説明

浴室ユニット

【課題】熱可塑性樹脂を用いて床面を形成しながらも、壁部材を狙い通りに組み上げることが可能な浴室ユニットを提供すること。
【解決手段】洗い場床パンFPは、その周縁部が一対の支柱部材よりも外側に位置するように予め大きめに形成されており、支柱部材に対応する壁載置部の一部を支柱部材に当接させるように圧縮変形させ、洗い場床パンFPの水平面投影領域を矯正する矯正部CMa,CMbを設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽と、床部材と、壁部材と、壁部材を支持する柱状の支柱部材と、を備える浴室ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
このような浴槽と壁部材と床部材とを備える浴室ユニットは、いわゆる在来工法の浴室に対して施工性及び生産性に優れることから広く普及している。浴室ユニットの床部材は、浴室の床としての強度や防水性や成形性といった様々な要求品質を満たしやすいことから、繊維樹脂強化プラスチック(以下、FRP(Fiber Reinforced Plastic)ともいう)によって形成されている。
【0003】
FRPによって形成された床部材は、上述した強度や防水性や成形性といった要求品質を満たすためには優れたものであるが、解決すべき課題もある。下記特許文献1では、FRP製の床部材が抱えるリサイクル課題を解決するために一つの提案を行っている。このリサイクル課題とは、FRPが炭素繊維といった強化材料を熱硬化性樹脂によってバインドすることで形成されることに起因するものであって、熱溶解してあらたな製品に成形し直すといった単純なリサイクル工程が適用できないことに起因する課題である。
【0004】
このような課題を解決するものとして下記特許文献1では、建物床上に据え付けられるフレーム状架台と、フレーム状架台の上に固定される板状架台と、板状架台の上に支持される防水パンと、を備える床部材が提案されている。防水パンは熱可塑性樹脂からなり、フレーム状架台は鋼材からなり、板状架台は2枚の金属板の間に芯材を挟んでなるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−25122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術は、最上層に配置される防水パンを熱可塑性樹脂によって構成することで、上述したリサイクル課題を解決すると共に、FRP単一材料の一体構造では得られない素材選択の自由度も得られる優れた技術である。
【0007】
しかしながら、熱可塑性樹脂は、線膨張係数が大きいものであり、与えられる熱の変動によって膨張したり収縮したりする性質がある。そのため、床部材単体としては上述したような優れた性質を持つものの、温度条件によっては、床部材から立ち上がるように設けられる壁部材との間に隙間が生じる可能性もある。この隙間が生じないように、床部材の外周に沿って壁部材を配置しようとすれば、壁部材を支えるために立設されている支持部材によって壁部材の両端は拘束されていることから、壁部材の中央が内側に引き込まれるようになり、壁部材を組み上げることができなくなる可能性もある。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱可塑性樹脂を用いて床面を形成しながらも、壁部材を狙い通りに組み上げることが可能な浴室ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係る浴室ユニットは、浴槽と、前記浴槽の一辺と隣接する位置に配置される略矩形状の床部材と、前記浴槽および前記洗い場床部材の周囲に立設される板状の壁部材と、前記壁部材を支持する柱状の支柱部材と、を備える浴室ユニットであって、前記床部材は、熱可塑性樹脂を発泡成形することで形成され、前記浴槽に沿う辺を除く他辺の周縁部に前記壁部材が載置される壁載置部が一体的に設けられてなる洗い場床パンと、前記洗い場床パンの線膨張係数よりも小さい線膨張係数となり且つ前記洗い場床パンの剛性よりも高い剛性となるように形成され、前記洗い場床パンの下側に配置される床支持部材と、を有する。前記支柱部材は、前記床支持部材に対して取り付けられると共に、前記洗い場床パンの外側から上方側に立設するように、間隔をあけて少なくとも一対設けられている。前記洗い場床パンは、その周縁部が前記一対の支柱部材よりも外側に位置するように予め大きめに形成されている。前記支柱部材に対応する前記壁載置部の一部を前記支柱部材に当接させるように圧縮変形させ、前記洗い場床パンの水平面投影領域を矯正する矯正手段を設けている。
