説明

浚渫用グラブバケット

【課題】水抜き口を開閉体で確りと閉止して、水抜き口から泥土が漏れ出すのを確実に防止でき、さらに、シェルの内圧が上昇した際には、その内圧を迅速に逃がすことができる浚渫用グラブバケットを提供する。
【解決手段】バケットシェル5の上壁5aに三角形状の水抜き口15を開口する。水抜き口15を外面側から開閉する開閉体17を、水抜き口15のひとつの辺部に沿って固定して、固定端側を中心にして揺動開閉可能に支持する。開閉体17は、その閉じ状態において水抜き口15の開口周縁壁に密着するゴム蓋18と、ゴム蓋18が水抜き口15の内部に落ち込むのを阻止する規制体23とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底等に堆積した沈泥や土砂を浚渫し、あるいは掘削する際に用いる浚渫用のグラブバケットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のグラブバケットに関し、本出願人等は先に特許文献1を出願している。そこでは、左右一対のバケットシェルの上壁に水抜き口が開口してあり、その水抜き口を開閉する開閉体が設けてある。開閉体は、水抜き口の内面側に配置されて、バケットシェルの開閉に連動して水抜き口を開閉できる。バケットシェルを閉じた状態においては、水抜き口を開閉体で閉止して、シェル内の泥土が水抜き口から流出するのを防止できる。
【0003】
本発明では、開閉体をバケットシェルの外面側に配置し、さらに開閉体を弾性変形可能なゴム蓋を主体として構成するが、これらの点は特許文献2に公知である。そこでは、矩形状のゴム蓋と、ゴム蓋の周囲三辺の内外に固定されるコ字形のフレームとで開閉体を構成し、ゴム蓋の残る一辺を水抜き口の周縁部に締結固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3046423号公報(段落番号0023、図1)
【特許文献2】特許第3884008号公報(段落番号0013、図3、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2では、ゴム蓋の周囲三辺にコ字形フレームが固定してあり、ゴム蓋とフレームとが一体に揺動する。つまり、ゴム蓋の閉じ状態においては、ゴム蓋の内面側のコ字形フレームが受枠に当接するが、受枠とフレームはいずれも金属製であるためにシール性が低く、したがって、泥土の流出を確実に防止できない。ゴム蓋はバケットシェルの内外面を区画する区分壁として機能しているに過ぎない。
【0006】
また、ゴム蓋の四辺部が、コ字形のフレームと帯板状のフレームとで保形されているため、ゴム蓋は両フレームの隣接隙間部分でしか弾性変形することができない。このように、ゴム蓋の変形可能な箇所が幅狭な一部分に限られると、負荷が集中して疲労し劣化し易い。
【0007】
さらに、ゴム蓋の内外面にコ字形フレームを取り付けているため、開閉体の全体重量が大きい。またゴム蓋は、揺動基端部でしか弾性変形することができない。そのため、開閉動作が鈍重で、とくに一旦閉じ状態になった後は開き状態になり難い。したがって、シェルが所定の容量以上の泥土をすくい込んで、シェルの内圧が上昇した際に、その内圧を迅速にシェル外へ逃がすことができない。
【0008】
そのほか、特許文献2のバケットシェルでは、傾斜するシェル上壁に対して、上向きに突出する水抜き筒を形成し、その水抜き筒の先端に開閉体を取り付けている。このような水抜き筒を設けると、シェルの形状が複雑になって製作コストが嵩む。
【0009】
