説明

浮力型磁気方位検知素子

【課題】検出巻線の整列密巻きを維持しつつ、環状ボビンの小型化が可能な、浮力型磁気方位検知素子を提供する。
【解決手段】周方向に連続する環状の空間を持つ非磁性の環状ボビン11内に該空間のほぼ半分を占める液体15を封入し、該液体15に所要の浮力を持たせて環状磁性コア12を環状コアケース13に収納して浮かせ、前記環状ボビン11の外周と中心穴14にフレキシブルなプリント基板上に設けた導体によるパターンを巻きつけてフレキシブル励磁巻線16を構成し、該フレキシブル励磁巻線16を包み、前記環状ボビン11の径方向でかつ中心を通り交差するフレキシブルなプリント基板上に設けた導体によるパターンを巻きつけてフレキシブル検出巻線17を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地磁気を検出して方位を検出するフラックスゲート方式方位計により構成した浮力型磁気方位検知素子に関し、特に、環状ボビン内の液体上に、環状コアケースに収納した環状磁性コアが浮いている浮力型磁気方位検知素子に関する。
【背景技術】
【0002】
地磁気の東西南北を検出する様に構成したフラックスゲート方式磁気方位計の一つに、特許文献1に記載されているように、浮力型磁気方位検知素子がある。この浮力型磁気方位検知素子の従来の構成の一例を図6に示す。図6は、従来例1の浮力型磁気方位検知素子を示す図である。図6(a)は正面部分断面図、図6(b)は平面図である。図6に示す浮力型磁気方位検知素子50において、環状コアケース53に収納した環状磁性コア(以下、環状コアと称す)52を、非磁性の環状ボビン51の内部空間に、ほぼ半分を占める液体55を封入して浮かし、環状ボビン51の外周と中心穴54の間にエナメル等で絶縁された金属線を用いて四つの励磁巻線56を巻回し、さらにその上にエナメル等で絶縁された金属線を用いて互いに直交する二つの検出巻線57を巻回し形成したものである。このような構造の浮力型磁気方位検知素子50は特に動揺が激しい装置内で使用する方位検出器で用いられている。
【0003】
方位検出器は様々な装置で用いられているが、装置の小型化に対する市場要求は大きく、この要求に対応するために浮力型磁気方位検知素子についても小型化が必要となっている。浮力型磁気方位検知素子50の場合、その形状は液体55を収納した環状ボビン51の形状でほぼ決定されており、小型化のためには環状ボビン51の形状を小型化する必要がある。
【0004】
このような小型化の例として、励磁巻線をフレキシブルなプリント基板(以下、フレキシブル基板と称す)で構成した浮力型磁気方位検知素子が特許文献2に開示されている。この従来の浮力型磁気方位検知素子の構成の一例を図7に示す。図7は、従来例2の浮力型磁気方位検知素子を示す図である。図7(a)は正面部分断面図、図7(b)は平面図である。
【0005】
図7(a)に示す浮力型磁気方位検知素子70において、環状ボビン71の構造および形状は、環状の内部空洞を持つ非磁性の環状ボビン71内にその空間のほぼ半分を占める液体75を封入し、液体75の液面に所要の浮力を持たせて環状コア72を環状コアケース73に収納して浮かせている。環状ボビン71の外周と中心穴74の間に、導体パターンを具備したフレキシブル基板79を巻きつけて結線することにより四つのフレキシブル励磁巻線76とし、更に、そのフレキシブル励磁巻線76を包み、環状ボビン71の径方向にエナメル等で絶縁された金属線を用いて互いに直交する二つの検出巻線77を環状ボビン71の中心を通り、交差させて巻回している。
【0006】
フレキシブル基板79は環状ボビン71上の互いに対向する位置に1対を巻きつけ、それと直交する位置にもう1対を巻きつけ、その合計4個を結線することにより環状ボビン71に施すフレキシブル励磁巻線76としている。フレキシブル基板79は、フレキシブル基板接続端子部80、フレキシブル基板接続部81、フレキシブル基板導体パターン部82からなり、フレキシブル基板接続端子部80およびフレキシブル基板接続部81はフレキシブル基板導体パターン部82を環状ボビン71に巻きつけた後、接続部78の接続板83上で接続ピン84によりフレキシブル基板導体パターン部82がコイルを構成するように接続され、そのコイルの終端はリード線用接続ピン87によりリード線86に接続される。(図7(a)では、接続部の1つを示す)
