説明

浮遊基板回路及びそれを利用する核磁気共鳴プローブ

【課題】設計サイクルが短くてすみ、再現性が高く、低価格かつ修理が容易な、高性能な核磁気共鳴(NMR)プローブ回路アセンブリを提供する。
【解決手段】NMRプローブ回路アセンブリは、高周波(RF)エネルギーを対象となる試料に送出しかつ/又は対象となる試料から受け取るように構成された1つ又は複数のそれぞれのサンプルコイルと信号通信する、1つ又は複数のプローブ回路を有する。プローブ回路のうちの1つ又は複数は、可変コンデンサーが、接地面から空隙によって分離される共通の誘電体基板を共有する、浮遊基板構成を有する。各可変コンデンサーは、使用者が作動する調整機構によって移動可能な電極を有する。プローブ回路のうちの1つ又は複数は、多重共鳴構成又は広帯域構成を有することができ、1つ又は複数の個々のチャネルを有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には核磁気共鳴(NMR)プローブ及びNMRプローブで利用される回路部、特にインピーダンス整合及び周波数同調に利用される回路部に関する。
【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴(NMR)分光計では、試料が、(通常、超伝導)磁石のボアに位置するNMRプローブに配置され、磁石によって生成される高強度(通常、数テスラの)静磁場B0に浸される。磁石ボアにおいて、試料は、1つ又は複数のサンプルコイルによって包囲される。これらのコイルは、高周波(RF)帯域(例えば40MHz〜900MHz)で発振するパルス磁場B1(通常、B0磁場に対して直交する)を、試料に印加する。コイルは、試料の1つ又は複数の所望のタイプのNMR活性核を共鳴励起するように同調される。共鳴状態は、印可されるRFエネルギーの周波数が照射されているNMR活性核の共鳴(又はラーモア(Larmor))周波数ν0に等しい場合に実現され、共鳴周波数は、核のタイプ及びB0磁場の強度によって決まる。共鳴時、B1磁場は、電磁エネルギーを核に効率的に伝達し、エネルギー状態を変化させる。パルス間の遅延間隔の間、核は、この摂動(perturbation)の結果として、自由誘導減衰(FID)として知られるRF時間領域信号を放出する。FIDは、その間隔において、励起された核が緩和してその平衡状態に戻る際に減衰する。FIDは、コイル(励起に利用されたものと同じコイル又は異なるコイル)によってNMR応答信号として捕捉される。NMR分光計の電子回路は、NMR応答信号をフーリエ変換によって時間領域から周波数領域に変換することを含めて、該信号を増幅し処理して、周波数領域においてNMRスペクトルをもたらす。スペクトルは、1つ又は複数のピークからなり、ピークの強度は、検出された各周波数成分の比率を表す。したがって、NMRスペクトルは、対象となる化学種、生化学種及び生物種における分子の構造、位置及び存在量を示す有用な情報を提供することができる。
【0003】
NMRプローブは、コイル(複数の場合もあり)及びNMRプローブ回路を有している。NMRプローブ回路は、コイル(複数の場合もあり)とNMR分光計の関連する電子回路(例えば、RF送受信回路部)との間のRF通信を提供する。NMRプローブ回路を、各々が、種々のタイプの核を共鳴励起するように構成された、2つ以上のプローブチャネルを提供するように構成することができる。一般に、NMRプローブ回路は、1つ又は複数の共振周波数でサンプルコイルをインピーダンス整合し、これらの周波数に近い(前後の)狭帯域での同調を提供し、種々のプローブチャネルを互いに隔離する役割を果たす。NMRプローブは、通常、試料の周囲で同軸状に入れ子になっている2つのサンプルコイルを有する。1つの一般的な構成では、各サンプルコイルは二重共鳴し、その結果、プローブに合計4つの共鳴(チャネル)がもたらされるが、他の構成では、それより多いか又は少ないチャネルが可能である。上述したように、各共鳴は、試料に含まれる対象となる核のラーモア周波数に対応する。しかしながら、チャネルのうちの1つを、B0磁場のドリフトを相殺するために利用される基準信号を生成するために「ロック溶媒」の重水素(2H又は「D」)種を照射するように同調させることができる(重水素フィールド周波数ロック又は重水素ロック)。試料溶媒の誘電性、温度等の環境変数が、プローブの同調に影響を与える可能性がある。磁場強度もまた、磁石毎にわずかに変化し、それにより、同じ核が各磁石においてわずかに異なる周波数で共鳴する。これらの理由により、プローブ回路は、NMR実験を行う直前にサンプルコイルの共振周波数を調整する(同調させる)何らかの手段を提供しなければならない。この同調は、通常、可変コンデンサーによって達成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のNMRプローブ回路では、個々の回路コンポーネントは、一緒に直接はんだ付けされ、したがって、3次元自由形状構成で配置される。自由形状構成は、概して、高電圧を扱う能力を維持しながらインダクタンス、浮遊容量及び寄生損失を最小限にするため、有利であると考えられてきた。したがって、こうした構成によって高性能をもたらすことができるが、それは、長い設計サイクル(例えばプロトタイピングによる)、低い再現性、及び高価かつ時間のかかる修理を犠牲にしている。加えて、高密度の回路間の結合により、付加的な性能問題及び設計問題がもたらされる可能性がある。これらの回路を、適切に動作するように注意深く同調させ調整しなければならない。
【0005】
いくつかのNMR分光計では、プローブの構成要素(サンプルコイル、回路コンポーネント及び/又はプリアンプ等)は、液体窒素又は液体/気体ヘリウム等の極低温流体(cryogenic fluid)を収容する熱交換器への熱伝導を介して極低温で(通常20Kまで)冷却される。一方、NMR試料は、室温又は他の非極低温で保持される場合がある。極低温プローブは、サンプルコイルの電気抵抗を低下させることによって熱雑音を低減し、したがって高いQ値で動作することができる。従来の自由形式アーキテクチャを有するNMRプローブ回路は、通常チップコンデンサーを採用し、それらは、極低温で構造破損(したがって動作故障)し易い。
【0006】
上記を鑑みて、上述した問題に対処するNMRプローブ回路が目下必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した問題に全体として若しくは部分的に、かつ/又は当業者が確認した可能性のある他の問題に対処するために、本開示は、後述する実施態様において例として説明する方法、プロセス、システム、装置、機器及び/又はデバイスを提供する。
【0008】
1つの実施態様によれば、核磁気共鳴(NMR)プローブ回路アセンブリであって、接地面と、接地面から空隙によって分離された誘電体基板と、誘電体基板の空隙とは反対側の面に配置される複数の導電性トレースと、可変コンデンサーと、コンデンサー調整機構とを備える。導電性トレースは静止コンデンサー電極を備える。可動コンデンサー電極が接地面と誘電体基板との間に挿入され、該可動コンデンサー電極は、該接地面及び該誘電体基板と移動可能に接触し、静止コンデンサー電極と可変のオーバーラップ関係で移動可能である。可動コンデンサー電極、誘電体基板及び静止コンデンサー電極は、NMRプローブ回路アセンブリを共鳴周波数に同調させるように構成することができる第2の可変コンデンサーを形成する。コンデンサー調整機構は、作動に応じて、可動コンデンサー電極を静止コンデンサー電極に対して移動させるように構成される。
【0009】
いくつかの実施態様では、可変コンデンサーを、例えばプロトン又は19F核等の単一の高周波数核の共鳴周波数に同調可能とすることができる。他の実施態様では、可変コンデンサーを、プロトンの共鳴周波数及び19F核の共鳴周波数を含む周波数帯域にわたって同調可能とすることができる。
【0010】
他の実施態様では、可変コンデンサーを、例えば13C核、15N核又は31P核等、少なくとも2つの異なる低周波数核のそれぞれの共鳴周波数を含む周波数帯域にわたって同調可能とすることができる。
【0011】
いくつかの実施態様では、コンデンサー調整機構は、リニアガイドと、リニアガイドにおいて移動可能でありかつ対応する可動コンデンサー電極と連通するキャリッジと、使用者が作動させる回転可能要素とを有することができる。回転可能要素を、キャリッジ及び/又はリニアガイドに結合することができ、それにより回転可能要素の回転によって、キャリッジの移動、したがって可動コンデンサー電極の移動がもたらされる。いくつかの実施態様では、リニアガイド及びキャリッジは、接地面と誘電体基板との間に挿入される。いくつかの実施形態では、リニアガイドは接地面に取り付けられる。
【0012】
