流動層ボイラの炉壁構造
【課題】水管の摩耗を効果的に防止して、ボイラの寿命を長期化する。
【解決手段】空気によってベッド材と共に燃料を流動化させながら燃料を燃焼させる火炉の炉壁が、上下方向へ延びる複数の水管17と隣接する水管17の相互間を接続するフィン18とによる水冷壁15により形成され、且つ、水冷壁15の内側下部にキャスタブル耐火物19が内張りされている流動層ボイラの炉壁構造において、キャスタブル耐火物19の上部に、キャスタブル耐火物19以下の厚さのプラスチック耐火物21を有する摩耗緩衝構造22を一体に備える。
【解決手段】空気によってベッド材と共に燃料を流動化させながら燃料を燃焼させる火炉の炉壁が、上下方向へ延びる複数の水管17と隣接する水管17の相互間を接続するフィン18とによる水冷壁15により形成され、且つ、水冷壁15の内側下部にキャスタブル耐火物19が内張りされている流動層ボイラの炉壁構造において、キャスタブル耐火物19の上部に、キャスタブル耐火物19以下の厚さのプラスチック耐火物21を有する摩耗緩衝構造22を一体に備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流動層ボイラの炉壁構造、特に、流動する粒子の下降により水冷壁水管が摩耗するのを防止するようにした流動層ボイラの炉壁構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石炭等の固体燃料を効率良く燃焼させるボイラの一つとして、循環流動層ボイラが知られている。斯かる循環流動層ボイラは、図6〜図8に示すように、その内側下部に設置されている空気分散装置1から吹き出す空気によって、灰や石灰石等から成るベッド材2を矢印2a(図7)で示すように流動化しつつ燃料供給口3から供給される燃料を燃焼させるようにした矩形形状の水冷壁15からなる火炉4と、火炉4の上端後部に接続したダクト5から排出される燃焼ガス6を導入して燃焼ガス6中に含まれるベッド材2や未燃固形分等の粒子を分離するサイクロン7と、サイクロン7で粒子が分離された燃焼ガス6をダクト8により導入して熱エネルギを回収する伝熱管9からなる複数の熱交換器を備えた後部伝熱部10と、サイクロン7で分離されて下降する粒子を貯留するループシール11と、該ループシール11の粒子を再び前記火炉4の空気分散装置1上へ戻す循環路12とを備えている。
【0003】
尚、火炉4の空気分散装置1の下部には空気供給ライン13によって空気が供給され、空気分散装置1から火炉4内に空気を分散して噴出するようになっており、又、ループシール11の下部には空気供給ライン14によって空気が供給され、サイクロン7から下降してきた粒子を空気により流動化して循環路12を介し前記火炉4の空気分散装置1上へ戻すようにしている。9'は火炉4内上部に設けた伝熱管、16は気液分離タンクである。
【0004】
上述の循環流動層ボイラでは、空気供給ライン13により火炉4の空気分散装置1の下部へ空気を供給すると、空気は空気分散装置1により分散して火炉4内へ供給され、ベッド材2を流動化させる。この状態で、燃料供給口3から燃料を火炉4内へ供給すると、燃料はベッド材2と共に空気供給ライン13からの流動化用の空気によって流動化しつつ燃焼し燃焼ガス6を発生する。
【0005】
燃焼ガス6は、上昇しつつ火炉4を構成する水冷壁15の水管内部を流れる流体を加熱した後、ダクト5によりサイクロン7へ導かれ、サイクロン7ではベッド材2や未燃の固形燃料が混合した粒子が分離される。粒子が分離された燃焼ガス6は、ダクト8から後部伝熱部10へ導入され、後部伝熱部10内を下降しつつ伝熱管9を流れる流体を加熱若しくは過熱し、後部伝熱部10下部から排ガスとして排出される。一方、火炉4の水冷壁15の水管や後部伝熱部10の伝熱管9等によって発生した蒸気は、図示しない蒸気タービン等へ送られる。サイクロン7で分離された粒子はループシール11に貯留され、該ループシール11の粒子は、空気供給ライン14からの空気により流動化されて循環路12を介し再び前記火炉4の空気分散装置1上へ戻される。
【0006】
火炉4を構成している前後・左右の炉壁からなる矩形形状の水冷壁15は、図9、図10に示すように、ボイラの前後方向及び幅方向へ所定の間隔で配列されて上下方向にほぼ鉛直に延びる多数の水管17と、隣り合う水管17同士を接続するフィン18とによってパネル状に形成されている。
【0007】
そして、水冷壁15の下部内側には、流動化しているベッド材2や未燃固形分等の粒子が落下する際に水管17に衝突して、該水管17の周面を摩耗させ減肉するのを防止するための、耐摩耗性に優れた硬質のキャスタブル耐火物19を内張りしている。このような硬質のキャスタブル耐火物19を形成するには、先ず、水冷壁15の内側に間隔を隔てて型枠を設置し、流動性を保持するようにアルミナ(Al2O3)、珪素(SiO2)等を微粉砕した粉末骨材に水を加えて流動化させ、この流動化物を、スタッドを内面に固定した水冷壁15と前記型枠との間に流し込んで振動方式等を用いて固く圧密した後、乾燥させ、更に加熱して焼き固めることにより形成している。
【0008】
火炉4内を流動するベッド材2は、図7に矢印2aで示すように火炉4の中央部を上昇するように吹き上がり、その後、中央部に比して流動用空気の上昇流が弱い水冷壁15に近い外側に向かって落下するようになるため、水冷壁15に沿って落下する粒子の流量が大きくなる傾向がある。更に、水冷壁15に沿って落下する粒子の量(濃度)は下部ほど大きくなる。又、矩形形状を有している水冷壁15の四隅部は流動用空気の上昇流が更に弱くなる部分であるために、水冷壁15の四隅部を落下する粒子の量は最も大きくなっている。
【0009】
このように、火炉4の空気分散装置1から所定高さ位置までの下部位置Lの水冷壁15は粒子による非常に厳しい摩耗作用を受けることになるため、この下部位置Lには耐摩耗性に優れた硬質のキャスタブル耐火物19を設けて、水冷壁15における特に水管17が摩耗するのを防止するようにしている。図6に示す空気分散装置1から火炉頂部までの燃焼室長さが例えば30メートル前後の火炉4の場合においては、前記キャスタブル耐火物19を設置する下部位置Lの長さは、前記燃焼室長さの約20%程度、即ち6〜7メートル前後となっている。
【0010】
