説明

浄水装置

【課題】本発明の目的は、河川水、プール水から飲料水を得ることができる浄水装置を提供することにある。
【解決手段】本発明は、吸着材を充填したカラム(I)を有する浄水装置であって、吸着材は、ポリマー(A)中に形成された複数のセルを有し、(1)セル中には活性炭が内包され、(2)ポリマー(A)中には細孔が存在し、細孔は他の細孔とポリマー中で連通し、それらの孔径が1nm〜1μmの範囲にあり、(3)セルの内壁と活性炭とは実質的に接触していないことを特徴とする浄水装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川水、湖沼水、地下水、貯水槽、防火水槽、またはプールから飲料水を製造するための浄水装置に関する。さらに詳しくは地震等の大規模災害時に活用できる、小型で機動性に優れ、操作性が容易で、維持管理費も安価で耐久性の高い浄水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地震等の大規模災害時には、水道管の破壊損傷等により公水道が断水することが多く、飲料水の確保が必要となる。そのため公水道が断水した場合、河川水、プール水、地下水等の水を浄化し飲料水とすることが必要となる場合も想定される。また、大規模災害時には電力会社から送電される商用電源も停電することが多く、浄水装置の駆動源としてガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関を用いたり、人力で駆動できる装置が開発されつつある。
【0003】
しかし、内燃機関を利用するものは燃料の確保が必要となる。一方、人力による場合は、カラムの圧力損失が高いため動力不足で飲料水を充分得られないという問題がある。また浄水装置のカラムの目詰まりにより、浄化に要する圧力が上昇し、浄化能力が低下するという問題もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、河川水、プール水、ため池、地下水などから飲料水を得ることができる浄水装置を提供することにある。また本発明の目的は、人力によって稼働することができる浄水装置を提供することにある。さらに本発明の目的は、カラムの目詰まりが発生し難く、長期に亘って飲料水の確保が可能な浄水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、浄水装置のカラムに充填する吸着材について鋭意検討した。その結果、吸着材として、ポリマー中に形成されたセル中に活性炭が内包され、活性炭はセルの内壁に固定されていない構造を有する成形体を用いると、カラムの目詰まりによる圧力損失の上昇が抑制され、長期に亘って低圧力で浄水することができることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
即ち、本発明は、吸着材を充填したカラム(I)を有する浄水装置であって、
吸着材は、ポリマー(A)中に形成された複数のセルを有し、
(1)セル中には活性炭が内包され、
(2)ポリマー(A)中には細孔が存在し、細孔は他の細孔とポリマー中で連通し、それらの孔径が1nm〜1μmの範囲にあり、
(3)セルの内壁と活性炭とは実質的に接触していない、ことを特徴とする浄水装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の浄水装置は、河川水、ため池、地下水、プール水などから飲料水を得ることができる。また本発明の浄水装置は、人力によって稼働することができる。さらに本発明の浄水装置は、カラムの目詰まりが発生し難く、長期に亘って浄水するができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、活性炭を含有する吸着材を充填したカラムを有する浄水装置である。以下このカラムをカラム(I)と呼ぶことがある。
〈カラム(I)〉
カラム(I)には活性炭を含有する吸着材が充填されている。カラム(I)は、円筒形のものが好ましい。直径は、好ましくは20〜100cm、高さは好ましくは10〜300cmである。カラム(I)の材質は、好ましくはアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ガラスまたは金属である。