いくつかの実施態様では、NMRプローブ回路アセンブリは、接地面から電磁的に分離して取り付けられかつRF伝送ラインに結合するように構成された高周波(RF)ポートを有する。RFポートは、接地面の穴を通り、空隙を通り、RFポートが導電性トレースのうちの1つと容量結合される位置において誘電体基板と接触するまで延在することができる。
【0013】
いくつかの実施態様では、導電性トレースは誘電体基板に取り付けられる。
【0014】
いくつかの実施態様では、NMRプローブ回路アセンブリは、誘電体基板上に配置された回路基板を有する。導電性トレースを、回路基板にかつ誘電体基板と接触するように取り付けることができる。いくつかの実施態様では、NMRプローブ回路アセンブリは、回路基板の導電性トレースとは反対の面に取り付けられかつ導電性トレースのうちの少なくとも2つと通信するインダクターを更に有する。
【0015】
別の実施態様によれば、可変コンデンサーは、高周波数核と共鳴結合するように構成された、NMRプローブ回路アセンブリの第1のプローブチャネルの一部である。NMRプローブ回路アセンブリは、低周波数核と共鳴結合するように構成された第2のプローブチャネルを更に有することができる。
【0016】
いくつかの実施態様では、第2のプローブチャネルは、接地面と誘電体基板との間に挿入され、該接地面及び該誘電体層と移動可能に接触し、複数の導電性トレースの第2の静止コンデンサー電極と可変のオーバーラップ関係で移動可能な第2の可動コンデンサー電極を備えることができる。該第2の可動コンデンサー電極、誘電体基板及び第2の静止コンデンサー電極は、第2のプローブチャネルを低周波数核の共鳴周波数に同調させるように構成された第2の可変コンデンサーを形成する。NMRプローブ回路アセンブリは、作動に応じて、第2の可動コンデンサー電極を第2の静止コンデンサー電極に対して移動させるように構成された第2のコンデンサー調整機構を更に備えることができる。
【0017】
いくつかの実施態様では、第1のプローブチャネルは、第1のRF伝送ラインと結合するように構成された第1の高周波(RF)ポートを有することができ、第2のプローブチャネルは、第2のRF伝送ラインと結合するように構成された第2のRFポートを有することができる。
【0018】
いくつかの実施態様では、第1のプローブチャネルの可変コンデンサーは、プロトンの共鳴周波数及び19F核の共鳴周波数を含む周波数帯域にわたって同調可能である。いくつかの実施形態では、第2のプローブチャネルの可変コンデンサーは、重水素の共鳴周波数に同調可能である。
【0019】
別の実施態様によれば、接地面、誘電体基板、複数の導電性トレース、第1の可変コンデンサー、第1のコンデンサー調整機構、第2の可変コンデンサー及び第2のコンデンサー調整機構は、NMRプローブ回路アセンブリの第1のプローブ回路の一部である。NMRプローブ回路アセンブリは、第1のプローブ回路から物理的に分離している第2のプローブ回路を更に有することができる。第1のプローブ回路は第1のサンプルコイルと信号通信するように構成され、第2のプローブ回路は、第2のサンプルコイルと信号通信するように構成されるとともに、第1のプローブ回路の第2のプローブチャネルとは異なるタイプの低周波数核の共鳴周波数に同調可能である。
【0020】
いくつかの実施態様では、第2のプローブ回路は、第2の接地面と、第2の接地面から第2の空隙によって分離された誘電体基板と、第2の誘電体基板の第2の空隙とは反対側の面に配置された第2の複数の導電性トレースと、第3の可変コンデンサーとを有することができる。第2の複数の導電性トレースは、第3の静止コンデンサー電極を有する。第3の可動コンデンサー電極は、第2の接地面と第2の誘電体基板との間に挿入され、第2の接地面及び第2の誘電体基板と移動可能に接触し、第3の静止コンデンサー電極と可変のオーバーラップ関係で移動可能である。第3の可動コンデンサー電極、第2の誘電体基板及び第3の静止コンデンサー電極は、第2のプローブ回路を第1のプローブ回路の第2のプローブチャネルとは異なるタイプの核の共鳴周波数に同調させるように構成することができる、第3の可変コンデンサーを形成する。NMRプローブ回路アセンブリは、作動に応じて第3の可動コンデンサー電極を第3の静止コンデンサー電極に対して移動させるように構成された第3のコンデンサー調整機構を更に有することができる。
【0021】
いくつかの実施態様では、第1のプローブチャネルを、プロトンの共鳴周波数に、19F核の共鳴周波数に、又はプロトンの共鳴周波数及び19F核の共鳴周波数を含む周波数帯域にわたって同調可能とすることができる。第2のプローブチャネルを、重水素の共鳴周波数に同調可能とすることができる。第2のプローブ回路を、重水素以外の低周波数核の共鳴周波数に、又は重水素以外の少なくとも2つの異なる低周波数核の共鳴周波数を含む周波数帯域にわたって同調可能とすることができる。
【0022】
別の実施態様によれば、NMRプローブ回路アセンブリは、第1のプローブ回路と、第1のプローブ回路から物理的に分離している第2のプローブ回路とを有する。第1のプローブ回路は、接地面と、誘電体基板と、複数の導電性トレースと、可変コンデンサーと、コンデンサー調整機構とを有する。第1のプローブ回路は、第1のサンプルコイルと信号通信するように構成されるとともに、第1のタイプの核の共鳴周波数に同調可能であり、第2のプローブ回路は、第2のサンプルコイルと信号通信するように構成されるとともに、第2のタイプの核の共鳴周波数に同調可能である。
【0023】
いくつかの実施態様では、第2のプローブ回路は、第2の接地面と、第2の接地面から第2の空隙によって分離された第2の誘電体基板と、第2の誘電体基板の第2の空隙とは反対側の面に配置された第2の複数の導電性トレースと、第2の可変コンデンサーとを有することができる。第2の複数の導電性トレースは、第2の静止コンデンサー電極を有する。第2の可動コンデンサー電極が、第2の接地面と第2の誘電体基板との間に、第2の接地面及び第2の誘電体基板と移動可能に接触し、第2の静止コンデンサー電極と可変のオーバーラップ関係で移動可能に挿入される。第2の可動コンデンサー電極、第2の誘電体基板及び第2静止コンデンサー電極は、第2のプローブ回路を第2のタイプの核の共鳴周波数に同調するように構成することができる第2の可変コンデンサーを形成する。NMRプローブ回路アセンブリは、作動に応じて、第2の可動コンデンサー電極を第2の静止コンデンサー電極に対して移動させるように構成された第2のコンデンサー調整機構を更に有することができる。
【0024】
いくつかの実施態様では、第1のプローブ回路を、プロトンの共鳴周波数に、19F核の共鳴周波数に、又はプロトンの共鳴周波数及び19F核の共鳴周波数を含む周波数帯域にわたって同調可能とすることができる。第2のプローブ回路を、低周波数核の共鳴周波数に、又は少なくとも2つの異なる低周波数核の共鳴周波数を含む周波数帯域にわたって同調可能とすることができる。
【0025】
いくつかの実施態様では、第1のプローブ回路は、高周波数核と共鳴結合するように構成された第1のプローブチャネルと、低周波数核と共鳴結合するように構成された第2のプローブチャネルとを有する。いくつかの実施態様では、第1のプローブチャネルを、プロトンの共鳴周波数に、19F核の共鳴周波数に、又はプロトンの共鳴周波数及び19F核の共鳴周波数を含む周波数帯域にわたって同調可能とすることができる。第2のプローブチャネルを、重水素の共鳴周波数に同調可能とすることができる。第2のプローブ回路を、重水素以外の低周波数核の共鳴周波数に、又は重水素以外の少なくとも2つの異なる低周波数核の共鳴周波数を含む周波数帯域にわたって同調可能とすることができる。
【0026】
いくつかの実施態様では、NMRプローブ回路アセンブリ(又はNMRプローブ回路アセンブリの特定のプローブ回路)は、サンプルコイルと、NMRプローブ回路アセンブリ(又はNMRプローブ回路アセンブリのプローブ回路)と通信する伝送ラインとの間でインピーダンス整合するように構成された可変コンデンサーを有することができる。可変コンデンサーは、静止コンデンサー電極及び可動コンデンサー電極を有することができる。NMRプローブ回路アセンブリは、作動に応じて可動コンデンサー電極を静止コンデンサー電極に対して移動させるように構成されたコンデンサー調整機構を有することができる。
【0027】
別の実施態様によれば、NMRプローブは、サンプルコイルと、サンプルコイルと信号通信するNMRプローブ回路アセンブリとを有する。NMRプローブ回路アセンブリを、上で要約した又は本明細書に記載する実施態様のいずれかに従って提供することができる。
【0028】
別の実施態様によれば、NMR分光計は、磁石と、磁石のボア内に配置されたNMRプローブと、制御/取得システムとを有する。NMRプローブは、サンプルコイルと、サンプルコイルとかつ制御/取得システムと信号通信するNMRプローブ回路アセンブリとを有する。NMRプローブ回路アセンブリを、上で要約した又は本明細書に記載する実施態様のいずれに従って提供することができる。制御/取得システムは、例えば、高周波(RF)送信回路部、RF受信回路部、及びサンプルコイルによって受信されるNMR応答信号を処理又は解析する回路部を有することができる。
