説明

流動接触分解触媒用添加剤

【課題】重質油留分の分解効率を上げ、なおかつコーク収率の増加を抑制することができる流動接触分解触媒用添加剤を提供する。
【解決手段】バインダー及びアルミナ−シリカを含む混合スラリーを噴霧乾燥することで得られる流動接触分解触媒用添加剤であって、比表面積が100〜400m/gであり、かつ、全固体酸量が0.10mmol/g以上、0.50mmol/g未満である。また、前記全固体酸量に対する強酸量の割合が20%以下であるのが好ましい。更に、前記混合スラリー中のアルミナ−シリカの割合が20質量%以上、80質量%未満であるのが好ましい。また、前記アルミナ−シリカ中のシリカの含有量が0質量%を超えて10質量%未満であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動接触分解装置(FCC装置)において、流動接触分解触媒(FCC触媒)に添加して使用され、特に、原料油中の重質油留分(ボトム)を分解して軽質留分(特に、ガソリン)を得るための流動接触分解触媒用添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流動接触分解触媒を用いて原料油を分解して軽質油を得ているが、原油の価格高騰により、より重質な原料油(重質油留分)も処理するようになっている。ここで、FCC触媒によって重質油留分(例えば、残油)を効率よく分解するために、FCC触媒に含まれるゼオライトやアルミナに代表される活性成分を増量している。しなしながら、FCC触媒中の活性成分の割合が増加すると、触媒の強度が低下するなどして物性が悪化するという問題があった。また、流動接触分解装置において、原料油中の重質油留分を分解して軽質留分を得るにあたり、重質油留分の分解が進むとコークが増加し、更に生成したコークが燃焼する際に、温度上昇及び水蒸気発生が起こり、FCC触媒の品質が劣化するという問題があった。このような問題を解決するためにFCC触媒の補助触媒(FCCアディティブ:FCC Additive)として以下のような添加剤が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、シリカ−アルミナと粘土とシリカの粒状混合物からなり、シリカ−アルミナ中のシリカ含有量が10〜30重量%であり、混合物中に含まれるケイ素の含有量がSiO換算で10〜60重量%である流動接触分解触媒用添加剤が開示されている。
また、特許文献2には、シリカ−アルミナと粘土とシリカからなり、全ケイ素の含有量がSiO換算で10〜60重量%である粒子からなり、30〜80m/gの比表面積及び0.14〜0.45ml/gの全細孔容積を有するとともに、細孔半径60Å以下の細孔容積が0.05ml/g以下であり、更に、全酸量が0.02〜0.065mmol/gの範囲にある流動接触分解触媒用添加剤が開示されている。
特許文献3には、複合金属酸化物と粘土とシリカからなり、30〜80m/gの比表面積及び0.14〜0.45ml/gの全細孔容積を有するとともに、細孔直径60〜200Åの細孔容積が全細孔容積の45%以上の範囲にある流動接触分解触媒用添加剤が開示されている。
特許文献4には、複合金属酸化物、粘土及びシリカからなり、比表面積が30〜80m/gであり、全酸量が0.02〜0.08mmol/gであり、かつ該全酸量に対する強酸量の割合が10〜50%である重質油分解用添加触媒が開示されている。
特許文献1〜4の添加剤は、シリカ−アルミナ中のシリカ含有量が10〜30重量%、混合物中のシリカ含有量が10〜60重量%、比表面積が30〜80m/g、全酸量が0.02〜0.08mmol/gからなるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3479783号明細書
【特許文献2】特許第3467608号明細書
【特許文献3】特許第3643843号明細書
