説明

流路デバイス、外装ケース付き流路デバイス、流路デバイスの使用方法

【課題】バルブやプランジャー等の特殊な装置を必要としない簡単でかつ安価な試薬貯蔵型流路デバイスを提供すること。
【解決手段】基板3に形成された流路2のインレットA、アウトレットBの間に位置する部位に、試薬を貯蔵したガラス管C’をフィルム状の被覆体で覆って封入してなるガラス管封入部Cを具備する流路デバイス1、外装ケース付き流路デバイス、流路デバイスの使用方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な流路、試薬が貯蔵された試薬貯蔵部、などの構造が形成された流路デバイスに関する。詳しくは、化学、生化学などに広く利用される微小反応デバイス(マイクロリアクター)として有用な流路デバイス、外装ケース付き流路デバイス、流路デバイスの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近はマイクロリアクターやマイクロトータルアナリシスシステム(μTAS)と呼ばれる微細加工技術を利用した化学反応や分離システムの微小化の研究が盛んになっており、マイクロチャネル(微細流路)を持つマイクロチップ上で行う核酸、タンパク質、糖鎖などの分析や合成、微量化学物質の迅速分析、医薬品・薬物のハイスループットスクリーニングへの応用が期待されている。
【0003】
このようなシステムのマイクロ化の利点としては、(1)化学反応や抗原抗体反応で使用するサンプルや試薬の使用量、廃棄量を低減できる、(2)プロセスに必要な動力源の低減ができる、(3)体積に対する表面積の比率が向上することにより、熱移動・物質移動の高速化が実現でき、その結果、反応や分離の精密な制御、高速・高効率化、副反応の抑制が期待される、(4)同一基板上で多くのサンプルを同時に取り扱うことができる、(5)サンプリングから検出までを同一基板上で実施できる、等のことが挙げられ省スペースで持ち運び可能な安価なシステムの実現が考えられている。
【0004】
一方、デメリットとしては(1)検出面積が小さくなるが故に検出感度が低下するケースが多い、(2)マイクロスケールの流体流れでは乱流を発生させることが難しく、試薬等を混合させる場合に拡散混合となり時間を要す、(3)気泡等が発生した場合に表面張力の影響が大きく除去することは難しく測定系に大きな影響を及ぼすことが多い、ことが挙げられる。
【0005】
このようなメリット、デメリットがある中でマイクロフルイディクス技術は検討され、自動車産業分野では加速センサーや圧力センサー、位置センサー(ジャイロスコープ)等、電気通信業界分野では光導波路、光スイッチ、ミラー、レンズ等、ライフサイエンス産業分野では血液分析、DNA分析、化学犯罪捜査用途等として我々の日常生活で見られる形となっている。その他、食品分野、環境試験分野、軍需分野にもその用途を展開している。
【0006】
現在開発されているマイクロフルイディクス技術としては、センサー用途が多く、酵素もしくは抗原抗体反応、イオン感応電界効果(ISFET)、マイクロ電極、マイクロカンチレバー、音響波、共鳴を利用したマイクロセンサーが報告されている。用途してはマイクロ電気泳動チップ、マイクロPCR(Plymerase Chain Reaction)チップ、マイクロガスクロマトグラフィチップ、マイクロ液クロマトグラフィチップ、DNA分離チップ等が多く報告されている。
また、サンプリングから分析までを同一チップ上で実施するLab−on−a−Chipの開発も報告されており、炭疽菌や大腸菌に特異な核酸や抗体を用いた多機能バイオチップやグルコースやラクトース等をモニタリングする携帯可能な測定器、抗原抗体反応を用いた臨床検査チップ等が挙げられる。
【0007】
上記のような流路デバイスにおいて、予め必要な試薬または検体をデバイス内部に貯蔵し、必要時に目的のチャンバーに供給する試薬貯蔵タイプのデバイスがある。
例えば、特許文献1では、質量分析用マイクロデバイスおよびこれを用いた質量分析装置が記載されている。この方法では、質量分析用マイクロデバイス内の複数個の試薬貯蔵部に、分析試料をそれぞれ一時貯蔵し、測定時に必要最小限の試料のみを装置内のイオン化部に供給する技術が記載されている。しかしながら、この方法であると、各試薬貯蔵部にそれぞれ開閉バルブが必要であり、デバイスを製造することが困難である。また、測定ごとにバルブを開閉が必要であるため、操作が猥雑になるなどの不都合があった。
【0008】
また、特許文献2では、分析用カートリッジ、分析用チップユニット、並びに分析用カートリッジを用いた分析装置の技術が記載されている。しかしながら、この方法であると、分析用チップ内に試薬を供給する際に複数の試薬貯蔵部それぞれをデバイス内にセットする必要があり、操作に時間を要す。また、試薬貯蔵部内試料の輸送にプランジャーが必要であることから、装置全体が複雑かつ高価となる、などの不都合があった。
【0009】
また、ポリプロピレンなどのプラスチックに有機溶媒を封入すると、プラスチックの対有機溶剤性、ガスバリア性などの問題から、長時間の封入にはプラスチック材料は向かないなどの不都合があった。
【特許文献1】特開2005−147957号公報
【特許文献2】特開2005−221435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、バルブやプランジャー等の特殊な装置を必要としない簡単でかつ安価な試薬貯蔵型の流路デバイス、外装ケース付き流路デバイス、流路デバイスの使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、送通される流路を有する基板形の流路デバイスであって、前記流路と、この流路によって互いに連通されたインレット及びアウトレットと、前記インレットと前記アウトレットとの間にて前記流路の途中に設けられ、試薬を貯蔵したガラス管が封入されたガラス管封入部とを具備し、前記ガラス管封入部において前記ガラス管はデバイス片面側に突出され、前記ガラス管封入部のデバイス片面側を塞ぐフィルム状の被覆体によって覆われており、前記ガラス管封入部はその外側から前記被覆体を変形させることで前記ガラス管を破砕可能に構成されていることを特徴とする流路デバイスを提供する。