【0010】
本発明によれば、洗い場の床面を構成する洗い場床パンを、熱可塑性樹脂によって形成しているので、成形時の二酸化炭素排出量を低減することが出来ると共に、リサイクルを容易なものとすることができる。洗い場床パンを発泡成形によって形成しているので、成形時の内圧を低減することができるため成形型の費用を低減することができ、洗い場床パン自体の軽量化を図ることもできる。洗い場床パンには、壁部材を載置するための壁載置部を一体的に設けているので、この壁載置部に壁部材を載せた状態を保つことで優れた防水性能を発揮することができる。支柱部材を床支持部材に対して取り付けることで、洗い場床パンに取り付けた場合に比較して、長期的に安定して壁部材を支持することができる。
【0011】
更に本発明では、例えば、洗い場床パンが収縮してしまったとしても、狙いの水平面投影領域を確保できるように、狙いの水平面投影領域よりも十分に大きく形成し、洗い場床パンを圧縮変形させることで、狙いの水平面投影領域を確保することができるように構成している。また、一対の支柱部材に対応する壁載置部の一部を支柱部材に当接させるように圧縮変形させているので、少なくとも一対の支柱部材に対応する位置における洗い場床パンの壁載置部を、壁部材を載せるための正規の位置に配置することができる。支柱部材を洗い場床パンの外側から壁部材側に立設するように設けており、この支柱部材よりも内側に洗い場床パンを圧縮変形させているので、浴室ユニットしての平面寸法を維持した状態で配置することができる。結果として、壁部材を支柱部材に沿って垂直に立設することができ、壁部材や天井パネルを密接させて取り付けることができる。
【0012】
また本発明に係る浴室ユニットでは、前記矯正手段は、少なくとも前記一対の支柱部材に対応する位置に設けられてなることも好ましい。
【0013】
この好ましい態様では、矯正手段を一対の支柱部材に対応する位置に設けているので、洗い場床パンを一対の支柱部材に対応する位置において確実に狙いの位置まで圧縮変形させることができる。そのため、一対の支柱部材が配置された場所においては、壁部材を確実に正規の位置に配置することができる。更に、一対の支柱部材間においては、壁部材が内側に入り込むことがなく、結果として壁部材を正規の位置に立設させることができる。従って、矯正手段を洗い場床パンを囲繞するように全周に設けることなく、洗い場床パンの水平面投影領域を矯正し、壁部材を支柱部材に沿って垂直に立設することができる。
【0014】
また本発明に係る浴室ユニットでは、前記矯正手段は、前記洗い場床パンの前記周縁部を、前記壁戴置部の内側に形成される洗い場床面に沿って内側に押し込むことで、前記洗い場床パンを圧縮変形させる押圧部を有し、前記押圧部は、前記床支持部材の周縁部から前記壁部材側に立設し、その上端が前記壁戴置部と略同等以上の高さに突出するように設けられていることも好ましい。
【0015】
この好ましい態様では、洗い場床パンの周縁部を内側に押し込むことで圧縮変形させる押圧部を、その上端が前記壁戴置部と略同等以上の高さに突出するように床支持部材に設けているので、洗い場床パンを一対の支柱部材に対応する位置においてより確実に狙いの位置まで圧縮変形させることができる。従って、一対の支柱部材が配置された場所においては、壁部材をより確実に正規の位置に配置することができる。
【0016】
また本発明に係る浴室ユニットでは、前記壁戴置部の上面は、前記洗い場床面よりも低い位置に形成され、前記一対の支柱部材間において前記壁戴置部が前記洗い場床面に沿って外側に膨らんだままの状態となった場合であっても、前記壁部材の下端が前記壁戴置部の上面に当接するように、前記壁戴置部の上面の幅が前記壁部材の下端の厚みよりも広く形成されていることも好ましい。
【0017】
この好ましい態様では、壁戴置部の上面を、洗い場床面よりも低い位置に形成しているので、壁部材の下端を確実に位置決めすることができる。特に、一対の支柱部材間において壁戴置部が洗い場床面に沿って外側に膨らんだままの状態となった場合であっても、壁部材の下端が壁戴置部の上面に当接するように、壁戴置部の上面の幅が壁部材の下端の厚みよりも広く形成されているので、壁戴置部の変形度合いによらずに壁部材を確実に立設させることができる。
【0018】
また本発明に係る浴室ユニットでは、前記矯正手段は、前記床支持部材に取り付けられ、前記支柱部材は、前記矯正手段に取り付けられることで前記床支持部材に対して取り付けられていることも好ましい。