上記したように、流動化した粒子が水冷壁15に沿って落下することにより水管17が粒子によって摩耗し減肉する問題があるが、前記したように、水冷壁15内側の最も粒子の落下量が多い内側下部には、キャスタブル耐火物19を内張りして保護しているので、この部分において水管17が摩耗して減肉する問題は生じない。
【0011】
しかし、図10、図11に示すように、水管17の相互間をフィン18に沿って落下してきた粒子は、キャスタブル耐火物19の上端に衝突した後、キャスタブル耐火物19の内側に流下する流れが生じ、このような流れの傾向が生じると粒子は集中してその経路に沿った流れを形成するようになるために、キャスタブル耐火物19の上端部から水管17が露出している境界部において水管17が摩耗して摩耗部20を生じ、水管17が減肉されるという問題がある。そして、矩形形状を有している水冷壁15では、四隅部での粒子の落下量が最も多いために、四隅部における水管17の摩耗による減肉が最も激しくなっている。
【0012】
このように水管17が減肉した場合には、減肉した部分を切り取って新たな水冷壁と交換する等の補修作業が必要となるが、従来においては前記粒子による水管17の減肉が激しいために、短期間での補修が必要となり、補修費用が増加すると共に、補修のために循環流動層ボイラの運転を停止する期間が増加するという問題を有していた。
【0013】
又、このような水管17の摩耗の問題を防止するために、従来より、キャスタブル耐火物19と水管17との境界線及び該境界線から所定高さ位置までの間に、耐摩耗金属を溶射することが行われている。しかし、耐摩耗金属を溶射しても、境界線近傍における水管17の摩耗速度を緩和することはできても、ボイラの運転に伴って耐摩耗金属が劣化して水管17の局部的な摩耗は進行するために、定期的な点検・補修が必要となっていた。
【0014】
又、上記したような水管の摩耗を防止するための先行技術文献としては、キャスタブル耐火物の上端部に、フィンの延長線よりも炉外側へ突出した屈曲部材を設けて自由落下空間を形成するようにしたものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平09−126404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1においては、フィンに沿って落下してくる粒子は、自由落下空間によりフィンから離れて落下するようになるが、粒子は落下速度を保ったままキャスタブル耐火物の上端に落下することになるため、キャスタブル耐火物の上端に落下した粒子は従来と同様にキャスタブル耐火物と水管との境界線の部分に沿って流れる現象は依然として生じ、このために、キャスタブル耐火物の上端部から水管が露出する境界部において水管が摩耗するという問題を有効に防止できるまでには至っていなかった。
【0017】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、水冷壁水管の摩耗を効果的に防止して、ボイラの寿命を長期化できる流動層ボイラの炉壁構造を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、空気によってベッド材と共に燃料を流動化させながら燃料を燃焼させる火炉の炉壁が、上下方向へ延びる複数の水管と隣接する水管の相互間を接続するフィンとによる水冷壁により形成され、且つ、該水冷壁の内側下部にキャスタブル耐火物が内張りされている流動層ボイラの炉壁構造において、前記キャスタブル耐火物の上部に、キャスタブル耐火物以下の厚さのプラスチック耐火物を有する摩耗緩衝構造を一体に備えたことを特徴とする流動層ボイラの炉壁構造、に係るものである。
【0019】
上記流動層ボイラの炉壁構造において、前記摩耗緩衝構造が、プラスチック耐火物と、該プラスチック耐火物の内部に埋没して水管に備えた埋没緩衝スタッドとを有することは好ましい。
【0020】
又、上記流動層ボイラの炉壁構造において、前記摩耗緩衝構造が、プラスチック耐火物の上部に露出して水管に備えた露出緩衝スタッドを有することは好ましい。
【0021】
又、上記流動層ボイラの炉壁構造において、前記プラスチック耐火物が、前記水管とフィンの内面形状に沿って形成した上部薄肉部と、該上部薄肉部の下端から下側に向かって炉内側に張り出すように傾斜した張り出し傾斜部とを有することは好ましい。
【0022】
本発明は、空気によってベッド材と共に燃料を流動化させながら燃料を燃焼させる火炉の炉壁が、上下方向へ延びる複数の水管と隣接する水管の相互間を接続するフィンとによる水冷壁により形成され、且つ、該水冷壁の内側下部にキャスタブル耐火物が内張りされている流動層ボイラの炉壁構造において、前記キャスタブル耐火物の上部に、キャスタブル耐火物以下の厚さのプラスチック耐火物を有する摩耗緩衝構造を一体に備え、更に、キャスタブル耐火物上に一体に備えた前記摩耗緩衝構造の上部に、プラスチック耐火物を有して水冷壁の内面に突出する上部摩耗緩衝構造を、間隔を隔てて少なくとも1段備えたことを特徴とする流動層ボイラの炉壁構造、に係るものである。
【0023】
上記流動層ボイラの炉壁構造において、前記上部摩耗緩衝構造が、プラスチック耐火物と、該プラスチック耐火物の内部に埋没して水管に備えた埋没緩衝スタッドとを有することは好ましい。
【0024】
又、上記流動層ボイラの炉壁構造において、前記上部摩耗緩衝構造が、プラスチック耐火物の上部に露出して水管に備えた露出緩衝スタッドを有することは好ましい。
【0025】
又、上記流動層ボイラの炉壁構造において、前記プラスチック耐火物が、前記水管とフィンの内面形状に沿って形成した上部薄肉部と、該上部薄肉部の下端から下側に向かって炉内側に張り出すように傾斜した張り出し傾斜部とを有することは好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の流動層ボイラの炉壁構造によれば、キャスタブル耐火物の上部に、キャスタブル耐火物以下の厚さのプラスチック耐火物を有する摩耗緩衝構造を一体に備えるようにしたので、水冷壁に沿って下方に落下する粒子は摩耗緩衝構造に衝突するようになり、このとき、摩耗緩衝構造を構成しているプラスチック耐火物はキャスタブル耐火物に比して硬度が小さいためにプラスチック耐火物が徐々に摩耗するようになり、このようにプラスチック耐火物が摩耗することによって、プラスチック耐火物から水管が露出する境界部が徐々に下方に移動するようになるため、粒子が水管の一個所に集中して流下することがなくなり、よって、小さな摩耗緩衝構造を設けることで水管が局部的に摩耗する問題を効果的に防止できるという優れた効果を奏し得る。
