説明

流体適用のための製品、その製造方法及び該製品の使用

本発明は、流れ方向Sに流れる流体と接触するように設けられる少なくとも1つの表面セグメントAを備える流体適用のための製品であって、流体と接触するセグメントAには、特有の長さL1、L2と形状のリブ1、1’、1”が形成され、その隣接リブ1、1’、1”は、いずれの場合もそれらの間に谷8、8’の境界を定める製品並びに該製品の製造方法及び使用に関する。本発明の製品は、経済的にさらに改良された流れ特性で製造可能である。これは、いずれの場合も少なくとも2つのリブ1、1’、1”が、それらがそれぞれ境界を定める谷8、8’を備えて群G、G’に組み込まれ、少なくとも2つの群G、G’が存在し、各群G、G’は、その隣りに配置された各群から、流体の流れ方向Sに対して横断方向に見て、谷8、8’によって隔てられ、かつそれぞれの群G、G’を互いに隔てる谷12、12’の高さプロファイルはいずれの場合も、群G、G’の当該リブ1、1’、1”(同時に互いに群G、G’を隔てる谷12、12’に隣接している)によって境界を定められた谷の高さプロファイルとは異なるという点で達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流れ方向に流れる流体と接触するように設けられた少なくとも1つの表面セグメントを有する流体適用のための製品であって、流体と接触するセグメント内には、特定の長さと形状のリブが形成され、その隣接リブはいずれの場合もその間に谷の境界を定める製品に関する。本発明は、該製品の製造方法及び使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
上記タイプの製品は、例えばシート若しくはパイプ又はシート若しくはパイプ製の他の流動体であり、実際の使用では流動性媒体がその中又は上を通って流れる。該製品は、例えば太陽熱発電所用の熱交換器の製造で、又は家庭用若しくは工業用器具で使われる吸引装置用吸引パイプとして、又は他の用途で使用される。最適のエネルギー利用を視野に入れて、これら及び匹敵する流体適用において、1つの必須の構成目的は流動損失を最小限に減らすことである。
【0003】
本発明の製品の上を流れる流体は、水、油、懸濁液若しくは分散液等の液体、又は例えば空気、酸素、窒素、アルゴン等の気体若しくは気体混合物であり得る。流体は同一相の混合物であってよく、また気体−液体若しくは粒子−流体混合物又は粒子−気体流であってもよい。個々の相部分は濃度差を有してよい。また、相内又は流動流体の相間で物質交換が起こることもある。
【0004】
パイプ、シート及びシートフィルム、一般的にフィルムの製造に用いられるプロセスは大いに異なる。スチール又は軽金属材料製のシート、シートフィルム及びフィルムは一般的に製造プロセスで熱間圧延又は冷間圧延される。それらが腐食しやすい材料から成る場合、それらは一般的にコーティングもされる。非耐食スチール製のシートは一般的に亜鉛、スズ、亜鉛−マグネシウムでコーティングされる。それに加えて或いはその代わりに塗装層を適用することがある。
【0005】
シートメタルからの流体適用に適したパイプの製造では、一般的にシートをスロットプロファイルに形成する。結果として生じるスロットを次に溶接プロセスで閉じる。或いはラウンドキャスティングからシームレスにパイプを作ることができる。
【0006】
流体適用を意図したコンポーネントの製造の全ての既知プロセスの一般的特徴は、現存技術に従って作製された製品の表面構造が以下の特徴を有することである。
−表面構造は、実際には確率論的であり、不正確に描写されているのみである。表面のトポグラフィー及び粗さを描写するため、例えば算術平均粗さRa、最大粗さ深さRy、平均粗さ深さRz等のような統計的平均値が使用されている。
−シートの製造では、シートのトポグラフィー又は粗さは、シートの熱間又は冷間圧延に用いられる作業ロールのテクスチャリングによって影響され得る。従って対応ロールのテクスチャリングによって、上述したキー値が影響を受け、それによって表面の視覚的印象、又は深絞り及び加圧などのその後の成形工程における塗装性若しくは変形挙動が影響され得る。しかしながら、このようにして作り出せる表面構造は、実際には実質的に確率論的なままである。
−ここで製品表面の流体挙動に必須の中心的特性を描写するためには、一般的に砂粗さ、摩擦係数X、抵抗カウント並びにいずれの場合も流動下の表面で生じる摩擦及び圧力損失を描写するために同様の経験的に決定されたキー値のような特有のキー値が用いられる。関連キー値は、第1に流れの性質(層流、乱流)によって、また第2にいずれの場合も流動流体と接触する製品の製造で用いられる材料及びプロセスによって影響される。従って縦シーム溶接、新しいローラ表皮を用いたスチールパイプでは、等価の砂粗さkの値は、典型的に0.04〜0.1mm(確率論的)の範囲内にある。