本発明の目的は、水抜き口を開閉体で確りと閉止して、水抜き口から泥土が漏れ出すのを確実に防止でき、さらに、シェルの内圧が上昇した際には、その内圧を迅速に逃がすことができる浚渫用グラブバケットを提供することにある。本発明の目的は、水抜き口まわりの構造を簡素化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の浚渫用グラブバケットは、図2に示すように上フレーム1と、上フレーム1で開閉ロープ2を介して吊持した下フレーム3と、下フレーム3に設けたシェル軸4で開閉自在に軸支した左右一対のバケットシェル5と、上フレーム1と左右のバケットシェル5との間に設けた左右一対のアーム6とを備え、アーム6の下端側がバケットシェル5にロッドピン12を介して連結してある。
【0011】
図1に示すように、バケットシェル5の上壁5aに三角形状の水抜き口15を開口する。水抜き口15を外面側から開閉する開閉体17を、水抜き口15のひとつの辺部に沿って固定して、固定端側を中心にして揺動開閉可能に支持する。開閉体17を、その閉じ状態において水抜き口15の開口周縁壁に密着するゴム蓋18を含んで構成する。
【0012】
開閉体17を、ゴム蓋18と、閉じ状態においてゴム蓋18が水抜き口15の内部に落ち込むのを阻止する規制体23とで構成する。
【0013】
ゴム蓋18を、水抜き口15と相似の三角形状に形成する。
【0014】
ゴム蓋18を湾曲変形可能なゴム板材で構成して、ゴム蓋18が水抜き口15から遠ざかる向きへ湾曲変形できるようにする。
【0015】
ゴム蓋18の内部に、金属からなる補強体を埋め込む。補強体としては、格子状の金網や、針金、ピアノ線、ステンレス線などの金属線を挙げることができる。
【0016】
ゴム蓋18を閉じ付勢するウエイトを、ゴム蓋18に設ける。
【0017】
規制体23を、ゴム蓋18を閉じ付勢するウエイトを兼ねて金属で形成する。
【0018】
規制体23を金属帯板で構成し、ゴム蓋18の重心位置と揺動先端との間に、開閉体17の固定辺部と平行に配置する。
【0019】
バケットシェル5は、平坦な上壁5aと、上壁5aに連続する斜壁5bとを備える。上壁5aに水抜き口15を開口し、水抜き口15の開口周縁壁の外面に、ゴム蓋18を受け止める受枠16を固定する。斜壁5bは、バケットシェル5の全閉姿勢においてロッドピン12より上側に位置して、上壁5aとの境界部から斜め下向きに傾斜する。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、水抜き口15を外面側から開閉する開閉体17を、水抜き口15の開口周縁壁に密着するゴム蓋18を含んで構成した。これによれば、ゴム蓋の内外面にコ字形フレームを固定していた従来の蓋構造に比べて、高いシール性で水抜き口15を閉止して、シェル内の泥土が流出するのを確実に防止できる。ゴム蓋18自体がシール体を兼ねるので別途シール構造を設ける必要がなく、開閉体17の周辺構造を簡素化して製造コストを削減できる。また、水抜き口15をゴム蓋18で直接的に開閉するので、ゴム蓋の内外面にコ字形フレームを固定していた従来の蓋構造に比べて、開閉体17の全体重量を軽減できる。したがって、シェルの内圧が上昇した際に、水抜き口15を迅速に開放して、内圧をシェル外へ的確に逃がすことができる。
【0021】
開閉体17をゴム蓋18と規制体23とで構成すると、例えばバケットの引き揚げ時など、開閉体17の外面に大きい水圧が作用する際に、ゴム蓋18が水抜き口15の内部に落ち込むのを規制体23で確実に阻止して、水抜き口15を確実に密閉し、泥土の流出を確実に防止できる。
【0022】
ゴム蓋18を水抜き口15と相似の三角形状に形成すると、ゴム蓋が矩形状である従来の構成に比べて、ゴム蓋の揺動先端側の面積が大幅に小さくなる。そのため、開閉体17が閉じ状態へ復帰する際に海水から受ける抵抗を従来に比べて軽減でき、以て、開閉体17を閉じ状態へ素早く復帰させることができる。また、シェルの内圧が上昇する際には、ゴム蓋18を速やかに開放することができる。
【0023】