【0027】
又、プラスチック耐火物が摩耗した場合には、摩耗した部分にプラスチック耐火物を盛り付けることによって容易に修理できるという効果を有する。
【0028】
又、キャスタブル耐火物上に一体に備えた前記摩耗緩衝構造の上部に、プラスチック耐火物を有して水冷壁の内面に突出する上部摩耗緩衝構造を、間隔を隔てて少なくとも1段備えるようにしたので、水冷壁内面に沿って落下してくる粒子が上部摩耗緩衝構造により緩衝され減速してキャスタブル耐火物上の摩耗緩衝構造へ落下すると共に、上部摩耗緩衝構造によって粒子が炉内側へ偏向されることでキャスタブル耐火物上の摩耗緩衝構造へ落下する粒子の落下量が減少することにより、最も激しい摩耗を受けるキャスタブル耐火物上の摩耗緩衝構造の摩耗を低減させることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を実施する流動層ボイラの炉壁構造の一部を炉内から見た斜視図である。
【図2】キャスタブル耐火物上に設けた摩耗緩衝構造の一例を示す断面図である。
【図3】図2をIII−III方向から見た切断平面図である。
【図4】図2をIV−IV方向から見た平面図である。
【図5】摩耗緩衝構造の上部に設けた上部摩耗緩衝構造の一例を示す断面図である。
【図6】循環流動層ボイラの一例を示す側面図である。
【図7】図6をVII−VII方向から見た正面図である。
【図8】図6をVIII−VIII方向から見た平面図である。
【図9】従来の水冷壁の斜視図である。
【図10】図9の側断面図である。
【図11】キャスタブル耐火物の上端部から水管が露出する境界部で水管が摩耗する状態を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0031】
図1、図2は発明の基本となる実施例を示すもので、図中、図6〜図11と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0032】
図1、図2の実施例においては、水冷壁15の下部内側に従来と同様に形成している硬質のキャスタブル耐火物19の上部に、キャスタブル耐火物19以下の厚さを有するプラスチック耐火物21を備えた摩耗緩衝構造22を一体に設けている。上記プラスチック耐火物21は、耐火性骨材と粘土及び粘性材料に水を加えて練った粘土状製品を、エアーランマーや木槌等を用いて水冷壁15の内面に固着させて任意に整形することで形成することができる。
【0033】
上記摩耗緩衝構造22は、上記プラスチック耐火物21と、該プラスチック耐火物21の内部に埋没するように水管17に対して放射方向に固定した複数の埋没緩衝スタッド23とを有している。又、前記プラスチック耐火物21は、図2〜図4に示すように、前記水管17の内面形状に沿うように薄肉に形成した上部薄肉部24と、該上部薄肉部24の下端から下側に向かって炉内側に張り出すように緩やかに傾斜した傾斜面25を有する張り出し傾斜部26とを有している。
【0034】
又、図1、図2のプラスチック耐火物21の上部位置には、水管17に対して放射方向に固定した複数の露出緩衝スタッド27が露出して設けられている。
【0035】
前記摩耗緩衝構造22を形成するには、キャスタブル耐火物19の上部における水管17の内面に埋没緩衝スタッド23と露出緩衝スタッド27を予め固定しておく。そして、プラスチック耐火物21を形成するための粘土状製品を、前記埋没緩衝スタッド23を埋没させるように水冷壁15の水管17とフィン18の内面に圧着させて形を整え、前記したように、水管17の内面形状に沿う上部薄肉部24を形成すると共に、該上部薄肉部24の下端から下側に向かって炉内側に張り出すように緩やかに傾斜した傾斜面25が備えられるように張り出し傾斜部26を形成する。このように粘土状製品によって形成したプラスチック耐火材を乾燥させた後、加熱して焼き固めることによってプラスチック耐火物21が形成される。
【0036】
上記摩耗緩衝構造22は矩形形状を有する水冷壁15の内面全周に設けるようにしてもよく、又、粒子の落下量が多いために摩耗による減肉が最も激しいことが判明している水冷壁15の四隅部のみに前記摩耗緩衝構造22を設けるようにしてもよい。
【0037】
図6の火炉4の高さが30メートル前後、キャスタブル耐火物19の高さが6〜7メートル前後である場合において、キャスタブル耐火物19上に設ける前記摩耗緩衝構造22の上下方向の高さ寸法は、25〜50センチメートル程度とすることができる。
【0038】
図1、図2に示した流動層ボイラの炉壁構造においては、キャスタブル耐火物19の上部に、キャスタブル耐火物19以下の厚さのプラスチック耐火物21を有する摩耗緩衝構造22を一体に備えたので、火炉4内を流動して水冷壁15の内面に沿って落下してくる粒子は、先ず露出緩衝スタッド27に衝突して緩衝されることにより速度が減速され、続いて上部薄肉部24の上端24aに衝突して更に減速された後、張り出し傾斜部26の緩やかに傾斜した傾斜面25に沿って炉内側に向けられて落下する。
【0039】
このとき、摩耗緩衝構造22を構成しているプラスチック耐火物21はキャスタブル耐火物19と比較すると曲げ強度が小さいことから、プラスチック耐火物21は、粒子が衝突する上部薄肉部24の上端24aから徐々に摩耗するようになる。
【0040】
本発明者らは、過去の実績から、一般のキャスタブル耐火材に対してプラスチック耐火物は摩耗し易いことを得ている。これは、キャスタブル耐火物とプラスチック耐火物について1000℃の温度条件で曲げ強度試験を行った場合の強度が、キャスタブル耐火物では14.7MPaであるのに対し、プラスチック耐火物では8.0MPaと約半分程度の強度であることからも推測される。又、このような強度の違いは、キャスタブル耐火物に対してプラスチック耐火物は気泡を含んでいて密度が低いことに関係していると考えられる。
【0041】
従って、前記したように上部薄肉部24の上端24aが摩耗することにより、上部薄肉部24の上端24aから水管17が露出する境界部が徐々に下方へ移動して行くことになるため、粒子が水管17の一個所に集中して流下することがなくなり、よって、小さな摩耗緩衝構造22を設けることで水管17が局部的に摩耗するという問題を効果的に防止することができる。
