説明

流体速度計測方法およびその装置

【課題】1光束で直線格子による縞を形成し、その縞を利用して流速を測定する装置を提供する。
【解決手段】本発明は、レーザー光による縞発生部、流れとともに移動する微粒子の散乱光を光電子増倍管等により検出する光検出部、光の強度信号をFFT解析装置により解析する解析部を備え、前記縞発生部はレーザービームをエキスパンダーレンズにより拡大して平行光を作り、この平行光を流れにあわせた適当な太さの1光束に絞り、流れ方向と直角に置いた微細直線格子を介して流路内に縞を発生させ、流路内の流れと共に移動する微粒子群の散乱光を光検出器で検出し、解析部により流体速度を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流れの局所での流速をFFT解析装置により計測する流体速度計測方法およびその装置に関するものであり、さらに詳細には、1光束で直線格子による縞を形成し、その縞を利用して流速を測定する方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からレーザドップラー流速計(以下LDVという)が知られている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−118092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記公報等に記載されている公知のLDVは2光束の光の干渉縞を用いて流れの中に縞を発生する装置となっているため、装置構成が複雑となり、高価な装置となるという問題点がある。
本発明は従来の問題点を解決するために提案されたものであり、1光束で直線格子による縞を発生し、その縞を利用して流速を測定することを特徴としている。本装置は、流れを乱さない非接触型の流速計であり、従来のLDVは、非常に局所的な流れ場を計測するのに対して、本発明装置は比較的大きな流れ場の流速度計測が可能である。また、散乱粒子についても比較的大きなものの使用が可能であり、安価にまた簡単に装置系を構成することが可能である。
【0005】
本装置はレーザーまたはコリメートされた連続光による光の縞発生部、流れとともに移動する微粒子の散乱光を光電子増倍管等により検出する光検出部、光の強度信号をFFT解析装置により解析する解析部からなる。
光の縞発生部ではレーザービームをエキスパンダーレンズにより拡大して平行光を作る。この平行光を流れにあわせた適当な太さの光束に絞り、流れ方向と直角に置いた直線格子(または回転円板に刻んだ放射状直線格子ピッチa)に照射する。これにより縞状となった光束は流れ場内に入り、縞部において流れと共に移動する直径がaよりも小さな微粒子群を照らす。光検出部では微粒子の散乱光を検出するが、流速を測定したい光束ビーム上の一部のみの散乱光を拾うため絞りと集光レンズが必要となる。こうして局所のみの散乱光が光ファイバー入射面状に入り、光電子増倍管へと導かれる。
光の強度を解析する解析部では点滅する光の周波数fを求める。すなわち光の縞間隔がaであるとき流速Vに対するfはf=V/aであるので、FFT解析によりfを得、したがってVが求まる。Vが非常に小さいときあるいは逆流があるときはFFT解析の精度を上げるため回転円板格子を利用する。円板の周速度(流れ方向とは逆方向)がVgのときはf=(V+Vg)/aとなるがVgとaは既知であるのでVが求まる。Vg/aはシフト周波数である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が採用した技術解決手段は、
平行光を流れにあわせた適当な太さの1光束に絞り、流れ方向と直角に置いた微細直線格子を介して流路内に縞を発生し、流路内の流れと共に移動する微粒子群を照射し、微粒子の散乱光を光検出器で検出し、FFT解析装置により流体速度を計測することを特徴とする流体速度計測方法である。
また、前記平行光はレーザービームをエキスパンダーレンズにより拡大して平行光としたものであることを特徴とする流体速度計測方法である。
また、前記平行光はコリメータレンズにより作成した平行光であることを特徴とする流体速度計測方法である。
また、光による縞発生部、流れとともに移動する微粒子の散乱光を光電子増倍管等により検出する光検出部、光の強度信号をFFT解析装置により解析する解析部を備え、前記縞発生部はレーザービームをエキスパンダーレンズにより拡大し、平行光を作り、この平行光を流れにあわせた適当な太さの1光束に絞り、流れ方向と直角に置いた微細直線格子を介して流路内に縞を発生することを特徴とする流体速度計測装置である。
また、光による縞発生部、流れとともに移動する微粒子の散乱光を光電子増倍管等により検出する光検出部、光の強度信号をFFT解析装置により解析する解析部を備え、前記縞発生部はコリメータレンズにより平行光を作り、この平行光を流れにあわせた適当な太さの1光束に絞り、流れ方向と直角に置いた微細直線格子を介して流路内に縞を発生することを特徴とする流体速度計測装置である。