【0007】
資源の有効利用及びエネルギー(ここでは電気、ポンプパワー、燃料等)の環境及び気候に優しい利用を視野に入れて、中を通って又は周囲を流体が流れるコンポーネントの流動損失を最小限にすることが特に重要である。パイプを介して又は本体の周囲で流体を送達するのに必要なエネルギーは、それぞれのコンポーネントの流体接触にさらされるセグメント、すなわち、流体が中を通って流れるパイプの内面又は流体が周囲を流れる本体のそれぞれの壁によって流体内に生じる摩擦損失によって決まる。コンポーネントと流体の相対運動のため、少なくともそれらの間に現われる摩擦に打ち勝たなければならない。
【0008】
流体輸送パイプの場合、1つの因子は、流体がパイプを通って速度vで流れるときに生じる圧力損失Dpである。本体周囲を流れる流体の場合、比較できるエネルギー値として摩擦係数cwを用いることが多い。
【0009】
中を通って又は周囲を流体が流れるコンポーネントでは原則として摩擦損失が生じる。接触ゾーンでは、流体と、コンポーネントの、流体が湿らせるセグメントとの間の相対速度がゼロに等しいからである。コンポーネントのそれぞれのセグメントにおける流体速度とさらに外への流れ、結果としてパイプ流れの場合の流体速度との間で、速度プロファイルは、パイプの内壁におけるゼロ乃至パイプ中央の最大速度の範囲を形成する。本体周囲を流れる流体の場合、対応する速度プロファイルは、それぞれのコンポーネントにおける「ゼロ速度」から、それぞれのコンポーネントから間隔の空いた位置にあって影響の及ばない外部領域内の最大流速までの範囲という結果になる。
【0010】
流動流体とコンポーネントの間の接触領域内では、流体と壁/本体の間のエネルギー損失も熱伝達又は物質伝達も明白に決定する界面層として知られる特徴的な流れ領域が形成される。観察部位及び流れの形態(相流又は乱流)に応じて、層流界面層、遷移領域及び乱流界面層が生じる(流れのためにも温度及び物質濃度のためにも)。それらの空間広がり及び層流から乱流への変化の部位を粗さkの関数として決定することができる。
【0011】
最初に述べたように、粗さkは、通常、確率論的な値であり、製造プロセスによって決まる。シートを熱間圧延及び冷間圧延で製造すると、圧延パラメータ及びロールの表面粗さは、結果として生じるシートの粗さに決定的な影響を与える。
【0012】
摩擦損失又は熱伝達減少の別の原因は、コンポーネントの湿った壁と接触する流れ領域からの粒子又は液滴の輸送の結果として生じる沈着物である。沈着機構は、第1に化学的、冶金学的又は熱力学的規則性によって決まり、第2に表面の粗さによって決まる。
【0013】
壁から壁に沿って流れる流体への熱伝達(冷却プロセス、加熱プロセス又は入射放射線のいずれかによる)も壁のところでの流体の挙動に直接影響を与える。従って熱交換は特に、関連流体の粘度に影響を与える。接触面の領域内で供給又は消散される熱の結果として、壁に近い領域と壁から遠くて影響されない流れ領域との間に粘度勾配が形成される。太陽熱又は匹敵する用途の場合、この勾配の形成は、関連対象の熱伝達挙動全体に影響を及ぼす。
【0014】
特許文献1は、関連本体の表面に、流れ方向に伸びるリブを形成する(それらは鋭い縁のリブによって互いに隔てられている)という点において、上を乱流流体が流れる表面、例えばパイプの内面の流れ抵抗を減少させ得ることを開示している。これらのリブはそれぞれ、隣同士かつ間隔を空けて流れ方向に横断して又は斜めに配置された複数のリブから成る複数のスタガードリブ群に配置されている。流体の流れ方向に連続するリブ群のリブを流れ方向に互いに側方にオフセットに配置することができる。同時に個々のスタガードリブ群のリブは、流れ方向に短く伸長している。流れ方向に横断して配置された隣接リブは、それらの間にいずれの場合もフルーティングの様式で形成された谷の境界を定め、隣接リブへの移行はフルート様式で丸められている。スタガード配置は、前記表面構築の効果にとって決定的とみなされる。スタガードオフセットで配置された短いリブの目標とした形成は、壁に近い領域の流れ抵抗を最小限にするのに特に有効であり得る。
【0015】
