説明

浴室ユニット

【課題】段差が生じることなく設置スペースの広狭に対応して仕上げられる浴室ユニットを提供する。
【解決手段】ロアフロア10と、ロアフロア10の上に固定されるアッパフロア20と、を備え、ロアフロア10に対するアッパフロア20の固定位置を変えることでフロア面のサイズを変更できる浴室ユニット1であって、ロアフロア10は上面S1の一辺側にその周辺より高い段部13を備え、段部13にアッパフロア20を載置させるとアッパフロアの上面S4がフロア面を構成し、アッパフロア20を段部13に突き当てた状態でロアフロア10に載置させると段部13の上面S2とアッパフロア20の上面S4とがフロア面を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浴室ユニットのフロアに係り、特に、浴室ユニットを設置する空間の寸法に応じてフロア面のサイズを調節できる浴室ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な浴室ユニットでは、図8に示すように、洗い場フロア101は浴槽フロア102と一体に構成されている。この種のフロア100は、複数の既製サイズのものが準備されており、浴室ユニットを設置する空間(以下、設置空間と言う)の寸法に応じて適宜選択されている。したがって、一つのフロアでは、寸法の異なる設置空間に対応することができなかった。
【0003】
そこで、寸法の異なる設置空間に対応して寸法調整を可能とした浴室装置が提案され、特許文献1に開示されている。この浴室装置は、複数の分割パンを備え、分割パン同士の重なる範囲を調節することで寸法の異なる設置空間に対応したフロアを構成している。
【特許文献1】特開平9−316952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の浴室装置は、フロアのベースを分割構成したものであり、各分割パン同士の重なる範囲を調節して設置しても、ベースの表面には分割パンの接合部の段差が残るため、そのままではフロア面として利用することはできない。そこで、ベースの上に床下地材やこの床下地材の上にタイルを敷き詰める必要がある(特許文献1の段落〔0045〕)。このように分割パン設置後に製品外観面としての意匠面を形成する作業を行うので、浴室ユニット設置の作業数が増加するという問題があった。
【0005】
本発明は以上の点に課題に鑑みて、フロア面のサイズ調整後も段差が出来ることなく仕上げられる浴室ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、ロアフロアとロアフロアの上に固定されるアッパフロアとを備え、ロアフロアに対するアッパフロアの固定位置を変えることでフロア面のサイズを変更できる浴室ユニットであって、ロアフロアは上面の一辺側にその周辺より高い段部を備え、段部にアッパフロアを載置させることでアッパフロアの上面をフロア面として構成し、アッパフロアを段部に突き当てた状態でロアフロアに載置させることで段部の上面とアッパフロアの上面とでフロア面を構成することを特徴としている。
【0007】
本発明の浴室ユニットにおいて、好ましくは、フロア面は洗い場であって、ロアフロアの段部には排水口を有する凹部が形成され、アッパフロアには凹部に対応した切欠部或いは開口が形成されている。
【0008】
本発明の浴室ユニットにおいて、好ましくは、ロアフロアには、切欠部或いは開口に対応した凸部が形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、浴室ユニットを設置する空間の寸法に応じてフロア面のサイズ、即ち面積を広くし又は狭くし得るフロアを構成できる。しかも、ロアフロアに対してアッパフロアを固定する際にいずれの位置に固定しようとも、固定後にそれらの上面には段差部が形成されない。したがって、特許文献1の浴室装置のような複数のパン同士を接合して構成したベースに下地剤・タイルなどを付設する後処理を行う必要がなく、作業を短時間で容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の実施形態に係る浴室ユニット1を示す分解斜視図である。
浴室ユニット1は、洗い場フロアを構成するものであり、ロアフロア10と、このロアフロア10に対して固定位置が選択されて固定されるアッパフロア20と、から二重構造に構成され、洗い場フロアのサイズを広狭何れかに調整可能として、浴室ユニット1の設置スペースの広狭に応じて対応できるようになっている。
【0011】
ロアフロア10は、長方形型のプレート(以下、ロアプレート部と称す)11と、このロアプレート部11の一方の長縁から立ち上がった側壁部12と、から構成されている。ロアプレート部11は、ロアプレート上面S1の一辺側にその周辺より高い段部13を備えている。この段部13は、図示例では側壁部12側の長縁11A(図1では鎖線で示す)に沿って、ロアプレート上面S1より高く形成されている。この段部13の上面S2は平らに形成され、段の高さH1は後述するアッパプレート部21の厚みt(図2参照)と同等に形成されている。段部13の長手方向中間部には、底部に排水口14aを有する凹部14が形成されている。この凹部14から他方の長縁11B側にずれた位置に凸部15がロアプレート上面S1に形成されている。この凸部15も、ロアプレート上面S1より高く形成されており、その上面S3が平らに形成され、その高さH2も後述するアッパプレート部21の厚みt(図2参照)と同等に形成されている。このロアフロア10は、樹脂で一体成形される。
