説明

流入沈砂槽

【課題】 雨水貯留浸透槽へ土砂、泥、ゴミ等といった異物が流れ込むことを抑制することができるとともに、メンテナンス作業を十分に行うことができる程度に広い内部空間を有し、かつ軽量なものとすることができる流入沈砂槽を提供する。
【解決手段】 雨水貯留浸透槽内に挿入設置される流入沈砂槽であって、縦長の槽状本体10を有し、該槽状本体10の周壁部には雨水溢流口とされる複数の連通窓11が設けられているとともに、雨水流入口が設けられるようになっており、上記槽状本体10の周壁部は、レジンコンクリートを材料に用いている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集水した雨水の貯留空間として地中に埋設され、該雨水を貯留する、あるいは一時的に貯留した後で地中に緩やかに浸透させて排出するための雨水貯留浸透槽に挿入設置される流入沈砂槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、上記のような雨水貯留浸透槽は、地中に掘削形成された空間内に貯留材を埋設したうえで、雨水を集水する流入枡と流路を繋げることで構築されている。上記貯留材は、不織布製等のシートによって外側から被覆されており、その内部に流れ込んだ雨水を外部へ徐々に放出する性能を有している。そして、このような貯留材の性能を利用することで、上記雨水貯留浸透槽は、雨水を貯留したり、あるいは一時的に貯留した後で地中に緩やかに浸透させたりする、雨水利用施設や防災調整池等として利用されている。
一方で、こうした雨水貯留浸透槽は、雨水に混じって土砂、泥、ゴミ等の異物が流れ込むと、こうした異物が上記不織布製等のシートを目詰まりさせることで貯留・浸透性能が低下してしまう。従って、貯留・浸透性能を維持するべく、雨水貯留浸透槽は、該異物を除去するための清掃等といったメンテナンス作業を必要とするが、上記貯留材が地中に埋設された状態にあることから、該メンテナンス作業が非常に困難なものとなる。
上記のような雨水貯留浸透槽のメンテナンス作業を行うべく、特許文献1には、雨水貯留浸透槽の底部に空間を設け、このような空間に作業者が入り込むことでメンテナンス作業を行うことが開示されており、特許文献2,3には、このような溝や空間へ作業者が入り込みやすくするためのマンホールを設けることが開示されている。しかし、このように雨水貯留浸透槽の底部に作られた溝や空間は、非常に狭くなるのでメンテナンス作業が行いづらく、また雨水貯留浸透槽の底部の全体を清掃することが出来ず、さらに雨水貯留浸透槽の底面に敷設された不織布製等のシートに異物が絡みついてしまうので、該雨水貯留浸透槽がその性能を保持できる程度に十分なメンテナンス作業を行うことができない。
そこで、特許文献4,5には、流入枡から流れ出た雨水を流入沈砂槽へ送り、該流入沈砂槽で異物を除去した後に、雨水貯留浸透槽の内部へ送ることが開示されている。この流入沈砂槽は、貯留材との間を仕切るように配された複数の壁部からなる縦長の槽状をなすように形成されている。そして、該流入沈砂槽は、地中に埋設されるものであるので土圧に耐えられるように、材料にコンクリートを用いたうえ、周壁を厚肉にして、プレキャスト成形で一体として形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−90167号公報
【特許文献2】特開2006−307494号公報
【特許文献3】特開2004−19122号公報
【特許文献4】特開2005−120658号公報
【特許文献5】特開2008−291498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の流入沈砂槽は、その内部空間に異物が貯まるので、該内部空間に作業者が入ってメンテナンス作業を行うが、周壁が厚肉とされているので、外寸の大きさに比べると内寸が非常に小さく、内部空間が狭いので、メンテナンス作業を十分に行うことができないという問題があった。
