説明

流体混合器とこれを用いた熱交換システム

【課題】簡単な構造でありながら、均一な混合が可能で、かつ圧力損失を抑制できる流体混合器を提供する。
【解決手段】内側で排ガスG4(第1の流体)と加温用ガスG5(第2の流体)を混合する中空筒状の本体41と、本体41の上流側端部に設けられて排ガスG4を流入させる第1の流入口43と、本体41の内側に配置されて排ガスG4の流れる方向に沿った軸心C1を有する中空筒状の混合促進体38と、本体41の周壁に設けられて混合促進体38の外周面38aに向かって加温用ガスG5を流入させる第2の流入口45とを備え、排ガスG4が混合促進体38の外側と内側を流れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、高温流体と低温流体のような異なる2つの流体の流れを均一に混合する流体混合器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の流体を混合する混合器では、混合後の温度分布やガス濃度分布が均一であることが望まれる。例えば、混合器の下流にタービンや熱交換器が配置される場合では、混合ガスの温度分布が均一でないと、タービン翼や伝熱管に不均一な熱ひずみに起因した応力が生じ、その結果、タービンや伝熱管の寿命を短くしてしまう。また、機器の効率も低下してしまう。
【0003】
そこで、混合促進を目的として、流体の流れ場に乱流を促進させるリブを設ける構造や、流れを強制的に偏向させて2つの流体の流れを重ね合わせる構造のものが知られている(特許文献1)。このような構造では、配管の圧力損失が大きくなり、また構造も複雑になり、製造コストも増大する。高温の流体を用いる場合、高温流体に接触する部材の耐熱性が求められ、製造コストがさらに増大する。また、2つの流体を流れる配管をT字型に接続して、簡単な構造で2つの流体を混合させるようにしたものもあり(特許文献2)、これによれば、製造コストが低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−049306号公報
【特許文献2】特開2002−136855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2の流体混合器は、構造は簡単であるが、流体が互いに直角に交わるから、十分均一な混合状態を作り出すことが難しい。
【0006】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたもので、簡単な構造でありながら、均一な混合が可能で、かつ圧力損失を抑制できる流体混合器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明にかかる流体混合器は、内側で第1と第2の流体を混合する中空筒状の本体と、前記本体の上流側端部に設けられて前記第1の流体を流入させる第1の流入口と、前記本体の内側に配置され、前記第1の流体の流れる方向に沿った軸心を有する中空筒状の混合促進体と、前記本体の周壁に設けられて前記混合促進体の外周面に向かって前記第2の流体を流入させる第2の流入口とを備える。
【0008】
この構成によれば、第1の流体の流れる方向に沿った軸心を有する混合促進体が本体の内側に配置されているから、第2の流体が混合促進体の外周面に向かって導入されるので、第2の流体は混合促進体の外周面に衝突して本体の周方向の全域に回りこむことで、混合促進体の外側において第1の流体と第2の流体とが十分混合される。第2の流体は、混合促進体の外側を流れる第1の流体と混合された後、混合促進体の下流で、混合促進体の内側を流れる第1の流体と再度混合されることで、第1の流体と第2の流体との混合が促進される。また、第1の流体が中空筒状の混合促進体の軸心方向に沿って流れるから、第1の流体の圧力損失を抑制することができる。さらに、本体の内側に混合促進体を配置し、この混合促進体に向かって第2の流体を導入する第2の流入口を配置するだけであるから、構造が簡単である。
【0009】
