説明

流動層装置

【課題】造粒等の機能処理を確実に実行しつつ、フィルター部材を効率よくかつ確実に洗浄することを可能にする。
【解決手段】粉粒体の処理を行う処理室2と、処理室2の上方に位置し、フィルター部材3を介して処理室2と連通する排気室4とを有する流動層容器1を備え、処理室2内で粉粒体Mを気体Aにより浮遊流動させながら造粒やコーティング等の機能処理を行うとともに、流動層容器1の処理室2を含む下部空間に洗浄液Cを貯溜した状態で、フィルター部材3を洗浄液C中に浸漬する位置まで下降させてフィルター部材3の洗浄処理を行う流動層装置であって、洗浄処理時には洗浄液Cに浸漬された状態でフィルター部材3に超音波振動を付与するとともに、機能処理時には処理室2内における粉粒体Mの流動層形成領域X外へと退避するように構成された超音波振動子14を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品製造、食品製造、農薬製造等の各種分野において、粉粒体の造粒、コーティング、乾燥を行う流動層装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流動層装置は、一般に、流動層容器の底部から導入した気体(流動化気体)によって、流動層容器内で粉粒体を浮遊流動させて流動層を形成しつつ、造粒、コーティング、乾燥等の機能処理を行うものである。この種の流動層装置には、粉粒体の転動、噴流、及び攪拌等を伴うものも含まれ、その代表的なものとして、流動層容器の底部に回転体を配設した転動流動層装置、流動層容器の内部にドラフトチューブを設置したワースター式流動層装置がある。
【0003】
この種の流動層装置では、粉粒体を含む固気混合気体から気体を分離するためのフィルター部材を流動層容器内の処理室の上方に配設し、このフィルター部材を介して処理室内の上方の排気室内に気体を流入させるようにしている。フィルター部材としては、バグフィルターと呼ばれる織布フィルターや(例えば下記の特許文献1、2を参照)、通気性の樹脂シートや金属金網等(濾材)を筒状にしてリテーナに保持させたカートリッジ式フィルター等が用いられている(例えば下記の特許文献3〜5を参照)。特に、後者のカートリッジ式フィルターは、2μm程度までの微粉を捕集するのに適している。なお、当該カートリッジ式フィルターは、プリーツ加工を施して筒状にすることもある。
【0004】
そして、通常は、このようなフィルター部材内部への目詰まりを防止するために、濾材に付着した微粉の払い落とし操作を行う(シェーキング動作やパルスジェットエアーの噴射等)が、払い落とし操作だけでは付着した微粉を完全には除去できず、状況に応じてフィルター部材を洗浄することが必要になる。また、粉粒体の処理操作を変更する場合(粉粒体の種類や噴霧するスプレー液の種類を変えるような場合)もフィルター部材の洗浄が必要になる。
【0005】
フィルター部材の洗浄方法としては、例えば、下記の特許文献6に開示されている手法が挙げられる。詳述すると、同文献には、流動層容器(処理容器)内に洗浄液を貯溜して、フィルター昇降機構によって貯溜した洗浄液中にフィルター部材を浸漬させ、流動層容器の側壁の外側に固定的に取付けられた超音波振動子により洗浄液に超音波を与えることで洗浄効果を高める手法が開示されている。
【特許文献1】特公平6−16827号公報
【特許文献2】特開2002−172320号公報
【特許文献3】特開2001−817号公報
【特許文献4】特開2000-42336号公報
【特許文献5】特開2005−152883号公報
【特許文献6】特開2007−307448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
超音波振動子で発生する振動は振動子表面から洗浄液などの媒体を介し、付着した洗浄対象物に到達し、これが被洗浄対象物から除去される。超音波振動による高い洗浄効果が得られるのは振動子近傍であり、振動子から遠くなるに従い振動エネルギーは減衰し、洗浄効果が低下する。超音波振動子をフィルター部材が位置する流動層容器の側壁の外側に取り付ける方法もあるが、振動子とフィルター部材の表面の間の距離が長くなるため、距離減衰により十分な洗浄効果が得られるとは考えにくい。特に、フィルター部材が、プリーツ加工が施されたカートリッジフィルターである場合には、フィルターの谷部に超音波振動が到達し難く、洗浄効率の悪化はより顕著な問題として現れる。