【0007】
外部より入力する励磁用信号線85の片側は、1つのフレキシブル基板79のリード線用接続ピン87に接続され、リード線86により4つのフレキシブル基板79からなるコイルを直列に接続するようリード線86で各フレキシブル基板79の入出力ピン間の接続を行い、励磁用信号線85から励磁電流を入力し励磁を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−219791号公報
【特許文献2】特開2008−39409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来は環状ボビンの検出巻線はエナメル等で絶縁された金属線を巻線機で巻かれていた。この場合、環状ボビンの小型化を行うと、検出巻線を巻くための巻幅も必然的に狭くなり、検出巻線となる金属線にも制約が生じ、検出巻線の巻き状態が整列密巻きを維持し巻くことが困難になってしまっていた。従来技術では、巻数を維持するには金属線の太さを細くするか巻の層数を増やすことで対応できるが、検出巻線の巻き状態が整列密巻きを維持することは困難になる制約があった。
【0010】
また、従来は環状ボビンの励磁巻線はエナメル等で絶縁された金属線を巻線機で巻かれていた。その後、フレキシブル基板により構成されたフレキシブル励磁巻線により、環状ボビンの小型化を行っていたが、フレキシブル励磁巻線を接続するための接続部が、環状ボビンと別に設けられていたために、環状ボビン自体は小型化できたが、全体としては十分な小型化を行うことができなかった。
【0011】
本発明の課題は、検出巻線の整列密巻きを維持しつつ、環状ボビンの小型化が可能な、浮力型磁気方位検知素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、環状の空間を持つ非磁性の環状ボビン内に該空間のほぼ半分を占める液体を封入し、該液面に所要の浮力を持たせて環状コアを環状コアケースに収納して浮かせ、前記環状ボビンの外周と前記環状ボビンの中心穴にフレキシブルなプリント基板上に設けた導体によるフレキシブル励磁巻線を巻回し、更に、該フレキシブル励磁巻線を包み、環状ボビンの径方向に直交する二つのフレキシブルなプリント基板上に設けた導体によるフレキシブル検出巻線を環状ボビンの中心を通り、交差させて巻回して浮力型磁気方位検知素子を構成したものである。
【0013】
すなわち、本発明によれば、周方向に連続する環状の空間を持つ非磁性の環状ボビン内に該空間のほぼ半分を占める液体を封入し該液体に所要の浮力を持たせて環状磁性コアを環状コアケースに収納して浮かせ、前記環状ボビンの外周と中心穴にフレキシブルなプリント基板上に設けた導体によるパターンを巻きつけてフレキシブル励磁巻線を構成し、該フレキシブル励磁巻線を包み、前記環状ボビンの径方向でかつ中心を通り交差するフレキシブルなプリント基板上に設けた導体によるパターンを巻きつけてフレキシブル検出巻線を構成したことを特徴とする浮力型磁気方位検知素子が得られる。
【0014】
すなわち、本発明によれば、前記フレキシブル励磁巻線と前記フレキシブル検出巻線の端部を接続してコイルを構成するための接続部を環状ボビンの片面に沿って設けられていることを特徴とする浮力型磁気方位検知素子が得られる。
【0015】
すなわち、本発明によれば、前記フレキシブル励磁巻線が、1つのプリント基板で構成されたことを特徴とする浮力型磁気方位検知素子が得られる。
【0016】
すなわち、本発明によれば、前記フレキシブル検出巻線が、1つのプリント基板で構成されたことを特徴とする浮力型磁気方位検知素子が得られる。
【0017】
励磁巻線と検出巻線の両方を、フレキシブル基板により構成したが、浮力型磁気方位検知素子の装置への装着構成により、どちらか片方のみフレキシブル基板による巻線構成としても良い。
【0018】
