもよい。
【0027】
なお、内筒内へ導入される気体とリング状流路31へ導入される気体の流量比率は、中央流路33側の流路断面積と、リング状流路31側の流路断面積の比率によって規定される。したがって、この比率を微粒化に適したものに予め設定しておくことが望ましい。
【0028】
上記のように構成された本実施の形態に係る流体微粒化ノズル装置1の作用について説明する。
気体は気体供給管部5から供給され、液体は液体供給管部9を介して液体ノズル部19から供給される。
気体供給管部5から供給された気体は、内筒27と外筒25で形成される二重管構造の中央流路33とリング状流路31を所定の分配比率で流れる。この分配比率は、中央流路33側の流路断面積と、リング状流路31側の流路断面積の比率によって規定される。
【0029】
液体供給管部9を介して液体ノズル部19から供給された液体は、中央流路33を流れる気体と混相状態で流れる。このとき、気体流れの流速によって様々な流動形態をとる。内筒27の中央流路33を流れる混合流動状態が環状流もしくは環状噴霧流となっている状態が最も微粒化が良好、すなわち微粒液滴径が小さくなる。
ここで、中央流路33で発生する環状噴霧流について説明する。
【0030】
図9には、管内を流れる液相及び気送の流速と、流動様式との関係を示した線図(図9(a))と、該線図内に示された流動様式を模式的に示す図(図9(b))が示されている。ここに示された図は、書籍「気液二相流」(著者:植田辰洋、出版社:養賢堂)に記載のものである。
図9(a)に示されるように、管内を流れる液相及び気相はそれぞれの流速によってその流動様式が異なるが、気相の流速が約20m/s以上になることで、液相が管壁を環状に流れる環状流となり、さらに、環状になった液相の環内の液を巻き込んで噴霧状になった気相が流れる環状噴霧流(図9(b)右下の図参照)となる。
【0031】
本実施の形態では、液体ノズル部19から供給される液体が液体微粒化ノズル装置1を流れる気体と共に内筒27の中央流路33を高速で流れることで、内筒27内の流動様式が環状噴霧流となり、液体が微粒化されて気体に効果的に混合される。なお、環状流の状態でも液体の微粒化効果は得られるが、環状噴霧流とすることでその効果をより高めることができる。
【0032】
液体ノズル部19から供給された液体は、環状噴霧流となって内筒27の内壁面上に液膜を形成しながら流れる。内筒27の外周側にもリング状流路31が形成されており、このリング状流路31にも気体が流れている。内筒27の出口部分において、内筒27内壁面上に形成されている液膜は、内筒27の管軸方向に液膜状態を保ったまま噴出する。その液膜の内側には内筒27内を流れてきた気体流れが存在し、液膜の外側にはリング状流路31を流れてきた気体流れが存在する。すなわち、液膜は内外両面で気相と接し、液膜と気相の流速差に起因するせん断力によって液膜が引きちぎられ微粒化される。
【0033】
このように流体微粒化ノズル装置1における気体ノズル部13を二重管構造にしたことにより、上述したように、液膜状となった液体を気体の流れで挟み込むことによって液体の微粒化をより促進することができる。
内筒27内の気体流速が小さくなると、環状流や環状噴霧流状態を保てなくなり、波状流、スラグ流、気泡流などの流動状態に遷移する。その場合、内筒27内での微粒化特性が劣化するのみならず、内筒27出口で液膜を気体の流れで挟み込む状態が形成できないため、微粒化性能は急激に低下することになる。
【0034】
なお、環状流もしくは環状噴霧流となる範囲内であれば気相速度を小さくできる(気相側圧力が小さくてよい)。概略、気相見かけ流速が20m/s以上となるように維持すればよい。例えば、気相見かけ流速が30m/sの時の理論気相差圧は元圧の約0.5%であり、例えば元圧が大気圧(100kPa(abs))の空気の場合、ノズルにおける気相側の必要差圧は0.5kPaと非常に小さい値となる。
