説明

浄水器及び浄化カートリッジ

【課題】浄化カートリッジにおける残留空気による浄水処理の効率低下を防ぎ、常に良好な浄水を可能にする。
【解決手段】コップ形状部5内部において空気Cが残留しても、浄水出口10は空気圧Pcの影響を受けない。このため浄水出口10からの浄水は、自重でパイプ15に案内されて吸着剤収納室部11の浄水出口10からコップ形状部5の側部開口5bへと円滑に移動することができる。このため浄水は、側部開口5bからコップ形状部5外部の浄水貯留室部3へと支障なく流れ出る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体ケース内が原水貯留室部と浄水貯留室部とに区画され、両貯留室部間に浄化カートリッジが設けられる構成の浄水器、及び該浄水器に設けられる浄化カートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本体ケース内が原水貯留室部と浄水貯留室部とに区画され、原水貯留室部と浄水貯留室部間に設けられた浄化カートリッジに原水を通すことにより、原水を浄化することができるようにした筒型の家庭用の浄水器が市販されている。この種の浄水器に関する構造については、多種のものが提案され、実施されている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
前記構造の筒型浄水器において、ポンプを具備しない構成のものでは、本体ケース上部の原水貯留室部に供給された原水が、原水の自重により浄化カートリッジを通過する。その際に、活性炭,繊維樹脂あるいはイオン交換樹脂などの吸着剤により原水に含まれる無機物,有機物あるいは金属不純物などが除去され浄化され、浄化された浄水が本体ケース下部の浄水貯留室部へ流出し、貯留されるようになっている。
【0004】
図7は浄水器の従来例の構造を説明するための断面図である。
図7において、1は透明樹脂からなる本体ケースであって、この本体ケース1の内部は上部が原水貯留室部2に、また下部が浄水貯留室部3として区画されている。原水貯留室部2と浄水貯留室部3間の隔壁4には、浄水貯留室部3側に突出すように形成されたコップ形状部5が一体的に設けられている。
【0005】
コップ形状部5には上部開口5aと側部開口5bとが設けられ、コップ形状部5の上部開口5aに浄化カートリッジ6が着脱可能に装着されている。
【0006】
浄化カートリッジ6は、原水貯留室部2に位置して原水取入口7が形成された上部ケース部8と、隔壁4におけるコップ形状部5の上部開口5a周部に係止する鍔部9と、内部に吸着剤Tが収納され、かつ下面中央部に浄水出口10が形成されている吸着剤収納室部11とから構成されている。
【0007】
前記従来の浄水器は、原水貯留室部2に入れられて貯留する原水Aは、自重により浄化カートリッジ6における吸着剤収納室部11の吸着剤Tを通り、さらに浄化された浄水Bが、自重により吸着剤収納室部11の浄水出口10からコップ形状部5の側部開口5bを通って浄水貯留室部3へと流出するものである。
【0008】
そして、浄水貯留室部3に貯留された浄水Bは、使用者が本体ケース1を傾けることにより、水出口12から外部のコップなどの任意の器に注ぐことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−319799号公報
【特許文献2】特許第4157378号公報
【特許文献3】特開2009−154128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような浄水器は、約1〜2リットル程度の水を浄化処理することができるが、水を送るポンプ類を具備していないため、図7に示すように、浄化カートリッジ6を通過させるための圧力は、上部の原水貯留室部2に貯留されている原水Aの自重のみである。
【0011】
ところで浄化の際、原水Aが吸着剤収納室部11の吸着剤Tを通過して浄水出口10からコップ形状部5へと流出する。そして浄化処理が進み、浄水貯留室部3に浄水が貯まっていくが、コップ形状部5周部に浄水が貯まってくると、図7において側部開口5bより上方の空気が、側部開口5bから抜けきれず、コップ形状部5内部に残留してしまうことがある。この空気は、コップ形状部5内部において、吸着剤収納室部11の下側面部から側部開口5bの上端部分の間で残留する(図7の空気C部分)。
