説明

浴室用吊り架台

【課題】 土台の所定位置からずらして引掛け片を引掛けて取付けなければならないような場合に、床パンに垂設したアジャスターボルトを載置して床パンを所定位置に配置することができる。
【解決手段】 浴室用吊り架台は、支持バー1の両端部にそれぞれ土台2又は梁の上面に引掛けて取付けるための引掛け片3を設けて構成してある。支持バー1に、床パン4の下端部に垂設したアジャスターボルト5の下端部を載置するための受け部6を設ける。そして、本発明の特徴とするところは、平面視で支持バー1の長手方向と直交する方向における上記受け部6の幅を、アジャスターボルト5の下端部の幅及び引掛け片3の幅よりも幅広としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の大引間に架け渡して洗い場床パンや浴槽用床パンを載設支持するための浴室用吊り架台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物の大引間に架け渡して浴室の床パンを載設支持するようにした浴室用吊り架台が特許文献1により知られている。
【0003】
上記浴室用吊り架台は、支持バーの両端部にそれぞれ土台又は梁の上面に引掛けて取付けるための引掛け片を設けて構成してあり、両端部の引掛け片を、それぞれ対向する土台の上面の所定位置に引掛けて取付け、床パンの下面部の所定位置に垂設したアジャスターボルトの下端部を支持バー上に載置することで、床パンを支持するようになっていた。そして、アジャスターボルトの高さ調整をすることで、床パンの高さ調整を行うようになっていた。
【0004】
アジャスターボルトは床パンの下面部の所定位置に垂設してあるので、床パンを設計上の所定位置に配置するには、浴室用吊り架台の土台に対する架設位置(つまり引掛け片の土台の上面に対する引掛け取付け位置)が平面視で支持バーの長手方向と直交する方向において一義的に決まっている。
【0005】
しかしながら、現場においては土台上面の本来引掛け片を引掛けなければならない位置に間柱などの障害物が存在する場合がある。このような場合は、土台の所定位置に引掛け片を引掛けて取付けることができず、したがって床パンを設計上の所定位置に配置することができないという問題がある。
【0006】
そこで、現場においては土台上面の本来引掛け片を引掛けなければならない位置に間柱などの障害物が存在して浴室用吊り架台が本来の位置よりもずれて架設された場合であっても、浴室用吊り架台に載置して床パンを設計上の所定位置に配置することができるようにするものとして、図7に示すような脚20を床パン4に垂設したものが知られている。
【0007】
この図7に示す従来例においては、平面視で、脚20の下端面部の浴室用吊り架台の支持バーの長手方向と直交する方向の横幅が、支持バーの長手方向と直交する方向の横幅よりも広く形成してあり、現場において間柱などの障害物があって、浴室用吊り架台が本来の位置よりもずれて架設された場合であっても、横幅の広い脚20の下端面部の幅方向の一部を支持バー上に載置して、床パンを設計上の所定位置に配置することができるようにしてある。
【0008】
しかしながら、この従来例にあっては、幅の広い脚20は高さ調整機能を有していないため、床パン4の高さ調整をするには、土台の上面と引掛け片との間に高さ調整用のスペーサ部材を介在させたり、あるいは、脚20の下端面部と支持バーの上面との間に高さ調整用のスペーサ部材を介在させることで、高さ調整を行う必要があった。具体的には、介在するスペーサの枚数を調整したり、厚みの異なるスペーサ部材を使い分けて高さ調整を行う必要がある。
【0009】
このように、上記の従来例においては、床パン4の脚20自体に高さ調整機能がないので、別途スペーサ部材が必要であり、また、別体のスペーサ部材を介在して高さ調整を行うので、高さ調整作業が面倒となり、また、床パン4の脚20自体に高さ調整機能がないので、スラブ上に直接載置するというような施工をする場合も、別途スペーサ部材を用意しなければならないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−176326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したもので、土台の所定位置からずらして引掛け片を引掛けて取付けなければならないような場合に、床パンに垂設したアジャスターボルトを載置して床パンを所定位置に配置することができる浴室用吊り架台を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような構成となっている。
【0013】
本発明の浴室用吊り架台は、支持バー1の両端部にそれぞれ土台2又は梁の上面に引掛けて取付けるための引掛け片3を設けて構成してある。支持バー1に、床パン4の下端部に垂設したアジャスターボルト5の下端部を載置するための受け部6を設ける。そして、本発明の特徴とするところは、平面視で支持バー1の長手方向と直交する方向における上記受け部6の幅を、アジャスターボルト5の下端部の幅及び引掛け片3の幅よりも幅広として成ることである。
【0014】
このように平面視で支持バー1の長手方向と直交する方向における受け部6の幅を、アジャスターボルト5の下端部の幅及び引掛け片3の幅よりも幅広してあるので、土台2又は梁の所定位置からずらして引掛け片3を引掛けて取付けなければならないような場合でも、床パン4に垂設したアジャスターボルト5を幅広の受け部6の幅方向の中心からずれた位置において載置して床パン4を所定位置に配置することができる。
