説明

浮遊物・表層液の回収装置

【課題】表層の浮遊物を含む表層液の回収が効率よく行え、しかも、構造の簡素化を図ることができる浮遊物・表層液の回収装置を提供する。
【解決手段】上下に伸縮可能な可撓性部材3の上端に、内径を可撓性部材3の内径よりも小径に設定した吸込み口10を設け、前記吸込み口10の上端外周に周設した堰板1の下部に、前記可撓性部材3の内部液体を吸い出さないとき、前記吸込み口10への液の流れ込みがないよう、この吸込み口10の上端開口を液面より上に出た状態にするフロート2を設け、前記可撓性部材3の内部に流入した液体をこの可撓性部材3の内部に接続した吸込み管5で吸出すようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、異物を含有する液体の表層にある浮遊物を表層液と共に回収する浮遊物・表層液の回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、工作機械での切削加工に用いられる切削液は、クーラントタンクに回収し、研削屑、研磨屑、切削屑の沈殿したものや、液面表層に浮遊する研削屑、研磨屑、切削屑や油を分離する装置に送り込む事で、加工精度を高め、クーラント液のリサイクルを行っている。
【0003】
従来の浮遊物・表層液の回収装置は、液体を収納する液槽内に蛇腹筒からなる可撓性部材を配置し、この可撓性部材の内部で上部の位置にフロート本体を設け、前記フロート本体の上端が可撓性部材の上面から突出し、その上面がフロート本体と一体の堰板となり、フロート本体の中心を上下に貫通する液体流入口に吸込み管を挿入した構造になっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような回収装置は、ポンプの起動により可撓性部材の内部に満たした液体を吸込み管で吸出すと、可撓性部材の内部液体の液面が低下することで、フロート本体が下降して可撓性部材が縮み、堰板が外部液中に沈むことで、外部液体の表層が堰板の上面から液体流入口を通って可撓性部材の内部に流入し、可撓性部材の内部に液体が流入して液面が上昇すると、フロートが上昇して堰板を押上げ、外部液体の流入を停止することになる。
【0005】
また、別の回収装置は、液体を収納する液槽内に蛇腹筒からなる可撓性部材を配置し、この可撓性部材の上端部開口の周囲に、上面が堰板となる浮き部材と錘部材を固定し、可撓性部材の内部に上端の開口から吸込み管を挿入した構造になっている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
このような回収装置は、ポンプの起動により可撓性部材の内部に満たした液体を吸込み管で吸出すと、可撓性部材の液面が下がることで、可撓性部材が縮んでフロート本体が下降し、堰板が外部液中に沈むことで、外部液体の表層が堰板の上面から液体流入口を通って可撓性部材の内部に流入し、可撓性部材の内部に液体が流入して液面が上昇すると、フロートが上昇して堰板を押上げ、外部液体の流入を停止することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−26028号公報
【特許文献2】特表2003−527956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前者の回収装置は、可撓性部材の内部液面の変化で堰板を上下動させるため、可撓性部材の内部にフロート本体を収納する必要があり、このため、回収装置の全体構造が複雑になり、しかも、フロート本体と堰板が一体構造になっているので、構造的に浮力調整が困難となり、比重が異なる液体に対する対応や表層液の回収流量の調整に難がある。
【0009】
また、後者の回収装置は、蛇腹筒からなる可撓性部材に上面が堰板となる浮き部材と錘部材を固定し、浮き部材の重量と錘部材の浮力によってバランスを保ち、可撓性部材内の液面の変化による錘部材の浸漬の変動によって表層液を回収するので、浮力調整には浮き部材の重量と錘部材の浮力を調整しなければならず、比重が異なる液体に対する対応や表層液の回収流量の調整が困難であるという問題がある。
【0010】