本発明において、前記混合促進体が前記本体とほぼ同心に配置されていることが好ましい。この構成によれば、第2の流入口の本体周方向の設置位置に関わらず、第2の流入口と混合促進体の距離が一定となり、第2の流入口と混合促進体の位置関係に正確性が要求されなくなる結果、製造が容易になる。
【0010】
本発明において、前記本体を形成する第1の配管に、前記第2の流入口に第2の流体を供給する第2の配管が直交して接続されていることが好ましい。この構成によれば、第2の流体が混合促進体に、その軸心に直交する向きに衝突するから、第2の流体が混合促進体の外周面全体に回り込み、その結果、第1の流体と第2の流体との混合が一層促進される。
【0011】
本発明において、前記本体を形成する第1の配管に、前記第2の流入口に前記第2の流体を供給する第2の配管が接続され、その接続部における前記第2の配管の端縁が前記第1の配管の内周面と面一またはこれよりも径方向外方に配置されていることが好ましい。この構成によれば、第2の配管により、第1の配管を流れる第1の流体の流れが阻害されることがなくなり、配管の圧力損失が一層抑制される。
【0012】
本発明において、前記第1の流体は前記第2の流体よりも低温であることが好ましい。この構成によれば、第1の流体により、混合促進体の表面全体が冷却されるから、混合促進体の過熱を防ぐための構造を別途設ける必要がなく、構造が一層簡単になる。
【0013】
本発明において、前記本体における下流部が、下流に向かって通路面積が増大する拡径部により形成されていることが好ましい。この構成によれば、拡径部により混合流体が拡散され、混合が一層促進される。
【0014】
本発明にかかる熱交換システムは、本発明の流体混合器が、熱交換器の上流側に配置されてなる。この構成によれば、上記流体混合器により2つの流体が十分に混合された後、混合流体が熱交換器に導かれるので、混合流体の流れと直交する断面での温度分布が均一化される結果、熱交換効率が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の流体混合器によれば、第2の流入口から流入した第2の流体は、混合促進体の外周面に衝突して本体の周方向の全域に回りこむことで、混合促進体の外側において第1の流体と十分混合される。第2の流体は、さらに混合促進体の下流で、混合促進体の内側を流れる第1の流体と再度混合されることで、混合が促進される。また、第1の流体が中空筒状の混合促進体の軸心方向に沿って流れるから、第1の流体の圧力損失を抑制することができる。さらに、本体の内側に混合促進体を配置し、この混合促進体に向かって第2の流体を導入する第2の流入口を配置するだけであるから、構造が簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る流体混合器を備えた希薄燃料吸入ガスタービンを示す簡略構成図である。
【図2】同ガスタービンの主要構成部分の配置構成図である。
【図3】同流体混合器を示す概略構成図である。
【図4】同流体混合器の支持構造を示す概略断面図である。
【図5】は図4のV-V線矢視図である。
【図6】同流体混合器の軸方向の温度分布を示す図である。
【図7】同流体混合器に接続された再生器入口位置での径方向の温度分布を示す図である。
【図8】従来の流体混合器の軸方向の温度分布を示す図である。
【図9】従来の流体混合器に接続された再生器入口位置での径方向の温度分布を示す図である。
【図10】第2次実施形態に係る流体混合器を示す概略構成図である。
【図11】同流体混合器の軸方向の温度分布を示す図である。
【図12】同流体混合器に接続された再生器入口位置での径方向の温度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態にかかる流体混合器を備えた希薄燃料吸入ガスタービンを示す簡略構成図である。このガスタービンGTは、圧縮機1、白金やパラジウムなどの触媒を含む触媒燃焼器2、およびタービン3を有している。このガスタービンGTの出力により、発電機とスタータを兼ねる回転機4が駆動される。
【0018】