励磁巻線と検出巻線の接続部は、浮力型磁気方位検知素子の装置への装着構成により、環状ボビン片面の同一面に設けても、別々に設ける構成としても良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、フレキシブルなプリント基板上を用いることで、励磁巻線と検出巻線の巻き状態が整列密巻きを維持し、環状ボビンのさらなる小型化が可能となった。
【0020】
また、フレキシブル基板による励磁巻線と検出巻線の巻線パターンの接続部を環状ボビンの片面に沿って配置することによりさらなる小型化が可能となった。
【0021】
以上のように、本発明によれば、検出巻線としてのフレキシブルなプリント基板の厚みと所要の巻数を構成する導体パターンの幅寸法のみを考慮して設計すればよいので、環状ボビンの小型化が容易となり、励磁巻線と検出巻線の接続部を環状ボビンの片面に沿って配置し、検出巻線の整列密巻きを維持しつつ、環状ボビンの小型化が可能な、浮力型磁気方位検知素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による浮力型磁気方位検知素子を示す図である。図1(a)は正面部分断面図、図1(b)は底面図である。
【図2】本発明によるフレキシブル励磁巻線のフレキシブル基板および接続板の詳細構造を示す図であり、図2(a)は励磁用フレキシブル基板の正面図、図2(b)はその側面図、図2(c)は励磁用フレキシブル基板導体パターン部のC部拡大平面図、図2(d)は励磁用フレキシブル基板接続部のD部拡大平面図、図2(e)は励磁用フレキシブル基板導体パターン部のE部拡大断面図、図2(f)は励磁用フレキシブル基板接続部のF部拡大断面図、図2(g)は励磁用フレキシブル基板接続端子部と励磁用接続板のG部拡大断面図である。
【図3】本発明による励磁用フレキシブル基板を模式的に示す図である。
【図4】本発明によるフレキシブル検出巻線のフレキシブル基板および接続板の詳細構造を示す図であり、図4(a)は検出用フレキシブル基板の正面図、図4(b)はその側面図、図4(c)は検出用フレキシブル基板導体パターン部のC部拡大平面図(一部省略して記載)、図4(d)は検出用フレキシブル基板接続部のD部拡大平面図、図4(e)は検出用フレキシブル基板導体パターン部のE部拡大断面図、図4(f)は検出用フレキシブル基板接続部のF部拡大断面図、図4(g)は検出用フレキシブル基板接続端子部のG部拡大断面図、図4(h)検出用接続部のH部拡大断面図である。
【図5】本発明による検出用フレキシブル基板を模式的に示す図である。
【図6】従来例1の浮力型磁気方位検知素子を示す図である。図6(a)は正面部分断面図、図6(b)は平面図である。
【図7】従来例2の浮力型磁気方位検知素子を示す図である。図7(a)は正面部分断面図、図7(b)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態を以下に図面に基づき説明する。
【0024】
図1は本発明による浮力型磁気方位検知素子を示す図である。図1(a)は正面部分断面図、図1(b)は底面図である。図1において、浮力型磁気方位検知素子10における環状ボビン11の構造および形状は図6(a)、図7(a)に示した従来の浮力型磁気方位検知素子と同様であり、環状の空間を持つ非磁性の環状ボビン11内にその空間のほぼ半分を占める液体15を封入し、液体15の液面に所要の浮力を持たせて環状コア12を環状コアケース13に収納して浮かせている。
【0025】
ここで、本実施の形態では環状ボビン11の外周と中心穴14の間に、導体パターンを具備した励磁用フレキシブル基板を巻きつけて結線することによりフレキシブル検出巻線16を構成する。更に、環状ボビン11の径方向に導体パターンを具備した検出用フレキシブル基板を用いて環状ボビン11の中心を通り、互いに直交するように交差させて巻回してフレキシブル検出巻線17を構成する。
【0026】
細長い板状で両端を太くして、矩形状部を設けた励磁用フレキシブル基板は励磁用フレキシブル基板接続端子部、励磁用フレキシブル基板接続部、励磁用フレキシブル基板導体パターン部からなり、励磁用フレキシブル基板接続端子部および励磁用フレキシブル基板接続部は励磁用フレキシブル基板導体パターン部を環状ボビン11の外周と中心穴14の間に巻きつけた後、励磁用フレキシブル基板接続端子部と励磁用フレキシブル基板接続部を接続することにより励磁用フレキシブル基板導体パターン部がコイルを構成するように接続され、そのコイルの終端は励磁用接続ピンにより励磁用接続板に接続され、励磁用接続部20は前記環状ボビン11の底面に沿って設置され、また励磁用接続板にフレキシブル励磁巻線16の励磁用出力ピンが設けられている。