【特許文献4】特許第3920966号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の添加剤は、重質油留分の分解にある程度の効果はあるが、重質油留分の分解効率を更に高めていく必要があった。ここで、これらの添加剤を用いて重質油留分を流動接触分解した場合、重質油留分の分解が進むと同時にコーク収率が増加し、そしてコーク収率が増加することにより、FCC装置における触媒再生塔内温度の上昇を引き起こし、コーク燃焼における温度上昇及び水蒸気発生に伴って、FCC触媒の品質劣化を招くことになった。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、重質油留分の分解効率を上げ、なおかつコーク収率の増加を抑制することができる流動接触分解触媒用添加剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る流動接触分解触媒用添加剤は、バインダー及びアルミナ−シリカを含む混合スラリーを噴霧乾燥することで得られる流動接触分解触媒用添加剤であって、比表面積が100〜400m/gであり、かつ、全固体酸量が0.10mmol/g以上、0.50mmol/g未満である。
本発明に係る流動接触分解触媒用添加剤において、前記全固体酸量に対する強酸量の割合が20%以下であるのが好ましい。
本発明に係る流動接触分解触媒用添加剤において、前記混合スラリーは多孔性シリカ又はゼオライトを含むのが好ましい。
本発明に係る流動接触分解触媒用添加剤において、前記混合スラリー中のアルミナ−シリカの割合が20質量%以上、80質量%未満であるのが好ましい。
本発明に係る流動接触分解触媒用添加剤において、前記アルミナ−シリカ中のシリカの含有量が0質量%を超えて10質量%未満であるのが好ましい。
本発明に係る流動接触分解触媒用添加剤において、前記バインダーがシリカ化合物又はアルミニウム化合物であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の添加剤は、比表面積が100〜400m/gであり、かつ、全固体酸量が0.10〜0.50mmol/gであるので、従来の添加剤と比較して、活性が増大し、重質留分(HCO:Heavy Cycle Oil)の収率が減少し、ガソリンの収率が増大し、コークの収率が同等となる。これは、添加剤の比表面積及び全固体酸量が従来よりも高くなったことで、原料油と添加剤との接触面積及び活性点が増加し、その結果、FCC触媒の活性が増大すると共に、HCOの収率が低下したためであると解される。また、全固体酸中の強酸の割合を20%以下と小さくすることで、過分解反応が抑えられ、ガソリン及びFCC分解軽油(LCO:Light Cycle Oil)の収率が増大し、更にコーク収率の増大が抑制されたと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施の形態に係る流動接触分解触媒用添加剤について説明する。
本発明の流動接触分解触媒用添加剤(以下、単に「添加剤」ともいう)は、流動接触分解装置(FCC装置)において、特に、原料油中の重質油留分(ボトム)を分解して軽質留分を得るために、ゼオライトを含む無機酸化物多孔体から構成される流動接触分解触媒に添加して使用されるものである。
本発明の添加剤は、バインダー及びアルミナ−シリカを含む混合スラリーを、周知の条件で噴霧乾燥することで得られ、BET法(JIS Z8830)により測定される比表面積が100〜400m/g、好ましくは150〜380m/g、より好ましくは200〜350m/gであり、かつ、アンモニア吸着熱測定法(特許第3784852号参照。実際には実施例1に記載した方法で測定した)により測定される全固体酸量(吸着熱が70kJ/mol以上のアンモニア吸着量)が0.10mmol/g以上、0.50mmol/g未満であり、好ましくは0.20〜0.45mmol/g、より好ましくは0.25〜0.40mmol/gである。
ここで、添加剤の比表面積が100m/g未満では、添加剤と原料油の反応場が少なくなるので、重油留分(HCO)の分解効率が低下し、400m/gを超えると添加剤の嵩密度及び強度が悪化する。また、添加剤の固体酸量が0.10mmol/g未満の場合には、重油留分の分解効率が低下し、0.50mmol/g以上の場合には、重油留分が過分解されコーク収率が増加する。