【0019】
この好ましい態様では、矯正手段を床支持部材に取り付けて、支柱部材を床支持部材に対して間接的に取り付けることができるように構成している。従って、矯正手段は、支柱部材の床支持部材に対する取付部材として構成することができるので、全体の構成を簡素化することができる。
【0020】
また本発明に係る浴室ユニットでは、前記洗い場床パンの前記浴槽側周縁部に、前記床支持部材側に突出した排水ピットが形成されており、前記排水ピットは前記床支持部材との水平方向における位置ずれを規制するように、水平方向に拘束されていることも好ましい。
【0021】
この好ましい態様では、洗い場床パンの浴槽側周縁部に、床支持部材側に突出した排水ピットが形成されているので、この排水ピットを基準として水平方向における洗い場床パン全体の位置ずれを規制している。従って、この排水ピットを基準として、矯正手段が洗い場床パンを圧縮変形することになるので、矯正手段が配置されない浴槽側を特別な部材を用いることなく位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、熱可塑性樹脂を用いて床面を形成しながらも、壁部材を狙い通りに組み上げることが可能な浴室ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る浴室ユニットの概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す浴室ユニットの床部材を構成する洗い場床パン及び床支持部材を示す斜視図である。
【図3】図1に示す浴室ユニットの床部材を構成する洗い場床パン及び床支持部材を示す平面図である。
【図4】図1に示す浴室ユニットの床部材を構成する洗い場床パン及び床支持部材を示す平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る浴室ユニットの矯正部を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る浴室ユニットの矯正部を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る浴室ユニットの矯正部を示す断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る浴室ユニットにおいて、洗い場床パンの外周の一部を矯正した状態を示す平面図である。
【図9】図8のA−A断面図である。
【図10】図8のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0025】
本発明の実施形態に係る浴室ユニットの概略構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る浴室ユニットUBの概略構成を示す斜視図である。図1に示すように、浴室ユニットUBは、浴槽BTと、浴槽BTを囲むように立設される板状の壁部材WP1,WP2,WP3,WP4,WP5,WP6,WP7と、浴槽BTと壁部材WP1,WP2,WP3,WP4との間に配置される略矩形状の洗い場床パンFP及び床支持部材HP(床部材)と、壁部材WP1,WP2,WP3,WP4,WP5,WP6,WP7を支持する柱状の第一支柱部材PC1,PC2及び第二支柱部材PP1,PP2,PP3(支柱部材)と、を備える。
【0026】
図1においては、図面の視認性を考慮し、浴槽BT、壁部材WP1,WP2,WP3,WP4,WP5,WP6,WP7、第一支柱部材PC1,PC2及び第二支柱部材PP1,PP2,PP3は、それぞれ破線で外形を示した。また、壁部材WP1,WP2,WP3,WP4のいずれかは、ドア部材として開閉可能なように形成されている。
【0027】
洗い場床パンFPは、熱可塑性樹脂を発泡成形することで形成されている。洗い場床パンFPは、浴槽BTに沿う辺を除く他辺の周縁部に壁部材WP1,WP2,WP3,WP4が載置される壁載置部FPqが一体的に設けられている。壁載置部FPqは、洗い場床面FPpの外側に形成された溝状の部分である。壁載置部FPqの外側には、壁部材WP1,WP2,WP3,WP4側(上側)に立設するように、水返し壁部FPcが形成されている。
【0028】
洗い場床パンFPの浴槽BTに沿う辺の中央近傍には、排水ピットFPaが形成されている。排水ピットFPaは、排水金具(図示しない)が収められる部分であって、床支持部材HP側(下側)に突出した突起部を有している。洗い場床パンFPの中央領域には、位置規制部FPbが形成されている。位置規制部FPbは、床支持部材HP側(下側)に突出した突起部として形成されている。