また雨水貯留浸透槽の施工時には、流入沈砂槽を含めたうえで上記貯留材を丁度収容することができるようなサイズの穴を掘削した後、流入枡から伸びる管の位置に合わせて穴内に流入沈砂槽を設置し、その後で該流入沈砂槽の周囲を埋めるように該穴内に上記貯留材を充填している。この施工時に流入沈砂槽の設置位置がずれていると、穴の周縁で上記貯留材を充填することが出来なくなり、また穴を拡げることも出来ないので、一度充填した上記貯留材を穴から取り出して、流入沈砂槽を設置し直し、再び上記貯留材を充填し直すというように、施工工事をほぼ始めからやり直さなければならず、手間がかかるうえ、納期ずれという問題が生じてしまう。従って、流入沈砂槽の設置時には、その設置位置を入念に微調整する必要があるが、コンクリート製であるのみならず、周壁を厚肉にして一体として形成されている流入沈砂槽は、その重量が非常に重く、クレーン等の重機を使用することでしか設置することが出来ないものであるから、設置位置を微調整することが不可能であった。
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、雨水貯留浸透槽へ土砂、泥、ゴミ等といった異物が流れ込むことを抑制することができるとともに、メンテナンス作業を十分に行うことができる程度に広い内部空間を有し、かつ軽量な流入沈砂槽を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記従来の問題点を解決する手段として、請求項1に記載の流入沈砂槽の発明は、雨水貯留浸透槽内に挿入設置される流入沈砂槽であって、縦長の槽状本体を有し、該槽状本体の周壁部には雨水溢流口とされる複数の連通窓が設けられているとともに、雨水流入口が設けられるようになっており、上記槽状本体の周壁部は、レジンコンクリートを材料に用いていることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の流入沈砂槽の発明において、上記槽状本体の周壁部は、前壁部、後壁部及び左右一対の側壁部からなる角筒状であり、前壁部、後壁部及び左右一対の側壁部はそれぞれ別体として形成され、設置に際して角筒状に組み立てられるとともに、上記側壁部は、該側壁部の側面が上記前壁部の内面に当たるように配されたうえで、該前壁部の外面から挿入された連結材によって該前壁部と連結されることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
〔作用〕
請求項1に記載の流入沈砂槽によれば、レジンコンクリートは、結合材に熱硬化性樹脂を使用しており、該熱硬化性樹脂が重合反応によって高い結合力で硬化するため、結合材にセメントを用いることで水和反応によって硬化する通常のコンクリート(セメントコンクリート)に比べ、高強度で耐久性に優れた緻密な成形物が得られる。従って、レジンコンクリート製の流入沈砂槽は、周壁部を薄肉としても、周壁部を厚肉としたセメントコンクリート製のものと同等か、それ以上の強度が得られるので、メンテナンス作業を十分に行うことができる程度に広い内部空間を付与することが出来るとともに、軽量化を図ることができる。
請求項2に記載の流入沈砂槽によれば、槽状本体の前壁部、後壁部及び左右一対の側壁部をそれぞれ別体として形成することで、該槽状本体の周壁部を筒状の一体として形成することに比べ、上記流入沈砂槽の設置作業の簡易化を図ることができる。すなわち、上記槽状本体はコンクリートやレジンコンクリート等の材料で形成されるが、一体で形成したものは重量が非常に重くなるので、設置にクレーン等の重機が必要となる。これに対し、各壁部をそれぞれ別体として形成した槽状本体は、当然ではあるが壁部毎の重量が一体で形成したものに比べて軽いので、設置に必ずしも重機を必要とせず、作業者が人力で施工することも可能である。また壁部毎に別体として形成したものは、その軽さ故に容易に動かすことができるうえ、例えば設置位置を決める際には底板のみを使用し、設置位置を微調整した後で各壁部を組み立てる等、施工の柔軟性に富むものとなる。
さらに上記側壁部は、該側壁部の側面が上記前壁部の内面に当たるように配されたうえで、該前壁部の外面から挿入された連結材によって該前壁部と連結されるため、土圧が加わる方向から連結材が挿入され、かつ土圧を前壁部で好適に受けることができるので、一体で形成したものに勝るとも劣らない耐土圧性能を付与することができる。
【0007】
〔効果〕
本発明の流入沈砂槽によれば、雨水貯留浸透槽へ土砂、泥、ゴミ等といった異物が流れ込むことを抑制することができるとともに、メンテナンス作業を十分に行うことができる程度に広い内部空間を有し、かつ軽量なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態の流入沈砂槽を示す(a)は正面、(b)は背面から見た斜視図。