【0029】
本発明の他のデバイス、装置、システム、方法、特徴及び利点は、以下の図及び詳細な説明を考察することにより当業者には明らかとなろう。こうしたすべての追加のシステム、方法、特徴及び利点は、本説明に含まれ、本発明の範囲内にあり、添付の特許請求の範囲によって保護されるように意図されている。
【0030】
本発明を、以下の図を参照することによってより理解することができる。図の構成要素は、必ずしも一定比例尺にはなっておらず、本発明の原理を例証することに重きがおかれている。図では、各図を通して同様の参照数字は対応する部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】核磁気共鳴(NMR)分光計の一例の概略図である。
【図2】多重共鳴プローブ回路の一例の概略図である。
【図3】広帯域プローブ回路の一例の概略図である。
【図4】NMRプローブの一例の図である。
【図5】図4に示すNMRプローブに含めることができる同調可能プローブ回路の一例の斜視図である。
【図6】図5に示す同調可能プローブ回路の側面図である。
【図7】図5及び図6に示す同調可能プローブ回路に含めることができる回路基板の一例の平面図である。
【図8】図7に示す回路基板の底面図である。
【図9】図5及び図6に示す同調可能プローブ回路に含めることができる接地面アセンブリの一例の平面図である。
【図10】図5及び図6に示す同調可能プローブ回路に含めることができるばね式コンデンサー電極の一例の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書において「サンプルコイル」という用語は、核磁気共鳴(NMR)サンプルコイル、すなわちNMR分光計においてRFエネルギーを試料へかつ/又は試料から伝達するように構成されたサンプルコイルを指す。さまざまなタイプのサンプルコイルの設計及び動作は、当業者には既知である。
【0033】
本明細書において「核」という用語は、NMR活性核を指す。NMR活性核は、スピンの量子特性を有する核であり、磁気双極子として挙動し、したがって、NMR分光計に対して有用であるようにRF照射に応答する。「高共鳴周波数核」、「高周波数核」及び「HF核」等の用語は、所与の磁場強度の磁場における共鳴周波数が同じ磁場における他のタイプの核に対して高い核を指す。高周波数核の通常の例は、トリチウム(3H)、水素(又はプロトン、1H)及びフッ素同位体19Fである。「低共鳴周波数核」、「低周波数核」及び「LF核」等の用語は、概して、同じ所与の磁場強度の磁場において19Fより共鳴周波数が低い核を指す。当業者には理解されるように、多くの異なるタイプの核を低周波数核として特徴付けることができ、いくつかの一般的な例は、りん同位体31P、炭素同位体13C、重水素(2H)及び窒素同位体15Nである。
【0034】
本明細書において用いられるとき、「共鳴周波数」(又は「ラーモア周波数」)という用語は、サンプルコイルに電磁結合することができる核の共鳴周波数を指す。
【0035】
図1は、核磁気共鳴(NMR)分光計100の一例の概略図である。NMR分光計100は、概して、静磁場B0を印加する(通常、超電導)磁石104と、磁石104のボアに配置されたNMRプローブ108と、磁石104及びNMRプローブ108と信号通信する制御/取得システム112とを有している。NMRプローブ108を、室温で若しくは可変温度で動作させることができるか、又はNMRプローブ108の回路を、当業者には理解されるように極低温で(例えば20Kまで)冷却することができる。極低温動作の場合、NMRプローブ108は真空内に密閉される。NMRプローブ108は、1つ又は複数の高周波(RF)サンプルコイル116と、それぞれのサンプルコイル116と信号通信する1つ又は複数のプローブ回路を含むNMRプローブ回路アセンブリ120とを有している。2つ以上のサンプルコイル116が設けられる場合、サンプルコイル116は、通常同軸状に配置される(例えば、内側コイル及び外側コイル)。動作時に、照射される試料を収容するサンプル容器124が、サンプルコイル(複数の場合もあり)116によって同軸状に包囲されるように、NMRプローブ108に挿入される。サンプル容器124を、例えば、閉管又はフローセルとすることができる。プローブ回路アセンブリ120は、通常、コンデンサー、インダクター、及び、所与のサンプルコイル116と、プローブ回路アセンブリ120と通信する伝送ラインとの間の周波数同調及びインピーダンス整合に利用される他のコンポーネント等の電気コンポーネントを含む。プローブ回路アセンブリ120はまた、RF励起信号(周期的磁場B1)をサンプルコイル(複数の場合もあり)116に送信するとともに、サンプルコイル(複数の場合もあり)116からRF測定信号(NMR応答信号)を受信するようにも利用される。制御/取得システム112は、RF励起信号をプローブ回路アセンブリ120に送信し、プローブ回路アセンブリ120から結果としてのRF測定信号を受信し、RF測定信号を調整して処理し、そこから周波数領域NMRスペクトルを生成する、プローブ回路アセンブリ120と信号通信する電子回路を有している。
【0036】
当業者には理解されるように、制御/取得システム112は、通常、RF送信回路部、RF受信回路部、及び、RF受信回路部の損傷を受けやすい検出コンポーネントを保護するためにRF受信回路部をRF送信回路部から電磁的に分離する送信/受信アイソレーターを有している。RF送信回路部は、例えばRF源(RF発生器、周波数合成器及び/又はパルスプログラマー)、RF信号をゲート制御し、減衰させかつ/又は整形する変調器、及びB1磁場強度を設定する増幅器等のコンポーネントを有することができる。RF受信回路部は、例えば、増幅器、RF受信器、直交アーキテクチャを有する位相検出器、及び時間領域RF測定信号を周波数領域信号に変換するフーリエ変換解析器等のコンポーネントを有することができる。制御/取得システム112は、ユーザー入力のための入出力インターフェース、NMRスペクトルのディスプレイ又は印刷出力等を有する、NMR分光計100のさまざまな機能を制御する電子プロセッサベースのコントローラーを更に有することができる。コントローラーは、RF励起パルス系列をプログラムする命令、NMR測定データ解析ソフトウェア、既知のNMRスペクトル情報のデータベース、及びNMRスペクトルを解釈するのを支援する同様のもの等、種々のタイプのコンポーネントを含むメモリを有することができる。コントローラー並びに関連モジュール及び周辺機器のすべて又は一部を、コンピューター(例えばワークステーション又はコンソールで提供することができる)で実現することができる。
【0037】
通常、RF励起信号はパルスで印加され、したがって、RF信号の送信及び受信の両方に対して所与のサンプルコイル116を利用することができる。さらに、プローブ回路アセンブリ120の所与のプローブ回路(及びその対応するサンプルコイル116)を多重共鳴とすることができ、それらは、この目的で多重チャネルを提供することができる。多重共鳴プローブ回路を、2つ以上のタイプのNMR活性核と同時に共鳴結合するように構成することもできるし、種々のタイプの選択されたNMR核と結合するように広範囲の共鳴周波数にわたって調整可能とすることもできる。しかしながら、プローブ回路アセンブリ120は、2つ以上の別個のプローブ回路を有することができ、すなわちNMRプローブ108は2つ以上の対応するサンプルコイル116を有することができ、後述する例におけるように種々のチャネルの実施が容易になる。
【0038】
図2は、多重共鳴同調可能プローブ回路200、この場合は二重共鳴プローブ回路の一例の概略図である。インダクターLSは、NMRプローブのサンプルコイルを表している。同調可能プローブ回路200は、第1のチャネルに関連する第1のRF入力ポート204と、第2のチャネルに関連する第2のRF入力ポート206とを有している。入力ポート204、206を、例えば50Ω同軸ケーブル等のそれぞれのRF伝送ライン(図示せず)に接続することができる。例として、第1のチャネルを、水素(1H)核と共鳴結合するように同調させることができ、第2のチャネルを重水素(2H)核と共鳴結合するように同調させることができる。このタイプの構成は、プロトンロック又はHD回路と呼ばれることが多い。例えば、所与の磁場強度において、プロトン及び重水素の共鳴周波数は、それぞれ500MHz及び76MHzとすることができる。しかしながら、第1のチャネルを、フッ素同位体19F等の別の高共鳴周波数核に同調可能又は切換可能とすることができ、第2のチャネルを、炭素同位体13C等の別の低共鳴周波数核に同調可能又は切換可能とすることができる。プローブ回路200は、(斜め矢印で示す)可変コンデンサー、固定コンデンサー及び(サンプルコイルLSに加えて)インダクターの組合せを有することができる。Cmで示す可変コンデンサーは、インピーダンス整合に利用され、Ctで示す可変コンデンサーは、周波数同調に利用される。したがって、第1のチャネルを、概して高周波数(HF)チャネルと述べることができ、第2のチャネルを、概して低周波数(LF)チャネルと述べることができる。