第2の発明は、前記ガラス管封入部は、前記流路の途中を拡張するようにして形成されたガラス管収納凹所内に前記ガラス管が収納され、前記ガラス管はその一部が前記デバイス片面側に突出されており、前記被覆体の前記ガラス管を覆った部分が前記デバイス片面側に膨出していることを特徴とする第1の発明の流路デバイスを提供する。
第3の発明は、前記流路及び前記ガラス管収納凹所が形成された基板を有し、前記被覆体が、前記流路及び前記ガラス管収納凹所が形成されている前記基板の流路面に貼り合わされたフィルムであることを特徴とする第2の発明の流路デバイスを提供する。
第4の発明は、前記被覆体は、前記ガラス管を覆う部分の少なくとも一部が、5μm〜400μmの厚みで構成されていることを特徴とする第1〜3のいずれかの発明の流路デバイスを提供する。
第5の発明は、前記インレット、前記ガラス管封入部が設けられた流路を2つ以上有し、これら流路のそれぞれの下流部が、ひとつのアウトレットに連結されていることを特徴とする第1〜4のいずれかの発明の流路デバイスを提供する。
第6の発明は、前記アウトレットと前記ガラス管封入部との間に混合部、反応部、検出部、廃液貯蔵部の少なくとも一つを具備することを特徴とする第1〜5のいずれかの発明の流路デバイスを提供する。
第7の発明は、前記アウトレット、混合部、反応部、検出部、廃液貯蔵部の少なくとも一つにろ紙が埋め込まれていることを特徴とする第6の発明の流路デバイスを提供する。
第8の発明は、前記ろ紙に化学物質が含浸またはコーティングされていることを特徴とする第7の発明の流路デバイスを提供する。
第9の発明は、前記インレット、前記ガラス管封入部を有する流路を少なくとも2つ以上有し、前記流路のそれぞれの下流部が、ひとつの混合部に連結されており、前記混合部の下流側に前記アウトレットが設けられていることを特徴とする第1〜8のいずれかの発明の流路デバイスを提供する。
第10の発明は、前記ガラス管に貯蔵する試薬の容積が100μL以下である第1〜9のいずれかの発明の流路デバイスを提供する。
第11の発明は、有機溶剤を含む前記試薬を貯蔵したガラス管が封入されたガラス管封入部を具備することを特徴とする第10の発明の流路デバイスを提供する。
第12の発明は、前記有機溶剤が、メタノール、2−メトキシエタノール、4−ベンジルピリジン、テトラヒドロフラン、リグロインから選ばれる1以上であることを特徴とする第11の発明の流路デバイスを提供する。
第13の発明は、前記ガラス管として遮光性のものを用いていることを特徴とする第1〜12のいずれかの発明の流路デバイスを提供する。
第14の発明は、前記流路内の一部に固定化された生理活性物質を具備し、生理活性物質が核酸、ペプチド核酸、アプタマー、オリゴペプチド、抗体、抗原、糖鎖、およびそれらの類似物の中から選ばれる少なくとも1つであるか、又はこれらの中から少なくとも1つを含む複合体である第1〜13のいずれかの発明の流路デバイスを提供する。
第15の発明は、第1〜14のいずれかの発明の流路デバイスの母材がプラスチック材料から構成されていることを特徴とする流路デバイスを提供する。
第16の発明は、プラスチック材料がポリスチレン、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィン、ポリメチルメタアクリレート、ポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種である第15の発明の流路デバイスを提供する。
第17の発明は、プラスチック材料がポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロンから選ばれる少なくとも1種である第15の発明の流路デバイスを提供する。
第18の発明は、第1〜17のいずれかの発明の流路デバイスを筒状のケース内に収納してなり、前記ケース内には、流路デバイスの前記ガラス管封入部の前記ガラス管を破砕するための突起部が突設され、前記ケースの中心軸線方向における該ケースと前記流路デバイスとの相対的なスライド移動により、前記突起部を前記ガラス管を覆う被覆体に接触させ前記ガラス管を破砕できるように構成されていることを特徴とする外装ケース付き流路デバイスを提供する。
第19の発明は、前記ケースの両端がフィルム状のシール材により密閉されており、前記シール材を破壊あるいは除去することにより、前記流路デバイスの前記ケースの外側への移動が可能となることを特徴とする外装ケース付き流路デバイスを提供する。
第20の発明は、前記ケースが、プラスチック、着色プラスチック、プラスチックの金属めっき物、プラスチックの金属蒸着物、金属の少なくとも一つから構成されることを特徴とする第18又は19の発明の外装ケース付き流路デバイスを提供する。
第21の発明は、第1〜17のいずれかの発明の流路デバイスの使用方法であって、流路デバイスを、前記ガラス管封入部の前記ガラス管を破砕するための突起部を具備する筒状のケース内に収納し、前記流路デバイス及び前記ケースの一方又は両方をスライド移動させて前記ケース内の前記突起部に前記ガラス管封入部の前記ガラス管を覆う被覆体に接触させ前記ガラス管を破砕し、前記インレットから前記流路内に導入した液体又は気体を媒体として前記ガラス管の内容物である前記試薬を前記アウトレット方向へ輸送することを特徴とする流路デバイスの使用方法を提供する。
