説明

浮遊感染性インフルエンザウイルスの不活化効果計測装置及び方法

【課題】浮遊感染性インフルエンザウイルスを不活化させる不活化装置あるいは液剤あるいは不活化フィルタの不活化効果を定量的に計測する方法を提供する。
【解決手段】チャンバ内に、所定量の浮遊感染性インフルエンザウイルスを注入する。所定容量の空気をチャンバ内に導入するステップ102と、チャンバから排気される所定容量の空気を採取するステップ103とを所定のサイクル数繰り返し行なうことで、所定の時間間隔でチャンバ内より所定容量の空気を採取する。採取された所定容量の空気を、浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕捉できるフィルタに通過させる処理を、所定の時間間隔で採取された所定容量の空気それぞれについて行う。各フィルタに捕捉された浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の定量分析を行うことにより、不活化装置がチャンバ内に設置された場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の経時変化を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中に浮遊している浮遊感染性インフルエンザウイルスを不活化(ウイルスとしての増殖機能を死滅化)させる効果を定量的に計測することができる装置及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、豚由来の新型インフルエンザ(パンデミックH1N1)や高病原性の鳥インフルエンザ(H5N1)の発生に呼応して、これらのインフルエンザ感染対策として、マスク、うがい、手洗いの推奨や、特異的ワクチン、治療薬の備蓄や開発が行われている。
【0003】
これらの浮遊感染性インフルエンザウイルスは、通常の飛沫感染だけではなく、換気の限られた空間における空気感染が懸念される。たとえば、空調の停止した飛行機内の54名の乗客中の1名の感染者から39名の乗客への空気感染が報告されている(Am J Epidemiol,110:1-6,1979)。特にインフルエンザ流行期においては、診察室、病室等などの医療機関において、浮遊感染性インフルエンザの飛沫・空気感染への対策が重要となる。また、医療機関ばかりではなく、建物・交通機関等の公共の空間、更には家庭においても、浮遊感染性インフルエンザの飛沫・空気感染を対策することが重要となる。
【0004】
そこで、こうした飛沫・空気感染の原因となる環境中に浮遊する感染性インフルエンザを、広くは家庭において、不活化(本明細書では、ウイルスとしての増殖機能を死滅化させる意味で用いる)させることができる装置及び方法を開発することができれば、飛沫・空気感染という見えないリスクを軽減でき、流行性のインフルエンザ対策に極めて有効な手段となり得る。
【0005】
このため近年、業務用としてばかりではなく家庭用に簡易に設置できる装置であって、 浮遊感染性インフルエンザウイルスを不活化させる装置の開発が行われつつある。
【0006】
本出願人は、光触媒を利用して空気中の汚染物質を分解除去する空気清浄機に関する考案であって、家庭用にメンテナンス性を高めた機構に関する考案を、既に出願し、実用新案登録している(下記特許文献1)。
【0007】
また、ウイルスを含む微生物を除去する方式として電離したイオン等の粒子を微生物に照射して殺菌処理する方式がある。この殺菌処理方式により微生物を殺菌処理し除去する能力を測定し評価する微生物除去評価装置についての発明が下記特許文献2に記載されている。
【0008】
この特許文献2には、容器内で、電離したイオン等の粒子を微生物に照射し、その後、容器からエアサンプラーによって単位時間当たり所定容量の空気を吸引して滅菌生理食塩液に導き、微生物を回収するという方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実用新案登録第3150894号公報(実願2009-1595号)
【特許文献2】特開2004-159508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本出願人は、上記特許文献1に記載された、家庭用に好適な空気清浄機をベースに改良を進め、空気中の浮遊感染性インフルエンザウイルスを分解、除去する性能を高めた空気清浄機を開発しつつある。
【0011】
しかし、このような空気清浄機を含む、浮遊感染性インフルエンザウイルスを不活化させる装置(本明細書では、不活化装置という)の不活化効果を簡易な方法で定量的に計測できる計測装置は、従来存在しなかった。
【0012】
特許文献2に記載された微生物除去評価装置は、電離したイオン等の粒子を微生物に照射して殺菌処理する方式を対象としており、特許文献1に記載されているような、光触媒により浮遊感染性インフルエンザウイルスを酸化分解させる方式を対象としていない。
【0013】
また特許文献2では、エアサンプラーによって単位時間当たり所定容量の空気を吸引するようにしているため、同じ定容量の空気を、一定時間間隔で採取するには、エアサンプラーをその都度停止しなければならず、装置が大掛かりな割りには操作が煩わしいという問題がある。また、容器と吸引回収する装置は分離することができない。このため空気を滅菌生理食塩液に導き、微生物を回収した後は、新しい滅菌生理食塩液に交換するまでは、つぎのサイクルに移行することができず、作業性が悪いという問題がある。
【0014】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、浮遊感染性インフルエンザウイルスを不活化させる不活化装置または液剤または不活化フィルタそのものの不活化効果を簡易な方法で定量的に計測できるようにすることを解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1発明は、
チャンバ内に、浮遊感染性インフルエンザウイルスを不活化させる不活化装置が設置された場合に、当該不活化装置による浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果を計測する方法であって、
チャンバ内に、所定量の浮遊感染性インフルエンザウイルスを注入し、
所定容量の空気をチャンバ内に導入する空気導入ステップと、
前記所定容量の空気がチャンバ内に導入されるに応じて、チャンバから排気される所定容量の空気を採取する空気採取ステップと
からなる各ステップを所定のサイクル数繰り返し行なうことで、所定の時間間隔でチャンバ内より所定容量の空気を採取し、
採取された所定容量の空気を、浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕捉できるフィルタに通過させる処理を、所定の時間間隔で採取された所定容量の空気それぞれについて行い、
各フィルタに捕捉された浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の定量分析を行うことにより、不活化装置がチャンバ内に設置された場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の経時変化を計測する
ことを特徴とする。
【0016】
第2発明は、第1発明において、
チャンバ内に、不活化装置が設置された場合と設置されていない場合それぞれについて、各フィルタに捕捉された浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の定量分析を行うことにより、不活化装置がチャンバ内に設置された場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の経時変化と、不活化装置がチャンバ内に設置されていない場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の経時変化を計測する
ことを特徴とする。
【0017】
第3発明は、第1発明または第2発明において、
不活化装置は、外気を取り込み光触媒フィルタを含むウイルス不活化フィルタを通過した空気を外部に排出する空気清浄機である
ことを特徴とする。
【0018】
第4発明は、第1発明または第2発明または第3発明において、
さらに、フィルタに捕捉された浮遊感染性インフルエンザウイルスの粒子数の定量分析を行い、感染力価の定量分析結果に、ウイルス粒子数の定量分析結果を付き合わせることにより、不活化装置の性能を評価する
ことを特徴とする。
【0019】
第5発明は、第1発明において、
不活化装置は、大気中で電離現象を起こして正イオンおよび負イオンを発生する装置である
ことを特徴とする。
【0020】
第6発明は、第1発明において、