ゴム蓋18を湾曲変形可能なゴム板材で構成して、ゴム蓋18が水抜き口15から遠ざかる向きへ湾曲変形できるようにしていると、ゴム蓋18が揺動開閉する際の負荷がゴム蓋18の一部分に集中する不都合を解消して、ゴム蓋18の耐久性を向上できる。また、ゴム蓋18の揺動先端側から順に開口周縁壁から離れていく開動作や、揺動基端側から順に開口周縁壁に密着していく閉動作が可能となる。つまり、揺動先端側での水抜き口15の部分開閉が可能となり、開閉時の応答動作を迅速化できる。
【0024】
ゴム蓋18に金属からなる補強体を埋め込むと、ゴム蓋18の湾曲変形方向における強度を補強して、ゴム蓋18が開く際に必要以上に弾性変形するのを防止でき、また、開き状態になったゴム蓋18を、水抜き口15の開口面に沿う平坦な状態へ確実に復帰させることができる。換言すれば、ゴム蓋18が経年に伴なって、外側へ反った形状になるのを防止できる。したがって、ゴム蓋18と水抜き口15の開口周縁壁とのシール性を長期にわたって維持することができ、ゴム蓋18の耐久性を向上できる。
【0025】
ゴム蓋18を閉じ付勢するウエイトを設けていると、開いたゴム蓋18を水の抵抗に抗して閉じ状態へ素早く復帰させることができる。また、バケットシェル5やその内部の泥土が揺れ動くことによりゴム蓋18が不用意に開くのを防止して、ゴム蓋18を密閉状態に保持できる。
【0026】
規制体23を、ウエイトを兼ねて金属で形成すると、両者を別体とする場合に比べて開閉体17の構造を簡素化して、開閉体17の製造に要するコストを削減できる。また、劣化した開閉体17を交換するときの交換コストを削減できる。
【0027】
規制体23を金属帯板で構成し、ゴム蓋18の重心位置と揺動先端との間に、開閉体17の固定辺部と平行に配置すると、ゴム蓋18および規制体23の重量によって開閉体17を閉じ状態に保持できるので、浮き離れ易いゴム蓋18の頂部側を規制体23の重みで閉じ状態に確りと保持しながら、ゴム蓋18が不用意に開放揺動するのを規制できる。
【0028】
バケットシェル5の平坦な上壁5aを利用して水抜き口15を開口すると、筒構造の水抜き口(特許文献2)に比べてシェル壁の構造を簡素化して、製作コストを削減できる。また、バケットシェル5の全閉姿勢において上壁5aとの境界部から斜め下向きに傾斜する斜壁5bを設けていると、バケットシェル5を引き揚げる際の海水の抵抗を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るバケットシェルの要部の平面図である。
【図2】グラブバケットの正面図である。
【図3】バケットシェルの全閉姿勢を示す縦断正面図である。
【図4】開閉体の取付構造を示す分解斜視図である。
【図5】図1のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(実施形態) 本発明に係る浚渫用グラブバケットの実施形態を、図1ないし図5を用いて説明する。図2においてグラブバケットは、上フレーム1と、上フレーム1で開閉ロープ2を介して吊持した下フレーム3と、下フレーム3に設けたシェル軸4で開閉自在に支持した左右一対のバケットシェル5と、上フレーム1と左右のバケットシェル5との間に設けた左右一対のアーム6などで構成する。なお、以下の説明においては、図1ないし図3に示す交差矢印および方向を示す文字表示に従って、前後、左右、および上下を特定する。
【0031】
開閉ロープ2は、上下フレーム1・3の対向面にそれぞれ設けたシーブ群8・9に巻き掛けられて動滑車を構成しており、その上端は図外の浚渫船あるいは台船に設置したクレーンビームを介してウインチに繋がっている。バケット全体を吊り下げ支持するメインロープ10も、同様にクレーンビームを介してウインチに繋がっている。各アーム6の上端側はピン11を介して上フレーム1に連結してあり、下端側はロッドピン12を介してバケットシェル5に連結してある。
