説明

流体機械の少なくとも1個の翼のTBC被覆の層厚を検出する方法と、この方法を実施するためのTBC被覆層厚測定装置と、この方法およびTBC被覆層厚測定装置の利用

本発明は、流体機械(1)の少なくとも1個の翼(4、11)のTBC被覆(12)の層厚を検出する方法に関する。その場合、少なくとも1つの電磁波が、少なくとも1個の翼(4、11)の表面に送信され、その少なくとも1つの電磁波が少なくとも1個の翼(4、11)で少なくとも部分的に反射され、少なくとも1つの電磁波の反射部分が受信され、再処理される。さらに、少なくとも1つの電磁波が、TBC被覆の層厚に合わされた周波数で送信され、その場合、少なくとも1つの送信電磁波が反射時に位相変化を生じ、その少なくとも1つの送信電磁波の位相が、少なくとも1つの受信電磁波の位相と比較され、その位相比較によって、TBC被覆の層厚が検出される。また本発明は、この方法を実施するためのTBC被覆層厚測定装置、並びにこの方法およびTBC被覆層厚測定装置の利用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機械の少なくとも1個の動翼のTBC被覆の層厚を検出する方法に関する。本発明はまた、流体機械の少なくとも1個の静翼のTBC被覆の層厚を検出する方法に関する。さらに本発明は、この方法を実施するためのTBC被覆層厚測定装置に関し、また、この方法およびTBC被覆層厚測定装置の利用に関する。
【0002】
例えば蒸気タービンあるいはガスタービンのような流体機械は、気体流に含まれる熱エネルギを機械エネルギに、特に回転運動に転換するために、工業において熱機関として利用されている。
【0003】
ガスタービンにおいてはエネルギ利用に関してできるだけ高い効率を得るために、燃焼器からガスタービンの流路へのガス入口温度はできるだけ高く選定されている。そのガス入口温度は従来において例えば1200℃である。
【0004】
タービンの流路内に配置された翼が熱的負荷に耐えるようにするために、その翼には表面被覆が、即ち、いわゆるTBC被覆(遮熱コーティング=Thermal-Barrier-Coating)が設けられている。しかし、翼のかかる被覆は、その被覆が翼の運転時間の経過につれて損耗されるために老化し、そのために、層厚が次第に減少する。TBC被覆が欠損した場合、翼は極めて高い熱的負荷を受け、損傷し、その結果、タービンの出力が低下し、あるいは最終的にタービンが破損してしまうことがある。
【0005】
国際公開第2004/065918号パンフレットに、流体機械の翼のTBC被覆の品質を検出する方法並びにこの方法を実施するための装置が記載されている。その場合、電磁波が翼の部位に送信され、翼で反射された電磁波が受信され、評価される。その評価の際、受信電磁波の強さが求められ、それにより、翼の表面品質が検出される。その方法によって、被覆の実在が良好に確認できる。しかし、特に室温では電磁波の振幅減衰が系統ノイズに中にほとんど埋没するので、層厚についての正確な情報を得ることができない。
【0006】
本発明の課題は、流体機械の翼のTBC被覆の層厚が特に運転中でもできるだけ正確に検出できる方法、この方法を実施するためのTBC被覆層厚測定装置、並びにこの方法およびTBC被覆層厚測定装置の利用を提供することにある。
【0007】
この課題を解決するために、独立請求項1あるいは独立請求項2に記載の方法を提案する。
【0008】
本発明に基づく方法は、
− 少なくとも1つの電磁波が少なくとも1個の動翼の表面に送信され、
− 少なくとも1つの電磁波が少なくとも1個の動翼により少なくとも部分的に反射され 、
− 少なくとも1つの電磁波の反射部分が受信され、再処理される、
流体機械の少なくとも1個の動翼のTBC被覆の層厚を検出する方法に関する。
【0009】
この本発明に基づく方法は、
− 少なくとも1つの電磁波が、TBC被覆の層厚に合わされた周波数で送信され、
− 少なくとも1つの送信電磁波が反射時に位相変化を生じ、その少なくとも1つの送信 電磁波の位相が、少なくとも1つの受信電磁波の位相と比較され、
− その位相比較によって、TBC被覆の層厚が検出される
ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に基づく方法は、
− 少なくとも1つの電磁波が少なくとも1個の静翼の表面に送信され、
− 少なくとも1つの電磁波が少なくとも1個の静翼により少なくとも部分的に反射され 、
− 少なくとも1つの電磁波の反射部分が受信され、再処理される、
流体機械の少なくとも1個の静翼のTBC被覆の層厚を検出する方法に関する。
【0011】
この本発明に基づく方法は、
− 少なくとも1つの電磁波が、TBC被覆の層厚に合わされた周波数で送信され、
− 少なくとも1つの送信電磁波が反射時に位相変化を生じ、その少なくとも1つの送信 電磁波の位相が、少なくとも1つの受信電磁波の位相と比較され、
− その位相比較によって、TBC被覆の層厚が検出される、
ことを特徴とする。
【0012】
その場合、送信電磁波と反射電磁波との位相差が、反射電磁波部分を評価することによって検出されるTBC被覆の層厚についての情報を含んでいる、ことを利用している。その位相差は、TBC被覆の層厚に左右され、詳しくは、TBC被覆が存在しない場合には0°であり、層厚の増大につれて連続して上昇する。
【0013】
請求項1あるいは請求項2の従属請求項に、本発明に基づく方法の有利な実施態様が記載されている。
【0014】
少なくとも1個の動翼のTBC被覆の層厚並びに少なくとも1個の静翼のTBC被覆の層厚が検出されることが特に有利である。これにより、流体機械の特に負荷を受ける構成要素の包括的監視が可能となる。
【0015】
位相変化の値から翼のTBC被覆の層厚が検出されることも有利である。この場合、所定の周波数ないし波長の少なくとも1つの電磁波が送信される。特に波長の[(2n+1)/4](n=0、1、2、・・・)倍が層厚の±50%、有利には±20%の大きさにあり、これにより、特に大きな位相勾配、即ち、位相変化と層厚変化との大きな比が存在する。これにより、小さな振幅減衰の場合でも、層厚を検出することができる。TBC被覆の層厚が低下するほど、位相変化、即ち、送信電磁波と反射電磁波との位相差が小さくなる。
【0016】
また、少なくとも1つの共振周波数が求められ、その共振周波数における位相変化が、(360°・n+180°)(n=0、1、2、・・・)の値に相当し、少なくとも1つの共振周波数の値から翼のTBC被覆の層厚が検出されることが有利である。(360°・n+180°)の位相変化にそれぞれ共振周波数が割り当てられ、共振周波数が層厚に関係しているので、少なくとも1つの共振周波数を決定すれば、(360°・n+180°)の位相変化を介して所望の層厚情報が得られる。つまり、それぞれの共振周波数において、送信電磁波の割り当てられた波長の(4/(2n+1))倍が、TBC被覆の層厚と同じ大きさをしている。
【0017】
その場合、少なくとも1つの電磁波を発生するための少なくとも1つの手段が、少なくとも1つの反射電磁波を受信するために利用されることが有利である。これにより得られた場所的節約は、流体機械の種々の位置への複数の送受信複合手段の設置を可能とする。そのようにして、例えば流体機械の円周に分布して配置された電磁波送受信複合手段が利用でき、その場合の配置構造は必要に応じて設計できる。
【0018】
少なくとも1つの電磁波として、30GHz〜130GHz、特に50GHz〜90GHzの周波数域における少なくとも1つのミリ波が利用されることが有利である。従って、この周波数領域の電磁波の波長は、TBC被覆の層厚の代表的大きさにあり、これにより、反射時における特に際立った位相変化が保証される。
【0019】
TBC被覆の層厚の検出が流体機械の運転中に行われることが有利である。これによって、TBC被覆に危険な減少が現れた際のリアルタイム近い処置を可能とするオンライン層厚測定が可能となる。そのようにして、TBC被覆の念のための点検や損傷翼についての修復処置に起因する流体機械の停止時間が回避できる。
【0020】
本発明の課題を解決するために、請求項9に記載のTBC被覆層厚測定装置を提供する。
【0021】
それに応じて、本発明に基づいて、
− 電気振動を発生するための少なくとも1つの手段と、