なお、段部13と凸部15の上面S2,S3には色柄や滑り止め用模様パターン等の意匠が付されている。
【0012】
アッパフロア20は、長方形型のプレート(以下、アッパプレート部と称す)21と、このアッパプレート部21の一対の短縁と一方の長縁からそれぞれ立ち上がった3つの側壁部22〜24と、から構成されている。
このアッパプレート部21の長手方向の寸法L1はロアプレート部11の寸法L2と同じに設定されているが、幅方向の寸法W1はロアプレート部11の寸法W2よりも20〜100mm程度短く設定されている。アッパフロア20の側壁部22〜24の高さH3は、ロアフロア10の側壁部12の高さ(ロアプレート部表面からの高さ)H4と同じに設定されている。
【0013】
アッパプレート部21は、側壁部がない長縁(以下、この長縁を開放端と言う)21Aの長手方向中間部に、切欠部25を有する。この切欠部25は、ロアフロア10の凹部14に対応して形成されたものであり、後述するように、アッパプレート部21をロアプレート部11の段部13及び凸部15に載置させた際、凹部14を開放させるものである。また、後述するように、アッパプレート部21をロアプレート上面S1に載置させた際、切欠部25に前述の凸部15が嵌入する。
【0014】
さらに、アッパプレート部21は、図2に示すように、側壁部24が立ち上がっている長縁側のアッパプレート下面から下方へ突出した脚部26を備えている。この脚部26は、図3に示すように、アッパプレート部21がロアプレート部11の段部13に載置された際にアッパプレート部21が傾くことを防止する。このアッパフロア20は、樹脂で一体成形される。
なお、アッパプレート部21の上面S4には色柄や滑り止め用模様パターン等の意匠が付されている。
【0015】
このように構成された浴室ユニット1の使用方法について説明する。
先ず、フロアを設置するスペースが狭い場合には、図4に示すように、アッパプレート部21をロアプレート部11の段部13及び凸部15の上に載置させる。その際、アッパプレート部21の開放端21Aをロアフロア10の側壁部12に突き当てると共に、凹部14が開放されるよう、アッパプレート部21の切欠部25をロアプレート部11の凹部14の上に配置する。両者を重ねるとき、例えば接着剤を用いてアッパフロア20をロアフロア10に固定する。これにより、ロアフロア10に対してアッパフロア20が横方向にはみ出さないようにアッパフロア20はロアフロア10の上に取り付けられる。この場合、意匠面を有する段部13はアッパプレート部21で覆われるため、フロア面はアッパプレート部21の上面S4だけで構成される。
なお、アッパプレート部21の開放端21Aとロアフロア10の側壁部12との隙間にはコーキング剤等を充填し、止水処理を施す。これにより、四方が防水壁で囲われた洗い場フロアF1が構成される。
【0016】
さらに、このように構成された洗い場フロアF1に隣接して浴槽フロアが設けられる場合、次のように洗い場フロアと浴槽フロアとを接続すると良い。
図5(A)に示すように、ロアフロア10の段部13側を浴槽フロア側に寄せて配置し、浴槽フロアの側壁部40の上部から外側に突出した接続部41をロアフロア10の側壁部12の上端部に連結する。ここで、浴槽フロアの接続部41とは、側壁部40の上部から水平方向外側に延出した水平部41Aとこの水平部41Aの先端から下方に延出した垂下部41Bとから構成されている。図5に示すように、この接続部41と浴槽フロアの側壁部40との間に画成される溝部43にロアフロア10の側壁部12の上部を嵌挿し、両者をねじ50で固定する。その際、接続部41と側壁部12の上部との間にパッキン60を挟み込むことで、止水が可能となる。
【0017】
フロアを設置するスペースが広い場合には、アッパプレート部21をロアプレート部11の上面S1に直接載置させる。その際、図6に示すように、アッパプレート部21の切欠部25に凸部15を嵌挿させると共にアッパプレート部21の開放端21Aをロアフロア10の段部13に突き当てる。これにより、アッパプレート部21を段部13及び凸部15に載置させた場合に比べて、開放端21Aが段差13の幅分ずれた位置に配置されるため、アッパフロア20がロアフロア10の端から横方向にはみ出す。よって、フロア面は、アッパプレート部21だけでなく、このアッパプレート部21の上面S4と同じ高さ位置に平面を有する段部13及び凸部15の上面S2,S3とによって画成され、図4に示す洗い場フロアF1よりも広い洗い場フロアF2が形作られる。
【0018】
なお、図6に示すように、ロアフロア10の側壁部12の端とアッパフロア20の側壁部22,23の端との間に開口27,27が画成されるので、これらの開口27,27を塞ぐように板状の埋めプレート30を取り付ける。このようにして、防水壁が四方に構成される。また、アッパプレート部21の開放端21Aとロアプレート部11との隙間等にはコーキング剤等を充填し、止水処理を施す。
【0019】
このように構成された洗い場フロアF2に隣接して浴槽フロアが設けられる場合、次のように両者を接続すると良い。
図5(B)に示すように、ロアフロア10の段部13側を浴槽フロア側に寄せて配置し、浴槽フロアの側壁部40の上部から外側に突出した接続部41をロアフロア10の側壁部12の上端部に連結する。具体的には図5(B)に示すように、この接続部41の垂下部41Bの外側表面にロアフロア10の側壁部12の上部を突き当てて、両者をねじ50で固定する。その際、接続部41と側壁部12の上部との間にパッキン60を挟み込むことで、止水が可能となる。
