説明

流体混合装置および複数種流体混合物の製造方法

【課題】複数の流体を一切の化学物質の添加無しに、小型で安価な装置で、混合させる流体混合装置及び流体混合物の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、流体混合槽に供給した複数の被処理流体を、該流体混合槽から配管を通して送液ポンプで複数の被処理流体を汲み上げ、再び流体混合槽に返送する装置において、送液ポンプの入口側流路に設けられた吸引口から、気体を吸引させて気泡を混入させた後に、送液ポンプの出口側流路に旋回流式マイクロバブル発生器を設置した流体混合装置および流体混合物の製造方法とで構成されているので、微細気泡と複数の流体を効率よく混合させることができる。従って、水と油のように本来混合し難い流体を、微細気泡発生による混合、せん断、攪拌、分散作用で混合させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水と油のように本来混合し難い液体を、微細粒流体にして混合させる流体混合装置および複数種流体混合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水と油のように混合し難い液体を混合させる場合、従来から、最も一般的に行われる手法として、界面活性剤などを加えて、乳化、混合させることが行われている。
【0003】
更に、流体の混合方法としては、例えば特許文献1には、円管内部に球体を配置すると共に下流側に小孔を設け、円管に高圧水を導くと、球体の下流側で水圧が下がって負圧が発生し、小孔を複数個設置することにより複数種類の流体を吸引して混合することができる流体混合器が開示されている。
【0004】
又、特許文献2には、液体燃料中に微細流体を混入分散させるエジェクター式の微細流体発生装置と、液体燃料を加圧して前記エジェクター式の微細流体発生装置へ送液するポンプを備え、前記エジェクター式の微細流体発生装置がポンプで加圧された液体燃料を導入する液体燃料流路とともに液体燃料に混入させる混入流体を導入する混入流体導入流路と、液体燃料流路から吐出する液体燃料中に混入流体導入流路から吐出する混入流体を微細化し分散させる微細流体発生空間及び微細流体発生空間で発生した微細流体を混合する微細流体混合室を有することを特徴とする微細流体混入液体燃料の製造装置が開示されている。
【0005】
更に、特許文献3には、被処理液が収容された処理槽に、回転駆動機構を備えた回転軸にインペラを設けて成る回転翼機構を設置すると共に、回転領域に添加液を供給する添加液供給機構と回転領域に気体を供給する気体供給機構を設けて成る。添加液供給機構は、インペラの回転領域を部分的に覆う導入空間と供給源と導入空間を連通する供給路を備える。導入空間に供給された添加液は、インペラの回転によって生じる負圧により回転領域に引き込まれ、インペラのせん断力と微細気泡の液体分散力によって素早く均一に分散され、被処理液を効率よく攪拌、混合される液液混合処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−80259
【特許文献2】特開2008−169250
【特許文献3】特開2008−296126
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、水と油のように本来混合し難い液体を混合させるために、界面活性剤などを添加する場合には、当然ながら最適な界面活性剤などの種類や混合割合を決める必要がある。また、異種剤の添加による反応などにより、混合流体の性質が予期せぬ方向に変わる問題点がある。その上、界面活性剤などの添加による製造コスト高になる欠点があった。
【0008】
流体混合器や微細流体混入液体燃料の製造装置などを使用すると、高圧の液体を供給するために装置の構造が複雑、且つ、大型になる。その上、エジェクター式による気体及び液体の微細化には、限度があり、泡の大きさの均一性や泡の発生状態を安定して維持することが困難で、十分な混合状態、所謂、乳化状態は得にくいなどの欠点があった。その上、たとえ乳化状態が得られたとしても、保存することにより、分離が起こる欠点があった。
【0009】
又、インペラによる方法も上記記載と同様に、装置が大型化、複雑な機構装置となり、発生する気泡の直径は比較的に大きく、添加液の混合も不均一となり、十分な混合状態を得にくいなどの欠点があった。その上、たとえ混合状態が得られたとしても、保存することにより、分離が起こる欠点があった。
