説明

流速分布測定装置

【課題】流体の流速の値をもって、流速分布を測定することのできる装置を提供する。
【解決手段】温度計測部3は、光ファイバ6の一端が接続され光ファイバ6の他端に向けてパルス光を入射するパルス光源9と、光ファイバ6から後方散乱光を受信する受信器11と、受信器11から後方散乱光を受けて光ファイバの温度分布を算出する信号処理部12とを有し、流速分布算出手段4は、発熱体7の非通電時と通電時における光ファイバ6の温度分布を信号処理部12から受け、光ファイバ6の同一位置における非通電時温度と通電時温度の温度差から流速分布を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川、水路等の流量を正確に把握するためや、構造物の設計のための基礎情報としての流速分布測定、さらには、地すべり対策や排水計画を目的に実施するボーリング孔の地下水流速分布測定等に好適な光ファイバを用いた流速分布測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを用いて、地下水位あるいは流動状態を調査する方法は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1では、光ファイバに沿って電熱線を近接配置して流体・流動センサを構成し、地盤に形成されたボーリング孔に該流体・流動センサを埋設し、光ファイバにレーザパルス光を入射して、ボーリング孔内での深さ位置に関しての温度差分布を得て、その温度の変化から地下水の存在や流動状態を知ることとしている。
【0004】
光ファイバにパルス光を入射すると、光ファイバ中で発生する後方散乱光のラマン散乱によりストークス光及び反ストークス光が生ずる。ストークス光に対し反ストークス光が強い温度依存性を有しているので、ストークス光と反ストークス光の強度比が温度の関数となることを利用して、逐次受ける後方散乱光を受信する時刻から反射位置を算出しつつ上記強度比からこの位置での温度を得るという原理のもとで、光ファイバの長手方向における温度分布を得ることができる。特許文献1では、熱電線で加熱される光ファイバが地盤の深さ位置で異なる温度を検知した場合、例えば、光ファイバの長手方向の或る範囲で、他に比して急激に温度が低くなっている場合、上記範囲では、光ファイバが多くの熱を奪われていることとなるので、このことにもとづいて上記範囲に対応する深さで地下水が存在あるいは流動していると判断することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−214045
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によると、特定の範囲での温度低下から、この範囲で地下水が存在あるいは流動していることは判断できる。また、深さ位置による温度低下の程度の差から、流動の大小も相対的には判断できる。しかしながら、特許文献1では、特定範囲と他との比較で地下水やその流動の存否についての判断がなされるのみであって、地下水の流速そのものの値を測定することはできない。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑み、流体の流速の値をもって、流速分布を測定することのできる装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<第一発明>
本発明に係る流速分布測定装置は、流体の流れに対して交差する方向に延びて該流体中に配される光ファイバと、流体中で上記光ファイバに沿って近接配置され該光ファイバを加熱する発熱体と、上記光ファイバに対してパルス光を送受信して光ファイバの温度分布を計測する温度計測部と、上記発熱体を発熱させるための電力を該発熱体へ通電・非通電の切換可能に供給する発熱体用電源と、光ファイバの温度分布から流体の流速分布を算出する流速分布算出手段とを有し、上記温度計測部は、光ファイバの一端が接続され該光ファイバの他端に向けてパルス光を入射する送信器と、光ファイバから後方散乱光を受信する受信器と、該受信器から後方散乱光を受けて光ファイバの温度分布を算出する信号処理部とを有し、流速分布算出手段は、発熱体の非通電時と通電時における光ファイバの温度分布を該信号処理部から受け、光ファイバの同一位置における非通電時温度と通電時温度の温度差から流速分布を算出するようになっていることを特徴としている。