【0007】
そこで、超音波振動子を流動層容器の側壁の内側に固定的に取付けることも考えられるが、この場合には流動層容器内で粉粒体に対して造粒等の機能処理を施す際に、超音波振動子が障害物となって粉粒体の流動層の流れが阻害されるおそれがある。したがって、粉粒体に対して的確な機能処理を行うことができなくなり、製造された製品の品位や品質の低下を招き得る。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑み、造粒等の機能処理を確実に実行しつつ、フィルター部材を効率よくかつ確実に洗浄することを可能にすることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために創案された本発明は、粉粒体の処理を行う処理室と、該処理室の上方に位置し、固気分離用のフィルター部材を介して前記処理室と連通する排気室とを有する流動層容器を備え、前記処理室内で粉粒体を気体により浮遊流動させながら造粒、コーティング、及び乾燥のうち少なくとも一の機能処理を行うとともに、前記処理室を含む前記流動層容器の下部空間に洗浄液を貯溜した状態で、前記フィルター部材が前記洗浄液中に浸漬する位置まで前記フィルター部材を下降させて前記フィルター部材の洗浄処理を行う流動層装置において、前記洗浄処理時には前記洗浄液に浸漬された状態で前記フィルター部材に超音波振動を付与可能な位置まで進出するとともに、前記機能処理時には前記処理室内における粉粒体の流動層形成領域外へと退避するように構成された超音波振動子を備えていることを特徴とする。なお、超音波振動子とフィルター部材の距離は、例えば、10〜200mmとすることが好ましい。
【0010】
このような構成によれば、超音波振動子をフィルター部材が浸漬された洗浄液中に浸漬することになるので、超音波振動が洗浄液を媒体としてフィルター部材に直接的に付与されることになる。そのため、流動層容器の壁面を介して超音波振動を付与する場合に比して、フィルター部材に効率よく超音波振動を付与でき、その結果として、フィルター部材を効率よくかつ確実に洗浄することが可能となる。また、造粒等の機能処理時には、超音波振動子が、粉粒体の流動層形成領域外へと退避するようになっているので、超音波振動子が障害物となって粉粒体の流動層の流れが阻害されることもない。
【0011】
上記の構成において、前記超音波振動子が、前記機能処理時に、前記排気室内に退避するように構成されていてもよい。
【0012】
このようにすれば、超音波振動子を粉粒体の流動層形成領域外へと確実に退避させることができる。
【0013】
上記の構成において、前記超音波振動子が、前記機能処理時に、前記処理室の側壁の内表面よりも外方側に退避するように構成されていてもよい。
【0014】
このようにすれば、超音波振動子を粉粒体の流動層形成領域外へと確実に退避させることができる。また、この場合には、超音波振動子の進退移動に要する移動距離を短くできるので、制御面でも有利となる。
【0015】
上記の構成において、前記洗浄処理時に、一の前記超音波振動子を中心として、その周囲に複数の前記フィルター部材が配置されるようにしてもよい。
【0016】
このようにすれば、一の超音波振動子から複数のフィルター部材に対して効率よく超音波振動を付与することが可能となる。
【0017】
上記の構成において、前記フィルター部材が筒状を呈するとともに、前記超音波振動子が、前記洗浄処理時に、前記筒状の前記フィルター部材の内部空間に配置されるようにしてもよい。
【0018】
このようにすれば、筒状のフィルター部材の外部からは洗浄し難いフィルター部材の内表面を効率よく洗浄することが可能となる。
【0019】
上記の構成において、前記洗浄処理時に、前記超音波振動子に対して前記フィルター部材を相対移動させながら、前記超音波振動子により超音波振動を付与するように構成されていてもよい。
【0020】
