説明

流動体高さ測定装置および流動体高さ測定方法

【課題】 基準面に載った液体の精度を向上させる技術を提供する。
【解決手段】 流動体(20)の垂直方向を写像するように鏡(30)を固定する鏡固定手順と、 前記の鏡(30)に写像された流動体(20)をカメラ(40)にて撮影する第一撮影手順と、 基準面(10)に対して目盛り付きのスケール(50)を垂直となるように立設させるスケール立設手順と、 スケール(50)が立設された流動体(20)が前記の鏡(30)に写像された流動体(20)およびスケール(50)を撮影する第二撮影手順と、 前記の第一撮影手順にて撮影された第一撮影データ(41)および前記の第二撮影手順にて撮影された第二撮影データ(42)を重ね合わせた合成画像(43)を作成する合成画像作成手順と、 その合成画像(43)に基づいて、スケール(50)の立設前における流動体(20)の高さを算出する高さ算出手順と、 を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器や配管などからこぼれた液体や流動体の高さを、高い精度で測定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ある容器から液体がこぼれたとする。こぼれた液体の量を計測するには、こぼれる前の容器の重量とこぼれた後の容器の重量を比較するという手段が最も正確であろう。
しかし、容器の着脱が困難な場合や、容器が保持する液体の量が経時的に変化するような場合には、前記の手段が採用できない。 また、容器ではなく、液体を移動させるための配管から漏れた液体の量を計測する手段としても採用できない。
【0003】
そこで、測定対象である液体が広がった面(たとえば床面)における面積と高さとを測定し、その測定結果を用いて液体の量を算出する、という手段が考えられる。
ここで、液面の高さを測定する技術としては、たとえば特許文献1に記載された技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−78483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された技術は、液面の位置を正確に計測できるものの、液面が基準面からどのくらいの距離であるのかを直接的に計測することはできない。たとえば、基準面が床面である場合には、現場での計測技術としては不向きである。
一方、液面にスケールを差し込んでその高さを計測する、という方法では、液体の表面張力によって誤差が生じる。
【0006】
前述してきた技術に関する計測対象は「液体」であることとして論じてきたが、ゲル状体や粉粒などの固形物を含んだ流動体などにおいても、同様な問題があった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、ある基準面に載っている液体や流動体の高さを測定するのに、その測定精度を向上させられる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するため、本願発明者は、容器には入っていない液体や流動体の高さを、さまざまな現場で測定することが可能な技術を提供する。
【0009】
(第一の発明)
第一の発明は、 被写体である流動体(20)を所定の基準面(10)からの高さを測定する装置に係る。
すなわち、流動体(20)の垂直方向を写像する鏡(30)と、 その鏡(30)における当該写像(31)を撮影するカメラ(40)と、 基準面(10)に対して垂直となるように立設させる目盛り付きのスケール(50)と、を備えるとともに、 前記カメラ(40)は、前記のスケール(50)を立設させる前の第一撮影データ(41)および立設させた後の第二撮影データ(42)を取得する。 また、第一撮影データ(41)および第二撮影データ(42)を重ね合わせた合成画像(43)を作成するとともに、その合成画像(43)に写ったスケール(50)の目盛りを用いて流動体(20)の高さを算出する高さ算出手段を備える。
【0010】
(用語説明)
「流動体」とは、液体、ゲル状体のほか、粉粒などの固形物を含有した流動体を含む。
「所定の基準面」とは、流動体が接している面であり、水平であることが一般的である。例えば、床の上面、シャーレの上面などである。
【0011】
(作用)
流動体(20)の垂直方向を写像するように鏡(30)を固定する。 そして、鏡(30)に写像された流動体(20)をカメラ(40)にて撮影する。
続いて、基準面(10)に対して目盛り付きのスケール(50)を垂直となるように立設させる。 スケール(50)が立設された流動体(20)が前記の鏡(30)に写像された流動体(20)およびスケールを撮影する。
第一撮影データ(41)および第二撮影データ(42)を重ね合わせた合成画像(43)を作成する。 そして、その合成画像(43)に写ったスケール(50)の目盛りを用いて流動体(20)の高さを、高さ算出手段が算出する。