使用されるバインダーとしては、シリカ化合物又はアルミニウム化合物が使用できる。ここで、シリカ化合物としては、例えば、水ガラス、珪酸液等が使用でき、アルミニウム化合物としては、例えば、塩基性塩化アルミニウム、ベーマイトアルミナ解膠ゾル等が使用できる。
アルミナ−シリカとしては、擬ベーマイトゲル又はベーマイトゲルに、シリカ化合物を混合又は混合熟成したものが使用できる。
アルミナ−シリカ中のシリカの含有量は、0質量%を超え10質量%未満、好ましくは1〜9質量%である。ここで、アルミナ−シリカ中のシリカの含有量が10質量%以上であると、比表面積及び酸量が低下する。
混合スラリーには、粘土鉱物、多孔性シリカ、ゼオライトを含んでもよい。粘土鉱物としては、カオリン、モンモリロナイト、ドロマイト、カルサイト等があり、多孔性シリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカ等があり、ゼオライトとしては、超安定化Y型ゼオライト(USY)、H−Y、NH−Y、RE−Y、RE−USY、ZSM−5、モルデナイト等がある。多孔性シリカ又はゼオライトの添加により、添加剤の比表面積を調整する(大きくする)ことができると共に、活性の向上に寄与する。
混合スラリー中のアルミナ−シリカの割合は、好ましくは20質量%以上、80質量%未満、より好ましくは40〜70質量%である。なお、アルミナ−シリカの割合により、添加剤の比表面積及び固体酸量を制御することができる。ここで、混合スラリー中のアルミナ−シリカの割合が20質量%未満では、重質油留分を分解するための活性成分が不足するため、重質油留分を効果的に分解するのが困難となり、80質量%以上では、添加剤の強度及び嵩密度が低下し、流動接触分解触媒用添加剤として使用した場合に流動性の悪化又は粉化が生じるため、流動接触分解装置の運転が困難となる虞がある。また、混合スラリー中のバインダーの濃度は、10〜15質量%程度であり、混合スラリー中の固形分濃度は15〜30質量%程度である。
添加剤の全固体酸量に対する強酸量(アンモニア吸着熱測定法における吸着熱が110kJ/mol以上のアンモニア吸着量)の割合が20%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。ここで、前記強酸量が20%を超える場合には、過分解反応が起こり、コーク収率が増加する傾向にある。
【実施例】
【0009】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれによって何らの限定を受けるものではない。
【0010】
《試験例1:固体酸量の影響》
[実施例1:添加剤1]
シリカ(SiO)として17.5質量%の水ガラスを25質量%の硫酸水溶液でpH1.6に調整して作製したシリカゾルa300g(シリカとして10質量%含有する。すなわち、シリカとして30g含有する)を、アルミナ(Al)として13.0質量%含有するベーマイトスラリー7690g(アルミナとして、1000g含有する)に添加した後、48質量%の水酸化ナトリウム水溶液でpH10.5となるように調整し、更に95℃で1時間熟成して、シリカを3質量%含有したアルミナ−シリカスラリーAを得た。このアルミナ−シリカスラリーAは、アルミナ及びシリカの合計の濃度として14質量%であった。
また、17.5質量%の水ガラスを硫酸でpH1.6に調整して、シリカ濃度が12.5質量%のシリカゾルb(シリカ化合物からなるバインダーの一例)を得た。
アルミナ−シリカスラリーA1430g(アルミナ−シリカとして、200g含有する)を硫酸でpH4.0に調整した後、これにシリカゾルb1600g(シリカとして、200g含有する。以下同様)を添加し、次いでカオリン600g(乾燥質量。以下同様)を添加して均一に混合した後、入口温度460℃、出口温度260℃、及び、滞留時間20分間の条件で噴霧乾燥(以下の実施例についても同様である)し、続いて洗浄(触媒乾燥基準で20質量%の硫酸アンモニウムを添加してアルカリ除去後、15%アンモニア水で硫酸を除去した。以下の実施例についても同様である)を行い脱塩することにより、平均粒径60μmの添加剤1を得た。添加剤1の組成を表1に示す。更に、添加剤1の比表面積をBET法により測定し、嵩密度をUOP法254−65により測定した(以下の実施例についても同様である)。表1に添加剤1の性状を示す。