チャンバ内に、浮遊感染性インフルエンザウイルスに感染し得る生命体を存置させ、浮遊感染性インフルエンザウイルスがチャンバ内に注入されてから所定時間経過後に、前記生命体をチャンバより回収して、前記生命体を検査することにより、不活化装置が設置された場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力低減効果を計測する
ことを特徴とする。
【0021】
第7発明は、
チャンバ内に、浮遊感染性インフルエンザウイルスを不活化させる不活化剤が噴霧された場合に、当該不活化剤による浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果を計測する方法であって、
チャンバ内に、所定量の浮遊感染性インフルエンザウイルスを注入し、
所定容量の空気をチャンバ内に導入する空気導入ステップと、
前記所定容量の空気がチャンバ内に導入されるに応じて、チャンバから排気される所定容量の空気を採取する空気採取ステップと
からなる各ステップを所定のサイクル数繰り返し行なうことで、所定の時間間隔でチャンバ内より所定容量の空気を採取し、
採取された所定容量の空気を、浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕捉できるフィルタに通過させる処理を、所定の時間間隔で採取された所定容量の空気それぞれについて行い、
各フィルタに捕捉された浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の定量分析を行うことにより、不活化剤がチャンバ内に噴霧された場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の経時変化を計測する
ことを特徴とする。
【0022】
第8発明は、
チャンバ内に、浮遊感染性インフルエンザウイルスを不活化させる不活化装置が設置された場合に、当該不活化装置による浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果を計測する装置において、
チャンバに設けられ、所定量の浮遊感染性インフルエンザウイルスをチャンバ内部に注入するウイルス注入口と、
空気をチャンバ内に導入する空気導入口と、
前記空気導入口を介してチャンバ内に空気が押し込まれる所定容量の空気導入用バッグと、
前記所定容量の空気が前記空気導入口を介してチャンバ内に押し込まれチャンバ内に導入されるに応じて、チャンバから空気が排気される空気排気口と、
前記空気排気口を介して排気された空気を採取する空気採取用バッグと、
空気採取用バッグに採取された所定容量の空気を、吸引用通路を介して吸引する吸引手段と、
前記吸引用通路上に設けられ、浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕捉できるフィルタと
が備えられ、
所定の時間間隔で空気採取用バッグにより所定容量の空気を採取し、
採取された所定容量の空気を、前記吸引手段により吸引し、
各フィルタに捕捉された浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の定量分析を行うことにより、不活化装置がチャンバ内に設置された場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の経時変化を計測する
ことを特徴とする。
【0023】
第9発明は、
チャンバ内に、浮遊感染性インフルエンザウイルスを不活化させる不活化剤が噴霧された場合に、当該不活剤による浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果を計測する装置において、
チャンバに設けられ、所定量の浮遊感染性インフルエンザウイルスをチャンバ内部に注入するウイルス注入口と、
空気をチャンバ内に導入する空気導入口と、
前記空気導入口を介してチャンバ内に空気が押し込まれる所定容量の空気導入用バッグと、
前記所定容量の空気が前記空気導入口を介してチャンバ内に押し込まれチャンバ内に導入されるに応じて、チャンバから空気が排気される空気排気口と、
前記空気排気口を介して排気された空気を採取する空気採取用バッグと、
空気採取用バッグに採取された所定容量の空気を、吸引用通路を介して吸引する吸引手段と、
前記吸引用通路上に設けられ、浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕捉できるフィルタと
が備えられ、
所定の時間間隔で空気採取用バッグにより所定容量の空気を採取し、
採取された所定容量の空気を、前記吸引手段により吸引し、
各フィルタに捕捉された浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の定量分析を行うことにより、不活化剤がチャンバ内に噴霧された場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の経時変化を計測する
ことを特徴とする。
【0024】
第10発明は、
導入空気若しくは排気空気中の浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕獲し不活化させる不活化フィルタによる浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果を計測する方法であって、
浮遊感染性インフルエンザウイルスを含む空気を、前記不活化フィルタの一方の面より吸入し、当該不活化フィルタの他方の面から排気させ、
前記不活化フィルタの他方の面から排気された空気を所定容量採取し、
採取された所定容量の空気を、浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕捉できる捕捉用フィルタに通過させ、
前記捕捉用フィルタに捕捉された浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価または/およびウイルス粒子数の定量分析を行うことにより、前記不活化フィルタの性能を評価する
ことを特徴とする。
【0025】
第11発明は、
導入空気若しくは排気空気中の浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕獲し不活化させる不活化フィルタによる浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果を計測する方法であって、
浮遊感染性インフルエンザウイルスを含む空気を、前記不活化フィルタの一方の面より吸入し、当該不活化フィルタの他方の面から排気させ、
前記不活化フィルタの他方の面から排気された空気を、浮遊感染性インフルエンザウイルスに感染し得る生命体が存置されたチャンバ内に導入し、
浮遊感染性インフルエンザウイルスを含む空気がチャンバ内に導入されてから所定時間経過後に、前記生命体をチャンバより回収して、前記生命体を検査することにより、不活化フィルタによる浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力低減効果を計測する
ことを特徴とする。
【0026】
第12発明は、第11発明において、
前記チャンバの出口から当該チャンバ内の空気を排気し、
前記チャンバから排気された空気を、浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕捉できる捕捉用フィルタに通過させ、
前記捕捉用フィルタに捕捉された浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価または/およびウイルス粒子数の定量分析を行うことにより、前記不活化フィルタの性能を評価する
ことを特徴とする。
【0027】
第13発明は、
導入空気若しくは排気空気中の浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕獲し不活化させる不活化フィルタによる浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果を計測する装置において、
浮遊感染性インフルエンザウイルスを含む空気を発生させる空気発生手段と、
前記空気発生手段と、前記不活化フィルタの一方の面とを連通する吸入通路と、
前記不活化フィルタの他方の面側に設けられ、前記不活化フィルタの他方の面から排気された空気を採取する所定容量の採取用バッグと、
前記不活化フィルタの他方の面と前記採取用バッグとを連通する排気通路と、
浮遊感染性インフルエンザウイルスを含む空気を、前記吸入通路を介して前記不活化フィルタの一方の面より吸入し、当該不活化フィルタの他方の面から前記排気通路を介して排気させる吸入・排気手段と、
前記排気通路を介して排気された空気を採取する空気採取用バッグと、
空気採取用バッグに採取された所定容量の空気を、吸引用通路を介して吸引する吸引手段と、