第22の発明は、前記流路デバイスを収納した前記ケースの両端がフィルム状のシール材により密閉されおり、前記シール材を破壊あるいは除去して、前記流路デバイス及び前記ケースの一方又は両方をスライド移動させ、前記ケース内の前記突起部に前記ガラス管封入部の前記ガラス管を覆う被覆体に接触させ前記ガラス管を破砕するとともに、流路デバイス内の混合部、反応部、検出部、廃液貯蔵部の少なくとも一つをケース外に露出させることを特徴とする第21の発明の流路デバイスの使用方法を提供する。
第23の発明は、第1〜17のいずれかの発明の流路デバイスの使用方法であって、ガラス管を破砕した後に、インレットから気体または液体を媒体としてアウトレット側にガラス管の内容物を輸送することによって、大気中の化学物質の検知に用いることを特徴とする流路デバイスの使用方法を提供する。
第24の発明は、第1〜17のいずれかの発明の流路デバイスの使用方法であって、ガラス管を破砕した後に、インレットから気体または液体を媒体としてアウトレット側にガラス管の内容物を輸送することによって、生体反応のシグナルの検知に用いることを特徴とする流路デバイスの使用方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
バルブなど特殊な装備を必要とせず、試薬貯蔵部の複数回の取り付けが不要であり、かつ、有機溶剤、生理活性物質を含んだ溶液、など様々な溶剤を貯蔵する、簡便でかつ安価なマイクロデバイスを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図を用いて説明する。
図1は本発明の流路デバイスの一例(第一の実施形態)を示す図であって、(a)は全体斜視図、(b)は流路デバイスの基板3を示す斜視図である。
図1(a)、(b)に示す流路デバイス1は、液体又は気体が送通される微細な流路2(微細流路)を有する基板形の流路デバイスであって、溝状の前記流路2が片面に形成された基板3を有し、この基板3の前記流路2が形成されている面(流路面31)にフィルム状の被覆体4(図2参照。プレートシールフィルム)が貼り合わされている。
【0014】
この流路デバイス1には、インレットA、アウトレットBが形成されている。インレットAとアウトレットBとは流路2を介して互いに連通されている。
また、インレットA及びアウトレットBは、デバイスの片側面に開口している。
【0015】
また、この流路デバイス1は、インレットAとアウトレットBとを互いに連通させる流路2の途中に、試薬を貯蔵したガラス管C’が封入されたガラス管封入部Cを具備している。
図2、図3に示すように、前記ガラス管封入部Cでは、前記流路2の途中を拡張するようにして基板3に形成されたガラス管収納凹所5内に前記ガラス管C’を収納している。また、このガラス管封入部Cは、ガラス管収納凹所5と前記ガラス管C’とを前記被覆体4で覆った構造になっている。この被覆体4は本発明に係る被覆体として機能する。
【0016】
図2に示すように、前記ガラス管C’はその一部がデバイス片面側に突出されている。すなわち、ガラス管C’は、その外径が、溝状の流路2の深さd寸法よりも大きいため、ガラス管C’の一部が基板3の流路面31から突出される。ガラス管C’の前記流路面31から突出する突出寸法tは、被覆体4の厚み寸法よりも大きい。したがって、ガラス管C’は、基板形の流路デバイス1の両面の内、基板3に被着された被覆体4によって形成される面6(以下、表面とも言う)から突出されている。
したがって、この流路デバイス1では、被覆体4の前記ガラス管C’を覆った部分が前記デバイス片面(表面6)から膨出している。ガラス管C’が封入されているガラス管封入部Cが、デバイス片面(表面6)に膨出するように設けられている構成となっている。
【0017】
ガラス管C’は長手方向両端が塞がっている密閉構造となっている。このガラス管C’はアンプル状に形成されており、以下、ガラス管C’をガラスアンプルとも言う。
この流路デバイス1は、前記ガラス管封入部Cの外側から被覆体4を介してガラスアンプルC’に押圧力(衝撃力も含む)を作用させてガラスアンプルC’を割り(破砕する)、インレットAからアウトレットBへ圧力を加えることで、アウトレット方向にガラスアンプルC’に封入されていた試薬を輸送することができる。
【0018】
図4は、本発明の流路デバイスにおける基板の第二の実施形態の概要を示す斜視図である。
図4に示す流路デバイスは、前記インレットA、前記ガラス管封入部が設けられた流路(導入流路21)を2つ(2本)有し、これら導入流路21のそれぞれの下流部が、ひとつのアウトレットBに連結されている構成となっている。
この流路デバイスは、基板3に2つのガラス管収納凹所5が形成されており、それぞれのガラス管収納凹所5に試薬を貯蔵したガラス管C’が収納されている。また、各導入流路21のインレットAとアウトレットBとが、溝状の微細流路2(流路。ガラス管収納凹所5を含む)によって連通されている。
インレットA及びアウトレットBは、デバイスの片側面に開口している。
図4における流路デバイスは、ガラス管C’1およびC’2を割り(破砕する)、インレットからアウトレットへ圧力を加えることで、ガラス管C’1、C’2に封入されている試薬を一つのアウトレットに輸送することができる。
【0019】
なお、導入流路21の本数は、2本に限定されず、3本以上であっても良い。
3本以上の導入流路を持つ場合も、導入流路21のそれぞれの下流部が、ひとつのアウトレットBに連結されている構成を採用できる。
【0020】
本発明に係る流路デバイスでは、ガラス管とアウトレットとの間に、混合部、反応部、検出部、廃液貯蔵部から選択される1以上を具備することができる。
例えば、図5に示す流路デバイスは、アウトレットBとガラス管封入部Cとの間に、上流側(インレット側)から順に反応部D、廃液貯蔵部Eを具備している。
混合部、反応部、検出部、廃液貯蔵部の形状としては、どのような形状であっても良く、ピラーなどの複雑な微細構造を施すこともできる。
