説明

流量調整装置

【課題】液体もしくは気体が封入されたカートリッジから液体もしくは気体を排出する際に液体もしくは気体の流量を調整することが可能で、当該カートリッジに容易に着脱可能な構造を有する流量調整装置を提供する。
【解決手段】液体もしくは気体の流量を調整する調整具と、調整具が結合した底部と、底部に結合される円筒部材とを備えるカップと、カップの外周に勘合する固定リングとを具備する流量調整装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒等を封入した容器から流量を調整して冷媒等を排出することが可能な流量調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体もしくは気体が封入されたカートリッジに備えた排出装置を操作することによって、そのカートリッジに封入された液体や気体を外部に排出することができる物がある。液体もしくは気体とは、冷媒や洗浄液、潤滑液、不活性ガス、殺虫剤等様々な物質が挙げられる。
【0003】
上記のようにカートリッジ本体には、排出装置が備えられていることがある。排出装置とは、スプールがバネで押されて、スプールがシールに押されることによって、カートリッジ本体に封入された液体もしくは気体が外部に漏れないようにしておき、当該スプールを手で押し込むことによってスプリングを縮ませて、スプールとシールの接触を解除し、カートリッジ本体に封入されている液体もしくは気体を、スプールに開けられている穴を通して外部に排出させるようにした物である。
【0004】
したがって、作業者は、手でスプールを押し込む時間と押し込む量を手加減することにより、外部に排出する液体もしくは気体の量を調整することができる。しかし、作業者が、液体もしくは気体を、任意の時間だけ排出したい場合、その任意の時間の間、手でスプールを押し続けなければならない。しかも、作業者が、液体もしくは気体を、任意の時間、一定の流量だけ排出したい場合、スプールを押し込む力を任意の時間の間、一定に保たなければならない。さらに、作業者は、スプールを押すために、少なくとも片手が拘束され、液体もしくは気体の流量の微調整に苦労する。
【0005】
特許文献1に、流量調整弁が開示されている。この流量調整弁は、ハウジング内に、流体入口に連通する第一の室と、この第一の室および流体出口に連通する第二の室とが形成され、第二の室内に、この第二の室を二つに区画する圧力調整膜が固定され、この圧力調整膜に、第一、第二の室内に亘って配置されたニードルが固定され、流体入口から第二の室に導入された流体の圧力に応じて圧力調整膜が変位することにより、ニードルとハウジングの壁部との間の流路面積が変位して、第二の室および流体出口側の流体圧力が調査される構成である。また、そのハウジングに、圧力調整膜の位置を調整する調整機構が設けられると共に、この調整機構の操作部がハウジングの外部に露出して設けられ、かつ流体出口近傍に、ハウジングよりも熱膨張率の小さい材料からなるオリフィスプレートが設けられている(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平6−201063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、液体もしくは気体が封入されたカートリッジから流量を調整して液体もしくは気体を排出することが可能な流量調整装置を提供することである。
【0008】
本発明の目的は、液体もしくは気体が封入されたカートリッジから流量を調整して液体もしくは気体を排出することが可能な流量調整装置であって、しかも当該カートリッジに容易に着脱可能な構造を有する流量調整装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に、(発明を実施するための最良の形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための最良の形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0010】
本発明による流量調整装置は、液体もしくは気体の流量を調整する調整具(2,2a)と、調整具(2,2a)が結合した底部と、底部に結合される円筒部材とを備えるカップ(4)と、カップ(4)の外周に勘合する固定リング(6)とを備えている。
【0011】
本発明による流量調整装置において、カップ(4)は、円筒部材の外径が底部から離れるに従って大きくなるテーパー形状(4b)を備えている。