特許文献2は、一般的に、周囲又は上を流体が流れる表面に、シャークスキン効果を作り出す表面構造を与えれば、上又は周囲を流体が流れる表面における流れ抵抗を減少させることができ、特に流れ機構の効率をさらに高められると開示している。これは、材料の除去、特に表面をエッチングするか、又は関連表面上に所望構造を形成するコーティングを適用することによって達成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】独国特許出願公開第3609541(A1)号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1925779(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上で説明した従来技術に照らして、本発明の目的は、経済的にさらに改良された流れ特性で製造可能な製品、その製造方法及び該製品の特に有用な使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的は、該製品が請求項1に従って形成されるという点において、本発明により達成される。
【0019】
方法に関しては、上で概要を述べた課題に対する本発明の解決法は、本発明により作り出される表面が、製品の、流体と接触するそれぞれのセグメント内に成形工程でエンボス加工されることである。
【0020】
本発明の製品は、流体を輸送するパイプの製造で特に有利に使用することができる。それらの特定の流れ特性のため、本発明の製品でできたパイプは、太陽熱発電所、例えば熱交換器などで使うのに特に適している。
【0021】
本発明の有利な改良点については、従属請求項に提示してあり、以下に説明する。
【0022】
本発明の製品は、その表面セグメントの少なくとも1つが、流れ方向に流れる流体と接触する、流体適用の実用化のために提供される。上記従来技術によれば、流体と接触するセグメント内に、特定の長さと形状のリブが形成され、その隣接リブは、いずれの場合もリブ間に谷の境界を定める。
【0023】
典型的に、本発明の製品は、金属材料、特に、実際に使われて、それに関連して動く流体との接触が生じるパイプ又は他の流動体の製造に使用されるように、十分に高い耐食性を有するスチール製のシート又はホイル材料である。
【0024】
本発明によれば、該製品の表面は、以下のように構築される。
−いずれの場合も少なくとも2つのリブが集まって群が作られ、いずれの場合もこれらのリブ間の境界を定める谷を備え、少なくとも2つの群が存在し、
−各群は、その隣りに配置された各群から、流体の流れ方向に対して横断方向に見て、谷によって隔てられ、かつ
−いずれの場合もそれぞれの群を互いに隔てる谷の高さプロファイルはいずれの場合も、群の当該リブ(同時に、互いに群を隔てる谷に隣接している)によって境界を定められた谷の高さプロファイルとは異なる。
【0025】
本発明の製品では、この表面上に形成されたリブ及びこれらのリブ間にある谷は、もはや同一形状ではなく、均等な配列で置かれていないが、異なる構成のリブ及び谷の目標とした群化及び位置決めによって、第1に再現性よくかつ経済的に大規模で製造でき、第2に流動損失を最小限にすることに関して最適化されている表面構造が作り出されるように形成される。
【0026】
この最適化は、群の隣接谷と異なる形状を有する、群間にある谷を備える本発明のリブ及び谷の群化によって、表面近傍の流れにおける乱流の発生が特に効率的に防止される。驚くべきことに、従来技術で都合が良いと見なされたシャークスキン効果の様式の表面構造のスタガード秩序化は特に有効でないが、リブと谷の別々の形状を有するリブと谷の比較的無秩序な配列が特に有利な流れ挙動を与えることが分かった。
【0027】
本発明の表面構造を形づくることの特定の利点は、本発明によってもたらされる、リブと谷で形成された群の配列のパターンは、群を隔てる谷の形状が異なるにもかかわらず、機械で容易かつ確実に再現性よく製造可能なことである。本発明の製品がメタルシートである場合、例えば、圧延工程で対応するネガティブエンボス加工に適合したローラを用いてシートの表面に容易に本発明の表面構造をエンボス加工することができる。
【0028】
従って、本発明によれば、少なくとも、製品に関連して流れる流体に製品が直接さらされる領域内に、その流れ抵抗に関して最適化された表面を有する製品が得られる。明らかに、本発明従って構築される表面の範囲は、製品の必ずしも流体と接触するセグメントに限定されない。むしろ、例えば、本発明の表面構造を製品の表面全体に広げることが生産技術面に関して適しているときは、そのようにすることもできる。
【0029】
それぞれの用途によっては、本発明の製品が、流体と接触するその表面の領域内に、リブと谷の群が形成されるセグメントを含み、かつ該群が存在せず、従って平坦に形成されるか又は異なる構造を有するセグメントを含むのが賢明なこともある。このように、流体によって湿らされる製品の表面について、本発明により形成されたリブと谷の群を備える連続セグメントと異なって形成されたセグメントとを交互に配置することが考えられる。また、平坦に形成されたセグメント内に、リブと谷の分離した群で本発明により形成されたセグメントを配置することもできる。