【0009】
本発明において吸着材は、ポリマー(A)中に形成された複数のセルを有し、(1)セル中には活性炭が内包され、(2)ポリマー(A)中には細孔が存在し、細孔は他の細孔とポリマー中で連通し、それらの孔径が1nm〜1μmの範囲にあり、(3)セルの内壁と活性炭とは実質的に接触していないことを特徴とする。
(ポリマー(A))
本発明に用いる吸着材は、ポリマー(A)により形成される。ポリマー(A)として疎水性ポリマーおよび親水性ポリマーが挙げられる。疎水性ポリマーとして、アラミドポリマー、アクリルポリマー、ビニルアルコールポリマー、セルロースポリマーなどが挙げられる。親水性ポリマーとして、水溶性澱粉、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性酢酸セルロース、キトサンなどが挙げられる。
アラミドポリマーは、アミド結合の85モル%以上が芳香族ジアミンおよび芳香族ジカルボン酸成分よりなるポリマーが好ましい。その具体例としては、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、ポリメタフェニレンテレフタルアミド、ポリメタフェニレンイソフタルアミド、ポリパラフェニレンイソフタルアミドを挙げることができる。アクリルポリマーは、85モル%以上のアクリロニトリル成分を含むポリマーが好ましい。共重合成分として、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、メタクリ酸メチル、および硫化スチレンスルホン酸塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の成分が挙げられる。
【0010】
(細孔)
本発明に用いる吸着材は、ポリマー自体に細孔を有するポリマー(A)により形成されている。細孔は他の細孔とポリマー中で連通しており、細孔同士が連通した網目構造を形成している。細孔の孔径は1nm〜1μm、好ましくは10nm〜500nmの範囲にある。細孔は、ドープをポリマー(A)の貧溶媒である溶媒(D)を含有する凝固液中で凝固させることによりスピノーダル現象により形成される。細孔は、走査型電子顕微鏡写真、透過型電子顕微鏡写真により観察することができる。
(セル)
ポリマー(A)中には複数のセルが存在する。セル中には活性炭が内包されている。セルの形状は一定ではない。大きさは活性炭を含むことが出来る大きさである。セルの内壁と活性炭は実質的に接触していない。即ち本発明の吸着材においては、セルの内壁と活性炭との間には空間が存在し、活性炭はちょうど鈴の珠のようにセル中で内壁に固定されていない。
【0011】
(活性炭)
活性炭は、粒子状のものが好ましい。粒子の粒径は、好ましくは1nm〜500μm、より好ましくは1nm〜100μm、さらにより好ましくは1nm〜50μmである。さらに好ましくは表面が親水性処理されているものが好ましい。
(吸着材の形状)
本発明に用いる吸着材は、球状、楕円状のような塊状のもの、紐状、パイプ状、中空糸状のような繊維状のもの、また膜状のものが好ましい。繊維状のものは、直径0.1〜2mm、長さ1〜1000mm程度であることが好ましい。塊状のものは、球に換算した直径が0.1〜50mmであることが好ましい。膜状のものは厚さ0.1〜5mmであることが好ましい。
【0012】
(吸着材の製造)
本発明に用いる吸着材は、以下の方法(以下、方法1)で製造することができる。即ち、以下の条件を具備するドープおよび凝固液を用い、ドープを凝固液中で凝固させ製造することができる。
(1)ドープは、ポリマー(A)、溶媒(B)、およびポリマー(C)で被覆された活性炭を含有する。
(2)凝固液は、ポリマー(A)の貧溶媒である溶媒(D)を含有する。
(3)ポリマー(C)は、ポリマー(A)と非相溶である。
(4)溶媒(B)は、ポリマー(A)の良溶媒であり、かつ、ポリマー(C)の貧溶媒である。
【0013】
(ドープ)
ポリマー(A)、活性炭は上述の通りである。この方法では、活性炭をポリマー(C)で被覆する。ポリマー(C)は、ポリマー(A)と非相溶のポリマーである。非相溶とは、ポリマー(A)とポリマー(B)を混合した時に相分離するものを言う、より具体的には異種のポリマー分子が、分子オーダーで全く混合せず相分離しているか、相分離していても界面で互いに交じり合った状態にあるか、相分離していても互いの相の内部では異種のポリマー同士が分子オーダーで混合している状態のことを言う。ポリマー(C)として、澱粉糊などの水溶性接着剤、ポリビニルアルコール、ゼラチン、片栗粉などが挙げられる。