【0012】
本発明による流量調整装置において、調整具(2,2a)は、カップ(4)の中心軸方向に移動可能であって、更に、液体もしくは気体の排出を規制するボタン(8b)が、液体もしくは気体が入った容器(40)に付属し、調整具(2,2b)がボタン(8b)に接触する。
【0013】
本発明による流量調整装置において、調整具(2,2b)は、おねじの棒部(2a)を備え、底部は、めねじの穴(4d)を備え、棒部(2a)は穴(4d)に挿入される。
【0014】
本発明による流量調整装置において、固定リング(6)は、円周方向の一部が切れたスリット部(6a)を備える。
【0015】
本発明による流量調整装置において、カップ(4)の円筒部材は、円周方向の一部が切れたスリット部(4a)を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、液体もしくは気体が封入されたカートリッジから流量を調整して液体もしくは気体を排出することが可能な流量調整装置が提供される。
【0017】
本発明によれば、液体もしくは気体が封入されたカートリッジから流量を調整して液体もしくは気体を排出することが可能な流量調整装置であって、しかも当該カートリッジに容易に着脱可能な構造を有する流量調整装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
添付図面を参照して、本発明による流量調整装置を実施するための最良の形態を以下に説明する。
【0019】
図1及び図2は、本発明にかかる流量調整装置をカートリッジ本体に装着した状態の上面図と側面図を示す。また、図3は、本発明にかかる流量調整装置をカートリッジ本体に装着した状態の斜視図を示す。図4は、本発明にかかる流量調整装置をカートリッジ本体に装着した状態の断面図を示す。なお、図4は、図1に示すA−A’断面を示している。
【0020】
カートリッジ本体40とは、液体もしくは気体が封入され、液体もしくは気体を外部に排出するための排出装置であるボタン部8b及びノズル部8aを有したものである。つまり、カートリッジは、カートリッジ本体40である円筒形の容器と排出装置で構成されている。カートリッジ本体40は、金属製の容器である。当該排出装置の詳細については、後述する。
【0021】
流量調整装置は、流量調整ネジ頭部2及びそのネジ部2aと、カップ4と固定リング6から構成されている。
【0022】
流量調整ネジ頭部2及びそのネジ部2aは、例えば六角ボルトであればよい。流量調整ネジ頭部2を手で回すことによって、カートリッジ本体40に封入された液体もしくは気体(本実施形態においては、以下、液体もしくは気体を冷媒として説明する)の排出量を調整するため、流量調整ネジ頭部2の形態は、円形で表面に凹凸をつけて滑りにくくしたものや、六角形ではなく四角形でもよい。ネジ部2aは、丸棒に一定のピッチでネジを切ったものであればよく、流量調整ネジ頭部2とネジ部2aは一体である。なお、流量調整ネジ頭部2とネジ部2aは、金属性でも樹脂製でもよいが、本発明にかかる流量調整装置及びカートリッジ本体40を作業者が携帯するならば、軽量である樹脂製が好ましい。
【0023】
カップ4は、例えばポリプロピレンやフッ素樹脂を切削加工あるいは射出成形にて作られる。カップ4は、金属製であってもよいが、上記のように作業者が携帯することを考慮するならば、軽量である樹脂製が好ましい。
【0024】
カップ4の形状は、円筒形で上記のネジ部2aが通るように、底部にめねじ穴4dを有している。さらに、カップ4は、カートリッジの排出装置のノズル部8aとの干渉を避けるために、カップのスリット部4aを有することが望ましい。さらに、カップ4の外形形状は、外径が底部から縁部に向かって大きくなった、カップのテーパー部4bを有していてもよい。カップのテーパー部4bと固定リング6の嵌合については、後述する。
【0025】
固定リング6は、カップ4と同様に樹脂であればよく、ワッシャ状の形状である。固定リング6は、カートリッジの排出装置のノズル部8aとの干渉を避けるために、固定リングのスリット部6aを有していてもよい。なお、固定リング6の内径は、カップ4の外径よりも小さくなければならない。その理由は、図3に示すように、固定リング6は、カップ4の外側にはめこんでカップ4とカートリッジ本体40を嵌合させるからである。なお、カップ4が、カップのテーパー部4bを有する場合は、カップ4の最も大きな外径よりも固定リング6の内径が小さければよい。
【0026】