また、前記微細直線格子は平板上に刻んだ平行直線格子または回転円板に刻んだ放射状直線格子または円筒側面に刻んだ直線格子のいずれかであることを特徴とする流体速度計測装置である。
また、前記微細直線格子を通過した光束の径及び計測空間を制限する絞りを備えていることを特徴とする流体速度計測装置である。
【発明の効果】
【0007】
本装置は、以下のような特有の効果を達成することができる。
1.公知のLDVが2光束を用いるのに対して、本発明では1光束で流速を計測することが可能であり、LDVと同じ効果を得ることが出来る。
2.1次元流だけでなく、縞の方向を変えることで、2次元、3次元の流れの流速測定が可能である。
3.微細直線格子を使用した直線縞の明暗の変動によって、流速度を簡易に計測可能である。
4.定常流の流速計測が主であるが、変動流にも対応できる。
5.装置は簡単で安価に製作できる。
6.比較的大きな散乱微粒子でも計測可能であり、流れ場も局所的なものではなく、大きな流れ場(雨、雪などを含む)についても対応可能である。
7.気泡や固体粒子を含む混相流の流れ計測にも利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、レーザー光による縞発生部、流れとともに移動する微粒子の散乱光を光電子増倍管等により検出する光検出部、光の強度信号をFFT解析装置により解析する解析部を備え、前記縞発生部はレーザービームをエキスパンダーレンズにより拡大して平行光を作り、この平行光を流れにあわせた適当な太さの1光束に絞り、流れ方向と直角に置いた微細直線格子を介して流路内に縞を発生させ、流路内の流れと共に移動する微粒子群の散乱光を光検出器で検出し、解析部により流体速度を計測する。
【実施例】
【0009】
以下、図面を参照して本発明に係る実施例を説明すると、図1は本発明に係る流体速度計測装置、図2は同装置の縞発生部の平面図、図3は同正面図、図4は本装置で測定した流体の速度分布図である。
【0010】
図1〜3において、本装置は、大きく分けて、流れ場に光の縞を発生する縞発生部1と、前記流れ場の縞を利用して流れ場中の微粒子の速度を検出する速度検出部2を備えている。縞発生部1は、レーザ光を発振するレーザ発振装置11、前記レーザ発振装置11から発振されるレーザを拡大して平行光とし流れ場に対して1光束として照射するビームエキスパンダ12と、前記ビームエキスパンダ12から照射された1光束を横切るように光束に対して直角に配置した微細直線格子13と、微細直線格子13を通過した光束の径を制限する絞り14とを有している。前記レーザ発振装置11、ビームエキスパンダ12は従来公知のものを使用し、また前記微細直線格子13は、モータ15の回転軸に取り付けた回転円板に放射状直線格子(ピッチa)を刻んで構成したものである。
なお、レーザ発振装置11としては、ヘリウムネオンレーザやアルゴンレーザ発振器、半導体レーザ発振器、など現在公知のレーザ発振器を使用することができ、また微細直線格子も本回転円板と同様の効果を達成できるものであれば他の形態のものを使用することができる。また、ビームエキスパンダ12で拡大して平行光とする換わりに点光源をコリメータレンズを使用して平行光とすることも可能である。
【0011】
また、速度検出部2は、流れ場中の微粒子の散乱光を検出する絞り21、集光レンズ22、光ファイバー23、光検出器24、FFT解析装置25からなり、これらは従来のLVDの装置と同様のものを使用する。前記絞り21、集光レンズ22、光ファイバー23は、流れ場の中の測定位置にあわせて移動台(ステージ)26を移動することで位置調整をすることができる。なお、図中31は流れ場、32は流れ場中の微粒子である。
【0012】
上記装置の作用を説明する。
図2において、レーザ発振装置(レーザー光源)11から発振されたレーザ光をビームエキスパンダ12により流れ場にあわせた適当な太さの平行光束とする。前記平行光束は、流れ方向と平行に置いた微細直線格子(または回転円板に刻んだ放射状直線格子ピッチa)13を介して、流れに対して直角に照射され、流れと直角に光の縞パターン33が設置される。設置された光の縞パターン33内において光束は流れと共に移動する直径がaよりも小さな微粒子32群を照らす。
図3において流れ場中の微粒子の散乱光を検出するには、流速を測定したい光束ビーム上の一部のみの散乱光を拾う必要があるため、絞り21と集光レンズ22とが必要となる。
光束が照射された局所のみの散乱光が絞り21、集光レンズ22を介して光ファイバー23入射面状に入り、光検出器24で電圧に変換され、FFT解析装置25で解析される。即ちFFT解析装置25では点滅する光の周波数fを以下の手順で求める。
すなわち光の縞間隔がaであるとき流速Vに対するfはf=V/aであるので、FFT解析によりfを得、したがってVが求まる。Vが非常に小さいときあるいは逆流があるときはFFT解析の精度を上げるため回転円板格子を利用する。円板の周速度(流れ方向とは逆方向)がVg のときはf=(V+Vg )/aとなるがVg とaとは既知であるのでVが求まる。Vg /aはシフト周波数である。絞り、集光レンズ、光ファイバはこれらを一体にした移動台などを利用して、流れ場対して位置決めすることができる。
