説明

浴槽の排水構造

【課題】 浴槽側面の貫通孔からの漏水に気づくことを可能とするとともに、浴室の美観を向上させた排水構造を提供する。
【解決手段】 側面にパイプ類を接続する貫通孔を有する浴槽の排水構造200であって、浴槽110の貫通孔130の下方に取り付けられる水受け皿210と、浴槽110の側方に配置されたエプロン150と、エプロン150に設けられエプロン150の表面から後退した後退部154と、水受け皿210から後退部154に接続される排水管220と、後退部154を隠蔽してエプロンの後退部154以外の表面と面一の表面を構成する外蓋170と、後退部154と外蓋170との間に形成され排水管220から排出された水が流出可能な隙間174と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニットバスなどの浴槽に設けられる排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、浴槽や壁面、洗い場の床面などをあらかじめ工場で生産し、設置箇所で組み立てるユニットバスが提供されている。ユニットバスの浴槽は下面に排水口を備えているほか、浴槽側面に貫通孔を備え、給湯や追い炊き、ジェットバスなどのためのパイプ類が接続されている場合が多い。
【0003】
浴槽の下面の排水口は、洗い場の排水口と同じ排水トラップに接続されている。排水トラップではパッキンが設けられて封止されているほか、折り返し構造などを有しているためにパッキンが劣化しても漏水には到りにくい。しかし、浴槽側面の貫通孔においてパイプ類はパッキンのみに頼って封止しているため、経年によってパッキンが劣化したり、接続部がゆるんだりすると漏水する可能性がある。
【0004】
ユニットバスの構成によっては、洗い場から浴槽の下方に連続する防水パンが配置されている。この場合には貫通孔付近から漏水しても水が家屋や基礎に流出することはなく、したたった水も少量であれば防水パンの上で乾いてしまうことが予定されている。しかし、住宅の2階に浴室を設ける場合や、マンションに設置する場合など、床下に十分な高さ(深さ)を取れない場合がある。このときは浴槽の下方に防水パンを設置するスペースが取れないため、貫通孔付近からの漏水に対処する必要がある。
【0005】
従来からも、貫通孔の付近からの漏水を水受け皿で受け止めて、洗い場や排水トラップに排水する構成が提案されている。
【0006】
特許文献1には、浴槽の貫通孔の下方に水受け皿(水受容器)を配置し、受け止めた水をエプロンから洗い場に排水する構成が記載されている。なお特許文献1では、側面に一部局面を有する浴槽の外面にも取り付け可能な水受容器が提案されている。
【0007】
また特許文献2には、貫通孔の下方に水受け皿(水受容器)を配置し、漏水を洗い場まで流すホース内に、漏水により洗い場まで移動する漏水検知部材を備えた構成が記載されている。特許文献2には、ホース先端の排水口を蓋のように封止し、漏水によって糊が取れて落下する漏水検知部材が開示されており、漏水を確実に検知できるとしている。
【特許文献1】特開2007−319532号公報
【特許文献2】特開2007−313110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1の構成にあっては、浴室を利用する使用者に排水口が見えてしまうという問題がある。特に使用開始から数年も経過すると排水口の内部に水垢が溜まるなどして、美観を損ねてしまうという問題がある。また、あたかも漏水することが予定されている感があり、印象がよくないという問題もある。
【0009】
また特許文献2のように漏水によって落下する漏水検知部材を排水口の出口に備えておけば、通常時に排水口の中が見えてしまうことは防止することができる。しかし、それでも排水口は外部から観察できるため、美観を損ねてしまうという問題がある。また、万が一にも漏水を生じた場合には、漏水を修理するまでは排水口が解放されたままとなり、内部が見えたままになってしまう。
【0010】
また水受け皿からの漏水を排水トラップに導いた場合は、排水としては確実であるものの、漏水していることに気づかないという問題がある。
【0011】
そこで本発明は、浴槽側面の貫通孔からの漏水に気づくことを可能とするとともに、浴室の美観を向上させた排水構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る浴槽の排水構造の代表的な構成は、側面にパイプ類を接続する貫通孔を有する浴槽の排水構造であって、浴槽の貫通孔の下方に取り付けられる水受け皿と、浴槽の側方に配置されたエプロンと、エプロンに設けられエプロンの表面から後退した後退部と、水受け皿から後退部に接続される排水管と、後退部を隠蔽してエプロンの後退部以外の表面と面一の表面を構成する外蓋と、後退部と外蓋との間に形成され排水管から排出された水が流出可能な隙間と、を備えることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、浴槽の貫通孔から漏水した水はエプロンの後退部に排水され、外蓋と後退部の間の隙間から洗い場へと排水される。したがって使用者は、浴室が乾燥した後にも外蓋の下から水が流れていることから、貫通孔において漏水が生じていることを知ることができる。これにより、外観上は開口のない一様な側面を有するエプロンであるにもかかわらず、漏水があれば使用者が気づくことが可能な排水構造を提供することができる。