【0011】
(固体酸量の測定方法)
得られた添加剤1について以下のように固体酸量の測定を行った。まず、0.2gの添加剤1を500℃で1時間焼成し、次いで減圧下(1×10−4torr)400℃で4時間熱処理した後、アンモニアガスを吸着させ、その時に発生する吸着熱を検出し、全固体酸量を算出した。測定には、東京理工社製「カロリーメーター」を使用し、吸着熱が70kJ/mol以上のアンモニア吸着量を全固体酸量とし、110kJ/mol以上を強酸量とした(以下の実施例においても同様に測定した)。表1に添加剤1の固体酸量の測定結果を示す。
【0012】
[実施例2:添加剤2]
アルミナ−シリカスラリーA2860g(アルミナ−シリカとして、400g含有する)を硫酸でpH4.0に調整し、シリカゾルb1600g(シリカとして200g含有する)を添加し、次いでカオリン400gを添加し、均一に混合した後、噴霧乾燥し、続いて洗浄を行い脱塩することにより、平均粒径60μmの添加剤2を得た。表1に添加剤2の組成及び性状を示す。
[実施例3:添加剤3]
アルミナ−シリカスラリーA5000g(アルミナ−シリカとして、700g含有する)を硫酸でpH4.0に調整し、シリカゾルb1600g(シリカとして200g含有する)を添加し、次いでカオリン100gを添加し、均一に混合した後、噴霧乾燥し、続いて洗浄を行い脱塩することにより、平均粒径60μmの添加剤3を得た。表1に添加剤3の組成及び性状を示す。
[比較例1:添加剤4]
アルミナ−シリカスラリーA1070g(アルミナ−シリカとして、150g含有する)を硫酸でpH4.0に調整し、シリカゾルb1600g(シリカとして200g含有する)を添加し、次いでカオリン650gを添加し、均一に混合した後、噴霧乾燥し、続いて洗浄を行い脱塩することにより、平均粒径60μmの添加剤4を得た。表1に添加剤4の組成及び性状を示す。
[比較例2:添加剤5]
アルミナ−シリカスラリーA5710g(アルミナ−シリカとして、800g含有する)を硫酸でpH4.0に調整し、前記シリカゾルb1600g(シリカとして200g含有する)を添加し、均一に混合した後、噴霧乾燥し、続いて洗浄を行い脱塩することにより、平均粒径60μmの添加剤5を得た。表1に添加剤5の組成及び性状を示す。
【0013】
[活性評価]
添加剤1〜5を用いて、添加剤の固体酸量による活性の影響について評価した。
添加剤の活性評価は、ARCO社製パイロット反応装置を用いて行った。この装置は触媒が装置内を循環しながら反応と触媒再生を交互に繰返す循環式流動床であり、商業規模で使用されるFCCユニットを模したものである。FCC平衡触媒と添加剤1〜5とをそれぞれ質量比が90:10(1.8kg:0.2kg)となるように混合し、原料油として脱硫常圧残油(DSAR)を用い、反応塔の温度を520℃に、再生塔の温度を670℃に設定し、装置中で原料油1gに対して触媒が5g又は7gとなるように調整して、接触分解反応を行い、反応後の生成物及び残留物(生成液)を分析した。ここで、反応塔にて生成したガスを株式会社島津製作所製ガスクロマトグラフィー〔Micro GC 3000A〕で分析し、水素及びC1〜C4までの収率を測定すると共に、再生塔にて生成したCO及びCOを島津製作所製赤外線吸収式ガス分析装置〔CGT−7000〕で分析してコーク収率を計算した。更に、生成液をHewlett Packard社製蒸留ガスクロマトグラフィー〔GC System HP6890〕によりガソリン留分、軽油留分(LCO)、重油留分(HCO)の生成量を測定した。添加剤1〜5は、反応前に100%スチーム条件下において、810℃で12時間それぞれ処理した。表1にそれぞれの評価結果を示す。なお、評価結果において、転化率は、添加剤を入れていない場合の測定結果を基準として、その差を表記し、また、ガソリン、LCO、HCO、及び、コークについては、前記転化率を一定とした時のそれぞれの生成量を、添加剤を入れていない場合の生成量を基準として、その差を表記した。以下の実施例についても同様に評価を行った。