このガスタービンGTで用いる低カロリーガスとして、例えば、炭鉱で発生するVAM(Ventilation Air Methane)や、これよりも可燃成分(メタン)濃度が高いCMM(Coal Mine Methane)のような、空気と燃料(可燃成分)とが混合された作動ガスG1が、圧縮機1で圧縮され、その高圧の圧縮ガスG2が前記触媒燃焼器2に送られる。この圧縮ガスG2が触媒燃焼器2の白金やパラジウムなどの触媒による触媒反応によって燃焼され、これにより発生する高温・高圧の燃焼ガスG3がタービン3に供給されて、タービン3を駆動する。タービン3は圧縮機1に回転軸5を介して連結され、このタービン3により圧縮機1が駆動される。このようにして、ガスタービンGTおよび回転機4を含む発電装置50が構築されている。ここで、VAMだけを用いた場合の作動ガスG1中の燃料濃度(可燃成分濃度)は、圧縮機1での圧縮による昇温後の温度においても可燃濃度限界以下になるので、着火することはない。また、前記VAMだけを用いた場合の作動ガスG1に、適宜、高濃度の可燃成分を有するCMMを加えた場合でも、圧縮機1での圧縮による昇温後の温度において可燃濃度限界以下になるようにその添加量は制御されるため、着火することはない。
【0019】
ガスタービンGTは、さらに、タービン3からの排ガスG4によって圧縮機1から触媒燃焼器2に導入される圧縮ガスG2を加熱する再生器(熱交換器)6と、触媒燃焼器2に流入する圧縮ガスG2の温度を始動時に高めて触媒を活性化させる加温用バーナ7とを備えている。この加温用バーナ7は、圧縮機1によって圧縮された圧縮ガスG2から一部抽出された抽出ガスG20に燃料を混合して火炎燃焼させた加温用ガスG5を、タービン3から再生器6に供給される排ガスG4に混入し、加温する。加温用バーナ7には、この加温用バーナ7への抽出ガスG20の供給量を制御する抽気弁8が接続されている。再生器6から流出した排ガスG4は、図示しないサイレンサを通って消音されたのち、外部に放出される。前記抽気弁8による加温用バーナ7への抽出ガスG20の供給量の制御は、コントローラ20からの出力信号により行なわれる。
【0020】
加温用バーナ7への燃料供給は、炭坑の掘削部分のようなCMM源13から送給されるCMMを第1燃料流量制御弁9により流量を調整しながらなされる。この第1燃料流量制御弁9によるCMMの流量調整はコントローラ20によって行なわれる。圧縮機1への作動ガスG1の供給は、炭坑の換気のようなVAM源12からのVAMに必要に応じてCMM源13から抽出したCMMを第2燃料流量制御弁10によりその流量を調整しながら混入することによってなされる。CMMは10〜30%程度のメタンガスを含み、VAMは1%未満のメタンガスを含む。この第2燃料流量制御弁10によるCMMの流量調整も、コントローラ20によって行なわれる。また、VAM源12から圧縮機1への吸入通路には、後述する運転開始時のパージのために、開閉弁18を介して、外気等の空気源19が接続されている。
【0021】
圧縮機1とタービン3とを連結する回転軸5は単一軸からなり、この回転軸5と回転機4とが減速機17を介して連結されている。タービン3の回転により駆動される回転機4により得られる電力は、コントローラ20に入力される。電力変換装置11は、コントローラ20によって、始動時に回転機4をスタータモータとして駆動させる。
【0022】
図2に示すように、タービン3と再生器6とは、中空筒状の排気ダクト25によって連結されている。この排気ダクト25は、タービン3寄りの円筒状部25aと、この円筒状部25aの下流端部に接続され、再生器6側に向かって、つまり下流側に向かって末広がりとなった拡径部25bとからなる。この拡径部25bは、上流端部が円形の横断面形状を有し、下流端部が縦長の長方形状を有し、その間の横断面形状が、円形から長方形へと徐々に変化している中空筒状である。ただし、拡径部25bの下流端部も円形の横断面形状とすることができる。
【0023】
前記排気ダクト25の円筒状部25aが第1の配管を形成しており、この第1の配管25aに対し、加温用ガスG5を排気ダクト25内に供給する加温用バーナ7からの第2の配管28が接続されている。円筒状部25aの後部の内側には排ガスG4の流れる方向に沿った軸心C1(図3)を有する中空筒状、この例では円筒状の混合促進体38が配置されている。
【0024】