【0014】
後退部に設けられたメンテナンス用の開口と、メンテナンス用の開口を封止する内蓋と、を備え、排水管は水受け皿から内蓋に接続されていることが好ましい。このように構成することにより、漏水が発見された場合に、内蓋を開いて漏水を修理することが可能となる。また外蓋の内側に排水管の開口とメンテナンス用の内蓋の両方を隠すことができ、利便性を向上させながらも美観を向上させることが可能となる。
【0015】
水受け皿において、排水管を接続する接続部は、水受け皿の側面であって水受け皿の底面から離隔した高い位置に配置されていることが好ましい。このように構成することにより、少量の漏水であれば水受け皿の中に溜めることができ、そのまま蒸発させることができる。
【0016】
接続部は、水受け皿の異なる方向に複数設けられていることが好ましい。このように構成することにより、浴槽に対して洗い場が異なる方向に配置される場合においても、同じ水受け皿を使用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、浴槽側面の貫通孔からの漏水に気づくことを可能とするとともに、浴室の美観を向上させた排水構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明にかかる排水構造の実施形態について説明する。図1は排水構造を説明する斜視図、図2は排水構造の部分断面図、図3は排水口近傍の構成を説明する図、図4は水受け皿の構成を説明する図である。なお、以下の実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。
【0019】
図1に示すように、浴槽110の側面には、給湯や追い炊き、ジェットバスなどのためのパイプ類120が接続される貫通孔130が設けられている。また浴槽の側方には、エプロン150と洗い場160が配置されている。エプロン150と洗い場160は一体成形されるか、または水密に接合されて設置(施工)されている。そして本実施形態にかかる排水構造200は、浴槽110の貫通孔130からの漏水を洗い場160に排水するための構造である。
【0020】
浴槽110の貫通孔130の下方には、水受け皿210が取り付けられている。水受け皿210には左右両側に2つの接続部212(図4参照)が設けられており、一方の接続部212に排水管220が接続されている。
【0021】
エプロン150には、エプロン表面152から後退した後退部154が形成されており、後退部154にはメンテナンス用開口156が形成されている。メンテナンス用開口156は施工者が内部を観察し、また手を入れて貫通孔130とパイプ類120の接続のメンテナンス作業を行うことができるように、大きく開口されている。メンテナンス用開口156は、内蓋230で封止される。したがって内蓋230の表面は、エプロン表面152よりも後退した位置にある。なお内蓋230は、例えばビス等の締結部材によってエプロン150に固定することができる。
【0022】
エプロン150の後退部154には、後退部154を隠蔽してエプロン表面152(後退部154以外の表面)と面一の表面を構成する外蓋170が着脱可能に取り付けられる。したがって外蓋170を取り付けた後は、図1(b)および図2に示すように、外蓋170の表面とエプロン表面152とは同一面を構成し、外観に排水口222は露出しない。なお外蓋170は、例えば裏側に係合ピン172を立設し、内蓋230に設けた係合ボス232に嵌合させることによって、後退部154に着脱可能に冠着させることができる(図2参照)。
【0023】
そして水受け皿210に接続された排水管220の他端は内蓋230に接続され、排水管220の先端に排水口222を有している。すなわち、排水管220は水受け皿210から後退部154に接続されている。なお排水管220と内蓋230の接続は、例えば図3に示すように、排水口222と排水管220の端部とをそれぞれフランジを設けて螺合可能とし、内蓋230の排水用開口234に排水口222のネジ部を挿入して、内蓋230を挟んだ状態で、排水管220の端部と螺合して固定することができる。
【0024】
また図2に示すように、外蓋170を取り付けた状態において、外蓋170と後退部154との間には隙間174が形成されている。これにより、排水管220から排出された水が外蓋170の下から洗い場160へと流出可能となっている。
【0025】
上記構成によれば、浴槽110の貫通孔130から漏水した水はエプロン150の後退部154に排水され、外蓋170と後退部154の間の隙間174から洗い場160へと排水される。したがって使用者は、浴室が乾燥した後にも外蓋170の下から水が流れていることから、貫通孔130において漏水が生じていることを知ることができる。これにより、外観上は開口のない一様な側面を有するエプロン150であるにもかかわらず、漏水があれば使用者が気づくことが可能となる。