【0042】
又、上記したように上部薄肉部24の上端24aが摩耗すると内部の埋込緩衝スタッド23が露出されるようになるため、この露出した埋込緩衝スタッド23が落下してくる粒子の緩衝を行って上部薄肉部24の上端24aの摩耗を抑制するようになる。
【0043】
上記したように、プラスチック耐火物21の例えば上部薄肉部24の上端24aが摩耗した場合には、摩耗した部分にプラスチック耐火物を盛り付けることによって容易に補修することができる。
【0044】
図1、図3は本発明の他の実施例を示すもので、この実施例では、水冷壁15の内面における前記キャスタブル耐火物19上の摩耗緩衝構造22の上部に、間隔Hを隔てて第2段の上部摩耗緩衝構造28bを炉内側に突出するように設け、更に、該第2段の上部摩耗緩衝構造28bの上部に、間隔Hを隔てて第1段の上部摩耗緩衝構造28aを炉内側に突出するように設けた場合を示している。上部摩耗緩衝構造を設置する段数は一段以上の任意の段数とすることができる。
【0045】
上記した上部摩耗緩衝構造28a,28bは、前記キャスタブル耐火物19上に形成された摩耗緩衝構造22と同様に、プラスチック耐火物21と、該プラスチック耐火物21に埋設された埋没緩衝スタッド23と、露出緩衝スタッド27とにより構成されている。
【0046】
又、上部摩耗緩衝構造28a,28bは、前記摩耗緩衝構造22と同程度の炉内側への張り出し高さと上下高さ寸法を有して形成することができ、又、上部摩耗緩衝構造28a,28b相互の間隔Hの大きさは任意に選定することができる。ここで、図6の火炉4の高さが30メートル前後、キャスタブル耐火物19の高さが6〜7メートル前後である場合においては、例えば1メートル前後の間隔Hを有して、上部摩耗緩衝構造28a,28bを設けることができる。
【0047】
前記上部摩耗緩衝構造28a,28bは水冷壁15の全内周面に環状に形成するようにしてもよく、或いは、矩形形状の水冷壁15の四隅部を落下する粒子量が最も大きくこの四隅部の水管17の摩耗が最も激しいことから、水冷壁15の四隅部のみに前記上部摩耗緩衝構造28a,28bを設けるようにしてもよい。
【0048】
図1、図3に示した実施例によれば、キャスタブル耐火物19上に一体に備えた摩耗緩衝構造22の上部に、プラスチック耐火物21を有して水冷壁15の内面に突出する上部摩耗緩衝構造28a,28bを、間隔Hを隔てて少なくとも1段備えるようにしたので、水冷壁15内面に沿って落下してくる粒子が上部摩耗緩衝構造28a,28bにより緩衝され減速してキャスタブル耐火物19上の摩耗緩衝構造22へ落下すると共に、上部摩耗緩衝構造28a,28bによって粒子が炉内側へ偏向されることでキャスタブル耐火物19上の摩耗緩衝構造22へ落下する粒子の落下量が減少することにより、最も激しい摩耗を受けるキャスタブル耐火物19上の摩耗緩衝構造22の摩耗を低減させることができるという効果がある。
【0049】
又、図1、図3の実施例においても、上部摩耗緩衝構造28a,28bを構成するプラスチック耐火物21の上部薄肉部24の上端24aが摩耗した場合にも、摩耗した部分にプラスチック耐火物を盛り付けることによって容易に補修することができる。
【0050】
尚、本発明の流動層ボイラの炉壁構造は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
2 ベッド材
4 火炉
15 水冷壁
17 水管
18 フィン
19 キャスタブル耐火物
21 プラスチック耐火物
22 摩耗緩衝構造
23 埋没緩衝スタッド
24 上部薄肉部
25 傾斜面
26 張り出し傾斜部
27 露出緩衝スタッド
28a,28b 上部摩耗緩衝構造
【技術分野】
【0001】
本発明は流動層ボイラの炉壁構造、特に、流動する粒子の下降により水冷壁水管が摩耗するのを防止するようにした流動層ボイラの炉壁構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石炭等の固体燃料を効率良く燃焼させるボイラの一つとして、循環流動層ボイラが知られている。斯かる循環流動層ボイラは、図6〜図8に示すように、その内側下部に設置されている空気分散装置1から吹き出す空気によって、灰や石灰石等から成るベッド材2を矢印2a(図7)で示すように流動化しつつ燃料供給口3から供給される燃料を燃焼させるようにした矩形形状の水冷壁15からなる火炉4と、火炉4の上端後部に接続したダクト5から排出される燃焼ガス6を導入して燃焼ガス6中に含まれるベッド材2や未燃固形分等の粒子を分離するサイクロン7と、サイクロン7で粒子が分離された燃焼ガス6をダクト8により導入して熱エネルギを回収する伝熱管9からなる複数の熱交換器を備えた後部伝熱部10と、サイクロン7で分離されて下降する粒子を貯留するループシール11と、該ループシール11の粒子を再び前記火炉4の空気分散装置1上へ戻す循環路12とを備えている。
【0003】
尚、火炉4の空気分散装置1の下部には空気供給ライン13によって空気が供給され、空気分散装置1から火炉4内に空気を分散して噴出するようになっており、又、ループシール11の下部には空気供給ライン14によって空気が供給され、サイクロン7から下降してきた粒子を空気により流動化して循環路12を介し前記火炉4の空気分散装置1上へ戻すようにしている。9'は火炉4内上部に設けた伝熱管、16は気液分離タンクである。
【0004】
上述の循環流動層ボイラでは、空気供給ライン13により火炉4の空気分散装置1の下部へ空気を供給すると、空気は空気分散装置1により分散して火炉4内へ供給され、ベッド材2を流動化させる。この状態で、燃料供給口3から燃料を火炉4内へ供給すると、燃料はベッド材2と共に空気供給ライン13からの流動化用の空気によって流動化しつつ燃焼し燃焼ガス6を発生する。
【0005】