前記吸引用通路上に設けられ、浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕捉できる捕捉用フィルタと
が備えられ、
前記捕捉用フィルタに捕捉された浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価または/およびウイルス粒子数の定量分析を行うことにより、前記不活化フィルタの性能を評価する
ことを特徴とする。
【0028】
第14発明は、
導入空気若しくは排気空気中の浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕獲し不活化させる不活化フィルタによる浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果を計測する装置において、
浮遊感染性インフルエンザウイルスを含む空気を発生させる空気発生手段と、
前記空気発生手段と、前記不活化フィルタの一方の面とを連通する吸入通路と、
前記不活化フィルタの他方の面側に設けられ、前記不活化フィルタの他方の面から排気された空気が導入されるチャンバであって、浮遊感染性インフルエンザウイルスに感染し得る生命体が存置されたチャンバと、
前記不活化フィルタの他方の面と前記チャンバとを連通する排気通路と、
浮遊感染性インフルエンザウイルスを含む空気を、前記吸入通路を介して前記不活化フィルタの一方の面より吸入し、当該不活化フィルタの他方の面から前記排気通路を介して排気させる吸入・排気手段と
が備えられ、
浮遊感染性インフルエンザウイルスを含む空気がチャンバ内に導入されてから所定時間経過後に、前記生命体をチャンバより回収して、前記生命体を検査することにより、不活化フィルタによる浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力低減効果を計測する
ことを特徴とする。
【0029】
第15発明は、第14発明において、
前記チャンバに設けられ、当該チャンバ内の空気を排気する排気口と、
前記排気口を介して排気された空気を採取する空気採取用バッグと、
空気採取用バッグに採取された所定容量の空気を、吸引用通路を介して吸引する吸引手段と、
前記吸引用通路上に設けられ、浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕捉できる捕捉用フィルタと
が備えられ、
前記捕捉用フィルタに捕捉された浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価または/およびウイルス粒子数の定量分析を行うことにより、前記不活化フィルタの性能を評価する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
第1発明から第6発明および第8発明は、浮遊感染性インフルエンザウイルスが存在する環境中に設置し稼動させることで、浮遊感染性インフルエンザウイルスを不活化させる不活化装置を対象として、その不活化効果を計測する方法または装置に関する。第1発明から第6発明および第8発明によれば、不活化装置がチャンバ内に設置された場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の経時変化を計測することができる。
【0031】
特に第4発明によれば、感染力価の定量分析結果に、ウイルス粒子数の定量分析結果を付き合わせることにより、不活化装置の性能を評価することができる。
【0032】
第7発明および第9発明は、浮遊感染性インフルエンザウイルスが存在する環境に噴霧することで、浮遊感染性インフルエンザウイルスを不活化させる不活化剤を対象として、その不活化効果を計測する方法または装置に関する。第7発明および第9発明によれば、不活化剤がチャンバ内に噴霧された場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の経時変化を計測することができる。
【0033】
第10発明から第15発明は、導入空気若しくは排気空気中の浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕獲し不活化させる不活化フィルタを対象として、その不活化効果を計測する方法または装置に関する。第10発明から第15発明によれば、不活化フィルタの性能を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1(a)、(b)は、第1の実施形態の計測装置の装置構成例を示した図である。
【図2】図2(a)は、第1の実施形態の計測装置の一部構成の変形例を示した図で、図2(b)、(c)は、第2の実施形態の計測装置の一部構成の変形例をそれぞれ示した図である。
【図3】図3(a)、(b)は、第1の実施形態の計測方法の手順を示したフローチャートで、図3(c)、(d)は、第1の実施形態の計測方法の他の手順を示したフローチャートである。
【図4】図4は、第1の実施形態の計測結果の一例を示した図である。
【図5】図5は、第2の実施形態の計測装置の装置構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して本発明に係る浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果を計測する装置および方法の実施の形態について説明する。
【0036】
本発明の計測は、感染症ウイルスの実験施設としての基準に適合した場所で行われる。
【0037】
(第1の実施形態)
図1(a)、(b)は、第1の実施形態の計測装置の装置構成例を示す。
【0038】
図1(a)に示すように、チャンバ1は、ウイルス注入口2、空気導入口3、空気排気口4といった開口部を除いて空気の漏れがないように密閉され、内部が所定容積の空間となっている筐体である。たとえば立方体形状の箱体をチャンバ1として用いることができる。
【0039】
チャンバ1内には、計測対象である不活化装置20が設置される。
【0040】
計測対象の不活化装置20は、たとえば、外気を取り込み光触媒フィルタを含むウイルス不活化フィルタを通過した空気を外部に排出する空気清浄機である。また、計測対象の不活化装置20は、たとえば、大気中で電離現象を起こして正イオンおよび負イオンを発生する装置である。
【0041】
チャンバ1が、たとえば各辺を組み合わせて構成された筐体の場合、その内の少なくとも1辺1aは、不活化装置20の搬入搬出口1aとして機能する。チャンバ1の少なくとも1辺1aは、他辺からの着脱が自在となっている。不活化装置20が搬入搬出口1aより搬入されてチャンバ1内に設置された後は、チャンバ1の搬入搬出口1aは周囲の他辺1b、1c、1d、1eに接続され、その周囲で空気の漏れが生じないようにシールされる。なお、不活化装置20が外部の交流電源を駆動源として稼動する装置の場合には、外部の交流電源に接続するためのコード類を通す孔がチャンバ1に形成される。この場合、その孔の周囲は、空気の漏れがないようにシールされる。なお、チャンバ1を、各辺同士が固定された筐体とし、一部に開閉自在の搬入搬出口1aを形成してもよい。
【0042】
チャンバ1には、所定量の浮遊感染性インフルエンザウイルスをチャンバ1内部に注入するウイルス注入口2が設けられている。たとえば、計測に用いる浮遊感染性インフルエンザウイルスが保存液の状態で保管されている場合には、保存液を、霧化状態にして、ウイルス注入口2より注入すればよい。この場合、たとえばウイルス液をスプレー等の噴射噴霧手段により注入することができる。また、たとえば超音波式あるいはジェット式の霧化装置を用いることができる。たとえば、市販の超音波式の噴霧発生装置をウイルス注入口2に接続して、ウイルス保存液を霧化状態にしてウイルス注入口2よりチャンバ1内部に注入することができる。ウイルス注入口2は、ウイルス注入後に、そのウイルス注入口2を介しての空気の漏れが生じないようにシールされる。
【0043】
チャンバ1には、空気をチャンバ1内に導入する空気導入口3が設けられている。
【0044】
空気導入口3には、この空気導入口3を介してチャンバ1内に空気を押し込むための所定容量の空気導入用バッグ5が接続されている。空気導入用バッグ5は、押し込むことで、所定容量の空気を排出できるバッグが使用される。
【0045】
チャンバ1には、空気導入用バッグ5内の所定容量の空気が空気導入口3を介してチャンバ1内に押し込まれチャンバ1内に導入されるに応じて、チャンバ1から空気が排気される空気排気口4が設けられている。
【0046】
空気排気口4には、この空気排気口4を介して排気された空気を、採取口6aを介して採取するための空気採取用バッグ6が接続されている。採取用バッグ6は、チャンバ1内の空気が採取された後に空気排気口4から取り外される。
【0047】
空気を押し込み、縮んだ空気導入用バッグ5の中には、空気排気口4、チャンバ1を介して新たに空気が入り込み、再び膨らむ。
【0048】