【図2】(a)は底壁用単位板材、(b)は底壁部を示す斜視図。
【図3】後壁用単位板材を示す(a)は外面、(b)は内面から見た斜視図。
【図4】前壁用単位板材を示す(a)は外面、(b)は内面から見た斜視図であり、(c)は前壁用上段板材の斜視図。
【図5】側壁用第1単位板材を示す(a)は外面、(b)は内面から見た斜視図。
【図6】側壁用第2単位板材を示す(a)は外面、(b)は内面から見た斜視図。
【図7】(a)は中間部用フィルタ、(b)は上部用フィルタを示す斜視図。
【図8】底壁部を敷設する状態を示す概念図。
【図9】(a)は設置位置を微調整する状態、(b)は底壁部を敷設した状態を示す概念図。
【図10】(a)は下段部を組み立てた状態、(b)は中段部から上段部を組み立てる状態を示す概念図。
【図11】(a)流入沈砂槽を設置した状態、(b)は雨水貯留浸透槽を施工した状態を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の流入沈砂槽を具体化した実施形態について説明する。
図1(a),(b)に示すように、本実施形態の流入沈砂槽は、略縦長の槽状本体10を有しており、該槽状本体10の周壁に複数の連通窓11を設けて構成されている。該流入沈砂槽は、雨水貯留浸透槽内で、雨水を集水する流入枡から伸びる流入管が接続される位置に挿入設置されて使用される。
上記流入沈砂槽においては、上記連通窓11が雨水溢流口とされるとともに、上記槽状本体10の周壁の所定個所に雨水流入口(図示略)が穿孔形成されて設けられるようになっている。そして、該流入沈砂槽は、該雨水流入口に上記流入管が接続されることで、該雨水流入口から内部へと雨水を流入させて集水し、該集水した雨水から土砂、泥、ゴミ等の異物を除去したうえで、該雨水を該雨水溢流口から溢流させて上記雨水貯留浸透槽内へ送り込むように構成されている。
特に本実施形態では、上記槽状本体10の周壁の前部(後述する前壁部15)に雨水流入口を設けることとし、上記槽状本体10の周壁の左右両側(後述する側壁部17)に設けられている連通窓11を雨水溢流口とすることで、雨水流入口から流れ込んだ雨水は、後壁部16に当たることで勢いを削がれつつ、槽状本体10の底部へ落ちることで、一時的に該槽状本体10の内部に停留され、該停留時に異物が槽状本体10の底部に沈殿する。その後、槽状本体10の内部に雨水がある程度貯まり、水位が上がって、雨水溢流口に達した際に外部へ緩やかに溢流されるので、槽状本体10の底部に沈殿した異物は、該雨水の溢流に巻き込まれることなく、沈殿したままの状態とされる。
上記流入沈砂槽は、上記のように雨水から異物を除去するものであるため、該異物が槽状本体10の内側、特に底部に貯まるようになっている。そこで、該異物の除去や清掃等といったメンテナンス作業を行うべく、槽状本体10の周壁で内面には、作業者が該槽状本体10の内部に出入りするための手掛かりや足掛かりとするハンドル12が設けられている。
また上述のように異物が上記槽状本体10の特に底部に貯まるので、該異物の雨水貯留浸透槽内への漏出を抑制するべく、雨水溢流口とされる上記連通窓11は上記槽状本体10の周壁の下部を除いて設けることが望ましい。このため本実施形態の流入沈砂槽では、上記連通窓11を上記槽状本体10の周壁の上段部及中段部に設けている。
なお、特に図示はしないが、上記雨水貯留浸透槽の施工時において、上記流入沈砂槽の上部にはマンホールが設置されるようになっており、必要があれば該マンホールを介して該流入沈砂槽の内部へ出入りすることが出来るようになっている。
【0010】
上記槽状本体10は、底壁部13と、該底壁部13の上面で周縁に立設された周壁部と、によって構成されている。さらに該周壁部は、前壁部15、後壁部16及び左右一対の側壁部17からなる四角筒状に形成されている。
なお、ここで云う四角筒状とは、その外周面に前面、後面及び左右一対の側面として認識可能な4つの略平面を有する形状を示しており、各側縁や各角部が必ずしも略直角状であるのみに限らず、面取り加工等されたアール状のものを含むこととする。
【0011】
上記底壁部13,上記前壁部15、上記後壁部16、及び上記左右一対の側壁部17は、それぞれ別体として形成されている。上記周壁部の四角筒状を為すべく、前壁部15及び側壁部17、また後壁部16及び側壁部17は、連結材であるボルト18を用いることで、相互に連結されている。そして、上記底壁部13,上記前壁部15、上記後壁部16、及び上記左右一対の側壁部17を一体としてではなく別体として形成することで、上記槽状本体10全体の重量に比べれば壁部毎の重量が軽くなるので、運搬時や設置時や施工時における各壁部13,15,16,17の移動や取り扱いや取り回しの簡易化を図ることができる。