【0039】
特に図2に示す例では、可変コンデンサー212を利用して、第1の(プロトン)チャネルが整合され、すなわち、サンプルコイルと、プローブ回路200と(第1のRF入力ポート204において)通信する伝送ラインとの間のインピーダンス整合が行われる。第1のチャネルを同調させるために、サンプルコイルと平行に結合された可変コンデンサー214、216が利用され、第2の(ロック)チャネルを同調させるために可変コンデンサー218が利用される。この特定の例では、第2のチャネルのインピーダンス整合は固定されるが、代替的に、第2のチャネルのインピーダンス整合を、適切な可変コンデンサー(図示せず)を提供することによって調整可能とすることができる。インダクターL1及びL2は、それぞれの第1のチャネル及び第2のチャネルのRF信号が接地に漏れないように、かつ2つのチャネルを互いから電気的に絶縁するように機能することができる。固定コンデンサーCは、整合又は同調のために可変コンデンサーCm又はCtと協働すること、第2のチャネルを整合すること、又は絶縁のためにインダクターL1及びL2と協働すること等、さまざまな目的に役立つことができる。
【0040】
図3は、多重共鳴同調可能プローブ回路300、この場合は広帯域プローブ回路の別の例の概略図である。同調可能プローブ回路300は、NMRプローブのサンプルコイルLS、RF入力ポート304(通常、50Ω同軸ケーブル等のRF伝送ラインに接続されている)、インピーダンス整合に利用される可変コンデンサーCm及び周波数同調に利用される可変コンデンサーCtを有している。例として、可変コンデンサーCtは、プローブ回路300を、1H核及び19F核に関連する高い共鳴周波数より低い、複数の利用可能な共鳴周波数のうちの任意の1つに選択的に同調させることができる。共鳴周波数が相対的に低い、一般に研究されているNMR活性核の例には、限定されないが、炭素同位体13C、窒素同位体15N及びりん同位体13Pが挙げられる。当業者には理解されるように、更に多くのタイプのNMR活性核が存在する。一実施態様では、プローブ回路300は、13C共鳴周波数と15N共鳴周波数との間で同調可能である。別の実施態様では、プローブ回路300は付加的に、13P共鳴周波数に切換可能であるように構成することができる。他の実施態様では、プローブ回路300を、種々のかつ/若しくはより広い帯域の周波数にわたって同調可能であるように、かつ/又は他の周波数に切換可能であるように構成することができる。
【0041】
一例として、図2及び図3に示す同調可能プローブ回路200、300を、ともに、図1に示すプローブ回路アセンブリ120に提供することができ、それらは、それぞれのサンプルコイル116と通信することができる。更に、3つ以上の多重共鳴回路及び/又は広帯域プローブ回路を設けることができる。加えて、図2の例のように、所与の多重共鳴プローブ回路は二重共鳴とすることもできるし、当業者には理解されるように三重共鳴又はより一般的にはn共鳴とすることもできる。代替的に、所与のプローブ回路を、単一タイプのNMR活性核と共鳴結合するように構成された単一チャネル回路とすることができる。プローブ回路の任意の組合せを利用して、複数の別個の個々に整合されかつ同調されたチャネルによって特徴付けられるプローブ回路アセンブリ120を形成することができる。従来の表記を用いて、プローブ回路アセンブリ120のチャネルは、以下のチャネルのうちの1つ又は複数を含むことができる。すなわち、H、F、D、X、Y、…nであり、Hは、1H核(プロトン)を励起する高周波数チャネルを示し、Fは、19F核を励起するそれより低周波数(それでもなお相対的に高周波数)のチャネルを示し、Dは、2H核(重水素ロック溶媒)を励起する低周波数チャネルを示し、X、Y、…nは、低共鳴周波数を有する他のタイプの核(例えば、13C、15N、13P等)を励起する1つ又は複数の低周波数チャネルを示す。
【0042】
ここで、本教示に従って構成されるNMRプローブ及び関連プローブ回路アセンブリの一例を、図4〜図10を参照して説明する。
【0043】
図4は、NMRプローブ400の一例の図である。NMRプローブ400は、1つ又は複数のサンプルコイル404、406及びNMRプローブ回路アセンブリ410を有し、それらの構成要素のすべてを枠又はシャーシ414に取り付ける(又はそれらによって支持する)ことができる。NMRプローブ400を、室温、可変温度又は極低温動作に対して構成することができる。簡単のために、極低温動作に関連する熱交換システムの構成は特に示していない。プローブ回路アセンブリ410は、1つ又は複数の物理的に分離している同調可能プローブ回路を有することができる。本例では、プローブ回路アセンブリ410は、第1の同調可能プローブ回路420及び第2の同調可能プローブ回路422を有している。本例では、第1のプローブ回路420はHDプローブ回路(例えば、図2に概略的に示す同調可能プローブ回路200)であり、第2のプローブ回路422は広帯域プローブ回路(例えば図3に概略的に示す同調可能プローブ回路300)である。シャーシ414は、横方向に向けられた構造部材426を有することができ、その上でサンプルコイル404、406が直接的又は間接的に支持され、構造部材426が、サンプルコイル404、406をプローブ回路アセンブリ410から物理的に分離する。シャーシ414は、プローブ回路420、422が取り付けられる軸方向に向けられた構造部材428も有することができる。例として、軸方向に向けられた構造部材428は取付穴432を有することができる。プローブ回路420、422の取付穴(図示せず)を、軸方向に向けられた構造部材428の選択された取付穴432に位置合わせすることができ、取付穴432内に締結具(例えば図示しないねじ又はボルト)を挿入することにより、プローブ回路420、422を軸方向に向けられた構造部材428に固定することができる。したがって、NMRプローブ400はモジュール式設計を有し、そこでは、サンプルコイル404、406及び個々のプローブ回路420、422を、必要に応じて迅速かつ容易に取り付け、取り外し、交換することができることがわかる。いくつかの実施態様では、軸方向に向けられた構造部材428はヒートシンクとしての役割を果たすことができ、締結具は熱接触部としての役割を果たし、該締結具を通して、プローブ回路420、422からの熱が軸方向に向けられた構造部材428に伝達される。サンプルコイル404、406は、対象となる試料が装填される中心管434を同軸状に包囲することができる。中心管434はまた、軸方向に向けられた構造部材428を通って延在することができる。
【0044】
図5〜図10は、一実施態様による第1の同調可能プローブ回路420の一例を示す。
【0045】
図5及び図6は、組み立てられた形態の第1の同調可能プローブ回路420の斜視図及び側面図である。第1のプローブ回路420は浮遊(suspended)基板アーキテクチャを有し、そこでは、接地面504が、空間又は空隙508によっていくつかの回路コンポーネントから電気的に絶縁されている。接地面504を、導電性材料の層若しくは板、又は導電性材料でめっきされている任意の組成の基板とすることができる。1つの限定しない例では、接地面504は、金でめっきされた無酸素高伝導銅(OFHC)の板である。接地面504は、コンデンサー調整機構540、542、544及び後述するようなさまざまな回路コンポーネントを支持することができる。誘電体基板512(例えば層又は板)が、接地面504の上方に浮遊し、したがってそこから分離されている。誘電体基板512は、平面の第1の面614及び反対側の平面の第2の面616を有している。誘電体基板512を、NMRプローブ回路での使用に適している任意の誘電性、熱伝導性材料で構成することができる。限定しない例には、サファイア(Al23)、ダイアモンド、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(酸化アルミニウムすなわちAl23)、べリリア(酸化ベリリウムすなわちBeO)等の熱伝導性セラミック、並びに回路基板に通常利用される誘電体材料が含まれる。単結晶サファイアが、極低温での優れた熱伝導性、高誘電率、低誘電損失、及びプローブ回路420において高いQ値を実現する能力のために、特に有利であることが分かった。後述する説明から明らかとなるように、誘電体基板512は、いくつかの固定コンデンサー及び可変コンデンサーに対し共通する誘電体基板としての役割を果たす。
【0046】