燃焼ガス6は、上昇しつつ火炉4を構成する水冷壁15の水管内部を流れる流体を加熱した後、ダクト5によりサイクロン7へ導かれ、サイクロン7ではベッド材2や未燃の固形燃料が混合した粒子が分離される。粒子が分離された燃焼ガス6は、ダクト8から後部伝熱部10へ導入され、後部伝熱部10内を下降しつつ伝熱管9を流れる流体を加熱若しくは過熱し、後部伝熱部10下部から排ガスとして排出される。一方、火炉4の水冷壁15の水管や後部伝熱部10の伝熱管9等によって発生した蒸気は、図示しない蒸気タービン等へ送られる。サイクロン7で分離された粒子はループシール11に貯留され、該ループシール11の粒子は、空気供給ライン14からの空気により流動化されて循環路12を介し再び前記火炉4の空気分散装置1上へ戻される。
【0006】
火炉4を構成している前後・左右の炉壁からなる矩形形状の水冷壁15は、図9、図10に示すように、ボイラの前後方向及び幅方向へ所定の間隔で配列されて上下方向にほぼ鉛直に延びる多数の水管17と、隣り合う水管17同士を接続するフィン18とによってパネル状に形成されている。
【0007】
そして、水冷壁15の下部内側には、流動化しているベッド材2や未燃固形分等の粒子が落下する際に水管17に衝突して、該水管17の周面を摩耗させ減肉するのを防止するための、耐摩耗性に優れた硬質のキャスタブル耐火物19を内張りしている。このような硬質のキャスタブル耐火物19を形成するには、先ず、水冷壁15の内側に間隔を隔てて型枠を設置し、流動性を保持するようにアルミナ(Al2O3)、珪素(SiO2)等を微粉砕した粉末骨材に水を加えて流動化させ、この流動化物を、スタッドを内面に固定した水冷壁15と前記型枠との間に流し込んで振動方式等を用いて固く圧密した後、乾燥させ、更に加熱して焼き固めることにより形成している。
【0008】
火炉4内を流動するベッド材2は、図7に矢印2aで示すように火炉4の中央部を上昇するように吹き上がり、その後、中央部に比して流動用空気の上昇流が弱い水冷壁15に近い外側に向かって落下するようになるため、水冷壁15に沿って落下する粒子の流量が大きくなる傾向がある。更に、水冷壁15に沿って落下する粒子の量(濃度)は下部ほど大きくなる。又、矩形形状を有している水冷壁15の四隅部は流動用空気の上昇流が更に弱くなる部分であるために、水冷壁15の四隅部を落下する粒子の量は最も大きくなっている。
【0009】
このように、火炉4の空気分散装置1から所定高さ位置までの下部位置Lの水冷壁15は粒子による非常に厳しい摩耗作用を受けることになるため、この下部位置Lには耐摩耗性に優れた硬質のキャスタブル耐火物19を設けて、水冷壁15における特に水管17が摩耗するのを防止するようにしている。図6に示す空気分散装置1から火炉頂部までの燃焼室長さが例えば30メートル前後の火炉4の場合においては、前記キャスタブル耐火物19を設置する下部位置Lの長さは、前記燃焼室長さの約20%程度、即ち6〜7メートル前後となっている。
【0010】
上記したように、流動化した粒子が水冷壁15に沿って落下することにより水管17が粒子によって摩耗し減肉する問題があるが、前記したように、水冷壁15内側の最も粒子の落下量が多い内側下部には、キャスタブル耐火物19を内張りして保護しているので、この部分において水管17が摩耗して減肉する問題は生じない。
【0011】
しかし、図10、図11に示すように、水管17の相互間をフィン18に沿って落下してきた粒子は、キャスタブル耐火物19の上端に衝突した後、キャスタブル耐火物19の内側に流下する流れが生じ、このような流れの傾向が生じると粒子は集中してその経路に沿った流れを形成するようになるために、キャスタブル耐火物19の上端部から水管17が露出している境界部において水管17が摩耗して摩耗部20を生じ、水管17が減肉されるという問題がある。そして、矩形形状を有している水冷壁15では、四隅部での粒子の落下量が最も多いために、四隅部における水管17の摩耗による減肉が最も激しくなっている。
【0012】
このように水管17が減肉した場合には、減肉した部分を切り取って新たな水冷壁と交換する等の補修作業が必要となるが、従来においては前記粒子による水管17の減肉が激しいために、短期間での補修が必要となり、補修費用が増加すると共に、補修のために循環流動層ボイラの運転を停止する期間が増加するという問題を有していた。
【0013】
又、このような水管17の摩耗の問題を防止するために、従来より、キャスタブル耐火物19と水管17との境界線及び該境界線から所定高さ位置までの間に、耐摩耗金属を溶射することが行われている。しかし、耐摩耗金属を溶射しても、境界線近傍における水管17の摩耗速度を緩和することはできても、ボイラの運転に伴って耐摩耗金属が劣化して水管17の局部的な摩耗は進行するために、定期的な点検・補修が必要となっていた。
【0014】
又、上記したような水管の摩耗を防止するための先行技術文献としては、キャスタブル耐火物の上端部に、フィンの延長線よりも炉外側へ突出した屈曲部材を設けて自由落下空間を形成するようにしたものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平09−126404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1においては、フィンに沿って落下してくる粒子は、自由落下空間によりフィンから離れて落下するようになるが、粒子は落下速度を保ったままキャスタブル耐火物の上端に落下することになるため、キャスタブル耐火物の上端に落下した粒子は従来と同様にキャスタブル耐火物と水管との境界線の部分に沿って流れる現象は依然として生じ、このために、キャスタブル耐火物の上端部から水管が露出する境界部において水管が摩耗するという問題を有効に防止できるまでには至っていなかった。
【0017】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、水冷壁水管の摩耗を効果的に防止して、ボイラの寿命を長期化できる流動層ボイラの炉壁構造を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、空気によってベッド材と共に燃料を流動化させながら燃料を燃焼させる火炉の炉壁が、上下方向へ延びる複数の水管と隣接する水管の相互間を接続するフィンとによる水冷壁により形成され、且つ、該水冷壁の内側下部にキャスタブル耐火物が内張りされている流動層ボイラの炉壁構造において、前記キャスタブル耐火物の上部に、キャスタブル耐火物以下の厚さのプラスチック耐火物を有する摩耗緩衝構造を一体に備えたことを特徴とする流動層ボイラの炉壁構造、に係るものである。