【0029】
床支持部材HPは、洗い場床パンFPの線膨張係数よりも小さい線膨張係数となり且つ洗い場床パンFPの剛性よりも高い剛性となるように形成されている。床支持部材HPは、洗い場床パンFPの下側に配置される支持部材である。床支持部材HPは、床支持面HPp上に洗い場床パンFPを載せることで、洗い場床パンFPを支持している。
【0030】
床支持部材HPの浴槽BTに沿う辺の中央近傍には、排水ピット穴HPaが形成されている。排水ピット穴HPaは、排水ピットFPaが挿入される穴である。従って、洗い場床パンFPの排水ピットFPaは、床支持部材HPの排水ピット穴HPaに嵌め合わされることで、水平方向の位置ずれを規制するように水平方向において拘束される。
【0031】
床支持部材HPの中央領域には、位置規制穴HPbが形成されている。位置規制穴HPbは、位置規制部FPbが挿入される穴である。従って、洗い場床パンFPの位置規制部FPbは、床支持部材HPの位置規制穴HPbに嵌め合わされることで、水平方向の位置ずれを規制するように水平方向において拘束される。
【0032】
床支持部材HPの、浴槽BT側とは反対側における一対の角部には、それぞれ取付部材2(押圧部)が取り付けられている。取付部材2は、第一支柱部材PC1,PC2を床支持部材HPに対して取り付けるための金具である。取付部材2は、第一支柱部材PC1,PC2と組み合わされることで、矯正部CMbとして機能する。
【0033】
床支持部材HPの、浴槽BT側の辺以外の三辺には、それぞれ矯正部材12(押圧部)が取り付けられている。矯正部材12は、第二支柱部材PP1,PP2,PP3を床支持部材HPに対して取り付けるための金具である。矯正部材12は、第二支柱部材PP1,PP2,PP3と組み合わされることで、矯正部CMaとして機能する。
【0034】
床支持部材HPに対して洗い場床パンFPを戴置した状態を図2に示す。図2に示すように、床支持部材HPに対して洗い場床パンFPを戴置すると、取付部材2及び矯正部材12は、洗い場床パンFPよりも上方側から視認可能な位置まで突出する。取付部材2は、洗い場床パンFPを内側に向けて圧縮変形するように作用する。矯正部材12も同様に、洗い場床パンFPを内側に向けて圧縮変形するように作用する。
【0035】
このように、洗い場床パンFPが圧縮変形されて、その水平面投影領域が矯正される状態を、図3及び図4を参照しながら説明する。図3は、洗い場床パンFP及び床支持部材HPを模式的に示す平面図であって、矯正前の状態を示すものである。図4は、洗い場床パンFP及び床支持部材HPを模式的に示す平面図であって、矯正後の状態を示すものである。
【0036】
図3に示すように、矯正前の状態では、洗い場床パンFPの水平面投影領域は、床支持部材HPの水平面投影領域よりも大きくなるように構成されている。これは、洗い場床パンFPが、熱可塑性樹脂を発泡成形することで形成されていることに起因するものであり、当初の寸法設定上、水平面投影領域が大きくなるように構成されていても、成型後の収縮によって水平面投影領域が大きくなってしまっても構わないものである。
【0037】
図4に示すように、矯正部CMa及び矯正部CMbによって、洗い場床パンFPが内側に圧縮変形されることで、洗い場床パンFPの水平面投影領域が所定の領域となるように矯正される。より具体的には、洗い場床パンFPの周縁部に形成される壁載置部FPqに、壁部材WP1,WP2,WP3,WP4が戴置された場合に、壁部材WP1,WP2,WP3,WP4が所定の位置に設置可能な程度まで矯正されるものである。洗い場床パンFPは、矯正部CMa及び矯正部CMbによって圧縮変形されるので、矯正部CMa及び矯正部CMbが設けられた部分は、壁部材WP1,WP2,WP3,WP4が本来設置されるべき位置まで押し縮めされる。矯正部CMa及び矯正部CMbが設けられていない部分において、洗い場床パンFPは外側に撓んだままの状態になることも想定されるが、その場合であっても壁部材WP1,WP2,WP3,WP4が、壁戴置部FPqに入り込むように寸法設定されている。
【0038】
続いて、矯正部CMaについて図5を参照しながら説明する。図5は、矯正部CMa近傍を示す断面図である。図5に示すように、矯正部CMaは、矯正部材12と固定ネジ14とを有するものである。矯正部材12は、固定ネジ14によって床支持部材HPに固定される。矯正部材12は、L字状の金具であって、床支持部材HPの外周に沿って立ち上がるように配置される。