そこで、この発明の課題は、上記のような問題点を解決するため、可撓性部材の内部液体を吸引することによって発生する負圧を用いて表層液を回収するようにし、表面の浮遊物を含む表層液の回収が少吐出量のベローズやダイヤフラム形の容積ポンプで行え、また、比較的吐出量が多い渦巻ポンプを使用する場合には、吸込み管を分岐することで、可撓性部材の吸込み口から液体と空気を吸込んでも、もう一方の吸込み口から液を吸込んでいるため、ポンプとしては安定的に負圧を発生することができ、堆積物と浮遊物の両方を同時に処理でき、しかも、構造の簡素化を図ることができる浮遊物・表層液の回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のような課題を解決するため、この発明は、下端部に吸込み管が内部と連通するよう接続された可撓性部材を上下に伸縮可能な円筒状の蛇腹を用いて形成し、この可撓性部材の上端に設けた吸込み口の上端外周に堰板を周設し、前記吸込み口の外周で堰板の下部に、前記可撓性部材の内部液体を吸い出さないとき、前記吸込み口への液の流れ込みがないよう、この吸込み口の上端開口を液面より上に位置させるフロートを設け、前記可撓性部材の上端に設けた吸込み口の内径を、この可撓性部材の内部に液体を流入させた状態で、前記液体を吸込み管で吸出すことにより、可撓性部材の内部に生じる負圧の変化で前記フロートを液面に対して浮上又は沈降させるように、前記可撓性部材の内径よりも小径に設定したものである。
【0012】
ここで、上記吸込み管は、後端がポンプに接続され、その先端吸込み口が、上記可撓性部材の内部と連通するよう、この可撓性部材の下部基板に接続され、可撓性部材の下端部の位置をこの吸込み管が固定保持しているようにすることができる。
【0013】
また、上記吸込み管は、後端がポンプに接続され、その先端側を上記可撓性部材の内部に吸込み口から挿入した場合、この吸込み管の先端周壁に吸引孔が設けられ、前記吸込み管の下端と可撓性部材の下部基板を接続することにより、可撓性部材の下端部の位置をこの吸込み管が固定保持するようになっている。
【0014】
上記可撓性部材は、上下に伸縮可能な筒状の蛇腹を用いて形成され、その上端に設けた吸込み口は、内径が可撓性部材の内径よりも小径に設定された円筒に形成され、この吸込み口の下端に連成した下部広がりのテーパーフランジに可撓性部材の上端が水密に固定され、前記吸込み口の上端部外周に、水平に張り出す円形フランジ状の堰板が一体に設けられ、この堰板の上面が外周縁から中央の吸込み口に向けて下がり勾配の傾斜面になっている。
【0015】
上記堰板の傾斜面上には、吸込み口に対して接線方向の配置となる複数枚の整流板が起立状に設けられ、堰板が液中に下降した場合に、外周縁から中央の吸込み口に向けて流れる液体に整流板で旋回流を生じさせ、吸込み口に流入する液体に旋回を与えることでその中心に空気柱を形成させ、可撓性部材の内部空気をこの空気柱で外部に流出させることにより、可撓性部材の内部における液体と空気の置換を円滑にし、可撓性部材の内部に液体が速やかに流れ込むようにしている。
【0016】
また、上記フロートは、例えば、吸込み口の外側に外嵌する内径と堰板と同様の外径を有する円筒状に形成され、このフロートは堰板の下面に重なるように取付けられ、可撓性部材の自然状態で堰板を液面の上に位置させると共に、可撓性部材の内部液体が吸出されることにより、可撓性部材の内部に発生する負圧によって可撓性部材が収縮することで、堰板が液中に浸漬するような浮力に設定されている。
【発明の効果】
【0017】
この発明によると、可撓性部材の上端に設けた吸込み口を可撓性部材の内径よりも小径に設定し、前記吸込み口の上端外周に周設した堰板の下部にフロートを取付け、前記可撓性部材の内部に流入した液体を吸込み管で吸出すようにしたので、可撓性部材の内部液体を吸引することにより発生する負圧により、異物を含有する液体の表層にある浮遊物を表層液と共に回収することができ、可撓性部材の内部圧力の変化に追従して堰板が昇降することで表層液の回収が効率よく行える。
【0018】
また、吸込み口の外周で堰板の下部にフロートを取付けたので、全体の構造を簡素化できる。しかも、フロートの取換えも可能な構造になるので、比重が異なる液体に対する浮力調整や堰板の沈み込みの深さ、スピードの調整が行え、浮遊物をより効率的に回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明に係る第1の実施の形態における回収装置の第1の例を示す縦断面図