【0014】
ポリマー(A)が、アラミドポリマー、アクリルポリマー、ポリ乳酸などの疎水性ポリマーのとき、ポリマー(C)は、澱粉糊のような水溶性接着剤であることが好ましい。被覆は溶融したポリマー(C)中に活性炭を入れて攪拌して行なうことが出来る。被覆の厚さは、10nm〜10mmで好ましくは100nm〜1mmである。
溶媒(B)は、ポリマー(A)の良溶媒であり、且つポリマー(C)の貧溶媒である。良溶媒とは一般に言われるように、ポリマーに対し大きな溶解能を有する溶媒である。貧溶媒とは一般に言われるように、ポリマーに対し溶解能の小さい溶媒である。
たとえば、ポリマー(A)がポリメタフェニレンイソフタルアミドで、ポリマー(C)が澱粉糊の場合、溶媒(B)はN−メチル−2−ピロリドン(NMP)が好ましい。またポリマー(A)がアクリルポリマーで、ポリマー(C)が澱粉糊の場合、溶媒(B)はジメチルスルホオキサド(DMSO)が好ましい。さらにはポリマー(A)がポリ乳酸で、ポリマー(C)が澱粉糊の場合、溶媒(B)はジクロロメタン(DCM)が好ましい。
【0015】
ドープは、好ましくは100質量部のポリマー(A)に対し、100〜10,000質量部、より好ましくは1,000〜5,000質量部の溶媒(B)を含有する。活性炭は、ポリマー(A)100質量部に対し、好ましくは100〜10,000質量部、さらに好ましくは100〜1900質量部である。ポリマー(C)は、活性炭100質量部に対し、好ましくは10〜1,000質量部、さらに好ましくは10〜500質量部である。
【0016】
ドープの温度は、好ましくは5〜80℃、さらに好ましくは20〜50℃である。ドープは、溶媒(B)にポリマー(A)を混入し、充分に攪拌して溶解させた後に、ポリマー(C)で被覆した活性炭を添加しても良いし、溶媒(B)中にポリマー(A)とポリマー(C)で被覆した活性炭を同時に混入させても良い。
【0017】
(凝固液)
凝固液は、ポリマー(A)の貧溶媒である溶媒(D)を含有する。貧溶媒とは一般に言われるように、ポリマー(A)に対し溶解能を僅かしか持たない溶媒である。ポリマー(A)がポリメタフェニレンイソフタルアミドであるとき、溶媒(D)は水が好ましい。またポリマー(A)がポリ乳酸であるとき、溶媒(D)はミネラルオイルが好ましい。凝固液は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは85〜100質量%の溶媒(D)を含有する。他の成分は、N−メチル−2−ピロリドンやジメチルスルホオキサドである。
凝固液は、界面活性剤を含有していても良い。界面活性剤としてアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン界面活性剤が挙げられる。アニオン性界面活性剤として、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、炭素数12〜16の直鎖モノアルキル第4級アンモニウム塩、炭素数20〜28の分岐アルキル基を有する第4級アンモニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキル基およびアシル基が8〜18個の炭素原子を有するアルキルアミンオキシド、カルボベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン、アミドスルホベタイン等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、アルキレンオキシド、好ましくはエチレンオキシド(EO)等を挙げることができる。界面活性剤の含有量は、溶媒(D)100質量部に対し、好ましくは0.05〜30質量部、さらに好ましくは5〜10質量部である。凝固液の温度は、好ましくは10〜80℃、さらに好ましくは20〜50℃である。
この方法によれば、いわゆるスピノーダル分解によって、ポリマー(A)中に連続した孔径1nm〜1μm程度の網目構造の細孔が形成される。