【0032】
バケットシェル5は、図3に示す全閉姿勢において略水平になる上壁5aと、上壁5aに連続して左右方向外縁側に下り傾斜する斜壁5bと、斜壁5bに連続する略垂直な垂直壁5cと、垂直壁5cに連続して外凸状に湾曲しながら左右方向中央側に下り傾斜する底壁5dと、各壁5a〜5dの前後を塞ぐ一対の前後壁とを有し、上壁5a、底壁5dおよび前後壁の縁部が泥土のすくい込み口を構成している。バケットシェル5が全閉姿勢にあるときに左端あるいは右端となる斜壁5bと垂直壁5cとの境界部は、全閉姿勢においてロッドピン12の上方に位置する。斜壁5bは、全閉姿勢のバケットシェル5を引き揚げるときに上壁5aが押し退ける海水を左右外側方へ案内するのに役立つ。つまり、上壁5aと垂直壁5cの間に斜壁5bを設けていると、上壁5aを垂直壁5cに直接繋げる場合に比べて、バケットシェル5を引き揚げる際の海水の抵抗を軽減することができる。
【0033】
各バケットシェル5の上壁5aの、斜壁5bとの境界部寄りには、図1に示すように、2つの水抜き口15が前後に並べて開口してある。水抜き口15は、一辺が前後方向に延び、他の二辺で作る角が左右方向中央側を向く正三角形状に形成してある。上壁5aの外面側における水抜き口15の周縁部には、三角枠状の受枠16が取り付けてある。受枠16の内周形状は、水抜き口15の形状にほぼ等しい。
【0034】
水抜き口15に対しては、それを開閉するための開閉体17がそれぞれ設けられる。開閉体17は、弾性変形可能な三角板状のゴム蓋18と、ゴム蓋18の外面に固定された規制体23とで構成してある。ゴム蓋18は、硬質ゴムを素材として、受枠16の内周よりも一回り大きく、かつ、外周よりも一回り小さい、水抜き口15と相似の三角形状に形成してある。図示しないが、ゴム蓋18の内部には格子状の金網が埋め込んであり、これにて、ゴム蓋18の湾曲変形方向における強度が補強されている。
【0035】
ゴム蓋18は、水抜き口15の前後方向に延びる辺部に沿って、受枠16の外面側に固定してある。ゴム蓋18の固定辺部は、受枠16と帯状の押さえ板19とにより内外から挟持される。詳しくは、図4に示すように、受枠16の前後端部とその中間部の計3箇所からねじ軸20が突出しており、このねじ軸20にゴム蓋18と押さえ板19とを記載順に挿通させてから、ナット21をねじ込むことにより、ゴム蓋18はバケットシェル5に固定される。
【0036】
図5に実線で示すように開閉体17は、常態においては閉じ状態となり、受枠16の内周縁部の全周にわたって密着して、水抜き口15を閉止する。一方、開閉体17の内面に作用する水圧が大きくなると、図5に仮想線で示すように固定端側を中心として受枠16から離れる方向へ揺動して開き状態になり、水抜き口15を開放する。
【0037】
規制体23は、バケットシェル5を引き揚げるときなど、開閉体17の外面に大きい水圧が作用したときに、ゴム蓋18が水抜き口15の内部に落ち込むのを阻止するために設けてある。規制体23は、ゴム蓋18を閉じ付勢するウエイトを兼ねて金属帯板で構成してあり、ゴム蓋18の重心位置と揺動先端との間に、ゴム蓋18の固定辺部と平行に配置してある。規制体23の両端部は受枠16に重なっている。規制体23は、前後一対のボルト24とナット25でゴム蓋18に締結固定してある。
【0038】
次に、本実施形態に係るグラブバケットの使用方法と、その際の開閉体17の動きについて説明する。このグラブバケットは、図2に示すようにバケットシェル5を全開姿勢にした状態で、メインロープ10が繰り出されて、海底へ降ろされる。バケットシェル5の降下中に、開閉体17は、図5に示すようにシェル内の海水に押されて、固定端部を中心に受枠16から離れる方向へ揺動して、水抜き口15を開放する。水抜き口15が開放されると、各シェル内の海水が2個の水抜き口15を介してシェル外へ流出するので、バケットシェル5が海水から受ける抵抗が小さくなる。