【0019】
上記流動層ボイラの炉壁構造において、前記摩耗緩衝構造が、プラスチック耐火物と、該プラスチック耐火物の内部に埋没して水管に備えた埋没緩衝スタッドとを有することは好ましい。
【0020】
又、上記流動層ボイラの炉壁構造において、前記摩耗緩衝構造が、プラスチック耐火物の上部に露出して水管に備えた露出緩衝スタッドを有することは好ましい。
【0021】
又、上記流動層ボイラの炉壁構造において、前記プラスチック耐火物が、前記水管とフィンの内面形状に沿って形成した上部薄肉部と、該上部薄肉部の下端から下側に向かって炉内側に張り出すように傾斜した張り出し傾斜部とを有することは好ましい。
【0022】
本発明は、空気によってベッド材と共に燃料を流動化させながら燃料を燃焼させる火炉の炉壁が、上下方向へ延びる複数の水管と隣接する水管の相互間を接続するフィンとによる水冷壁により形成され、且つ、該水冷壁の内側下部にキャスタブル耐火物が内張りされている流動層ボイラの炉壁構造において、前記キャスタブル耐火物の上部に、キャスタブル耐火物以下の厚さのプラスチック耐火物を有する摩耗緩衝構造を一体に備え、更に、キャスタブル耐火物上に一体に備えた前記摩耗緩衝構造の上部に、プラスチック耐火物を有して水冷壁の内面に突出する上部摩耗緩衝構造を、間隔を隔てて少なくとも1段備えたことを特徴とする流動層ボイラの炉壁構造、に係るものである。
【0023】
上記流動層ボイラの炉壁構造において、前記上部摩耗緩衝構造が、プラスチック耐火物と、該プラスチック耐火物の内部に埋没して水管に備えた埋没緩衝スタッドとを有することは好ましい。
【0024】
又、上記流動層ボイラの炉壁構造において、前記上部摩耗緩衝構造が、プラスチック耐火物の上部に露出して水管に備えた露出緩衝スタッドを有することは好ましい。
【0025】
又、上記流動層ボイラの炉壁構造において、前記プラスチック耐火物が、前記水管とフィンの内面形状に沿って形成した上部薄肉部と、該上部薄肉部の下端から下側に向かって炉内側に張り出すように傾斜した張り出し傾斜部とを有することは好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の流動層ボイラの炉壁構造によれば、キャスタブル耐火物の上部に、キャスタブル耐火物以下の厚さのプラスチック耐火物を有する摩耗緩衝構造を一体に備えるようにしたので、水冷壁に沿って下方に落下する粒子は摩耗緩衝構造に衝突するようになり、このとき、摩耗緩衝構造を構成しているプラスチック耐火物はキャスタブル耐火物に比して硬度が小さいためにプラスチック耐火物が徐々に摩耗するようになり、このようにプラスチック耐火物が摩耗することによって、プラスチック耐火物から水管が露出する境界部が徐々に下方に移動するようになるため、粒子が水管の一個所に集中して流下することがなくなり、よって、小さな摩耗緩衝構造を設けることで水管が局部的に摩耗する問題を効果的に防止できるという優れた効果を奏し得る。
【0027】
又、プラスチック耐火物が摩耗した場合には、摩耗した部分にプラスチック耐火物を盛り付けることによって容易に修理できるという効果を有する。
【0028】
又、キャスタブル耐火物上に一体に備えた前記摩耗緩衝構造の上部に、プラスチック耐火物を有して水冷壁の内面に突出する上部摩耗緩衝構造を、間隔を隔てて少なくとも1段備えるようにしたので、水冷壁内面に沿って落下してくる粒子が上部摩耗緩衝構造により緩衝され減速してキャスタブル耐火物上の摩耗緩衝構造へ落下すると共に、上部摩耗緩衝構造によって粒子が炉内側へ偏向されることでキャスタブル耐火物上の摩耗緩衝構造へ落下する粒子の落下量が減少することにより、最も激しい摩耗を受けるキャスタブル耐火物上の摩耗緩衝構造の摩耗を低減させることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を実施する流動層ボイラの炉壁構造の一部を炉内から見た斜視図である。
【図2】キャスタブル耐火物上に設けた摩耗緩衝構造の一例を示す断面図である。
【図3】図2をIII−III方向から見た切断平面図である。
【図4】図2をIV−IV方向から見た平面図である。
【図5】摩耗緩衝構造の上部に設けた上部摩耗緩衝構造の一例を示す断面図である。
【図6】循環流動層ボイラの一例を示す側面図である。
【図7】図6をVII−VII方向から見た正面図である。
【図8】図6をVIII−VIII方向から見た平面図である。
【図9】従来の水冷壁の斜視図である。
【図10】図9の側断面図である。
【図11】キャスタブル耐火物の上端部から水管が露出する境界部で水管が摩耗する状態を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0031】
図1、図2は発明の基本となる実施例を示すもので、図中、図6〜図11と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0032】
図1、図2の実施例においては、水冷壁15の下部内側に従来と同様に形成している硬質のキャスタブル耐火物19の上部に、キャスタブル耐火物19以下の厚さを有するプラスチック耐火物21を備えた摩耗緩衝構造22を一体に設けている。上記プラスチック耐火物21は、耐火性骨材と粘土及び粘性材料に水を加えて練った粘土状製品を、エアーランマーや木槌等を用いて水冷壁15の内面に固着させて任意に整形することで形成することができる。
【0033】
上記摩耗緩衝構造22は、上記プラスチック耐火物21と、該プラスチック耐火物21の内部に埋没するように水管17に対して放射方向に固定した複数の埋没緩衝スタッド23とを有している。又、前記プラスチック耐火物21は、図2〜図4に示すように、前記水管17の内面形状に沿うように薄肉に形成した上部薄肉部24と、該上部薄肉部24の下端から下側に向かって炉内側に張り出すように緩やかに傾斜した傾斜面25を有する張り出し傾斜部26とを有している。
【0034】
又、図1、図2のプラスチック耐火物21の上部位置には、水管17に対して放射方向に固定した複数の露出緩衝スタッド27が露出して設けられている。
【0035】