【0026】
また後退部においてメンテナンス用開口156に排水管220を接続したことにより、漏水が発見された場合に、内蓋230を開いて漏水を修理することが可能となる。また外蓋170の内側に排水口222とメンテナンス用の内蓋230の両方を隠すことができ、利便性を向上させながらも美観を向上させることが可能となる。
【0027】
また図4に示すように、水受け皿210において、排水管220を接続する接続部212は、水受け皿210の側面であって水受け皿210の底面214から高さhだけ離隔した高い位置に配置されている。すなわち水受け皿210に落下した水はある程度貯留され、高さhを超えた分が接続部212から排水管220を通して排出される。このように構成することにより、少量の漏水であれば水受け皿210の中に溜めることができ、そのまま蒸発させることができる。したがって、結露によって水滴がたまった場合や、まだ修理するほどではない漏水の場合に、使用者を煩わせることをなくすことができる。
【0028】
また上述したように、水受け皿210の接続部212は、異なる方向に複数(本実施形態では左右両側に2つ)設けられている。このように構成することにより、浴槽110に対して洗い場160が異なる方向に配置される場合においても、同じ水受け皿210を使用することができる。なお、水受け皿210の底面214に接続部212を設けることも考えられるが、排水口222との高低差を設ける必要があるため、接続部212は側面216に設けることが好ましい。また排水管220が接続されない接続部212は、キャップ218などによって封止しておくことが好ましい。
【0029】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0030】
なお、上記構成においては内蓋230に排水管220を接続しているが、必ずしも内蓋230に接続する必要はなく、後退部154に接続していればよい。したがって例えば内蓋230を設けなくともよい。また例えば、図5に示すように内蓋230と排水口222とを併設してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、ユニットバスなどの浴槽に設けられる排水構造として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】排水構造を説明する斜視図である。
【図2】排水構造の部分断面図である。
【図3】排水口近傍の構成を説明する図である。
【図4】水受け皿の構成を説明する図である。
【図5】排水構造の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
110…浴槽、120…パイプ類、130…貫通孔、150…エプロン、152…エプロン表面、154…後退部、156…メンテナンス用開口、160…洗い場、170…外蓋、172…係合ピン、174…隙間、200…排水構造、210…水受け皿、212…接続部、214…底面、216…側面、218…キャップ、220…排水管、222…排水口、230…内蓋、232…係合ボス、234…排水用開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面にパイプ類を接続する貫通孔を有する浴槽の排水構造であって、
前記浴槽の貫通孔の下方に取り付けられる水受け皿と、
前記浴槽の側方に配置されたエプロンと、
前記エプロンに設けられ該エプロンの表面から後退した後退部と、
前記水受け皿から前記後退部に接続される排水管と、
前記後退部を隠蔽して前記エプロンの後退部以外の表面と面一の表面を構成する外蓋と、
前記後退部と前記外蓋との間に形成され前記排水管から排出された水が流出可能な隙間と、を備えることを特徴とする浴槽の排水構造。
【請求項2】
前記後退部に設けられたメンテナンス用の開口と、
前記メンテナンス用の開口を封止する内蓋と、を備え、
前記排水管は前記水受け皿から前記内蓋に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の浴槽の排水構造。
【請求項3】
前記水受け皿において、前記排水管を接続する接続部は、前記水受け皿の側面であって該水受け皿の底面から離隔した高い位置に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の浴槽の排水構造。
【請求項4】
前記接続部は、前記水受け皿の異なる方向に複数設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の浴槽の排水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−121312(P2010−121312A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294250(P2008−294250)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(000104973)クリナップ株式会社 (341)
【Fターム(参考)】