表1より、固体酸量が0.1〜0.4mmol/gでは、固体酸量が増えるに従って、重質油留分の分解効率が向上し、HCO留分が減少し、良好な結果が得られたが、固体酸量が0.08mmol/gでは、重質油留分の分解効率が低いため、HCO留分が多くなり、また、固体酸量が0.5mmol/gでは、重質油留分の分解効率が向上してHCO留分は減少したが、コークの生成量が増加した。
【0014】
【表1】

【0015】
《試験例2:比表面積の影響》
[実施例4:添加剤6]
アルミナ−シリカスラリーA2860g(アルミナ−シリカとして400g含有する)を硫酸でpH4.0に調整し、シリカゾルb1600g(シリカとして200g含有する)を添加し、次いでカオリン100g、超安定化Y型ゼオライト300g(乾燥質量。以下同様)を添加し、均一に混合した後、噴霧乾燥し、続いて洗浄を行い脱塩することにより、平均粒径60μmの添加剤6を得た。表2に添加剤6の組成及び性状を示す。
[比較例3:添加剤7]
アルミナ−シリカスラリーA1430g(アルミナ−シリカとして200g含有する)を硫酸でpH4.0に調整し、シリカゾルb1600g(シリカとして200g含有する)を添加し、次いでカオリン100g、超安定化Y型ゼオライト500gを添加し、均一に混合した後、噴霧乾燥し、続いて洗浄を行い脱塩することにより、平均粒径60μmの添加剤7を得た。表2に添加剤7の組成及び性状を示す。
[活性評価]
添加剤1、添加剤3、添加剤4、添加剤6、添加剤7を用いて、比表面積による活性の影響について評価した。表2にそれぞれの評価結果を示す。なお、添加剤7については、嵩密度が低く実装置での使用が困難であるため、活性評価は行わなかった。
表2より、比表面積が100〜350m/gで重質油留分との反応場が増えることによりHCO収率が低下して良好な結果が得られたが、比表面積が85m/gでは、反応場が少ないためHCO収率が多くなり、410m/gでは、反応場が多く重質油留分を効率的に分解されると考えられるが、嵩密度が低いため実用的ではなかった。
【0016】
【表2】

【0017】
《試験例3:アルミナ−シリカ中のシリカ含有量の影響》
[実施例5:添加剤8]
アルミナとして13.0質量%含有するベーマイトスラリー7690gに、シリカゾルa500g(すなわち、シリカとして、50g含有する)を添加した後、48質量%の水酸化ナトリウム水溶液でpH10.5となるように調整し、更に95℃で1時間熟成して、シリカを5質量%含有したアルミナ−シリカスラリーBを得た。このアルミナ−シリカスラリーBは、アルミナ及びシリカの合計の濃度として15質量%であった。
アルミナ−シリカスラリーB4670g(アルミナ−シリカとして、700g含有する)を硫酸でpH4.0に調整し、シリカゾルb1600g(シリカとして200g含有する)を添加し、次いでカオリン100gを添加し、均一に混合した後、噴霧乾燥し、続いて洗浄を行い脱塩することにより、平均粒径60μmの添加剤8を得た。表3に添加剤8の組成及び性状を示す。
[比較例4:添加剤9]
アルミナとして13.0質量%含有するベーマイトスラリー5385g(アルミナとして、700g含有する)を硫酸でpH4.0に調整し、シリカゾルb1600g(シリカとして200g含有する)を添加し、次いでカオリン100gを添加し、均一に混合した後、噴霧乾燥し、続いて洗浄を行い脱塩することにより、平均粒径60μmの添加剤9を得た。表3に添加剤9の組成及び性状をに示す。
[比較例5:添加剤10]
アルミナとして13.0質量%含有するベーマイトスラリー7690gに、17.5%の水ガラスを硫酸でpH1.6に調整され、シリカゾルa1200g(すなわち、シリカとして、120g含有する)を添加した後、48質量%の水酸化ナトリウム水溶液でpH10.5となるように調整し、更に95℃で1時間熟成して、シリカを11質量%含有したアルミナ−シリカスラリーCを得た。このアルミナ−シリカスラリーCは、アルミナ及びシリカの合計の濃度として15質量%であった。