空気排気口4は、チャンバ1内の空気が採取された採取用バッグ6がチャンバ1から取り外された後に、その空気排気口4を介しての空気の漏れが生じないようにシールされる。
【0049】
なお、図2(a)に断面図で示すように、空気導入用バッグ5を蛇腹構造とするとともに空気採取用バッグ6を蛇腹構造とする実施も可能である。この場合、空気導入用バッグ5には、たとえばチャンバ1側への押し込み時には開かないワンウエイの外気取り入れバルブ5aを設けるとともに、チャンバ1には、チャンバ1への押し込み時のみに開くワンウエイの空気排出バルブ1gを設ける。また空気採取用バッグ6側の空気排気口4には、空気導入用バッグ5からチャンバ1内に空気が導入されたときのみに開くワンウエイの空気導入バルブ1hを設ける。
【0050】
この構成によれば、チャンバ1内の汚染された空気を入り込ませることなく、チャンバ1の外部の新鮮な空気を空気導入用バッグ5に入り込ませることができる。
【0051】
また、空気導入用バッグ5を押し込み収縮させた後で、空気導入用バッグ5を空気導入口3から取り外し、新たにコンプレッサ等によって空気導入用バッグ5内に空気を充填し、再び空気導入口3に取付け接続する実施も可能である。
【0052】
さらに空気導入口3に、コンプレッサ等の空気導入手段の吐出口を直接接続して、所定容量の空気をチャンバ1内に送り込む実施も可能である。
【0053】
また、チャンバ1の空気排気口4に、手動の開閉バルブ、シャッタを設け、空気導入用バッグ5への空気排出時には空気排気口4を開状態とし、空気採取用バッグ6がチャンバ1から取り外された後は空気排気口4を閉状態としてシールする実施も可能である。
【0054】
一方、図1(b)は、図1(a)に示す空気採取用バッグ6がチャンバ1から取り外され、吸引装置11に装着された状態を示す。吸引装置11は、吸引用通路7と吸引手段8から構成される。
【0055】
空気採取用バッグ6の採取口6aには、吸引用通路7が接続される。
【0056】
吸引用通路7には、空気採取用バッグ6に採取された所定容量の空気を、吸引用通路7を介して吸引する吸引手段8が接続される。たとえば吸引手段8として、水流ポンプが用いられ、水流ポンプの吸込み口が吸引用通路7に接続される。
【0057】
吸引用通路7上には、フィルタケース9が設けられている。フィルタケース9は、吸引用通路7からの取り外し、吸引用通路7への装着が自在に構成されている。
【0058】
フィルタケース9内には、吸引用通路7を介して吸引される空気中の浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕捉できる捕捉用フィルタ10が収納されている。
【0059】
図3(a)、(b)は、計測方法の手順をフローチャートにて示している。
【0060】
(ウイルス注入ステップ)
まず、チャンバ1内に、ウイルス注入口2より所定量の浮遊感染性インフルエンザウイルスを注入する(ステップ101)。
【0061】
(空気導入ステップ)
つぎに、空気導入口3から所定容量の空気をチャンバ1内に導入する(ステップ102)。
【0062】
(空気採取ステップ)
所定容量の空気がチャンバ1内に導入されるに応じて、チャンバ1の空気排気口4から排気される所定容量の空気が空気採取用バッグ6で採取される(ステップ103)。
【0063】
上述の(空気導入ステップ)、(空気採取ステップ)の各ステップ102、103を所定のサイクル数繰り返し行なう。これにより所定の時間間隔でチャンバ1内より所定容量の空気が空気採取用バッグ6に採取される。この場合、空気を採取する時間の間隔は、等間隔であってもよく不等間隔であってもよい。
【0064】
この場合、空気採取用バッグ6については、採取された空気を吸引後に同じバッグを使い回してもよい。
【0065】
(空気採取用バッグ6の取り外し)
空気採取用バッグ6に所定容量の空気が採取されると、チャンバ1から取り外される(ステップ104)。
【0066】
(捕捉用フィルタへのウイルスの捕捉)
チャンバ1から取り外された空気採取用バッグ6には、図1(b)に示す吸引装置11が装着されて、空気が吸引される。これにより捕捉用フィルタ10に吸引空気が通過して、空気採取用バッグ6内の浮遊感染性インフルエンザウイルスが捕捉用フィルタ10で捕捉される。捕捉用フィルタ10は、1個の空気採取用バッグ6内の空気を吸引して当該フィルタ10に通過させる毎に、フィルタケース9から回収される。そして、新しい捕捉用フィルタ10がフィルタケース9内に収容される。(ステップ105)。
【0067】
(空気採取用バッグ6の取り付け)
空気が吸引された空気採取用バッグ6は、チャンバ1に再び取り付けられる(ステップ106)。以後手順は、ステップ102に戻り同じ処理が、所定のサイクル数繰り返される。
【0068】
こうして所定の時間間隔で採取された所定容量の空気それぞれに含まれる浮遊感染性インフルエンザウイルスが、各捕捉用フィルタ10にて捕捉される。
【0069】
(定量分析)
上述したステップ101〜106の処理に並行して、あるいは、上述したステップ101〜106の全サイクルの処理終了後に、捕捉用フィルタ10から浮遊感染性インフルエンザウイルスが回収される。そして回収した浮遊感染性インフルエンザウイルスを試料として、その感染力価の定量分析が行われる。この定量分析を各捕捉用フィルタ10について行なうことにより不活化装置20がチャンバ1内に設置された場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の経時変化が計測される。また、不活化装置20の性能を評価するために、感染力価の定量分析に加え、定量RT-PCR法によるウイルス粒子数の定量分析が並行して行われる(ステップ201)。
【0070】
図3(a)、(b)では、同じ空気採取用バッグ6を使い回しているが、空気採取の時間間隔が短い場合あるいはサイクルタイムを向上させたい場合には、図3(c)、(d)のような手順とし、空気採取用バッグ6で空気を採取する毎に新しいバッグに取り替えるようにしてもよい。
【0071】
図3(c)に示すように、図3(a)と同様にしてステップ101、102、103、104の処理が行われる。ステップ104の処理終了後に以下の処理が行われる。
【0072】
(新しい空気採取用バッグ6の取り付け)
空気が吸引された空気採取用バッグ6がチャンバ1から取り外されると(ステップ104)、別の新しい空気採取用バッグ6がチャンバ1に取り付けられる(ステップ105´)。以後手順は、ステップ102に戻り同じ処理が、所定のサイクル数繰り返される。
【0073】
(捕捉用フィルタへのウイルスの捕捉)
一方、チャンバ1から取り外された空気採取用バッグ6には、図1(b)に示す吸引装置11が装着されて、空気が吸引される。これにより捕捉用フィルタ10に吸引空気が通過して、空気採取用バッグ6内の浮遊感染性インフルエンザウイルスが捕捉用フィルタ10で捕捉される(ステップ201´)。
【0074】
(定量分析)
つぎに浮遊感染性インフルエンザウイルスが、捕捉用フィルタ10から回収される。そして回収した浮遊感染性インフルエンザウイルスを試料として、その感染力価の定量分析が行われる。この定量分析を各捕捉用フィルタ10について行なうことにより不活化装置20がチャンバ1内に設置された場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の経時変化が計測される。また、不活化装置20の性能を評価するために、感染力価の定量分析に加え、定量RT-PCR法によるウイルス粒子数の定量分析が並行して行われる(ステップ202´)。
【0075】
(実施例1)
上述した第1の実施形態の実施例について説明する。
【0076】
(計測対象)
計測対象の不活化装置20として、O.T.A社製SC125−TB空気清浄機を用いた。この空気清浄機は、外気を取り込み光触媒フィルタを通過した空気を外部に排出する空気清浄機である。
【0077】
この空気清浄機の筐体内には、セラミック多孔質体を基材としてその表面に二酸化チタン等の紫外線応答型の光触媒層が形成されてなる光触媒フィルタが収容されている。また同筐体内には、光触媒に紫外線を照射し光触媒を励起し浮遊感染性インフルエンザウイルスを酸化分解させるために紫外線ランプが収容されている。また同筐体内には、外気を取り込み光触媒フィルタに空気を通過させて外部に排出させるための吸入ファンが収納されている。その他、同空気清浄機を駆動し制御するための駆動制御装置等が同筐体に内蔵されている。
【0078】
この空気清浄機は、光触媒層を構成する酸化チタンの活性層の粒子が細かく、活性が高いという特徴を有している。すなわち、酸化チタンの比表面積は、18.58m2/gであり、一般的な空気清浄機の比表面積(たとえば6.65m2/g)に較べて非常に高いという特徴を有している。したがって、浮遊感染性インフルエンザウイルスを光触媒フィルタで捕獲し酸化分解して不活化させる能力が非常に高いと考えられている。