【0012】
上記各壁部15,16,17の連結は、上記側壁部17が、該側壁部17の側面が上記前壁部15又は後壁部16の内面に当たるように配されたうえで、該前壁部15又は該後壁部16の外面からボルト18を挿入することによって行われている。すなわち、上記流入沈砂槽には前壁部15から土圧が加わる(図11(b)参照)ので、ボルト18を前壁部15又は後壁部16の外面から挿入することで、土圧が加わる方向と該ボルト18の挿入方向とを揃えることができる。結果、ボルト18の軸に横方向から土圧が加わることを防止することができ、各壁部15,16,17を別体として形成した周壁部を、一体として形成したものと比べても遜色のない強度とすることができる。
なお連結材は、上記ボルト18に限らず、周壁部が所望の強度を発揮できるのであれば、例えばリベットやピンや金属棒等としてもよい。
【0013】
さらに上記各壁部13,15,16,17を別体として形成するのみならず、それぞれ複数の単位板材の組み合わせで構成することにより、壁部毎の重量に比べて単位板材の重量が軽いので、運搬時や設置時や施工時における各壁部13,15,16,17の移動や取り扱いのさらなる簡易化を図ることができる。
【0014】
上記底壁部13について説明すると、図2(a),(b)に示すように、底壁部13は、単位板材である複数枚の底壁用単位板材13Aを組み合わせて構成されている。本実施形態では、2枚の底壁用単位板材13Aを組み合わせて底壁部13を構成しているが、これに限らず、流入沈砂槽の設置スペースに合わせて、例えば4枚の底壁用単位板材13Aを組み合わせたり、8枚の底壁用単位板材13Aを組み合わせたりして底壁部13を構成してもよい。
上記底壁用単位板材13Aは、横長四角形状に形成されている。2枚の上記底壁用単位板材13Aを組み合わせてなる上記底壁部13は、その上面で周縁に凹溝21が形成されている。該凹溝21は、上記底壁部13に対する上記周壁部の位置ずれを抑制するためのものであり、該周壁部を構成する各壁部15,16,17の下端の一部が挿入されるようになっている。
【0015】
上記後壁部16について説明すると、後壁部16は、単位板材である複数枚の後壁用単位板材16Aを上下に積み重ねて構成されている。本実施形態では、3枚の後壁用単位板材16Aを組み合わせて後壁部16を構成しているが、これに限らず、流入沈砂槽を設置する穴の深さに合わせて、2枚の後壁用単位板材16Aを組み合わせたり、4枚以上の後壁用単位板材16Aを組み合わせたりしてもよい。
図3(a),(b)に示すように、上記後壁用単位板材16Aは、横長四角形状に形成されている。上記後壁用単位板材16Aの両側縁部には、上記ボルト18の軸部が挿通される挿通穴22が、該後壁用単位板材16Aの厚み方向に貫通形成されている。また上記後壁用単位板材16Aの内面には、上記ハンドル12が取り付けられている。
【0016】
上記前壁部15について説明すると、前壁部15は単位板材として、前壁用単位板材15Aと、前壁用上段板材24と、を積み重ねて構成されている。本実施形態では、1枚の前壁用単位板材15Aの上に、1枚の前壁用上段板材24を積み重ねて前壁部15が構成されているが、これに限らず、流入沈砂槽を設置する穴の深さに合わせて、2枚以上の前壁用単位板材15Aを上下に積み重ね、その上に前壁用上段板材24を積み重ねてもよく、あるいは前壁用上段板材24のさらに上に前壁用単位板材15Aを積み重ねてもよい。
図4(a),(b)に示すように、上記前壁用単位板材15Aは、横長四角形状に形成されている。上記前壁用単位板材15Aの両側縁部には、上記ボルト18の軸部が挿通される挿通穴22が、該前壁用単位板材15Aの厚み方向に貫通形成されている。また上記前壁用単位板材15Aの内面には、該前壁用単位板材15Aの軽量化を図る、あるいは該前壁用単位板材15Aの部分で流入沈砂槽の内部空間を拡げるための薄肉凹部23が形成されている。
