説明

浴室

【課題】 浴室内の壁面の大掛かりな設計変更を伴うことなく、鏡の設置位置を容易且つ自在に変更することができ、複数の人間が浴室を使用する場合においても、かかる複数の人間が快適に作業することが可能な浴室を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明にかかる浴室100の構成は、当該浴室100に配置された浴槽120と、浴槽120と隣接して構成される洗い場(床面116)と、当該浴室100の浴槽120の長辺と対向する壁面に配列された複数のフック160と、フック160に掛合される掛合部190と鏡面部182を有する鏡180と、イス240と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鏡の設置位置を自在に変更可能な壁面を備える浴室に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅用の浴室は、浴室の一方の壁面に沿って浴槽が配置され、残る面積が洗い場となった構成が極めて多く採用されている。設置面積が限られているため、浴室は浴槽と洗い場とに二分されており、いずれも長方形をなしている。浴室への出入口は洗い場に設けられており、ほとんどの場合は洗い場の奥まった壁面に鏡やカラン(水栓)が取り付けられている。
【0003】
また浴室には、使用者が浴室で体や髪を洗う際に自身の姿を視認するために、備え付けの鏡が設けられている。これにより、使用者は自身の姿を視認し、体や髪の洗い残し等を確認することができ、利便性が向上する。
【0004】
かかる鏡は、使用者が浴室で体や髪を洗う等の作業を行う際に最も必要とされ、使用者が浴室で体や髪を洗うときには水栓であるカランから湯を得るため、使用者はカランを備える壁面を正面とすることが多い。したがって、鏡はカランを備える壁面のカランの上方に設けられることが多い。また、鏡使用時の作業性を向上させるために、カランを備える壁面の鏡の上方には照明が設けられる。
【0005】
上記の理由から、長方形をなす洗い場の奥まった壁面(一般的には長方形の短辺に相当する壁面)に、鏡、照明、カラン、カウンタ(洗面台置き場)、シャワーフックなどが配置された構成が一般的となっている。ここで、上述した従来の浴室を、親と子供、介護者と要介護者等、複数の人間が使用する場合、以下のような問題が生じる。
【0006】
図7は、従来の浴室10を説明するための説明図であり、図8は、従来の浴室10における複数の人間の配置を説明するための説明図である。図7に示すように、従来の浴室10は、浴槽20と洗い場30に分割されており、洗い場30の奥まった壁面12(長方形の短辺に相当する壁面)に鏡32、カラン34、シャワー36、照明38、複数の人間が使用するための複数のイス40(図7中40a、40bで示す)を備えて構成される。なお図7中、従来の浴室10は2つのイス40(40a、40b)を備えるが、かかる数に限定するものではない。
【0007】
図7に示す浴室10を例えば親子で利用する場合、洗い場30が細長い長方形であることから、短辺に沿って2人が座ることは難しく、必然的に長辺に沿って並ぶことになる。したがって、通常は、図8に示すように親は子を洗うためにカラン34やシャワー36に近い位置に座わり、子は親の前に座ることになると考えられ、親がイス40aを使用し、子がイス40bを使用することになる。
【0008】
その結果、鏡32、カラン34、シャワー36および照明38は奥まった同一壁面12に設置されているため、子は、親が支障となり、鏡を使用できなくなってしまう。したがって、図7に示す鏡32の設置位置は、イス40aを使用する親にとっては使い勝手がよいが、イス40bを使用する子にとっては使い勝手が悪い。
【0009】
また、上記のように備え付けの鏡32であると、例えば、鏡32が浴室の壁面の下方に設置されていた場合、風呂イス等に座って体や髪を洗う使用者にとっては使い勝手がよいが、立って体や髪を洗う使用者にとっては使い勝手が悪い。
【0010】
したがって、備え付けの鏡32の設置位置が必ずしも使用者の使い勝手がよい位置であるとは限らない。また、使い勝手がよいか否かは使用者ごとに体型や感覚が異なるため、鏡32をすべての使用者にとって使い勝手がよい位置、すなわちすべての使用者に対して適切な位置に設置することは容易ではない。
【0011】