【0009】
かかる流速分布測定装置では、温度分布が計測される光ファイバの測定範囲の全長にわたり発熱体が該光ファイバに対して近接配置されていて、温度計測部の信号処理部が、上記光ファイバの測定範囲全体にわたり発熱体の非通電時および通電時について、光ファイバの温度分布を算出するようになっている。そして、流速分布算出手段が、該温度分布から温度差分布を算出し、さらに、既知の温度差と流速の関係を用いて該温度差分布から、流体の流速の値をもって流速分布を算出する。
【0010】
<第二発明>
本発明に係る流速分布測定装置は、流体の流れに対して交差する方向に延びて該流体中に配され折返部を経て連続し且つ互いに間隔をもって並行に位置する第一光ファイバ部と第二光ファイバ部を備える光ファイバと、流体中で上記第一光ファイバ部に沿って近接配置され該第一光ファイバ部を加熱する発熱体と、上記光ファイバに対してパルス光を送受信して光ファイバの温度分布を計測する温度計測部と、上記発熱体を発熱させるための電力を該発熱体へ供給する発熱体用電源と、光ファイバの温度分布から流体の流速分布を算出する流速分布算出手段とを有し、上記温度計測部は、光ファイバの一端が接続され該光ファイバの他端に向けてパルス光を入射する送信器と、光ファイバから後方散乱光を受信する受信器と、該受信器から後方散乱光を受けて光ファイバの温度分布を算出する信号処理部とを有し、流速分布算出手段は、第一光ファイバ部と第二光ファイバ部の温度分布を該信号処理部から受け、光ファイバの第一光ファイバ部と第二光ファイバ部の長手方向位置における温度差から流速分布を算出するようになっていることを特徴としている。
【0011】
本発明では、光ファイバの第一光ファイバ部のみに沿って発熱体が該第一光ファイバ部に対して近接配置されていて、該第一光ファイバ部が加熱されるようになっており、該第一光ファイバに対して間隔をもって位置する第二光ファイバ部は加熱されない。そして、温度計測部の信号処理部が、光ファイバ全体にわたる光ファイバの温度分布を算出する。さらに、流速分布算出手段が、第一光ファイバ部と第二光ファイバ部の長手方向位置での温度差分布を算出し、既知の温度差と流速の関係を用いて該温度差分布から、流体の流速の値をもって流速分布を算出する。
【0012】
第一発明および第二発明において、光ファイバは金属管で覆われていて、該金属管が発熱体となっていることとしてもよい。光ファイバが金属管で覆われた構成をもともと有する光ファイバケーブルを用いて流体の流速分布を測定する場合、上記金属管を発熱体として利用することにより、発熱体として他の部品を用意する必要がないので、部品点数の増加を抑制できる。また、光ファイバの金属管を発熱体として利用しなくても、該金属管の外側に発熱体が配されていることとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以上のように、光ファイバを流体の流れに対して交差する方向に延びるように配すると共に、該光ファイバを加熱する発熱体をも配して、光ファイバの非加熱時あるいは非加熱部分での光ファイバの温度分布と、加熱時あるいは加熱部分での温度分布との温度差分布を得ることで、既知の温度差と流速との関係から、流体の流速分布を得ることとしたので、流体中には光ファイバと発熱体とを配置するだけのきわめて簡単な構成で、流速そのものの値の分布を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第一実施形態および第二実施形態に係る流速分布測定装置の構成を示す概念図であり、河川の流速分布を測定する状態を示している。
【図2】第一実施形態における光電気複合ケーブルのケーブル軸線方向に対して直角な面での断面図である。
【図3】第一実施形態の変形例における光電気複合ケーブルのケーブル軸線方向に対して直角な方向での断面図である。
【図4】第二実施形態における光電気複合ケーブルの軸線方向に対して直角な方向での断面図である。
【図5】第二実施形態に係る流速分布測定装置の構成を示す概念図であり、地下水の流速分布を測定する状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に基いて本発明の実施形態を説明する。
【0016】
<第一実施形態>