【0012】
このようになると、吸着剤収納室部11の浄水出口10からコップ形状部5へ流出する浄水Bの流出圧力Pbは原水Aの自重のみであるため、浄化処理が進んで原水Aの量が少なくなると、コップ形状部5に残留した空気Cの圧力Pcの方が浄水Bの噴出圧力Pbよりも大きくなり、この圧力が吸着剤収納室部11の浄水出口10に加わって、吸着剤収納室部11からの浄水Bの流出が阻止されてしまうことになる。これにより原水Aが、原水貯留室部2から移動できずに、貯留されたままで浄化処理が止まってしまう。
【0013】
このため、コップ形状部5における吸着剤収納室部11の浄水出口10からの浄水流出がなくなった時点で、使用者が、浄化処理が完了したと思って本体ケース1を傾け、水出口12から浄水貯留室部3の浄水Bを外部のコップなどに取り出そうとすると、原水貯留室部2に貯留されたままで残っている未浄化の原水Aが、浄水Bと混合して本体ケース1から漏れ出てしまうという問題がある。
【0014】
このような空気残留による空気圧により浄化カートリッジからの浄水の流出が妨げられることは、浄水器の浄水処理の能率低下、あるいは不用意な原水との混合などの原因となり、浄水器の本来の使用目的からして問題である。
【0015】
本発明は、前記従来技術の問題を解決し、浄化カートリッジ内における残留空気による浄水処理の効率低下を防ぎ、常に良好な浄水が可能な浄水器及び浄化カートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するため、本発明に係る浄水器は、原水貯留室部と浄水貯留室部とが上下に分離して形成された本体ケースと、前記原水貯留室部と前記浄水貯留室部とを区画する隔壁と、前記隔壁を通って前記浄水貯留室部に連通して前記本体ケースに開口する水出口と、前記原水貯留室部の前記本体ケースに開口する原水注ぎ口と、前記隔壁の前記浄水貯留室部側に突出して形成され、少なくとも上部と側部あるいは下部とに開口が形成されたコップ形状部と、前記コップ形状部の上部の開口から挿入される浄化カートリッジとを備え、前記原水貯留室部の原水が自重により前記浄化カートリッジ内の吸着剤を通って前記浄水貯留室部へ移動することにより、原水浄化がなされる構造の浄水器において、前記浄化カートリッジの浄水出口に、前記コップ形状部の前記側部あるいは前記下部の開口まで延出するパイプを垂下させたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る浄化カートリッジは、原水貯留室部と浄水貯留室部とが上下に分離して形成された本体ケースと、前記原水貯留室部と前記浄水貯留室部とを区画する隔壁と、前記隔壁を通って前記浄水貯留室部に連通して前記本体ケースに開口する水出口と、前記原水貯留室部の前記本体ケースに開口する原水注ぎ口とを具備した浄水器に設けられる浄化カートリッジであって、前記隔壁に装着されて、前記原水貯留室部の原水が自重により内部の吸着剤を通って前記浄水貯留室部へ移動することにより原水浄化をなす浄化カートリッジにおいて、前記隔壁の前記浄水貯留室部側に突出して前記隔壁に装着され、少なくとも上部と側部あるいは下部とに開口が形成されたカートリッジケース本体と、前記吸着剤の下側部に設けられた浄水出口から垂下して、前記カートリッジケース本体の前記側部あるいは前記下部の開口まで延出するパイプとを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、浄水が流出する浄水出口から、本体ケースにおけるコップ形状部の側部開口あるいは下部開口まで、あるいはカートリッジケース本体の側部開口あるいは下部開口まで、浄水を導くパイプを設けたことにより、カートリッジ内に残留しても、その空気の圧力が浄水出口には加わらず、浄水出口からの浄水は、パイプにより案内されて側部開口あるいは下部開口からカートリッジ外の浄水貯留室部へ流れ出ることになる。このため、従来のように浄水の流れが、残留する空気の圧力により阻止され、原水の浄化効率が低下することがなくなる。
【0019】
このように原水貯留室部から浄水貯留室部へ水の移動がなされることになり、良好にかつ効率的に原水の浄化が行われるため、安定かつ円滑な浄水処理が行われる浄水器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る浄水器の実施形態1の全体構成を示す断面図である。