【0013】
図4に円管内を流れる水の流速度分布の計測例を示す。使用円管は長さ1m管内径26mmのアクリル管で、流量Qは23ml/sの場合である。計測器の諾元は縞ピッチはa=0.5mm、回転円板の速度Vgは0.5m/sである。最大流速は約0.09m/sでこのときの全周波数はf=1180Hz、シフト周波数は1kHzであることよりこれらの差である180Hzが流動粒子散乱光の周波数となる。
本流れはレイノルズ数Re=1200の層流であり、したがって速度分布は放物線かつ管中心の最大速度は平均流速(図中の破線)の2倍となるはずである。図3より本実験結果はこれらの事実とよく一致していることがわかる。これを仮にピトー管で計測したとすると最大速度のときでも水柱マノメータのヘッドは0.4mmと小さな値となり、このような速度分布を得ることはほとんどできない。よって本装置は非常に優れた流速計であることがわかる。
【0014】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明によれば、上述した1次元流を測定できるだけでなく、2次元流を計測することも可能である。2次元流を計測する場合には流れと直角方向および平行方向に縞パターンを設置する。このとき各方向のレーザーの波長は異なるようにする。散乱光は波長ごとの干渉フィルターにより分離し、2分岐光ファイバーでそれぞれの光検出器ヘと導く。光の信号はデータロガー等に一旦保存した後にFFT解析する。
また、本発明はその精神また主要な特徴から逸脱することなく、他の色々な形で実施することができる。そのため前述の実施例は単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。更に特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は、流体速度計測装置および流量計測装置としての利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る流体速度計測装置の構成図である。
【図2】同装置の縞発生部の平面図である。
【図3】同装置のは正面図である。
【図4】本装置で測定した流体の速度分布図である。
【符号の説明】
【0017】
1 縞発生部 11 レーザ発振装置
12 ビームエキスパンダ
13 微細直線格子
14 絞り
15 モータ
2 速度検出部
21 絞り
22 集光レンズ
23 光ファイバー
24 光検出器
25 FFT解析装置
31 流れ場
32 微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行光を流れにあわせた適当な太さの1光束に絞り、流れ方向と直角に置いた微細直線格子を介して流路内に縞を発生し、流路内の流れと共に移動する微粒子群を照射し、微粒子の散乱光を光検出器で検出し、FFT解析装置により流体速度を計測することを特徴とする流体速度計測方法。
【請求項2】
前記平行光はレーザービームをエキスパンダーレンズにより拡大して平行光としたものであることを特徴とする請求項1に記載の流体速度計測方法。
【請求項3】
前記平行光はコリメータレンズにより作成した平行光であることを特徴とする請求項1に記載の流体速度計測方法。
【請求項4】
光による縞発生部、流れとともに移動する微粒子の散乱光を光電子増倍管等により検出する光検出部、光の強度信号をFFT解析装置により解析する解析部を備え、前記縞発生部はレーザービームをエキスパンダーレンズにより拡大して平行光を作り、この平行光を流れにあわせた適当な太さの1光束に絞り、流れ方向と直角に置いた微細直線格子を介して流路内に縞を発生することを特徴とする流体速度計測装置。
【請求項5】
光による縞発生部、流れとともに移動する微粒子の散乱光を光電子増倍管等により検出する光検出部、光の強度信号をFFT解析装置により解析する解析部を備え、前記縞発生部はコリメータレンズにより平行光を作り、この平行光を流れにあわせた適当な太さの1光束に絞り、流れ方向と直角に置いた微細直線格子を介して流路内に縞を発生することを特徴とする流体速度計測装置。
【請求項6】
前記微細直線格子は平板上に刻んだ平行直線格子または回転円板に刻んだ放射状直線格子または円筒側面に刻んだ直線格子のいずれかであることを特徴とする請求項4または5に記載の流体速度計測装置。
【請求項7】
前記微細直線格子を通過した光束の径及び計測空間を制限する絞りを備えていることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の流体速度計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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