【0035】
液膜は気相流れで形成するので、従来例1のように液膜形成のために液相流路の断面積を絞る必要がないため、液相の流路は単純かつ断面積も大きくでき、液相側の圧力損失を小さく保てる。
【0036】
気相側流路となる中央流路33は概直管状であり、なんらの障害物もないので圧力損失が小さい。
図10はこの点を従来例と比較して示したものである。ノズル圧力損失と微粒化性能(微粒化径)の関係を示したものであり、横軸がノズル圧力損失、縦軸が微粒化径を示している。縦軸、横軸ともに無次元化している。
同じ径100の液滴を生成するのに、従来技術では圧力損失100超であるのに対して、本実施の形態のノズルでは、圧力損失10未満でよいことを示している。
このように圧力損失が極めて少ないことから、気相供給圧力が低いために従来の微粒化ノズルの適用が困難であるような場合でも、本ノズルでは適用が可能となる
例えば、気化した液化天然ガスに液化石油ガスを液体の状態で供給して増熱し、都市ガスとして送り出すシステムに適用した場合に、圧力損失を抑制しつつ微粒化を行うことができるため、送ガス圧力を損なうことなく確実な増熱効果を得ることが可能となる。
【0037】
また、液相流量が増加して中央流路33に占める液断面積が増大した場合でも、気相はリング状流路31へより多く流れるように自律的に分流し、圧力損失の過度の増大を防止できる。
【0038】
以上のように、本実施の形態によれば、広い液相流量範囲において、低い気相圧力で、液相・気相両方の圧力損失の増大を抑制しつつ良好な微粒化・混合性能を得ることができる。
【0039】
[実施の形態2]
本実施の形態は本発明の流体微粒化ノズル装置1を用いた微粒化装置の例を示したものであり、LNGを気化した天然ガスにLPGを添加することにより増熱して都市ガスを製造する際に用いられるものである。また、本実施の形態2においては、天然ガスが流れる主流管15にベンチュリ管39を設置してベンチュリ型微粒化装置41として構成したものである。
【0040】
本実施の形態に係るベンチュリ型微粒化装置41の基本構成は、図11に示すように、天然ガスが通流する主流管15に設けられたベンチュリ管39と、主流管15から分岐した分岐管43と、ベンチュリ管39内に液体微粒化ノズル装置1が配置されるように設置された流体微粒化ノズル装置1とを備え、流体微粒化ノズル装置1の気体供給管部5には分岐管43の先端が接続され、液体供給管部9にはLPGを供給するLPG供給管45が接続されている。
【0041】
本実施の形態のベンチュリ型微粒化装置41においては、分岐管43に、分岐管43を流れる天然ガスの流量を検知する流量検出器47を設けると共に主流管15におけるベンチュリ管39と分岐管43が分岐する分岐部の間に流量調整弁49を設け、流量検出器47の検知信号に基づいて流量調整弁49の開度を調整するようにしている。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0042】
分岐管43は、主流管15におけるベンチュリ管39の上流側から分岐して、その出口側が流体微粒化ノズル装置1の気体供給管部5に接続されている。
液体微粒化ノズル装置1の先端部は、ベンチュリ管のど部51もしくはベンチュリ管のど部51よりも上流側に配置されている。
【0043】
LPGの微粒化・混合性能に大きく影響するのは液体微粒化ノズル装置1における内筒27での流速である。なぜなら、内筒27に供給される天然ガスの流速が所定の流速になることで、内筒27内にLPGを巻き込んだ環状噴霧流が発生してLPGの微粒化・混合が行われるからである。
そのため、液体微粒化ノズル装置1における流路断面積は、都市ガスの最低流量運転のときにも、平行部37を流れる天然ガスの流速が、環状噴霧流発生に必要な流速を保つことができるような径にしておく。