【0018】
本発明で用いる吸着材を得るには特殊な装置は不要である。塊状の吸着材は、ドープを、凝固液中に添加することにより製造することができる。例えば、ドープを凝固液中にスプレー、注射器などで滴下させるだけでよい。また、繊維状の吸着材は、凝固液中にノズルで吐出して巻き取ることで製造できる。また、繊維状、紐状、パイプ状の吸着材は、空中からマイクロシリンジ等でドープを吐出しながらマイクロシリンジ等を水平に移動させて、ドープを凝固液中に投入することにより得ることもできる。また、膜状吸着材はキャリア物質上にドープを塗布し凝固液に浸漬することで製造できる。これらの場合、スプレーノズルの口径、塗布厚みなどを変えることにより、吸着材の径や厚みを任意に調整することが可能である。
【0019】
ドープを凝固液中で凝固させると、得られる吸着材中にはセルが形成され、セル中には、ポリマー(C)で被覆された活性炭が内包されている。
成形体をポリマー(C)の良溶媒である溶媒(E)で洗浄することによりセル中に活性炭が内包され、セルの内壁と活性炭が実質的に接触していない吸着材が得られる。溶媒(E)として水が挙げられる。
好ましいポリマーおよび溶媒の組み合わせとして、下記表1に示す組合せが例示できる。
【0020】
【表1】

【0021】
また活性炭が親水性処理されている場合、あるいは活性炭が、ポリマー(A)より大きく外れた疎水性または親水性を示し、活性炭とポリマー(A)とが互にはじき合う場合、吸着材は、以下の方法で製造することができる(方法2)。即ち、以下の条件を具備するドープおよび凝固液を用い、ドープを凝固液中で凝固させ製造することができる。
(1)ドープは、ポリマー(A)、ポリマー(A)の良溶媒である溶媒(B)、および活性炭を含有する。
(2)凝固液は、ポリマー(A)の貧溶媒である溶媒(D)を含有する。
(3)ドープ中の、ポリマー(A)は疎水性ポリマーである。
【0022】
ポリマー(A)、溶媒(B)、溶媒(D)については、第1の態様と同じである。
【0023】
方法2においては、ポリマー(C)を使用しない。ポリマー(A)は疎水性ポリマーであり、活性炭はポリマー(A)に比べ大きく外れた疎水性または親水性を呈するものが好ましい。親水性と疎水性の組み合わせのためポリマー(A)と活性炭は互いに、はじき合う性質を有するため、セルの内壁と活性炭が実質的に接触していない、いわゆる鈴型構造が構成される。
【0024】
疎水性ポリマーとして、ポリメタフェニレンイソフタルアミドが挙げられる。ドープは、100質量部のポリマー(A)に対し、好ましくは100〜10,000質量部、より好ましくは1,000〜5,000質量部の溶媒(B)を含有する。活性炭は、ポリマー100質量部に対し、好ましくは100〜10,000質量部、さらに好ましくは100〜1900質量部である。
凝固液は、第1の態様と同じである。
【0025】
ポリマー(A)が、ポリメタフェニレンイソフタルアミドであり、溶媒(B)がN−メチル−2−ピロリドン(NMP)であり、溶媒(D)が水であることが好ましい。ポリマー(A)がアクリルポリマーであり、溶媒(B)がジメチルスルホオキサド(DMSO)であり、溶媒(D)が水であることが好ましい。好ましいポリマーおよび溶媒の組み合わせとして、下記表2に示す組合せが例示できる。
【0026】
【表2】

【0027】
(フィルタ(I))
本発明の浄化装置は、カラム(I)の一次側に孔径10〜100μmのフィルタ(I)を有することが好ましい。フィルタ(I)は、固形物を除去するために設ける。
(フィルタ(II))
本発明の浄化装置は、カラム(I)の一次側または二次側に孔径0.5〜3μmのフィルタ(II)を有することが好ましい。フィルタ(II)は、クリプトスポリジウムを除去するために設ける。
(ポンプ)
本発明の浄水装置は、原水(一次側)にポンプを有する。本発明の浄水装置は、圧力損失が小さいのでポンプは手動ポンプでよい。状況に応じて、動力ポンプを使用してもよい。
(導管)
ポンプ、フィルタ(I)、フィルタ(II)、カラム(I)は、導管により連結される。
(好ましい態様)
本発明の浄水装置の好ましい態様として、図2に示す配置が例示できる。図2は、ポンプ(図中1)、フィルタ(I)(図中3)、フィルタ(II)(図中4)およびカラム(I)(図中5)がこの順序に配列され、互いに導管で連結されている浄水装置である。