いくつかの実施態様では、回路基板520は誘電体基板512の上に配置される。回路コンポーネントを、後述するように回路基板520の片側又は両側に含めることができる。回路基板520は、平面の第1の面624及び反対側の平面の第2の面626を有している。回路基板520を、NMRプローブ回路での使用に適している高誘電率及び低誘電損失の任意の誘電体材料で構成することができる。回路基板520の1つの限定しない例は、Chandler、ArizonaのRogers Corporationから販売されているRT/duroid(登録商標)5880積層板等のガラスマイクロファイバーで補強されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)複合材料で構成される。回路基板520を、第1の誘電体基板512に対して第2の誘電体基板とみなすことができる。
【0047】
回路基板520の上に、外側の電気的に絶縁する構造層(板又はブロック)524を配置することができ、それにより、回路基板520が外側構造層524と誘電体基板512との間に挿入される。外側構造層524を、例えば、NMRプローブ回路での使用に適している高誘電率及び低誘電損失の任意の誘電体材料で構成することができる。外側構造層524の1つの限定しない例は、Philadelphia、PennsylvaniaのC-Lec Plastics, Inc.から販売されているRexolite(登録商標)プラスチック等の半透明架橋ポリスチレンから構成される。外側構造層524は、回路基板520及び誘電体基板512の側縁を密閉することができるように凹部を有することができる。誘電体基板512及び回路基板520を、任意の手段(例えば締結具、接着又は接合)により外側構造層524に取り付けることができる。外側構造層524を、接地面504と外側構造層524との間に挿入された1つ又は複数のスペーサー628に固定することができる。スペーサー628を、接地面504から上方に延在する柱として設けることができる。例えば、外側構造層524の穴を、スペーサー628と位置合わせし、ねじ式締結具532を、穴を通してスペーサー628の相補的なねじ穴に挿入することができる。こうした構成により、回路基板520及び誘電体基板512は、接地面504と外側構造層524との間に挟装され、接地面504と誘電体基板512との間の空隙508が、スペーサー628により所望の距離(1つの限定しない例では、約0.10インチすなわち約2.5mm)に設定され、すなわち、スペーサー628が空隙508の距離を画定する。
【0048】
図7及び図8は、一実施態様による回路基板520の一例のそれぞれ平面図及び底面図である。2つのインダクター552、554が、第1の面624に取り付けられている。本例では、2つのインダクター552、554は、上述した図2に示すインダクターL1及びL2にそれぞれ対応している。第2の面626には、複数の導電性トレース(又は平面導電体)812〜820が形成されている。導電性トレース812〜820を、例えば第2の面626にメタライゼーション層を形成すること及びそれに続くパターニングプロセス等、任意の適切な技法によって形成することができる。導電性トレース812〜820を、パターン化導電層と呼ぶことも可能である。任意の適切な導電性材料を利用することができ、いくつかの限定されない例は、銅、並びにさまざまな銅酸化物、鉄系化合物及び他の高温超電導(HTS)材料等のHTS材料である。導電性トレース812〜820のうちのいくつかは、固定コンデンサーの「上部」コンデンサー電極として、かつ可変コンデンサーの静止(「上部」)コンデンサー電極としての役割を果たす。他の導電性トレース812〜820は、インダクター552、554とコンデンサーとの間か、又はプローブ回路420のRF出力端子(第1の端子556及び第2の端子558)と関連するサンプルコイル404又は406との間の電気的相互接続としての役割を果たすことができる。この例では、インダクター552及び554は、それぞれ、電気的接続を完了するためにはんだが付与され、回路基板520のビアを通して挿入されたインダクターリードを介して、選択された導電性トレース816、818及び812、820と通信する。第1のプローブ回路420が組み立てられると(図6)、回路基板520の第2の面626は誘電体基板512の第1の面614に面し、したがって、導電性トレース812〜820は、誘電体基板512の第1の面614に配置される。
【0049】
代替実施態様では、導電性トレース812〜820は、真空蒸着及びそれに続くパターニング(例えばリソグラフィー、エッチング)等、任意の適切な技法によって誘電体基板512の第1の面614上に製造される(又は他の方法で取り付けられる)。この場合、回路基板520を省略することもできるし、適切な導電性トレース816、818及び812、820と通信してインダクター552、554を安定して位置決めするために、より小さい回路基板を利用することもできる。導電性トレース812〜820(パターン化導電層)を回路基板520上に製造しても誘電体基板512上に製造しても、いずれの場合も組立後に、導電性トレース812〜820は、誘電体基板512上の次に説明するような対応する「下部」コンデンサー電極とは反対側に配置される。更に、いずれの場合も、導電性トレース812〜820と誘電体基板512との間に優れた熱接触が形成される。
【0050】
図9は、第1のプローブ回路420の接地面アセンブリ900の平面図である。接地面504は、取付穴932を有することができ、それを、上述したように、プローブシャーシ414(図4)の軸方向に向けられた構造部材428の選択された取付穴432と位置合わせすることができ、それにより、接地面504は、締結具を介して軸方向に向けられた構造部材428に固定することができ、かつ該軸方向に向けられた構造部材428と熱連通することができる。接地面アセンブリ900は、分路構成で固定コンデンサーを形成する(接地面504と通信する)1つ又は複数の「下部」コンデンサー電極904、906と、直列構成で固定コンデンサーを形成する(電気的に浮遊する)1つ又は複数の「下部」コンデンサー電極910と、可変コンデンサーを形成する1つ又は複数の可動(「下部」)コンデンサー電極914、916、918とを有している。本例では、可変コンデンサーのすべてが分路コンデンサーである。本例では、直列コンデンサー(複数の場合もあり)として実施される下部コンデンサー電極(複数の場合もあり)910を、誘電体材料の介在ブロック922により接地面504から電気的に絶縁することができる。下部コンデンサー電極904〜918は、誘電体基板512の第2の面616と接触するように取り付けられる。下部コンデンサー電極904〜918のいくつか又はすべてが、例えば、接地面504と同じ組成を有することもできるし、それらを他の適切な導電性材料で構成することもできる。第1のプローブ回路420が組み立てられると、各可変コンデンサー又は固定コンデンサーは、回路基板520の(又は誘電体基板512の)それぞれの上部コンデンサー電極(導電性トレース812〜820)と、接地面アセンブリ900の下部コンデンサー電極904〜918と、介在する共通誘電体基板512の領域とによって形成される。したがって、結果としての固定コンデンサー及び可変コンデンサーは平行板構成を有する。いくつかの実施態様では、コンデンサーのうちの1つ又は複数は、共通の上部コンデンサー電極又は下部コンデンサー電極を共有することができる。本文脈では、「上部」及び「下部」という用語を、単に例示の目的で相対的な意味で用い、第1のプローブ回路420の向きに対するいかなる限定として用いるものでもない。
【0051】
平行板コンデンサーの静電容量Cを、C=εrε0A/dとして表すことができ、ここで、εrは誘電体層の誘電率であり、ε0≒8.854×10-12F・m-1は電気的定数であり、Aは板(2つのコンデンサー電極)の面積であり、dは板が分離されている距離である。したがって、平行板可変コンデンサーでは、静電容量Cを、板間の重なりの面積Aを変化させることによって変更することができる。本実施態様では、面積Aを変化させることは、所与の可変コンデンサーの可動コンデンサー電極914、916又は918を対応する静止コンデンサー電極(対応する導電性トレース812〜820)に対して移動させることによって達成される。各可動コンデンサー電極914、916、918は、接地面504に沿って順方向及び逆方向の両方において軸方向に並進可能(例えば摺動可能)である。コンデンサー調整機構540、542及び544は、使用者が、インピーダンス整合又は周波数同調のいずれかのために可変コンデンサーの移動、したがって調整を手動で作動させることを可能にするように、それぞれの可動コンデンサー電極914、916及び918と機械的に連通している。
【0052】