更に、備え付けの鏡32であると、これを浴室の壁面から取り外せないためその清掃を行いづらい。故に、鏡32の背面にカビ等の細菌類が繁殖しやすく、また清掃に煩雑な手間がかかり、鏡32の周辺が不衛生になりがちであった。
【0012】
したがって、上述した不具合を解消するために、例えば特許文献1には、表面が鏡面仕上げされた金属板の裏面に磁石からなるシート材を設けた浴室用鏡が開示されている。これによれば、取付場所を容易に変更でき、且つ壁面における浴室用鏡の周囲部分の清掃作業が容易になるとしている。
【特許文献1】特開2007−222362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に記載の技術であると、壁面が磁性を有する材料で構成されている場合には浴室用鏡の取付位置を容易且つ自在に変更することが可能である。しかし、壁面が磁性を有する材料で構成されていない場合には、浴室用鏡を壁面に取り付けることができない。したがって、壁面が磁性を有する材料で構成されていない場合には、壁面を磁性を有する材料からなる部材に変更するか、壁面に磁性を有する材料または金属からなるパネル等の部材を設置しなくてはならない。故に、いずれにおいても浴室内の壁面の大掛かりな設計変更を伴うため、手間とコストを要してしまう。
【0014】
本発明は、このような課題に鑑み、浴室内の壁面の大掛かりな設計変更を伴うことなく、鏡の設置位置を容易且つ自在に変更することができ、複数の人間が浴室を使用する場合においても、かかる複数の人間が快適に作業することが可能な浴室を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明にかかる浴室の代表的な構成は、当該浴室に配置された浴槽と、浴槽と隣接して構成される洗い場と、当該浴室の浴槽の長辺と対向する壁面に配列された複数のフックと、フックに掛合される掛合部と鏡面部を有する鏡と、イスと、を備えたことを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、浴槽の長辺と対向する壁面に複数設置されたフックのうち、使用者が所望する位置のフックに鏡の掛合部を掛合することにより、鏡を掛脱自在に取り付けることができる。これにより使用者は、イスの配置および座る向きに応じて、鏡の設置位置を容易且つ自在に所望の位置に変更することができる。したがって、一人の人間が浴室を使用する場合も、複数の人間が浴室を使用する場合においても、鏡を各人が使用しやすい位置に容易に変更することができるため、快適に洗い場を利用することができ、使用者の利便性が向上する。
【0017】
また複数のフックを壁面の水平方向に複数且つ垂直方向に複数設置することにより、フックは壁面に略碁盤目状に配列されることとなる。これにより、壁面の水平方向且つ垂直方向、すなわち壁面上の平面的な所望の位置に鏡を設置することができ、利便性を向上することが可能となる。
【0018】
フックは、洗い場の壁面のうち、浴槽に隣接する壁面と、該壁面に隣接し且つ直交する壁面に亘って設置されていてもよい。
【0019】
このように両壁面間で鏡が掛脱自在となっていることにより、使用者がいずれの方向を向いてイスに座った場合であっても、その正面の壁面に鏡を取り付けることができる。したがって、快適に浴室を使用することができる。
【0020】
浴槽に隣接する壁面にシャワー付のカランをさらに備え、鏡は、浴槽に隣接する壁面に設置されたフックと、該壁面に隣接し且つ直交する壁面に設置されたフックに掛脱自在に取付可能であってもよい。
【0021】
このように両壁面間で鏡が掛脱自在となっていることにより、使用者がカランと向き合うときには鏡をカランのある壁面(浴槽に隣接する壁面)に取り付けることができ、浴室に2人で入るときなどには鏡を両者の間(浴槽に対向する壁面)に取り付けることができる。このように、場面に応じて浴室の設備の位置を変更可能とすることにより、快適に浴室を使用することができる。
【0022】
上記のイスは複数であって、大きいイスと小さいイスの2つで構成されており、大きいイスが小さいイスを収納する入れ子構造を有していてもよい。
【0023】
かかる構成により、例えば浴室を一人の人間しか使用しない場合等、複数のイスを必要としない場合に、大きいイスの設置面積でかかる複数のイスを収納することができる。したがって、浴室の洗い場(床面)の面積を有効活用することが可能となる。