例えば、都市ガス流量の変動範囲が30万Nm3/h〜6千Nm3/hの場合を想定すると、都市ガス流量が最低流量である6千Nm3/hのときには、天然ガスを分岐管43から概略全量流し、このときの平行部37の天然ガス流速が環状噴霧流発生に必要な流速を保つような管径とする。(このとき分岐管43を流れる天然ガス流量は、天然ガス流量として想定される最低流量となる。)
その上で、想定される最低流量分を常に分岐管43に流すようにすれば、制御が簡単で安定したLPGの微粒化・混合が実現できる。以下の説明において、分岐管43におけるLPGの微粒化・混合に必要な流速を与える最小流量を所定値Aという場合がある。
【0044】
環状噴霧流発生に必要とされる流速は、実施ケースにより異なるが、図9(a)にも示されるように概ね20m/s以上である。したがって、想定される都市ガスの最低流量の場合に流体微粒化ノズル装置1の内筒27の平行部37で前記流速が確保でき、かつ圧力損失が高くなり過ぎないような管路となるように分岐管43を設定すればよい。
なおベンチュリ管のど部51の径は、設計最大流量時の圧力損失が、その適用システムにとって過大とならないように設計しておく。
【0045】
<流量検知器>
流量検出器47は、分岐管43に設けられて分岐管43を流れる天然ガスの流量を検知するものである。
なお、流量検出器47に代えて差圧検知器を設け、分岐管43における圧力損失を検知することで、あらかじめ把握しておいた分岐管43における流量と圧力損失の関係から、分岐管43内を流れる天然ガスの流量を検知するようにしてもよい。
【0046】
<流量調整弁>
流量調整弁49は、主流管15におけるベンチュリ管39と分岐管43の分岐部との間に設けられて、流量検出器47の検知信号に基づいて主流管15を流れる天然ガス流量を調整し、これによって分岐管43を流れる天然ガス流量が予め定めた所定流量になるようにする。
なお、図9(a)に示されるように、環状噴霧流とするための気相流速は液相流速の影響を受ける。このため、LPG供給管45を流れるLPG量を検知する第2の流量検知器を設け、供給LPG量も加味して分岐管43を流れる天然ガスの所定量を算出・設定することも可能である。ただし、第2の流量検知器を必要とし、制御も複雑となるため、実用上はLPG供給量によらず、一定の天然ガス流量(平行部37で例えば20m/sとなる流量)を所定量とすることが簡便である。
【0047】
<動作説明>
次に上記のように構成された本実施の形態に係るベンチュリ型微粒化装置41の動作を説明する。
上流側から供給される天然ガスは、分岐部を通過する際に分岐管43にも流れ、分岐管43の出口側において流体微粒化ノズル装置1の気体供給管部5に流入する。気体供給管部5に流入した天然ガスは液体ノズル部19に供給されるLPGを巻き込んで内筒27の平行部37で環状噴霧流を発生し、LPGの微粒化・混合が行われ、ベンチュリ管のど部51に流入する。
他方、主流管15を流れる天然ガスもベンチュリ管のど部51に流入する。したがって、ベンチュリ管のど部51には、分岐管43を経由してLPGが添加された天然ガスと、主流管15からの天然ガスが流入し、ベンチュリ管のど部51を通過の際、さらにLPGの混合が促進される。
【0048】
都市ガスの流量はその需要量に応じて成り行きで増減する。例えば、都市ガス需要量が減少し、流路を流れる流体の流量が減少すると、分岐管43及び主流管15を流れるトータルの天然ガスの流量が減少する。分岐管43を流れる天然ガス流量が所定値Aよりも減少すると平行部37での流速が減少し、環状噴霧流が形成されなくなり、LPGの微粒化・混合が不十分になることが懸念される。
そこで、流量検出器47で検知される流量が所定値Aよりも減少したら、流量調整弁49の開度を小さくすることによって分岐管43を流れる天然ガス流量が所定値Aを維持するようにする。
分岐管43を流れる天然ガス流量を所定値A以上に維持することで、平行部37における流速が維持されLPGの微粒化・混合効果を確保することができる。