【0039】
続いて、図6に示すように、床支持部材HPに洗い場床パンFPを戴置すると、壁戴置部FPq及び水返し壁部FPcが形成された部分を、矯正部材12が内側に押し込むように作用する。図6に示すように、洗い場床パンFPにおいては、洗い場床面FPpの周囲に、壁載置部FPqが溝状に形成されている。従って、壁載置部FPqの溝下面である、壁載置部上面FPdは、洗い場床面FPpよりも一段下がった下方に位置するように形成されている。
【0040】
続いて、図7に示すように、矯正部材12に第二支柱部材PP1(PP2,PP3)を固定する。第二支柱部材PP1の下端には、係合突起PPaが形成されている。矯正部材12に第二支柱部材PP1を固定すると、矯正部材12と係合突起PPaとの間に水返し壁部FPcが挟み込まれて固定される。
【0041】
本実施形態では、床支持部材HPの水平面投影領域よりも、洗い場床パンFPの水平面投影領域が大きくなるように形成し、矯正部CMa,CMbによって洗い場床パンFPを水平面方向に沿って圧縮変形させることで、洗い場床パンFPの水平面投影領域を矯正している。この矯正度合いは、床支持部材HPの水平面投影領域と、洗い場床パンFPの水平面投影領域とが完全に一致する程度まで矯正される必要は必ずしもなく、壁部材WP1〜WP4が支障なく立設できれば足りるものである。従って、洗い場床パンFPの一部が床支持部材HPよりも外側に位置した状態であっても、壁部材WP1〜WP4が立設可能であればよいものである。その一例について、図8を参照しながら説明する。
【0042】
図8は、洗い場床パンFPの一部を矯正部CMa,CMbによって矯正しているものの、矯正部CMaと矯正部CMbとの間において洗い場床パンFPがはみ出している状態を示す平面的な模式図である。図8のA−A断面を図9に示し、図8のB−B断面を図10に示す。
【0043】
図9に示す部分は、矯正部CMaと矯正部CMbとの略中間に相当する部分であるので、洗い場床パンFPを内側に押し込む力が最も弱くなる。従って、洗い場床パンFPは、床支持部材HPよりも外側に位置する。図9に示すように、壁戴置部FPqにおける壁戴置部上面FPdの幅が、壁部材WP1の下端の厚みよりも十分に広くなるように構成されている。そのため、洗い場床パンFPが外側にずれていても、壁部材WP1は壁戴置部FPqの内側に当接し、壁戴置部FPqの内部に収まる。
【0044】
一方、図10に示す部分は、矯正部CMbに近接する部分であるので、洗い場床パンFPを内側に押し込む力が強くなる。従って、洗い場床パンFPは、床支持部材HPよりも内側に位置する。図10に示すように、壁戴置部FPqにおける壁戴置部上面FPdの幅が、壁部材WP1の下端の厚みよりも十分に広くなるように構成されている。そのため、洗い場床パンFPが内側にずれていても、壁部材WP1は壁戴置部FPqの外側に当接し、壁戴置部FPqの内部に収まる。
【0045】
尚、上述した本実施形態では、洗い場床パンFPを内側に圧縮変形させる矯正手段として、矯正部CMaと矯正部CMbとを部分的に設けたけれども、壁部材WP1〜WP4を支障なく立設可能であれば、この態様に限られるものではない。例えば、床支持部材の外周を、壁部材WP1〜WP4が配置される3辺に渡って立ち上げて、洗い場床パンFPを内側に圧縮変形させることも好ましいものである。
【0046】
上述したように本実施形態では、洗い場床パンFPは、その周縁部が支柱部材PP1,PP2,PP3よりも外側に位置するように、床支持部材HPよりも大きな水平面投影領域となるように、予め大きめに形成されている。第一支柱部材PC1,PC2及び第二支柱部材PP1,PP2,PP3に対応する壁載置部FPqの一部を第一支柱部材PC1,PC2及び第二支柱部材PP1,PP2,PP3に当接させるように圧縮変形させ、洗い場床パンFPの水平面投影領域を矯正する矯正手段としての矯正部CMa,CMbを設けている。
【0047】
本実施形態によれば、洗い場の床面を構成する洗い場床パンFPを、熱可塑性樹脂によって形成しているので、成形時の二酸化炭素排出量を低減することが出来ると共に、リサイクルを容易なものとすることができる。洗い場床パンFPを発泡成形によって形成しているので、成形時の内圧を低減することができるため成形型の費用を低減することができ、洗い場床パン自体の軽量化を図ることもできる。洗い場床パンFPには、壁部材WP1〜WP4を載置するための壁載置部FPqを一体的に設けているので、この壁載置部FPqに壁部材WP1〜WP4を載せた状態を保つことで優れた防水性能を発揮することができる。第一支柱部材PC1,PC2及び第二支柱部材PP1,PP2,PP3を床支持部材HPに対して取り付けることで、洗い場床パンFPに取り付けた場合に比較して、長期的に安定して壁部材WP1〜WP4を支持することができる。