【0020】
このように、本発明の浴室ユニット1によれば、浴室ユニットを設置する空間の寸法に応じてフロア面のサイズ、即ち面積の異なるフロアF1,F2を構成することができる。しかも、ロアフロア10に対するアッパフロア20の固定位置がいずれの場合でも、固定後にそれらの上面には段差部が構成されない。さらに、ロアプレート部11の段部13の上面S2とアッパプレート部2の上面S4には滑り止め用の模様パターンなどの意匠が付されているので、組立後に製品外観面としての意匠面を形成する作業を行う必要がない。したがって、特許文献1の浴室装置のような複数のパン同士を接合して構成したベースに下地剤・タイルなどを付設する後処理を行う必要がなく、作業を短時間で容易に行える。
【0021】
本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で、記述した以外の様々な形態で実施をすることができる。
上記説明では、洗い場フロアが浴槽フロアに隣接して設けられる場合を例示したが、浴槽フロアを備えない浴室ユニットにも適用可能である。この場合、例えば、図7(A)及び(B)に示すように、バスエプロン70の下端をロアフロア10の側壁部12の上端に接続させる。その際、バスエプロン70とロアフロア10との間にパッキン(図示省略)を挟むことで止水が可能である。なお、図4に示すように、狭い設置スペースの場合の洗い場フロアF1には、ロアフロア10の側壁部12の端とアッパフロア20の側壁部22,23の端との高さが異なることから段差が構成される(図4のαの領域)。この段差に整合するようにエプロンの下端(図7(A)のβの領域)を加工するとよい。
また、上記構成例では、アッパプレート部21に切欠部25が形成されているが、この切欠部25に代えて、四方が囲まれた開口を用いてよい。この場合、凸部15は、凹部14から所定の距離をおいた位置に設けられる。
なお、アッパプレート部21及びロアプレート部11は、長方形に限らず正方形であってもよいことは明らかである。本発明の浴室ユニットは、図面の寸法サイズ及びその比率に限定されるものではないことも言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る浴室ユニットの分解斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るアッパフロアの足部の機能を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態に係る浴室ユニットの組立状態を示す斜視図である。
【図5】(A)及び(B)は本発明の実施形態に係る浴室ユニットにより構成される洗い場フロアに、浴槽フロアを接続する構成を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る浴室ユニットの他の組立状態を示す斜視図である。
【図7】(A)及び(B)は本発明の実施形態に係る浴室ユニットにより構成される洗い場フロアに、バスエプロンを接続する構成を示す図である。
【図8】従来のシステムバスのフロアを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1 浴室ユニット
2 アッパプレート部
10 ロアフロア
11 ロアプレート部
11A,11B 長縁
12,22〜24,40 側壁部
13 段部
14 凹部
14a 排水口
15 凸部
20 アッパフロア
21 アッパプレート部
21A 開放端
25 切欠部
26 足部
27 開口
30 プレート
41 接続部
41A 水平部
41B 垂下部
43 溝部
60 パッキン
70 バスエプロン
F1,F2 フロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロアフロアと、該ロアフロアの上に固定されるアッパフロアと、を備え、
上記ロアフロアに対する上記アッパフロアの固定位置を変えることでフロア面のサイズを変更できる浴室ユニットであって、
上記ロアフロアは上面の一辺側にその周辺より高い段部を備え、
上記段部に上記アッパフロアを載置させることで該アッパフロアの上面がフロア面を構成し、
上記アッパフロアを上記段部に突き当てた状態で上記ロアフロアに載置させることで該段部の上面と該アッパフロアの上面とがフロア面を構成することを特徴とする、浴室ユニット。
【請求項2】
前記フロア面は洗い場であって、
前記段部には、排水口を有する凹部が形成されており、
前記アッパフロアには、上記凹部に対応した切欠部或いは開口が形成されている、請求項1に記載の浴室ユニット。
【請求項3】
前記ロアフロアには、前記切欠部或いは開口に対応した凸部が形成されている、請求項2に記載の浴室ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−144408(P2009−144408A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322631(P2007−322631)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(392008529)ヤマハリビングテック株式会社 (349)
【Fターム(参考)】