【図2】図1の実施形態1の浄水器における浄化カートリッジの拡大正面図である。
【図3】図1の実施形態1の浄水器における浄化処理初期の説明図である。
【図4】図1の実施形態1の浄水器における浄化処理終期の説明図である。
【図5】本発明に係る浄水器の実施形態2の要部を示す断面図である。
【図6】本発明に係る浄化カートリッジの実施形態の正面図である。
【図7】従来の浄水器の全体構成とその問題点を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は本発明に係る浄水器の実施形態1の全体構成を示す断面図である。なお、以下の説明において、図7に示した浄水器にて説明した構成部材に対応する部材には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0023】
図1において、1は透明樹脂からなる本体ケース、2は本体ケース1の上部に設けられた原水貯留室部、3は本体ケース1の下部に設けられた浄水貯留室部、4は原水貯留室部2と浄水貯留室部3を区画する隔壁、5は浄水貯留室部3側に突出すように隔壁4と一体に形成されたコップ形状部である。コップ形状部5には上部開口5aと側部開口5bとが設けられている。
【0024】
図2は実施形態1の浄水器における浄化カートリッジを示す正面図であって、吸着剤Tを内蔵した浄化カートリッジ6は、コップ形状部5の上部開口5aに着脱可能に装着されている。また、浄化カートリッジ6は、原水貯留室部2に位置して原水取入口7が形成された上部ケース部8と、隔壁4におけるコップ形状部5の上部開口5a周部に係止する鍔部9と、内部に吸着剤Tが収納され、かつ下面中央部に浄水出口10が形成されている吸着剤収納室部11とからなる。
【0025】
なお、図1において、12は、隔壁4の横を通って浄水貯留室部3に連通して、本体ケース1の上部に開口する水出口、13は、原水貯留室部2の本体ケース1に開口する原水注ぎ口、14は原水注ぎ口13を覆う着脱自在な蓋体である。
【0026】
さらに、実施形態1では、浄化カートリッジ6の浄水出口10には、下端部がコップ形状部5の側部開口5bまで延出するようにパイプ15の上端部を固定している。
【0027】
前記構成の実施形態1において、浄化は従来と同様に行われ、図3に示すように、原水貯留室部2に充填されて貯留する原水Aが、自重により浄化カートリッジ6における吸着剤収納室部11の吸着剤Tを通り、さらに浄化された浄水Bが、自重により吸着剤収納室部11の浄水出口10からパイプ15を通ってコップ形状部5の側部開口5bまで流出し、さらに側部開口5bを通って浄水貯留室部3へと流出する。
【0028】
ここで実施形態1では、前記パイプ15を設けたことにより、図4に示すように、コップ形状部5内部において空気Cが残留したとしても、浄水出口10は空気圧Pcの影響を受けない。このため浄水Bは、自重でパイプ15に案内されて吸着剤収納室部11の浄水出口10からコップ形状部5の側部開口5b部分へと円滑に移動することができて、該側部開口5bからコップ形状部5外部へと流れ出ることになる。
【0029】
図5は本発明に係る浄水器の実施形態2の要部を示す断面図であり、実施形態2は実施形態1と基本構成は同じである。
【0030】
実施形態2が実施形態1と異なる構成は、コップ形状部5には上部開口5aと下部開口5cが設けられ、かつ、浄化カートリッジ6の浄水出口10に、下端部がコップ形状部5の下部開口5cまで延出するようにパイプ15の上端部を固定している点である。
【0031】
実施形態2において、実施形態1と同様に、コップ形状部5内部に空気Cが残留したとしても、浄水出口10は空気圧Pcの影響を受けない。このため浄水Bは、自重でパイプ15に案内されて吸着剤収納室部11の浄水出口10からコップ形状部5の下部開口5cへと円滑に流出することができ、該下部開口5cからコップ形状部5外部へと流れ出ることになる。
【0032】
他の実施形態2における部材は、前記実施形態1にて説明した部材と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0033】