【0039】
バケットシェル5が海底に近付いて、バケットシェル5の降下速度が小さくなると、水抜き口15から流出する海水の勢いが弱まる。そのため開閉体17は、ゴム蓋18および規制体23の重量と、ゴム蓋18の有する弾性復帰力とにより閉じ方向へ付勢されて、固定端部を中心に受枠16に近付く方向へ揺動して、閉じ状態へ復帰しようとする。やがてバケットシェル5が海底に到達して、水抜き口15から海水が流出しなくなると、ゴム蓋18が受枠16に密着して、水抜き口15が閉止される。
【0040】
海底に到達したバケットシェル5を閉じ操作して泥土をすくい込む。詳しくは、図2の状態から開閉ロープ2を巻き取って下フレーム3を引き上げると、左右のバケットシェル5はそれぞれロッドピン12を中心にしながら転回し、同時にシェル軸4を中心にして、互いに近付く方向に揺動する。バケットシェル5が全開状態から全閉状態になるまでの間に、一対のアーム6は、上端側のピン11を中心として、互いに近付く方向へ僅かに揺動する。
【0041】
バケットシェル5の接近揺動に伴なって、沈泥がシェル内部へ徐々にすくい込まれる。沈泥をすくい込む前にシェル内にある海水は、沈泥に押し出される形でシェル外へ流出する。この海水は、バケットシェル5が接近揺動を始めたばかりのときは、バケットシェル5のすくい込み口から流れ出るが、バケットシェル5が全閉姿勢に近くなると、すくい込み口からは流出できなくなるので、開閉体17を押し上げて水抜き口15からシェル外へ流れ出ようとする。そのため開閉体17は、バケットシェル5の降下中と同様に、海水に押し上げられて開き状態になって、水抜き口15を開放する。
【0042】
バケットシェル5が全閉姿勢になって、水抜き口15からの海水の流出が停止すると、開閉体17は先と同様に閉じ方向へ付勢されて、閉じ状態に復帰する。但しこの際は、バケットシェル5の上壁5aが水平であるため、上壁5aが傾斜している場合に比べて、ゴム蓋18および規制体23の重量の影響が大きくなる。そのため開閉体17は、バケットシェル5の降下停止時よりも強い付勢力で、閉じ方向へ付勢される。水抜き口15が閉止された後は、メインロープ10を巻き取って、バケットを海底から引き揚げる。
【0043】
以上のように、本実施形態では、開閉体17の閉じ状態において、ゴム蓋18が受枠16の内周縁部の全周にわたって密着するようにした。これによれば、高いシール性で水抜き口15を閉止して、シェル内の泥土が流出するのを確実に防止できる。開閉体17を、ゴム蓋18と、金属帯板からなる規制体23とで構成したので、開閉体17の全体重量を小さくできる。そのため、シェルの内圧が上昇した際に、水抜き口15を迅速に開放して、内圧をシェル外へ的確に逃がすことができる。さらに、ゴム蓋18を三角形状に形成すると、これを矩形状にする場合に比べて、閉じ状態へ復帰する際に海水から受ける抵抗が小さくなるので、開閉体17を閉じ状態へ素早く復帰させることができる。
【0044】
その他、水抜き口15およびゴム蓋18の形状は、上記実施形態で示したものに限られず、例えば、一辺の長さが他の二辺と異なる二等辺三角形などであってもよい。必要があれば、ゴム蓋18は、水抜き口15の全体を覆う台形や舌片形状であってもよく、要は、先細り形状になっていればよい。またゴム蓋18は、厚みが均一なゴム板材である必要はなく、例えば、周縁部の厚みが中央部よりも大きいゴム成形品で構成することができる。
【0045】