【0048】
更に本実施形態では、例えば、洗い場床パンFPが収縮してしまったとしても、狙いの水平面投影領域を確保できるように、狙いの水平面投影領域よりも十分に大きく形成し、洗い場床パンFPを圧縮変形させることで、狙いの水平面投影領域を確保することができるように構成している。また、第一支柱部材PC1,PC2及び第二支柱部材PP1,PP2,PP3に対応する壁載置部FPqの一部を第一支柱部材PC1,PC2及び第二支柱部材PP1,PP2,PP3に当接させるように圧縮変形させているので、少なくとも第一支柱部材PC1,PC2及び第二支柱部材PP1,PP2,PP3に対応する位置における洗い場床パンFPの壁載置部FPqを、壁部材WP1〜WP4を載せるための正規の位置に配置することができる。第一支柱部材PC1,PC2及び第二支柱部材PP1,PP2,PP3を洗い場床パンFPの外側から壁部材WP1〜WP4側に立設するように設けており、これら第一支柱部材PC1,PC2及び第二支柱部材PP1,PP2,PP3よりも内側に洗い場床パンFPを圧縮変形させているので、浴室ユニットとしての平面寸法を維持した状態で配置することができる。結果として、壁部材WP1〜WP4を第一支柱部材PC1,PC2及び第二支柱部材PP1,PP2,PP3に沿って垂直に立設することができ、壁部材や天井パネルを密接させて取り付けることができる。
【0049】
また本実施形態では、矯正部CMa,CMbを第一支柱部材PC1,PC2及び第二支柱部材PP1,PP2,PP3に対応する位置に設けているので、洗い場床パンFPを第一支柱部材PC1,PC2及び第二支柱部材PP1,PP2,PP3に対応する位置において確実に狙いの位置まで圧縮変形させることができる。そのため、第一支柱部材PC1,PC2及び第二支柱部材PP1,PP2,PP3が配置された場所においては、壁部材WP1〜WP4を確実に正規の位置に配置することができる。更に、第一支柱部材PC1,PC2及び第二支柱部材PP1,PP2,PP3それぞれの間においては、壁部材WP1〜WP4が内側に入り込むことがなく、結果として壁部材WP1〜WP4を正規の位置に立設させることができる。従って、矯正部CMa,CMbを洗い場床パンFPを囲繞するように全周に設けることなく、洗い場床パンFPの水平面投影領域を矯正し、壁部材WP1〜WP4を第一支柱部材PC1,PC2及び第二支柱部材PP1,PP2,PP3に沿って垂直に立設することができる。
【0050】
また本実施形態では、洗い場床パンFPの周縁部を内側に押し込むことで圧縮変形させる押圧部として機能する取付部材2及び矯正部材12を、その上端が壁戴置部FPqと略同等以上の高さに突出するように床支持部材HPに設けているので、洗い場床パンFPを第一支柱部材PC1,PC2及び第二支柱部材PP1,PP2,PP3に対応する位置においてより確実に狙いの位置まで圧縮変形させることができる。従って、第一支柱部材PC1,PC2及び第二支柱部材PP1,PP2,PP3が配置された場所においては、壁部材WP1〜WP4をより確実に正規の位置に配置することができる。
【0051】
また本実施形態では、壁戴置部FPqの壁戴置部上面FPdを、洗い場床面FPpよりも低い位置に形成しているので、壁部材WP1〜WP4の下端を確実に位置決めすることができる。特に、第一支柱部材PC1,PC2及び第二支柱部材PP1,PP2,PP3それぞれの間において壁戴置部FPqが洗い場床面FPpに沿って外側に膨らんだままの状態となった場合であっても、壁部材WP1〜WP4の下端が壁戴置部上面FPdに当接するように、壁戴置部上面FPdの幅が壁部材WP1〜WP4の下端の厚みよりも広く形成されているので、壁戴置部FPqの変形度合いによらずに壁部材WP1〜WP4を確実に立設させることができる。
【0052】
また本実施形態では、矯正部CMa,CMbを床支持部材HPに取り付けて、第一支柱部材PC1,PC2及び第二支柱部材PP1,PP2,PP3を床支持部材HPに対して間接的に取り付けることができるように構成している。従って、矯正部CMa,CMbは、第一支柱部材PC1,PC2及び第二支柱部材PP1,PP2,PP3の床支持部材HPに対する取付部材として構成することができるので、全体の構成を簡素化することができる。