【0015】
また、浴室用吊り架台は、支持バー1の両端部にそれぞれ土台2又は梁の上面に引掛けて取付けるための引掛け片3を設け、床パン4の下端部に垂設したアジャスターボルト5の下端部を載置するための受け部6を支持バー1に設け、平面視で支持バー1の長手方向と直交する方向における上記受け部6の幅の中心と、引掛け片3の幅の中心とを支持バー1の長手方向と直交する方向にずらして成ることを特徴とするものであってもよい。
【0016】
このように平面視で支持バー1の長手方向と直交する方向における上記受け部6の幅の中心と、引掛け片3の幅の中心とを支持バー1の長手方向と直交する方向にずらしてあるので、土台2又は梁の所定位置からずらして引掛け片3を引掛けて取付けなければならないような場合でも、床パン4に垂設したアジャスターボルト5を受け部6の中心に載置して床パン4を所定位置に配置することができる。ここで、土台2又は梁に対して引掛け片3をずらして引っ掛ける方向が上記と逆の場合は、平面視で浴室用吊り架台7を180度回転して土台2又は梁間に架設することで、床パン4に垂設したアジャスターボルト5を受け部6の中心に載置して床パン4を所定位置に配置することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上記のように、土台又は梁の所定位置からずらして引掛け片を引掛けて取付けなければならないような場合でも、床パンに垂設したアジャスターボルトを受け部に載置して床パンを所定位置に配置することができる。また、アジャスターボルトを載置できるので、浴室用吊り架台側に高さ調整機能を必要としたり、あるいは、高さ調整用の別部材のスペーサ部材を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態の浴室用吊り架台の斜視図である。
【図2】(a)は同上の浴室用吊り架台の施工例を示す平面図であり、(b)は浴室用吊り架台に床パンを配設した状態の概略平面図である。
【図3】同上の断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態の浴室用吊り架台の斜視図である。
【図5】(a)は同上の浴室用吊り架台の施工例を示す平面図であり、(b)は浴室用吊り架台に床パンを配設した状態の概略平面図である。
【図6】(a)は同上の浴室用吊り架台の他の施工例を示す平面図であり、(b)は浴室用吊り架台に床パンを配設した状態の概略平面図である。
【図7】従来の床パンに脚を垂設した例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0020】
図1には本発明の浴室用吊り架台7の一実施形態が示してある。浴室用吊り架台7は支持バー1の長手方向の両端部に吊り下げ部8を設けて構成してある。
【0021】
吊り下げ部8は支持バー1の両端部から上方に突出する立ち上がり片9と、該立ち上がり片9の上端部から支持バー1と反対方向に水平に突出する引掛け片3とからなるもので、添付図面に示す実施形態においては、立ち上がり片9の少なくとも中間部又は上部は斜め外上方に向けて傾斜している。
【0022】
支持バー1の上面部には長手方向の複数個所(添付図面に示す実施形態では2箇所)に、床パン4の下端部に垂設したアジャスターボルト5の下端部を載置するための受け部6が設けてある。
【0023】
本実施形態では受け部6は、平面視で支持バー1の長手方向に対して直交する方向の幅M1が引掛け片3の支持バー1の長手方向に対して直交する方向の幅M2より長く設定してある。しかも、受け部6の平面視で支持バー1の長手方向に対して直交する方向の幅M1は支持バー1の支持バー1の長手方向に対して直交する方向の幅よりも長く、且つ、受け部6の平面視で支持バー1の長手方向に対して直交する方向の両端部が支持バー1の長手方向に対して直交する方向の両端部よりも外方向に突出している。受け部6はコ字状をしていて、受け部6の平面視で支持バー1の長手方向に対して直交する方向の両端部が上方に突出した上向き突片10を設けてある。図1の実施形態では引掛け片3の支持バー1の長手方向に対して直交する方向の幅M2は、支持バー1の長手方向に対して直交する方向の幅と等しくなっている。
【0024】
上記の構成の支持バー1は図2(a)に示すように、建物の浴室を形成する箇所の周囲に対向して配設された土台2又は梁間に配置し、両端部の引掛け片3をそれぞれ土台2又は梁の上面に引掛け、引掛け片3を釘やねじで土台2又は梁に固着することで取付ける。
【0025】
ここで、上記のように支持バー1を土台2又は梁間に架設するに当たり、架設位置、つまり引掛け片3の取付位置は、設計上決められている床パン4下面のアジャスターボルト5の位置に受け部6が位置するように引掛け片3の取付け位置が決められる。
【0026】
このようにして土台2又は梁間に支持バー1を架設した後、図2(b)、図3に示すように、支持バー1の受け部6の幅方向の中心に床パン4の下面に垂設した高さ調整機能を有するアジャスターボルト5を載設して浴室の床を形成するものであり、この際、アジャスターボルト5を操作して高さ調整することで、床パン4の高さ調整をする。
【0027】
その後、床パン4の外端部に壁パネル(図示せず)、出入り口枠(図示せず)を立設して浴室の壁を形成し、更に、その後、壁パネル、出入り口枠の上端に天井パネルの端部を掛け渡して取付けることで、浴室の天井を形成する。
【0028】