本実施態様では、各コンデンサー調整機構540、542、544は、キャリッジ562の直線移動を支持するリニアガイド560を有している。リンク機構564(例えばシャフト)が、キャリッジ562を対応する可動コンデンサー電極914、916又は918と相互接続する。このリンク機構564を、回路設計の詳細に応じて、導電性材料又は絶縁性材料のいずれかとすることができる。使用者によって操作されるように構成された回転要素566が、キャリッジ562に接続され、キャリッジ562の穴の相補的なねじ山と嵌合するねじ山を有している。したがって、回転可能要素566の回転は、回転の方向に応じて順方向又は逆方向において、キャリッジ562、したがってリンク機構564及び可動コンデンサー電極914、916又は918の直線並進に変換される。回転可能要素566は、リニアガイド560の開口部(section)570に捕捉される大径部568を有することができ、それにより、回転可能要素566のみが回転することができ、いかなる方向においても並進が制限される。したがって、特定のコンデンサー調整機構540、542又は544に応じて、使用者は、その回転可能要素566を回転させて、プローブ回路420の所望のチャネルのインピーダンス整合又は周波数同調を行う。この例では、同調の分解能、すなわち回転量の関数としての直線並進の量はねじ山のピッチによって決まる。図9に示すように、回転可能要素566は、使用者によるアクセス及び扱いを容易にするように軸方向に細長い部材として構成される。
【0053】
他の実施態様では、コンデンサー調整機構540、542、544を、可変コンデンサーの上部電極と下部電極との間の距離dを調整するように構成することができる。更に、圧電モーター、プッシュロッド等の回転並進変換機構の代りに、可動コンデンサー電極914、916、918を作動させる他の手段を実施することができる。コンデンサー調整機構540、542、544を、本例のように手動で作動するように構成することもできるし、代替的に自動的に作動するように構成することもできる。
【0054】
上述したように、下部コンデンサー電極904〜918は、誘電体基板512の第2の面616(上部コンデンサー電極の反対側)と接触する。本実施態様では、下部コンデンサー電極904、906、914、916、918と誘電体基板512との間の間隙が、分路された下部コンデンサー電極904、906、914、916、918を誘電体基板512に向けて付勢する導電性ばねを提供することによって回避される。図10は、ばね式下部コンデンサー電極1004の一例の側断面図である。導電性ばね1008は、下部コンデンサー電極1004を誘電体基板512に向けて付勢するために、下部コンデンサー電極1004の下側の凹部1012に取り付けられる。ばね1008を、任意の適切な導電性材料で構成することができ、1つの限定しない例はベリリウム−銅合金(BeCu)である。ばね1008は接地面504と接触する。可変コンデンサーの場合、ばね1008は、接地面504に形成されたそれぞれの直線状溝又は軌道970(図9)に沿って移動する(例えば摺動する)ことができ、それにより、可動コンデンサー電極914、916及び918の直線の前後の動きを維持する。固定コンデンサーの場合、下部コンデンサー電極1004は、下部コンデンサー電極1004を接地面504に固定する取付機能1016を付加的に有することができる。
【0055】
接地面アセンブリ900は、各チャネル(本例では2つのチャネル)に対してRF入力ポート632、634を更に有する。本例では、RF入力ポート632は、プロトンチャネルと通信し、RF入力ポート634は、ロックチャネルと通信する。本実施態様では、RF入力ポート632、634は、電気的絶縁取付具を介して接地面504の穴を通して延在する。接地面504の背面において、RF入力ポート632、634は、同軸ケーブル又はRFエネルギーの他の適切な導体に接続するように構成されている。図6では、RF入力ポート632に結合された同軸ケーブル636が見える。分路された下部コンデンサー電極904、906、914、916、918に類似する方法で、RF入力ポート632、634は、誘電体基板512の第2の面616との接触を確保するばねピン(図示せず)を有することができる。したがって、RF入力ポート632、634は、それらのそれぞれのプローブチャネルに容量結合される。
【0056】
接地面アセンブリ900はまた、端子556、558を有するRF出力ポートも有している。RF出力端子556、558は、回路基板520(又は誘電体基板512)の導電性トレース818、820を導電性リードに相互接続し、そして、導電性リードは、プローブ回路420に関連するサンプルコイルと通信する。本実施態様では、RF出力端子556、558は、例えば接地面504に取り付けることができる電気的絶縁コンタクトブロック576に配置される。本実施態様では、信号通信はコンタクトピン714、716(図7及び図8)を介して行われ、コンタクトピン714、716は、回路基板520の穴を通過してブロック576と接触し、コンタクトブロック576から延在するそれぞれのRF出力端子556、558と接触する。
【0057】
本文脈では、便宜上、「RF入力」及び「RF出力」という用語は、概して、サンプルコイルに伝送されるRF励起信号の方向を指す。しかしながら、応答するRF測定信号は、「RF出力」端子556、558を介してサンプルコイルからプローブ回路420によって受け取られ、「RF入力」ポート632、634のうちの1つを介して制御/取得システム112に向けられることが理解されよう。したがって、「RF入力」及び「RF出力」と言う用語は、プローブ回路420を通るRFエネルギー伝達の全体的な方向に対する限定を意味するようには意図されていない。
【0058】
図9に示す特定の実施態様では、可動コンデンサー電極914は、コンデンサー調整機構540の作動により第1の(プロトン)チャネルを整合させるために利用される可変コンデンサーの一部であり、図2に示す可変コンデンサー212に対応することができる。可変コンデンサー電極916は、別のコンデンサー調整機構542の作動により第1のチャネルを同調させるために利用される可変コンデンサー(2つの同調コンデンサー)の一部であり、図2に示す可変コンデンサー214及び216に対応することができる。この可動コンデンサー電極916は2つの可変コンデンサー214及び216に共通しており、それぞれの第1のコンデンサー電極は、図8に示す対応する物理的に分離している導電性トレース818及び820から明らかであるように別個である。したがって、これらの2つの可変コンデンサー214及び216は、第2のコンデンサー調整機構542によって合わせて調整可能であり、その構成を、図2においてもまた連動矢印により概略的に示す。可動コンデンサー電極918は、別のコンデンサー調整機構544の作動により第2の(ロック)チャネルを同調させるために利用される可変コンデンサーの一部であり、図2に示す可変コンデンサー218に対応することができる。図5〜図7に示すインダクター552、554は、図2に示すものに対応することができる。
【0059】
上記から、図3に示すような広域プローブ回路を、図4〜図10に示すプローブ回路420に類似する方法で、浮遊基板アーキテクチャで同様に実施することができることがわかる。例えば、図3に示す2つの可変コンデンサーCtを、接地面に分路される2つの可変コンデンサーCtに共通する可動コンデンサー電極を直線状に並進させるように1つのコンデンサー調整機構を回転させることにより、周波数を同調させるように調整することができる。この構成を、図3において、連動矢印により概略的に示す。図3に示す他の可変コンデンサーCmを、別の可動コンデンサー電極を直線状に並進させるように別のコンデンサー調整機構を回転させることによって、インピーダンスを整合させるように調整することができる。広域プローブ回路はまた、共通の誘電体基板に配置される導電性トレースの適切な配置とともに、この実施態様を実現する必要に応じて1つ又は複数の固定コンデンサー及びインダクター(図示せず)を含むことができる。
【0060】
図4に示す第2の同調可能プローブ回路422は、上述した広域回路とすることもできるし、第1のプローブ回路420に類似する構成を有する多チャネル回路とすることもできるし、単一チャネル回路とすることもできる。図4は、第2のプローブ回路422に含めることができるいくつかのコンポーネントの例、すなわち、パターン化導電層(第2の複数の導電性トレース)が配置される第2の誘電体層444から第2の空隙によって分離された第2の接地面442、第2の接地面442と第2の誘電体基板444との間の空隙に配置された、コンデンサー調整機構448によって並進する可動コンデンサー電極446、インダクター450等の例を示す。可動コンデンサー電極446を、第2のプローブ回路422において、利用可能となる広帯域における2つ以上の選択された共鳴周波数に同調させるように構成することができる。インピーダンス整合のために、別の可動コンデンサー電極及び関連するコンデンサー調整機構(図示せず)を設けることができる。
【0061】