【0030】
本発明により形成された表面構造の結果として、中を通って流体が流れるか又は本体の周囲若しくは上を流体が流れるコンポーネント(パイプ)において、流れ抵抗に関して最適の条件が作り出される。従って、本発明の成形は、例えば流動界面層の厚さ、温度界面層の厚さ、壁流が層流から乱流へ変化する遷移領域の位置と範囲、流体と癖セグメント(このセグメントに流体がぶつかって流れる)との間の熱伝達挙動、流体と、流体が上を流れる壁セクションとの間の物質伝達挙動、壁に近い領域と壁に近い領域の外側の邪魔されない流れとの混合プロセス、表面と接触している流れの粒子又は液滴の挙動、壁に近い領域内の流体の特性及び摩擦損失の最適化を可能にする。
【0031】
2つの隣接群を互いに隔てる谷の高さプロファイルの、群の隣接谷の高さプロファイルからの偏差は、いずれの場合も互いに隣接して配置された群が、群を隔てる谷に隣接する群の谷の床より低いという点で最も簡単な様式で達成可能である。また、高さプロファイルの偏差は、2つの群を隔てる谷は凹曲面を有するが、群の隣接谷は凸局面を有するか、又はその逆であることに存し得る。2つの隣接群を隔てる谷は溝又はリブを備えるが、群の隣接谷は均一に滑らかな表面を有するか、又はその逆であるとも考えられる。
【0032】
表面近傍の乱流の発生を抑制できる有効性は、各群の少なくとも1つのリブが群の他のリブより大きい高さを有する、すなわち、群の少なくとも2つのリブが異なる高さを有するという点で、さらに高められる。
【0033】
互いに隣接する2つの群を隔てる谷の床に関して、いずれの場合も流れ方向に対して横断方向に見て、本発明の製品のリブの高さは典型的に10〜2000μmの範囲である。
【0034】
本発明の方面構造において、リブと、それらが境界を定める谷とで形成された群が、流体の流れ方向に見て互いにオフセットに配置されている場合、このことは、壁近傍の層流の発生を回避することに寄与する。このような群の配置の場合、流動層の特に集中的な交換が起こり、これによって特に、上を流体が流れる表面セグメントと流体との間の熱伝達がプラスの影響を受ける。
【0035】
流れ挙動及び熱伝達に及ぼす別の有利な効果は、流体の流れ方向に見て互いに後方にある群又は流体の流れ方向に対して横断方向に見て隣同士にある群が互いに距離を空けて配置されている場合に達成可能である。典型的に平坦な間隔エリアの領域で可能な場合に起こる界面層流は、次に、該スペースで決まる長さ後に、リブと谷の群に会い、そこでそれらはそれらの形と方向を変え、結果として異なる流動層の交換が起こる。この効果は、互いに間隔を空けて配置された2つの群間に存在する間隔エリアの床がそれぞれの間隔エリアに隣接する群の谷の床より低いか、又は流体の流れ方向に見て互いに後方に配置された群が、流れ方向に対して横断方向に互いにオフセットに位置決めされている場合に特に強力である。少なくとも2つの群がそれらに隣接する群の1つから異なる間隔を有する場合に同じ目的が達成される。
【0036】
群の間隔を空けた配置によって達成される本発明のマクロ構造化のみならず、流れ挙動の最適化に関して有益な表面の微細構造化も、各群が、それぞれ少なくとも2つのリブと、3つのリブによって境界が定めらた谷とを含む少なくとも2つのサブ群を含み、かつ流体の流れ方向に対して横断方向に見て分離谷で互いに隔てられるという点で達成可能である。互いにそれぞれのサブ群を隔てる谷の高さプロファイルは、いずれの場合も該サブ群の当該リブ(同時に、互いにサブ群を隔てる谷に隣接している)によって境界が定められた谷の高さプロファイルと異なるので、本発明によれば、流体条件で有利なリブ及び谷のエンボス加工を微細構造に使用することもできる。
【0037】
本発明の表面構造は、リブとそれらが境界を定める谷とから形成された群及びそれらのサブ群がそれぞれ矩形エリアをカバーする場合に生産技術の点で特に簡単に製造可能である。個々の群及びそれらのサブ群が、圧延又は匹敵する成形プロセスで製品の表面に刻印されるとき、群の配置が特有の反復パターンに従えば有利である。群がサブ群を含む場合、上から見てこれらを交差するように配置することができ、或いはそれらがそれぞれカバーするエリアの中心点が三角形の端点を形成するように配置することができる。
【0038】
一緒にまとめられたサブ群の領域内で、できる限り乱流の発生を回避するためは、少なくとも2つのサブ群が互いに異なる高さプロファイルを有すれば好適であり得る。
【0039】