【0024】
複数のイスの少なくとも1つにシャワーフックを備えていてもよい。
【0025】
これにより、シャワーヘッドをイスに固定することができる。したがって、使用者は常にシャワーを自身の手元に設置しておくことができ、例えば、浴室を親子で利用する際に、親は、両手で子を洗った後、振り返って自身の背後からシャワーを把持し、再度、子の方に向きなおすといった煩雑な動作を経ることなく、シャワーを利用することが可能となる。
【0026】
大きいイスと小さいイスの両方にシャワーフックを備えていてもよい。
【0027】
これにより、使用者は常にシャワーを自身の手元に設置しておくことができ、使用者の利便性が向上する。また、当該イスをカウンタとして利用し、かかるイスに洗面器を設置した場合に、使用者がシャワーを把持せずとも直接洗面器に湯水を供給することができ、シャワーにカランの役割を担わせることが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、浴室内の壁面の大掛かりな設計変更を伴うことなく、イスの配置および座る向きに応じて、鏡の設置位置を容易且つ自在に変更することができる。したがって、複数の人間が浴室を使用する場合においても、かかる複数の人間が快適に作業することが可能な浴室を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0030】
図1は、本実施形態にかかる浴室100を示す図である。なお、本実施形態においては、近年家庭に最も普及しているユニットバスを浴室100として例示するがこれに限定するものではない。また、本実施形態では、浴室100を親子が利用する形態について説明する。
【0031】
図1に示すように、ユニットバスである浴室100は、壁面で区画された空間であり、壁面112、114および床面116により構成される。なお、壁面112、114以外の壁面、および浴室100外に設けられた脱衣所と通じるドアは、理解を容易にするため図示を省略する。
【0032】
壁面112は、後述する浴槽120に対向する壁面である。壁面114は、後述する浴槽120に隣接し、シャワー付のカラン130(水栓)を備える壁面である。なお、壁面112および114は、各々2つに分割されているように見えるが、これは壁面112および114が、共に2つのパネルから構成されているからである。本実施形態では、2つのパネルから構成される面を1つの壁面として説明する。
【0033】
床面116は、洗い場となる面であり、使用者(本実施形態では親子)が体や髪を洗う際に利用する。本実施形態において、床面116は、後述する浴槽120に沿う辺を長辺とする長方形である。
【0034】
また浴室100は、浴槽120、カラン130、シャワー140、照明150、複数のフック160、鏡180(180a、180bおよび180c)、収納部材200、イス240(240a、240b)を備える。
【0035】
浴槽120は、湯が貯留され、使用者が入浴するための槽である。カラン130およびシャワー140は水栓であり、給湯装置(図示せず)から湯水が供給される。
【0036】
照明150は、浴室100内の調光を行う機器である。本実施形態では、照明150は、浴槽120に対向する壁面112のうち、壁面112の水平方向の中央よりもカラン130に近い位置に設置される。これにより、浴槽120に対向する壁面112に設けられた鏡180を用いる場合、またカラン130を備える壁面114に設けられた鏡180を用いる場合のいずれにおいても、照明150から採光することが可能となる。換言すれば、使用者が浴槽120に対向する壁面112を正面とする場合、またカラン130を備える壁面114を正面とする場合のいずれにおいても、照明150により鏡180に光が照射されるため、複数の使用者が浴室100で各々別の鏡180を用いて作業をする際の作業性を向上することができ、利便性が向上する。
【0037】
フック160は、浴室100内の浴槽120の長辺と対向する壁面112に所定間隔ごとに複数設置される。そして、所定間隔ごとに複数設置されたフック160のうち、使用者が所望する位置のフック160に後述する鏡180の掛合部190を掛合することにより、鏡180がフック160に掛脱自在に取り付けられる。これにより、フック160に鏡180を吊り下げ、壁面に鏡180を設置することが可能となる。したがって、使用者は、壁面に設置されたフック160を用いて、鏡180の設置位置を容易且つ自在に所望の位置に変更できるため、複数の人間が浴室100を使用する場合においても、鏡180を各人が使用しやすい位置に適宜変更し、複数の人間が快適に作業することが可能となり、利便性が向上する。