【0021】
混合部、反応部および検出部の一部には生理活性物質を固定化することができる。生理活性物質としては、核酸、タンパク質、糖鎖、糖タンパク等が挙げられるが検出対象物の特性により適宜、最適な生理活性物質を選択することができる。また、同一流路上に複数の生理活性物質を固定化してもよく、同じ流路デバイスに違う流路を作製し別々に生理活性物質を固定しても良い。生理活性物質を流路デバイスの流路表面に固定化するためにプラスチック表面に表面改質、例えば官能基の導入、機能材料の固定化、親水性の付与、および疎水性の付与等を実施したりすることも可能である。廃液貯蔵部を設けることによって、流路デバイス外に廃液を出さないことが可能になり、環境、安全面に適した完全密封型の流路デバイスを提供することができる。
【0022】
また、前記アウトレット、混合部、反応部、検出部、廃液貯蔵部の少なくとも一つにろ紙が埋め込むこともできる。
ろ紙の種類には特に限定はなく、一般的なセルロースなど繊維系のものを用いることができるが、ガラスフィルター、グラスファイバーろ紙、シリカゲル製のろ紙、活性炭含浸ろ紙なども必要に応じて用いることができる。また、予めろ紙に特定の物質を含浸させたものやコーティングさせたものも目的・用途に応じて用いることができる。
【0023】
本発明におけるガラス管に貯蔵する試薬の容積は、用途に応じて適宜選ぶことができるが、100μL以下であることが好ましい。100μLを超えると、ガラス管のサイズが大きくなり、送液時に均一な送液ができなくなる可能性があるため好ましくない。また、デバイス全体の容積が大きくなるため好ましくない。
【0024】
ガラス管に封入する試薬の内容物としては、特に限定はなく、液体、固体、気体、固形物の入った液体など適宜選ばれる。
ガラスは耐有機溶剤性、ガスバリア性に優れるため、本流路デバイスでは、ガラス管の少なくとも一つに有機溶剤を含むことができる。有機溶剤の種類としては、メタノール、2−メトキシエタノール、4−ベンジルピリジン、テトラヒドロフラン、リグロインなどが挙げられる。また、光によって分解する試薬を封入するときは、遮光タイプのガラス管を用いることができる。
【0025】
前記被覆体4の厚みは5μm〜400μmである。
本発明に係る流路デバイスのガラス管を覆う被覆体としては、前記ガラス管C’を覆う部分の全体あるいは一部が、5μm〜400μmの厚みで構成されていれば良く、他の部分の厚みは5μm〜400μmの範囲になくても良い。被覆体4の前記ガラス管C’を覆う部分の内、5μm〜400μmの厚みで構成する部分は、ガラス管C’を割るためにガラス管封入部Cの外側から作用させる力が与えられる位置である。
例えば、後述のように、図8(a)、(b)に例示したガラスアンプルの破砕用のケース11(外装ケース)を使用する場合は、被覆体4の前記ガラス管C’を覆う部分の内、このケース11内に設けられている突起部12に当接される部位に限定がある。被覆体4の前記ガラス管C’を覆う部分の内、突起部12に当接される部位に5μm〜400μmの範囲の厚みを確保する。
【0026】
被覆体4の厚みが400μmを超えると、流路デバイス内に封入されたガラス管を破砕する際に、ガラス管が破砕されない場合があり、好ましくない。また、厚みが5μm未満では破れやすく、ガラス管C’を破砕する作業に慎重を期す必要がでてくる。
最も好ましくは、ガラス管が封入される(接触する)部分が予めガラス管の形状をしたフィルムを用いることである。
【0027】
本発明に流路デバイスの母材は、プラスチック材料から構成されていることが好ましい。プラスチックの材質としては、種々のプラスチック材料を選択することが可能であり、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアセテート、ビニル−アセテート共重合体、スチレン−メチルメタアクリレート共重合体、アクリルニトリル−スチレン共重合体、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ナイロン、ポリメチルペンテン、シリコン樹脂、アミノ樹脂、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂、ポリイミド等が挙げられるが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィン、ポリメチルメタアクリレート、ポリカーボネート、ナイロンが好ましい。また、これらの材料を混ぜた混合材も使用することができる。また、これらのプラスチック材料に、顔料、染料、酸化防止剤、難燃剤等の添加物を適宜混合してもよい。
流路デバイスを構成する基板、被覆体は、それぞれ、流路デバイスを構成する母材の一部として機能するものであり、その形成材料として上述した母材の材料が採用される。
基板と被覆体が同一の材料でもよく、異なる材料であってもよい。
【0028】
さらに、用途、処理、使用する溶媒、生理活性物質、検出方法の特性に合わせて、成形性、耐熱性、耐薬品性、吸着性等を考慮し適宜に選択される。例えば、検出法が光学検出である場合は、自己蛍光の少なく、FDAから生体適応材料(血液に接触しても問題が無い)材料として認知されている環状ポリオレフィン(COC)が最も好ましい。また、有機溶剤を用いる場合は、耐溶剤性のあるポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテンが好ましい。
【0029】
検出部における検出方法としては、蛍光、吸光、呈色反応法、電気化学法、化学発光、赤外分光法、光熱変換分光法、エバネッセント法、水晶発振法、などが挙げられ、使用用途に応じて、適宜に使用することができる。
【0030】