【0049】
逆に、都市ガス需要量が増加し、流路を流れる流体の流量が増加すると、分岐管43及び主流管15を流れる天然ガスの流量が増加する。分岐管43を流れる天然ガス流量が所定量よりも増加すると圧力損失が大きくなる。
そこで、流量検出器47で検知される流量が所定値Bよりも増加したら、流量調整弁49の開度を大きくして主流管15を流れる量を増やし、分岐管43を流れる天然ガス流量が所定値Bになるようにする。ここで、所定値B≧所定値Aの関係にある。
分岐管43を流れる天然ガス流量を所定値A以上B以下にすることで、分岐管43における流速が所定の範囲に維持されLPGの微粒化・混合を十分にすることができると共に圧力損失の過大な増大を防止することができる。
【0050】
例えば、最も単純な制御方法としては、所定値A=所定値B=[都市ガス最低流量時の天然ガス流量(天然ガス最低流量)]とする場合である。
前述した例と同様、都市ガス流量の変動範囲が30万Nm3/h〜6千Nm3/hの場合を想定すると、都市ガス流量が最低流量である6千Nm3/hのときには、天然ガスを分岐管43から概略全量、すなわち所定値A(=所定値B)の流量を流す。
都市ガス流量が6千Nm3/hより大きくなった場合には、分岐管43に設置された流量検出器47で計測される流量が所定値Aを保つように流量調整弁49の開度を大きくしていき、天然ガス流量増加分を主流管15から流入させるようにする。すなわち、都市ガス流量が変動しても、分岐管43には常に所定値Aの天然ガス流量が流通するようにする。こうすることにより、分岐管43へは常に微粒化・混合に必要な流量が供給されるようになる。また主流管15からの速度成分は、ベンチュリ管のど部51における流速をさらに増大させる方向に寄与する。
なお上記において、所定値Aは[都市ガス最低流量時の天然ガス流量(天然ガス最低流量)]であるが、簡易的には[都市ガス最低流量]としてもよい。
【0051】
以上のように、本実施の形態によれば、流路を流れる流量が大きく変化しても内筒27における平行部37の天然ガス流速を所定の流速に維持することができ、LPGの微粒化・混合効果が得られると共に過度に圧力損失が大きくなりすぎないようにすることができる。
【0052】
ここで、所定値Aの天然ガス流量を分岐管43側に流通させるためには、ノズルを含めた分岐管43側の圧力損失と同等以上の圧力損失となるように、流量調節弁49を絞り込む必要がある。そのため、分岐管43先端に配設された流体微粒化ノズル装置1の圧力損失が大きいと、ベンチュリ型微粒化装置41全体としての圧力損失が大きくなり、都市ガスとして送り出すためのガス圧力を維持できなくなる。
本発明のベンチュリ型微粒化装置41、本発明の流体微粒化ノズル装置1を用いることにより圧力損失を抑制しつつ微粒化を行うことができるため、送ガス圧力を損なうことなく確実な増熱効果を得ることが可能となる。
【0053】
[実施の形態3]
実施の形態2においては、本発明の流体微粒化ノズル装置1を用いた流体微粒化装置の例として、主流管15にベンチュリ管39を設置して、そのベンチュリ管39内に流体微粒化ノズル装置1を配置した例を示した。
しかし、本発明の流体微粒化装置は、ベンチュリ管39内に液体微粒化ノズル装置1を配置するものに限られず、気体供給管53に直接流体微粒化ノズル装置1を取り付けるようにしてもよい。
【0054】
図12は本実施の形態の流体微粒化装置55の説明図であり、図1と同一部分には同一の符号を付してある。本実施の形態の流体微粒化装置55は、気体が流れる気体供給管53の端部に設置した流体微粒化ノズル装置1と、流体微粒化ノズル装置1に供給される気体の流量を検出する流量検出装置57と、流量検出装置57の検出値に基づいて液体微粒化ノズル装置1内を流れる気体の流速を、気体が液体を巻き込んで環状噴霧流になるのに必要な流速になるように調整する流量調整弁59とを備えてなるものである。