典型的に、群は、それらがサブ群、又はそれらのサブ群を含まない限りにおいて、それぞれ10×10μm〜2000×2000μmの面積をカバーする。いくつかのサブ群を合わせて群にすれば、この群は実質的に、より大きい面積をカバーすることができる。
【0040】
従って、典型的に本発明の製品では、実際に使われて流体の流れにさらされるセグメントに、少なくとも2つのリブとその間に谷を有する群を含む表面構造が刻印される。この群がカバーする面積の長さと幅は典型的に10〜2000μmに相当し、少なくとも1つのリブは、10〜2000μmの高さであり、群のリブは少なくとも1つの谷によって連結され、この谷は、2つの隣接群間にある好ましくは構造を持たない谷の床より高い少なくとも1つの領域を含む。
【0041】
リブの端面(流体はこの端面にぶつかって流れる)の領域内での乱流の発生を防止するためには、関連端面を面取り又は丸くするのが役立ち得る。同じ目的で、下流側のリブ面を面取り又は丸くして、そこで流れが分離するのを回避することができる。また、流体条件では、流れ方向に見て、比較的幅広の端面接触表面から発するリブの側面が互いの方へ伸びるか又はリブのより狭い下流側の端面方向に先細になれば有利なこともある。
【0042】
典型的に本発明の製品は、ステンレススチールストリップ又はスリットストリップ等の圧延によって製造された平坦なスチール製品である。
【0043】
以下、実施形態例を示す図面を参照して本発明をさらに詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の表面構造に形成されたリブの種々の可能な断面形状を示す。
【図2】本発明の表面構造に形成されたリブの種々の可能な形状の側面図を示す。
【図3】本発明の表面構造に形成されたリブの種々の可能な形状の斜視図を示す。
【図4】本発明の表面構造の群の種々の高さプロファイルを示す。
【図5】表面構造の群の種々の配列の斜視図を示す。
【図6】シートスチール製品の種々の表面の平面図を示す。
【図7】本発明の表面構造の斜視図を示す。
【図8】本発明の表面構造の種々のサブ群を含む各群の平面図を示す。
【図9】熱交換器用パイプの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1a〜1fは、例えば熱間圧延及び冷間圧延されたステンレススチールシートの形で存在する製品Pの表面構造にエンボス加工されたリブ1の種々の可能な断面形状を示す。リブ1の厚さa及び高さbはそれぞれ0〜2000μmの範囲にあり、リブ1のフランク2、3と底部面4との間に囲まれる角度γ1、γ2は、0°〜125°に相当し得る。角度γ1、γ2は、等しくても等しくなくてもよい。
【0046】
リブの屋根面5は平坦(図1a〜1c)又は湾曲凹面(図1e)又は凸面であり得る。0〜2000μmの範囲にある、リブ1のフランク2、3への遷移半径r1、r2は均等又は不均等に形成可能である。三角形の断面形状を生じさせるように、鋭角で頂部にて互いの方へ伸びるフランク2、3を有するリブ1を形成するか(図1d)、又は深遠なフランクではなく、単に凹面湾曲屋根面5を有するリブ1(図1f)を用いることも考えられる。
【0047】
厚さa、高さb、角度γ1、γ2及び半径r1、r2の断面プロファイルを徐々に(線形又は非線形)増やすか又は減らして、流れ方向Sのプロファイルの変化を達成することができる。
【0048】
流れ方向Sには、リブ1は直線コース又は曲線若しくは多重曲線を持つことができる。流れ方向Sに一度又は二度以上リブ1の断面形状を変えることも考えられる。
【0049】
図2a〜2dに示すように、流れ方向に互いに後方に配置されたリブ1、1’、1”は、それぞれの流体の流れ方向Sの異なる長さL1、L2、それらの屋根面5の異なる高さコース並びに端面接触面6及び異なる角度α1、α2で面取りされた下流面を持つことができる。流れ方向Sの連続リブ1、1’、1”間の距離D1、D2が互いに異なることもできる。深遠な屋根面を持たないが、接触面6と下流面7が直接互いに隣接するリブ形状も考えられる(図2b、2c)。
【0050】
流れ方向Sに見てリブ1、1’、1”は、一定の接触厚さaを持つことができる。リブ1、1’、1”のそれらの長さL1、L2にわたる厚さを変えることも可能である。図3a、3bに示すように、流れ方向Sに見て、リブ1、1’、1”が接触面6の領域の大きい厚さaから始まって下流面7の領域のより小さい厚さa’へ先細になり得る。このためには、リブ1のフランク2、3は、下流面7の方向に互いの方へ伸び得る。また、リブ1、1’、1”の高さbは一定であるか又はリブ1、1’、1”のそれぞれの長さL1、L2にわたって異なり得る。従って流れ方向Sの高さbは、接触面6の領域の小さい高さb’から下流面の領域の大きい高さb”へ増加し、或いはその逆であり得る。