アルミナ−シリカスラリーC4670g(アルミナ−シリカとして、700g含有する)を硫酸でpH4.0に調整し、シリカゾルb1600g(シリカとして200g含有する)を添加し、次いでカオリン100gを添加し、均一に混合した後、噴霧乾燥し、続いて洗浄を行い脱塩することにより、平均粒径60μmの添加剤10を得た。表3に添加剤10の組成及び性状を示す。
[活性評価]
添加剤3、添加剤8、添加剤9、添加剤10を用いて、アルミナ−シリカ中のシリカ含有量による活性の影響について評価した。表3にそれぞれの評価結果を示す。
表3より、アルミナ−シリカ中のシリカ含有量が増加することでHCO収率が減少し、良好な結果となったが、シリカ含有量が0質量%では、固体酸量が少ないためHCO収率の低下が小さく、シリカ含有量が11質量%では、コーク収率が増加した。
【0018】
【表3】

【0019】
《試験例4:固体酸量の影響》
[実施例6:添加剤11]
Al濃度が23.3質量%の塩基性塩化アルミニウム溶液b858g(アルミナ化合物からなるバインダーの一例。アルミナとして、200g含有する)に、カオリン500gを添加し、次いで硫酸でpH5.0に調整したアルミナ−シリカスラリーA2140g(アルミナ−シリカとして、300g含有する)を添加し均一に混合した後、噴霧乾燥し、続いて洗浄を行い脱塩することにより、平均粒径60μmの添加剤11を得た。表4に添加剤11の組成及び性状を示す。
[実施例7:添加剤12]
塩基性塩化アルミニウム溶液b858g(アルミナとして200g含有する)に、カオリン300gを添加し、次いで硫酸でpH4.5に調整したアルミナ−シリカスラリーA3570g(アルミナ−シリカとして、500g含有する)を添加し均一に混合した後、噴霧乾燥し、続いて洗浄を行い脱塩することにより、平均粒径60μmの添加剤12を得た。表4に添加剤12の組成及び性状を示す。
[実施例8:添加剤13]
塩基性塩化アルミニウム溶液b858g(アルミナとして200g含有する)に、カオリン100gを添加し、次いで硫酸でpH4.0に調整したアルミナ−シリカスラリーA5000g(アルミナ−シリカとして、700g含有する)を添加し均一に混合した後、噴霧乾燥し、続いて洗浄を行い脱塩することにより、平均粒径60μmの添加剤13を得た。表4に添加剤13の組成及び性状を示す。
[比較例6:添加剤14]
塩基性塩化アルミニウム溶液b858g(アルミナとして200g含有する)に、カオリン600gを添加し、次いで硫酸でpH4.0に調整したアルミナ−シリカスラリーA1430g(アルミナ−シリカとして、200g含有する)を添加し均一に混合した後、噴霧乾燥し、続いて洗浄を行い脱塩することにより、平均粒径60μmの添加剤14を得た。表4に添加剤14の組成及び性状を示す。
[比較例7:添加剤15]
塩基性塩化アルミニウム溶液b858g(アルミナとして200g含有する)に、硫酸でpH4.0に調整したアルミナ−シリカスラリーA5710g(アルミナ−シリカとして、800g含有する)を均一に混合した後、噴霧乾燥し、続いて洗浄を行い脱塩することにより、平均粒径60μmの添加剤15を得た。表4に添加剤15の組成及び性状を示す。
[活性評価]
添加剤11〜15を用いて、添加剤の固体酸量による活性の影響について評価した。表4にそれぞれの評価結果を示す。
表4より、アルミナゾルバインダーの場合もシリカゾルバインダーと同様に、固体酸量が0.1〜0.4mmol/gでは、固体酸量が増えるに従って、重質油留分の分解効率が向上し、HCO留分が減少し、良好な結果が得られたが、固体酸量が0.07mmol/gでは、重質油留分の分解効率が向上し、HCO留分が多くなり、固体酸量が0.5mmol/gでは、コークの生成量が増加した。
【0020】
【表4】

【0021】
《試験例5:比表面積の影響》
[実施例9:添加剤16]