【図2】この発明に係る第1の実施の形態における回収装置の第2の例を示す縦断面図
【図3】(a)は回収装置における可撓性部材と堰板及びフロートの構造を示す拡大した縦断正面図、(b)は堰板の平面図
【図4】(a)は回収装置における吸込み口のフロート取付け構造において、浮力の大きなフロートを取付けた状態を示す拡大した縦断正面図、(b)は同じく浮力の小さなフロートを取付けた状態を示す拡大した縦断正面図
【図5】第1の実施の形態における回収装置における可撓性部材の作動状態を示し、(a)は可撓性部材の堰板が液面上に位置する状態の断面図、(b)は内部の液体が吸出されて堰板が液中に沈降した状態の断面図、(c)は可撓性部材の中に液体が流入して液面上に堰板が浮上する状態の断面図
【図6】この発明に係る第2の実施の形態における回収装置の縦断面図
【図7】第2の実施の形態における回収装置における可撓性部材の作動状態を示し、(a)は可撓性部材の中が空で液面上に堰板が位置する状態の断面図、(b)は内部の液体が吸出されて堰板が液中に沈降した状態の断面図、(c)は可撓性部材の中に液体が流入して液面上に堰板が浮上する状態の断面図、(d)は堰板が液中に沈降して液体が可撓性部材の中に流入している状態の断面図、(e)は可撓性部材の中に液体が流入して液面上に堰板が浮上する状態の断面図
【図8】第2の実施の形態における回収装置において、可撓性部材と吸込み管の接続構造の他の例を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0021】
図1乃至図5は、回収装置の第1の実施の形態を示し、例えば、クーラントタンクに貯留したクーラント液の表層に浮遊する研削屑や研磨屑、切削屑を、ポンプで表層液と共に吸引して、液体と屑を分離する装置に送り込むためのものであり、回収装置は、上端部外周に堰板1が設けられ、この堰板1の下面にフロート2を固定した伸縮可能な可撓性部材3と、前記可撓性部材3の下端を閉鎖する下部基板3aに先端を取付け、この可撓性部材3の内部と連通するように接続した吸込み管5とで形成され、前記吸込み管5の後端がポンプ6の吸引口に接続されている。
【0022】
上記可撓性部材3は、例えば、回収したクーラント液aを貯留するクーラントタンク7の内部に、上端の堰板1がフロート2の浮力により液面の変動に追従して上下動するよう、クーラント液aに浸漬する配置となり、また、ポンプ6もクーラント液aに浸漬するよう配置される。このポンプ6は、図示の場合、渦巻ポンプを用いている。
【0023】
なお、クーラントタンク7の内部で、流入管8によってこのクーラントタンク7に回収後のクーラント液aが流入する部分に、大きな異物を除去するためのスクリーン9が設けてある。
【0024】
上記可撓性部材3は、非透水性の材料を用い、上下に伸縮自在となる円筒状の蛇腹で形成され、その上端に形成した円筒状の吸込み口10は、その内径が可撓性部材3の内径よりも小径に設定されている。
【0025】
上記吸込み口10は、図3のように、可撓性部材3とは別部材となる円筒部材10aよって形成され、この円筒部材10aの下端に連成した下部広がりのテーパーフランジ11に可撓性部材3の上端を水密に固定し、前記円筒部材10aの上端部外周に、可撓性部材3の外径よりも少し大径で水平に張り出す円形フランジ状の堰板1が一体に設けられ、この堰板1の上面が外周縁から中央の吸込み口に向けて下がり勾配の傾斜面12になっている。
【0026】
上記堰板1の傾斜面12上には、図3(b)のように、吸込み口10に対して接線方向の配置となる複数枚の整流板13が起立状に設けられ、堰板1がクーラント液aの中に下降した場合に、傾斜面12上を外周縁から中央の吸込み口10に向けて流れるクーラント液aに整流板13で旋回流を生じさせるようにしている。
【0027】
この整流板13は、吸込み口10に向けて流入するクーラント液に旋回を与えることで、吸込み口10に流入するクーラント液aの中心に外気と通じる空気柱を形成させ、可撓性部材3の内部空気をこの空気柱で外部に流出させることにより、可撓性部材3の内部におけるクーラント液aと空気の置換を円滑にし、可撓性部材3の内部にクーラント液aが速やかに流れ込むようにしている。