【0038】
さらに本実施形態においては、フック160は浴槽120に隣接する壁面114にも配列されている。すなわちフック160は、洗い場の壁面112、114のうち、浴槽に隣接する壁面114と、これに隣接し且つ直交する壁面112に亘って設置されており、両壁面間で鏡180や収納部材200が掛脱自在となっている。
【0039】
このように両壁面間で鏡180が掛脱自在となっていることにより、使用者がいずれの方向を向いてイス240に座った場合であっても、その正面の壁面に鏡を取り付けることができる。したがって例えば、使用者がカラン130と向き合うときには鏡180を壁面114のフック160に取り付けることができ、浴室に2人で入るときや照明150の明かりが正面に欲しいときには鏡180を壁面112のフック160に取り付けることができる。このように、場面に応じて浴室の設備の位置を変更可能とすることにより、快適に使用することができる。
【0040】
また、鏡180を壁面に設置するために要する部材がフック160のみであることから、浴室100内の壁面の大掛かりな設計変更を伴わないため、手間とコストを要することがない。
【0041】
またフック160は、後述するように大径の頭部162と小径の軸部166を有している。フック160が頭部162を有することで、吊り下げられた鏡180はフック160の頭部162により掛止されるため、鏡180のフック160からの脱落を防止することができる。なおフック160には、鏡180だけでなく、後述する収納部材200等を吊り下げることもでき、これにより壁面に収納部材200等を設置することが可能となる。
【0042】
以下、フック160の詳細について説明する。図2は、フック160の詳細を示す図である。図2(a)はフック160の分解図であり、図2(b)はフック160の斜視図であり、図2(c)はフック160不使用時の側面図であり、図2(d)はフック160使用時の側面図である。
【0043】
図2(a)に示すように、フック160は、頭部162と、螺子164と、軸部166と、リング168と、ワッシャ170との、5つの部材から構成される。フック160を壁面に設置する際には、まず軸部166とリング168とワッシャ170を嵌合する。そして、軸部166の穴に螺子164を装嵌し、ワッシャ170を壁面に当接して螺子止めをすることにより、軸部166とリング168とワッシャ170が壁面に螺設される。螺設後に、頭部162をリング168に嵌合することにより、図2(b)に示す状態となり、フック160が壁面に設置される。
【0044】
フック160の壁面への設置後、かかるフック160は、使用されない場合には図2(c)に示す状態となる。図2(c)に示すように、フック160は、軸部166およびリング168が頭部162に収納され、頭部162とワッシャ170が接した状態となっている。これにより、フック160内部はほぼ密閉された状態となるため、フック160内部への水等の浸入を防ぐことができる。故に、フック160内部でのカビ等細菌類の繁殖を防止し、衛生状態を良好に保つことが可能となる。
【0045】
また、図2(c)のように不使用時のフック160(軸部166収納時)は、壁面上に頭部162の厚み分だけ突出した状態となる(厳密には、ワッシャ170の厚みも含まれる)。故に、フック160により壁面上には微小な凸部が形成されるが、凹部が形成されることはない。したがって、フック160が壁面の清掃を妨げることがなく、且つ浴室100の美観を損ねることがない。
【0046】
更に、図2(c)に示すようにフックの頭部162が切欠162aを有することで、切欠162aの部分に指を引っ掛け、頭部162を白抜き矢印方向に、すなわち壁面から手前に引き出すことができる。このようにして頭部162を引き出すと、フック160は図2(d)に示す状態となり、軸部166が露出する。これにより、フック160に後述する鏡180や収納部材200等を吊り下げ可能となる。
【0047】