− その振動から電磁波を発生するための少なくとも1つの手段と、
− 反射電磁波を受信するための少なくとも1つの手段と、
− 受信電磁波を評価するための評価装置と、
を備えた本発明に基づく方法を実施するためのTBC被覆層厚測定装置において、
− 評価装置が、少なくとも1つの送信電磁波の位相を少なくとも1つの受信電磁波の位相と比較するための手段を有している、ことを提案する。
【0022】
本発明に基づくTBC被覆層厚測定装置において、本発明に基づく方法に対して上述した利点が生ずる。
【0023】
本発明に基づくTBC被覆層厚測定装置の有利な実施態様は、請求項9の従属請求項に記載されている。
【0024】
少なくとも1つの電磁波を発生するための少なくとも1つの手段および少なくとも1つの反射電磁波を受信するための少なくとも1つの手段が、流体機械の流路内に配置されていると有利である。それらの手段は、電磁ミリ波を発生するためおよび送信ないし受信するために適したアンテナで形成される。電気振動を発生するための少なくとも1つの手段は、例えば電子発振器で形成され、この電子発振器は少なくとも1つの電磁波を発生するためのアンテナに有効に作用するように接続されている。電磁波を受信するための手段は、好適には、その受信手段から発せられる信号から翼のTBC被覆の層厚を検出する評価装置に有効に作用するように接続されている。さらに、少なくとも1つの電磁波を発生するための少なくとも1つの手段および少なくとも1つの反射電磁波を受信するための少なくとも1つの手段が、流体機械の流路の外側に配置されることも考えられる。その場合、発生された少なくとも1つの電磁波は、流体機械の流路内の相応した位置に配置された少なくとも1つの導波管を介して流路の中に送信される。翼で反射された少なくとも1つの電磁波は、同様に少なくとも1つの導波管を介して少なくとも1つの受信手段に導かれる。
【0025】
その場合、少なくとも1つの電磁波が、少なくとも1個のアンテナにより指向性をもって、および/又は集束可能に送信されることが有利である。これにより、的確な層厚測定が保証される。また、アンテナの並進および/又は旋回が可能であるようにアンテナが形成されていることによって、翼における層厚測定の位置的な解析が可能となる。
【0026】
さらに、電磁波を発生するための少なくとも1つの手段が、電磁波を送信並びに発信するためにも適用されることが有利である。このようにして、構成要素の数が一層減少される。そのようにして、例えば電磁波を発生するための少なくとも1つの手段が、連結手段を介して、振動を発生するための手段に有効に作用するように接続されている。受信された電磁波に起因する信号は連結手段を介して評価装置に導かれる。複数の連結手段および複数のアンテナを利用することもでき、それらは例えば対応した複数の評価装置に並列接続されるか、あるいは例えば1個の評価装置に時分割多重方式で接続される。
【0027】
好適には、流体機械は蒸気タービンあるいはガスタービンである。大形機械分野において、本発明に基づくTBC被覆層厚測定装置によって、ガスタービン翼のTBC被覆の単純で動作確実で正確な層厚測定が達成され、これによって、より効率の良い運転が保証され、特に損傷したTBC被覆と翼についての点検および修復のための不経済な停止時間を一層減少することができる。そのようにして例えば、ガスタービンが装備されたエネルギ供給所の稼働率の向上が達成される。また、本発明に基づく装置は、流体機械の流路における蒸気タービンあるいはガスタービンへの影響が十分小さくされるように設置することができる。
【0028】
さらに本発明によって、本発明に基づく方法を、蒸気タービンあるいはガスタービンにおけるTBC被覆の層厚を検出するために利用することを提案する。
【0029】
また本発明によって、本発明に基づくTBC被覆層厚測定装置を流体機械の流路内で利用することを提案し、その場合、電磁波を発生するための少なくとも1つの手段は、流体機械の流路内に配置される。
【0030】
流体機械として蒸気タービンあるいはガスタービンが利用されることが有利である。
【0031】