本実施形態では、流速分布測定装置を用いて河川の流速分布を測定する例について説明する。図1は、本実施形態に係る流速分布測定装置1の構成を示す概念図であり、河川の流速分布を測定する状態を示している。図1にて二点鎖線で示される部分(後述の第二光ファイバ部6Bおよび折返部6C)は後述の第二実施形態に係る部分であり、本実施形態に係る流速分布測定装置1には、この二点鎖線の部分は含まれない。図2は、本実施形態における光電気複合ケーブル2のケーブル軸線方向に対して直角な面での断面図である。この図2では、説明の便宜上、断面を示すハッチングは、後述の発熱体7のみに付しており、光ファイバ6および絶縁体8に対しては省略されている。
【0017】
図1に見られるように、流速分布測定装置1は、後述の光ファイバ6および発熱体7を有し河川R内で水の流れに対して交差する方向(図1では直交する方向)に延びる光電気複合ケーブル2と、河川R外(地上)にて該光電気複合ケーブル2の光ファイバ6の一端に接続され該光ファイバ6の温度分布を計測するための温度計測部3と、該温度計測部3と接続され河川Rの流速分布を算出する流速分布算出手段4と、該河川R外にて上記光電気複合ケーブル2の発熱体7の一端に接続され該発熱体7に定電流を供給する発熱体用電源としての定電流電源5とを備えている。
【0018】
図1では、説明の便宜上、光電気複合ケーブル2の光ファイバ6が発熱体7の外部に位置しているように示されているが、実際には、図2に示されるように、金属管として形成された発熱体7によって光ファイバ6が被覆され、さらに絶縁体8によって該発熱体7が被覆されている構成になっている。つまり、発熱体7は光ファイバ6に沿って該光ファイバ6に近接配置されている。
【0019】
図1に見られるように、光電気複合ケーブル2は、一端(右端)が河川R外の一方の川岸に位置しているとともに、他端(左端)が流水中に位置し対岸近傍で接地されている。該光電気複合ケーブル2の発熱体7の一端には、定電流電源5が接続されている。該定電流電源5は、発熱体7へ通電・非通電の切換可能に電力を供給するようになっている。発熱体7は、通電時にて、上記定電流電源5から電力を供給されてジュール熱により発熱して、発熱体7たる金属管内の光ファイバ6を加熱するようになっている。また、図1に見られるように、該発熱体7の他端は水中で接地されている。
【0020】
温度計測部3は、光ファイバ6の一端が接続され該光ファイバ6の他端に向けてパルス光を該一端から入射する送信器としてのパルス光源9と、光ファイバ6へのパルス光の入射および該光ファイバ6中からの後方散乱光の通過を許容するカプラ10と、カプラ10を通過した後方散乱光を受信する受信器11と、該受信器11から後方散乱光を受けて該後方散乱光の反射位置および光ファイバ6の温度分布を算出する信号処理部12とを有している。
【0021】
上記温度計測部3のパルス光源9は、例えば1550nmの波長のパルス光を出力する半導体で構成される。また、信号処理部12は、受信器11が受信した後方散乱光の受信時刻から後方散乱光の各反射位置を算出するとともに、後方散乱光のうちのストークス光および反ストークス光の強度比を算出して、該強度比を平均化処理することにより、上記各反射位置での温度を算出する。この結果、光ファイバ6のうち河川R内に位置し該河川Rの流れに対して交差する方向に延びる部分(以下、「第一光ファイバ部6A」という)の長手方向での温度分布が信号処理部12によって算出される。
【0022】
上記温度計測部3の信号処理部12には、流速分布算出手段4が接続されている。該流速分布算出手段4は、発熱体7の非通電時および通電時における第一光ファイバ部6Aの温度分布を信号処理部12から受け、各反射位置について、第一光ファイバ部6Aの同一位置における非通電時の温度と通電時の温度との温度差を算出し、第一光ファイバ部6Aの長手方向での温度差分布を得る。また、該流速分布算出手段4は、既知のデータとして、第一光ファイバ部6Aの非通電時温度と通電時温度との温度差と、これに対応する水の流速との対応関係のデータ(以下、「対応関係データ」という)を予め保持している。そして、該流速分布算出手段4は、上記対応関係データを参照することにより、信号処理部12からの温度分布に基いて算出した上記温度差分布に対応する流速分布を、流水の流速の値をもって算出する。この流速分布の算出には、以下の公知の式(1)が用いられる。
【0023】
【数1】

【0024】