塩基性塩化アルミニウム溶液b858g(アルミナとして200g含有する)に、カオリン100gを添加し、次いで硫酸でpH4.0に調整したアルミナ−シリカスラリーA2860g(アルミナ−シリカとして400g含有する)、超安定化Y型ゼオライト300gを添加して均一に混合した後、噴霧乾燥し、続いて洗浄を行い脱塩することにより、平均粒径60μmの添加剤16を得た。表5に添加剤16の組成及び性状を示す。
[比較例8:添加剤17]
塩基性塩化アルミニウム溶液b858g(アルミナとして200g含有する)に、カオリン100gを添加し、次いで硫酸でpH4.0に調整したアルミナ−シリカスラリーA1430g(アルミナ−シリカとして200g含有する)、超安定化Y型ゼオライト500gを添加して均一に混合した後、噴霧乾燥し、続いて洗浄を行い脱塩することにより、平均粒径60μmの添加剤17を得た。表5に添加剤17の組成及び性状を示す。
[活性評価]
添加剤11、添加剤13、添加剤14、添加剤16、添加剤17を用いて、比表面積による活性の影響について評価した。表5にそれぞれの評価結果を示す。なお、添加剤17については、嵩密度が低く実装置での使用が困難であるため、活性評価は行わなかった。
表5より、比表面積が100〜350m/gで重質油留分との反応場が増えることによりHCO収率が低下して良好な結果が得られたが、比表面積が90m/gでは、反応場が少ないためHCO収率が多くなり、410m/gでは、反応場が多く重質油留分を効率的に分解されると考えられるが、嵩密度が低いため実用的ではなかった。
【0022】
【表5】

【0023】
以上のように、本発明の流動接触分解触媒用添加剤は、原料油中の重油留分を効果的に分解し、かつ、コーク収率を抑え、ガソリン及びLCOを高収率で得ることができた。該添加剤は、比表面積が高く、全固体酸中の強酸の割合が低いことが特徴である。一般に強酸の割合が高いと反応活性は高くなるが、過分解反応が進むためコーク収率が高くなるという問題点がある。そのため、該添加剤の全固体酸中に占める強酸の割合を抑制し、更に比表面積を高くすることで単位表面積当りの固体酸量が低下することにより原料油の過分解によるコーク収率の増加を抑制させることができるためであると解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー及びアルミナ−シリカを含む混合スラリーを噴霧乾燥することで得られる流動接触分解触媒用添加剤であって、比表面積が100〜400m/gであり、かつ、全固体酸量が0.10mmol/g以上、0.50mmol/g未満であることを特徴とする流動接触分解触媒用添加剤。
【請求項2】
前記全固体酸量に対する強酸量の割合が20%以下であることを特徴とする請求項1記載の流動接触分解触媒用添加剤。
【請求項3】
前記混合スラリーは、多孔性シリカ又はゼオライトを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の流動接触分解触媒用添加剤。
【請求項4】
前記混合スラリー中のアルミナ−シリカの割合が20質量%以上、80質量%未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の流動接触分解触媒用添加剤。
【請求項5】
アルミナ−シリカ中のシリカの含有量が0質量%を超え10質量%未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の流動接触分解触媒用添加剤。
【請求項6】
前記バインダーが、シリカ化合物又はアルミニウム化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の流動接触分解触媒用添加剤。

【公開番号】特開2011−147933(P2011−147933A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286991(P2010−286991)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】