説明

浮遊物回収システム

【課題】 水面に形成させた潮目により水面の浮遊物の移動を制御し特定場所に誘導集積させて浮遊物を回収することにある。
【解決手段】 複数ノズル4から水面の流れに対向する方向に水を噴射することにより本流Cと噴射水Wの干渉による潮目Fを水面に形成させ、水面に形成させた潮目Fにより水面の浮遊物Dの移動を制御し特定場所に誘導集積させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、広く水面に漂流する例えば油やゴミなどの浮遊物を回収する技術に係り、特に、水面に形成させた潮目により水面の浮遊物の移動を制御し特定場所に誘導集積させるようにした浮遊物回収システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
広く水面に漂流する油やゴミなどの浮遊物を捕集するため、従来は船の両側に先端を拡げたガイド板、オイルフェンス及び長いブームに多数の散水式水噴射ノズルを取り付けた方法がとられていた。

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、長いガイド板及びオイルフェンスは波浪中では強度的に弱い、又水面への配置及びその撤去作業に手間がかかる、水抵抗が大きく操船が困難になる、等の問題があり、また、水噴射ブームは強度的に余り長くできない問題があった。
【0004】
また、従来の水噴射方式は図6に示すように散水によって水面に表面流を生じさせ、その表面流で浮遊物を移動させて回収するものであるが、この方法による表面流は弱く、図7に図示するように浮遊物が潜り抜ける欠点もあった。
【0005】
更に、従来の回収方式では、回収装置前面に浮遊してきた浮遊物が回収装置内に入らず側面から逃げていく問題点もあった。
【0006】
この発明は、上記のような課題に鑑み、その課題を解決すべく創案されたものであって、その目的とするところは、水面に形成させた潮目により水面の浮遊物の移動を制御し特定場所に誘導集積させて浮遊物を回収するようにした浮遊物回収システムを提供することにある。

【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するために、請求項1の発明は、複数ノズルから水面の流れに対向する方向に水を噴射することにより本流と噴射水の干渉による潮目を水面に形成させ、水面に形成させた潮目により水面の浮遊物の移動を制御し特定場所に誘導集積させる手段よりなるものである。
ここで、水面には海面及び淡水面の双方が含まれる。同様に水には淡水と海水の双方が含まれる。
【0008】
また、請求項1の発明の好ましい態様として、水面に形成させた潮目の下流側に回収装置の開口部を配置した。又ノズルの方向を少しずつ変えることにより噴射水に広がりをもたせ、広い幅の浮遊物を集積するようにした。更にノズルを垂直又は水平に密に配置し、それぞれのノズル方向を変えることにより潮目の形状を制御し、長い水噴射ブームを不要にした。