【0028】
上記フロート2は、内部が吸込み口10となる円筒部材10aの外側に外嵌する内径と堰板1と略同様の外径を有する円筒状に形成され、このフロート2は堰板1の下面に重なるように取付けられ、可撓性部材3の内部が自然状態で堰板1を液面aの上に位置させると共に、可撓性部材3の内部をクーラント液aで満たした状態で、上記吸込み管5により内部クーラント液aを吸引すると、可撓性部材3の内部の内部に負圧が発生し、この負圧によって前記可撓性部材3が収縮することで、堰板1がクーラントタンク7内に貯留したクーラント液aの中に浸漬するような浮力に設定されている。
【0029】
図4(a)と(b)は、フロート2の浮力の選択が自在に行えるようにするための吸込み口10の構造を示し、円筒部材10aを上円筒部材10a1と下円筒部材10a2に二分して嵌め合わせによる接続構造とし、両者をビス14で分離可能に接続するようにし、上円筒部材10a1の上端に堰板1を設けると共に、下円筒部材10a2の下端にテーパーフランジ11が設けられている。
【0030】
上記上円筒部材10a1と下円筒部材10a2を分離できることにより、フロート2は、図4(a)のように、上下の長さを長くした浮力の大きなものと、図4(b)のように、上下の長さを短くした浮力の小さなもののように、外径や厚さを変えることで、浮力の選択が可能になり、比重が異なる液体に対する浮力の調整が行えることになる。
【0031】
図1に示す第1の例の回収装置は、クーラントタンク7内の底部に設置したポンプ6の吸引口15と可撓性部材3を接続する吸込み管5が、直線部と立上がり部からなり、立上がり部の上向き先端に可撓性部材3を接続し、直線部の下面に別の吸込み口16を設け、クーラントタンク7内の底部堆積物をクーラント液aと共に吸引するようにし、吸込み管5の先端吸込み口が可撓性部材3内のクーラント液と空気を吸込んでも、ポンプ6としては安定的に負圧を発生することができるようにしている。
【0032】
また、上記ポンプ6の吐出口17に、吸引したクーラント液を浮遊物や堆積物の分離装置に送り込むための吐出管18が接続され、クーラントタンク7の外部に導き出されたこの吐出管18の途中に、可撓性部材3の内部に発生する負圧を調整するための調整弁19が設けられている。
【0033】
図2に示す第2の例の回収装置は、クーラントタンク7内の底部に設置したポンプ6の吸引口15に後端を接続した吸込み管5を途中で複数の分割吸込み管5aと5bに分割し、一方の分割吸込み管5aは、上向きに立上がり、その上向き先端に可撓性部材3が下部基板3aを介して接続されている。
また、他方の分割吸込み管5bは、上向きに屈曲する先端開口がクーラントタンク7内に貯留したクーラント液aの中間層を吸引し、一方の分割吸込み管5aが可撓性部材3内のクーラント液と空気を吸込んでも、ポンプ6としては安定的に負圧を発生することができるようにしている。
【0034】
また、ポンプの吐出口17に、吸引したクーラント液を浮遊物や堆積物の分離装置に送り込むための吐出管18が接続され、上記他方の分割吸込み管5bにおける立上がり部の先端に、可撓性部材3の内部に発生する負圧を調整するための調整弁19が設けられている。
【0035】
なお、何れの例においても、可撓性部材3の下端部に設けた下部基板3aの位置が吸込み管5や一方の分割吸込み管5aの上端によって、位置決めとなるよう固定保持されることになる。
【0036】
第1の実施の形態の回収装置は、上記のような構成であり、図1と図2のように、クーラントタンク7内に貯留したクーラント液aに、可撓性部材3とポンプ6が浸漬した吸出し前の状態では、可撓性部材3の内部に、別の吸込み口16や他方の分割吸込み管5bの先端吸込み口からクーラント液aが流入し、また、ポンプ6のポンプ室もクーラント液aで満たされることになり、図5(a)のように、フロート2の浮力で可撓性部材3は引き上げられて伸長し、堰板1はクーラント液aの液面上に位置しているので、堰板1上から吸込み口10を介して可撓性部材3内へのクーラント液aの流入はない。
【0037】