本発明における注入口から圧力を加える媒体としては、気体または液体を媒体として加える媒体が挙げられる。気体や液体としては、特に限定はないが、気体としては空気圧、液体としては緩衝液であることが好ましい。圧力を加える手段としては、特に限定はないが、シリンジポンプ、ダイヤフラム型マイクロポンプなどを用いることができる。
【0031】
本発明の流路デバイスにおいて、インレット、アウトレット、ガラス管封入部、微細流路等が母材に加工されているが、加工方法としては任意であり、切削加工、射出成形、溶剤キャスト法、フォトリソグラフィー、レーザーアブレーション、ホットエンボス法などの方法を利用できる。
【0032】
本発明の流路デバイスにおいて、各種加工した母材を貼り合わせて形成することができる。母材としては、基板、フィルムなどを適宜使用することができる。貼り合わせ方法としては、熱圧着、レーザー接着、超音波接着、接着剤や感圧接着剤、UV硬化剤など中間層を用いた接合、など適宜に選ばれる。プラズマ処理、エキシマ処理等の表面処理を施した後に上記の貼り合わせを行なう方法も挙げられる。
例えば、基板に流路加工を施し、ガラス収納凹所にガラス管を置いた後にフィルム(被覆体として機能させるフィルム)を熱融着した流路デバイスを用いると、デバイスの使用時に、ガラス管封入部に封入されているガラスを破砕させやすく、破砕を確実かつ簡単に行えるため、好適に用いることができる。
【0033】
本発明における流路デバイスの使用方法として、流路デバイスを、ガラス管破砕用の突起状の構造体(以下、突起部)を有するケース内に内蔵し、流路デバイスまたはケースをスライドさせてケース内の突起部と流路デバイス内のガラス管を接触させることによってガラス管を破砕することができる。ケースを用いることで、手指で流路デバイスに直接触れることなくガラス管を破砕することができるので、確実かつ安全にガラス管を破砕し、前記ガラス管に貯蔵された試薬を、アウトレット方向へ輸送することができる。
【0034】
ケースの種類としては何であっても良いが、プラスチック、着色プラスチック、プラスチックの金属めっき物、プラスチックの金属蒸着物、金属の少なくとも一つから構成されておいることが好ましく、用途によって適宜選ぶことができる。光に弱い物質を取り扱う場合は着色プラスチックを使用することが好ましく、ガスバリア性が要求される場合には着色プラスチック、プラスチックの金属めっき物、プラスチックの金属蒸着物、金属を使用することが好ましい。
【0035】
また、ケースの一部にアルミシール等のフィルム状のシール材によるシールを施し、使用前に密閉状態を保つことができる。使用時にシール材の一部を破壊し、流路デバイス内の混合部、反応部、検出部、廃液貯蔵部の少なくとも一つをケース外に移動させ、露出させることができる。例えば、大気中の物質(例えば化学物質)を調べたい場合は、反応部Fをケース外に出すことで、大気に晒すことができる。
また、シール材は、ケースから引き剥がして除去しても良い。
【0036】
図8(a)、(b)に、ケース11、流路デバイス1をケース11に収納した外装ケース付き流路デバイス13の一例を示す。
なお、流路デバイス1としては、具体的には、後述の実施例2にて説明するもの(流路デバイス1b)を用いている。
【0037】
前記ケース11は四角筒状に形成されている。
流路デバイス1は、ケース11の内側空間11s内に収納されている。
ケース11は、互いに平行に設けられた底板部11a及び天板部11bを、一対の側板部11cで連結した四角筒状になっている。流路デバイス1は、前記表面6を天板部11b側、表面6とは反対側の主面である裏面7を底板部11a側としてケース11内に収納されている。
【0038】
ケース11の突起部12は、天板部11bから前記内側空間11s内に突出するように突設されている。
図示例のケース11では、天板部11bは、ケース11の内側空間11aの中心軸線に沿って細長に延在する長方形板状に形成されており、前記突起部12は、天板部11bの長手方向中央部に、該長手方向に直交する幅方向に延在する突条状に形成されている。
ケース11内に収納された流路デバイス1は、ガラス管封入部Cが突起部12からずれた位置となるように、収納位置を設定する。
また、ケース11としては、突起部12の形成位置を天板部11bの長手方向の端部にずらした構成であっても良い。突起部12の形成位置は、流路デバイス1の構成に対応して、流路デバイス1のガラス管封入部Cと突起部12と非接触の状態で流路デバイス1がケース11内に収納された初期状態を確保できる位置とする。
【0039】
また、このケース11の両端、すなわち、このケース11の内側空間11aの中心軸線方向の両端は、アルミシールGによって密閉されている。
【0040】
外装ケース付き流路デバイス13は、流路デバイス1の使用時に、ケース11に対して流路デバイス1をスライド移動(ケース11の内側空間11aの中心軸線に沿った方向の移動)させる。
ケース11に対する流路デバイス1のスライド移動は、例えば、図9に示すように、ケース11の両端を塞ぐアルミシールGの内、突起部12を介して流路デバイス1のガラス管封入部Cが存在する側のアルミシールG1を破壊あるいは除去してケース11の片端を開放し、この開放された端部から流路デバイス1をケース11の反対側の端部に向けて押し動かす。流路デバイス1が、ケース11の反対側の端部を塞ぐアルミシールG2を突き破ることで、流路デバイスの混合部、反応部、検出部、廃液貯蔵部の少なくとも一つをケース外に移動させ露出させることができる。
なお、この外装ケース付き流路デバイス13としては、混合部、反応部、検出部、廃液貯蔵部が、ガラス管封入部Cから離隔した所に位置する構成の流路デバイスを採用し、混合部、反応部、検出部、廃液貯蔵部が、突起部12を介して、ガラス管封入部Cとは反対の側に配置された構成とする。
【0041】