水抜き口15および開閉体17の個数や向きは、上記実施形態で示したものに限られない。ゴム蓋18の固定辺部は、三辺の中から状況に応じて選択することができる。規制体23は、金属以外にプラスチックなどで構成することができ、また、その形状は、T字形やY字形、あるいは山形や円弧形などであってもよく、要は、ゴム蓋18が水抜き口15の内部へ落ち込むのを規制できる構造であればよい。開閉体17を閉じ付勢するウエイトと規制体23とを別体とする場合に、ウエイトは、ゴム蓋18の外面などに設けることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 上フレーム
2 開閉ロープ
3 下フレーム
4 シェル軸
5 バケットシェル
6 アーム
12 ロッドピン
15 水抜き口
16 受枠
17 開閉体
18 ゴム蓋
23 規制体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上フレーム(1)と、上フレーム(1)で開閉ロープ(2)を介して吊持した下フレーム(3)と、下フレーム(3)に設けたシェル軸(4)で開閉自在に軸支した左右一対のバケットシェル(5)と、上フレーム(1)と左右のバケットシェル(5)との間に設けた左右一対のアーム(6)とを備え、
アーム(6)の下端側がバケットシェル(5)にロッドピン(12)を介して連結してあるグラブバケットにおいて、
バケットシェル(5)の上壁(5a)に三角形状の水抜き口(15)が開口されており、
水抜き口(15)を外面側から開閉する開閉体(17)が、水抜き口(15)のひとつの辺部に沿って固定されて、固定端側を中心にして揺動開閉可能に支持されており、
開閉体(17)が、閉じ状態において水抜き口(15)の開口周縁壁に密着するゴム蓋(18)を含んで構成してあることを特徴とする浚渫用グラブバケット。
【請求項2】
開閉体(17)が、ゴム蓋(18)と、閉じ状態においてゴム蓋(18)が水抜き口(15)の内部に落ち込むのを阻止する規制体(23)とで構成してある請求項1記載の浚渫用グラブバケット。
【請求項3】
ゴム蓋(18)が水抜き口(15)と相似の三角形状に形成されている請求項2記載の浚渫用グラブバケット。
【請求項4】
ゴム蓋(18)が、湾曲変形可能なゴム板材で構成されて、水抜き口(15)から遠ざかる向きへ湾曲変形できる請求項2または3記載の浚渫用グラブバケット。
【請求項5】
ゴム蓋(18)の内部に、金属からなる補強体が埋め込んである請求項4記載の浚渫用グラブバケット。
【請求項6】
ゴム蓋(18)を閉じ付勢するウエイトがゴム蓋(18)に設けてある請求項2から5のいずれかに記載の浚渫用グラブバケット。
【請求項7】
規制体(23)が、ゴム蓋(18)を閉じ付勢するウエイトを兼ねて金属で形成してある請求項2から5のいずれかに記載の浚渫用グラブバケット。
【請求項8】
規制体(23)が金属帯板で構成されて、ゴム蓋(18)の重心位置と揺動先端との間に、開閉体(17)の固定辺部と平行に配置されている請求項7記載の浚渫用グラブバケット。
【請求項9】
バケットシェル(5)が、平坦な上壁(5a)と、上壁(5a)に連続する斜壁(5b)とを備えており、
上壁(5a)に水抜き口(15)が開口されて、水抜き口(15)の開口周縁壁の外面に、ゴム蓋(18)を受け止める受枠(16)が固定されており、
斜壁(5b)が、バケットシェル(5)の全閉姿勢においてロッドピン(12)より上側に位置して、上壁(5a)との境界部から斜め下向きに傾斜している請求項2から8のいずれかに記載の浚渫用グラブバケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−255323(P2010−255323A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107356(P2009−107356)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(395023875)ミノツ鉄工株式会社 (6)
【Fターム(参考)】