【0079】
計測中は、空気清浄機20をAC電源にて稼働させたままの状態とし、光触媒が励起され吸入ファンによる空気の取り入れおよび排出がなされる状態を維持した。
【0080】
(チャンバ1および空気導入用バッグ5、空気採取用バッグ6)
チャンバ1の1辺の長さを91cmとし、91cm×91cm×91cm=753.57L(約0.75立方米)の容積を有する立方体の筐体としてチャンバ1を構成した。
【0081】
空気導入用バッグ5、空気採取用バッグ6の容量をそれぞれ、40L(リットル)とした。これにより、1回の空気採取のサイクルで、チャンバ1内の空気を40L採取することができる。
【0082】
(ウイルス注入量)
浮遊感染性インフルエンザウイルスA/PR/8/34(H1N1)株のウイルス液を10ml、ウイルス注入口2からチャンバ1の内部に噴霧した。ウイルス液は、約1分をかけて全量噴霧した。噴霧開始時のウイルス力価(感染力価)は、4.0×10 8 PFU/10mlであった。
(空気採取の時間間隔)
ウイルス注入完了時(ウイルス噴霧終了時)、ウイルス注入完了時から5分後、ウイルス注入完了時から15分後、ウイルス注入完了時から30分後それぞれの時点で、チャンバ1内から40Lの空気を採取した。
【0083】
(捕捉用フィルタ10)
ポアサイズ0.45μmの捕捉用フィルタ10を用いて、40Lの採取空気から浮遊感染性インフルエンザウイルスを吸引して捕捉し、定量分析の試料として回収した。ポアサイズ0.2μmの捕捉用フィルタと対比した実験を行ったが、吸引スピードと回収率の点からポアサイズ0.45μmが最適であった。
【0084】
捕捉用フィルタ10として、メンブランフィルタ(0.45μmセルロース・アセテート膜φ47mm)を用いた。メンブランフィルタにウイルス液を滴下し、培養液に浸透させ、感染性ウイルスの回収する実験を行ったところ、滴下したウイルスのうち約10%を回収することができた。これによりメンブランフィルタを捕捉用フィルタ10とすれば、採取空気から効率良く感染性ウイルスを回収できることを確認した。
【0085】
(定量分析)
感染力価とウイルス粒子数の両方について定量分析を行った。
【0086】
採取空気を吸引した直後に、捕捉用フィルタ10を半分に切り、一方は、ウイルス粒子数の分析の試料とするためにRNA抽出用の溶解液に入れるとともに、他方は、感染力価の分析の試料とするために、2mlの細胞培養液に浮遊させた。
【0087】
(感染力価の分析)
捕捉用フィルタ10の半分で捕捉されたウイルスを細胞培養液中に浮遊させ、段階希釈してMDCK細胞に接種し、アガロースを重層した。これにより形成されたプラックを染色してプラック数を計測後、40Lの採取空気中の感染性ウイルス力価(単位;PFU)を算出した(プラック法による定量)。
【0088】
(ウイルス粒子数の分析)
捕捉用フィルタ10の半分で捕捉されたウイルスをRNA抽出用溶解液に入れ、ウイルスのRNAを抽出し、HAを標的としたRT−PCRと定量PCR法で、40Lの採取空気中のRNAコピー数(単位;コピー数)を算出した。
【0089】
なお、上述した分析手法は、実験によると、RNAコピー数は検出感度以下であっても、感染性ウイルス力価は検出できることが確認された。したがって、採用している感染力価測定法は、核酸検出法よりも優れている。このようにゲノムの測定感度よりも感染性の測定感度の方が高く、浮遊感染性インフルエンザウイルスの計測に最適であると考えられる。
【0090】
(対比)
空気清浄機20がチャンバ1内に設置された場合の不活化効果を、空気清浄機20が設置されていない場合を基準として対比するために、空気清浄機20が設置された場合、空気清浄機20が設置されていない場合の両方について、図3(a)、(b)ないしは図3(c)、(d)に示す手順で計測処理を行った。ただし、チャンバ1に、空気清浄機20が設置されていない場合には、小型扇風機を設置して、チャンバ1内の空気を対流させた。
【0091】
(計測結果)
図4は、空気清浄機20がチャンバ1内に設置された場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の経時変化(実線)と、空気清浄機20がチャンバ1内に設置されていない場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の経時変化(破線)を対比して示す。
【0092】
図4において、横軸は、経過時間(分)であり、縦軸は、浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価(PFU)である。各プロット点はそれぞれ、ウイルス注入完了時(横軸「0分」)、ウイルス注入完了時から5分後(横軸「5分」)、ウイルス注入完了時から15分後(横軸「15分」、ウイルス注入完了時から30分後(横軸「30分」)に対応する。
【0093】
同図4から明らかなように、空気清浄機20がチャンバ1内に設置されていない場合(破線)には、30分経過後でも感染力価が十分に高く、チャンバ1内で浮遊感染性インフルエンザウイルスが不活化していないが、空気清浄機20がチャンバ1内に設置された場合(実線)には、5分経過した時点で既に感染力価が検出限界以下に達し、チャンバ1内で浮遊感染性インフルエンザウイルスが飛躍的に不活化していることがわかる。
【0094】
以上のことから、計測対象の空気清浄機20は、空気中の浮遊感染性インフルエンザウイルスを不活化させる効果が非常に高いことがわかった。
【0095】
一方、ウイルス粒子数の分析結果では、5分経過した時点で、約1万コピー/40Lという検出結果が得られた。これは、不活化したものおよび不活化していないもの両方を含めたウイルス粒子の個体数が5分経過した時点で、チャンバ1内に約19万個存在することを意味する。したがって、計測対象の空気清浄機20は、単なるウイルスを捕獲して除去する能力だけではなく、ウイルスを分解して死滅化させる能力が非常に高いと評価することができる。
【0096】
なお、図4は、空気清浄機20がチャンバ1内に設置された場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の経時変化と、空気清浄機20がチャンバ1内に設置されていない場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の経時変化を計測して両者を対比しているが、同様に、空気清浄機20がチャンバ1内に設置された場合におけるウイルス粒子数の経時変化と、空気清浄機20がチャンバ1内に設置されていない場合におけるウイルス粒子数の経時変化を計測して両者を対比してもよい。
【0097】
(実施例2)
実施例1では、不活化装置20として、空気清浄機を例にとり説明した。
【0098】
しかし、不活化装置20として、大気中で電離現象を起こして正イオンおよび負イオンを発生する装置にも当然適用することができる。
【0099】
(実施例3)
チャンバ1内に、浮遊感染性インフルエンザウイルスに感染し得る生命体、たとえばマウスを存置させて、空気清浄機などの不活化装置20が設置されたことによる浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力低減効果を計測する実施も可能である。
【0100】
この場合、マウス馴化ウイルス株、たとえばマウス馴化インフルエンザウイルスA/PR8/34株をウイルス注入口2より注入する。一方で、チャンバ1内に複数のマウスを存置させる。そして、浮遊感染性インフルエンザウイルスがチャンバ1内に注入されてから所定時間経過後に、マウスをチャンバ1より搬出、回収する。つぎにマウスの感染による死亡率、坑体産生の有無、肺の免疫病理組織解析などの検査を行う。これらの検査結果から、不活化装置20が設置された場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力低減効果を計測する。不活化装置20が設置されていない場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力低減効果についても計測し、両計測結果を対比してもよい。
【0101】
なお、本計測は、感染動物実験室の仕様(P3仕様)に適合した設備内、たとえば安全キャビネット内で実施することが望ましい。
【0102】
(実施例4)
以上の説明では、空気清浄機などの不活化装置20の不活化効果を計測する場合を想定した。
【0103】
しかし、同様の計測装置、計測方法を用いて、浮遊感染性インフルエンザウイルスを不活化させる不活化剤が噴霧された場合に、この不活化剤による浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果を計測する実施も可能である。
【0104】