そして、例えば部材を吊り下げる場所を変更する等、引き出したフック160を使用しなくなる場合には、引き出した頭部162を壁面に向かって押し込むことにより、軸部166は頭部162に収納され、図2(c)に示す状態に戻る。なお、本実施形態においては、軸部166は頭部162に収納されているが、これに限定するものではなく、軸部166を壁面内に収納するよう構成してもよい。
【0048】
したがって、本実施形態にかかるフック160によれば、上述したように、フック160の頭部162を壁面から手前に引き出すという操作でフック160を使用することが可能となり、フック160の頭部162を壁面に向かって押し込むという操作でフック160の軸部166を頭部162に収納可能となる。したがって、いずれにおいても簡単な操作でフック160の状態を変更することができる。
【0049】
フック160は、壁面の水平方向に複数設置されるとよい。これにより、壁面に吊り下げる鏡180の位置を水平方向に自在に変更し、使用者が所望する位置に鏡180を設置することができ、浴室100での利便性が向上する。また、壁面の水平方向に複数の鏡180等を設置したり、吊り下げに要するフック160を水平方向に2つ以上必要とする部材を壁面に設置したりすることが可能となる。
【0050】
またフック160は、壁面の垂直方向に複数設置されるとよい。これにより、壁面に吊り下げる鏡180の位置を垂直方向に自在に変更し、使用者が所望する位置に鏡180を設置することができ、浴室100での利便性が向上する。また、壁面の垂直方向に複数の鏡180等を設置することができ、吊り下げに要するフック160を垂直方向に2つ以上必要とする部材を壁面に設置したりすることが可能となる。
【0051】
更に、上述したようにフック160を、壁面の水平方向に複数設置し、且つ垂直方向に複数設置するとよい。これにより、フック160は壁面に略碁盤目状に設置されることとなるため、壁面の平面的な所望の位置に鏡180を設置することが可能となり、利便性が格段に向上する。
【0052】
フック160を備える壁面は、カラン130を備える壁面114であるとよい。これにより、カラン130を備える壁面114にフック160が設置されるため、フック160に鏡180を吊り下げ、その壁面114に鏡180を設置することができる。
【0053】
またフック160を備える壁面は、浴槽120に対向する壁面112であるとよい。これにより、浴槽120に対向する壁面112にフック160が設置されるため、フック160に鏡180を吊り下げ、その壁面に鏡180を設置することができる。
【0054】
更に、フック160を備える壁面は、当該浴室100を構成する壁面のうち、隣接する2面以上の壁面であるとよい。これにより、隣接する2面以上の壁面に鏡180を設置することができる。したがって、複数の人間が浴室100で体や髪を洗う場合において、1つの面に設置された鏡180を1人の人間が使用していたとしても、他の人間は他の面に設置された鏡180を使用することが可能となり、利便性が向上する。
【0055】
また、上記の隣接する2面以上の壁面には、カラン130を備える壁面114および浴槽120に対向する壁面112が含まれるとよい。これにより、カラン130を備える壁面114、および浴槽120に対向する壁面112に鏡180を各々設置することが可能となる。したがって、本実施形態のように細長い長方形の形状の洗い場の長辺に沿って複数の人間が並んだ場合であっても、一方の人間はカラン130を備える壁面114に設けられた鏡180を、他方の人間は浴槽120に対向する壁面112に設けられた鏡180を使用することができ、複数の人間が浴室100内で快適に作業することが可能となり、利便性が向上する。
【0056】
鏡180(180a、180b、および180c)は、使用者が自身の姿を視認するための部材である。鏡180は、後述するように、鏡面部182と、フック160の頭部162に掛合される掛合部190とを有し、壁面に設置されたフック160の頭部162が掛合部190に掛合することで、鏡180が、フック160の軸部166に掛着され(吊り下がり)、壁面に設置される。したがって、使用者は、壁面に設置されたフック160を用いて、鏡180の設置位置を容易且つ自在に所望の位置に変更できるため、利便性が向上する。
【0057】
以下、鏡180の詳細について説明する。図3は、鏡180の詳細を示す図である。図3(a)は鏡180の正面斜視図であり、図3(b)は鏡180の背面斜視図である。