図4(c)に示すように、上記前壁用上段板材24は、四角枠状のフレーム枠24Aと、該フレーム枠24Aの内側に張設されたグレーチング材24Bと、によって構成されている。上記フレーム枠24Aは、鉄やステンレス鋼等の金属を材料に用いて形成されるとともに、その両側縁部には、上記ボルト18の軸部が挿通される挿通穴22が、該フレーム枠24Aの厚み方向に貫通形成されている。上記グレーチング材24Bは、多孔が設けられた板材であり、該グレーチング材24Bをホールソー等で穿孔することで、上記雨水流入口が形成される。
ところで、上記雨水流入口には、雨水を集水する流入枡から伸びる流入管が接続されるのであるが、該流入管には種々の管径のものが使用されており、また流入管の位置に合うように雨水流入口を形成する必要がある。そこで、接続される流入管の管径及び接続位置に柔軟に対応できるように、上記前壁用上段板材24は、上記前壁用単位板材15Aよりも縦巾を長くして、上記グレーチング材24Bが張設される面積を広くすることで、穿孔によって上記雨水流入口を形成可能な範囲を広くしている。
上記グレーチング材24Bは多孔が設けられた板材であるため、通常の板材に比べれば充分に軽く、該グレーチング材24Bを用いることで上記前壁用上段板材24の軽量化が図られている。また上記グレーチング材24Bの材料には、金属や合成樹脂やコンクリート等、種々のものが挙げられるが、該グレーチング材24Bが硬いと雨水流入口の形成が困難となってしまうし、また前壁用上段板材24が前壁用単位板材15Aよりも大きいので重量が増してしまうため、強度維持、加工容易性及び軽量化の観点から、合成樹脂、特にFRP等の繊維強化プラスチックスを用いることが望ましい。
【0017】
上記側壁部17について説明すると、側壁部17は単位板材として、側壁用第1単位板材17Aと、側壁用第2単位板材17Bと、を上下に積み重ねて構成されている。本実施形態では、1枚の側壁用第1単位板材17Aの上に、2枚の側壁用第2単位板材17Bを積み重ねて側壁部17が構成されているが、これに限らず、流入沈砂槽を設置する穴の深さに合わせて、2枚以上の側壁用第1単位板材17Aの上に、2枚以上の側壁用第2単位板材17Bを積み重ねて側壁部17を構成してもよい。
図5(a),(b)に示すように、側壁用第1単位板材17Aは、横長四角形状に形成されている。上記側壁用第1単位板材17Aの内面で両側縁には、壁受部25が凸設されている。該壁受部25の側面には、上記ボルト18の軸部が螺入されるネジ穴26が、横方向に形成されている。従って、ネジ穴26に螺入された上記ボルト18の軸部は、槽状本体10の内部に露出しないようになっており、該内部に入り込んだ作業員等が、誤って該ボルト18を緩めたりしないようになっている。
図6(a),(b)に示すように、側壁用第2単位板材17Bは、連通窓11が設けられている他は、上記側壁用第1単位板材17Aと同じ構成とされている。そして該連通窓11は、雨水溢流口として利用され、流入沈砂槽の内部の雨水は、雨水溢流口である連通窓11から溢流するようになっている。
本実施形態で該連通窓11は、縦長四角形状とされ、側壁用第2単位板材17B上に3つ設けられているが、形状、個数については特に限定されず、例えば円形状や楕円形状のものとしたり、あるいは1つのみ設けたり、あるいは4つ以上設けたりしてもよい。
【0018】
上記側壁部17において、上記槽状本体10の内側となる上記側壁用第2単位板材17Bの内面には、フィルタ27A,27Bが設置されている。図7(a),(b)に示すように、該フィルタ27A,27Bは、枠状体と該枠状体の内側に張設された網とからなる。該フィルタ27A,27Bは、該枠状体を介して側壁用第2単位板材17Bの内面に取り付け固定されている。また該フィルタ27A,27Bは、上記雨水溢流口である上記連通窓11と向かい合う部分が、上記雨水溢流口の下側から上方に向かって、上記槽状本体10の周壁である上記側壁用第2単位板材17Bの内面から次第に離れるように傾斜している傾斜部28とされている。
上記フィルタ27A,27Bを通過する際に上記雨水は、該フィルタ27A,27Bの内側面から外側面へ向かって流れるので、上記異物は該フィルタ27A,27Bの内側面に主として付着する。このためフィルタ27A,27Bの傾斜部28に付着した異物は、該異物自身の重さによって常に該傾斜部28から滴り落ちようとしており、該傾斜部28への固着を抑制される。そして、上記流入沈砂槽の内部で雨水の水位が下がると、該雨水の表面張力によって傾斜部28に付着した異物は、その内側面から浮かされて浚われることで除去されるので、上記流入沈砂槽がその内部で雨水の水位が下がる際に、該フィルタ27A,27Bの自浄作用を発揮する。