以上により、基準面を動かしたりできないような場面、複数の方向から撮影が困難な場面においても、流動体(20)の高さを求めることができる。
【0012】
(発明のバリエーション1)
第一の発明は、前記のスケール(50)について、前記の流動体(20)の表面張力を勘案した補正目盛りを備えることとしてもよい。
この場合、その「補正目盛り」のみの場合と、標準的な目盛りと補正目盛りとを備える場合のいずれでも良い。
【0013】
(作用)
補正目盛りにより、第一撮影データ(41)のみでも、概ねの流動体(20)の高さは把握できる。
【0014】
(第二の発明)
第二の発明は、 流動体である流動体(20)について所定の基準面(10)からの高さを測定する方法に係る。
その測定方法は、 流動体(20)の垂直方向を写像するように鏡(30)を固定する鏡固定手順と、 前記の鏡(30)に写像された流動体(20)をカメラ(40)にて撮影する第一撮影手順と、 基準面(10)に対して目盛り付きのスケール(50)を垂直となるように立設させるスケール立設手順と、 スケール(50)が立設された流動体(20)が前記の鏡(30)に写像された流動体(20)およびスケール(50)を撮影する第二撮影手順と、 前記の第一撮影手順にて撮影された第一撮影データ(41)および前記の第二撮影手順にて撮影された第二撮影データ(42)を重ね合わせた合成画像(43)を作成する合成画像作成手順と、 その合成画像(43)に基づいて、スケール(50)の立設前における流動体(20)の高さを算出する高さ算出手順と、 を実行する流動体高さ測定方法である。
【発明の効果】
【0015】
本願発明によれば、ある基準面に載っている液体や流動体の高さを測定するのに、その測定精度を向上させられる技術を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第一の実施形態を示す斜視図である。
【図2】第一の実施形態を示す側面図である。
【図3】パーソナルコンピュータ内で行われる画像処理の手順を示す図である。
【図4】第一の実施形態において用いるスケールを垂直に立設させるための一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施形態に基づいて更に詳しく説明する。ただし、本発明は、実施形態の態様に限られるものではない。
【0018】
ある基準面10に、液体20が零れたとする。その基準面10は、図示では便宜上、小さく描いているが、ある室内の床の上面である。したがって、その床を持ち上げたり、完全な真横から眺めたり(撮影)することはできない。
その液体20がどのくらいの量(体積)であるのかを知りたい場合、その液体20が占める面積と、垂直方向の高さとを求めることができれば算出できる。 面積については、床面10の色と液体20の色とが区別できれば、撮影画像から算出可能である。 そこで、垂直方向の高さを求める方法が望まれる。
【0019】
図1に示すように、 被写体となる流動体20の垂直方向を写像するように鏡30を固定する。この実施形態においては、垂直断面が直角に等辺三角形となる三角柱における斜面を鏡面31とした鏡30を採用した。 その鏡30を、床面10において、液体20から離れた場所に固定する。
【0020】
図2(a)に示すように、前記の鏡30の垂直上方(鏡面31に対しては45度をなすよう)にレンズが位置するように固定したカメラ40によって、鏡30に写像された流動体20を撮影する。この撮影データは、第一撮影データとしてカメラ40に一旦蓄積され、図示を省略したパーソナルコンピュータに送られる。
【0021】
続いて、 図2(b)に示すように、基準面10に対して目盛り付きのスケール50を垂直となるように立設させる。 そして、スケール50が立設された流動体20が鏡30に写像された流動体20およびスケール50を撮影する。この撮影データは、第二撮影データとしてカメラ40に一旦蓄積され、図示を省略したパーソナルコンピュータに送られる。
【0022】
図3では、パーソナルコンピュータ内で行われる画像処理の手順を示す。すなわち、画像処理手順がパーソナルコンピュータの出力画面に出力されたとして表現している。 ただし、実際にパーソナルコンピュータの出力画面へ、図3に示したような画像が出力される必要はない。
図3(a)に示すのが第一撮影データ41であり、図3(b)に示すのが第二撮影データ42である。 図3(c)に示すのは、第一撮影データ41および第二撮影データ42を合成した合成データ43である。
【0023】
パーソナルコンピュータ内では、合成データ43に現されたスケール50の目盛りを用いて、第一撮影データ41における流動体20の高さαを算出する。 必要であれば、第二撮影データ42において示される流動体20の表面張力によって上昇した高さβをも求める。