この場合、実施例1と同様に浮遊感染性インフルエンザウイルスがウイルス注入口2からチャンバ1内に噴霧される。一方でウイルス注入前あるいはウイルス注入後に、浮遊感染性インフルエンザウイルスを不活化させる不活化剤がウイルス注入口2から噴霧される。なお、不活化剤を注入する口をウイルス注入口2とは別に設けてもよい。以後、図3に示すステップ102以降の処理が同様にして実施され、浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の経時変化が計測される。不活化剤が噴霧されていない場合における感染力価の経時変化についても計測し、両計測結果を対比してもよい。
【0105】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、室内に設置される空気清浄機などの不活化装置20あるいは室内に散布される不活化剤を想定した。しかし、室内への空気導入路あるいは室外への空気排気路に設けられるフィルタの不活化効果を計測する実施も可能である。
【0106】
ここで、室内への空気導入路あるいは室外への空気排気路は、たとえば一般家庭の部屋、工場、ビルディング等の建屋の空気取り入れ口、換気扇、室内用あるいは自動車用エアコンデショナの排気ダクトなどである。フィルタは、少なくとも導入空気若しくは排気空気中の浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕獲し不活化させるフィルタであり、光触媒層はあってもなくてもよい(本明細書では、不活化フィルタという)。よって不活化フィルタは、光触媒による酸化分解効果が得られる光触媒フィルタを含む。
【0107】
図5は、第2の実施形態の計測装置の構成を示す。
【0108】
実施形態の計測対象の不活化フィルタ41は、板状に構成されており表面と裏面を有している。不活化フィルタ41は、空気を不活化フィルタ41に強制的に取り入れるファン42(たとえば電動ファン)と、不活化フィルタ41の周囲を保持するフレーム43を含む不活化フィルタユニット40として構成することで、上述した室外への空気排気路に装着可能なものとして製品化されたものを想定する。不活化フィルタユニット40の一方の面40aは、不活化フィルタ41の表面に対応し、不活化フィルタユニット40の他方の面40bは、不活化フィルタ41の裏面に対応する。
【0109】
空気発生手段31は、浮遊感染性インフルエンザウイルスを含む空気を発生させる。たとえば、計測に用いる浮遊感染性インフルエンザウイルスが保存液の状態で保管されている場合には、保存液を、霧化状態にする装置が用いられる。たとえば超音波式の霧化装置を用いることができる。たとえば、市販の超音波式の噴霧発生装置(登録商標「ネブライザー」)を使用することができる。
【0110】
空気発生手段31と、不活化フィルタユニット40の一方の面40aとは、吸入通路32によって連通されている。
【0111】
不活化フィルタユニット40の他方の面40b側には、チャンバ33が設けられている。不活化フィルタユニット40の他方の面40bと、チャンバ33とは、排気通路34によって連通されている。
【0112】
チャンバ33内には、浮遊感染性インフルエンザウイルスに感染し得る生命体、たとえばマウスが存置されている。したがって、空気発生手段31で発生させる空気中には、マウス馴化ウイルス株、たとえばマウス馴化インフルエンザウイルスA/PR8/34株を含ませるようにする。一方で、チャンバ31内には、複数のマウスを存置させる。なお、本計測装置による計測は、感染動物実験室の仕様(P3仕様)に適合した設備内、たとえば安全キャビネット内で実施することが望ましい。
【0113】
チャンバ33には、このチャンバ33内の空気を排気する排気口33aが設けられている。
【0114】
排気口33aには、図1に示したのと同様の空気採取用バッグ6が接続されている。
【0115】
チャンバ33から取り外された空気採取用バッグ6は、図1(b)に示したのと同様の吸引装置11に装着されて、空気が吸引される。
【0116】
不活化フィルタユニット40を構成するファン42は、空気発生手段31で発生した浮遊感染性インフルエンザウイルスを含む空気を、吸入通路32を介して不活化フィルタユニット40の一方の面40aより吸入させ、この不活化フィルタ40の他方の面40bから排気通路34を介して排気させてチャンバ33内に導入させる吸入・排気手段を構成している。なお、不活化フィルタユニット40がファン42を含まない構成の場合には、別途同様の吸入・排気手段を不活化フィルタユニット40の一方の面40a側あるいは他方の面40b側に設けて、強制的に不活化フィルタ41に空気を取り入れるように構成する。
【0117】
つぎに、上述した計測装置で行われる計測方法の手順について説明する。なお、第1実施形態と同様に、計測中に無用にウイルスを含む空気の漏れが生じないように適宜各部をシールすることが必要である。
【0118】
まず、不活化フィルタユニット40を構成するファンを稼動させる。
【0119】
つぎに、空気発生手段31を作動させる。これにより、空気発生手段31で発生した浮遊感染性インフルエンザウイルスを含む空気が、吸入通路32を介して不活化フィルタユニット40の一方の面40aより吸入される。そして、この不活化フィルタ40の他方の面40bから排気通路34を介して空気が排気されチャンバ33内に導入される。
【0120】
チャンバ33の排気口33aからは空気が排気され、空気採取用バッグ6で採取される。
【0121】
空気発生手段31で浮遊感染性インフルエンザウイルスを含む空気を発生開始してから所定時間経過後に、マウスをチャンバ33より搬出、回収する。つぎにマウスの感染による死亡率、坑体産生の有無、肺の免疫病理組織解析などの検査を行う。これらの検査結果から、不活化フィルタユニット40が設置された場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力低減効果を計測する。不活化フィルタユニット40が設置されていない場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力低減効果についても計測し、両計測結果を対比してもよい。不活化フィルタユニット40を設置しない場合には、対応する箇所にファン42のみを設置し、浮遊感染性インフルエンザウイルスを含む空気がチャンバ33内に強制的に導入されるようにしておくことが望ましい。
【0122】
また、仕様の異なる不活化フィルタに順次交換して同様のマウスの検査および同検査結果に基づく計測を行い、仕様の異なる不活化フィルタの感染力低減効果を対比してもよい。これにより各仕様の異なる不活化フィルタを対比させた評価を行うことができる。
【0123】
マウスを搬出、回収する一方で、空気発生手段31で浮遊感染性インフルエンザウイルスを含む空気を発生開始してから所定時間経過後にチャンバ33から空気採取用バッグ6が取り外される。
【0124】
チャンバ1から取り外された空気採取用バッグ6には、図1(b)に示す吸引装置11が装着されて、空気が吸引される。これにより捕捉用フィルタ10に吸引空気が通過して、空気採取用バッグ6内の浮遊感染性インフルエンザウイルスが捕捉用フィルタ10で捕捉される。
【0125】
つぎに捕捉用フィルタ10から浮遊感染性インフルエンザウイルスが回収され、回収された浮遊感染性インフルエンザウイルスを試料として、その感染力価およびウイルス粒子数の定量分析が行われる。これにより不活化フィルタユニット40が設置された場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価およびウイルス粒子数が計測される。浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価のみ計測してもよく、ウイルス粒子数のみ計測してもよい。
【0126】
こうして得られた浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価または/およびウイルス粒子数の計測結果に、マウスの検査結果を突き合わせて、不活化フィルタユニット40の性能を評価することができる。
【0127】
また、空気発生手段31で浮遊感染性インフルエンザウイルスを含む空気を発生開始してから所定時間経過後に不活化フィルタユニット40を取り外し、不活化フィルタから浮遊感染性インフルエンザウイルスを回収して、同様に浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価または/およびウイルス粒子数を計測してもよい。そして、不活化フィルタ41から回収された浮遊感染性インフルエンザウイルスに基づき計測された感染力価または/およびウイルス粒子数の計測結果に、マウスの検査結果および捕捉用フィルタ10から回収された浮遊感染性インフルエンザウイルスに基づき計測された感染力価または/およびウイルス粒子数の計測結果とを突き合わせて、不活化フィルタユニット40の性能を評価することができる。
【0128】