以下、本実施形態に係る流速分布測定装置1の動作について説明する。まず、光電気複合ケーブル2が水の流れに対して交差(図1では直交)して延びるように、該光電気複合ケーブル2を河川Rの水中に敷設し位置を安定させる。そして、発熱体7が非通電の状態で、すなわち発熱体7が発熱せず光ファイバ6が加熱されていない状態で、温度計測部3のパルス光源9からカプラ10を介してパルス光を光ファイバ6へ入射する。パルス光が入射すると、光ファイバ6中にて後方散乱光が発生し、該後方散乱光のラマン散乱によりストークス光および反ストークス光が生じる。この後方散乱光は、カプラ10を介して受信器11によって受信される。
【0025】
次に、上記温度計測部3の信号処理部12が、受信器11で受信された後方散乱光の受信時刻から後方散乱光の反射位置を算出するとともに、後方散乱光のうち、ラマン散乱光のストークス光と反ストークス光との強度比から上記反射位置での温度を算出することにより、第一光ファイバ部6Aの温度分布を算出する。この時点において、光ファイバ6は加熱されていないので、算出された第一光ファイバ部6Aの温度分布は、光電気複合ケーブル2に沿った流水の温度分布にほぼ等しくなる。
【0026】
次に、発熱体7を通電の状態として、該発熱体7に電力を供給して発熱させることにより、光ファイバ6を加熱する。発熱体7で発生した熱量は絶縁体8を介して河川R中の流水に奪われるので、流れが定速であれば、該発熱体7の温度は流水に対して一定の温度差をもって安定する。そして、発熱体7の温度が安定した時点で、上述した非通電の場合と同様に、温度計測部3の信号処理部12が第一光ファイバ部6Aの温度分布を算出する。
【0027】
流速分布算出手段4は、第一光ファイバ部6Aの同一位置における、通電時の温度から非通電時の温度を差し引いて温度差を算出することにより、第一光ファイバ部6Aの長手方向での温度差分布を得る。そして、流速分布算出手段4は、既述の対応関係データを参照することにより、上記温度差分布に基づいて流速分布を、流水の流速の値をもって算出する。
【0028】
本実施形態では、信号処理部12は、ストークス光および反ストークス光の強度比に基づいて光ファイバの温度分布を算出することとしたが、これに代えて、例えば、後方散乱光のうち、ラマン散乱光の反ストローク光とレーリー散乱光との強度比を算出し、これを平均化処理することにより温度分布を得ることとしてもよい。
【0029】
本実施形態では、発熱体は、図2に示したように光ファイバを覆う金属管によって形成されているが、これに代えて、例えば図3に示されるように、上記金属管の外側に別途配されていてもよい。
【0030】
図3は、本実施形態の変形例における光電気複合ケーブルのケーブル軸線方向に対して直角な方向での断面図である。同図では、説明の便宜上、断面を示すハッチングが省略されている。この変形例における光電気複合ケーブル2は、図3に示されるように、一本の光ファイバケーブル21および金属製の複数の鎧装線22が、後述の芯線23の外周面に沿って撚られて形成されている。上記光ファイバケーブル21は、一本の光ファイバ6が金属管24で被覆された構成となっている。この変形例では、該金属管24は発熱体としての機能を有していない。また、上記鎧装線22は、上記芯線23を保護する機能とともに、テンションメンバーとしての機能をも有していて、光電気複合ケーブル2の耐久性を高めている。上記芯線23は、例えば絶縁物から成る介在25と、該介在25を被覆する金属層としての発熱体7と、該発熱体7をさらに被覆する絶縁層26とで構成されている。
【0031】
このような図3の光電気複合ケーブル2では、上記介在25の金属層としての発熱体7の一端(図1にて右端)に定電流電源5が接続され、該発熱体7は該定電流電源5から電力を供給されて発熱し、上記絶縁層26および金属管24を介して光ファイバ6を加熱するようになっている。
【0032】
<第二実施形態>
第一実施形態では、非通電時の温度分布を算出した後に通電時の温度分布を算出することとしたが、本実施形態は、非通電状態で得られる温度分布と通電状態で得られる温度分布とを同時に算出する点で第一実施形態と異なる。
【0033】
図1に基づいて本実施形態を説明する。本実施形態に係る流速分布測定装置1は、光ファイバ6が、図1にて二点鎖線で示される部分をも含んでいる点で、この二点鎖線の部分を含まない第一実施形態の流速分布測定装置1と構成が異なっている。具体的には、本実施形態の光ファイバ6は、図1にて実線で示される第一実施形態での光ファイバ6が、同図にて二点鎖線で示されるように、その端部(図1での左端)で折り返されて延長されていて、以下に述べるように、第一および第二光ファイバ部を有している。