流動体20がどのような液体か不明な場合、αやβの値によって、液体の種類が推定できる場合がある。
【0024】
図4には、この実施形態において用いるスケール50を垂直に立設させるための一例を示す。
図1に示したスケール50は、基準面10に対して垂直でなければならない。 その垂直を保つため、たとえば、図4に示したスケール支持用三脚60を用いるのである。
【0025】
三本の脚61,61,61によって、スケール支持用三脚60は基準面10に固定される。三本の脚61,61,61は、液体20を囲うような位置となる。
三本の脚61,61,61の上端にて支持される水平板62は、図示を省略した水準器などによって水平となるようにすることが望ましい。
【0026】
水平板62の上面には、ワイヤ巻き取り器64が固定されており、そのワイヤ巻き取り器64に巻き取られているワイヤ63は、水平板62の中央に開けられた孔から下方に引き出される。そして、そのワイヤ63の先端は、スケール50の上端に固定されている。
【0027】
ワイヤ巻き取り器64にて予め巻き取られて液体20には接していなかったスケール50の下端は、ワイヤ巻き取り器64を少しずつゆるめるように回転させることで、液体20の上面に接し、更には基準面10に到達する。到達した瞬間には、ワイヤ巻き取り器64を固定する。 その状態で、スケール50は、基準面10に対して垂直となる。 この状態をカメラで撮影して得られるのが、第二撮影データである。
【0028】
なお、図示は省略するが、予め液体の種類が判明している場合、その液体の表面張力を考慮した補正目盛りを備えたスケールを用いて、第二撮影データを取得する、という手段もある。 この場合、第二撮影データのみで、液体の高さがおよそ把握できる。 ただし、誤差の小さな測定結果を得たい場合には、第一撮影データをも取得して合成データを作成する前述の方法にて、高さ測定をすることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、計測器の製造業、プラントなどにおいて計測サービスや計測に伴うメンテナンス業、計測データを処理するデータサービス業、データの送受信を司る情報通信業などにおいて利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0030】
10 基準面(床の上面)
20 流動体(液体)
30 鏡 31 鏡面
40 カメラ 41 第一撮影データ
42 第二撮影データ 43 合成データ
50 スケール
60 スケール支持用三脚 61 脚
62 水平板 63 スケール吊り下げワイヤ
64 ワイヤ巻き取り器
α 液体の高さ β 液体の表面張力によって上昇した高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体である流動体を所定の基準面からの高さを測定する装置であって、
流動体の垂直方向を写像する鏡と、
その鏡における当該写像を撮影するカメラと、
前記の基準面に対して垂直となるように立設させる目盛り付きのスケールと、を備えるとともに、
前記カメラは、前記のスケールを立設させる前の第一撮影データおよび立設させた後の第二撮影データを取得することとし、
その第一撮影データおよび第二撮影データを重ね合わせた合成画像を作成するとともに、その合成画像に写ったスケールの目盛りを用いて流動体の高さを算出する高さ算出手段と、
を備えた流動体高さ測定装置。
【請求項2】
前記のスケールには、前記の流動体の表面張力を勘案した補正目盛りを備えることとした請求項1に記載の流動体高さ測定装置。
【請求項3】
流動体である流動体を所定の基準面からの高さを測定する方法であって、
流動体の垂直方向を写像するように鏡を固定する鏡固定手順と、
前記の鏡に写像された流動体をカメラにて撮影する第一撮影手順と、
基準面に対して目盛り付きのスケールを垂直となるように立設させるスケール立設手順と、
スケールが立設された流動体が前記の鏡に写像された流動体およびスケールを撮影する第二撮影手順と、
前記の第一撮影手順にて撮影された第一撮影データおよび前記の第二撮影手順にて撮影された第二撮影データを重ね合わせた合成画像を作成する合成画像作成手順と、
その合成画像に基づいて、スケール立設前における流動体の高さを算出する高さ算出手順と、
を実行する流動体高さ測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−194006(P2012−194006A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57098(P2011−57098)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】