前記摩耗緩衝構造22を形成するには、キャスタブル耐火物19の上部における水管17の内面に埋没緩衝スタッド23と露出緩衝スタッド27を予め固定しておく。そして、プラスチック耐火物21を形成するための粘土状製品を、前記埋没緩衝スタッド23を埋没させるように水冷壁15の水管17とフィン18の内面に圧着させて形を整え、前記したように、水管17の内面形状に沿う上部薄肉部24を形成すると共に、該上部薄肉部24の下端から下側に向かって炉内側に張り出すように緩やかに傾斜した傾斜面25が備えられるように張り出し傾斜部26を形成する。このように粘土状製品によって形成したプラスチック耐火材を乾燥させた後、加熱して焼き固めることによってプラスチック耐火物21が形成される。
【0036】
上記摩耗緩衝構造22は矩形形状を有する水冷壁15の内面全周に設けるようにしてもよく、又、粒子の落下量が多いために摩耗による減肉が最も激しいことが判明している水冷壁15の四隅部のみに前記摩耗緩衝構造22を設けるようにしてもよい。
【0037】
図6の火炉4の高さが30メートル前後、キャスタブル耐火物19の高さが6〜7メートル前後である場合において、キャスタブル耐火物19上に設ける前記摩耗緩衝構造22の上下方向の高さ寸法は、25〜50センチメートル程度とすることができる。
【0038】
図1、図2に示した流動層ボイラの炉壁構造においては、キャスタブル耐火物19の上部に、キャスタブル耐火物19以下の厚さのプラスチック耐火物21を有する摩耗緩衝構造22を一体に備えたので、火炉4内を流動して水冷壁15の内面に沿って落下してくる粒子は、先ず露出緩衝スタッド27に衝突して緩衝されることにより速度が減速され、続いて上部薄肉部24の上端24aに衝突して更に減速された後、張り出し傾斜部26の緩やかに傾斜した傾斜面25に沿って炉内側に向けられて落下する。
【0039】
このとき、摩耗緩衝構造22を構成しているプラスチック耐火物21はキャスタブル耐火物19と比較すると曲げ強度が小さいことから、プラスチック耐火物21は、粒子が衝突する上部薄肉部24の上端24aから徐々に摩耗するようになる。
【0040】
本発明者らは、過去の実績から、一般のキャスタブル耐火材に対してプラスチック耐火物は摩耗し易いことを得ている。これは、キャスタブル耐火物とプラスチック耐火物について1000℃の温度条件で曲げ強度試験を行った場合の強度が、キャスタブル耐火物では14.7MPaであるのに対し、プラスチック耐火物では8.0MPaと約半分程度の強度であることからも推測される。又、このような強度の違いは、キャスタブル耐火物に対してプラスチック耐火物は気泡を含んでいて密度が低いことに関係していると考えられる。
【0041】
従って、前記したように上部薄肉部24の上端24aが摩耗することにより、上部薄肉部24の上端24aから水管17が露出する境界部が徐々に下方へ移動して行くことになるため、粒子が水管17の一個所に集中して流下することがなくなり、よって、小さな摩耗緩衝構造22を設けることで水管17が局部的に摩耗するという問題を効果的に防止することができる。
【0042】
又、上記したように上部薄肉部24の上端24aが摩耗すると内部の埋込緩衝スタッド23が露出されるようになるため、この露出した埋込緩衝スタッド23が落下してくる粒子の緩衝を行って上部薄肉部24の上端24aの摩耗を抑制するようになる。
【0043】
上記したように、プラスチック耐火物21の例えば上部薄肉部24の上端24aが摩耗した場合には、摩耗した部分にプラスチック耐火物を盛り付けることによって容易に補修することができる。
【0044】
図1、図3は本発明の他の実施例を示すもので、この実施例では、水冷壁15の内面における前記キャスタブル耐火物19上の摩耗緩衝構造22の上部に、間隔Hを隔てて第2段の上部摩耗緩衝構造28bを炉内側に突出するように設け、更に、該第2段の上部摩耗緩衝構造28bの上部に、間隔Hを隔てて第1段の上部摩耗緩衝構造28aを炉内側に突出するように設けた場合を示している。上部摩耗緩衝構造を設置する段数は一段以上の任意の段数とすることができる。
【0045】
上記した上部摩耗緩衝構造28a,28bは、前記キャスタブル耐火物19上に形成された摩耗緩衝構造22と同様に、プラスチック耐火物21と、該プラスチック耐火物21に埋設された埋没緩衝スタッド23と、露出緩衝スタッド27とにより構成されている。
【0046】
又、上部摩耗緩衝構造28a,28bは、前記摩耗緩衝構造22と同程度の炉内側への張り出し高さと上下高さ寸法を有して形成することができ、又、上部摩耗緩衝構造28a,28b相互の間隔Hの大きさは任意に選定することができる。ここで、図6の火炉4の高さが30メートル前後、キャスタブル耐火物19の高さが6〜7メートル前後である場合においては、例えば1メートル前後の間隔Hを有して、上部摩耗緩衝構造28a,28bを設けることができる。
【0047】
前記上部摩耗緩衝構造28a,28bは水冷壁15の全内周面に環状に形成するようにしてもよく、或いは、矩形形状の水冷壁15の四隅部を落下する粒子量が最も大きくこの四隅部の水管17の摩耗が最も激しいことから、水冷壁15の四隅部のみに前記上部摩耗緩衝構造28a,28bを設けるようにしてもよい。
【0048】
図1、図3に示した実施例によれば、キャスタブル耐火物19上に一体に備えた摩耗緩衝構造22の上部に、プラスチック耐火物21を有して水冷壁15の内面に突出する上部摩耗緩衝構造28a,28bを、間隔Hを隔てて少なくとも1段備えるようにしたので、水冷壁15内面に沿って落下してくる粒子が上部摩耗緩衝構造28a,28bにより緩衝され減速してキャスタブル耐火物19上の摩耗緩衝構造22へ落下すると共に、上部摩耗緩衝構造28a,28bによって粒子が炉内側へ偏向されることでキャスタブル耐火物19上の摩耗緩衝構造22へ落下する粒子の落下量が減少することにより、最も激しい摩耗を受けるキャスタブル耐火物19上の摩耗緩衝構造22の摩耗を低減させることができるという効果がある。
【0049】
又、図1、図3の実施例においても、上部摩耗緩衝構造28a,28bを構成するプラスチック耐火物21の上部薄肉部24の上端24aが摩耗した場合にも、摩耗した部分にプラスチック耐火物を盛り付けることによって容易に補修することができる。
【0050】
尚、本発明の流動層ボイラの炉壁構造は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
2 ベッド材
4 火炉
15 水冷壁
17 水管
18 フィン
19 キャスタブル耐火物