【0058】
図3(a)および(b)に示すように、鏡180は、鏡面部182と、枠体184と、基体186との、3つの部材から構成される。そして、鏡面部182と基体186とを嵌合し、これらを枠体184に装嵌することにより、鏡180が形成される。
【0059】
図3(b)に示すように、基体186はその背面に溝部188、および掛合部190a、190b、190c、および190dの4つからなる掛合部190を有する。掛合部190a、190b、および190cは、かかる溝部188と一体に形成されている。このように、掛合部190が溝部188と一体に形成されており、溝部188の幅が掛合部190よりも広いことから、フック160に鏡180を吊り下げ、かかる鏡180を壁面に設置する際に、鏡180の背面を壁面に当接し、溝部188にフック160の頭部162を挿入させ、水平方向や垂直方向に収納部材200を滑動させるだけで、フック160の頭部を掛合部190に容易に掛合させることができる。
【0060】
掛合部190は、鏡180の長辺もしくは短辺のいずれか一方または両方に略平行に2以上設けられることが好ましい。これにより、壁面に設置した際の鏡180の安定性を向上することができる。なお、本実施形態においては、長辺に略平行に2つ、および短辺に略平行2つ、計4つの掛合部190が基体186(鏡180)に設けられているが、これに限定するものではなく、適宜変更することが可能である。
【0061】
鏡180は略長方形であるとよい。これにより、使用者は好みに応じて鏡180の縦横を任意に変更することができる。すなわち、鏡180aのようにその長辺を上辺とすれば横長の鏡として、鏡180bおよび180cのようにその短辺を上辺とすれば縦長の鏡として使用することができ、利便性が向上する。
【0062】
また鏡180が略長方形であることから、鏡180bおよび180cのように、2つ以上の鏡180を並設すれば(隣接して設ければ)、複数の鏡180を一体の大きな鏡として使用することができ、利便性が向上する。なお、本実施形態においては、鏡180bおよび180cを水平方向に隣接して設けているが、これに限定するものではなく、垂直方向に隣接して設けてもよい。
【0063】
なお、本実施形態においては、鏡180は略長方形であるが、かかる形状に限定するものではなく、他の形状、例えば、円形や正方形等でもよい。また、鏡180の寸法は一例であり、これに限定するものではない。
【0064】
鏡180は、浴室100に2以上設けられるとよい。これにより、上述したように鏡180を垂直方向や水平方向に並設し(隣接し)、2以上(複数)の鏡180を一体の大きな鏡として使用することができる。また複数の鏡180を各々異なる壁面に1以上、例えば図2に示すように、壁面112に鏡180aを、壁面114に鏡180bおよび180cを設けることができ、親子等、複数の人間が浴室で体や髪を洗う場合に、各々別の壁面の鏡180を使用することが可能となり、利便性が向上する。
【0065】
図4は、本実施形態にかかる鏡180の使用方法を説明するための図である。本実施形態のように浴室100を親子で利用する場合、床面116(洗い場)が細長い長方形であることから、短辺に沿って2人が座ることは難しく、必然的に長辺に沿って並ぶことになる。すると通常、親は子を洗うためにカラン130やシャワー140が設置されている壁面114に近い位置に座り、子は壁面114から遠い位置(親の前)に座ることになる。
【0066】
したがって、図4に示すように、壁面112に鏡180aが、壁面114に鏡180bおよび180cが設けられる場合、親は鏡180bおよび180cを、子は鏡180aを使用することができる。これにより、浴室100内においてすべての使用者が快適に作業を行うことが可能となる。
【0067】
なお本実施形態においては、鏡180は浴室100内に3つ設けられているが、かかる数に限定するものではない。鏡180は浴室100内に1以上設けられればよく、好ましくは上述の如く2以上設けられるとよい。
【0068】
収納部材200は、シャンプーやリンス等の浴室で用いられる物品を収納するための部材である。収納部材200は、壁面に設置されたフック160に吊り下げられることにより、かかる壁面に設置される。
【0069】