このようにすれば、超音波振動子からフィルター部材に対して付与される超音波振動の位置が順次変更されるので、フィルター部材全体により確実に超音波振動を付与することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、造粒等の機能処理を確実に実行しつつ、フィルター部材を効率よくかつ確実に洗浄することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は、本発明の第1実施形態に係る流動層装置を模試的に示している。同図に示すように、この流動層装置の流動層容器1は、粉粒体Mの機能処理として、例えば粉粒体Mの造粒又はコーティングを行う処理室2と、処理室2の上方に位置し、固気分離用の複数のフィルター部材3を介して処理室2と連通する排気室4とを備えている。
【0024】
処理室2の底部には、パンチングメタル等の多孔板(又は金網)で構成された気体分散板2aが配設されている。給気ダクト5から給気チャンバ6に供給された熱風等の気体Aは、気体分散板2aを介して処理室2内に導入される。処理室2の上部にはスプレー液(膜剤液、結合剤液等)を噴霧するスプレーノズル7が設置されている。なお、図中において、8は、粉粒体Mを外部に排出するための粉粒体排出部で、9は、後述する洗浄処理時に流動層容器1内に図示しない洗浄ノズルから供給された洗浄液Cを、洗浄処理終了後に流動層容器1の外部に排出するための洗浄液排出部である。
【0025】
この実施形態において、フィルター部材3は、その下方部にプリーツ加工を施した通気性樹脂シートまたは金属金網等を円筒状にした状態で、図示しないリテーナによって保持された濾材3aを有するとともに、その上方部に排気口3bを有するカートリッジ式フィルターによって構成されている。このカートリッジ式フィルター3は、流動層容器1の内壁に固定された固定仕切板10と共同して、処理室2と排気室4との間を仕切る可動仕切板11によって支持されている。
【0026】
可動仕切板11は、例えばエアーシリンダ等の進退機構12によって昇降移動可能となっている。洗浄時に進退機構12を作動させると、可動仕切板11が、カートリッジ式フィルター3と共に、図1に示す位置から下降する(図2参照)。なお、可動仕切板11の進退機構12はエアーシリンダに限らず、他の機構(ワイヤ機構、リンク機構、ボールねじ機構等)であってもよい。また、上述のスプレーノズル7は、可動仕切板11の下降の邪魔にならないように、移動可能であったり、或いは、取り外し可能となっている。
【0027】
排気室4には、排気ダクト13が接続されている。また、排気室4内には複数(図示例では2つ)の超音波振動子14が収容されている。各超音波振動子14は、例えばエアーシリンダ等の進退機構15によって昇降移動させることができる。洗浄時に進退機構15を作動させると、各超音波振動子14が、図1に示す位置から下降する(図2参照)。詳述すると、固定仕切板10および可動仕切板11のうち、各超音波振動子14の昇降経路上に対応する位置には、図示しない開閉扉がそれぞれ設けられている。各超音波振動14を下降させる際には各開閉扉が開き、内径側に配置された超音波振動子14は可動仕切板11の開閉扉を、外径側に配置された超音波振動子14は固定仕切板10の開閉扉をそれぞれ通過して、各超音波振動子14が仕切板10,11よりも下方に進出するようになっている。なお、可動仕切板11の進退機構12はエアーシリンダに限らず、他の機構(ワイヤ機構、リンク機構、ボールねじ機構等)であってもよい。
【0028】
以上のように構成された流動層装置では、粉粒体Mの機能処理が次のようにして行われる。すなわち、流動層容器1の処理室2に収容された粉粒体Mは、気体分散板2aを介して流動層容器1内に導入される気体Aによって浮遊流動される。そして、この粉粒体Mの流動層形成領域Xに向けてスプレーノズル7からスプレー液(膜剤液、結合剤液等)が噴霧される。スプレーノズル7から噴霧されるスプレー液、例えば膜剤液のミストによって粉粒体Mが湿潤を受けると同時に、膜剤液中に含まれる固形成分が粉粒体Mの表面に付着し、乾燥固化されて、粉粒体Mの表面に被覆層が形成される(コーティング)。あるいは、スプレーノズル7から噴霧されるスプレー液、例えば結合剤液のミストによって粉粒体Mが湿潤を受けて付着凝集し、乾燥されて、所定径の粒子に成長する(造粒)。
【0029】
このような造粒等の機能処理の間、超音波振動子14は、処理室2内における粉粒体Mの流動層形成領域X外である排気室4内に退避している。そのため、超音波振動子14が障害物となって、処理室2内における気体Aの流動層の流れが阻害されることがないので、機能処理を確実に行うことができる。