クーラントタンク7内に貯留したクーラント液aの浮遊物を表層液と共に回収するには、可撓性部材3の内部にクーラント液aが満たされた状態でポンプ6を作動させると、吸込み管5を介して可撓性部材3の内部クーラント液aが吸引され、内部クーラント液aの液面が低下し、可撓性部材3はその内径よりも上端の吸込み口10が小径に設定されているので、可撓性部材3の内部に負圧が発生し、可撓性部材3が収縮して堰板1が液面よりも沈むことになり、図5(b)で示したように、クーラント液aの表層液が堰板1の上面から吸込み口10を通って可撓性部材3の内部に流れ込む。
【0038】
可撓性部材3の内部にクーラント液aが流れ込むことで、図5(c)のように、可撓性部材3内の液面が上昇すると、可撓性部材3内の負圧が減圧され、フロート2の浮力によって堰板1はクーラント液aの液面よりも上になり流れ込みを停止する。
【0039】
このように、可撓性部材3の内部クーラント液aを吸込み管5を介してポンプ6で吸引すると、可撓性部材3は内部の負圧とフロート2の浮力で伸縮し、堰板1をクーラント液aの液面に対して上下に浮上、沈降動させ、クーラント液aの表層液を断続的に流入させることで、ポンプ6はクーラント液aの表層液を連続的に取出すことができ、ポンプ6で吸引されたクーラント液aは、吐出管18で浮遊物や堆積物の分離装置に送り込まれることになる。
【0040】
上記のようなクーラント液aの表層液の取出しにおいて、図1に示した第1の例では、吸込み管5の途中に設けた吸込み口16で、クーラント液aの下部堆積物を同時に吸引して回収することができる。
【0041】
また、図2に示した第2の例では、吸込み管5の他方分岐吸込み管5bの先端である吸込み口で、クーラント液aの中間層を同時に吸引して回収することができる。
【0042】
上記堰板1がクーラントタンク7内のクーラント液aに沈降し、堰板1の上面から吸込み口10に向けてクーラント液aが流入する場合に、堰板1の傾斜面上に整流板13が起立状に設けてあるので、吸込み口10に流入する液体の中心に外気と通じる空気柱を形成させ、可撓性部材3の内部における液体と空気の置換を円滑にし、可撓性部材3の内部にクーラント液aが速やかに流れ込むことになる。
【0043】
次に、図6乃至図8は、回収装置の第2の実施の形態を示している。この第2の実施の形態の回収装置は、クーラントタンク7に対してポンプ6を外部に設置すると共に、可撓性部材3に対して吸込み管5を上部から挿入したタイプであり、上述した第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して説明に代える。
【0044】
この第2の実施の形態の回収装置は、クーラントタンク7の内部に第1の実施の形態と同様の可撓性部材3を配置し、前記クーラントタンク7の外部に配置したポンプ6の吸引口に吸込み管5の後端を接続し、この吸込み管5の先端側を可撓性部材3の内部に、吸込み口10から垂直に挿入し、吸込み管5の先端を可撓性部材3の下部基板3aに接続し、吸込み管5の先端部周壁に設けた吸引孔20から可撓性部材3内のクーラント液aを吸引するようになっている。
【0045】
上記吸込み管5は、クーラントタンク7等の固定部分に上下動しないよう取付けられ、可撓性部材3の下部基板3aを一定の位置に保持していると共に、この吸込み管5の外径は、吸込み口10の口径よりも小径に設定され、吸込み口10へのクーラント液aの流入に支障を与えないようにしている。なお、図示の場合、ポンプ6には、少吐出量のベローズやダイヤフラム形の容積ポンプを使用している。
【0046】
第2の実施の形態の回収装置は、上記のような構成であり、図6のように、クーラントタンク7の内部に配置した可撓性部材3と外部に配置したポンプ6の吸引口を吸込み管5で接続し、クーラントタンク7のクーラント液a内に設置した状態では、図7(a)のように、フロート2の浮力で可撓性部材3は引き上げられて伸長し、堰板1はクーラント液aの液面上に位置しているので、可撓性部材3内へのクーラント液aの流入はない。
【0047】
クーラントタンク7内に貯留したクーラント液aの浮遊物を表層液と共に回収するには、図7(b)のように、堰板7を押し下げてクーラント液a中へ強制的に沈めるか、吸込み口10から内部にクーラント液を注入して、可撓性部材3の内部にクーラント液aを充満させた状態でポンプ6を起動する。