【0034】
本実施形態では、光ファイバ6における、河川R内で互いに間隔をもって並行して位置する部分を、それぞれ「第一光ファイバ部6A」(図1にて実線で図示)、「第二光ファイバ部6B」(図1にて二点鎖線で図示)とし、該第一光ファイバ部6Aと第二光ファイバ部6Bとを連結する折り返し部分を「折返部6C」(図1にて二点鎖線で図示)とする。後述するように、本実施形態では、上記第一光ファイバ部6Aのみが加熱され、第二光ファイバ部6Bは加熱されない。
【0035】
図4は、本実施形態における光電気複合ケーブル2の軸線方向に対して直角な方向での断面図である。この図4では、説明の便宜上、発熱体7のみに断面を示すハッチングを付しており、その他の部分のハッチングは省略されている。光電気複合ケーブル2は、例えば絶縁物から成る主介在31の外周面に沿って複数(図4では6本)の側線32A〜32Fが撚られた状態で図1における左端まで延びている。
【0036】
図4に示される側線32A〜32Fのうち、図4での上側に位置する側線32Aは、一本の光ファイバケーブル33および金属製の複数の鎧装線34が、芯線35の外周面に沿って撚られて形成されている。上記光ファイバケーブル33は、第一光ファイバ部6Aが金属管36に被覆されて形成されている。本実施形態では、第一光ファイバ部6Aを被覆する金属管36は発熱体としての機能を有していない。また、上記芯線35は、金属線で形成された発熱体7と、該発熱体7を被覆する絶縁層37とで構成されている。
【0037】
図4に示される側線32A〜32Fのうち、図4での下側に位置する側線32Dは、芯線が、絶縁物から成る副介在38で構成されており、一本の光ファイバケーブル33および金属製の複数の鎧装線34が、上記副介在38の外周面に沿って撚られて形成されている。また、上記側線32Dでは、上記光ファイバケーブル33は、第二光ファイバ部6Bが金属管36に被覆されている。
【0038】
側線32A,32D以外の側線32B,32C,32E,32Fは、芯線としての副介在38の外周面に沿って複数の鎧装線34が撚られて形成されている。
【0039】
図4に示される構成の光電気複合ケーブル2では、同図に見られるように、発熱体7は、第一光ファイバ部6Aに近接するとともに第二光ファイバ部6Bから離れた位置に配されている。したがって、発熱体7の通電時にて、該定電流電源5から上記発熱体7へ電力が供給されて該発熱体7が発熱すると、上記第一光ファイバ部6Aは加熱されるが、第二光ファイバ部6Bは加熱されない。
【0040】
本実施形態では、上記通電時に、温度計測部3の信号処理部12が光ファイバ6の長手方向全体にわたる温度分布を算出した後、流速分布算出手段4が、第一光ファイバ部6Aの範囲での温度分布から第二光ファイバ部6Bの範囲での温度分布を差し引いて温度差分布を算出する。さらに、流速分布算出手段4は、該既知データとしての対応関係データを参照することにより、上記温度差分布に基づいて流速分布を、流水の流速の値をもって算出する。
【0041】
つまり、既述した第一実施形態では、非通電時、すなわち光ファイバ6の非加熱時の温度分布を算出した後、通電時、すなわち光ファイバ6の加熱時の温度分布を算出していたが、本実施形態によれば、発熱体7を通電させた状態で、第一光ファイバ部6Aで加熱時の温度分布をそして第二光ファイバ部6Bで非加熱部分の温度分布を同時に算出できる。したがって、加熱時の温度分布の算出時刻と非加熱部分の温度分布の算出時刻に差がないので、これらの温度分布に基づいて流速分布を算出することにより、より精度の高い流速分布を得ることができる。
【0042】
光電気複合ケーブルは、図4に示される構成に限定されない。該光電気複合ケーブルは、第一光ファイバ部と第二光ファイバ部とが互いに間隔をもって並行して延び、発熱体が一方の光ファイバ部に近接して位置するとともに他方の光ファイバ部から離れて位置していて、該発熱体により一方の光ファイバ部が加熱され、他方の光ファイバ部が加熱されない構成を有していればよい。
【0043】
以上、本実施形態に係る流速分布測定装置1を用いて河川での流速分布を測定する例について説明したが、該流速分布測定装置1を適用できる環境はこれに限られず、例えば、河川以外の水路での流速分布を測定してもよいし、また、地下水の流速分布を測定することも可能である。