加温用バーナ7には、前述したように、CMM源13(図1)から燃料成分であるCMMが供給されるようになっている。圧縮機1から再生器6へ圧縮ガスG2を供給する圧縮ガス通路24から抽気ガス通路27が分岐しており、この抽気ガス通路27に、加温用バーナ7とその上流側に位置する抽気弁8とが設けられている。抽気ガス通路27における加温用バーナ7よりも下流側が第2の配管28として形成されている。
【0025】
図3および図4を用いて、流体混合器40の詳細を説明する。流体混合器40は、排気ダクト25の一部と、混合促進体38と、第2の配管28の下流部とで構成される。流体混合器40の本体41は、排気ダクト25の一部である第1の配管(円筒状部)25aの下流部と拡径部25bとで形成されている。本体41の上流側端部に第1の流入口43が設けられ、本体41の周壁に、第2の配管28に連なる第2の流入口45が設けられている。さらに、この流体混合器40と、流体混合器40の下流に配置された再生器(熱交換器)6とにより、熱交換システム42が構成されている。
【0026】
図3に示すように、排気ダクト25内を流れる第1の流体である排ガスG4は、第1の流入口43から本体41内に流入し、混合促進体38の外側と内側の両方を流れる。混合促進体38は円筒状部25aと同心状に配置されている。混合促進体38は、この実施形態では、円筒形状であるが、中空の部材であればよく、例えば、多角柱、円錐台、多角錐台でもよく、また、混合促進体38の下流端面が径方向に対して傾斜した形状(後述する図10)であってもよい。
【0027】
第2の配管28は排気ダクト25の円筒状部25aに直交して溶接により接続され、第2の配管28からの第2の流体である加温用ガスG5が、第2の配管28の下流端縁46によって形成された第2の流入口45から、混合促進体38内に流入し、混合促進体38の外周面38aに衝突するようになっている。混合促進体38の外周面38aに衝突した加温用ガスG5は、混合促進体38の外周面38aに沿って案内されながら、排気ダクト25の円筒状部25aの内周面29と混合促進体38の外周面38aとの間を流れる。第1の流体である排ガスG4は第2の流体である加温用ガスG5よりも低温である。
【0028】
混合促進体38は、第2の配管28からの第2の流体である加温用ガスG5が衝突するよう、その外周面38aが第2の流入口45に対向するように位置している。図4から明らかなように、混合促進体38の軸方向において、第2の配管28が形成する第2の流入口45の全体が、側面視で混合促進体38の外周面と混合促進体38の軸方向に重なっている。つまり、第2の流入口45が混合促進体38の上流端縁38bと下流端縁38cとの間に位置している。
【0029】
図3の混合促進体38の外径DOは円筒状部25aの内径DIの0.35〜0.55倍程度であり、好ましくは、0.4〜0.5倍である。混合促進体38の肉厚は、排ガスG4の流動抵抗を抑制するために、強度が保持される限り、薄くするのがよい。さらに、混合促進体38の外径DOは第2の配管28の内径DIの0.9〜1.3倍程度であり、好ましくは、1.0〜1.2倍である。混合促進体38の長さLは、第2の配管28の内径DIの1.2〜3.0倍程度であり、好ましくは、1.5〜2.5倍である。
【0030】
図4に示すように、排気ダクト25の円筒状部25aと第2の配管28とが接続部44によって接続されており、この接続部44における第2の配管28の出口部28aの端縁46が排気ダクト25の円筒状部25aの内周面29とほぼ面一になっている。ただし、第2の配管28の下流端縁46は円筒状部25aの内周面29よりも若干径方向外方に配置してもよい。
【0031】
図5に示すように、第2の配管28の軸心C2と排気ダクト25および混合促進体38の軸心C1とは直角に交わっており、第2の配管28からの加温用ガスG5が混合促進体38の頂部とその近傍に衝突するようになっている。混合促進体38は、その径方向に延びる支持部材48を介して排気ダクト25の円筒状部25aに支持されている。支持部材48は、図4に示す混合促進体38の軸心C1方向両端部に設けられ、混合促進体38の外周面に支持部材48の内端部がボルトのような第1締結部材58で固定されており、支持部材48の外端部が排気ダクト25の内周面に、ボルトのような第2締結部材59で連結されている。