上記フィルタ27A,27Bにおいて、上記槽状本体10の中段部に装着される中間部用フィルタ27Aは、蓋体29によって上部を塞がれており、該中間部用フィルタ27Aの内側に上記異物が入り込んで上記連通窓11(雨水溢流口)から異物が抜け出ることを抑制している。上記蓋体29は、多孔が設けられていない板材で形成されることにより、該蓋体29における異物による目詰まりを防止されているとともに、該蓋体29の表面(特に上面)に異物が付着しても、上記流入沈砂槽の内部で雨水の水位が下がる際に該異物が浚われることで除去できるように構成されている。
一方、上記フィルタ27A,27Bにおいて、上記槽状本体10の最上段に装着される上部用フィルタ27Bは、上部が開放されているが、これは次の理由による。すなわち、上記流入沈砂槽の内部へ、該上部用フィルタ27Bの上縁に達するまで大量の雨水が流れ込んだ場合、該雨水が上記槽状本体10の内部から外部へ溢れ出す可能性が高くなる。このような場合、上記流入沈砂槽を含む雨水貯留浸透槽が洪水等を防止するために施工されるものであるので、異物を除去することよりも、雨水を外部へ溢れ出させないことが重視される。そこで、上部用フィルタ27Bについては、上部を開放することにより、雨水を抵抗なくオーバーフローさせて雨水溢流口から溢流させるように構成されている。
【0019】
上記前壁用上段板材24を除き、上記の各単位板材15A,16A,17A,17Bの内面で下端縁の中央部には凸条30が、該後壁用単位板材16Aの横幅方向へ伸び、かつ下方へ突出するように、形成されている。該凸条30は、各単位板材15A,16A,17A,17Bにおいて最も下段に配されるものについては、上記底壁部13の凹溝21に嵌入される。一方、最も下段に配されるもの以外の各単位板材15A,16A,17A,17Bにおいて、該凸条30は、下段に位置する単位板材の上端縁に引っ掛けられることで、上下の単位板材相互の位置ずれを抑制している。
【0020】
上記槽状本体10において、上記前壁部15、上記後壁部16、及び上記左右一対の側壁部17からなる周壁部は、レジンコンクリートを材料に用いている。該レジンコンクリートとは、砂、砂利、軽量骨材等といった骨材と、熱硬化性樹脂からなる結合材とを用いるものである。該熱硬化性樹脂には、例えば不飽和ポリエステル、熱硬化型ポリエステル、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が使用される。
上記レジンコンクリートは、引張強度、曲げ強度、圧縮強度が特に高いので、各壁部15,16,17の薄肉化、軽量化を図ることができる。また各種薬品に対して優れた耐食性を示し、特に、硫化水素による腐食に強いので、海岸部、温泉地等のような酸性土壌に使用可能であるという利点も有している。また吸水率が非常に小さく、凍結融解による強度劣化が無く、さらに表面が滑らかなので水理特性に優れ、異物が固着しにくいという利点も有している。またさらに、振動を吸収するので、耐震性に優れるという利点も有している。
上記レジンコンクリートを材料に用いた上記槽状本体10は、各壁部13,15,16,17の厚みを3cm程度に抑えることが可能であり、該槽状本体10の外寸(平面視での縦巾又は横巾)を1mとしても、その内部空間を作業者がメンテナンス作業を容易に行うことが出来るだけの広大な空間とすることができる。
上記槽状本体10において、上記底壁部13は、上記レジンコンクリートを材料に用いてもよく、また熱可塑性樹脂を材料に用いてもよい。該熱可塑性樹脂としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリブタジエン(BDR)等のオレフィン系樹脂、ポリスチレン(PS)等のスチロール系樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等のアクリル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)等が例示される。上記底壁部13の材料に熱可塑性樹脂を用いた場合には、上記周壁部等によって加わる重量により、該底壁部13の反りが修正されるという利点を有する。
【0021】
上記流入沈砂槽を含む雨水貯留浸透槽の施工方法について説明する。