【0028】
また本発明の浄水装置の好ましい態様として、図3に示す配置が例示できる。図3は、ポンプ(図中1)、フィルタ(I)(図中3)、カラム(I)(図中5)およびフィルタ(II)(図中4)がこの順序に配列され、互いに導管で連結されている浄水装置である。
(運転条件)
本発明の浄化装置の被処理流体として、河川水、プール水、湖沼水、雨水、緊急用貯留水等が挙げられる。
【0029】
液体と吸着材との接触は、空塔速度(SV)が1〜50hr−1程度であることが好ましい。人力での送水を考慮した場合、圧力は、1気圧から、最大3気圧程度までが好ましい。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれにより何等限定を受けるものではない。
【0031】
<参照例1>活性炭吸着材の調製
(ドープの調製)
室温で、100重量部のポリメタフェニレンイソフタルアミド(PMPIA)を1080重量部のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させて、ポリマー溶液を作成し、攪拌棒で全体を充分に攪拌してペースト状にした。このペースト状混練物を、PMPIA100質量部に対し、粉末活性炭(日本エンバイロケミカル製、製品名 白鷺C、粒径70ミクロンアンダー)が200質量部の割合になるように、ポリマー溶液に添加して、さらに攪拌棒で全体が均一に白濁するまで充分に攪拌しドープを調製した。
(凝固液の調製)
室温の水100重量部を凝固液とした。
(成形加工)
室温でドープを口金より凝固液中に吐出させ、これを巻き取ることで、径1mmの繊維状成形体を得た。
(洗浄)
得られた繊維状成形体を、2〜3mm長に切断し、水中で、80℃、4時間加温して洗浄し、図1に示す構造を有する繊維状の活性炭吸着材を得た。ポリマーaは数十〜数百nmの連通する孔を有し、活性炭cを内包している。活性炭cはポリマーaとは実質的に接触せず、ポリマーaとの間に0.5〜1μmの隙間bを有している。
【0032】
<実施例1>
参照例1で得られた活性炭吸着材を内径104mm、長さ530mmの透明カラムに充填しカラム(I)とした活性炭吸着材の充填量は700gであり、そのうち活性炭は470gであった。
フィルタ(I)として、ネットアンドサービス社製、ワインドタイプカートリッジフィルター、TPK250−50を用いた。フィルタ(II)として、ネットアンドサービス社製、セラミックフィルター、CRE−10を用いた。手動ポンプとして、まさちゃんポンプ((有)朝日工務店製))を用いた。
手動ポンプ、フィルタ(I)、フィルタ(II)およびカラム(I)を図2に示すように直径10mmのチューブで連結し、浄化装置を組み立てた。
(浄水)
大和川(大阪府)の水を採取し、ポンプで、空塔速度20/hr、線速度11m/hrで流した。浄水装置出口側の水を採取し分析した。また、大和川(大阪府)の水を採取し、ポンプで、空塔速度40/hr、線速度22m/hrで流した。浄水装置出口側の水を採取し分析した。
(分析結果)
原水、処理水の分析結果および圧力損失を表3に示す。表3から明らかなように、本発明の浄化装置によれば、圧力損失が少なく、TOC、濁度、色度を比較的容易に水質基準以下に低減でき、飲料水を製造することができる。
【0033】
【表3】

【0034】
<実施例2>
参照例1で得られた活性炭吸着材を内径30mm、長さ100mmの透明カラムに充填しカラム(I)とした活性炭吸着材の充填量は10.3gであり、そのうち活性炭は6.9gであった。
フィルタ(I)として、ネットアンドサービス社製、ワインドタイプカートリッジフィルター、TPK250−50を用いた。フィルタ(II)として、ネットアンドサービス社製、セラミックフィルター、CRE−10を用いた。ポンプとして、イワキ社製定量ポンプ、EH型を用いた。
ポンプ及びカラム(I)が異なる以外は実施例1で用いた浄化装置と同じ浄化装置を組み立てた。
(浄水)
龍満池(香川県)の水を採取し、ポンプで、空塔速度20/hr、線速度2m/hrで流した。浄水装置出口側の水を採取し分析した。
(分析結果)