【0055】
なお、上記の実施の形態においては、気体ノズル部13の態様として外筒25と内筒27からなる二重管構造とし、内筒27の上流端側に液体ノズル部19が配置されるものを示したが、本発明の気体ノズル部及び液体ノズル部の態様としてはこれに限られるものではない。
例えば図13に示すように、気体ノズル部を、先端部に細管部を有し気体供給管部5の先端に着脱可能に取り付けられる気体ノズル部61とし、液体ノズル部を、液体供給管部9の先端に着脱可能に取り付けられると共に先端部が気体ノズル部61の吐出口近傍に配置される液体ノズル部63としてもよい。
なお、図13の例では流体供給管部11の態様として気体供給管部5の外面に液体供給管部9を沿わせたものが示されている。
【0056】
また、気体ノズル部の他の態様として、図14に示すように、気体供給管5を延長した直管状の気体ノズル部65とし、液体ノズル部の態様として液体供給管部9の先端に着脱可能に取り付けられると共に、先広がりでかつ周壁に多孔が設けられた液体ノズル部67としてもよい。なお、本例では液体ノズル部67を液体供給管部9の先端に取り付けることによって流体微粒化ノズルが構成されるようになっている。
【符号の説明】
【0057】
1 流体微粒化ノズル装置
3 気体配管
5 気体供給管部
7 液体配管
9 液体供給管部
11 流体供給管部
13 気体ノズル部
15 主流管
17 雄ねじ
19 液体ノズル部
21 多孔質体
23 メッシュリング
24 旋回羽根
25 外筒
27 内筒
29 雌ねじ
31 リング状流路
33 中央流路
35 テーパ部
37 平行部
39 ベンチュリ管
41 ベンチュリ型微粒化装置
43 分岐管
45 LPG供給管
47 流量検出器
49 流量調整弁
51 ベンチュリ管のど部
53 気体供給管
55 流体微粒化装置
57 流量検出装置
59 流量調整弁
61 気体ノズル部
63 液体ノズル部
65 気体ノズル部
67 液体ノズル部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体の供給を受ける気体ノズル部と、液体の供給を受ける液体ノズル部とを有し、前記液体を前記気体によって微粒化する流体微粒化ノズル装置であって、
気体配管が接続される気体供給管部と液体配管が接続される液体供給管部とが一体化されてなる流体供給管部を備え、該流体供給管部の先端に前記気体ノズル部および/または前記液体ノズル部が着脱可能に取り付けられてなることを特徴とする流体微粒化ノズル装置。
【請求項2】
前記気体ノズル部は、外筒と、該外筒内に該外筒と同軸方向でかつ外筒内壁と空間を介して配置される内筒とを備えてなり、
前記気体ノズル部を前記流体給管部に取り付けた状態で前記液体ノズル部が前記内筒の上流端側に配置されることを特徴とする請求項1記載の流体微粒化ノズル装置。
【請求項3】
前記液体ノズル部の前記内筒の上流端に対する相対位置が可変になっていることを特徴とする請求項2記載の流体微粒化ノズル装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の流体微粒化ノズル装置を用いた流体微粒化装置であって、前記流体微粒化ノズル装置に供給される気体の流量を検出する流量検出装置と、該流量検出装置の検出値に基づいて前記流体微粒化ノズル装置内を流れる気体の流速を調整する流量調整弁とを備えたことを特徴とする流体微粒化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−206074(P2012−206074A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75543(P2011−75543)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【Fターム(参考)】