このように、実施形態1,2では、原水貯留室部2から浄水貯留室部3へ水の移動が円滑になされることになり、迅速かつ効率的に原水の良好な浄化が行われるため、常に安定かつ円滑な浄水処理が行われる。
【0034】
なお、実施形態1,2では、コップ形状部5を浄水貯留室部3側に突出すように隔壁4と一体に形成しているが、このコップ形状部5を隔壁4に形成せずに、隔壁4に浄水カートリッジ6を装着する開口のみを形成する浄水器の構造も考えられる。
【0035】
図6に示す例の場合、実施形態1,2における浄水カートリッジ6下周部のコップ形状部5と同様な機能を持たせるために、鍔部9の下側部からコップ形状をなすカートリッジケース本体20を一体的に延出してユニット体とする。
【0036】
また、カートリッジケース本体20には、原水取入口7と連通して原水が吸着剤収納室部11へ流出するように上部部分の開口を形成すると共に、吸着剤収納室部11から流出する浄水がカートリッジケース本体20へ流出できるように側部開口20a(あるいは下部開口)を形成する。
【0037】
さらに、図6に示す例の場合、側部開口20a(あるいは下部開口)の設置構造に対応して、実施形態1,2と同様にパイプ15を設ける。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、ポンプなどの水の移動駆動手段を具備せず、水の自重にて原水貯留部から浄水貯留部へ水が流出する構成の家庭用の浄水器、及びその浄水器に装備される浄化カートリッジに実施して有効である。
【符号の説明】
【0039】
1 本体ケース
2 原水貯留室部
3 浄水貯留室部
4 隔壁
5 コップ形状部
5b 側部開口
5c 下部開口
6 浄化カートリッジ
10 浄水出口
11 吸着剤収納室部
12 水出口
13 原水注ぎ口
15 パイプ
20 カートリッジケース本体
20a 側部開口
A 原水
B 浄水
C 空気
T 吸着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水貯留室部と浄水貯留室部とが上下に分離して形成された本体ケースと、
前記原水貯留室部と前記浄水貯留室部とを区画する隔壁と、
前記隔壁を通って前記浄水貯留室部に連通して前記本体ケースに開口する水出口と、
前記原水貯留室部の前記本体ケースに開口する原水注ぎ口と、
前記隔壁の前記浄水貯留室部側に突出して形成され、少なくとも上部と側部あるいは下部とに開口が形成されたコップ形状部と、
前記コップ形状部の上部の開口から挿入される浄化カートリッジとを備え、
前記原水貯留室部の原水が自重により前記浄化カートリッジ内の吸着剤を通って前記浄水貯留室部へ移動することにより、原水浄化がなされる構造の浄水器において、
前記浄化カートリッジの浄水出口に、前記コップ形状部の前記側部あるいは前記下部の開口まで延出するパイプを垂下させたことを特徴とする浄水器。
【請求項2】
原水貯留室部と浄水貯留室部とが上下に分離して形成された本体ケースと、前記原水貯留室部と前記浄水貯留室部とを区画する隔壁と、前記隔壁を通って前記浄水貯留室部に連通して前記本体ケースに開口する水出口と、前記原水貯留室部の前記本体ケースに開口する原水注ぎ口とを具備した浄水器に設けられる浄化カートリッジであって、
前記隔壁に装着されて、前記原水貯留室部の原水が自重により内部の吸着剤を通って前記浄水貯留室部へ移動することにより原水浄化をなす浄化カートリッジにおいて、
前記隔壁の前記浄水貯留室部側に突出して前記隔壁に装着され、少なくとも上部と側部あるいは下部とに開口が形成されたカートリッジケース本体と、
前記吸着剤の下側部に設けられた浄水出口から垂下して、前記カートリッジケース本体の前記側部あるいは前記下部の開口まで延出するパイプと、
を具備したことを特徴とする浄化カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−200724(P2012−200724A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87742(P2011−87742)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(501204271)株式会社ドリテック (3)
【Fターム(参考)】