符号G2のアルミシールは、流路デバイス1のスライド移動前に破壊あるいは除去しても良い。但し、流路デバイス1がアルミシールG2を突き破る場合は、アルミシールG2が突き破られる直前まで、流路デバイス1がアルミシールG2によって保護された状態を維持できる点で好ましい。
【0042】
この外装ケース付き流路デバイス13では、流路デバイス1のスライド移動によって、突起部12がガラス管封入部Cに接触して、ガラス管封入部C内のガラス管C’が破砕される。
ケース11の突起部12の天板部11bからの突出先端と底板部11aとの間の距離は、流路デバイス1の表面6と裏面7との間の距離と略同等であり、流路デバイス1の表面6と裏面7との間の距離に、ガラス管封入部Cの前記デバイスの表面6からの突出寸法a(図2参照)を加えた値よりも小さい。
したがって、図9に示すように、ケース11内の流路デバイス1を、図中符号G2のアルミシール側にスライド移動させると、突起部12がガラス管封入部Cに接触して、ガラス管封入部C内のガラス管C’が破砕される。
【0043】
なお、ケース11に対する流路デバイス1のスライド移動は、流路デバイス1のケース11に対する相対的な移動を指す。
この点、ケース11に対する流路デバイス1のスライド移動は、ケース11の片端からの流路デバイス1の押し込みの他、ケース11内に挿入した当接部材との当接等によって移動を規制した流路デバイス1に対するケース11のスライド移動であっても良い。
【0044】
また、検出機構がケース外にセットされている場合には、検出部をケース外に出すことが求められる。また、本流路デバイスを内蔵したケースを自動機に搭載することで、ガラス管の破砕、送液、検出までのすべての工程を自動で行なうことができる。
【実施例】
【0045】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)
実施例として、本発明の流路デバイスを用いてのオリゴDNAのハイブリダイゼーション反応を挙げる。
図6に示すように、30mm×70mm、厚さ0.75mmの寸法の飽和環状ポリオレフィン樹脂製の板状材料を切削加工して、1mmφの3つのインレットA1〜A3、1mmφの1つのアウトレットB、幅100μm、深さ100μmのマイクロチャネル(微細流路)、幅3mm、深さ0.5mm、長さ3mmの3つのガラス管収納凹所511〜513、幅300μm、長さ300μm、深さ300μmの反応部D、を持つ本体(基板)を得た。各インレットA1〜A3、各アウトレットBは基板に貫通して形成した。
この切削基板の反応部に、活性エステル処理を施し、アミノ化したオリゴDNA(atagaagttt gtccatttgt aaactcccgg attgcgctcc ctcccgcctt)を固定化した。
【0047】
次に5’末端にCy3を導入した鎖長50bpのオリゴDNA(aaggcgggag ggagcgcaat ccgggagttt acaaatggac aaacttctat)を5×SSC,0.3%SDSの緩衝液に溶かしたハイブリダイゼーション溶液50μLを封入したガラス管C’11をガラス管収納凹所511、2×SSC(クエン酸ナトリウム)、0.1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)50μLを封入したガラス管C’12をガラス管収納凹所512、0.2×SSC(クエン酸ナトリウム)50μLを封入したガラス管C’13をガラス管収納凹所513に入れ、プレートシールフィルム(被覆体4)を接着し、流路デバイス1aを作製した。
なお、図6は、流路デバイス1aの構成を、被覆体を透視して示したものであり、図中、ガラス管収納凹所511〜513、ガラス管C’11〜C’13に対応させてガラス管封入部を示す符号C11〜C13も付している。
【0048】
上記で作製した流路デバイスのガラス管封入部C11に封入されているガラス管C’11を破砕し、インレットA1からシリンジにより空気を注入すると、ガラス管C’11に封入されていたハイブリダイゼーション溶液が反応部Dに輸送され、その後、アウトレットBから流出することが確認され、マイクロ流路デバイスとしての役割を果たした。
次いで、ガラス管封入部C12に封入されているガラス管C’12を破砕し、インレットA2からシリンジにより空気を注入すると、ガラス管C’12に封入されていた2×SSC、0.1%SDS溶液が反応部Dに輸送され、その後、アウトレットBから流出した。そして、次いで、ガラス管封入部C13に封入されているガラス管を破砕し、インレットA3からシリンジにより空気を注入すると、ガラス管C’13に封入されていた0.2×SSC溶液が反応部Dに輸送され、その後、アウトレットBから流出した。
【0049】
送液の完了した上記本体の反応部を蛍光顕微鏡で観察したところ、Cy3波長(552nm、570nm)で蛍光を発していることが確認できた。すなわち、ハイブリダイゼーション反応が進んでいることが確認された。
【0050】
(実施例2)
実施例として、本発明の流路デバイスを用いてろ紙上の抗原抗体反応を挙げる。
図7に示すように、30mm×70mm、厚さ1.0mmの寸法で、1mmφの3つのインレットA1〜A3、1mmφの1つのアウトレットB、幅500μm、深さ300μmのマイクロチャネル(微細流路2)、幅3mm、深さ0.5mm、長さ3mmの3つのガラス収納凹所521〜523、直径3mmの検出部F、長さ500μm、深さ300μmの混合部H、を持つ本体(基板)をポリプロピレン樹脂で成形加工した。各インレットA1〜A3、アウトレットBは基板に貫通して形成した。
【0051】
直径3mmのニトロセルロースに10mg/mlのMonoclonal mouse anti-human serum albuminの1%BSA, PBS溶液をしみ込ませた後、乾燥させ、上記流路基板の検出部Fに組み込ませた。この検出部Fは反応部を兼ねる。以下、反応部とも言う。