【0030】
粉粒体Mを浮遊流動させた気体Aは、処理室2を上昇して各カートリッジ式フィルター3によって固気分離されて排気室4に流入する。そして、排気室4に接続された排気ダクト13を通って流動層容器1の外部に排気される。
【0031】
さらに、この実施形態に係る流動層装置では、カートリッジ式フィルター3の洗浄処理を図2(a),(b)に示すような態様で行うことができる。
【0032】
まず、図示しない洗浄ノズルから流動層容器1内に洗浄液Cを供給し、所定の液面レベルLになるまで洗浄液Cを貯溜する。洗浄液Cの液面レベルLは、可動仕切板11を進退機構12によって下降させたときに、カートリッジ式フィルター3の全部分が洗浄液C中に浸かる程度とする。つぎに、可動仕切板11の進退機構12を作動させて、カートリッジ式フィルター3の全部分が洗浄液C中に浸漬される位置まで、可動仕切板11を下降させる。
【0033】
また、可動仕切板11の下降動作と同時、又はこれと前後して、超音波振動子14の進退機構15を作動させて、超音波振動子14の全部分が洗浄液C中に浸漬される位置まで、超音波振動子14を下降させる。
【0034】
そして、カートリッジ式フィルター3と、超音波振動子14とを洗浄液Cに浸漬して、両者を近接させた状態で、超音波振動子14からカートリッジ式フィルター3に対して超音波振動を付与し、カートリッジ式フィルター3の洗浄処理を行う。
【0035】
詳述すると、この実施形態では、洗浄処理時に、可動仕切板11の中心部近傍の直下方に一の超音波振動子14が配置され、この周囲を取り囲むように複数のカートリッジ式フィルター3が円周状に配置される。そして、この円周状に配置されたカートリッジ式フィルター3の外周側に他の一の超音波振動子14が配置され、中心近傍に配置された一の超音波振動子14と外周側に配置された他の一の超音波振動子14とが、カートリッジ式フィルター3を挟んで対向している。さらに、可動仕切板11の進退機構12は、可動仕切板11を図2(b)の矢印方向に回転させる機能を備えており、上記の対向する一対の超音波振動子14間を、円周状に配置された複数のカートリッジ式フィルター3が順々に通過するようになっている。そのため、円周状に配置された複数のカートリッジ式フィルター3の各々に対して、一対の超音波振動子14によって両側から超音波振動が付与されるので、一方側からのみ超音波振動を付与する場合に比べて、濾材3a等に付着した微粉をより効果的に除去することが可能となる。そして、一般的には、超音波振動子14をカートリッジ式フィルター3に近接させると、カートリッジ式フィルター3に超音波振動を効率的に付与できるという利点がある一方で、カートリッジ式フィルター3に対する超音波振動が付与される領域が狭くなり、超音波振動が十分に付与されない領域が広がるという欠点が生じるが、上記のような構成であれば、当該欠点をもカバーすることができる。これは、超音波振動子14をカートリッジ式フィルター3に近接させても、カートリッジ式フィルター3の両側から超音波振動が付与されるとともに、カートリッジ式フィルター3は図2(b)の矢印方向に旋回するので、超音波振動が主として作用するカートリッジ式フィルター3上での位置が変化し、カートリッジ式フィルター3の全体に万遍なく超音波振動が付与されるためである。
【0036】
なお、円周状に配置されたカートリッジ式フィルター3の外周側に位置する超音波振動子14は、円周状に配置された複数のカートリッジ式フィルター3を取り囲むように円周状に複数配置するようにしてもよい。この場合、円周状に配置された複数のカートリッジ式フィルター3を、図2(b)の矢印方向に旋回させるか否かはいずれであってもよい。
【0037】
そして、上記のようにしてカートリッジ式フィルター3の洗浄処理を行った後、粉粒体排出部8及び洗浄液排出部9を開いて洗浄液Cを流動層容器1外へと排出する。その後、可動仕切板11及び超音波振動子14を図1に示した元の位置まで上昇させ、上述のコーティングや造粒等の機能処理を再開する。なお、洗浄液Cを排出した後に、給気ダクト5から熱風を流動層容器1内に供給して、流動層容器1内を早期に乾燥させるようにすれば、機能処理を早期に再開することが可能となる。
【0038】