図5は、収納部材200の詳細を示す図である。図5(a)は収納部材200の正面斜視図であり、図5(b)は収納部材200の背面斜視図である。図5(a)に示すように、収納部材200は受け皿状となっており、かかる受けの部分に、浴室100で使用する物品を収納することができる。
【0070】
また図5(b)に示すように、収納部材200の背面には、掛合溝200aが設けられている。かかる掛合溝200aにフック160を掛合することにより、収納部材200を壁面に設置することができる。
【0071】
なお、本実施形態においては、収納部材200が有する掛合溝200aの数は2つであるが、これに限定するものではなく、適宜変更することが可能である。また収納部材200の寸法も一例であり、これに限定されるものではない。
【0072】
イス240(240a、240b)は、浴室100の床面116に移動可能に設置されている。図6は、本実施形態にかかるイス240を説明するための説明図であり、特に図3(a)は使用時を、図6(b)は収納時を示している。
【0073】
図6に示すように、2つのイス240は大きいイス240aと小さいイス240bの2つで構成されており、大きいイス240aの内部に小さいイス240bを収納可能な入れ子構造を有している。したがって、例えば浴室100を一人の人間しか使用しない場合等、複数のイス240(240a、240b)を必要としない場合に、大きいイス240aの設置面積で小さいイス240bを収納することができ、浴室100の床面116(洗い場)の面積の有効活用が図れる。
【0074】
図6(a)に示すように、本実施形態では、大きいイス240aおよび小さいイス240bの側面の座面近傍にシャワー140を構成する軸部(シャワーヘッド)を略垂直方向に回動自在に固定可能なシャワーフック242(図6中242a、242bで示す)を備えている。これにより図6(b)に示すように、シャワー140をイス240に固定することができる。したがって、使用者は常にシャワー140を自身の手元に設置しておくことができ、例えば、浴室100を親子で利用する際に、親は、両手で子を洗った後、振り返って自身の背後に設置された壁付けシャワーフックに掛止されたシャワー140を把持し、再度、子の方に向きなおすといった煩雑な動作を経ることなく、シャワー140を利用することが可能となる。
【0075】
またイス240の側面の座面近傍にシャワーフック242を備える構成により、当該イス240をカウンタとして利用し、かかるイス240に洗面器(図示せず)を設置した場合に、使用者がシャワー140を把持せずとも直接洗面器に湯水を供給することができ、シャワー140にカランの役割を担わせることが可能となる。
【0076】
ここでは、特に2つのイス240のうち大きいイス240aの略水平断面は略長方形であって、大きいイス240aに設けられたシャワーフック242aは、短辺の側面であって座面近傍に設置されている。
【0077】
これにより、大きいイス240aをカウンタとして利用する場合に、使用者の右手側もしくは左手側にシャワー140を固定することができるため、使い勝手を向上させることが可能となる。
【0078】
本実施形態において、大きいイス240aの略水平断面は、略長方形である。これにより、大きいイス240aをカウンタとして利用する場合に、浴室100で利用するシャンプー、リンス、ボディシャンプー等の洗浄剤と、洗面器を横に並べることができ、使い勝手が向上する。
【0079】
また、本実施形態では、大きいイス240aの上面に洗面器を位置決め可能な凹部240cを備えている。これにより、大きいイス240aをカウンタとして利用する場合に、洗面器を係止して設置することができる。また、大きいイス240aにシャワー140を固定できるため、シャワー140から直接洗面器に湯水を供給することが可能となる。
【0080】
また図6(a)、図6(b)に示すように、大きいイス240aは小さいイス240bよりも大きく、大きいイス240aの側面(長辺の側面)には開口部240dを有し、開口部240dから小さいイス240bを収容可能になっている。これにより、大きいイス240aを持ち上げることなく、大きいイス240aの中に小さいイス240bを水平方向にスライドさせて収納することができる。また、2つのイス240は、その1つが他の1の収納する入れ子構造を有していることから、大きいイス240aの設置面積で小さいイス240bを収納することが可能となる。
【0081】