【0027】
細長い板状の検出用フレキシブル基板は検出用フレキシブル基板接続端子部、検出用フレキシブル基板接続部、検出用フレキシブル基板導体パターン部、検出用接続フレキシブル基板からなり、2つの検出用フレキシブル基板接続端子部および検出用フレキシブル基板接続部は検出用フレキシブル基板導体パターン部を環状ボビン11の径方向に直交するように巻きつけた後、検出用フレキシブル基板接続端子部と検出用フレキシブル基板接続部を検出用接続ピンで接続することにより検出用フレキシブル基板導体パターン部がコイルを構成するように接続され、検出用接続フレキシブル基板により1つの検出用フレキシブル基板と構成される。そのコイルの終端の検出用接続部30は、前記環状ボビン11の底面に沿って設置され、検出用接続板とフレキシブル検出巻線17の検出用出力ピンが設けられている。
【0028】
図1(b)に示すように、検出用フレキシブル基板は、環状ボビン11の径方向に直交するように巻きつけ、外部に出力する1つの検出用接続部30に統合され、検出用出力ピンに接続され、外部に検出信号を出力するように構成した。これにより、従来、エナメル等で絶縁された金属線を用いて互いに直交する二つの検出巻線を巻回したと同様のフレキシブル検出巻線17を、一つの検出用フレキシブル基板で構成させている。
【0029】
図2は本発明によるフレキシブル励磁巻線のフレキシブル基板および接続板の詳細構造を示す図であり、図2(a)は励磁用フレキシブル基板の正面図、図2(b)はその側面図、図2(c)は励磁用フレキシブル基板導体パターン部のC部拡大平面図、図2(d)は励磁用フレキシブル基板接続部のD部拡大平面図、図2(e)は励磁用フレキシブル基板導体パターン部のE部拡大断面図、図2(f)は励磁用フレキシブル基板接続部のF部拡大断面図、図2(g)は励磁用フレキシブル基板接続端子部と励磁用接続板のG部拡大断面図である。
【0030】
図2に示すように、本実施の形態においては、フレキシブル励磁巻線16の板状で両端を太くした励磁用フレキシブル基板21の厚さは0.2mm、励磁用フレキシブル基板接続端子部22の形状は幅4.5mm、長さ20mm、励磁用フレキシブル基板接続部23の形状は幅4.5mm、長さ18mm、励磁用フレキシブル基板導体パターン部24の形状は幅2.8mm、長さ52mmである。また、フレキシブル励磁巻線16の励磁用フレキシブル基板21は厚さ100μmのポリエステルやポリイミドフイルム等の絶縁性樹脂41の片面に導体として50μmの銅箔42を設置したものを材料とし(図2(e))、その銅箔42をエッチング法などでパターン化して形成したものである。励磁用フレキシブル基板導体パターン部24に形成されたコイル線および線間隔は、ともに0.1mmであり、そのコイル線パターンは絶縁性樹脂41の表裏面に形成されている。ここでは1つの励磁巻線フレキシブル基板21での巻数を26回とするため、1面13本のコイル線パターンが形成されている。コイル線パターンの両側部には0.1mmの導体のない縁部を設けている。
【0031】
励磁用フレキシブル基板接続端子部22および励磁用フレキシブル基板接続部23では各コイル線パターンを接続してコイルを構成するためのスルーホール43およびスルーホール44がそれぞれ形成されている。図2(g)に示すように、励磁用フレキシブル基板接続端子部22の裏面には厚さ1mmのエポキシ樹脂からなる励磁用接続板25が強度を補うために一体化されており、スルーホール44にはリード線と接続するための励磁用出力ピン27と励磁用フレキシブル接続部23のコイル線と接続するための励磁用接続ピン26が挿入されている。本実施の形態においては、励磁用出力ピン27はφ0.5mmの金属線を圧入して形成したものであり、励磁用接続ピン26はφ0.2mmの金属線を圧入して形成したものである。また励磁用フレキシブル基板接続部23のスルーホール43およびスルーホール44には励磁用接続ピン26と励磁用出力接続ピン27のロウ付け用の座45が形成されている。