以下図を参照して本発明の有利な実施例を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。図は理解し易くするために実寸通りに示されておらず、特徴部分が概略的に示されている。なお図1〜図9において同一部分には同一符号が付されている。
【0032】
図1に、約1200℃の高い入口ガス温度に対して設計された従来におけるガスタービン1が示されている。ガスタービン1は車室2内に回転可能に支持されたロータ軸3に配置された動翼4を有している。さらに、車室2に固く結合された静翼11が設けられている(図4、図5参照)。動翼4および静翼11はそれぞれ、ガスタービン1の流路6内における物理的負荷に耐えるために、TBC被覆12が設けられている。このTBC被覆(遮熱コーティング=Thermal-Barrier-Coating)12は、例えば「イットリウム添加で安定化された酸化ジルコニウム=Yttrium stabilisiertes Zirkoniumoxid」(いわゆるYSZ)である。
【0033】
図2に示されているように、タービン1には本発明に基づくTBC被覆層厚測定装置が装備され、この層厚測定装置はアンテナ8、特にガスタービン1の流路6の中に突出するミリ波に対して設計されたアンテナを有している。アンテナ8は特に、30GHz〜130GHzの周波数特に50GHz〜90GHzの周波数の電磁波に対して設計され、このアンテナ8は、被検査翼4、11の領域に、特に2個の翼列間に配置されている。アンテナ8は電磁波を送信する手段として用いられ、また、電磁波を受信する手段としても設置することができる。アンテナ8はサーキュレータ16に通信技術的に接続されている。本発明に基づく装置はさらに高周波発生器14を有し、この高周波発生器14は増幅器15を介してサーキュレータ16に作用的に接続されている。サーキュレータ16は受信増幅器17に接続され、この受信増幅器17は評価装置19に連結されている。また評価装置19自体は高周波発生器14に接続されている。
【0034】
図3における動翼4および静翼11のTBC被覆12の層厚を検出する本発明に基づく方法は、詳しくは、次のように行われる。
【0035】
電子高周波発生器14は、30GHz〜130GHz特に50GHz〜90GHzの範囲における、予め設定できる一定周波数の高周波を発生する。この高周波数は増幅器15に供給され、この増幅器15自体は増強された高周波をサーキュレータ16を介してアンテナ8に供給する。アンテナ8は供給された高周波エネルギから少なくとも1つの相応した電磁波31を発生し、この電磁波31をその放射特性に応じて、好適には指向性をもち特に集束して送信する。それに対応した少なくとも1個の翼4、11は、少なくとも1つの送信電磁波31の一部分32を特に同じアンテナ8に向けて反射する。その反射された電磁波32は、アンテナ8を介して再び電気信号に変換され、この電気信号はサーキュレータ16に導かれる。そして、サーキュレータ16は受信信号を発信信号から分離し、これを受信増幅器17に導く。その信号は受信増幅器17から評価装置19に達する。
【0036】
図6には線図G1において、TBC被覆12の一定した層厚における周波数に依存したスペクトル強度分布Sと、これに相応した反射電磁波32の位相の周波数特性ψが示されている。破線縦座標は反射電磁波32の強度Iを表し、実線縦座標は送信電磁波31と反射電磁波32との位相差Δψを表している。横座標に周波数が記されている。描かれた強度分布は特定の周波数fr、いわゆる共振周波数で最小値を有する。この共振周波数frにおいて、TBC被覆12における電磁波31、32の波長の1/4が、TBC被覆12の層厚に相当している。この場合、TBC被覆12の表面およびTBC被覆12とその後面に位置する金属との境界面でそれぞれ反射された送信電磁波31は、相対的に少なくとも一部が相殺されている。位相特性ψは低い周波数で0°の位相差Δψを示し、その位相差Δψは高い周波数に向けて次第に増大している。位相特性ψは図6に描かれた共振周波数frで最大勾配を有し、その位相差Δψの値は180°に相当している。
【0037】