図5に示す計測装置では、チャンバ33の排気口33aに空気採取用バッグ6を接続するようにしているが、空気採取用バッグ6を接続する代わりに排気口33aに、捕捉用フィルタ10を設ける実施も可能である。これにより空気採取用バッグ6から空気を吸引する工程を実施することなく、捕捉用フィルタ10から浮遊感染性インフルエンザウイルスを回収することができる。
【0129】
また図5に示す計測装置では、不活化フィルタユニット40を通過した空気をチャンバ33に導入させるとともに、空気採取用バッグ6に導入させるようにしているが、図2(b)に示すように、空気採取用バッグ6の配設を省略してチャンバ33内のマウスの検査結果に基づく計測を行う実施も可能である。また、図2(c)に示すように、チャンバ33の配設を省略して空気採取用バッグ6の採取空気に基づく計測を行う実施も可能である。
【符号の説明】
【0130】
1、33 チャンバ、2 ウイルス注入口、3 空気導入口、4 空気排気口、5 空気導入用バッグ、5 空気採取用バッグ、10 捕捉用フィルタ、20 不活化装置、31 空気発生手段、32 吸入通路、34 排気通路、40 不活化フィルタユニット、41 不活化フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内に、浮遊感染性インフルエンザウイルスを不活化させる不活化装置が設置された場合に、当該不活化装置による浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果を計測する方法であって、
チャンバ内に、所定量の浮遊感染性インフルエンザウイルスを注入し、
所定容量の空気をチャンバ内に導入する空気導入ステップと、
前記所定容量の空気がチャンバ内に導入されるに応じて、チャンバから排気される所定容量の空気を採取する空気採取ステップと
からなる各ステップを所定のサイクル数繰り返し行なうことで、所定の時間間隔でチャンバ内より所定容量の空気を採取し、
採取された所定容量の空気を、浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕捉できるフィルタに通過させる処理を、所定の時間間隔で採取された所定容量の空気それぞれについて行い、
各フィルタに捕捉された浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の定量分析を行うことにより、不活化装置がチャンバ内に設置された場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の経時変化を計測する
ことを特徴とする浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果の計測方法。
【請求項2】
チャンバ内に、不活化装置が設置された場合と設置されていない場合それぞれについて、各フィルタに捕捉された浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の定量分析を行うことにより、不活化装置がチャンバ内に設置された場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の経時変化と、不活化装置がチャンバ内に設置されていない場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の経時変化を計測する
ことを特徴とする請求項1記載の浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果の計測方法。
【請求項3】
不活化装置は、外気を取り込み光触媒フィルタを含むウイルス不活化フィルタを通過した空気を外部に排出する空気清浄機である
ことを特徴とする請求項1または2記載の浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果の計測方法。
【請求項4】
さらに、フィルタに捕捉された浮遊感染性インフルエンザウイルスの粒子数の定量分析を行い、感染力価の定量分析結果に、ウイルス粒子数の定量分析結果を付き合わせることにより、不活化装置の性能を評価する
ことを特徴とする請求項1または2または3記載の浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果の計測方法。
【請求項5】
不活化装置は、大気中で電離現象を起こして正イオンおよび負イオンを発生する装置である
ことを特徴とする請求項1記載の浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果の計測方法。
【請求項6】
チャンバ内に、浮遊感染性インフルエンザウイルスに感染し得る生命体を存置させ、浮遊感染性インフルエンザウイルスがチャンバ内に注入されてから所定時間経過後に、前記生命体をチャンバより回収して、前記生命体を検査することにより、不活化装置が設置された場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力低減効果を計測する
ことを特徴とする請求項1記載の浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果の計測方法。
【請求項7】
チャンバ内に、浮遊感染性インフルエンザウイルスを不活化させる不活化剤が噴霧された場合に、当該不活化剤による浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果を計測する方法であって、
チャンバ内に、所定量の浮遊感染性インフルエンザウイルスを注入し、
所定容量の空気をチャンバ内に導入する空気導入ステップと、
前記所定容量の空気がチャンバ内に導入されるに応じて、チャンバから排気される所定容量の空気を採取する空気採取ステップと
からなる各ステップを所定のサイクル数繰り返し行なうことで、所定の時間間隔でチャンバ内より所定容量の空気を採取し、
採取された所定容量の空気を、浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕捉できるフィルタに通過させる処理を、所定の時間間隔で採取された所定容量の空気それぞれについて行い、
各フィルタに捕捉された浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の定量分析を行うことにより、不活化剤がチャンバ内に噴霧された場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の経時変化を計測する
ことを特徴とする浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果の計測方法。
【請求項8】
チャンバ内に、浮遊感染性インフルエンザウイルスを不活化させる不活化装置が設置された場合に、当該不活化装置による浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果を計測する装置において、
チャンバに設けられ、所定量の浮遊感染性インフルエンザウイルスをチャンバ内部に注入するウイルス注入口と、
空気をチャンバ内に導入する空気導入口と、
前記空気導入口を介してチャンバ内に空気が押し込まれる所定容量の空気導入用バッグと、
前記所定容量の空気が前記空気導入口を介してチャンバ内に押し込まれチャンバ内に導入されるに応じて、チャンバから空気が排気される空気排気口と、
前記空気排気口を介して排気された空気を採取する空気採取用バッグと、
空気採取用バッグに採取された所定容量の空気を、吸引用通路を介して吸引する吸引手段と、
前記吸引用通路上に設けられ、浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕捉できるフィルタと
が備えられ、
所定の時間間隔で空気採取用バッグにより所定容量の空気を採取し、
採取された所定容量の空気を、前記吸引手段により吸引し、
各フィルタに捕捉された浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の定量分析を行うことにより、不活化装置がチャンバ内に設置された場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の経時変化を計測する
ことを特徴とする浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果の計測装置。
【請求項9】
チャンバ内に、浮遊感染性インフルエンザウイルスを不活化させる不活化剤が噴霧された場合に、当該不活剤による浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果を計測する装置において、
チャンバに設けられ、所定量の浮遊感染性インフルエンザウイルスをチャンバ内部に注入するウイルス注入口と、
空気をチャンバ内に導入する空気導入口と、