【0032】
図3は本発明による励磁用フレキシブル基板を模式的に示す図である。図3において、フレキシブル励磁巻線16の励磁用フレキシブル基板導体パターン部24および励磁用フレキシブル基板接続端子部22と励磁用フレキシブル基板接続部23に形成されたコイル線パターンおよびスルーホール43およびスルーホール44の配線パターンを模式的に示す。励磁用スルーホールの番号a2からa7は励磁用フレキシブル基板接続端子部22の各スルーホールの番号を表し、励磁用スルーホールの番号b1からb6は励磁用フレキシブル基板接続部23の各スルーホールの番号を表す。
【0033】
環状ボビン11に励磁用フレキシブル基板導体パターン部24が巻回され折り返されて、励磁用フレキシブル基板接続端子部22と励磁用フレキシブル基板接続部23が励磁用接続ピン26により接続される場合、図3において、各励磁用のスルーホールは、励磁用のスルーホールの番号b1とa2、b2とa3、b3とa4、b4とa5、b5とa6、b6とa7、がそれぞれ励磁用接続ピン26で結合される。この結果、配線の接続は、a1→b1→a2→b2→a3→b3→a4→b4→a5→b5→a6→b6→a7→a8のように結線され、6回巻きのコイルが形成される。
【0034】
図3は、配線の説明のために示したものであるが、本実施の形態においては、同様な接続により表のパターンで13回巻き、裏のパターンで13回巻き、合計26回巻きのコイルが形成される。なお、表と裏のパターンに対応するスルーホールは分離して設けられ、表側の巻き終わりと裏側の巻き始めの配線が接続されるよう形成されている。同様にして、4つの励磁用フレキシブル基板21により、フレキシブル励磁巻線16を構成する。
【0035】
本実施の形態では、4つの励磁用フレキシブル基板21でフレキシブル励磁巻線16を構成したが、例えば環状に作成された励磁用接続フレキシブル基板等により4つの励磁用フレキシブル基板21を1つのプリント基板として接続して構成することも可能である。それにより、1つのプリント基板によりフレキシブル励磁巻線16を構成することが可能になる。
【0036】
図4は本発明によるフレキシブル検出巻線のフレキシブル基板および接続板の詳細構造を示す図であり、図4(a)は検出用フレキシブル基板の正面図、図4(b)はその側面図、図4(c)は検出用フレキシブル基板導体パターン部のC部拡大平面図(一部省略して記載)、図4(d)は検出用フレキシブル基板接続部のD部拡大平面図、図4(e)は検出用フレキシブル基板導体パターン部のE部拡大断面図、図4(f)は検出用フレキシブル基板接続部のF部拡大断面図、図4(g)は検出用フレキシブル基板接続端子部のG部拡大断面図、図4(h)検出用接続部のH部拡大断面図である。
【0037】
図4に示すように、本実施の形態においては、検出巻線となる板状の検出用フレキシブル基板31の厚さは0.2mm、検出用フレキシブル基板接続端子部32の形状は幅4.6mm、長さ15mm、検出用フレキシブル基板接続部33の形状は幅4.6mm、長さ105mm、検出用フレキシブル基板導体パターン部34の形状は幅4.6mm、長さ15mm、検出用接続フレキシブル基板38の形状はφ15mm、検出用接続部30の形状は幅4.0mm、長さ20mmである。また、検出用フレキシブル基板31は厚さ100μmのポリエステルやポリイミドフイルム等の絶縁性樹脂41の片面に導体として50μmの銅箔42を設置したものを材料とし(図4(e))、その銅箔42をエッチング法などでパターン化して形成したものである。検出用フレキシブル基板導体パターン部34に形成されたコイル線の幅は0.1mm、線間隔は50μmであり、そのコイル線パターンは絶縁性樹脂41の表面に形成されている。ここでは1つの検出用フレキシブル基板31での巻数を30回とするため、1面30本のコイル線パターンが形成されている。コイル線パターンの両側部には50μmの導体のない縁部を設けている(図4(c))。
【0038】