図6に描かれた共振周波数frのほかに、描かれていない他の共振周波数frn(n=0、1、2、・・・)が存在し、その場合、fr=fr0である。そのようにして、各共振周波数frnにおいて、表面被覆における電磁波31、32の波長の[(2n+1)/4]倍がTBC被覆12の層厚に相当している。その都度の共振周波数frnにおける位相差Δψはこれに相応してΔψ=(360°・n+180°)で表される。
【0038】
図7に異なった線図G2で、3つの異なった周波数f1(90GHz)、f2(70GHz)、f3(50GHz)の反射電磁波32の位相特性ψ1、ψ2、ψ3が記されている。その縦座標は送信電磁波31と反射電磁波32との位相差Δψを表し、横座標にTBC被覆12の層厚が記されている。TBC被覆12の欠損時並びにTBC被覆12の層厚が薄い場合、3つすべての周波数f1、f2、f3において位相差Δψは0である。層厚が増大すると、位相差Δψは描かれた線図G2において360°の値まで増大し、その場合、すべての位相特性ψ1、ψ2、ψ3における最大勾配は位相差Δψが180°のところに存る。ここでは、上述の共振状態、例としてn=0、が当てはまる。180°の位相差Δψにおいて、表面被覆12の層厚はTBC被覆12における電磁波31、32の波長の1/4に相当する。そして、電磁波32の周波数f1、f2、f3は相応した層厚における共振周波数と同じとなる。従って、cをTBC被覆12における電磁波31、32の伝搬速度とした場合、その都度の層厚は、c/(4・fi)(i=1、2、3、)となる。
【0039】
評価装置19によってまず、送信電磁波31と受信電磁波32との位相差Δψが求められる。次いでその位相差Δψが、例えば図7の線図G2で位相特性を表している予め得られた校正曲線と比較され、それにより、TBC被覆12の層厚を検出する。
【0040】
図7からさらに、低周波数に対して位相特性ψ1、ψ2、ψ3および従って共振周波数は周波数が低くなると大きな層厚に向かってずれることが理解できる。
【0041】
図8に第3の線図G3で、共振周波数frnないし逆共振周波数frn-1と層厚との関係が示されている。その縦座標は層厚を表し、横座標に逆共振周波数frn-1が記されている。ここから、層厚と逆共振周波数frn-1との関係が直線Lによって決定されることが理解できる。共振周波数frnが小さくなるほど、ないし逆共振周波数frn-1が大きくなるほど、TBC被覆12の層厚が大きくなる。
【0042】
これによって、電磁波31がアンテナ8から、30GHz〜130GHz、好適には50GHz〜90GHzの範囲にある広い周波数帯域で送信され、少なくとも1個の翼4、11における反射後に特に再びアンテナ8により受信されることも実現できる。その電磁波は電気信号に変換され、サーキュレータ16および受信増幅器17を介して評価装置19に導かれる。この評価装置19によって、送信電磁波31と反射電磁波32との位相差Δψが求められ、位相差Δψ=(360°・n+180°)、特にn=0の位相差Δψが識別される。その後、この周波数frnの逆値が、図8の線図G3で層厚と逆共振周波数frn-1との関係を表している予め得られた校正曲線と比較され、これにより、TBC被覆12の層厚が検出される。「第1」共振周波数fr0はΔψ=180°の位相差に割り当てられている。しかし、より大きな位相差Δψ=(360°・n+180°)に位置するn>0の高次の共振周波数frnを識別し、相応して評価することも考えられる。
【0043】
求められたTBC被覆12の層厚は、表示装置ないし報知装置(図示せず)を介して監視所に報知され、ないしは監視センターに送られる。評価装置は、設定可能な層厚しきい値の下回りを検出できる比較機能を備えることもできる。即ち、例えばしきい値を下回った際、例えばタービン遮断のような適当な防護処置を開始するために、報知信号を自動的に発信することができる。
【0044】