上述したような2次元トポロジー及び浮遊基板アーキテクチャを有するNMRプローブ回路は、ソリッドモデリング、シミュレーション及び製造の応用に非常に役立つ。機械コンポーネントの物理的寸法、位置及び配置と周波数応答との間に相関性がある。機械的設計を変更し、回路シミュレーションを実行してこの変更がRF応答に与える影響を確定し、新たなコンポーネントが作製されるようにし、これらの変更を組み込んだ新たなプロトタイプを再度組み立てることは簡単にすることができる。扱われている設計問題に応じて、シミュレーションで開始し、シミュレーションされた出力を利用して機械設計を駆動することが好ましい場合もある。
【0062】
設計プロセスの一例では、設計で採用されるインダクターに対する回路モデルは、プローブレイアウトを模倣した試験装置を構築し、この装置でインダクターを測定し、測定値を取り出し、適切なモデルに適合させることによって開発された。このように開発されたコンポーネントモデルを結合して、設計を最適化しコンデンサーの形状を確定するように、利用されるプローブ回路のモデル全体を生成した。インダクターに対する測定されたモデルを、ブロードサイド結合ストリップライン(broadside coupled stripline)モデル(コンデンサー用)及びサンプルコイルのSパラメーター表現と結合することにより、完全なプローブモデルをもたらした。容量素子もまた、電磁シミュレーションに適していた。
【0063】
上記から、本明細書で開示した主題が、NMRプローブ回路に伴う問題、例えば低い再現性、高価な修理及び長い設計サイクルに有効に対処することが分かった。更に、本主題により、一般に利用されるシミュレーションパッケージの簡単な応用が可能である。回路コンポーネントがそれらのそれぞれの位置に限定され、それにより、個々のコンポーネント間及び各コンポーネントと接地との間の結合が安定化するため、再現性が向上する。プローブ回路全体又は更には回路アセンブリ全体を数分で交換するだけでよいため、修理がより簡単でありかつより安価である。大抵、通常のプロトタイピングプロセスよりはるかに高速であるシミュレーションを採用することができるため、設計サイクルが短くなる。現時点で開示した回路トポロジーにより、プロトタイピングの代りに確定的設計手法を採用することができ、それにより、回路及び関連するハードウェアの設計、製造及び修理のすべての段階が容易になる。更に、本実施態様により、セラミックチップコンデンサーを採用する必要がなくなる。チップコンデンサーは、従来、商用のコールドプローブ設計で利用されているが、極低温用途には評価されておらず、信頼性問題をもたらす可能性がある。本明細書に開示されるように構成される可変コンデンサーは、広範囲の静電容量値に対して調整可能である。
【0064】
図面において、さまざまな層及び面(例えば、誘電体層、接地面、回路基板等)を平坦であるように示しているが、本教示は湾曲した層及び面を包含することが理解されよう。
【0065】
概して、「連通する(通信する)(communicate)」及び「連通している(in...communication with)」(例えば、第1のコンポーネントが第2のコンポーネントと「通信する」又は「連通している)等の用語を、本明細書では、2つ以上のコンポーネント又は要素間の構造的、機能的、機械的、電気的、信号上の、光学的、磁気的、電磁気的、イオンの又は流体の関係を示すように用いている。したがって、1つのコンポーネントが第2のコンポーネントと連通すると言われる事実は、第1のコンポーネントと第2のコンポーネントとの間に追加のコンポーネントが存在し、かつ/又はそれらに動作的に関連するか若しくは関与する可能性を排除するようには意図されていない。
【0066】
本開示の目的で、層(又はフィルム、領域、基板、コンポーネント、デバイス等)が別の層の「上に(on、over)」あると言う場合、その層が他方の層の上又は上方に直接又は実質的にある可能性があり、又は代替的に、介在する層(例えばバッファ層、遷移層、中間層、犠牲層、エッチストップ層、マスク、電極、相互接続、接点等)もまた存在する可能性があることが理解されよう。別の層の「上に直接」ある層とは、特に示さない限り、介在する層が存在しないことを意味する。また、層が別の層の「上に」又は「上方に」あるという場合、その層は、他方の層の表面全体又は他方の層の一部のみを覆う可能性があることも理解されよう。更に、「〜の上に形成され」又は「〜の上に配置され」等の用語は、材料の移送、堆積、製造、表面処理、又は物理的、化学的若しくはイオンによる接合若しくは相互作用の特定の方法に関連するいかなる限定も取り入れるようには意図されていないことが理解されよう。「挿入され(介在する)(interposed)」という用語は、同様に解釈される。
【0067】
本発明のさまざまな態様又は詳細を、本発明の範囲から逸脱することなく変更することができることが理解されよう。さらに、上記説明は、単に例示の目的のものであって限定の目的のものではなく、本発明は特許請求の範囲によって規定される。
【符号の説明】
【0068】
400 NMRプローブ
404、406 サンプルコイル
410NMRプローブ回路アセンブリ
414 シャーシ
420 第1の同調可能なプローブ回路
422 第2の同調可能なプローブ回路
426 横方向に向けられた構造部材
428 軸方向に向けられた構造部材
432 取付穴
434 中心管
442 第2の接地面
444 第2の誘電体層
446 可動コンデンサー電極
448 コンデンサー調整機構
450 インダクター
504 接地面
508 空間又は空隙
512 誘電体基板
520 回路基板
524 外側構造層
532 ねじ式締結具
540、542、544 コンデンサー調整機構
552、554 インダクター
556 RF出力端子の第1の端子
558 RF出力端子の第2の端子
560 リニアガイド
562 キャリッジ
564 リンク機構
566 回転可能要素
568 大径部
570 開口部
576 電気的絶縁コンタクトブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核磁気共鳴(NMR)プローブ回路アセンブリであって、
接地面と、
前記接地面から空隙によって分離された誘電体基板と、
前記誘電体基板の、前記空隙とは反対側の面に配置され、静止コンデンサー電極を備える複数の導電性トレースと、
前記接地面と前記誘電体基板との間に挿入され、該接地面及び該誘電体基板と移動可能に接触し、前記静止コンデンサー電極と可変のオーバーラップ関係で移動可能な可動コンデンサー電極であって、該可動コンデンサー電極、前記誘電体基板及び前記静止コンデンサー電極は、該NMRプローブ回路アセンブリを共鳴周波数に同調させるように構成された可変コンデンサーを形成する、可動コンデンサー電極と、
作動に応じて、前記可動コンデンサー電極を前記静止コンデンサー電極に対して移動させるように構成されたコンデンサー調整機構と、
を具備する、NMRプローブ回路アセンブリ。
【請求項2】
前記静止コンデンサー電極は、第1の導電性トレース及び物理的に分離している第2の導電性トレースを含み、前記可動コンデンサー電極は、前記第1の導電性トレース及び第2の導電性トレースの両方とオーバーラップする関係で移動可能である、請求項1に記載のNMRプローブ回路アセンブリ。
【請求項3】
前記接地面から電磁的に隔離して取り付けられ、前記NMRプローブ回路アセンブリとサンプルコイルとの間でRF信号を移送するように構成された高周波(RF)ポートを具備し、該RFポートは、前記第1の導電性トレースと信号通信する第1の端子と、前記第2の導電性トレースと信号通信する第2の端子とを備え、前記可変コンデンサーは、前記サンプルコイルに平行に結合された2つの同調コンデンサーを備える、請求項2に記載のNMRプローブ回路アセンブリ。
【請求項4】
前記可動コンデンサー電極は、前記接地面と移動可能に接触し、かつ該可動コンデンサー電極を前記誘電体基板に接触するよう付勢するように構成された導電性ばねを備える、請求項1に記載のNMRプローブ回路アセンブリ。
【請求項5】
電気的に絶縁する構造層と、前記接地面と該構造層との間に挿入されたスペーサーとを具備し、前記誘電体基板は前記構造層に取り付けられ、前記構造層は前記スペーサーに取り付けられ、前記スペーサーは前記空隙の距離を画定する、請求項1に記載のNMRプローブ回路アセンブリ。
【請求項6】
前記導電性トレースは前記誘電体基板に取り付けられる、請求項1に記載のNMRプローブ回路アセンブリ。
【請求項7】
前記誘電体基板の上に配置された回路基板を具備し、前記導電性トレースは該回路基板にかつ前記誘電体基板と接触して取り付けられる、請求項1に記載のNMRプローブ回路アセンブリ。
【請求項8】
前記可変コンデンサーは、高周波数核と共鳴結合するように構成された、前記NMRプローブ回路アセンブリの第1のプローブチャネルの一部であり、前記NMRプローブ回路アセンブリは、低周波数核と共鳴結合するように構成された第2のプローブチャネルを更に具備する、請求項1に記載のNMRプローブ回路アセンブリ。
【請求項9】