検出用接続フレキシブル基板38は、φ15mmの環状部に、2つの細長い板状の検出用フレキシブル基板31と、板状で片端を太くし矩形状部を設けた検出接続部30を、それぞれ接続し、1つのプリント基板を構成している。検出用接続フレキシブル基板38は、環状ボビン11の底面に配設され、2つの検出用フレキシブル基板31がそれぞれフレキシブル検出巻線17を構成する。検出用接続フレキシブル基板38の構成とすることより、1つのプリント基板によりフレキシブル検出巻線17を構成することが可能になる。
【0039】
検出用フレキシブル基板接続端子部32および検出用フレキシブル基板接続部33では各コイル線パターンを接続してコイルを構成するためのスルーホール43およびスルーホール44がそれぞれ形成されている。図4(g)、図4(h)に示すように、検出用接続部30は検出用接続板35とつながっており、検出用接続板35には外部との接続用の検出用出力ピン37が挿入されている。一方検出用フレキシブル基板接続端子部32にはフレキシブル基板接続端子部32のコイル線と接続するための検出用接続ピン36が挿入されている。本実施の形態においては、検出用出力ピン37はφ0.5mmの金属線を圧入して形成したものであり、検出用接続ピン36はφ0.2mmの金属線を圧入して形成したものである。また検出用フレキシブル基板接続部33の検出用スルーホール43およびスルーホール44には検出用接続ピン36と検出用出力ピン37のロウ付け用の座45が形成されている。
【0040】
図5は本発明による検出用フレキシブル基板を模式的に示す図である。図5において、フレキシブル検出巻線17の検出用フレキシブル基板導体パターン部34および検出用フレキシブル基板接続端子部32、検出用フレキシブル基板接続部33に形成されたコイル線パターンおよびスルーホール43およびスルーホール44の配線パターンを模式的に示す。検出用スルーホールの番号a2からa11は検出用フレキシブル基板接続端子部32の各スルーホールの番号を表し、検出用スルーホールの番号b1からb10は検出用フレキシブル基板接続部33の各スルーホールの番号を表す。
【0041】
環状ボビン11に検出用フレキシブル基板導体パターン部34が巻回され折り返されて、検出用フレキシブル基板接続端子部32と検出用フレキシブル基板接続部33が検出用接続ピン36により接続される場合、図5において、各検出用のスルーホールは、検出用のスルーホールの番号d1とc2、d2とc3、d3とc4、d4とc5、d5とc6、d6とc7、d7とc8、d9とc10、d10とc11がそれぞれ検出用接続ピン36で結合される。この結果、配線の接続は、c1→d1→c2→d2→c3→d3→c4→d4→c5→d5→c6→d6→c7→d7→c8→d8→c9→d9→c10→d10→c11のように結線され、10回巻きのコイルが形成される。
【0042】
上記は配線の説明のために示したものであるが、本実施の形態においては、同様な接続によりパターンで30回巻きのコイルが形成される。このような検出用接続フレキシブル基板38を用いる構成により、フレキシブル検出巻線17が1つのフレキシブル基板により構成される。
【0043】
なお、本実施の形態での環状ボビン11の高さは30mm、環状ボビン11の外径は30mm、環状ボビン11の内径は5.5mmであり、小型の浮力型磁気方位検知素子10を構成している。また、フレキシブル励磁巻線16とフレキシブル検出巻線17の接続部が環状ボビン11の底面に配置されているので、さらなる小型化が可能となる。
【0044】
本発明の実施するための形態として、説明しやすいように、浮力型磁気方位検知素子10のフレキシブル励磁巻線16として、4つの励磁用フレキシブル基板21を用いて構成し説明したが、フレキシブル検出巻線17が1つの検出用フレキシブル基板31により構成されているように、励磁用フレキシブル基板21の構造を検出用フレキシブル基板31のように構成させて、1つの励磁用フレキシブル基板により構成することも当然可能である。
【0045】
以上述べたように、本発明により、検出巻線の整列密巻きを維持しつつ、環状ボビンの小型化が可能な、浮力型磁気方位検知素子が得られる。
【0046】