図3(a),(b)は、本発明の第2実施形態に係る流動層装置を模式的に示している。なお、同図(a)において、機能処理時におけるカートリッジ式フィルター3、可動仕切板10、超音波振動子14のそれぞれの位置は一点鎖線で表している。
【0039】
この第2実施形態に係る流動層装置が、上述の第1実施形態に係る流動層装置と相違する点は、洗浄処理時に、洗浄液C中に浸漬された各カートリッジ式フィルター3の内部空間に、それぞれ一つの超音波振動子14が挿入配置されるところにある。このようにすれば、カートリッジ式フィルター3の内表面を効率よく、且つ、確実に洗浄することが可能となる。
【0040】
また、この場合には、可動仕切板11の上方に位置する超音波振動子14が、カートリッジ式フィルター3の内部空間を利用して可動仕切板11の上方から下方へと進出して洗浄液C中に浸漬される。したがって、超音波振動子14を通過させるための開閉扉を仕切板10,11に別途設ける必要がなくなる。
【0041】
なお、勿論、このようにカートリッジ式フィルター3の内部空間に超音波振動子14を配置する場合であっても、カートリッジ式フィルター3の外部空間に超音波振動子14を別途配置して、カートリッジ式フィルター3の内外表面の両側から超音波振動を付与するようにしてもよい。また、図4に示すように、超音波振動子14を1つだけ配置し、可動仕切り板11の上昇・下降・回転動作を利用し、すべてのカートリッジ式フィルター3の内部を順番に洗浄するようにしてもよい。
【0042】
図5(a),(b)は、本発明の第3実施形態に係る流動層装置を模式的に示している。なお、同図において、機能処理時におけるカートリッジ式フィルター3、可動仕切板11、超音波振動子14のそれぞれの位置は一点鎖線で表している。
【0043】
この第3実施形態に係る流動層装置が、上述の第1〜2実施形態に係る流動層装置と相違する第1の相違点は、円周状に配置されたカートリッジ式フィルター3の外周側に配置された超音波振動子14が、造粒等の機能処理時には処理室2の側壁の内表面よりも外方側に退避するとともに、洗浄処理時には処理室2の側壁の内表面よりも内方側に進出するようになっているところにある。
【0044】
このようにすれば、超音波振動子14を排気室4内に退避させる場合よりも、各超音波振動子14を進退移動させる進退機構15のストローク量を小さくすることができので、制御面で有利となる。
【0045】
なお、図示例では、カートリッジ式フィルター3の外周側に、放射状に複数の超音波振動子14を配置しているが、勿論、この場合でも、可動仕切板11を回転させて、内周側に配置された超音波振動子14と、外周側に配置された超音波振動子14の間を、複数のカートリッジ式フィルター3が順々に通過するようにしてもよい。また、このように可動仕切板11が回転可能である場合には、図6に示すように、カートリッジ式フィルター3の外周側に超音波振動子14を一つだけ配置するようにしてもよい。さらに、可動仕切板11の中心部に配置された超音波振動子14は、適宜省略可能であるが、この実施形態では、上述の実施形態と同様に、流動層容器1内を上下方向に昇降移動可能となっている。
【0046】
さらに、第2の相違点は、洗浄処理中にも、可動仕切板11の進退機構12を作動させて、洗浄液C中でカートリッジ式フィルター3を下降或いは上昇させながら、超音波振動子14により超音波振動を付与するようにしたところにある。
【0047】
このようにすれば、カートリッジ式フィルター3の下降(上昇)に伴って、超音波振動子14から発振される超音波がカートリッジ式フィルター3の上下方向に走査される。すなわち、カートリッジ式フィルター3の上下方向に沿って順々に超音波振動が付与されていくことになるので、カートリッジ式フィルター3全体に超音波振動を確実に付与することができる。また、この場合には、超音波振動子14によって超音波振動を付与するエリアを上下方向で狭くしても、カートリッジ式フィルター3全体の洗浄を行うことができるため、超音波振動子14の上下方向寸法のコンパクト化を図ることも可能である。もちろん、カートリッジ式フィルター3を昇降させる代わりに、カートリッジ式フィルター3を停止させた状態で、超音波振動子14を昇降させるようにしてもよい。すなわち、カートリッジ式フィルター3と、超音波振動子14の一方または双方を上下方向に移動させて、両者の間に上下方向の相対移動を生じさせれば、上述の作用効果を同様に享受できる。
【0048】