前記第1のプローブチャネルの前記可変コンデンサーは第1の可変コンデンサーであり、前記第1のプローブチャネルの前記可動コンデンサー電極は第1の可動コンデンサー電極であり、前記第1のプローブチャネルの前記静止コンデンサー電極は第1の静止コンデンサー電極であり、前記第1の可動コンデンサー電極を移動させるように構成された前記コンデンサー調整機構は第1のコンデンサー調整機構であり、前記第2のプローブチャネルは、
前記接地面と前記誘電体基板との間に挿入され、該接地面及び該誘電体層と移動可能に接触し、前記複数の導電性トレースの第2の静止コンデンサー電極と可変のオーバーラップ関係で移動可能な第2の可動コンデンサー電極であって、該第2の可動コンデンサー電極、前記誘電体基板及び前記第2の静止コンデンサー電極は、前記第2のプローブチャネルを前記低周波数核の共鳴周波数に同調させるように構成された第2の可変コンデンサーを形成する、第2の可動コンデンサー電極と、
作動に応じて、前記第2の可動コンデンサー電極を前記第2の静止コンデンサー電極に対して移動させるように構成された第2のコンデンサー調整機構と、
を備える、請求項8に記載のNMRプローブ回路アセンブリ。
【請求項10】
前記第2の可変コンデンサーは、重水素の共鳴周波数に同調可能である、請求項9に記載のNMRプローブ回路アセンブリ。
【請求項11】
前記接地面、前記誘電体基板、前記複数の導電性トレース、前記第1の可変コンデンサー、前記第1のコンデンサー調整機構、前記第2の可変コンデンサー及び前記第2のコンデンサー調整機構は、前記NMRプローブ回路アセンブリの第1のプローブ回路の一部であり、前記NMRプローブ回路アセンブリは、前記第1のプローブ回路から物理的に分離している第2のプローブ回路を更に具備し、前記第1のプローブ回路は第1のサンプルコイルと信号通信するように構成され、前記第2のプローブ回路は、第2のサンプルコイルと信号通信するように構成されるとともに、前記第2のプローブチャネルとは異なるタイプの低周波数核の共鳴周波数に同調可能である、請求項9に記載のNMRプローブ回路アセンブリ。
【請求項12】
前記第1のプローブ回路の前記接地面は第1の接地面であり、前記第1のプローブ回路の前記誘電体基板は第1の誘電体基板であり、前記第1のプローブ回路の前記複数の導電性トレースは第1の複数の導電性トレースであり、前記第2のプローブ回路は、
第2の接地面と、
前記第2の接地面から第2の空隙によって分離された第2の誘電体基板と、
前記第2の誘電体基板の前記第2の空隙とは反対側の面に配置され、第3の静止コンデンサー電極を備える第2の複数の導電性トレースと、
前記第2の接地面と前記第2の誘電体基板との間に挿入され、前記第2の接地面及び前記第2の誘電体基板と移動可能に接触し、前記第3の静止コンデンサー電極と可変のオーバーラップ関係で移動可能な第3の可動コンデンサー電極であって、該第3の可動コンデンサー電極、前記第2の誘電体基板及び前記第3の静止コンデンサー電極は、前記第2のプローブ回路を前記異なるタイプの前記核の共鳴周波数に同調させるように構成された第3の可変コンデンサーを形成する、第3の可動コンデンサー電極と、
作動に応じて、前記第3の可動コンデンサー電極を前記第3の静止コンデンサー電極に対して移動させるように構成された第3のコンデンサー調整機構と、
を備える、請求項11に記載のNMRプローブ回路アセンブリ。
【請求項13】
前記可変コンデンサーは、プロトンの共鳴周波数及び19F核の共鳴周波数を含む周波数帯域にわたって同調可能である、請求項1に記載のNMRプローブ回路アセンブリ。
【請求項14】
前記可変コンデンサーは、少なくとも2つの異なる低周波数核のそれぞれの共鳴周波数を含む周波数帯域にわたって同調可能である、請求項1に記載のNMRプローブ回路アセンブリ。
【請求項15】
前記NMRプローブ回路アセンブリを前記共鳴周波数に同調させるように構成された前記可変コンデンサーは第1の可変コンデンサーであり、該第1の可変コンデンサーの前記可動コンデンサー電極は第1の可動コンデンサー電極であり、前記第1の可変コンデンサーの前記静止コンデンサー電極は第1の静止電極であり、前記第1の可動コンデンサー電極を移動させるように構成された前記コンデンサー調整機構は第1のコンデンサー調整機構であり、前記NMRプローブ回路アセンブリは、
前記接地面と前記誘電体基板との間に挿入され、前記接地面及び前記誘電体層と移動可能に接触し、前記複数の導電性トレースの第2の静止コンデンサー電極と可変のオーバーラップ関係で移動可能な第2の可動コンデンサー電極であって、該第2の可動コンデンサー電極、前記誘電体基板及び前記第2の静止コンデンサー電極は、サンプルコイルと、前記NMRプローブ回路アセンブリと通信する伝送ラインとの間のインピーダンス整合のために構成された第1の可変コンデンサーを形成する、第2の可動コンデンサー電極と、
作動に応じて、前記第2の可動コンデンサー電極を前記第2の静止コンデンサー電極に対して移動させるように構成された第2のコンデンサー調整機構と、
を更に具備する、請求項1に記載のNMRプローブ回路アセンブリ。
【請求項16】
前記接地面、前記誘電体基板、前記複数の導電性トレース、前記可変コンデンサー及び前記第1のコンデンサー調整機構は、前記NMRプローブ回路アセンブリの第1のプローブ回路の一部であり、前記NMRプローブ回路アセンブリは、該第1のプローブ回路から物理的に分離している第2のプローブ回路を更に具備し、前記第1のプローブ回路は、第1のサンプルコイルと信号通信するように構成されるとともに、第1のタイプの核の共鳴周波数に同調可能であり、前記第2のプローブ回路は、第2のサンプルコイルと信号通信するように構成されるとともに、第2のタイプの核の共鳴周波数に同調可能である、請求項1に記載のNMRプローブ回路アセンブリ。
【請求項17】
前記第1のプローブ回路の前記接地面は第1の接地面であり、前記第1のプローブ回路の前記誘電体基板は第1の誘電体基板であり、前記第1のプローブ回路の前記複数の導電性トレースは第1の複数の導電性トレースであり、前記第2のプローブ回路は、
第2の接地面と、
前記第2の接地面から第2の空隙によって分離された第2の誘電体基板と、
前記第2の誘電体基板の前記第2の空隙とは反対側の面に配置され、第2の静止コンデンサー電極を備える第2の複数の導電性トレースと、
前記第2の接地面と前記第2の誘電体基板との間に挿入され、前記第2の接地面及び前記第2の誘電体基板と移動可能に接触し、前記第2の静止コンデンサー電極と可変のオーバーラップ関係で移動可能な第2の可動コンデンサー電極であって、該第2の可動コンデンサー電極、前記第2の誘電体基板及び前記第2の静止コンデンサー電極は、前記第2のプローブ回路を前記第2のタイプの前記核の共鳴周波数に同調させるように構成された第2の可変コンデンサーを形成する、第2の可動コンデンサー電極と、
作動に応じて、前記第2の可動コンデンサー電極を前記第2の静止コンデンサー電極に対して移動させるように構成された第2のコンデンサー調整機構と、
を備える、請求項16に記載のNMRプローブ回路アセンブリ。
【請求項18】
前記第1のプローブ回路は、プロトンの共鳴周波数と、19F核の共鳴周波数と、該プロトンの該共鳴周波数及び該19F核の該共鳴周波数とを含む周波数帯域とからなる群から選択される周波数に同調可能であり、
前記第2のプローブ回路は、低周波数核の共鳴周波数、及び少なくとも2つの異なる低周波数核のそれぞれの共鳴周波数を含む周波数帯域からなる群から選択される周波数に同調可能である、請求項16に記載のNMRプローブ回路アセンブリ。
【請求項19】
前記可変コンデンサーは、高周波数核と共鳴結合するように構成された、前記第1のプローブ回路の第1のプローブチャネルの一部であり、前記第1のプローブ回路は、低周波数核と共鳴結合するように構成された第2のプローブチャネルを更に備える、請求項16に記載のNMRプローブ回路アセンブリ。
【請求項20】
前記第1のプローブチャネルは、プロトンの共鳴周波数と、19F核の共鳴周波数と、該プロトンの該共鳴周波数及び該19F核の該共鳴周波数とを含む周波数帯域からなる群から選択される周波数に同調可能であり、
前記第2のプローブチャネルは重水素の共鳴周波数に同調可能であり、
前記第2のプローブ回路は、重水素以外の低周波数核の共鳴周波数、及び重水素以外の少なくとも2つの異なる低周波数核のそれぞれの共鳴周波数を含む周波数帯域からなる群から選択される周波数に同調可能である、請求項19に記載のNMRプローブ回路アセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−173286(P2012−173286A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−7878(P2012−7878)
【出願日】平成24年1月18日(2012.1.18)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.