説明

流動接触分解添加物

本発明は、アニオン性クレイ担体上に担持されるロジウムを含んでなる触媒組成物に関する。この触媒組成物は、流動接触分解ユニット中のCO燃焼添加物として好適である。先行技術のCO燃焼添加物と比較して、NOの形成が最少化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニオン性クレイ担体上に担持されるロジウムを含んでなる触媒添加物、これらの製造および流動接触分解法におけるこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
流動接触分解(FCC)触媒は反応器(一般にライザー反応器)と再生器の間を循環する。再生器中で、分解反応時にFCC触媒上に堆積したコークが焼き飛ばされる。この再生はCOおよびCO2の形成を生じるのみならず、コーク中の窒素およびイオウを含有する種の存在によりNO(主としてNO)およびSOの形成を生じる。これらのガスはFCCユニットから排出される。
【0003】
CO排出を低減するために、COの酸化を促進するのにCO燃焼促進剤(一般にPt含有化合物)がFCCユニットに添加可能である。しかしながら、残念ながら、CO燃焼促進剤は一般にNOの形成を促進する。
それゆえ、NO形成を促進しないか、あるいは最少化された程度でしかNOを形成しないCO燃焼添加物を提供することが望ましい。
【0004】
(特許文献1)はPtとIrを含んでなるCO燃焼添加物を開示している。
(非特許文献1)はRh含有組成物上でのCO酸化とNO還元を研究した。これらの組成物中のRhはMgO・Alスピネルまたはアルミナのいずれかの上に担持されたものであった。アルミナ担体はスピネル担体よりも良好なCO燃焼を生じた。
【特許文献1】米国特許第4,290,878号
【非特許文献1】Iliopoulouetal.、Appl.Catal.B、47(2004)165−175
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
更なる触媒添加物組成物および改善された触媒添加物組成物の探求はなお継続している。本発明はこのような更なる組成物および改善された組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による触媒組成物は、アニオン性クレイ担体上に担持されるロジウムを含んでなる。下記の実施例に示されるように、アニオン性クレイ担体の使用は、アルミナ担体の使用と比較して、CO燃焼が少なくとも類似である一方でNO排出物の低減を生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明による触媒組成物においては、Rhはアニオン性クレイ上に担持される。この触媒組成物を製造する好適な方法は、ロジウム塩を含有する溶液により既存のアニオン性クレイを含浸することである。この溶液は好ましくは水性であるが、有機性状のものでもよい。
好適なロジウム塩は、塩化ロジウム、硝酸ロジウムおよび含浸溶液の作製に使用される液体に可溶性である他のRh錯体である。
いかなる在来の方法も含浸に使用可能である。例は、湿式含浸またはインシピエントウエットネス法含浸である。
【0008】
Rhをその上に担持させたアニオン性クレイ(本発明におけるように)は、Rhをドーピングさせたアニオン性クレイと異なるということが強調される。
Rhをドーピングさせたアニオン性クレイは、Rh化合物の存在下で製造されるアニオン性クレイを指す。例えば、(i)二価金属塩、三価金属塩およびロジウム塩を共沈殿し、続いて沈殿をエージングさせること、(ii)既存のアニオン性クレイを焼成し、続いて焼成されたアニオン性クレイをRh含有水溶液中で再水和すること、または(iii)二価金属化合物、三価金属化合物およびロジウム化合物を含んでなるスラリーをエージングさせることの、いくつかの作製方法がRhをドーピングさせたアニオン性クレイを生じ得る。
これらの方法を用いて、Rhはアニオン性クレイ構造物全体にわたって分布される。しかしながら、本発明によるRh含有アニオン性クレイは、既存のアニオン性クレイをRhにより含浸することにより製造される。これは、アニオン性クレイ担体の表面上のRh粒子を生じる。このような含浸されたクレイ中のRhは、一般に、Rhをドーピングさせたアニオン性クレイ中のRhよりも反応試剤に対する接近性がより良好であるということは明白である。
【0009】
Rhは、Rh金属として測定し、そしてアニオン性クレイの重量基準で好ましくは0.001〜2.0重量%の、更に好ましくは0.01〜2.0重量%の、なお更に好ましくは0.01〜1.0重量%の、そして最も好ましくは0.01〜0.15重量%の量でアニオン性クレイ上に存在する。
【0010】