上記のようにして浴室を組み立て形成するのであるが、支持バー1を土台2又は梁間に架設する際、現場によっては、土台2又は梁の上面の本来引掛け片3を位置させなければならない所定位置に、図2のように間柱11などの障害物が存在している場合があり、この場合は、本来の引掛け片3の取付け位置から間柱11などの障害物を除けて、本来の取付け位置からずらして取付ける。
【0029】
しかしながら本実施形態においては、平面視で支持バー1の長手方向と直交する方向における受け部6の幅を、アジャスターボルト5の下端部の幅及び引掛け片3の幅よりも幅広にしてあるので、床パン4に垂設したアジャスターボルト5を幅広の受け部6の幅方向の中心からずれた位置において載置して床パン4を所定位置に配置することができる。
【0030】
なお図中12は建物躯体の柱である。
【0031】
次に、図4に基づいて本発明の浴室用吊り架台7の他の実施形態を説明する。
【0032】
本実施形態の浴室用吊り架台7は、受け部6の形態が異なる以外は前述の実施形態と同様であるので、異なる点について説明し、重複する構成の説明は省略する。
【0033】
本実施形態においては、支持バー1の上面部には長手方向の複数個所(添付図面に示す実施形態では2箇所)に、床パン4の下端部に垂設したアジャスターボルト5の下端部を載置するための受け部6が設けてある。
【0034】
本実施形態では受け部6は、平面視で支持バー1の長手方向と直交する方向における受け部6の幅の中心と、引掛け片3の幅の中心とを支持バー1の長手方向と直交する方向にずらしてある。しかも、受け部6は、平面視で支持バー1の長手方向に対して直交する方向において、片側が支持バー1の上に載設固着され且つ他の片側が支持バー1の長手方向に対して直交する方向の側端部よりも外方向に突出している。この受け部6はコ字状をしていて、受け部6の平面視で支持バー1の長手方向に対して直交する方向の両端部が上方に突出した上向き突片10を設けてある。
【0035】
本実施形態の浴室用吊り架台7は、図5(a)のように間柱11などの障害物が存在している場合に使用するもので、該間柱11などの障害物に隣接して土台2又は梁上面に引掛け片3を引掛け載置して固着する。本実施形態においては、平面視で支持バー1の長手方向と直交する方向における上記受け部6の幅の中心と、引掛け片3の幅の中心とを支持バー1の長手方向と直交する方向にずらしてあるので、上記のように間柱11などの障害物が存在しているため、所定位置からずらして引掛け片3を引掛けて取付けた場合、図5(b)のように床パン4に垂設したアジャスターボルト5を受け部6の中心に載置して床パン4を所定位置に配置することができる。
【0036】
また、図6(a)のように間柱11などの障害物があるため土台2又は梁に対する引掛け片3の引掛け載置する位置が上記と逆の場合は、平面視で浴室用吊り架台7を180度回転して間柱11などの障害物に隣接して土台2又は梁間に架設することで、上記と同様に床パン4に垂設したアジャスターボルト5を図6(a)のように受け部6の中心に載置して床パン4を所定位置に配置することができる。
【0037】
また、図5、図6に示すように、間柱11などの障害物がない箇所においては、従来から使用している通常の浴室用吊り架台7Aを、土台2又は梁間の所定位置に配置して土台2又は梁の上面の所定位置に通常の浴室用吊り架台7Aの引掛け片3Aを引掛け載置して固着する。ここで、通常の浴室用吊り架台7Aにおいては、引掛け片3Aと受け部6Aとは平面視で支持バー1Aの長手方向と直交する方向の幅が同じであるため、床パン4に垂設したアジャスターボルト5を受け部6Aの中心に載置して床パン4を所定位置に配置することができる。
【0038】
なお、図2に示す実施形態においても、間柱11などの障害物がない箇所においては、従来から使用している通常の浴室用吊り架台7Aを、土台2又は梁間の所定位置に配置して土台2又は梁の上面の所定位置に通常の浴室用吊り架台7Aの引掛け片3Aを引掛け載置して固着してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 支持バー
2 土台
3 引掛け片
4 床パン
5 アジャスターボルト
6 受け部
7 浴室用吊り架台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持バーの両端部にそれぞれ土台又は梁の上面に引掛けて取付けるための引掛け片を設け、床パンの下端部に垂設したアジャスターボルトの下端部を載置するための受け部を支持バーに設け、平面視で支持バーの長手方向と直交する方向における上記受け部の幅を、アジャスターボルトの下端部の幅及び引掛け片の幅よりも幅広として成ることを特徴とする浴室用吊り架台。
【請求項2】
支持バーの両端部にそれぞれ土台又は梁の上面に引掛けて取付けるための引掛け片を設け、床パンの下端部に垂設したアジャスターボルトの下端部を載置するための受け部を支持バーに設け、平面視で支持バーの長手方向と直交する方向における上記受け部の幅の中心と、引掛け片の幅の中心とを支持バーの長手方向と直交する方向にずらして成ることを特徴とする浴室用吊り架台。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−196333(P2010−196333A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41523(P2009−41523)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】