上記説明したように、本実施形態にかかる浴室100が、浴室100の浴槽120の長辺と対向する壁面112に配列された複数のフック160と、フック160に掛合される掛合部190と鏡面部182を有する鏡180と、イス240と、を備えたことにより、一人の人間が浴室100を使用する場合も、複数の人間が浴室100を使用する場合においても、鏡180を各人が使用しやすい位置に容易に変更することができるため、快適に洗い場を利用することができ、使用者の利便性が向上する。
【0082】
また、鏡180を壁面に設置するために要する部材がフック160のみであるため、浴室100内の壁面の大掛かりな設計変更を伴わず、これに要する手間とコストを削減することができる。更に、2つのイス240(240a、240b)が、入れ子構造を有することから、複数のイス240を必要としない場合には、1のイス240aの設置面積で他のイス240bを収納することができ、浴室100の床面116(洗い場)の面積の有効活用が図ることが可能となる。
【0083】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、鏡の設置位置を自在に変更可能な壁面を備える浴室に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本実施形態にかかる浴室を示す図である。
【図2】フックの詳細を示す図である。
【図3】鏡の詳細を示す図である。
【図4】本実施形態にかかる鏡の使用方法を説明するための図である。
【図5】収納部材の詳細を示す図である。
【図6】本実施形態にかかるイスを説明するための説明図である。
【図7】従来の浴室を説明するための説明図である。
【図8】従来の浴室における複数の人間の配置を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0086】
10、100 …浴室
12、112、114 …壁面
20、120 …浴槽
30 …洗い場
32 …鏡
34、130 …カラン
36、140 …シャワー
38、150 …照明
40、40a、40b、240、240a、240b …イス
116 …床面
160 …フック
162 …頭部
164 …螺子
166 …軸部
168 …リング
170 …ワッシャ
180、180a、180b、180c …鏡
182 …鏡面部
184 …枠体
186 …基体
188 …溝部
190、190a、190b、190c、190d …掛合部
200 …収納部材
200a …掛合溝
240c …凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
当該浴室に配置された浴槽と、
前記浴槽と隣接して構成される洗い場と、
当該浴室の前記浴槽の長辺と対向する壁面に配列された複数のフックと、
前記フックに掛合される掛合部と鏡面部を有する鏡と、
イスと、を備えたことを特徴とする浴室。
【請求項2】
前記フックは、前記洗い場の壁面のうち、前記浴槽に隣接する壁面と、該壁面に隣接し且つ直交する壁面に亘って設置されていることを特徴とする請求項1に記載の浴室。
【請求項3】
前記浴槽に隣接する壁面にシャワー付のカランをさらに備え、前記鏡は、前記浴槽に隣接する壁面に設置されたフックと、該壁面に隣接し且つ直交する壁面に設置されたフックに掛脱自在に取付可能であることを特徴とする請求項2に記載の浴室。
【請求項4】
前記イスは複数であって、大きいイスと小さいイスの2つで構成されており、前記大きいイスが前記小さいイスを収納する入れ子構造を有することを特徴とする請求項3に記載の浴室。
【請求項5】
前記複数のイスの少なくとも1つにシャワーフックを備えたことを特徴とする請求項4に記載の浴室。
【請求項6】
前記大きいイスと小さいイスの両方にシャワーフックを備えたことを特徴とする請求項5に記載の浴室。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−110453(P2010−110453A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285253(P2008−285253)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000104973)クリナップ株式会社 (341)
【Fターム(参考)】