【0010】
本発明は、水と油のように本来混合し難い液体を混合させるために、一切の化学物質の添加無しに小型で安価な装置で、十分なる混合状態を得ることができ、その上、流体の相分離を起こすことなく、混合状態を長期間、安定的に維持する技術を提供することを目的にしている。ここで言う「流体」とは、複数の液体、又は複数の液体と気体の混合した状態を示す。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の流体混合装置は、複数の被処理流体を流体混合槽に供給し、該流体混合槽から配管を通して送液ポンプで複数の被処理流体を汲み上げ、再び流体混合槽に返送する装置において、送液ポンプの入口側流路に設けられた吸引口から、気体を吸引させて気泡を混入させた後に、送液ポンプの出口側流路に旋回流式マイクロバブル発生器を設置したもので構成されている。ここで言う「旋回流式マイクロバブル発生器」とは、気液二相流体を超高速旋回させることによって、マイクロバブル発生器内で液体と気体の遠向心分離作用を利用し、マイクロバブル発生器中心部に形成された旋回空洞部をマイクロバブル発生器出口前後における旋回速度差で切断、粉砕させることで微細気泡を発生させる物を示す。
【0012】
この構成によると、小型で簡易な装置で、高圧の流体を必要とせず、複数の被処理流体と微細気泡の両者を容易に混合させる効果が得られる。
【0013】
複数の被処理流体と吸引口から吸引された気泡が送液ポンプ内で攪拌、混合されるが、ここでは、複数の被処理流体と気泡が混合された一次混合流体が得られる。
【0014】
この一次混合流体を旋回流式マイクロバブル発生器に通すことにより、微細気泡と複数の被処理流体を微細粒流体にさせた二次混合流体が得られる。
【0015】
ここで重要なことは、前もって複数の被処理流体と気泡を送液ポンプにより予備的に混合した一次混合流体を作ることである。複数の被処理流体と比較的に大きな気泡が混合している一次混合流体を旋回流式マイクロバブル発生器に通すことで、微細気泡発生による混合、せん断、攪拌、分散作用により、複数の被処理流体を微細粒流体にさせた二次混合流体が得られる。
【0016】
このように一次混合流体を作った後に、二次混合流体を作る工程とすることで理想的な混合状態が得られるのである。すなわち、複数の被処理流体と比較的に大きな気泡とが、お互いに混じった状態の一次混合流体を、旋回流式マイクロバブル発生器に通す事を本発明の条件としている。このように、一、二の段階を踏むことで、複数の被処理流体は、各々が微細粒流体となり、比較的に大きな気泡は、微細気泡となり、これらの流体の要求された混合状態の二次混合流体が得られるのである。
【0017】
特許文献1のように、複数種類の流体を流体混合器で、一気に混合する方法も考えられるが、この方法においては、微細気泡発生による混合、せん断、攪拌、分散作用が発揮されず、微細粒流体とならず、十分な混合状態を得ることはできない。
【0018】
液体中に混合している気体は、液体に溶解する性質により、二次混合流体中の微細気泡の気体成分は、時には、複数種類の流体中に溶解した状態になることがある。
【0019】
二次混合流体は、界面活性剤などの添加剤を一切加えていないので、その添加剤の影響による変質などは見られない。
【0020】
本発明において、前記旋回流式マイクロバブル発生器を前記流体混合槽内の流体中に設置したもので構成されていることが、より好ましい。
【0021】
この構成によると、前記旋回流式マイクロバブル発生器を前記流体混合槽内の流体中に設置しているので、二次混合流体を前記流体混合装置に再循環させることができる。
【0022】
再循環させることにより、混合、せん断、攪拌、分散が繰り返され、微細気泡を、より強く微細気泡化させると同時に、微細粒流体をより強く微細粒流体化させることができる。従って、十分に制御された混合状態の流体混合物を得ることができる。
【0023】
本発明においては、前記複数の被処理流体は、水と油とすることができる。
【0024】
本発明の複数種流体混合物の製造方法については、上記と同様に、前記複数の被処理流体と気泡を混合、せん断、攪拌、分散作用により、微細気泡と微細粒流体となり、両者を容易に混合させる効果が得られる。
【0025】