なお、カートリッジの排出装置がノズル部8aを有する場合は、図3に示すように、カップ4のカップのスリット部4aと固定リング6のスリット部6aは、円周方向に同じ位置になるように固定リング6を配置する。その理由は、カートリッジに封入された冷媒が消費され、カートリッジの交換を行うために固定リング6を取りはずす際、ノズル部8aと固定リング6が干渉することを回避するためである。
【0027】
次に、本発明にかかる流量調整装置をカートリッジ本体40に装着する手順を説明する。
【0028】
まず、カートリッジ本体40にカップ4を被せる。その際、カップ4の縁部は、カートリッジ本体との接触部4cと嵌合する。この状態のままでは、カップ4は、カートリッジ本体40から容易に外れてしまう。そこで、固定リング6をカップ4の外側にはめこんで、固定リング6をカップ4のカップのテーパ−部4bにはめる。上記のようにカップのテーパー部4bの最も大きな外径は、固定リング6の内径よりも大きいので、固定リング6を押し付け力20でカップのテーパー部4bに押し付けると、カップ4がカートリッジとの接触部4cに押し付けられ、締め付け力30が発生し、カップ4がカートリッジ本体40に嵌合される。
【0029】
排気装置は、スプール上部10aとスプール下部10bで構成されたスプールと、弾性材8c、スプリング8dと、これらを保持する筐体で構成されている。さらに、排出装置は、スプールを押して、排出される冷媒の経路をガイドする役目をなす、ボタン部8b及びノズル部8aを有する。ボタン部8b及びノズル部8aの内部には、ノズル穴8eが貫通している。
【0030】
冷媒を排出させない時、作業者は、ネジ部2aをゆるめておき、スプール押し付け部8b−1を、スプール頭部10dに接触させない。したがって、スプリング8dがスプール(スプール上部10a及びスプール下部10b)を上方に押し上げ、スプール下部10bは、スプール下部の弾性材との接触部10eで弾性材8cに接触する。つまり、この接触が、カートリッジ本体40に封入された冷媒が外部に排出されることを抑止している。スプール上部10aは中空構造となっている。また、スプール上部10aの側面を貫通するようにスプール穴10cが設けられている。この状態において、スプール穴10cは、弾性材8cによってふさがれている。なお、スプールは、樹脂であり、弾性材8cはゴムあるいは軟質の樹脂である。
【0031】
次に、作業者が、カートリッジ本体40に封入された冷媒を排出し、冷媒の流量を調整する場合の手順を説明する。図5は、本発明にかかる流量調整装置をカートリッジ本体に装着した状態で、カートリッジ本体に封入された液体等の流量調整を説明する断面図を示す。なお、図5は、図1に示すA−A’断面を示している。
【0032】
作業者は、流量調整ネジ頭部2を回転させる(流量調整ネジ回転12)。流量調整ネジ頭部2のネジ部2aが右ネジであれば、流量調整ネジ2を右回転に回せば、ネジ部2aは下方に移動する(流量調整ネジ押し込み14)。ネジ部2aの先端は、排出装置のボタン部8bに接触し、ボタン部8b及びノズル部8aを下方に押し下げる。その結果、スプール押し付け部8b−1が、スプール頭部10dに接触し、スプールが下方に押し下げられる。その結果、スプール下部10bは弾性材8cから離れる。
【0033】
スプール上部10aに設けられたスプール穴10cは、弾性材8cから離れ、穴をふさぐものがなくなる。したがって、カートリッジ本体40に封入されている冷媒は、スプール穴10cを通ってスプール上部10aの内部を通り、さらにノズル穴8eを通って外部に排出される。
【0034】
作業者が、冷媒の流量を絞りたい時は、流量調整ネジ頭部2を左回転に回して、ネジ部2aを上方に移動させる。スプリング8dの反発力が、スプールを介して、ボタン部8dを上方に押しているから、排気装置のボタン部8bとノズル部8aは上方に上昇する。スプリング8dの反発力がスプールを上方に押しているので、作業者が、流量調整ネジ頭部2を左回転に回すことにより、スプール穴10cの穴口が弾性材8cで塞がれ、冷媒の排出16の量が絞られるのである。このようにして、作業者が、流量調整ネジ頭部2を左右に回転させることによって、冷媒が外部に排出する流量を微調整することができる。
【0035】