【0051】
さらに、流れ方向Sに見てリブ1、1’、1”が曲線を描くか又は多重曲線を有すれば有利であろう。
【0052】
群Gに組み込まれたリブ1、1’、1”は、いずれの場合もそれらの間に谷8、8’、8”の境界を定め、この谷がリブ1、1’、1”を結び付けている。それぞれの谷8、8’、8”は、例えば凸曲面(図4a)、凹曲面(図4b)、ホッパー様断面(図4d)又は平坦な床9を有し、鋭く規定された縁10又は連続曲面フルーティング11で隣接リブに変わり得る。それぞれの谷8’を、互いに階段の様に続く異なる高さb、b’の少なくとも2つのリブ1、1’、1”間に存在する平坦域として形成することもできる(図4c)。
【0053】
各群Gは、少なくとも2つのリブ1、1’、1”を含む。群のリブ1、1’、1”は、同一高さbを持つことができる(図4a、4b)。群Gの少なくとも1つのリブ1’が他の群の高さbと異なる高さb’を有すれば好適なこともある(図4c〜4h)。
【0054】
それぞれの群G、G’の大きさに応じて、流れ方向Sに対して横断方向Xに測定された群Gの互いの距離q、q’は、5μm〜10mmの範囲であり得る。距離q、q’は、横断方向Xに配置された隣接群G、G’の全ての対で同一でも異なってもよい。それらはいずれの任意関数にも従って局所的に特有の特性を定めることができる。
【0055】
2つの隣接群G、G’間に存在する谷12、12’は、平坦に形成されるか又は平面とは異なる高さプロファイルを持つことができる。それぞれの群G、G’を隔てる谷12、12’の高さプロファイルは、群G、G’のリブ1、1’(同時に、群G、G’を互いに隔てる谷12、12’に隣接している)によって境界を定められた谷8、8’の高さプロファイルとは異なる。
【0056】
流れ方向Sに見て、群G、G’を互いに列を成して並べて配置するか(図5a)又は横断方向Xに互いにオフセットに配置する(図5b)ことができる。オフセット配置の場合、オフセットVは、全ての群G、G’で同一である必要はなく、異なって局所的に特有の特性を定めることもできる。
【0057】
さらに、図5a、5bにも示すように、群G、G’を流れ方向Sに互いに距離Zだけ離して配置することができる。これも一定である必要はなく、局所的に特有の特性を定めるために流れ方向Sに互いに隣接する群G、G’の各対で異なってよい。そして、この方向に隔てられた群G、G’間に存在する間隔エリア13、13’を、横断方向Xに群G、G’を隔てる谷12、12’のように、平坦に形成するか或いは局所的に表面の特有の特性を定めるように別の形に形成することができる。それぞれの局所条件によっては、谷12、12’と間隔エリア13、13’が同一の空間を占めることがある。これは、例えば群G、G’と、間隔エリア13、13’又は群を隔てる谷12、12’とが市松模様のように交互に配置される場合である。
【0058】
ステンレススチールシートの形で存在する製品Pは、群G、G’がなく、かつ大体は平坦に形成された表面セグメントA’を有することができる。製品Pの表面の、群G、G’があるセグメントAは、製品Pの全幅Bに広がり、2つの平坦な表面セグメントA’間にそれぞれ位置することがあり(図6a)、或いは平坦な表面セグメントA’に隔離して配置されることがある(図6b)。
【0059】
製品Pの特有のセグメントAに本発明に従って表面構造を形成することによって、その場所特有に明確な特性をエンボス加工することができる。従って、本発明の表面構造を刻印することによって、局所的又は場所特有の特定の熱若しくは物質移動挙動、特定の圧力損失、特定の摩擦効果又は特定の光学的効果、例えば太陽放射線の放出係数又は吸収係数を定めることができる。
【0060】
群G、G’は、群G、G’と同様に互いに配置されるサブ群U、U’、U”をそれぞれ含むことができる。群G、G’のサブ群U、U’、U”を流れ方向Sに互いに後方に又は横断方向Xに隣同士に位置づけることができる。横断方向Xに互いに隣接するサブ群U、U’、U”を隔てる谷は滑らか又は平坦、すなわち、構造を持たないか、或いは高さプロファイルを有することができるが、その最大高さは隣接サブ群の谷の最大高さより小さい。
【0061】
図8a〜8bに示すように、群G、G’は2、3、4、5又はそれより多くのサブ群U、U’、U”から成ることができ、各群G、G’は、流れ方向Sと横断方向Xの両方に隣接する群G、G’から距離p、p’又はZを有する。サブ群U、U’、U”間に存在する谷(横断方向X)及び間隔エリア(流れ方向S)は、群G、G’によって形成されたマクロ構造内で群G、G’を隔てる谷12、12’及び間隔エリア13、13’のように、滑らかであるか又は任意関によって描写される平坦プロファイルを有し得る。しかしここでも、サブ群を隔てる谷及びそれらの間に存在する間隔エリアの高さプロファイルは、可能ならばサブ群のリブの高さプロファイルより高くない。