本発明の製造装置や製造方法によって得られた複数種の流体混合物は、一定の環境下で長期間にわたって相分離などの見られない安定した状態を維持し続けるものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の流体混合装置によれば、複数の被処理流体を送液する送液ポンプと、送液ポンプ入口側流路に吸引口と、送液ポンプ出口側流路に旋回流式マイクロバブル発生器を設けているので、十分なる混合状態の流体混合物を得ることができる。その上、流体の相分離を起こすことなく、混合状態を長期間の間、安定的に維持させることができる。
【0027】
本発明の複数種流体混合物の製造方法によれば、送液ポンプの入口側流路に気体を吸引させる工程と送液ポンプの出口側流路に微細気泡を発生させる工程とを備えているので十分なる混合状態の流体混合物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を実施するための流体混合装置図である。
【図2】本発明を実施するための循環式流体混合装置図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳細に説明する。
【0030】
図1および図2は、本発明の一実施の形態に係る流体混合装置の配置構成を表すものである。尚、本発明の複数種流体混合物の製造方法については、この流体混合装置に作用するものであるので併せて説明する。
【0031】
図1は、本発明の流体混合装置の概略図であって、流体混合槽1に、所定の割合で供給した複数の被処理流体2を、送液ポンプ入口側配管3から汲み上げ、送液ポンプ5に供給する。送液ポンプ入口側配管3の途中に設けられた吸引口4から気体を吸引する。送液ポンプ出口側配管6は、複数の被処理流体2と気泡が混入した一次混合流体6aで満たされ、送液ポンプ出口側配管6に設置された旋回流式マイクロバブル発生器7に送られ、旋回流式マイクロバブル発生器出口側配管8から二次混合流体8aになって流出する。
【0032】
送液ポンプ5は、流体混合槽1から送液ポンプ入口側流路3を通じて汲み上げた、水と油のように本来混合し難い複数液体に、吸引口により吸引された気体を気泡として混合させて、送液ポンプ出口側流路6に一次混合流体6aが得られる。この一次混合流体6aを連続的に送液する機能を持つ吐出圧一定給水式ポンプが使用されるが、これに限定されるものではなく、一般に市販されている送液ポンプであれば良い。
【0033】
旋回流式マイクロバブル発生器7は、直径が数ミクロン程度の微細気泡を連続的に発生させる機能を持っているものであればよい。気液二相流体を超高速旋回させることにより液体と気体の遠向心分離作用で、中心部に形成された旋回空洞部を旋回流式マイクロバブル発生器出口前後における旋回速度差による切断、粉砕などの機能により、一次混合流体6aと微細気泡のそれぞれが、お互いに混合、せん断、攪拌、分散させることができる。
【0034】
一次混合流体6aは、複数の被処理流体2と直径が数百ミクロンから数ミリの比較的に大きな気泡が混じり合った粗乳化状態である。尚、該気泡の構成成分は、大気中の空気で構成されているが、限定するものではない。すなわち、酸素や窒素や他の気体及びそれらの混合気体でも良い。
【0035】
一次混合流体6aを旋回流式マイクロバブル発生器7に通すことで、複数の被処理流体2と直径が数百ミクロンから数ミリの比較的に大きな気泡が混じり合った粗乳化状態から、お互いに、混合、せん断、攪拌、分散した二次混合流体8aが得られる。
【0036】
二次混合流体8aは、直径が数ミクロンから数百ミクロンの微細気泡と一次混合流体6aの各々が微細粒流体となり混合した乳化状態である。
【0037】
図2は、本発明の循環式流体混合装置の概略図であって、流体混合槽1に、所定の割合で供給した複数の被処理流体2を、送液ポンプ入口側配管3から汲み上げ、送液ポンプ5に供給する。送液ポンプ入口側配管3の途中に設けられた吸引口4から気体を吸引する。送液ポンプ出口側配管6には、複数の被処理流体2と気泡が混入した一次混合流体6aで満たされ、送液ポンプ出口側配管6に設置された旋回流式マイクロバブル発生器7に送られ、旋回流式マイクロバブル発生器出口側配管8から二次混合流体8aとなって、流体混合槽1に送られる。更に、二次混合流体を循環式流体混合装置に循環させることができる。尚、旋回流式マイクロバブル発生器7は、流体混合槽1内の流体中に存在している。
【0038】
図2において、一次混合流体6aは、旋回流式マイクロバブル発生器7を通すことで、直径が数ミクロンから数百ミクロンの微細気泡の各々が、混合、せん断、攪拌、分散し微細粒流体になり、均一に混合した二次混合流体8aが得られる。前記流体混合装置に比べ、二次混合流体8aを、更に、循環式流体混合装置に循環させるので混合、せん断、攪拌、分散が加わり、より微細粒流体となった二次混合流体8aが得られる。循環した二次混合流体8aは、流体混合物9となる。