前記空気導入口を介してチャンバ内に空気が押し込まれる所定容量の空気導入用バッグと、
前記所定容量の空気が前記空気導入口を介してチャンバ内に押し込まれチャンバ内に導入されるに応じて、チャンバから空気が排気される空気排気口と、
前記空気排気口を介して排気された空気を採取する空気採取用バッグと、
空気採取用バッグに採取された所定容量の空気を、吸引用通路を介して吸引する吸引手段と、
前記吸引用通路上に設けられ、浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕捉できるフィルタと
が備えられ、
所定の時間間隔で空気採取用バッグにより所定容量の空気を採取し、
採取された所定容量の空気を、前記吸引手段により吸引し、
各フィルタに捕捉された浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の定量分析を行うことにより、不活化剤がチャンバ内に設置された場合における浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価の経時変化を計測する
ことを特徴とする浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果の計測装置。
【請求項10】
導入空気若しくは排気空気中の浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕獲し不活化させる不活化フィルタによる浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果を計測する方法であって、
浮遊感染性インフルエンザウイルスを含む空気を、前記不活化フィルタの一方の面より吸入し、当該不活化フィルタの他方の面から排気させ、
前記不活化フィルタの他方の面から排気された空気を所定容量採取し、
採取された所定容量の空気を、浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕捉できる捕捉用フィルタに通過させ、
前記捕捉用フィルタに捕捉された浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価または/およびウイルス粒子数の定量分析を行うことにより、前記不活化フィルタの性能を評価する
ことを特徴とする浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果の計測方法。
【請求項11】
導入空気若しくは排気空気中の浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕獲し不活化させる不活化フィルタによる浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果を計測する方法であって、
浮遊感染性インフルエンザウイルスを含む空気を、前記不活化フィルタの一方の面より吸入し、当該不活化フィルタの他方の面から排気させ、
前記不活化フィルタの他方の面から排気された空気を、浮遊感染性インフルエンザウイルスに感染し得る生命体が存置されたチャンバ内に導入し、
浮遊感染性インフルエンザウイルスを含む空気がチャンバ内に導入されてから所定時間経過後に、前記生命体をチャンバより回収して、前記生命体を検査することにより、不活化フィルタによる浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力低減効果を計測する
ことを特徴とする浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果の計測方法。
【請求項12】
前記チャンバの出口から当該チャンバ内の空気を排気し、
前記チャンバから排気された空気を、浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕捉できる捕捉用フィルタに通過させ、
前記捕捉用フィルタに捕捉された浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価または/およびウイルス粒子数の定量分析を行うことにより、前記不活化フィルタの性能を評価する
ことを特徴とする請求項11記載の浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果の計測方法。
【請求項13】
導入空気若しくは排気空気中の浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕獲し不活化させる不活化フィルタによる浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果を計測する装置において、
浮遊感染性インフルエンザウイルスを含む空気を発生させる空気発生手段と、
前記空気発生手段と、前記不活化フィルタの一方の面とを連通する吸入通路と、
前記不活化フィルタの他方の面側に設けられ、前記不活化フィルタの他方の面から排気された空気を採取する所定容量の採取用バッグと、
前記不活化フィルタの他方の面と前記採取用バッグとを連通する排気通路と、
浮遊感染性インフルエンザウイルスを含む空気を、前記吸入通路を介して前記不活化フィルタの一方の面より吸入し、当該不活化フィルタの他方の面から前記排気通路を介して排気させる吸入・排気手段と、
前記排気通路を介して排気された空気を採取する空気採取用バッグと、
空気採取用バッグに採取された所定容量の空気を、吸引用通路を介して吸引する吸引手段と、
前記吸引用通路上に設けられ、浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕捉できる捕捉用フィルタと
が備えられ、
前記捕捉用フィルタに捕捉された浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価または/およびウイルス粒子数の定量分析を行うことにより、前記不活化フィルタの性能を評価する
ことを特徴とする浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果の計測装置。
【請求項14】
導入空気若しくは排気空気中の浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕獲し不活化させる不活化フィルタによる浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果を計測する装置において、
浮遊感染性インフルエンザウイルスを含む空気を発生させる空気発生手段と、
前記空気発生手段と、前記不活化フィルタの一方の面とを連通する吸入通路と、
前記不活化フィルタの他方の面側に設けられ、前記不活化フィルタの他方の面から排気された空気が導入されるチャンバであって、浮遊感染性インフルエンザウイルスに感染し得る生命体が存置されたチャンバと、
前記不活化フィルタの他方の面と前記チャンバとを連通する排気通路と、
浮遊感染性インフルエンザウイルスを含む空気を、前記吸入通路を介して前記不活化フィルタの一方の面より吸入し、当該不活化フィルタの他方の面から前記排気通路を介して排気させる吸入・排気手段と
が備えられ、
浮遊感染性インフルエンザウイルスを含む空気がチャンバ内に導入されてから所定時間経過後に、前記生命体をチャンバより回収して、前記生命体を検査することにより、不活化フィルタによる浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力低減効果を計測する
ことを特徴とする浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果の計測装置。
【請求項15】
前記チャンバに設けられ、当該チャンバ内の空気を排気する排気口と、
前記排気口を介して排気された空気を採取する空気採取用バッグと、
空気採取用バッグに採取された所定容量の空気を、吸引用通路を介して吸引する吸引手段と、
前記吸引用通路上に設けられ、浮遊感染性インフルエンザウイルスを捕捉できる捕捉用フィルタと
が備えられ、
前記捕捉用フィルタに捕捉された浮遊感染性インフルエンザウイルスの感染力価または/およびウイルス粒子数の定量分析を行うことにより、前記不活化フィルタの性能を評価する
ことを特徴とする請求項14記載の浮遊感染性インフルエンザウイルス不活化効果の計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−139682(P2011−139682A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2873(P2010−2873)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(500172645)株式会社オー・ティー・エー (2)
【Fターム(参考)】