なお、本発明は、上述したような流動層装置に限らず、転動流動層装置やワースター式流動層装置等の複合型流動層装置にも同様に適用できる。
【0049】
また、上記の実施形態では、カートリッジ式フィルター3の洗浄処理について説明したが、気体分散板2aの洗浄処理にも応用することができる。具体的には、超音波振動子14を、気体分散板2aの洗浄処理時には、浸漬された状態で気体分散板2aに超音波振動を付与可能な位置まで進出し、機能処理時には処理室2内における粉粒体Mの流動層形成領域X外へと退避するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態に係る流動層装置の機能処理時の状態を模式的に示す図である。
【図2】(a)は、第1実施形態に係る流動層装置の洗浄処理時の状態を模式的に示す図であって、(b)は、(a)に示す流動層装置の一部を下方から見た図である。
【図3】(a)は、第2実施形態に係る流動層装置の洗浄処理時の状態を模式的に示す図であって、(b)は、(a)に示す流動層装置の一部を下方から見た図である。
【図4】第2実施形態に係る流動層装置の変形例を示す図である。
【図5】(a)は、第3実施形態に係る流動層装置の洗浄処理時の状態を模式的に示す図であって、(b)は、(a)に示す流動層装置の一部を下方から見た図である。
【図6】第3実施形態に係る流動層装置の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1 流動層容器
2a 気体分散板
2 処理室
3 カートリッジ式フィルター(フィルター部材)
4 排気室
5 給気ダクト
6 給気チャンバ
7 スプレーノズル
8 粉粒体排出部
9 洗浄液排出部
10 固定仕切板
11 可動仕切板
12 可動仕切板の進退機構
13 排気ダクト
14 超音波振動子
15 超音波振動子の進退機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体の処理を行う処理室と、該処理室の上方に位置し、固気分離用のフィルター部材を介して前記処理室と連通する排気室とを有する流動層容器を備え、前記処理室内で粉粒体を気体により浮遊流動させながら造粒、コーティング、及び乾燥のうち少なくとも一の機能処理を行うとともに、前記処理室を含む前記流動層容器の下部空間に洗浄液を貯溜した状態で、前記フィルター部材が前記洗浄液中に浸漬する位置まで前記フィルター部材を下降させて前記フィルター部材の洗浄処理を行う流動層装置において、
前記洗浄処理時には前記洗浄液に浸漬された状態で前記フィルター部材に超音波振動を付与可能な位置まで進出するとともに、前記機能処理時には前記処理室内における粉粒体の流動層形成領域外へと退避するように構成された超音波振動子を備えていることを特徴とする流動層装置。
【請求項2】
前記超音波振動子が、前記機能処理時に、前記排気室内に退避するように構成されている請求項1に記載の流動層装置。
【請求項3】
前記超音波振動子が、前記機能処理時に、前記処理室の側壁の内表面よりも外方側に退避するように構成されている請求項1に記載の流動層装置。
【請求項4】
前記洗浄処理時に、一の前記超音波振動子を中心として、その周囲に複数の前記フィルター部材が配置される請求項1〜3のいずれか1項に記載の流動層装置。
【請求項5】
前記フィルター部材が筒状を呈するとともに、前記超音波振動子が、前記洗浄処理時に、前記筒状の前記フィルター部材の内部空間に配置される請求項1〜4のいずれか1項に記載の流動層装置。
【請求項6】
前記超音波振動子が、前記洗浄処理時に、前記フィルター部材に対して相対移動しながら超音波振動を付与するように構成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の流動層装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−104925(P2010−104925A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280355(P2008−280355)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(591011384)株式会社パウレック (44)
【Fターム(参考)】