【0032】
排気ダクト25に対し支持部材48の一方、この例では、上流側の支持部材48が流れ方向(軸方向)にリジッド(移動不能)に支持され、支持部材48の他方、この例では、下流側の支持部材48が軸方向に移動自在に支持されて、混合促進体38の軸方向の熱膨張を吸収できるようになっている。具体的には、下流側の支持部材48の外端部に軸方向に長い長孔が設けられ、この長孔に第2締結部材59が挿通されることで、混合促進体38が軸方向に移動自在となっている。
【0033】
図5に示すように、支持部材48は板材からなり、周方向に3つ配置されており、各支持部材48の径方向の内端部および外端部が二又状に形成されて、混合促進体38の径方向の熱膨張を吸収できるようになっている。混合促進体38の支持構造は、図示の例に限定されず、混合促進体38の熱膨張を吸収できるように構成されていればよく、例えば、排気ダクト25と混合促進体38との間をリンク機構からなる支持部材48のみによって片持ちで支持して、混合促進体38の熱膨張を吸収することもできる。
【0034】
上記構成のガスタービンGTの動作について説明する。始動時には、図1の触媒燃焼器2の温度が活性下限温度よりも低いので、加温用バーナ7の点火により再生器6の暖気を行って再生器6を通過する圧縮ガスG2を昇温させ、触媒燃焼器2を触媒反応可能な所定温度になるまで昇温させる。
【0035】
このとき、図3に示すように、流体混合器40では、タービン3からの排ガスG4と、加温用バーナ7からの加温用ガスG5とが混合される。具体的には、排ガスG4が第1の流入口43から流体混合器40の本体41内に流入し、混合促進体38の内側と外側を通って流れるとともに、加温用ガスG5が第2の流入口45から本体41に径方向に流入して混合促進体38の外周面38aに衝突後、混合促進体38の外周面38aと本体41の内周面、つまり排気ダクト25の円筒状部25aの内周面29との間を流れる。
【0036】
混合促進体38の外周面38aと本体41の内周面29との間を流れる加温用ガスG5は、まず混合促進体38の外側を通って流れる排ガスG4と混合される(一次混合)。加温用ガスG5は混合促進体38の外周面38aに衝突するので、混合促進体38の外周面38aに沿って、本体41の径方向および周方向の全域に案内される。これにより、排ガスG4と加温用ガスG5との混合が促進される。このとき、混合促進体38の内側を通って流れる低温の排ガスG4により、混合促進体38の表面全体が冷却される。
【0037】
つぎに、一次混合された排ガスG4と加温用ガスG5との混合ガスが、混合促進体38の下流で、混合促進体38の内部を通って流れる排ガスG4とさらに混合する(二次混合)。このように、2段階で混合することで、排ガスG4と加温用ガスG5との混合が一層促進される。さらに、混合促進体38を通過した混合ガスが本体41の拡径部25bに流入して拡散されるので、混合がなお一層促進される。
【0038】
定格運転に入ると、排ガスG4の温度が上昇して、圧縮機1から供給される圧縮ガスG2が再生器6内で排ガスG4と熱交換されるので、熱交換後の圧縮ガスG2は触媒燃焼器2の作動に十分な高温となる。その結果、抽気弁8が閉弁されて加温用バーナ7の動作が停止する。これにより、図3に示す流体混合器40では、排ガスG4のみが流れ、加温用ガスG5は導入されない。すなわち、排ガスG4のみが混合促進体38の内側と外側を通って流れている状態である。このとき、混合促進体38は排ガスG4の流れる方向に沿った軸心C1を有する形状であるから、排ガスG4が混合促進体38から受ける抵抗は小さくて済む。したがって、最も稼働時間の長い定格運転時に、排ガスG4の圧力損失が効果的に抑制される。
【0039】