【0062】
群G、G’に組み込まれるサブ群U、U’、U”を同一に形成し、或いは製品Pの表面上を流れる流体の特定の流れ挙動に特有の様式で局所的に影響を与えるために異なって形成することができる。
【0063】
熱交換器用のパイプ14(図9では、明確にするため、縮尺比に従って示していない)は、製品Pから得られたカットシートでできている。パイプ14は、第1製造工程でマンドレルの周りで曲げられて円形断面を有するスロットプロファイルとされた。次にこのスロットプロファイルの接合スロットはレーザ溶接を用いてシーム15で閉じられている。
【0064】
パイプ14は、その外面16にもその内面17にも本発明の表面構造を備えている。水又は他の熱交換器媒体が通って流れる、パイプ14の内面17では、この表面構造は、流れ抵抗を減らすと同時に、パイプ壁から熱交換器媒体への熱伝達を最適にする。しかし、パイプ14の外側に形成された表面構造は、最適の熱吸収能を生じさせる。このように全体で、本発明の表面構造を使用すると、パイプ14に衝突する放射エネルギーは、パイプ14によって高効率で吸収され、かつパイプ14を通って流れる媒体へ消散される。
【符号の説明】
【0065】
1、1’、1” リブ
2、3 リブ1、1’、1”のフランク
4 リブ1、1’、1”の底部面
5 リブ1、1’、1”の屋根面
6 リブ1、1’、1”の接触面
7 リブ1、1’、1”の下流面
8、8’、8” 群G、G’の2つのリブ1、1’、1”間の谷
9 谷8、8’、8”の床
10 縁
11 フルーティング
12、12’ 2つの隣接群G、G’を隔てる谷
13、13’ 間隔エリア
14 パイプ
15 溶接シーム
16 パイプ14の外面
17 パイプ14の内面
α1、α2 角度
γ1、γ2 角度
a、a’ リブ1、1’、1”の厚さ
b、b’、b” リブ1、1’、1”の高さ
A’ 表面セグメント
A 製品Pの表面の、群G、G’があるセグメント
B 製品Pの幅
D1、D2 流れ方向Sの連続リブ1、1’、1”間の距離
G、G’ 群
L1、L2 リブ1、1’、1”の長さ
q、q’ 群G、G’の間隔
P 製品(ステンレススチールシート)
r1、r2 遷移半径
S 流体の流れ方向
U、U’、U” 群G、G’のサブ群
V オフセット
X 流れ方向Sに対して横断方向
Z 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流れ方向(S)に流れる流体と接触するように設けられる少なくとも1つの表面セグメント(A)を備える流体適用のための製品であって、流体と接触するセグメント(A)には、特有の長さ(L1、L2)と形状のリブ(1、1’、1”)が形成され、その隣接リブ(1、1’、1”)は、いずれの場合もそれらの間に谷(8、8’)の境界を定める製品において、下記
−いずれの場合も少なくとも2つのリブ(1、1’、1”)が、それらがそれぞれ境界を定める谷(8、8’)を備えて群(G、G’)に組み込まれ、
−少なくとも2つの群(G、G’)が存在し、
−各群(G、G’)は、その隣りに配置された各群(G、G’)から、流体の流れ方向(S)に対して横断方向に見て、谷(8、8’)によって隔てられ、かつ
−それぞれの群(G、G’)を互いに隔てる谷(12、12’)の高さプロファイルはいずれの場合も、群(G、G’)の当該リブ(1、1’、1”)(同時に、互いに群(G、G’)を隔てる谷(12、12’)に隣接している)によって境界を定められた谷の高さプロファイルとは異なる
ことを特徴とする製品。
【請求項2】
いずれの場合も互いに隣接して配置された群(G、G’)を隔てる谷(12、12’)の床(9)が、群(G、G’)を隔てる谷(12、12’)に隣接する群(G、G’)の谷(8、8’)の床より低いことを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項3】
群(G、G’)が、流体の流れ方向(S)に見て互いにオフセットに配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の製品。
【請求項4】
流体の流れ方向(S)に見て互いに後方にある群(G、G’)が、互いに距離(Z)だけ離れて配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製品。
【請求項5】
流れ方向(S)に互いに間隔を空けて配置された群(G、G’)間に存在する間隔エリア(13、13’)の床が、それぞれの間隔エリア(13、13’)に隣接する群(G、G’)の谷(8、8’)の床(9)より低いことを特徴とする請求項4に記載の製品。