【実施例1】
【0039】
図1の流体混合装置において、流体混合槽1に、水道水の水を8リットルと食品用オイルを2リットル供給した。送液ポンプ入口側配管3から汲み上げ、送液ポンプ5の送液量を1分間に10リットルとして、吸引口4から空気の量を1分間に0.2リットル吸引するように調整した。これにより得られた水道水の水と食品オイルと気泡が混じった一次混合流体6aを、送液ポンプ出口側配管6を通じて、旋回流式マイクロバブル発生器7に供給した。旋回流式マイクロバブル発生器出口側配管8から水道水の水と食品オイルと微細気泡が混じった乳化状態の二次混合流体8aが得られた。
【0040】
該二次混合流体8aの一定条件化(温度、湿度、密閉性)における2ケ月の保存において、乳化状態に相分離等の変化は見られず、長期間の保存の可能性が示唆された。
【実施例2】
【0041】
図2の循環式流体混合装置において、流体混合槽1に、水道水の水を8リットルと食品用オイルを2リットル供給した。送液ポンプ入口側配管3から汲み上げ、送液ポンプ5の送液量を1分間に10リットルとして、吸引口4から空気の量を1分間に0.2リットル吸引するように調整した。これにより得られた水道水の水と食品オイルと気泡が混じった一次混合流体6aを、送液ポンプ出口側配管6を通じて、旋回流式マイクロバブル発生器7に供給した。旋回流式マイクロバブル発生器出口側配管8から水道水の水と食品オイルと微細気泡が混じった乳化状態の二次混合流体8aが得られ、流体混合槽1内の水道水の水と食品オイルが、徐々に白濁化し、運転開始5分後には、流体混合物9で満たされた。
【0042】
該流体混合物の一定条件化(温度、湿度、密閉性)における6ケ月の保存において、乳化状態に相分離等の変化は見られず、長期間の保存の可能性が示唆された。
【0043】
本実施例においては、混じり難い液体の代表として水と油を取り上げて示したが、この混じり難いもの同士でも混合状態が得られ、その上、長期間にわたって相分離などの変化が見られない。従って、本発明は、他の混じり難い複数の液体同士にも摘要できると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、複数の流体を混合する産業で利用される。
【符号の説明】
【0045】
1・・・流体混合槽、2・・・複数の被処理流体、3・・・送液ポンプ入口側配管、4・・・吸引口、5・・・送液ポンプ、6・・・送液ポンプ出口側配管、6a・・・一次混合流体 7・・・旋回流式マイクロバブル発生器、8・・・旋回流式マイクロバブル発生器出口側配管、8a・・・二次混合流体、9・・・流体混合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被処理流体を流体混合槽に供給し、該流体混合槽から配管を通して送液ポンプで複数の被処理流体を汲み上げ、再び流体混合槽に返送する装置において、送液ポンプの入口側流路に設けられた吸引口から、気体を吸引させて気泡を混入させた後に、送液ポンプの出口側流路に旋回流式マイクロバブル発生器を設置したことを特徴とする流体混合装置。
【請求項2】
前記旋回流式マイクロバブル発生器は、前記流体混合槽内の流体中に設置したことを特徴とする請求項1記載の流体混合装置。
【請求項3】
前記複数の被処理流体は、水と油であることを特徴とした請求項1または2記載の流体混合装置。
【請求項4】
複数の被処理流体を貯留する流体混合槽から配管を通して汲み上げる工程と、該被処理流体を送液ポンプにて送液する工程と、再び該被処理流体を流体混合槽に返送する工程と、を有する流体混合物の製造方法であって、送液ポンプの入口側流路に気体を吸引させる工程と、送液ポンプの出口側流路に微細気泡を発生させる工程と、を備えた複数種流体混合物の製造方法。
【請求項5】
前記微細気泡を発生させる工程が、前記流体混合槽内の流体中で行なわれる請求項4記載の複数種流体混合物の製造方法。
【請求項6】
前記複数の被処理流体は、水と油であることを特徴とした請求項4または5記載の複数種流体混合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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