図9に、それぞれに割り当てられた放射特性810、820、830の種々のアンテナ81、82、83の好適な実施形態および配置構造が示されている。それらのアンテナ81、82、83は流路6内において、検査すべき動翼4および/又は静翼11の領域で翼列間に配置されている。ロッドアンテナとして、あるいは同軸アンテナ、特に同軸に形成されたダイポールアンテナとして形成されることが適している。例えばホーンアンテナのような他のアンテナ構造も考えられる。放射特性はアンテナ81、83の場合のように対称に形成できるが、アンテナ82の場合のように非対称に形成することもできる。広域放射特性のアンテナのほかに、電磁波31に指向性をもたせ、さらに集束して放射するアンテナも利用できる。また、特にいわゆるホーンアンテナが利用される。
【0045】
本発明は上述の実施例に限定されない。例えば測定の冗長性あるいは高い精度を得るために、送信用および/又は受信用に多くのアンテナを利用することも本発明に属する。
【0046】
さらに、本発明において、上述の翼4、11におけるTBC被覆12の層厚を同時に測定することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】従来におけるガスタービンの部分破断斜視図。
【図2】本発明に基づく装置を備えた図1の部分拡大図。
【図3】本発明に基づく方法を実施する方式の原理的ブロック図。
【図4】図1のガスタービンの動翼の斜視図。
【図5】図1のガスタービンの静翼の斜視図。
【図6】TBC被覆が同じ層厚をしている場合の電磁波周波数に関するスペクトル強度分布および反射電磁波の位相特性の線図。
【図7】TBC被覆の層厚に関する種々の電磁波周波数の反射電磁波の3つの位相特性の線図。
【図8】逆共振周波数とTBC被覆の層厚との関係の線図。
【図9】静翼および/又は動翼を検査するためのアンテナの配置構造の概略図。
【符号の説明】
【0048】
1 流体機械
4 動翼
6 流路
8 アンテナ
11 静翼
12 TBC被覆
19 評価装置
31 送信電磁波
32 反射電磁波
81 アンテナ
82 アンテナ
83 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 少なくとも1つの電磁波(31)が少なくとも1個の動翼(4)の表面に送信され、
− 少なくとも1つの電磁波(31)が少なくとも1個の動翼(4)により少なくとも部 分的に反射され、
− 少なくとも1つの電磁波(31)の反射部分(32)が受信され、再処理される、
流体機械(1)の少なくとも1個の動翼(4)のTBC被覆(12)の層厚を検出する方法において、
− 少なくとも1つの電磁波(31)が、TBC被覆(12)の層厚に合わされた周波数で 送信され、
− 少なくとも1つの送信電磁波(31)が反射時に位相変化を生じ、その少なくとも1 つの送信電磁波(31)の位相が、少なくとも1つの受信電磁波(32)の位相と比較 され、
− その位相比較によって、TBC被覆(12)の層厚が検出される
ことを特徴とする流体機械(1)の少なくとも1個の動翼(4)のTBC被覆(12)の層厚を検出する方法。
【請求項2】
− 少なくとも1つの電磁波(31)が少なくとも1個の静翼(11)の表面に送信され、
− 少なくとも1つの電磁波(31)が少なくとも1個の静翼(11)により少なくとも 部分的に反射され、
− 少なくとも1つの電磁波(31)の反射部分(32)が受信され、再処理される、
流体機械(1)の少なくとも1個の静翼(11)のTBC被覆(12)の層厚を検出する方法において、
− 少なくとも1つの電磁波(31)が、TBC被覆(12)の層厚に合わされた周波数で 送信され、
− 少なくとも1つの送信電磁波(31)が反射時に位相変化を生じ、その少なくとも1 つの送信電磁波(31)の位相が、少なくとも1つの受信電磁波(32)の位相と比較 され、
− その位相比較によって、TBC被覆(12)の層厚が検出される
ことを特徴とする流体機械(1)の少なくとも1個の静翼(11)のTBC被覆(12)の層厚を検出する方法。
【請求項3】
少なくとも1個の動翼(4)のTBC被覆(12)の層厚並びに少なくとも1個の静翼(11)のTBC被覆(12)の層厚が検出されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