【請求項6】
流体の流れ方向(S)に見て互いに後方に配置された群(G、G’)が、流れ方向(S)に対して互いに横断方向にオフセットに位置決めされていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の製品。
【請求項7】
群(G、G’)が、流体の流れ方向(S)に見て一列に互いに後方に配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の製品。
【請求項8】
群(G、G’)の少なくとも2つのリブ(1、1’、1”)が、隣接群(G、G’)からそれらを隔てる谷(12、12’)の床に対して異なる高さ(b、b’、b”)を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の製品。
【請求項9】
各群(G、G’)が少なくとも2つのサブ群(U、U’、U”)を含み、これらのサブ群(U、U’、U”)は、それぞれ少なくとも2つのリブ(1、1’、1”)と、これらのリブ(1、1’、1”)によって境界を定められた谷(8、8’)を含み、かつ流体の流れ方向(S)に対して横断方向に見て分離谷(8、8’)によって互いに隔てられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の製品。
【請求項10】
それぞれのサブ群(U、U’、U”)を互いに隔てる谷の高さプロファイルが、サブ群(U、U’、U”)の当該リブ(1、1’、1”)(同時にサブ群(U、U’、U”)を互いに隔てる谷に隣接している)によって境界を定めらた谷の高さプロファイルとは異なることを特徴とする請求項9に記載の製品。
【請求項11】
少なくとも2つのサブ群(U、U’、U”)が、互いに異なる高さプロファイルを有することを特徴とする請求項10に記載の製品。
【請求項12】
2つより多くの群(G、G’)が存在し、かつ少なくとも2つの群(G、G’)は、いずれの場合もそれらに隣接する群(G、G’)の1つから異なる距離(p、p’、Z)を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の製品。
【請求項13】
流体と接触するその表面に、リブ(1、1’、1”)と谷(8、8’)との群(G、G’)が形成されているセグメント(A)が形成され、かつ平坦に形成されているセグメント(A’)が存在することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の製品。
【請求項14】
平坦なスチール製品であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の製品。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の製品(P)の製造方法において、成形工程で、製品(P)の、流体と接触するそれぞれのセグメント(A)に前記表面構造をエンボス加工することを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に従って形成された製品(P)の、流体を輸送するパイプ(14)の製造のための使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−519845(P2013−519845A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552339(P2012−552339)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051488
【国際公開番号】WO2011/098383
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(510041496)ティッセンクルップ スチール ヨーロッパ アクチェンゲゼルシャフト (18)
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Steel Europe AG
【住所又は居所原語表記】Kaiser−Wilhelm−Strasse 100,47166 Duisburg Germany
【出願人】(503105413)ティッセンクルップ ニロスタ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (5)
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Nirosta GMBH