また、1mg/mlのAlbumin (ヒト由来)の1%BSA, PBS30μL(抗原溶液)が封入されたガラス管C’21をガラス管収納凹所521、金コロイド標識Monoclonal mouse anti-human serum albuminの1%BSA, PBS30μL(金コロイド標識二次抗体溶液)を封入したガラス管C’22をガラス管収納凹所522、0.1%Tween in PBS 100μL(洗浄液)を封入したガラス管C’23をガラス管収納凹所523に組み込んだ。
そして、この流路基板の流路面にポリエチレン/ナイロンにより構成されるフィルム(被覆体4)を熱融着にて貼り合わせ、流路デバイス1bを作製した。
なお、図7は、流路デバイス1bの構成を、被覆体を透視して示したものであり、図中、ガラス管収納凹所521〜523、ガラス管C’21〜C’23に対応させてガラス管封入部を示す符号C21〜C23も付している。
【0052】
上記で作製した流路デバイスのガラス管封入部C21に封入されているガラス管C’21、およびをガラス管封入部C22に封入されているガラス管C’22を破砕し、インレットA1およびインレットA2からシリンジにより同時に空気を注入すると、ガラス管C’21に封入されていた抗原溶液、およびガラス管C’22に封入されていた金コロイド標識二次抗体溶液が混合部Hにて混合された後に、反応部Fに組み込まれたニトロセルロースに輸送され、その後、アウトレットBから流出することが確認され、マイクロ流路デバイスとしての役割を果たした。
次いで、ガラス管封入部C23に封入されているガラス管C’23を破砕し、インレットA3からシリンジにより空気を注入すると、ガラス管C’23に封入されていた洗浄液が反応部Fに組み込まれたニトロセルロースに輸送され、その後、アウトレットBから流出することが確認された。
【0053】
上記本体の反応部Fに組み込まれたニトロセルロースは送液前が無色であったのに対し、送液完了後は赤色に呈色していた。これにより上記流路デバイスを用いて、抗原抗体反応が起こっていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の流路デバイスの一例の概要を示す図であって、(a)は流路デバイスの外観を示す斜視図、(b)流路デバイスの基板を示す斜視図である。
【図2】図1の流路デバイスのガラス管封入部の構造を示す断面図である。
【図3】図1の流路デバイスのガラス管収納凹所付近の構造を示す拡大斜視図である。
【図4】本発明の流路デバイスの一例を説明する図であって、基板を示す概要斜視図である。
【図5】本発明の流路デバイスの一例を説明する図であって、基板を示すの概要斜視図である。
【図6】本発明の実施例1の流路デバイスを示す概要斜視図である。
【図7】本発明の実施例2の流路デバイスを示す概要斜視図である。
【図8】流路デバイスをケース内に収納してなる外装ケース付き流路デバイスの構成を示す図であって、(a)は正断面図(但し流路デバイスの構成を模式的に示す)、(b)は平断面図(但し流路デバイスの構成を模式的に示す)である。
【図9】図8の外装ケース付き流路デバイス、流路デバイスの使用方法を説明する平断面図(但し流路デバイスの構成を模式的に示す)である。
【符号の説明】
【0055】
1、1a、1b…流路デバイス、2…流路、21…導入流路、3…基板、31…流路面、4…被覆体、5、511、512、513、521、522、523…ガラス管収納凹所、6…表面、7…裏面、11…ケース、11a…底板部、11b…天板部、11c…側板部、11s…内側空間、12…突起部、13…外装ケース付き流路デバイス、A、A1、A2、A3…インレット、B…アウトレット、C、C1、C2、C11、C12、C13、C21、C22、C23…ガラス管封入部、C’、C’1、C’2、C’11、C’12、C’13、C’21、C’22、C’23…ガラス管(ガラスアンプル)、D…反応部、E…廃液貯蔵部、F…検出部、反応部、G、G1、G2…シール材(アルミシール)、H…混合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体又は気体が送通される流路を有する基板形の流路デバイスであって、
前記流路と、この流路によって互いに連通されたインレット及びアウトレットと、前記インレットと前記アウトレットとの間にて前記流路の途中に設けられ、試薬を貯蔵したガラス管が封入されたガラス管封入部とを具備し、
前記ガラス管封入部において前記ガラス管はデバイス片面側に突出され、前記ガラス管封入部のデバイス片面側を塞ぐフィルム状の被覆体によって覆われており、
前記ガラス管封入部はその外側から前記被覆体を変形させることで前記ガラス管を破砕可能に構成されていることを特徴とする流路デバイス。
【請求項2】
前記ガラス管封入部は、前記流路の途中を拡張するようにして形成されたガラス管収納凹所内に前記ガラス管が収納され、前記ガラス管はその一部が前記デバイス片面側に突出されており、前記被覆体の前記ガラス管を覆った部分が前記デバイス片面側に膨出していることを特徴とする請求項1記載の流路デバイス。
【請求項3】
前記流路及び前記ガラス管収納凹所が形成された基板を有し、
前記被覆体が、前記流路及び前記ガラス管収納凹所が形成されている前記基板の流路面に貼り合わされたフィルムであることを特徴とする請求項2記載の流路デバイス。
【請求項4】
前記被覆体は、前記ガラス管を覆う部分の少なくとも一部が、5μm〜400μmの厚みで構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の流路デバイス。
【請求項5】
前記インレット、前記ガラス管封入部が設けられた流路を2つ以上有し、これら流路のそれぞれの下流部が、ひとつのアウトレットに連結されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の流路デバイス。
【請求項6】