21 プラスチック耐火物
22 摩耗緩衝構造
23 埋没緩衝スタッド
24 上部薄肉部
25 傾斜面
26 張り出し傾斜部
27 露出緩衝スタッド
28a,28b 上部摩耗緩衝構造
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気によってベッド材と共に燃料を流動化させながら燃料を燃焼させる火炉の炉壁が、上下方向へ延びる複数の水管と隣接する水管の相互間を接続するフィンとによる水冷壁により形成され、且つ、該水冷壁の内側下部にキャスタブル耐火物が内張りされている流動層ボイラの炉壁構造において、前記キャスタブル耐火物の上部に、キャスタブル耐火物以下の厚さのプラスチック耐火物を有する摩耗緩衝構造を一体に備えたことを特徴とする流動層ボイラの炉壁構造。
【請求項2】
前記摩耗緩衝構造は、プラスチック耐火物と、該プラスチック耐火物の内部に埋没して水管に備えた埋没緩衝スタッドとを有することを特徴とする請求項1に記載の流動層ボイラの炉壁構造。
【請求項3】
前記摩耗緩衝構造は、プラスチック耐火物の上部に露出して水管に備えた露出緩衝スタッドを有することを特徴とする請求項2に記載の流動層ボイラの炉壁構造。
【請求項4】
前記プラスチック耐火物は、前記水管とフィンの内面形状に沿って形成した上部薄肉部と、該上部薄肉部の下端から下側に向かって炉内側に張り出すように傾斜した張り出し傾斜部とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の流動層ボイラの炉壁構造。
【請求項5】
空気によってベッド材と共に燃料を流動化させながら燃料を燃焼させる火炉の炉壁が、上下方向へ延びる複数の水管と隣接する水管の相互間を接続するフィンとによる水冷壁により形成され、且つ、該水冷壁の内側下部にキャスタブル耐火物が内張りされている流動層ボイラの炉壁構造において、前記キャスタブル耐火物の上部に、キャスタブル耐火物以下の厚さのプラスチック耐火物を有する摩耗緩衝構造を一体に備え、更に、キャスタブル耐火物上に一体に備えた前記摩耗緩衝構造の上部に、プラスチック耐火物を有して水冷壁の内面に突出する上部摩耗緩衝構造を、間隔を隔てて少なくとも1段備えたことを特徴とする流動層ボイラの炉壁構造。
【請求項6】
前記上部摩耗緩衝構造は、プラスチック耐火物と、該プラスチック耐火物の内部に埋没して水管に備えた埋没緩衝スタッドとを有することを特徴とする請求項5に記載の流動層ボイラの炉壁構造。
【請求項7】
前記上部摩耗緩衝構造は、プラスチック耐火物の上部に露出して水管に備えた露出緩衝スタッドを有することを特徴とする請求項6に記載の流動層ボイラの炉壁構造。
【請求項8】
前記プラスチック耐火物は、前記水管とフィンの内面形状に沿って形成した上部薄肉部と、該上部薄肉部の下端から下側に向かって炉内側に張り出すように傾斜した張り出し傾斜部とを有することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の流動層ボイラの炉壁構造。
【請求項1】
空気によってベッド材と共に燃料を流動化させながら燃料を燃焼させる火炉の炉壁が、上下方向へ延びる複数の水管と隣接する水管の相互間を接続するフィンとによる水冷壁により形成され、且つ、該水冷壁の内側下部にキャスタブル耐火物が内張りされている流動層ボイラの炉壁構造において、前記キャスタブル耐火物の上部に、キャスタブル耐火物以下の厚さのプラスチック耐火物を有する摩耗緩衝構造を一体に備えたことを特徴とする流動層ボイラの炉壁構造。
【請求項2】
前記摩耗緩衝構造は、プラスチック耐火物と、該プラスチック耐火物の内部に埋没して水管に備えた埋没緩衝スタッドとを有することを特徴とする請求項1に記載の流動層ボイラの炉壁構造。
【請求項3】
前記摩耗緩衝構造は、プラスチック耐火物の上部に露出して水管に備えた露出緩衝スタッドを有することを特徴とする請求項2に記載の流動層ボイラの炉壁構造。
【請求項4】
前記プラスチック耐火物は、前記水管とフィンの内面形状に沿って形成した上部薄肉部と、該上部薄肉部の下端から下側に向かって炉内側に張り出すように傾斜した張り出し傾斜部とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の流動層ボイラの炉壁構造。
【請求項5】
空気によってベッド材と共に燃料を流動化させながら燃料を燃焼させる火炉の炉壁が、上下方向へ延びる複数の水管と隣接する水管の相互間を接続するフィンとによる水冷壁により形成され、且つ、該水冷壁の内側下部にキャスタブル耐火物が内張りされている流動層ボイラの炉壁構造において、前記キャスタブル耐火物の上部に、キャスタブル耐火物以下の厚さのプラスチック耐火物を有する摩耗緩衝構造を一体に備え、更に、キャスタブル耐火物上に一体に備えた前記摩耗緩衝構造の上部に、プラスチック耐火物を有して水冷壁の内面に突出する上部摩耗緩衝構造を、間隔を隔てて少なくとも1段備えたことを特徴とする流動層ボイラの炉壁構造。
【請求項6】
前記上部摩耗緩衝構造は、プラスチック耐火物と、該プラスチック耐火物の内部に埋没して水管に備えた埋没緩衝スタッドとを有することを特徴とする請求項5に記載の流動層ボイラの炉壁構造。
【請求項7】
前記上部摩耗緩衝構造は、プラスチック耐火物の上部に露出して水管に備えた露出緩衝スタッドを有することを特徴とする請求項6に記載の流動層ボイラの炉壁構造。
【請求項8】
前記プラスチック耐火物は、前記水管とフィンの内面形状に沿って形成した上部薄肉部と、該上部薄肉部の下端から下側に向かって炉内側に張り出すように傾斜した張り出し傾斜部とを有することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の流動層ボイラの炉壁構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−127817(P2011−127817A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285891(P2009−285891)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
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