【0044】
図5は、本実施形態に係る流速分布測定装置1の構成を示す概念図であり、地下水の流速分布を測定する状態を示している。この図5に示されるように、流速分布測定装置1は、光電気複合ケーブル2が上下方向に延びた状態で地中に形成されたボーリング孔H内に埋設されており、本実施形態にて既述した要領で、該上下方向に対して交差する方向に流れる地下水の流速分布を算出する。
【0045】
この図5の実施形態では、図4に示される光電気複合ケーブル2の第一光ファイバ部6Aと第二光ファイバ部6Bとを置き換えた構成の光電気複合ケーブルが使用されている。したがって、図5に示されているように、発熱体7は、第二光ファイバ部6Bに近接して位置しており、該第二光ファイバ部6Bのみを加熱している。また、発熱体7は、図1の構成とは異なり、水中で接地されておらず、図5に見られるように、両端が定電流電源5に接続されていて、発熱体7に供給された電流が該定電流電源5へ帰還するようになっている。
【符号の説明】
【0046】
1 流速分布測定装置
3 温度計測部
4 流速分布算出手段
5 定電流電源(発熱体用電源)
6 光ファイバ
6A 第一光ファイバ部
6B 第二光ファイバ部
6C 折返部
7 発熱体
9 パルス光源(送信器)
11 受信器
12 信号処理部
24 金属管
36 金属管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流れに対して交差する方向に延びて該流体中に配される光ファイバと、流体中で上記光ファイバに沿って近接配置され該光ファイバを加熱する発熱体と、上記光ファイバに対してパルス光を送受信して光ファイバの温度分布を計測する温度計測部と、上記発熱体を発熱させるための電力を該発熱体へ通電・非通電の切換可能に供給する発熱体用電源と、光ファイバの温度分布から流体の流速分布を算出する流速分布算出手段とを有し、上記温度計測部は、光ファイバの一端が接続され該光ファイバの他端に向けてパルス光を入射する送信器と、光ファイバから後方散乱光を受信する受信器と、該受信器から後方散乱光を受けて光ファイバの温度分布を算出する信号処理部とを有し、流速分布算出手段は、発熱体の非通電時と通電時における光ファイバの温度分布を該信号処理部から受け、光ファイバの同一位置における非通電時温度と通電時温度の温度差から流速分布を算出するようになっていることを特徴とする流速分布測定装置。
【請求項2】
流体の流れに対して交差する方向に延びて該流体中に配され折返部を経て連続し且つ互いに間隔をもって並行に位置する第一光ファイバ部と第二光ファイバ部を備える光ファイバと、流体中で上記第一光ファイバ部に沿って近接配置され該第一光ファイバ部を加熱する発熱体と、上記光ファイバに対してパルス光を送受信して光ファイバの温度分布を計測する温度計測部と、上記発熱体を発熱させるための電力を該発熱体へ供給する発熱体用電源と、光ファイバの温度分布から流体の流速分布を算出する流速分布算出手段とを有し、上記温度計測部は、光ファイバの一端が接続され該光ファイバの他端に向けてパルス光を入射する送信器と、光ファイバから後方散乱光を受信する受信器と、該受信器から後方散乱光を受けて光ファイバの温度分布を算出する信号処理部とを有し、流速分布算出手段は、第一光ファイバ部と第二光ファイバ部の温度分布を該信号処理部から受け、光ファイバの第一光ファイバ部と第二光ファイバ部の長手方向位置における温度差から流速分布を算出するようになっていることを特徴とする流速分布測定装置。
【請求項3】
光ファイバは金属管で覆われていて、該金属管が発熱体となっていることとする請求項1または請求項2に記載の流速分布測定装置。
【請求項4】
光ファイバは金属管で覆われていて、該金属管の外側に発熱体が配されていることとする請求項1または請求項2に記載の流速分布測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−36854(P2013−36854A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173094(P2011−173094)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(303040585)株式会社オーシーシー (47)