なお、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、環状ボビンの形状や構造、フレキシブル基板の構成、形状、材質および形成されたコイルパターンの形状などは目的とする浮力型磁気方位検知素子の特性、形状などに合わせて設計することができる。
【0047】
以上、この発明の実施の形態を説明したが、この発明は、これらの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば、当然なしえるであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれる。
【0048】
本発明は、地磁気変化を検出データとして用いる高精度なGPS装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 浮力型磁気方位検知素子
11 環状ボビン
12 環状コア
13 環状コアケース
14 中心穴
15 液体
16 フレキシブル励磁巻線
17 フレキシブル検出巻線
20 励磁用接続部
21 励磁用フレキシブル基板
22 励磁用フレキシブル基板接続端子部
23 励磁用フレキシブル基板接続部
24 励磁用フレキシブル基板導体パターン部
25 励磁用接続板
26 励磁用接続ピン
27 励磁用出力ピン
a1、a2、a3、a4、a5、a6、a7、a8、b1、b2、b3、b4、b5、b6 励磁用スルーホールの番号
30 検出用接続部
31 検出用フレキシブル基板
32 検出用フレキシブル基板接続端子部
33 検出用フレキシブル基板接続部
34 検出用フレキシブル基板導体パターン部
35 検出用接続板
36 検出用接続ピン
37 検出用出力ピン
c1、c2、c3、c4、c5、c6、c7、c8、c9、c10、c11、d1、d2、d3、d4、d5、d6、d7、d8、d9、d10 検出用スルーホールの番号
38 検出用接続フレキシブル基板
41 絶縁性樹脂
42 銅箔
43、44 スルーホール
45 ロウ付け用の座
50 浮力型磁気方位検知素子
51 環状ボビン
52 環状コア
53 環状コアケース
54 中心穴
55 液体
56 励磁巻線
57 検出巻線
70 浮力型磁気方位検知素子
71 環状ボビン
72 環状コア
73 環状コアケース
74 中心穴
75 液体
76 フレキシブル励磁巻線
77 検出巻線
78 接続部
79 フレキシブル基板
80 フレキシブル基板接続端子部
81 フレキシブル基板接続部
82 フレキシブル基板導体パターン部
83 接続板
84 接続ピン
85 励振用信号線
86 リード線
87 リード線用接続ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に連続する環状の空間を持つ非磁性の環状ボビン内に該空間のほぼ半分を占める液体を封入し該液体に所要の浮力を持たせて環状磁性コアを環状コアケースに収納して浮かせ、前記環状ボビンの外周と中心穴にフレキシブルなプリント基板上に設けた導体によるパターンを巻きつけてフレキシブル励磁巻線を構成し、該フレキシブル励磁巻線を包み、前記環状ボビンの径方向でかつ中心を通り交差するフレキシブルなプリント基板上に設けた導体によるパターンを巻きつけてフレキシブル検出巻線を構成したことを特徴とする浮力型磁気方位検知素子。
【請求項2】
前記フレキシブル励磁巻線と前記フレキシブル検出巻線の端部を接続してコイルを構成するための接続部を環状ボビンの片面に沿って設けられていることを特徴とする請求項1記載の浮力型磁気方位検知素子。
【請求項3】
前記フレキシブル励磁巻線が、1つのプリント基板で構成されたことを特徴とする請求項1または2記載の浮力型磁気方位検知素子。
【請求項4】
前記フレキシブル検出巻線が、1つのプリント基板で構成されたことを特徴とする請求項1または2記載の浮力型磁気方位検知素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−271202(P2010−271202A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123667(P2009−123667)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)