上記雨水貯留浸透槽を施工する際には、図8に示すように、まず施工予定地を掘削して穴Hを形成し、該穴Hの内部を整えた後、上記底壁用単位板材13Aを必要数だけ穴底に運び込んで底壁部13を組み立て、上記流入沈砂槽の設置位置を仮に決める。その後、穴底の縁から、貯留材を構成することとなるカゴ状容器体Aを順番に並べて、隙間なく充填していく。
なお底壁部13の運搬については、該底壁部13が複数の底壁用単位板材13Aに分けられているうえ、上記のようにレジンコンクリートあるいは熱可塑性樹脂を材料に用いているので軽量であり、作業者自身が手に持って運ぶことが可能である。
次いで、図9(a)に示すように、上記カゴ状容器体Aをある程度充填した後、底壁部13を動かして、上記流入沈砂槽の設置位置を微調整する。このとき、上記したように該底壁部13は複数の底壁用単位板材13Aに分けられているうえ、上記のようにレジンコンクリートあるいは熱可塑性樹脂を材料に用いているので軽量であり、作業者自身の手で底壁部13を動かして設置位置を微調整することができる。そして、設置位置を微調整した後、穴底全体にカゴ状容器体Aを敷き詰める。
次に、図10(a)に示すように、底壁部13上に前壁用単位板材15A、後壁用単位板材16A、左右一対の側壁用第1単位板材17Aを配し、ボルト18で連結して、槽状本体10の最下段が組み立てられる。続いて図10(b)に示すように、穴の深さに合わせて、複数枚の後壁用単位板材16A、及び側壁用第2単位板材17Bが、順次積み上げられ、各々がボルト18で連結される。
なお、流入沈砂槽の寸法は、カゴ状容器体Aの寸法に合わせて設定されている。すなわち、該流入沈砂槽の各段の高さは、カゴ状容器体Aの高さと同じである。また流入沈砂槽の外寸は、カゴ状容器体Aの外寸の略整数倍(本実施形態では約2倍)とされている。
その後、図11(a)に示すように、前壁用上段板材24が組み付けられて、流入沈砂槽の設置が完了する。そして、図11(b)に示すように、該流入沈砂槽の周囲を埋めるようにカゴ状容器体Aが穴H内に敷き詰められる。その後、用途に合わせて遮水シート、保護シート、透水シート等の各種シートが敷設され、穴を埋め戻すことで、雨水貯留浸透槽の施工が完了する。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の流入沈砂槽によれば、雨水貯留浸透槽へ土砂、泥、ゴミ等といった異物が流れ込むことを抑制することができるとともに、メンテナンス作業の簡易化を図ることができるから、産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0023】
10 槽状本体
11 連通窓
12 ハンドル
13 底壁部
13A 底壁用単位板材
15 前壁部
15A 前壁用単位板材
16 後壁部
16A 後壁用単位板材
17 側壁部
17A 側壁用第1単位板材
17B 側壁用第2単位板材
18 ボルト
21 凹溝
22 挿通穴
23 薄肉凹部
24 前壁用上段板材
24A フレーム枠
24B グレーチング材
25 壁受部
26 ネジ穴
30 凸条
27A,27B フィルタ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水貯留浸透槽内に挿入設置される流入沈砂槽であって、
縦長の槽状本体を有し、該槽状本体の周壁部には雨水溢流口とされる複数の連通窓が設けられているとともに、雨水流入口が設けられるようになっており、
上記槽状本体の周壁部は、レジンコンクリートを材料に用いている
ことを特徴とする流入沈砂槽。
【請求項2】
上記槽状本体の周壁部は、前壁部、後壁部及び左右一対の側壁部からなる角筒状であり、前壁部、後壁部及び左右一対の側壁部はそれぞれ別体として形成され、設置に際して角筒状に組み立てられるとともに、
上記側壁部は、該側壁部の側面が上記前壁部の内面に当たるように配されたうえで、該前壁部の外面から挿入された連結材によって該前壁部と連結される
請求項1に記載の流入沈砂槽。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−219490(P2012−219490A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85312(P2011−85312)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(508301777)ミクニプラスチックス株式会社 (5)
【Fターム(参考)】