Ag、Pdおよび/またはCuなどの更なる金属が触媒組成物中に存在することができる。これらの金属は、好ましくは0.001〜2.0重量%の、更に好ましくは0.01〜2.0重量%、なお更に好ましくは0.01〜1.0重量%の、そして最も好ましくは0.01〜0.30重量%の量でアニオン性クレイ上に存在する。
更なる金属およびRhはアニオン性クレイ上に共含浸可能である。
別法としては、Rhおよび更なる金属は順次含浸可能である。
【0011】
アニオン性クレイは一般式
[Mm2+Mn3+(OH)2m+2n](Xz−).bH
に対応する層状構造体である。
式中、M2+は二価金属であり、M3+は三価金属であり、mおよびnはm/n=1〜10、好ましくは1〜6となるような値を有し、そしてbは0〜10の範囲の値、一般に2〜6の値およびしばしば約4の値を有する。Xは、CO2−、OHまたはアニオン性クレイの中間層中に通常存在する任意の他のアニオンなどの原子価zのアニオンである。m/nは2〜4の値、特に3に近い値を有するということが更に好まれる
先行技術では、アニオン性クレイは層状複水酸化物およびヒドロサルファイト様の材料とも呼ばれる。
アニオン性クレイは、金属水酸化物の特定な組み合わせ物から組み立てられる正に帯電した層からなり、その間にアニオンと水分子が存在する結晶構造物を有する。ヒドロサルファイトは、Alが三価金属であり、Mgが二価金属であり、そしてカーボネートが存在する主要なアニオンである、天然起源のアニオン性クレイの例である。ミックスネライトは、Alが三価金属であり、Mgが二価金属であり、そしてヒドロキシルが存在する主要なアニオンである、アニオン性クレイである。
ヒドロサルファイト様のアニオン性クレイにおいては、ブルサイト様の主要層は、水分子とアニオン、特にカーボネートイオンが分布する中間層により交互する八面体から組み立てられる。この中間層は、NO3−、OH、CP、Br、I、SO2−、SiO2−、CrO2−、BO2−、MnO、HGaO2−、HVO2−、ClO、BO2−、V10286−およびMo246−などのピラリングアニオン、アセテートなどのモノカルボキシレート、オキサレートなどのジカルボキシレート、ラウリルスルホネートなどのアルキルスルホネートなどのアニオンを含有し得る。
本発明の目的には、種々のタイプのアニオン性クレイが好適である。
(熱処理された)アニオン性クレイ中に存在する好適な三価金属(M3+)の例は、Al3+、Ga3+、In3+、Bi3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、Sc3+、La
3+、Ce3+およびこれらの組み合わせ物を含む。好適な二価金属(M2+)は、Mg2+、Ca2+、Ba2+、Zn2+、Mn2+、Co2+、Mo2+、Ni2+、Fe2+、Sr2+、Cu2+およびこれらの組み合わせ物を含む。特に好ましいアニオン性クレイは、Mg−AlおよびZn−Alアニオン性クレイである。
好適なアニオン性クレイはいかなる既知の方法によっても製造可能である。例は、例えばオキシド、ヒドロオキシド、カーボネートおよびヒドロキシカーボネートの可溶性の二価および三価金属塩の共沈殿および水不溶性の二価および三価金属化合物の間のスラリー反応である。後者の方法はアニオン性クレイへの安価な経路を提供する。
【0012】
本発明による触媒組成物は、シリカ、アルミナ、アルミノシリケート、ジルコニア、チタニア、ボリア、カオリン、酸浸出されたカオリン、脱アルミニウム処理されたカオリン、ベントナイト、(変成あるいはドーピングされた)アルミニウムリン酸塩、ゼオライト(例えば、ゼオライトX、Y、REY、USY、RE−USYまたはZSM−5、ゼオライトベータ、シリカライト)、リン酸塩(例えば、メタあるいはピロリン酸塩)、吸着剤、充填剤およびこれらの組み合わせ物などの在来の触媒成分を更に含んでなり得る。
【0013】
本発明による組成物中に存在する好ましい触媒成分はアルミナである。
【0014】
この触媒組成物は、好ましくは1.0〜100重量%の、更に好ましくは1.0〜40重量%の、なお更に好ましくは3.0〜25重量%の、そして最も好ましくは3.0〜15重量%のRh含有アニオン性クレイを含んでなる。
【0015】
本発明の触媒組成物は、好ましくは20〜約2000ミクロンの、好ましくは20〜600ミクロンの、更に好ましくは20〜200ミクロンの、そして最も好ましくは30〜100ミクロンの粒子の大きさを有する。
【0016】
本発明の触媒組成物は、FCC再生器からのNOxおよびCO排出の低減に極めて好適である。それゆえ、本発明は、FCC法におけるこの触媒組成物の使用にも関する。本発明の触媒組成物は、好ましくは在来のFCC触媒と組み合わせて添加物として使用される。本発明の触媒組成物とFCC触媒はマトリックスの中にまとめて組み込まれ、それにより1つの形式の触媒粒子を作り出すことができる。他方、本発明による触媒組成物を含んでなる粒子(添加物粒子)およびFCC触媒粒子の2つの形式の粒子の物理的混合物が使用可能である。後者は、FCCユニットに添加されるべき本発明による触媒組成物の量がユニット中の特定の条件と処理されるべき炭化水素フィードに容易に適合可能であるという利点を有する。