原水、連続通水処理24時間時点の処理水の分析結果を表4に示す。なお、連続通水処理1時間時点の圧力損失は5kPaであった。表4から明らかなように、本発明の浄化装置によれば、圧力損失が少なく、TOC、濁度、色度を比較的容易に水質基準以下に低減でき、飲料水を製造することができる。
【0035】
【表4】

【0036】
<実施例3>
参照例1で得られた活性炭吸着材を内径30mm、長さ100mmの透明カラムに充填しカラム(I)とした活性炭吸着材の充填量は10.3gであり、そのうち活性炭は6.9gであった。
フィルタ(I)として、ネットアンドサービス社製、ワインドタイプカートリッジフィルター、TPK250−50を用いた。フィルタ(II)として、ネットアンドサービス社製、セラミックフィルター、CRE−10を用いた。ポンプとして、イワキ社製定量ポンプ、EH型を用いた。
ポンプ及びカラム(I)が異なる以外は実施例1に用いた浄化装置と同じ浄化装置を組み立てた。
(浄水)
打樋川(徳島県;生活環境の保全に関する環境基準類型Cに分類)の水を採取し、ポンプで、空塔速度20/hr、線速度2m/hrで流した。浄水装置出口側の水を採取し分析した。
(分析結果)
原水、連続通水処理24時間時点の処理水の分析結果を表5に示す。なお、連続通水処理1時間時点の圧力損失は5kPaであった。表5から明らかなように、本発明の浄化装置によれば、圧力損失が少なく、TOC、濁度、色度を比較的容易に水質基準以下に低減でき、飲料水を製造することができる。
【0037】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の浄水装置は、緊急時の浄水装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】参考例で得られた繊維状吸着材を50nmの切片にして撮影した透過型電子顕微鏡写真である。
【図2】本発明の浄水装置の一例である。
【図3】本発明の浄水装置の一例である。
【符号の説明】
【0040】
a 連通孔を有するポリマー
b 隙間
c 活性炭
1 ポンプ
2 原液
3 フィルタ(I)
4 フィルタ(II)
5 カラム(I)
6 処理水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着材を充填したカラム(I)を有する浄水装置であって、
吸着材は、ポリマー(A)中に形成された複数のセルを有し、
(1)セル中には活性炭が内包され、
(2)ポリマー(A)中には細孔が存在し、細孔は他の細孔とポリマー中で連通し、それらの孔径が1nm〜1μmの範囲にあり、
(3)セルの内壁と活性炭とは実質的に接触していない、ことを特徴とする浄水装置。
【請求項2】
吸着材は、繊維状、膜状または塊状である、請求項1記載の浄水装置。
【請求項3】
カラム(I)の一次側に孔径10〜100μmのフィルタ(I)を有する請求項1または2記載の浄水装置。
【請求項4】
カラム(I)の一次側または二次側に孔径0.5〜3μmのフィルタ(II)を有する請求項1〜3の何れか一項に記載の浄水装置。
【請求項5】
ポンプ、フィルタ(I)、フィルタ(II)およびカラム(I)がこの順序に配列され、互いに導管で連結されている請求項1〜4の何れか一項に記載の浄水装置。
【請求項6】
ポンプ、フィルタ(I)、カラム(I)およびフィルタ(II)がこの順序に配列され、互いに導管で連結されている請求項1〜4の何れか一項に記載の浄水装置。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2009−195814(P2009−195814A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39230(P2008−39230)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)経済産業省四国経済産業局、平成19年度地域新生コンソーシアム研究開発事業(分離機能性ナノ粒子の非接触複合化による機動的浄水システム開発)に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(592091596)帝人エンジニアリング株式会社 (21)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(592197108)徳島県 (30)
【Fターム(参考)】