【発明の効果】
【0009】
以上の記載より明らかなように、この発明に係る浮遊物回収システムによれば、掃海幅を広くするために従来とられてきた長いガイド板、オイルフェンス及び水噴射ブームによる方法に代わり、本流と噴射水の干渉による潮目を形成させることによって、流体力学的に流れを制御し広い掃海幅で油やゴミなどを捕集することを可能にした。
【0010】
また、従来の回収方式で発生していた、回収装置前面に浮遊してきた浮遊物が回収装置内に入らず側面から逃げていく問題についても水面に形成させた潮目によって改善することを可能にした。
【0011】
従来からとられてきた長いガイド板、オイルフェンス及び水噴射ブームで問題であった強度については、水噴射ブームを短くできるので、解決できる。また、水に接しないので操船上の問題も発生しない。配置及び撤去も、回収装置と一体となることで容易となる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に記載の発明を実施するための最良の形態に基づいて、この発明をより具体的に説明する。
ここで、図1(A)は回収装置の水噴射ブームからの噴射水による潮目形成方向を示す平面図、図1(B)は噴射水による潮目形成方向を示す平面図、図2は各ノズル配置状態を示す水噴射ブームの斜視図、図3は各ノズルの方向を示す水噴射ブームの断面図、図4(A)は垂直にノズルを配置したときの側面図、図4(B)は垂直にノズルを配置したときの平面図、図5(A)は水平にノズルを配置したときの側面図、図5(B)は水平にノズルを配置したときの平面図である。
【0013】
図1において、油回収船や清掃船などからなる船舶の舷側1には例えば油やゴミなどの浮遊物Dを回収する回収装置2が設けられている。回収装置2は舷側1から側方に突出して設けられており、側方に突出する回収装置2の前部には開口部5が設けられていて、この開口部5から水面(海面及び淡水面の双方を含む)に浮遊する浮遊物Dを回収装置2の内部に回収する構造になっている。
【0014】
回収装置2の開口部5の外側端部には外側方に向けて水噴射ブーム3が張り出して設けられている。水噴射ブーム3は例えばその先端側が少し前方に向けて突出するように配置されている。水噴射ブーム3は水面に潮目Fを形成させる噴射水W(海水及び淡水を含む)を噴出する機器で、水噴射ブーム3には噴射水Wを噴出する複数のノズル4が取り付けられている。水噴射ブーム3の基端側には給水ホースの一端が接続されている。給水ホースの他端側は図示しない船舶内のポンプなどを介して海水中や淡水中にあって、海水や淡水を水噴射ブーム3の複数のノズル4から噴射するようになっている。
【0015】
水噴射ブーム3の複数のノズル4は、先端側に位置するノズル4aからは遠くまで噴射水Wが噴射され、基端側つまり開口部5側寄りに位置するノズル4fからは近くに噴射水Wが噴射されるようになっている。このため、水噴射ブーム3に取り付けられた複数の各ノズル4a〜4fの向きは、図3に図示するように、水噴射ブーム3の最も先端側寄り位置するノズル4aが水平向きに近く、開口部5側寄りに向かって各ノズル4b〜4fは徐々に下向き方向になっている。
【0016】
水噴射ブーム3の最も先端側寄り位置するノズル4aとその隣のノズル4bとの間には噴射方向の向きが異なるノズル4gが取り付けられている。水噴射ブーム3のノズル4fから噴射された噴射水Wが水面となす角度が垂直に近づくと潮目Fが形成されにくくなるが、このような時には図2に示すノズル4gのように離れた位置のノズルで補強する事が出来る。
【0017】
水噴射ブーム3の長さを短くするために、図4や図5に示すようにノズル8を垂直方向、ノズル9を水平方向に密に配置する方法が有効である。
【0018】
図4に示すように水噴射ブーム3を垂直方向に設け、垂直な水噴射ブーム3にノズル8を垂直方向に配置する場合には、最上段のノズル8の向きを少し外側方向に向け、下側に向かって順次ノズル8の向きを舷側1に平行に近づくように配置して取り付ける。
【0019】
図5に示すように水噴射ブーム3を水平方向に設け、水平な水噴射ブーム3にノズル9を水平方向に配置する場合には、最先端寄り側のノズル9の向きを少し外側方向に向け、基端側に向かって順次ノズル9の向きを舷側1に平行に近づくように配置して取り付ける。
【0020】
次に、上記発明を実施するための最良の形態の構成に基づく作用について以下説明する。
この発明では本流に対向する方向に水を噴射させることにより、流れと噴射水の間に潮目Fを形成させ、この潮目Fを油やゴミなどの浮遊物Dの通過を阻止するためのバリヤとして利用するものである。
【0021】
図1で本流の方向Cに対向する方向に水噴射ブーム3の各ノズル4から噴射水Wを発生させると浮遊物Dが漂流する水面には潮目Fが形成される。潮目Fは本流の方向Cに対して外側方から回収装置2の開口部5の外側端部に向かって斜め方向に形成される。
【0022】
潮目Fでは潮目に沿った方向に本流が曲げられ、浮遊物Dは潮目Fの下流側に配置された回収装置2の開口部5へ向かって移動し、開口部5から回収装置2内に回収される。
【0023】
水噴射ブーム3のノズル4の取り付け位置を図2及び図3に示すように上下左右に少しずつずらすことにより、潮目Fを船側両舷に「八」の字にすることができ、広い掃海幅で浮遊物Dを円滑に回収装置2の開口部5へ誘導することができる。
【0024】
なお、この発明は上記発明を実施するための最良の形態に限定されるものではなく、この発明の精神を逸脱しない範囲で種々の改変をなし得ることは勿論である。

【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(A)はこの発明を実施するための最良の形態における回収装置の水噴射ブームからの噴射水による潮目形成方向を示す平面図である。 (B)はこの発明を実施するための最良の形態における噴射水による潮目形成方向を示す平面図である。
【図2】この発明を実施するための最良の形態における各ノズル配置状態を示す水噴射ブームの斜視図である。
【図3】この発明を実施するための最良の形態における各ノズルの方向を示す水噴射ブームの断面図である。
【図4】(A)はこの発明を実施するための最良の形態における垂直にノズルを配置したときの側面図である。 (B)はこの発明を実施するための最良の形態における垂直にノズルを配置したときの平面図である。
【図5】(A)はこの発明を実施するための最良の形態における水平にノズルを配置したときの側面図である。 (B)はこの発明を実施するための最良の形態における水平にノズルを配置したときの平面図である。
【図6】従来方式の水噴射式かき集め方法を示す平面図である。
【図7】浮遊物の潜り込み通過現象を示す説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 船舶の舷側
2 回収装置
3 水噴射ブーム
4 ノズル
5 開口部
8 ノズル
9 ノズル
C 本流の方向
D 浮遊物
F 潮目
W 噴射水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数ノズルから水面の流れに対向する方向に水を噴射することにより本流と噴射水の干渉による潮目を水面に形成させ、水面に形成させた潮目により水面の浮遊物の移動を制御し特定場所に誘導集積させることを特徴とする浮遊物回収システム。
【請求項2】
水面に形成させた潮目の下流側に回収装置の開口部を配置した請求項1記載の浮遊物回収システム。
【請求項3】
ノズルの方向を少しずつ変えることにより噴射水に広がりをもたせ、広い幅の浮遊物を集積するようにした請求項1記載の浮遊物回収システム。
【請求項4】
ノズルを垂直又は水平に密に配置し、それぞれのノズル方向を変えることにより潮目の形状を制御し、長い水噴射ブームを不要にした請求項1記載の浮遊物回収システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−161215(P2007−161215A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−363929(P2005−363929)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(501119757)国土交通省中部地方整備局長 (12)
【出願人】(595073649)社団法人日本作業船協会 (6)
【出願人】(591037362)株式会社海洋開発技術研究所 (7)