上記構成において、図3に示すように、排ガスG4の流れる方向に沿った軸心C1を有する混合促進体38が本体41の内側に配置され、排ガスG4がこの混合促進体38の軸心C1方向に沿って混合促進体38の外側と内側を流れるから、排ガスG4の圧力損失を抑制することができる。また、加温用ガスG5が混合促進体38の外周面38aに向かって導入されるので、加温用ガスG5は混合促進体38の外周面38aに衝突して本体41の径方向および周方向に回りこむことで、混合促進体38の外側において排ガスG4と加温用ガスG5とが十分に混合される。加温用ガスG5は、混合促進体38の外側を流れる排ガスG4と混合された後、混合促進体38の内側を流れる排ガスG4と再度混合されることで、排ガスG4と加温用ガスG5との混合が促進される。さらに、本体41の内側に混合促進体38を配置し、この混合促進体38に向かって加温用ガスG5を導入する第2の流入口45を配置するだけであるから、構造が簡単である。
【0040】
また、混合促進体38が本体41とほぼ同心に配置されているので、第2の流入口45の本体41周方向の設置位置に関わらず、第2の流入口45と混合促進体38の距離が一定となり、第2の流入口45と混合促進体38の位置関係に正確性が要求されなくなる結果、製造が容易になる。
【0041】
また、第2の配管28は排気ダクト25にほぼ直交して接続されているので、加温用ガスG5が混合促進体38の外周面38aに直交する向きに衝突するから、加温用ガスG5が混合促進体38の外周面38aに案内されて排気ダクト25の径方向および周方向の全域に回り込み、その結果、排ガスG4と加温用ガスG5との混合が一層促進される。
【0042】
図4に示すように、排気ダクト25と第2の配管28との接続部44における第2の配管28の端縁46が、排気ダクト25の内周面29と面一であるから、第2の配管28により、排気ダクト25を流れる排ガスG4の流れが阻害されることがなくなり、排ガスG4の圧力損失が一層抑制される。
【0043】
また、排ガスG4は加温用ガスG5よりも低温であるから、排ガスG4により、高温の加温用ガスG5と接する混合促進体38の表面全体が冷却されるから、混合促進体38の過熱を防ぐための構造を別途設ける必要がなく、構造が一層簡単になる。
【0044】
図3に示すように、本体41における下流部が、下流に向かって通路面積が増大する拡径部25bにより形成されているので、拡径部25bにより排ガスG4と加温用ガスG5の混合ガスが拡散され、混合が一層促進される。
【0045】
図2に示すように、流体混合器40が、熱交換器である再生器6の上流側に配置されているので、流体混合器40により排ガスG4と加温用ガスG5が十分に混合された後、再生器6に導かれるから、混合流体の流れを直交する断面での温度分布が均一化される結果、熱交換効率が向上する。
【0046】
上記実施形態の流体混合器40について、混合状態を確認するために、コンピュータ解析を行った。また、比較例として、上記実施形態の流体混合器40において混合促進体38を有さない構造についても同様の解析を行った。
【0047】
図6は上記実施形態の流体混合器40を用いて排ガスG4と加温用ガスG5とを混合させた際の軸方向における温度分布、図7は図6のVII-VII線断面上、つまり流体混合器40の出口(再生器6の入口)箇所における径方向の温度分布を示し、図8および9は比較例の各温度分布を示す。以下の図において、(1)〜(21)は高温から低温にかけての領域を表す。図6および図8において、(1)〜(9)の同一番号は同一温度領域を示す。同様に、図7および図9において、(10)〜(21)の同一番号は同一温度領域を示す。図6に示すように、上記実施形態の流体混合器40では、高温の加温用ガスG5が拡径部25bの中心部から下部にかけて広がっており、その結果、図7に示すように、流体混合器40の出口箇所において、温度分布が均一化されており、適度に混合されていることがわかる。一方、比較例の流体混合器では、図8に示すように、高温の加温用ガスG5が拡径部25bの下部に集中して流れ込んでおり、その結果、図9に示すように、流体混合器40の出口箇所において、温度分布が偏っており、十分に混合されていない。
【0048】
図10は第2実施形態に係る流体混合器40Aを示す概略構成図である。第2実施形態の流体混合器40Aと第1実施形態の流体混合器40との違いは、混合促進体38Aの下流端面62が下流に進むにつれて上方に傾いた傾斜面である点のみで、その他の構造は、第1実施形態と同じである。つまり、混合促進体38における第2の配管28に対向する部分(上部)とは反対側の部分(下部)の下流端部が、切り欠かれて傾斜している。この例では、下流端面62の径方向に対する傾斜角θが45°となっているが、この傾斜角θは20〜60°程度とすることができ、30〜50°程度がより好ましい。第2の流入口45は、混合促進体38Aの上流端縁38Aaと、混合促進体38Aにおける第2の流入口45と対向する部分(図10の上部)の下流端縁38Abとの間に位置している。