位相変化の値から、翼(4、11)のTBC被覆(12)の層厚が検出されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの電磁波(31、32)がTBC被覆(12)の内部で、TBC被覆(12)の層厚の(4/(2n+1))(n=0、1、2、・・・)倍の±50%、特に±20%の大きさの波長を有していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの共振周波数が求められ、その共振周波数における位相変化が、(360°・n+180°)(n=0、1、2、・・・)の値に相当し、少なくとも1つの共振周波数の値から、翼(4、11)のTBC被覆(12)の層厚が検出されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの電磁波(31)として、30GHz〜130GHz、特に50GHz〜90GHzの周波数域における少なくとも1つのミリ波が利用されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
流体機械の運転中にTBC被覆(12)の層厚が検出されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
− 電気振動を発生するための少なくとも1つの手段(14)と、
− その振動から電磁波(31)を発生するための少なくとも1つの手段(8、81、8 2、83)と、
− 反射電磁波(32)を受信するための少なくとも1つの手段(8、81、82、83 )と、
− 受信電磁波(32)を評価するための評価装置(19)と、
を備えた請求項1ないし8のいずれか1つに記載の方法を実施するためのTBC被覆層厚測定装置において、
− 評価装置(19)が、少なくとも1つの送信電磁波(31)の位相を少なくとも1つの受信電磁波(32)の位相と比較するための手段を有している
ことを特徴とするTBC被覆層厚測定装置。
【請求項10】
電磁波(31)を発生するための少なくとも1つの手段(8、81、82、83)が、ミリ波に対して利用される少なくとも1個のアンテナであることを特徴とする請求項9に記載のTBC被覆層厚測定装置。
【請求項11】
少なくとも1つの電磁波(31)が、少なくとも1個のアンテナ(8、81、82、83)により指向性をもって送信されることを特徴とする請求項9又は10に記載のTBC被覆層厚測定装置。
【請求項12】
少なくとも1つの電磁波(31)が、少なくとも1個のアンテナ(8、81、82、83)により集束可能に送信されることを特徴とする請求項9ないし11のいずれか1つに記載のTBC被覆層厚測定装置。
【請求項13】
電磁波(31)を発生するための少なくとも1つの手段(8、81、82、83)が、電磁波(31、32)を送信並びに発信するために適用されることを特徴とする請求項9ないし12のいずれか1つに記載のTBC被覆層厚測定装置。
【請求項14】
蒸気タービンあるいはガスタービン(1)においてTBC被覆(12)の層厚を検出するために利用されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の方法の利用。
【請求項15】
電磁波(31)を発生するための少なくとも1つの手段(8、81、82、83)が、流体機械(1)の流路(6)内に配置され、TBC被覆層厚測定装置が流体機械(1)の流路(6)内で利用されることを特徴とする請求項9ないし13のいずれか1つに記載のTBC被覆層厚測定装置の利用。
【請求項16】
流体機械(1)が蒸気タービンあるいはガスタービン(1)であることを特徴とする請求項15に記載のTBC被覆層厚測定装置の利用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−505089(P2009−505089A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526470(P2008−526470)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064727
【国際公開番号】WO2007/020170
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】