例えば、ある物体を冷やしたいと考える。その際、その物体の周囲に冷媒を通すことができるようなフレキシブル性を有した中空の配管を巻きつける。その配管の先端をノズル部8aに接続する。作業者は、流量調整ネジ頭部2を左右のいずれかに回転させることによって、カートリッジ本体40に封入された冷媒の排出量を調整することができるので、当該物体を強く冷やしたければ、流量調整ネジ頭部2を左に回転させ、多くの冷媒を流し、弱く冷やしたければ、流量調整ネジ頭部2を右に回転させ、少しの冷媒を流せばよい。なお、一定の流量で冷媒を流したければ、流量調整ネジ頭部2を回して所望の流量に微調整した後、そのままにしておけば、冷媒がある限り、一定の冷媒が排出される。
【0036】
上記のように、外部に排出させる冷媒の流量の微調整は、流量調整ネジ頭部2を回転させて行うのであるが、微調整の精度は、ネジ部2aに切られたネジ山のピッチによって決められる。したがって、ネジ山のピッチが細かいほど、冷媒の排出の微調整の精度は高くなり、ネジ山のピッチが粗いほど、冷媒の排出の微調整の精度は粗くなる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本発明にかかる流量調整装置をカートリッジ本体に装着した状態の上面図を示す。
【図2】図2は、本発明にかかる流量調整装置をカートリッジ本体に装着した状態の側面図を示す。
【図3】図3は、本発明にかかる流量調整装置をカートリッジ本体に装着した状態の斜視図を示す。
【図4】図4は、本発明にかかる流量調整装置をカートリッジ本体に装着した状態の断面図を示す。
【図5】図5は、本発明にかかる流量調整装置をカートリッジ本体に装着した状態で、カートリッジ本体に封入された液体等の流量調整を説明する断面図を示す。
【符号の説明】
【0038】
2 :流量調整ネジ頭部
2a :ネジ部
4 :カップ
4a :カップのスリット部
4b :カップのテーパ部
4c :カートリッジとの接触部
4d :カップのめねじ穴
6 :固定リング
6a :固定リングのスリット部
8a :ノズル部
8b :ボタン部
8b−1:スプール押し付け部
8c :弾性材
8d :スプリング
8e :ノズル穴
10a:スプール上部
10b:スプール下部
10c:スプール穴
10d:スプール頭部
10e:スプール下部の弾性材との接触部
12 :流量調整ネジ回転
14 :流量調整ネジ押し込み
16 :冷媒の排出
20 :押し付け力
30 :締め付け力
40 :カートリッジ本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体もしくは気体の流量を調整する調整具と、
前記調整具が結合した底部と、前記底部に結合される円筒部材とを備えるカップと、
前記カップの外周に勘合する固定リングとを具備する
流量調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流量調整装置において、
前記カップは、前記円筒部材の外径が前記底部から離れるに従って大きくなるテーパー形状を具備する
流量調整装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の流量調整装置において、
前記調整具は、前記カップの中心軸方向に移動可能であって、
更に、前記液体もしくは前記気体の排出を規制するボタンが、前記液体もしくは前記気体が入った容器に付属し、前記調整具が前記ボタンに接触する
流量調整装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の流量調整装置において、
前記調整具は、おねじの棒部を備え、
前記底部は、めねじの穴を備え、
前記棒部は前記穴に挿入される
流量調整装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の流量調整装置において、
前記固定リングは、円周方向の一部が切れたスリット部を備える
流量調整装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の流量調整装置において、
前記カップの前記円筒部材は、円周方向の一部が切れたスリット部を備える
流量調整装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−8376(P2008−8376A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178429(P2006−178429)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(501370370)三菱重工環境エンジニアリング株式会社 (175)
【出願人】(599051890)株式会社風船工房匠 (13)
【Fターム(参考)】