【0049】
第2実施形態の流体混合器40Aにおいても、第1実施形態の流体混合器40と同様に、コンピュータ解析による検証を行った。その結果を図11および12に示す。図11から分かるように、第2実施形態の流体混合器40Aでは、より多くの高温の加温用ガスG5が拡径部25bの中心部近くを流れるので、図12から分かるように、第1実施形態の流体混合器40よりもさらに温度分布が均一化されている。
【0050】
第1および第2実施形態では、本体41の上流部を形成する円筒状部25aの下流部は、円筒状であったが、下流に向かって若干拡大する小さなテーパ比を有する拡大管であってもよい。また、本体41の拡径部25bのテーパ比が小さい場合、拡径部25bの内側に混合促進体38を配置してもよい。さらに、拡径部25bを省略して、流体混合器40の本体41の全体を円筒状としてもよい。また、第2の流入口45を複数設け、各流入口45から異なる流体を本体41に流入させてもよい。
【0051】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能であり、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
6 再生器(熱交換器)
25 排気ダクト
28 第2の配管
29 本体の内周面
38、38A 混合促進体
38a 混合促進体の外周面
40、40A 流体混合器
41 本体(第1の配管)
42 熱交換システム
43 第1の流入口
44 接続部
45 第2の流入口
46 第2の配管の端縁
C1 軸心
G4 排ガス(第1の流体)
G5 加温用ガス(第2の流体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側で第1と第2の流体を混合する中空筒状の本体と、
前記本体の上流側端部に設けられて前記第1の流体を流入させる第1の流入口と、
前記本体の内側に配置され、前記第1の流体の流れる方向に沿った軸心を有する中空筒状の混合促進体と、
前記本体の周壁に設けられて前記混合促進体の外周面に向かって前記第2の流体を流入させる第2の流入口とを備える流体混合器。
【請求項2】
請求項1において、前記混合促進体が前記本体とほぼ同心に配置されている流体混合器。
【請求項3】
請求項1または2において、前記本体を形成する第1の配管に、前記第2の流入口に第2の流体を供給する第2の配管が直交して接続されている流体混合器。
【請求項4】
請求項1または2において、前記本体を形成する第1の配管に、前記第2の流入口に前記第2の流体を供給する第2の配管が接続され、その接続部における前記第2の配管の端縁が前記第1の配管の内周面と面一またはこれよりも径方向外方に配置されている流体混合器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項において、前記第1の流体は前記第2の流体よりも低温である流体混合器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項において、前記本体における下流部が、下流に向かって通路面積が増大する拡径部により形成されている流体混合器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の流体混合器が、熱交換器の上流側に配置されてなる熱交換システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−81905(P2013−81905A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223820(P2011−223820)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】