【0053】
また本実施形態では、洗い場床パンFPの浴槽BT側周縁部に、床支持部材HP側に突出した排水ピットFPaが形成されているので、この排水ピットFPaを基準として水平方向における洗い場床パンFP全体の位置ずれを規制している。従って、この排水ピットFPaを基準として、矯正部CMa,CMbが洗い場床パンFPを圧縮変形することになるので、矯正部CMa,CMbが配置されない浴槽BT側を特別な部材を用いることなく位置決めすることができる。
【0054】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0055】
UB:浴室ユニット
BT:浴槽
WP1,WP2,WP3,WP4,WP5,WP6,WP7:壁部材
PC1,PC2:第一支柱部材
PCa:係合突起
PP1,PP2,PP3:第二支柱部材
PPa:係合突起
FP:洗い場床パン(床部材)
FPa:排水ピット
FPb:位置規制部
FPc:水返し壁部
FPd:壁載置部上面
FPq:壁載置部
FPp:洗い場床面
HP:床支持部材(床部材)
HPa:排水ピット穴
HPb:位置規制穴
HPp:床支持面
CMa:矯正部
CMb:矯正部
12:矯正部材
2:取付部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と、前記浴槽の一辺と隣接する位置に配置される略矩形状の床部材と、前記浴槽および前記洗い場床部材の周囲に立設される板状の壁部材と、前記壁部材を支持する柱状の支柱部材と、を備える浴室ユニットであって、
前記床部材は、
熱可塑性樹脂を発泡成形することで形成され、前記浴槽に沿う辺を除く他辺の周縁部に前記壁部材が載置される壁載置部が一体的に設けられてなる洗い場床パンと、
前記洗い場床パンの線膨張係数よりも小さい線膨張係数となり且つ前記洗い場床パンの剛性よりも高い剛性となるように形成され、前記洗い場床パンの下側に配置される床支持部材と、を有し、
前記支柱部材は、前記床支持部材に対して取り付けられると共に、前記洗い場床パンの外側から上方側に立設するように、間隔をあけて少なくとも一対設けられており、
前記洗い場床パンは、その周縁部が前記一対の支柱部材よりも外側に位置するように予め大きめに形成されており、
前記支柱部材に対応する前記壁載置部の一部を前記支柱部材に当接させるように圧縮変形させ、前記洗い場床パンの水平面投影領域を矯正する矯正手段を設けたことを特徴とする浴室ユニット。
【請求項2】
前記矯正手段は、少なくとも前記一対の支柱部材に対応する位置に設けられてなることを特徴とする請求項1に記載の浴室ユニット。
【請求項3】
前記矯正手段は、前記洗い場床パンの前記周縁部を、前記壁戴置部の内側に形成される洗い場床面に沿って内側に押し込むことで、前記洗い場床パンを圧縮変形させる押圧部を有し、
前記押圧部は、前記床支持部材の周縁部から前記壁部材側に立設し、その上端が前記壁戴置部と略同等以上の高さに突出するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の浴室ユニット。
【請求項4】
前記壁戴置部の上面は、前記洗い場床面よりも低い位置に形成され、
前記一対の支柱部材間において前記壁戴置部が前記洗い場床面に沿って外側に膨らんだままの状態となった場合であっても、前記壁部材の下端が前記壁戴置部の上面に当接するように、前記壁戴置部の上面の幅が前記壁部材の下端の厚みよりも広く形成されていることを特徴とする請求項2に記載の浴室ユニット。
【請求項5】
前記矯正手段は、前記床支持部材に取り付けられ、
前記支柱部材は、前記矯正手段に取り付けられることで前記床支持部材に対して取り付けられていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の浴室ユニット。
【請求項6】
前記洗い場床パンの前記浴槽側周縁部に、前記床支持部材側に突出した排水ピットが形成されており、前記排水ピットは前記床支持部材との水平方向における位置ずれを規制するように、水平方向に拘束されていることを特徴とする請求項5に記載の浴室ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−197622(P2012−197622A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63014(P2011−63014)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】