【実施例】
【0017】
実施例1
−Rh(500)/HTC、ヒドロサルファイト上に500ppm(0.050重量%)のRhを含有および
−Rh(150)/HTC、ヒドロサルファイト上に150ppm(0.015重量%)のRhを含有
の2つのアニオン性クレイにより担持されるロジウム組成物を製造した。
【0018】
ヒドロサルファイトを塩化Rh(III)の水溶液によりインシピエントウエットネス法含浸することにより、これらの組成物を製造した。インシピエントウエットネス法含浸の後、含浸されたヒドロサルファイトをオーブン中110℃で14時間乾燥した。
【0019】
比較例A
−Rh(500)/Al、アルミナ上に500ppm(0.050重量%)のRh
を含有および
−Rh(150)/Al、アルミナ上に150ppm(0.015重量%)のRhを含有の2つのアルミナにより担持されるロジウム組成物を製造した。
【0020】
Pural(登録商標)アルミナを塩化Rh(III)の水溶液によりインシピエントウエットネス法含浸することにより、これらの組成物を製造した。インシピエントウエットネス法含浸の後、含浸されたアルミナをオーブン中110℃で14時間乾燥した。
【0021】
実施例2
FCC再生器条件下でのCO酸化およびNO還元能力について、実施例1および比較例Aによる触媒組成物を試験した。
【0022】
この触媒組成物の各々を使用済(すなわち、コークを含有する)の商用FCC触媒と1:99の重量比でブレンドした。このブレンドを流動窒素中で流動化し、700℃まで加熱した。次に、酸素(2容積%)をこのガス流の中に導入し、そしてCO、CO2およびNOの発生を時間の関数として測定した。
商用のPtを含有するCO燃焼添加物を用いて生成するCOおよびNOの量に対して、これらの触媒組成物を用いて生成するCOおよびNOの全量を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
この表は、アニオン性クレイ上に担持されるRhがアルミナ上に担持されるRhよりも良好な性能を示すということを示す。これらの組成物のCO燃焼は同等であるが、アニオン性クレイを担体として使用することによりNO低減は大きく改善される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性クレイ上に担持されるロジウムを含んでなる触媒組成物。
【請求項2】
アニオン性クレイ上にPd、Agおよび/またはCuを更に含んでなる、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
酸化物として計算し、そしてRhを担持したアニオン性クレイの重量基準でアニオン性クレイ上のロジウムの量が0.01〜2.0重量%である、請求項1あるいは2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
アルミナを更に含んでなる請求項1〜3のいずれか一つに記載の触媒組成物。
【請求項5】
触媒組成物の全重量基準で1.0〜40重量%のアニオン性クレイを含有する、請求項4に記載の触媒組成物。
【請求項6】
アニオン性クレイがMg−Alアニオン性クレイまたはZn−Alアニオン性クレイである、請求項1〜5のいずれか一つに記載の触媒組成物。
【請求項7】
アニオン性クレイをRh塩により含んでなる溶液を含浸する段階を含んでなる、請求項1〜6のいずれか一つに記載の触媒組成物を製造する方法。
【請求項8】
流動接触分解法における請求項1〜6のいずれか一つに記載の触媒組成物の使用。
【請求項9】
触媒組成物が流動接触分解法において分解触媒と組み合わせて触媒添加物として使用され、触媒添加物と分解触媒が別々の粒子中に存在する、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
再生器からのNOおよび/またはCO排出物を低減するための請求項8あるいは9に記載の使用。

【公表番号】特表2008−532741(P2008−532741A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500198(P2008−500198)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060573
【国際公開番号】WO2006/095001
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(507062783)
【Fターム(参考)】