前記アウトレットと前記ガラス管封入部との間に混合部、反応部、検出部、廃液貯蔵部の少なくとも一つを具備することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の流路デバイス。
【請求項7】
前記アウトレット、混合部、反応部、検出部、廃液貯蔵部の少なくとも一つにろ紙が埋め込まれていることを特徴とする請求項6記載の流路デバイス。
【請求項8】
前記ろ紙に化学物質が含浸またはコーティングされていることを特徴とする請求項7記載の流路デバイス。
【請求項9】
前記インレット、前記ガラス管封入部を有する流路を少なくとも2つ以上有し、前記流路のそれぞれの下流部が、ひとつの混合部に連結されており、前記混合部の下流側に前記アウトレットが設けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の流路デバイス。
【請求項10】
前記ガラス管に貯蔵する試薬の容積が100μL以下である請求項1〜9のいずれかに記載の流路デバイス。
【請求項11】
有機溶剤を含む前記試薬を貯蔵したガラス管が封入されたガラス管封入部を具備することを特徴とする請求項10記載の流路デバイス。
【請求項12】
前記有機溶剤が、メタノール、2−メトキシエタノール、4−ベンジルピリジン、テトラヒドロフラン、リグロインから選ばれる1以上であることを特徴とする請求項11記載の流路デバイス。
【請求項13】
前記ガラス管として遮光性のものを用いていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか記載の流路デバイス。
【請求項14】
前記流路内の一部に固定化された生理活性物質を具備し、
生理活性物質が核酸、ペプチド核酸、アプタマー、オリゴペプチド、抗体、抗原、糖鎖、およびそれらの類似物の中から選ばれる少なくとも1つであるか、又はこれらの中から少なくとも1つを含む複合体である請求項1〜13のいずれかに記載の流路デバイス。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の流路デバイスの母材がプラスチック材料から構成されていることを特徴とする流路デバイス。
【請求項16】
プラスチック材料がポリスチレン、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィン、ポリメチルメタアクリレート、ポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種である請求項15記載の流路デバイス。
【請求項17】
プラスチック材料がポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロンから選ばれる少なくとも1種である請求項15記載の流路デバイス。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載の流路デバイスを筒状のケース内に収納してなり、
前記ケース内には、流路デバイスの前記ガラス管封入部の前記ガラス管を破砕するための突起部が突設され、
前記ケースの中心軸線方向における該ケースと前記流路デバイスとの相対的なスライド移動により、前記突起部を前記ガラス管を覆う被覆体に接触させ前記ガラス管を破砕できるように構成されていることを特徴とする外装ケース付き流路デバイス。
【請求項19】
前記ケースの両端がフィルム状のシール材により密閉されており、前記シール材を破壊あるいは除去することにより、前記流路デバイスの前記ケースの外側への移動が可能となることを特徴とする外装ケース付き流路デバイス。
【請求項20】
前記ケースが、プラスチック、着色プラスチック、プラスチックの金属めっき物、プラスチックの金属蒸着物、金属の少なくとも一つから構成されることを特徴とする請求項18又は19記載の外装ケース付き流路デバイス。
【請求項21】
請求項1〜17のいずれかに記載の流路デバイスの使用方法であって、
流路デバイスを、前記ガラス管封入部の前記ガラス管を破砕するための突起部を具備する筒状のケース内に収納し、前記流路デバイス及び前記ケースの一方又は両方をスライド移動させて前記ケース内の前記突起部に前記ガラス管封入部の前記ガラス管を覆う被覆体に接触させ前記ガラス管を破砕し、前記インレットから前記流路内に導入した液体又は気体を媒体として前記ガラス管の内容物である前記試薬を前記アウトレット方向へ輸送することを特徴とする流路デバイスの使用方法。
【請求項22】
前記流路デバイスを収納した前記ケースの両端がフィルム状のシール材により密閉されており、前記シール材を破壊あるいは除去して、前記流路デバイス及び前記ケースの一方又は両方をスライド移動させ、前記ケース内の前記突起部に前記ガラス管封入部の前記ガラス管を覆う被覆体に接触させ前記ガラス管を破砕するとともに、流路デバイス内の混合部、反応部、検出部、廃液貯蔵部の少なくとも一つをケース外に露出させることを特徴とする請求項21記載の流路デバイスの使用方法。
【請求項23】
請求項1〜17のいずれかに記載の流路デバイスの使用方法であって、ガラス管を破砕した後に、インレットから気体または液体を媒体としてアウトレット側にガラス管の内容物を輸送することによって、大気中の化学物質の検知に用いることを特徴とする流路デバイスの使用方法。
【請求項24】
請求項1〜17のいずれかに記載の流路デバイスの使用方法であって、ガラス管を破砕した後に、インレットから気体または液体を媒体としてアウトレット側にガラス管の内容物を輸送することによって、生体反応のシグナルの検知に用いることを特徴とする流路デバイスの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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