【0048】
ポンプ6の作動により、吸込み管5を介して吸引孔20で可撓性部材3の内部クーラント液aが吸引され、内部クーラント液aの液面が低下し、可撓性部材3はその内径よりも上端の吸込み口10が小径に設定されているので、可撓性部材3の内部に負圧が発生し、可撓性部材3が収縮して堰板1が液面よりも沈むことになり、図7(b)で示したように、クーラント液aの表層液が堰板1の上面から吸込み口10を通って可撓性部材3の内部に流れ込む。
【0049】
可撓性部材3の内部にクーラント液aが流れ込むことで、図7(c)のように、可撓性部材3内の液面が上昇すると、可撓性部材3内の負圧が減圧され、フロート2の浮力によって堰板1はクーラント液aの液面よりも上になり流れ込みが停止する。
【0050】
このように、可撓性部材3の内部クーラント液aを吸込み管5を介してポンプ6で吸引すると、可撓性部材3は内部の負圧とフロート2の浮力で伸縮し、図7(d)と図7(e)のように、堰板1をクーラント液aの液面に対して上下に出没動させ、クーラント液aの表層液を断続的に流入させることで、ポンプ6はクーラント液aの表層液を連続的に取出すことができ、ポンプ6で吸引されたクーラント液aは、吐出管18で浮遊物や堆積物の分離装置に送り込まれることになる。
【0051】
なお、第2の実施の形態の回収装置において、可撓性部材3に対する吸込み管5の配置は、図8に示すように、第1の実施例と同様、可撓性部材3の下部基板3aに吸込み管5を接続するようにしてもよく、クーラントタンク7内に貯留したクーラント液aの浮遊物を表層液と共に回収する場合の可撓性部材3の動作は、第1の実施例の場合と同じである。
【0052】
また、上記各実施の形態において、回収装置はクーラント液aの浮遊物を表層液と共に回収する場合を例示したが、これに限るものではなく、浮遊物が発生する汚水処理の現場においても使用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 堰板
2 フロート
3 可撓性部材
5 吸込み管
6 ポンプ
7 クーラントタンク
8 流入管
9 スクリーン
10 吸込み口
10a 円筒部材
11 テーパーフランジ
12 傾斜面
13 整流板
14 ビス
15 吸引口
16 吸込み口
17 吐出口
18 吐出管
19 調整弁
20 吸引孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部に吸込み管が内部と連通するよう接続された可撓性部材を上下に伸縮可能な円筒状の蛇腹を用いて形成し、
この可撓性部材の上端に設けた吸込み口の上端外周に堰板を周設し、
前記吸込み口の外周で堰板の下部に、前記可撓性部材の内部液体を吸い出さないとき、前記吸込み口への液の流れ込みがないよう、この吸込み口の上端開口を液面より上に位置させるフロートを設け、
前記可撓性部材の上端に設けた吸込み口の内径を、この可撓性部材の内部に液体を流入させた状態で、前記液体を吸込み管で吸出すことにより、可撓性部材の内部に生じる負圧の変化で前記フロートを液面に対して浮上又は沈降させるように、前記可撓性部材の内径よりも小径に設定した浮遊物・表層液の回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−104975(P2010−104975A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37708(P2009−37708)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【分割の表示】特願2008−278073(P2008−278073)の分割
【原出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【特許番号】特許第4347409号(P4347409)
【特許公報発行日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(000145105)株式会社寺田ポンプ製作所 (9)
【Fターム(参考)】